とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第2部 第15話 第三章(3)


8月21日(金)アメリカ東部標準時午前8時

俺は正直いまだに信じられない。
今朝はまだロンドンのホテルで優雅に美琴と朝食をとっていたはずだ。
なのに11時に爆破テロ未遂にあい、時差のいたずらとはいえ、午前8時の
ワシントンに到着し、ヘリに乗っている。

夏の終わりを迎えたワシントンは、PM2.5のせいか少々霞がかかり、晴天
なはずなのに視界は悪い。が晩夏の弱弱しい日差しがかえって蒸し暑さを
感じさせる。

市内の何ケ所からもうもうと煙が上がり、大国アメリカの首都に
容易ならざるテロが発生したことが伺われる。
ヘリにのりながらまとまらない思考を何度も巡らす。
何が起きているかまったく皆目わからない。

美琴は大丈夫だと言うが何が大丈夫か検討もつかない。

まあ・・美琴のことだからなんか考えはあるだろう。
俺は目の前の現実に目を向ける。

だけどなぜか笑いたくなる。余りに非日常すぎてシリアスな局面なのに
笑い飛ばしたくなる自分がいる。CIA本部ね・・・・
映画の主人公みたいな話だ。それは俺だけでなく、この局面を、本来なら
仕切るはずの大統領補佐官も状況が理解できないのか、ただ無言で美琴の
顔色だけを窺っている。

空港から5分。そろそろ到着したようだ。バージニア州ラングレー
ワシントン近郊のスパイ小説に頻繁に登場する、CIA本部だ。
その屋上のヘリポートに到着する。

「美琴誰かいるみたいだな」
「食蜂と・・えーと誰だっけ一度見た記憶があるけど思い出せないわ」
俺と美琴と補佐官はヘリから屋上へ降りる。
美琴は日本語を理解できない補佐官のために標準米語で食蜂に話しを始める。

「食蜂 お疲れ様。大統領は?」
「無事よ。」
「それはよかったわ。ところでその子は?」
「ホワイトハウスを襲撃した首謀者の一人よ。サンドリヨンとか言ってたわね。」
「御坂さんの情報どおり魔術?を使っていたわよ。シンデレラだっけ?」

美琴と食蜂?が交わす会話が全然理解できない。シンデレラ?

「ああ・・思い出した。フランスの魔術師ね。情報が正確でよかったわ」
「あのおもちゃのチート力は使わないで済んだけど。」
「アンタの洗脳力のほうがよっぽどチートよ。本人に12時を過ぎたと誤解させるだけで
そこそこ有名な魔術師を無力化できるんだから」

サンドリヨンは、学園都市製の脳活動を昏倒させる弱電流を流し続けるブレスレットで
両手を拘束され呆けたうつろな顔でうなだれている。
拘束器具のせいで抜け殻のようなサンドリヨンは、CIA職員へ拘束されどこかへ
運ばれる。

俺は可憐な美少女しか見えないサンドリヨンがどうなるか気になり、美琴に確認する。
「美琴、サンドリヨンはどうなるんだ?」
「アメリカ政府が決めることだけど、ホワイトハウスを攻撃しているから、
死刑かな」
「そうか・・」
「まあ・・大統領閣下をお待たせしているし、さっさと中へ入りましょう」

「じゃ・・ローズラインさん、当麻、食蜂入りましょう」
迎えの職員へ案内され屋上から中へ入る。

通された部屋は無数の画面が埋め尽くす、指揮所のような部屋だった。
衛星と監視カメラの映像だろうか。。あちこちとしか形容のしようのない
切り取られた風景で目がちかちかする。

その奥の小さな会議テーブルに、合衆国大統領が着席していた。


大統領の両脇には、勲章で埋め尽くされた恰幅のよい軍人が脇を固める。
大統領は立ち上がり、右手を差し出す。
美琴は、右手を両手に握る。

「御坂美琴さんですか」
「ええ。初めましてロベルト・カッツエ大統領閣下ご無事でなによりです。」
「食蜂さんに命を救われたよ」
「では着席してください」
大統領は、俺たちに着席を促す。大統領は、謝意と経過を簡単に説明した。

ホワイトハウス、国会議事堂が爆破されたテロは、事前に食蜂らの通報により
ほぼ死者が0で済んだ事。
オーレイ・ブルーシエイクとPMCトライデントの密接なつながりと
資金提供の事実が証明されたこと。

PMCトライデントがハワイ占領計画を計画していた事。
すべて証拠と証人がFBIが抑えたこと。
起爆剤を使用してハワイ・キラウエア火山を噴火させようとしていたこと。
合衆国が保有する起爆剤はすべて破壊したことが淡々と告げられた。

「オーレイ・ブルーシェイクはどうなりました?」
「5分前に拳銃で自殺したと、顧問弁護士から電話があった。彼女の莫大な資産が
 口座凍結され、軍法会議にかけられることが決まったからだろう。
 彼女は、大統領である俺を殺し洗脳した副大統領を換え一発逆転を狙ったが
 俺を殺せず自殺したんだろう」

「自殺しましたか・・
 で・・もう一人学園都市外のロシア正教原理主義者の能力者がいたはずですが
 どうなりました?」
「ハワイでB2爆撃機で気化爆弾を使って爆撃したんだが死体が見つからない」
「そうですか・・」
「まあ・・そいつが人間ならば承知のとおり、爆発時に酸素を奪われ数千度の
 高熱で焼け死ぬはずだ」

「ええそうですね」
美琴は一方通行や自分を思い浮かべ、最強クラスの超能力者の反則的な耐久力を
有する場合に気化爆弾程度では死なない可能性を想定するが大統領のまえでは
言わずに流す。
「では事態はほぼ収束したということでよろしいですね」
「ああ」
「では合衆国へ不法入国した学園都市市民を約束どおり強制送還していただきたく
 お願いします。」
「手配しよう」

大統領は強制送還を命じる大統領令にサインをし美琴へみせる。
「では、ワシントン・ダレス空港へ航空機を手配しますので今日中に準備をお願いします」
大統領は美琴を抱擁し、最大限の謝意を示す。
「では御坂さんダレス空港まで送らせますので」
「ご配慮ありがとうございます。では大統領閣下これで失礼致します。」

俺は美琴と名前が思い出せない女性と一緒に退出する。
「食蜂ありがとう」
「御坂さんが書いた台本を再現しただけよ」
「今回は食蜂なしでは何もできなかったわ」
「じゃ・・天井と一緒に学園都市へ帰るわ」
名前を記憶できない少女が、少し悲し気に手をふり去っていく。

「当麻お疲れさま」
「いや・・俺は何もしていない」
「前にも話したけど私は外では能力の使用は制限がある。だから当麻がいると
 安心できる。」
俺は、ロンドンで美琴が明らかにレベル5として、能力を行使したことを思い出すが
スルーする。

「でこれからどうする。」
「多分、グレムリンは私を標的にするでしょうね。」
「え?」
「彼らは既存の特にローマ正教がスキャンダルで動きが取れない状況を使って一気に
 攻勢をかけている。彼らの計画を未然に阻止した私を攻撃対象にするのは間違い
 ないわね。だから長居は禁物さっさと帰るわ」

「それに・・多分起爆剤は全部は処理されていないわ」


「え?」

「核兵器だって結局は、使わないくせに処理しない。ましてやより効果のある先端兵器
 をアメリカ軍が手放すわけないわ」
「美琴悪い・・起爆剤てなんだ?」
「あ・・悪い説明していなかった。ごめんなさい。火山のマグマだまりに外部
 から特殊な爆弾で刺激を与えて噴火を誘導する機器の略称よ」

「え・・そんな事できるのか」
「ええ・・もしハワイのキラウエア火山が最大級の噴火を起こせば島民や観光客合わせて
 数十万人の死者が出たかも。しかも・・問題はそれだけじゃない。アメリカ政府が
 そんな秘密兵器を隠し持ち、しかも管理が不十分でテロリストに強奪され、惨劇が起き
 それを防ぐことができなければどうなったかしらね。」

「そうか・・」
「当麻・・グレムリンはこんなものじゃ済まないわ。もしかしたら起爆剤の
 設計図はもう入手済みかもしれない。
 今回手に入れなくても、ほとぼりが冷めれば他の火山を
 噴火させるかもしれないわ。
 それに火山の噴火だけで済むとは思えない。
 彼らの目的はよくわからない。だけど、オーレイ・ブルーシェイクから
 提供された約1兆ドルという資金の規模から見てとてつもない事を企んでいるのは間違い
 ないわ」

美琴は、当麻の顔を凝視し声を振り絞る。
「もし本当に私が標的になるのなら、私はどこにも逃げられない。
 だから・・当麻・・お願い。私に力を貸して」
俺は美琴の真剣な顔を見て、腹に力を込めて言う。
「俺は美琴に告白されたときから美琴の事しか見ていない。それだけは信じてくれ」
「ありがとう」

 ・・・・・・・

(美琴パート)
私にはわかっていた。当麻へのお願いがいかに無理難題でかつ達成困難な課題か。
表の世界では大国なはずのアメリカを手玉にとるその手腕。
(だけど・・当麻は絶対傷一つつけない。そのためにはどんな手を使う)
「当麻、学園都市へ帰ろう」
「ああ」
私は、当麻の顔を見ながら再度考えをめぐらす。
私個人への攻撃は防ぐことはできるだろう。シミュレーションによれば魔術師という連中
でも11次元まで届く私の防壁は簡単には攻略はできないという結論だし。
敵のラスボス以外なら正直どうでもなる自信はある。だけど・・当麻も含めた私の周りを全部守り切れるのか?

グレムリンは失敗はしたが世界一の大富豪を抱き込みアメリカという表の世界の巨大国家を乗っ取ろうとした。

その背景には、異能に対してただの火力をぶつけ、本領を発揮させないこともあるだろう。
上条当麻は異能には強い。局面さえ限定できれば最強クラス。使えこなせていない八竜
をつかえば、あらゆる異能を無効化できるジョーカー。

だけど、ただの火力には無力な存在。口径9ミリの銃弾が心肺や脳を通過するだけで、死ぬ存在
にしか過ぎない。異能を使う存在以外にはあまりに無能な彼。

私はヘリへ向かいながらさらに考えを纏める。
このまま相手に局面を支配されるままでは、私は上条当麻を含む自分以外のすべてを失う。
だけど上条当麻なしには私は生きていけない。
そんなのはイヤダ。
上条当麻以外に対等な、心を許せる存在のいなかった自分。
能力と学力と財力の向上以外になんの関心もなかった自分へ社会や人類そして愛という
ものを教えてくれた彼。

私は彼と婚約した時から彼を守ると決めたのだ。どんな手段を使っても彼を守る。
私は、腹に力を入れ、彼の手を握る。
「当麻、私は何があってもあなたを守る。だから当麻は私を何があっても助けて」
「いまさらだぞ。婚約者だろう。一緒に戦おう」
ヘリに乗り、ダレス空港に向かう途中私の考えが一つの焦点を結び始める。
(敵が私と当麻を狙うなら、罠をかけられる。起爆剤を使って)
私の頭脳が超高速回転を始め、罠を構築を始める。

 ・・・・・・・・・

日本標準時 8月22日 (土)午前4時 学園都市 国際空港。

正直時間感覚がおかしくなる。
今自分がどこにいて今何時か感覚が曖昧になる。


ついさっきうす曇りの残暑厳しいワシントンダレス空港で、スタバでパンと
コーヒーで簡単にブランチをとっていたはずでは。
超音速機は学園都市の23学区の国際空港にたった
11000kmをたった100分で飛行し駐機スポットへ到着する。

それにしても・・私は隣席の当麻を見る。
当麻は、座席で死んだ魚のような目をしてうなだれている
当麻は対Gの耐性がないせいか、機内で2回、到着して1回
最後は胃液だけを吐いていた。
当麻が右手以外が一般人という事実をあらためて実感する。
当麻は三半規管の感覚を完全に制御できる私(化け物)とは
違う存在であるという事実を認識させられる。

こうゆう日常のトラブルは、普通の世界では圧倒的に有能な私が助けなければならない。
私は当麻をさすり、落ち着かせ、おんぶの要領で当麻を連れて移動する。
外交官パスポートの威力で形だけの入国手続を終え、早朝の学園都市をタクシーで
自宅へ向けて帰る。

タクシーの中で改めて実感する。小さい。
大地という生活のすべての基盤たる地球の小ささを改めて実感する。
たった1時間40分超音速機で移動しただけで裏側に到達する。
直径12756km。でかいようでもそれだけだ。それしかない。
その表面の薄いたった約80kmの大気圏が放射線で満たされた危険な
漆黒の宇宙から、生物を守っているだけだ。

その小さい、宇宙から見れば点にしか過ぎない惑星に、約70億人の全人類が約200の国に
分かれてひしめきあっている。

反問する。正直こんな小さな地球で、戦争なんてやってていいんだろうか?
小六のころ、確かに超荷電粒子砲は打った。
だけど、今全力でもし超荷電粒子砲を撃ったら。私にはわかる。今全力で超荷電粒子砲
をぶっ飛ばせば制御ができる自信がない。たぶん暴発する。
たった5000兆トンしかない地球大気なんて一瞬にして全部プラズマになりかねない。

もし今超荷電粒子砲を全力で打てば、私の隠れた能力を封印し、
私を人の世界につなぎとめていた封印が解除される。
レベル6なんてものでは終わらない何かが起こる。

私は思考は堂々めぐりを始める。だけど・・
(まあ・いい悩むより情勢を分析しよう当麻と2人で)

早朝なので車両もほない。まったく渋滞もなく、タクシーは
スムーズに移動し、空港から25分で自宅周辺へ移動する。
当麻は多少回復したのか、目に光が戻る。
「美琴、介抱ありがとう」
「いいのよ。でもまだ無理しないでね、コンビニで買い物するけど、
なんか欲しい?」
「じゃ・・エビアン500mlとサケのおにぎり2つ買ってきてくれないか?」
「わかった。私は、昼飯も買ってくる」

まだ体調が完全には回復してない当麻を自宅へ返し、私が買い物を済ます。
久しぶりの自宅だ。疲労物質を分解していても、体のどこかに疲れが残っている
気がするのは気のせいだろうか。

それでも、消化不良感は否めないが一応アメリカの国家転覆は阻止し、天井は
連れ戻した。任務は終わり。今日一日は当麻に甘えよう。 
2人でぶっ壊れた体内時計で全く食欲はないがほとんど義務的に朝食を終え、
私は当麻にささやきかける。
「当麻、今日はイイ?」
「今日もの間違いだろう、美琴は朝早くから盛んだね」
「ええ・・やらないの。いじわる」
「やらないわけないだろう。でも最初にまず風呂だな」
「あ・・そうね。一緒に入ろう」
「やっぱり自宅のふろは一番ね」
当麻とじゃれあうことでささくれだった神経が一気にほぐれる。

互いに体を洗いあい、皮膚を重ね合う。人肌の感覚が、生きているという想いを
募らせる。
「当麻。。。やろう」
「ああ・・そうだな。美琴のおかげで俺も元気が出てきた。」
「じゃ・・」
2人は久々に自宅のベットに入り、お互いの体温を確かめあう。
問題は何もかたづいていない。
だけど、今はただ当麻に甘えたい。
そんな気がした。










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