とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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第2部 第18話 第三章(6)


8月27日 (木) 5時

久々に表面上は平穏な日々が戻り、規則正しいいつも生活が戻った。
いつもどおり朝5時に起きて、散歩を始める。

そう・・表面上は何にも変わらない。拾いたくもない電磁波とか、思念とか
溢れんばかりの情報を意識からシャットアウトしているから。
でも・・そろそろ動こう。自分から。必要な情報は有り余るほどあるんだから。

「当麻おはよう」
「美琴おはよう。いつも早いな。散歩はどうだ。」
「一緒に歩く?でもだいぶ日の出が遅くなってつまんないわ」
「もう秋だな。」
「ええ・・どう宿題さっさと終えて正解でしょう?今日も慌てなくて済む」

「ああ そうだな食事するか?」
「ありがとう。」
いつもと同じ、みそ汁の香りの漂う香ばしい食事。塩鮭のやわらかい塩味がアクセント
をつける。ごはんが進み、しっかり噛まずに5分ほどで食べ終えてしまう。
私達は食器洗浄機へ食器を運びスイッチを回す。
「本当おいしいわ」
「お粗末様でした」

「で美琴体調はどうだ。封印解除後は」
「ふふ・・もっと人外へなるかと思ったけど、以外に普通でびっくりしているわ」
「そうか・・まあもう・」
「そうね。もともと人外みたいなもんだったし今更ね。だけど、そろそろ動き出すかな」
「へ?」
「関係各位へ表見訪問よ まず10時に窓のないビルね」
「へ?まだ早くないか。」
「いいのよ。どうせ、いつかはいかなきゃないし」
(まあ 再確認にしかすぎないけどね。お互い)

 ・・・・・・・・・・

10時 窓のないビル
本来なら上条当麻は窓のないビルへ入場することはできない。
テレポータの案内人なしには、侵入する事はかなわない窓のないビル。
だが上条当麻はテレポータ同伴では移動できない。
だから侵入できないはずだった。
だが、絶対能力者の端くれになり、プラズマ操作の延長として零次元の
極点を使いこなせるようになった私にとって、
もはや距離や空間はなんの意味ももたない。
(まあ、絶対能力者になった目的の一つは距離と空間の克服よね。)
「当麻、初めてよね。統括理事長にご対面するのは」
「ああ・・美琴。一応聞くけどアポはとっているよな」
「ええ、心配?そこまで無鉄砲じゃないわよ。じゃいこう」
窓のないビルまでの約5kmの空間を瞬間で移動し、1cm未満の誤差で
到着する。

「ついたわよ」
「ああ」
「美琴ここか?なんか倉庫か工場みたいな雑然とした部屋だけど」
「ええそうよ。あのビーカで生命維持活動を行っている人が
統括理事長アレイスターよ」
私は当麻のものおじしない姿勢に改めて感心する。

「久しぶりだな。御坂美琴。」
「おかげ様で、封印を解くことができました」
「もう案内人も不要か。出世したな・・君も。で今日は用件はそれだけか?」
感情もあるかどうかわからない、人間アレイスターはビーカーの中で薄ら笑いのような
表情をする。本来なら案内人なしに侵入できる存在はとてつもないイレギュラーな
はずだが、なんら気にした様子もない。


「上条当麻の件で報告があります」
「は?」
水槽の中で表情ははっきりしないが、あれほど、飄々していたアレイスターは少し興味ぶかそうに
話を聞いている。
「当麻を私のものにします」
「止めはしないが、無謀な話だな。リスクは承知しているはずだが」
「プランの大幅な短縮になるかと思いますが」
「もう少し君は理性的で、合理的な人物かと思っていたが」
私はジャブを放つ。効果は多分たいしたことはないが。
「ふふ・・娘さんは残念なことでしたね」
水槽の中でアレイスタの表情が若干曇ったような気もしたが瞬間的に元に戻った。

「ハア・・ああそうか私の記録を読んだか」
「ええ、だから手を結びましょう。」
「正気か。相手は・・・」
「魔神達・・ええ・・・規格外の力を持ち、いるだけでこの世界が壊れる存在」
私はさらにジャブを放つ。今度こそ少しは効果があるだろう。
「A.A.Aの空白部門は解読しました」
それまで飄々と小娘のざれ事を聞くように不愛想な手術服の「人間」が
少し表情を変える。
「アレは・・別に・・君の管轄じゃないが」
「そうですか・・・じゃ管理がずさんだったんですね」
私は、切り札の効き目を確かめるように念を押す。
(ふふ・・当麻はびっくりしているわね)
「何が希望だ」
「当麻と私の婚約を認めていただければ何もありません」

基本的には表情がないはずの、緑衣の「人間」が苦虫をかみつぶした顔をする。
「プランは変えようがない」
「465回も修正されたようですが、変更はないと?」
人間の声音がらしくもなく少々荒々しくなる。
「どうせわかっているだろう。プランの最終目的が変えようがないなんて」

私はさらにとどめを刺す。どうせ傲慢なアレイスターだ、少々きつく言わないと効果
なんかないだろう。
「プランが上条当麻の承諾を得ていれば・・ですが。実際はどうですか?
 実際の話当麻はプランなど知りません。それに彼の仕組まれた不幸は?」
当麻の顔色がどんどん悪くなる。自分の知らないところで勝手に
運命がもてあそばれていたこ気が付かされた彼の心中は穏やかではないだろう。
だけど、自分の運命は自分で切り開くしかない。それに彼には誰にもない力がある。
今はまだ早いけど、この目のまえの男をぶち殺すのもそう遠くはないだろう。
アレイスタは、当麻の怒りには気がつかないふりをしているのか冗長な話を続ける。

「遺伝や才能や、運命なんて自分の意思で左右できるのかね?」
私はアレイスターのくどい話に飽きてきたので、当麻に話をふる。
「当麻、アレイスター閣下は当麻の意思なんて関係なく、自分の人形になれといいたい
 らしいけどどうする?」
「それは、ごめんだな。」
表情がないはずのアレイスターの表情が歪み始めるのを私は見逃さない。
私はさらにダメ押しをする。

「そうよね。この人の操り人形なんてごめんよね」
「ああ・・・・そうだな。」
「当麻・・もうこんな学園都市でない?」
「ああ?」
「はっきり言って上条当麻に学園都市はなんかメリットある?」
「うーん・・正直微妙だな」
「当麻はこの水槽の人にとっては大事なようだけど、
その割には待遇よくないわよね」
「レベル0で奨学金は雀の涙。そのくせプランの中核で本人がしらないところで
 その右手のみが都合よくつかわれる。都合いいわよね。」

アレイスターが激怒し始める。ラスボスなはずなのに沸点の低さに驚かされる。
きっと苦言する人も対等な立場で助言する人もいないんだろうなと
妙に同情する。
「まったく、当麻・・・この水槽の人怒ったみたいよ」
「え?」
「当麻、プランしりたい?」
「美琴・・今朝言ったけど。今はイイ。他人がどう考えようが、俺は俺の
 考える通りするから。もちろん美琴が大事だ」
「ありがとう。」
(長居は無用ね。そろそろいいか。情報が正しいことはわかったし)


「アレイスター、上条当麻はアンタではなく私を選びました。素直に事実を受け
 入れてください。ではさようなら」
私は、それだけ言い上条当麻を連れて空間ごと窓のないビルを立ち去った。

 ・・・・・・・・・

当麻は、若干呆然としかし少し怒ったような顔で私を見つめる。
「美琴俺はどうしたらいい」
「ふふ・・一緒に考えよう。だけど当麻が思っているほど不幸じゃないわよ」
「ああそうだな。」
「いつまでも一緒よ」
私はなんの妨害も受けず、自宅へおそらくは0.01秒未満で移動する。
5kmなんて距離になんの意味もない。

空間移動というのは麻薬のように便利な能力だ。
正直、これが使えるならもう超荷電粒子砲なんていらない。
窓のないビルもイエローケーキの放射性廃棄物何万トンも送付された日
には使いようもない。
私はアレイスターの居城の意外な脆弱性におどろかされる。
あの結標は4.5トン転移できた。
もし彼女が窓のないビル内へ核弾頭を転送したらどうなっていたんだろう?
彼女が神の右席と呼ばれるローマ正教最高の魔術師と結託したら。
私は彼の立場で考えてみる。魔神や、世界中の魔術師に命を狙われ、水槽の
中で生存を保つ彼の立場は決して安泰じゃない。
(ふふ・・彼もおちおちしてられないわね。)

アレイスターを支えているには復讐。それもかって卑称だった自分が受けた屈辱
への恨みと嫉みだ。
私は、入手した知識と評判から自分なりにアレイスター像をプロファイルする。
アレイスターの復讐は子供じみている。やることも目的も。そんなプランに
振り回されるのは正直ごめんだ。だけど、彼の執念が、彼の神への恨みがこの街を作り、
科学万能の世界を作りつつある。70億人類の多くは十字教徒も含め
直接・間接に彼の作り出した科学の恩恵を受けている。

私なんか傍目から見れば彼の作った世界で最上層の受益者だ。
富、名声、能力一般市民ではありえないほどの、地位を得ているのも
正直アレイスターのおかげだろう。だから単純に敵として切り捨てるのは
少なくとも損だ。
少なくとも彼には今のところ上条当麻を保護する理由はあるのだから、敵ではない。
いらなくなればポイ捨てだろうけど、今は味方にできる。
だけどいまひとつ思考がまとまらない。なまじ知りすぎたがゆえにどうも思考が
まとまらない。力技で少々無理ならどうでもなる自負もあり選択肢を絞れない。

だけど・・・こうゆうときに原点に返ろう。
うだうだ悩んでもしょうがない。本人に聞いてみよう。
「当麻 アレイスターはどうだった」
「あんまり性格はよくねえな・・でも哀れなやつだな」
「え?そう?」
「誰にも本音がいえねえし、友達もいねえ、つまんねえやつだ」
「さすがね・・一発で見抜くなんて。でも学園都市幹部には独裁として恐れられて
 いるのよ。私は対面するのは3度目だけど、
1回目と2回目は恐怖で足が震えていたわよ」
「美琴がね・・信じられねえな。でも今日はずいぶん言いたいこと言っていたじゃない」
「当麻のおかげよ。アンタはアレイスターのお気に入りなのよ。私と違ってね。」

「お気に入りの割には待遇はよくねえな・・」
「ふふ・・彼はツンデレさんかもね。好きな人ほどわざと冷たくする。」
しゃべり終わった後美琴は態度を改め、表情を変える。

「たぶん、これから学園都市にいろいろ起こる。当麻もイレギュラー、私もイレギュラー
ただの男女の交わりというわけにはいかない。妨害もあるし、互いに命も狙われる。
 それでもいい?やめるなら今のうちよ?」
「美琴・・わかりきったことを。アレイスターの差し出した手をお互いに跳ねのけた
 時点で、ルビコン川は越えたんだよ」
「さすがね・・当麻は全部わかっていたのね。頼もしいわ。」
私は当麻の表情にいつも違う強い意志の力を感じ、安堵と安心を感じる。
一人では到底太刀打ちできない、独裁者でもなんとかなりそうな気がするのが
不思議だ。上条当麻には、周りの人間を安心させる能力がある。
そんな彼でも不安に思うのだろうか、私に質問をする。

「でもどうする。相手は独裁者だぞ、美琴だけじゃ太刀打ちできないだろう?」
「別に私だけが、なんかする必要ある?」
「え?」
「敵の敵は味方。敵の味方を減らし、敵を増やす」
「それは・・」
「まず一方通行及び木原幻生と和解しましょ」


「はあ?美琴の敵だろう。アイツらは?」
「だから仲良くする必要があるのよ。行くわよ」
私はpcから位置情報をcm単位でダウンロードし、演算を終え、まるで最近
覚えたゲームのように、楽しんで空間移動を実行する。
便利すぎる能力は人を堕落させるわね。。つくづく。

一方通行は保釈後、私の手配したマンションに潜伏している。
学校に所属しない彼は、実験終了後は居場所もなく、
なおかつ、預金口座は凍結され、実験の失敗と
操車場破壊で生じた8兆円の借金を負わされている。
このままいけば暗部直行、アレイスターの奴隷確定。
だけど・・いやだから使い道がある。
倒産した会社は格安で買える。人間も同じだ。
落ちた偶像はサルベージできる。

「ひさしぶりね。相変わらず悪人づらが似合うわね。この学区のアンダーラインは
 無効化しているから盗聴の恐れはないわ。好き勝手にしゃべっていいわよ」
「勝者は余裕だなア、で今日はなんお用だア?美琴ちゃん」
「単刀直入に言う。手を組みましょう」
「はア、正気か・・俺の現状を知っているのか?」
「ええ・・器物損壊と殺人未遂で刑事訴追中の犯罪者。
落ちた偶像、8兆円の借金まみれの
 破産者」
「はっきり言われるとつれえなア。でそんな俺に完全無欠の1位サマが手を組むと?」
「ええ。私と当麻に力を貸して」

「はア・・まアいいけど。どうせ敵はアレイスターだろう。」
「ええ・・プランのかなめの当麻はアレイスターに理由もあかされずすりつぶされようと
 していた・」
突然当麻が私の会話に口を挟む
「美琴俺にまかせてくれ」
「一方通行・・俺は、お前を・・美琴のクローンを1万人殺したテメエをゆるせねえ
 だけど、美琴からレベル5に関するドロドロとした話しを聞かされ、てめえの事情
 も多少は理解できる。だけど・・テメエは美琴のようにクローンの実験を断る
 力も、その力をなぜこの街を変えることになぜつかえねえんだ。てめえには
 力もある。才能もある。テメエはありあまる、誰もがうらやむ力と才能
 を今度こそまっとなことにつかえねえか」
「三下・・ああそうだなア。だけど・・俺はもう終わりだ。借金は簡単には返せねエ
 罪も消えねエ。終わりなんだよオ。」

当麻は幻想殺しで消せない8兆円という借金の現実に打ちのめされる。
異能にはジョーカのような力を持つ彼も現実の借金にはなすすべがない。
だが、彼の婚約者は現実の世界でもチート級に有能だったのを彼は失念していた。
彼のチートな婚約者は目の玉の飛び出る提案を行う。

「一方通行、借金ならアンタが力を貸すなら私が代位弁済するわよ」
「美琴・・いいのか。」
「当麻いいのよ。金なんて。稼げばいいのよ。」
「一方通行・・力を貸して。私と当麻はこのままでは反逆者で最悪暗部送りよ。だけど
 アンタが力を貸してくれれば、アレイスターも簡単には手だしできないわ」
「俺なんかで本当にいいのかア・・」
「アンタしかいないのよ。お願い力を貸して」
私は、生まれて初めて、床にひざまづき土下座をする。愛する当麻のためならなんでも
する。その覚悟が私の背中を押す。

「まア、あの不遜なアレイスターに一泡吹かせられれば、気分はわるかアネエなア」
「いいのね。」
「可愛い美琴ちゃんのたのみだ。契約成立だ」
「ありがとう。すぐに統括理事会へ8兆円振り込むわ」
私は契約事項を記載した契約書を鞄から取り出し、一方通行にサインを
要求する。
「さすがア・・レベル5のただ一人の法律家兼商売人だなア。契約書ねエ 食えねえなア」
「返済は無期限、無利子。いわゆる出世払いよ。期待しないでまっているわ」
「今の俺に選択肢はなさそうだな。」
「ええ。。8兆円分は稼いでもらうわよ」
一方通行にサインさせ、私は書類を鞄へ収納する。
さあ当麻次は幻生先生よ。
私は、下の階にかくまっている木原幻生の居宅へ向かう。


 ・・・・・・・・・・・・

私は、仕事を終え、自宅へ戻る。今日は、有意義な1日だった。
病みつきになりつつある瞬間移動で自宅へ帰る。
(便利すぎる。運動不足になるなこれ)
「当麻ただいま」
「美琴お疲れ」
「今日はありがとう」
「いや・・結局美琴の金がなければどうもならなかった」
「金なんて大事だけど相対的には小さい問題よ。本人を説得できたこそ
 やっと金で解決できるのよ」
「そうか」
「美琴、俺たちどうなるんだろうな」
「まあなんとかなるでしょ手は打ったからさ・・アレイスターが
簡単には手をだせない状況さえ作れば御の字よ」
「それに・・まあ私にまかせなさい。それじゃ・・風呂でも一緒に入ろうか」
「美琴がこんな甘えん坊なんて、誰もしらねえだろうな」
「ふふ・・こんな姿をみせるのは当麻だけよ、じゃ・・ダーリン」
私は当麻の背中へ飛びつき本能のままに甘える。
だけど・・もうすぐ雌雄を決する日がくる。そんな気がした。

続く










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