とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第2部 第13話 第三章(1)


8月16日(日) 午前5時

時刻は5時だが、日はまだ上っていない。明るくなり始めたくらいだ。
夏至から2月弱が経過し、明らかに夏は終わりつつある。
あれほどうるさかった、セミの大合唱も、アブラゼミやクマゼミから
ヒグラシやツクツクボウシへ移行し、音量が明らかに低下している。

普通の学生なら今頃はそろそろ宿題が気になるころだろう。長い夏休み
ももう終わり、眠りこけている当麻をみつつ、私は思う。
今まで、当麻は宿題はどうしていたのかな?今日も町をふらふら歩き、たまたま
出会った不幸な女の子を手助けして、最終日まで放置していたのかな。

やらないからわからない、わからないからやらない、その悪循環を繰り返して
いたんだろうな。たぶん。始業式は担任の先生にこってり絞られ、補習
に追いまくられ、主体的に勉強なんてしたことないんだろうな。

でも・・もう私はそんなことはさせない。それに今年はちゃんと当麻は
宿題をやり切った。人は変われる。私はそう信じる。当麻にはそれを
成し遂げる力がある。

「やっぱりさっさと終えてよかった・・」私は独り言を言う。
終わらせたからこそ、こころおきなく海外へ行ける。

私は窓から視線を当麻へ移す。
いつものように、当麻は眠りこけ、いまだ熟睡モードを脱していない。
いつも4時間とか5時間睡眠の私と違い、基本当麻は7時間眠る。
結婚すればこの辺のすれ違いで問題が発生しやしないか心配になる。

だけど、そうゆうひとつひとつの違いを認識し、譲り合い夫婦として
生きていく。上手くいかないこともいっぱいあるだろう。
だけど、お互いを知り、お互いを支えあい、互いをかけがえがない
ものとして尊敬しあえる関係を築きたい。そう思う。

それにもう自分は当麻に依存し始めている。
当麻不在の間、大事な朝食をコンビニ弁当で済ました自分。
よーく考えてみると、何が入っているか分かりもしない、食品添加物満載の
コンビニ弁当はまずかった。味だけでなく体にもよくない。
改めて毎朝、キッチとした朝食をとる、当たり前の重要性をさとる。

当麻の作ってくれる愛情あふれる美味しい朝食。それを楽しみにする自分。
もう当麻なしの自分なんてありえないんだな。改めて認識する。
私の為に彼をもう傷ひとつ付けたくない。
だから・・私は変わらなければならない。魔術を知らないことを言い訳にしない。
何があっても上条当麻が最優先だ。そう心を決める。
 ・・・・・・・・
AM7:30
食事を終え、食器洗浄機へ食器を放り込み、当麻と出張の打ち合わせをする。
「当麻、もう一度確認するけど体は大丈夫?無理は禁物。別に私だけでいいのよ?」
「美琴・・なんでも抱え込んで自分で解決しようとするのはお前の悪いクセだぞ」
「でも・・私はもう当麻が傷つくのはみたくない。当麻を守るためなら不殺の信念
 なんて最悪捨てても構わない。今回は学園都市外でも公務だから、少々の無理
 でも外交官特権が使えるから最悪殺すだけよ。」

「美琴、俺のことなら気にする必要はないぞ。男が婚約者を守るのは当然の事
 だろう、学園都市1位と婚約する以上そのくらいは覚悟はしている。
 お互いにお互いの背中を守り合う。」
「わかったわ。じゃ作戦を説明するわね。」

 ・・・・・・・(中略)・・・
「米国政府の複数の要人を短時間に掌握する手腕から見て学園都市の基準でいえば
 食蜂クラスまたはそれ以上の魔術師が関与している。」
「はあ?つまり魔術師が米国を乗っ取るというのか?」
「いえ魔術師だけでないわ。大富豪が絡んでいる。」

「大富豪?」
「ええ、オーレイ・ブルシェイクという世界一のね」
当麻は美琴の信じがたい話を黙って聞いている。
美琴がしゃべる以上なんかの根拠があるはずだからだ。

「オーレイ・ブルシェイクはメディアとネットの帝王でそこを起点に実質的に


米国を支配する世界一の大富豪よ 総資産は米国の国家予算約3兆ドルを超えると
言われている」
「美琴 でもそんな米国を支配する帝王がなんでいまさら国家転覆なんてしょうもない
 真似を?彼女はもうすべてを手にいれているわけじゃない。今更これ以上を望む
 必要があるのか?」

「彼女は、学園都市の真似をして学芸都市をつくり、超能力研究をしていた。だけど
 結局上手くいかず、最近では魔術師と接触している。」
「はあ?米国は学園都市よりだろ。なんで学園都市を裏切って魔術師なんかと手を結ぶ?」
「私のせいかもね。超荷電粒子砲の実験の影響だろうね。このままでは学園都市に
 米国は勝てない。それで超能力研究をひそかに進めたがうまくいかない。だから魔術に
 手をだした。そんなとこじゃない?最終的には米国を魔術国家に変えるつもり
 じゃないかな? 」

「それは美琴の空想じゃないよな?」
「根拠のある合理的な推論といいたいけど、証拠はあるわよ」
「え?」
「私のまえに隠せる情報なんてないわよ。アメリカ政府のセキュリティなんてざるよ」
「じゃ・・」

「ええ天井の所在地も、関与している魔術師も、彼女らのやりたいことも
 おおよそわかっている」
「なら統括理事会へ報告すれば仕事は終わりじゃ」
「国家主権の問題よ、米国の要請なしに何かをやれば内政干渉になる」
「だから、私は大統領に事実を知らせそれを事実と認識させる必要がある」
「手段はあるのか?」

「大統領と食蜂に会ってもらうわ。私のメッセージを伝えてもらう」
「そのあとはどうする?」
「後は米国の内政問題だけど、たぶんなんとかなると思う」
「UKデモはどうする?」
「今回はあくまで訪英後という指示なんだから、デモはデモで実施するわ」
「わかった。」


美琴は、以前宗教関係者の資金洗浄を調べたときに米国の大富豪、
オーレイ・ブルーシェイクが「グレムリン」と呼ばれる魔術結社に
多額の資金援助を行っている事実をつかんでいた。
だが、米国が科学側の大勢力であり、彼女をつぶせば、
米国が金融恐慌になるリスクがあり
敢えてその事実を暴露しなかった。

だが米国政府がある程度協力するなら話は別だ。
必要ならば彼女の巨悪をFBIなり米国内国
歳入庁(日本でいえば国税庁)へ暴露してあげよう。

「当麻、私たちはアメリカ国民じゃないからできることに
限りがあるわよ それだけは忘れずに行動しましょ」
「ああ」

 ・・・・・・・・・・

8月17日 月曜日 14:00(現地時間9時) シベリア北部 航空機内

私たち2人は、学園都市の外交官パスポートを使用し出国手続を簡単に済ませ、
すでにシベリア上空高度20000Mを秒速1650M(マッハ5)で西へ進んでいる。
今回は、婚后航空のご厚意で来春正式投入予定の200人乗りの超音速ジェットをお借りし
ほとんど、プライベートジェット感覚で利用する。

この超音速機はコンコルドを上回るマッハ5で学園都市とロンドン・ヒースロー空港
を2時間20分で飛行できる。名目は試験飛行だが、はっきり言って友人の好意というのが
実際の話だろう。

まあこの辺が常盤台卒のメリットだな。私はそう思う。
通常の学校ではこんな話ありえないだろう。
友人が財閥令嬢とか政財界の要人令嬢とか。
そのコネで、マル秘の航空機の試験飛行なんて
名目で婚約旅行ができる。

美琴は、常盤台の中でも突出した存在で、しかもファンが多い。
目立つことを嫌う美琴にとって、在学中はファンは
煩わしい存在だったが、社会人になると、
人脈という財産のありがたみを感じる。
人脈とは持つ者にとっては空気みたいなものだが
持たざるものにとってはいかなる財産にも勝る。

ふふ・・まあおかけで、気楽に旅もできるしね。
それに当麻には世界のてっぺんを味わってもらいたい。
美琴がファーストクラスの座席で体を横たえながら、
隣席の当麻の手を握る。
当麻は初めての海外旅行で風景がもの珍しいのか、
窓の外の広漠なシベリアの原生林を
じっと眺めている。


そろそろ ロシアも終わりか・・
美琴は時計を眺め、後30分でロンドンへ到着することを確認する。
(さあ・・UKね。)美琴は心の中でつぶやく。
世界の金融の中心地のひとつにして、魔術が裏で支配する老大国

興味深いわ。インデックスに会うまで知りもしなかった魔術 
その中心地のひとつロンドンへ科学の最高峰が足を踏み入れるのだから。

降下を初めて20分私たちの乗せた超音速機はロンドン時間 AM6:30 ロンドン
ヒースロー空港へ無事着陸する。

世界でも最大級の発着人員を誇るヒースローは、早朝にも関わらず様々な人種ですでに込み合っている。ターバンを巻いたシク教徒、スカーフをすっぽりかぶったムスリムの女性、長いひげが特徴のユダヤ教徒、世界中のあらゆる人種がそこにいるような錯覚を覚える。

私と当麻は外交官パスポートの威力でほとんどノーチェックでVIP専用口を通過する。
黒キャブにのり約1時間 早朝のロンドン中心部へ到着する。私は料金80ポンドを支払い
トラファルガー広場でタクシーを降り当麻に叫ぶ
「さあ当麻観光するわよ。」
私は、当麻の腕を連れまわし、観光ガイドに沿って歩き始める。
「まずバッキンガム宮殿でもいこう」

 ・・・・・

ロンドン時間 8月19日(水)13時 ロンドン・ヒースロー空港
国内線カウンター

ほぼ丸3日 本当に遊んだ。
子供のころから能力開発・学習に明け暮れた自分にとって丸々3日遊び通しなんて
生まれて初めての経験だ。
当然、テンションも高くなる。気がつけば朝から晩までほとんど当麻を引きずりましていた。

ロンドンとその近郊の観光ガイドに掲載されている、主だった場所はほとんど遊びまくった。
ケンジントン、バッキンガム、ウエストミンスター寺院、オペラハウス、動物園、博物館
美術館・特に夕暮れのテムズ川クルーズは最高に美しかった。
国会議事堂・セントポール大聖堂・ロンドン塔 夕暮れにたたずむロンドンの
シルエットが絵画のようにラインを形成し、その絶景が脳に刻み込まれる。

テムズ川にかかるいくつもの橋も2人で歩いた。特に当麻と一緒に
手をつないで渡ったミレニアムブリッジ。晴天の少ないロンドンで奇跡的に晴れ渡り、
2人の門出を祝福するように陽光が降り注ぐ。
ふふまるで新婚さんみたいな気分だわ。そうよね。これは婚約旅行だから

昨日は予定を変更し、イギリス清教のステイル・神裂・インデックスの3名と居酒屋で一
晩中語り明かしたのもいい思い出だ。当麻の幻想殺しや聖人の話で盛り上がる。
時間は短くとも共通の危機を乗り切った体験は、しっかりと脳に刻み込まれるのか
しれない。友情は付き合いの長さではなく付き合いの濃さが大事だとも思う。
ロンドンの3日間の非日常は多くの記憶を刻み付け、私と当麻の共通の記憶
として積み重なる。

だが幸せな時間ほど早く過ぎ去り、あっという間に終わりが来る。
私は気持ちを切り替え、すぐに仕事モードへ切り替える。
そして、私は心の中でつぶやく、さあ仕事よ。

ロンドンからマンチャスターはわずか1時間で到着し、空港からホテルへ向かう。
明日は能力開発デモ。まあ実際には息抜きだが、一応は学園都市を代表して行う
正式なデモンストレーションである以上、業務として行う必要がある。

19時から主催者のよる歓迎レセップションに出席し、社交儀礼という
やつを業務として行う。あらかじめロンドンで購入したフォーマルを
2人で着替え、出席する。ひとつひとつはたわいのない会話だが、質問の
チョイス、質問への対応力、服装のセンス、時計などのアクセサリーの選択、酒に
飲まれない素質、どんな突っ込みにも笑顔で返す精神力と頭の回転力。

ある意味そこは弾丸が飛び交わない上流階級の戦場といえる。
そこへ当麻に出席してもらうかどうか迷ったが婚約者なので出席させる。
幸い、当麻は日本語しか会話できないので
私が通訳で少々の粗相はごまかせたのがある意味幸いだった。
なんとかぼろは出さずに済んだ。

(まあ・・上流階級の作法はそのうち覚えてもらうわ。)
私も当麻ほどではないが、堅苦しい場はさほど好きでもないので
意外にくたびれはてる。


部屋へ掛けこみ、すぐに休みたい。そんな怠惰な心に支配される。

私は精神的に疲れ果てた体をベットに横たえ、当麻にささやきかける。
「当麻、疲れたわ・・今日は慰めてね」
もう正直当麻依存症になってしまった、疲れた果てた心を当麻に癒してほしい。
今晩も当麻にしっかり慰めてもらいたい。

いくら付き合いが深まろうとも、ちゃんと手をつなぎ、お互いの体温
ニオイ、呼吸を感じ合って生きて行きたい。
「当麻今日もしっかり抱いてね」
「ああ はじめようか」

2人はベットへ入りもはや日課になりつつある、夜の営みをはじめる。
旅行先という非日常の感覚が、理性というブレークを外し、時間を忘れて
お互いをむさぼる。 
翌日は仕事だというのに、そんなことはもはやおかまいなく、本能が求める
ものを、本能に従って貪りつくし、時間を忘れ没頭する。

学園都市にとって約30ある協力機関は、学園都市と各国政府をつなぐ窓口の
役割を果たす。学園都市が科学世界の中心地たりえるのも、主要な大国に存在する協力機関
を通じて科学技術とその成果を提供し、その果実たる知的財産所有権使用対価を回収する
仕組みが出来上がっているからだ。

その技術の根本に位置する、能力者と先端兵器の見本市は、協力機関の学園都市に対して
の先端技術を開示しないという批判をそらす目的がある。

だから、私のようなレベル5が能力開発の成果を披露するというショーを行うことは
それなりの意味があるのだ。
レベル5でも能力開発デモの依頼は私に集中しがちだ。もちろん私が可憐な美少女で
見栄えがいいという話は別として、能力が表面的には分かりやすいこともあるだろう。

今は電磁場・原子・陽子の操作を1000兆kwの莫大な出力で自在に行うという化け物
じみた能力だが、もとは電気というわかりやすい素材を扱う能力者なので、説明がしやすい
という話でもある。

だが最大の理由は私の性格が、温厚で常識人の範疇にとどまるからだろう。
私は、初対面に人に「きさくで話やすい人ですね」言われる。これはその裏に
高飛車で高慢ちきで人格が破綻したレベル5の割にはという意味を含んでいる。

外で円滑なコミュニケーションを交わし、行事ごとを成功させるには相当な
常識がいる。いわゆる安全パイとか広告塔と揶揄させるのも、外部を安心
させるには悪くない話だろうと私は思っている。

まあ、しょぼくない程度で、ある程度見栄えのする演技をすればいいやと
適当に考える。

8月20日(木)現地時間 16時 マンチェスター近郊 協力機関内デモ会場

美琴はデモが終わった会場で破壊された何台もの戦車や無人ヘリを眺めその会場で
撤去作業が終わるのを待つ当麻をみつけ、手を振る。

「当麻、デモどうだった?」
「いや・・美琴がすごいのはよく知っているけど、あらためてものすごいな」
「ありがとう。でもちょっともの足りないかな」
「いやいや観客は満足でしょう。約1000名の武装した群衆を、電撃で気絶させ、戦車の
 滑空砲の砲撃を何十発を受けても無傷であることを見せ、対空ミサイルを電子線
 で粉砕。ヘリからばらまかれた小型爆弾を電撃で粉砕。砂鉄の剣、鋼材乱打、
 超電磁砲で何台もの戦車を粉砕。プラズマブレイドで無人ヘリを真っ二つ。結構楽
 しめたよ。それに磁力で戦車を数m持ち上げてひっくり返したり、大技も見せてもらいました。あのカマキリマシンをレーザー掃射で一撃で沈めた時は鳥肌もんでしょ。」

「デモは難しいわね。あんまり手の内は見せられないし、ある程度観客を満足させなきゃないし。まあ今はこんなもんかな。」
「美琴はこうゆうの慣れているのか?」
「ええ、まあ一応学園都市の顔だから、依頼はあるわよ。7月上旬にはロシアへ行ったしね。」
「はあ・・こうゆうとこが違うよな。格差を感じますよ」
「ふふ まあいいじゃないの、当麻の力は見せないほうが、いいんだからさ」

パワードスーツや戦車や無人兵器の残骸は回収され、職員も撤収を終える。


「じゃ・・撤収作業も終わったようだし、ホテルへ戻りましょうか?」
美琴は、当麻を促しホテルへ戻る。
やや広めの浴槽へお湯を注ぎ入浴の準備を始める。
「当麻いい?」
「ああ、できしだいな」
美琴は、炭酸水を冷蔵庫から出し、グラスに注ぐ。
氷で割りきんきんに
冷やす。その炭酸水を一気に流し込む。

そこへ突然アニソンのような着信がなり、
美琴はスマート・フォンの着信を確認する。
メールの内容を確認する。

「当麻、明日ロンドンで人に会うわ」
「誰?」
「ローズライン・クラックハルト アメリカ合衆国の大統領補佐官よ」
「それは・・つまり」
「ええ大統領が私と会うかどうか決める人よ」
「そうか・・」

「ええ。まあ気楽にいきましょ。米国の運命なんて最悪どうでもいいでしょ」
「でも・・魔術は」
「私には、米国の運命より当麻の命がよっぽど大事、
 ダメならダメでそんなのは 統括理事長が考えればイイ。
 私たちは自分ができることをやろう」

「入浴しよう 当麻」
「ああいいぞ」
「明日から忙しくなる。だから今日くらいゆっくり2人で風呂入ろう」
「抱いてもいいか?」
「正直お願いしたいくらいだわ」
「じゃ」

さほど広くはない浴槽2人で入ればいろいろやばい。
だけど、今は私は少しでも当麻に触れていたい。
少しでも当麻と手をつなぎたい。
明日からはどうなるか予想もつかないのだから。

続く









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