とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第2部 第20話 第三章(8)


8月30日(日)5時

私は、日の出前の薄明の学園都市を散歩する。
あまり治安のよくない学園都市ではあるが、さすがに治安のよいこの地域では、
酔っ払いが吐き散らかすこともなく、道路は綺麗に片付いている。

3日坊主よね・・最初は継続して一緒に朝の散歩するとか言っていたのに、結局
3日しか続かなかった。「恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる」なんて
言葉を思い出す。価値観の異なる男女がひとつ屋根元暮らせば見たくないものも
見えてくる。 だけど。。。それでも知らないよりは知ったほうがいい。と自分は思う。
知ったうえで私は理解する。上条当麻はすべての女に優しい。それは別に
私だけではないのだ。彼は私を大事にすると口では言う。

だけど、彼が目のまえに困った美少女がいれば、私の約束を反故にしても結局は
不幸な美少女を助けることをためらうことはないだろう。私は確信がある。
惚れた弱みそんな彼を愛した以上、それを理解したうえで付き合うしかない。
我ながら難儀で面倒くさい奴を愛してしまったことを自嘲する。

30分ゆっくりと歩行者も車両もいない街を歩くうちに、眠気はすっかり冷め、
やる気が充満してくる。
久々だな・・あまりに眠れなかった。所詮はたかだか婚約式、手配も準備も全部
終わり、ただその日を待つだけなのに妙に心が高ぶる。

神サマもどきの力を持つ私は、感情なんていくらでも制御できるし、生体電気を操れば
強制的に5秒で熟睡できる。90分寝れば疲労は完全に抜ける。

だけど、今日はそれをしたくなかった。自然のままに、じわじわと当麻への想いを高め
当日を迎えたかった。だから、午前3時までまんじりもせず、人生の軌跡について
振り返る。他の学生に比べてくそ忙しいけど、まずは幸福な人生だったと自負はする。
こんな・・化け物みたいな能力だって、それがあるからこそ、当麻と付き合うことが
できた。今はそう考えよう。

それにしても自分で決めてことだが、14歳で婚約ね・・まあ上流階級の多い常盤台では、
幼年時から家同士の結びつきで許婚が決まっていることは少なくない。だからすでに
両家公認のカップルがあり婚約式を15であげる場合もある。私が婚約式を挙式しようと
思った背景に私がそうゆう背景の中で成長した事は無関係ではないだろう。

それに14は子供だろうか?
外の世界ではそうかもしれない。だけど、ほぼすべての学生が小学時代に親離れした
学園都市。しかも大学院相当の教育を終えた私には、14だから子供という理屈が
理解しがたい。すでにほぼフルタイムで仕事をし、管理職でもある私が子供というの
も承服しがたい話だ。

まあ自分にも歳相応に子供らしい趣味があるところは、否定はしないが、それと
合理的な判断ができるできないは別だろうと思う。まあ・・いい。
2年間の試運転期間だと割り切ればそれでいい。
社会的に2人が婚約していると認識させることが大事なのだから。

それに・・2年が長い。長すぎるのだから。
さあ今日は忙しいわね。そろそろ起こそう。

「当麻おはよう」
「ああ・今起きた。ごめん寝過ごしてしまった」
「ふふ・・まったく3日坊主ね。まあいいわ。まったくシミユレータにのめり込んじゃって」
「ふ・・まあ戦闘は男のロマンだよな」
「当麻て・・負けず嫌いなのね。そんなにAIモードの私に勝ちたいんだ」
「0勝735敗じゃね・・それにしてもずいぶんリアルなAIモードだな?」

「まあ、脳波の分析結果を反映し、思考パターンを極限まで再現しているからね。
 それを最新の量子コンピュータで演算しているというわけ」
「へえ・・データは何人分あるの?」
「約70億人」
「はあ・・?まさか全人類分」
「ええ・兵器とか、全地球の最新の地図情報も反映させているわ」
「だから戦争とか、原子力発電所の事故、地震・火山噴火や、気象災害も再現できるわよ」
「それはすごいな・・」

「まあ喜んでくれてうれしいわね。ところで今日は忙しいから無理
 に朝食作らなくてもいいわよ」
「いいよ。朝食は大事だ。30分ほどで作るよ」


「悪いわね」
私が思っていたより、当麻はマメで手の込んだ朝食を手際よく作ってくれる。
この辺は私が見習わなければならないことだ。
9月以降家政婦を雇うことも検討したが
他人を自宅に入れる煩わしさを考えると二の足を踏む。
まあ・・しばらくはいいか。私は30分間ノート・パソコンを開く、
式次第と出席者リストを確認する。以外に人が集まり困惑する。
(こんな大事にするつもりはなかったのに・・)
お礼状の文面とメールの発送リストを作成し、記念品の発送手配を終え、
ノートパソコンを閉じる。式典会場の見積書を確認し、費用の確認をする。

さて30分経過か・・どれどれ
「美琴朝食出来たぞ」
「ありがとう。すごいわね・・当麻まじめな話料理人なれるわよ。
手際はいいし、彩どりなんてすごいわ」
「まあ召し上がれ」
「ではありがたくいただきます。」
わたしは、みそ汁をすすりながら、当麻と会話を始める。
学園都市での学生は、高校生くらいのカップルは珍しくないとも聞く。
外の世界より学園都市の学生の自立、親離れは早いとも聞く。

それにしても・・・
「当麻、ごめんね。急に婚約式なんて」
「いいよ。どうせいづれはするつもりだったんだろう」
「ふふ・・まあなんでも形からね」
「しかしま・・婚約指輪を女性が男性に買うなんて普通逆だろう?」
「まあ硬いことはいわないのよ。男女平等なんだから」
「ああ・・そうだな」
「しかしまあ・・よくこんな突然に告知して集まったな」
当麻は出席者リストを見て嘆息する。A4の紙に約20Pにびっしり記載された
出席者の数に目を丸くする。

「最悪両家両親と私たちだけでもやるつもりだったけど」
「4次会までやるのか・・出席者計1000名ね・・」
「告知メールは常盤台中学の生徒と職員全員、研究所職員に送ったけど
 全部で400名ほどかな。でもびっくりしたわ。送った人数より
 出席者のほうが多いなんて」
「まあ美琴は人気あるからな。」
「そう・・?でも当麻のご学友も200名ほど出席予定よ。
ほとんど告知していないのに」
「いや・・多分土御門のせいだ」

「まさか・・?」
「そのまさかだよ」
「当麻悪い事したわね」
「まあ・・いいさ。どうせ美琴の婚約は俺の学校では
知れ渡ってしまった事だし。」
「大丈夫?こんな指輪つけて?」
「結婚指輪と勘違いするやつが出そうだな」
「ふふ・・私も同じものつけるけど」
「え?」
「民法で籍を入れることができないから婚約という体裁をとるだけで
私はもう結婚するつもりよ?」
「まあ同棲しているしな」
「同棲・・いやらしい当麻。でもたったまだ1月なのよね。同居して」
「ああ・・、たった1月でも美琴のいろんな面が見れてよかったよ」

「ふふ・・お嬢様だと思ったらがさつで幻滅した?」
「いや・・。美琴は全然がさつじゃないよ。美琴は謙遜しすぎだと思うけど」
「ほめてくれてありがとう。私は当麻といると心が落ち着くわ」
「俺も同じだよ。今日は式の段取りお疲れさまだったな」
「どう致しまして。演出は期待してね」
「へ?なんか怖いな・・」
「まあ常識より少しばかり面白いだけよ」
「常識ね・・まあ飽きさせない工夫は楽しみにしているよ」
私は食事を終え、食器を食器洗浄機へ入れ電動歯ブラシで歯垢を入念に取り除く。

「じゃ・・11時の式のまえにうち合わせをするから先に式場へ行くわね」
「ああ」
「10時には到着してね。今日は人助けもほどほどにね」
「わかった」

 ・・・・・・

常盤台中学談話室


「おはよう。食蜂」
「おはよう。御坂さん」
「天井の後始末の件ありがとう」
「まったく・・面倒くさい仕事は押し付け力発揮はダメダゾ」
「ごめんなさい。操祈。いつも操祈に甘えて」
私は内密な話をするためファーストネームに切り替える。
食蜂はその変化に驚きの表情を浮かべる。
いつものふざけた少々甘ったれた表情をシリアスな表情へシフトさせる。
「いいわよ。美琴にはいろいろ世話にはなっているし、お互い様。」

「ねえ・・操折・・当麻を奪うけどごめんね」
「知っていたの?」
「ええ・・最初からね。3月前に当麻にあったその日に当麻の過去は調べ上げたのよ」
「美琴は抜け目ないのね。でも・・美琴にとられたならしょうがないかな。」
「操折の当麻への想いは知っていたけど、私の当麻への想いも膨らんでもうどうしようも
 なかった。ごめんなさい」
「まあ・・でもまだ結婚まではあきらめきれないかもね。」
私は、当麻への食蜂の想いを同じ女として理解し、その気持ちの重さに心が重くなる。
上条当麻という稀代の旗男の唯一になることが多くの不幸な女の心の支えを奪う事実に
心がかき乱される。だけど・・一人が幸せになることは代償なしにはなしえないと
私は腹をくくる。そして、食蜂に宣戦布告する。

「私は当麻を何があっても守るわ。」
「だけど・・アレイスターを敵に回して勝ち目はないわよ」
「敵・・?。あ・・そう見えるんだ?」
「へ?」
「学園都市の要路に工作員を確保している操折にそう見えるんだ。私と彼は妥協したのよ」

「は?」
「金持ち争わずとも言うわね」
「ふーん。美琴は変わったわね」
「みさき・・守るものができれば人は変わるわよ」
「上条さんによろしくね」
「ありがとう。あとは式でね。司会宜しく。」
私は、食蜂の心の悲鳴を聞く儀式を終え、婚約式に臨む。

婚約式(一次式場)

私はいらいらしている。あの馬鹿・・
何度も何度も時刻を確認する。脳時計、電波時計、式場の時計すべてが10時55分を示す。
(何やっているのよ。・・あの馬鹿)
まさかこの女が一番大事にする儀式のひとつで、5分前にこないなんて。
勿論、上条当麻の位置もつかんでいる、トラブルもアンダーラインで把握している。
だから私が介入すれば一発で済む話だが、あえて介入しない。
意地悪い話だが、私の経験上その人間の信頼性は、言葉ではなく行動で判断するものと
認識している。こんな場面で約束を守れない奴は信頼にたらないと思っている。

とはいえ・・私のメンツをつぶされるのも困る。
しょうがない・・。式場までエントランスでエレベータ待ちをする上条当麻を
無理やりテレポートさせようと時計を見ながら、計算する。
だが・・運命は彼を見捨てず、開始30秒前に上条当麻はぜえぜえと息を切らせながら
なんとか時間内に到着する。私が新調したフォーマルスーツは
喧嘩でもしたようによれよれになり、背中からは汗は染み出し、まるで会議に
遅刻しないように慌てて到着した勤め人のような恰好に思わず、出席者がくすくす笑う。
(まあいい間に合ったんだから、尋問は後よ)

司会の食蜂操折が演壇に立ち、婚約式の開会を告げる。
「では、時間となりました、これより上条当麻と御坂美琴の婚約式を始めます」

「まず、出席者の皆さまご起立お願いします」
約300名ほどの出席者が一斉に立ち上がる
「日本国国家斉唱」
まったく・・なんのイベントなんだか。式次第を書いた1週間前の私のテンションに
苦笑する。
食蜂のいつもとは違う、語尾を伸ばす声調ではなく澄んだよく通る声でキビキビ議事を
進行する。
「では御着席ください」

「これより上条当麻と御坂美琴から婚約の宣誓を行います。両人は証人の元へ」
証人は、所長の知り合いで統括理事の親船最中である。1週間前に婚約式を企画した時
にダメ元でお願いしたが、快く受け入れてくれた。


(まるで結婚式見たいね。そう・・あと2年なんてまてないわ)

「では上条当麻殿宣誓を」
当麻は、少し深呼吸をして、手を握り腹に力をこめしゃべり始める。
「私は、証人の親船理事、ご多忙中のところ列席いただきました皆様に心より感謝申し上げます。
私はいまだ若輩の身であり、学生で所帯を構える資力はありません。ですが、もう
御坂美琴さんへの想いを抑えることはできません。本日皆さまのまえで、民法で婚姻できる
その日に婚姻することを誓います。きたるその日には御坂美琴の伴侶たる立派な男になり
必ず皆さまの前で結婚式を行いますので、未熟ではありますがご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします。」

今まで粛々と議事進行を進めていた食蜂の目にわずかに涙が浮かぶのを私は見逃さない。
本人は隠しているつもりだろうが、私の目をごまかすことはできない。食蜂は淡々と、だがかすかに声を震わせて私を指名する。
「では御坂美琴殿宣誓を」

「本日、ご多忙中の中で証人を引き受けていただきました親船理事に感謝御礼
 申し上げます。
 御出席の皆さま、ご多忙中のところご出席いただき誠にありがとうございます。
 本日私御坂美琴と上条当麻は、2年後の婚姻を誓約致します。まだ若い2人では
 ありますが、手をつなぎ、2人であらゆる困難に打ち勝ち、誰にも負けない家庭
 を築いていくことを誓います。どうかまだ若い私達にご指導、ご鞭撻のほど宜し
 くお願いします。」
親船理事は、私が作成した婚約誓約書を机の上に置く。

「それでは、上条当麻殿、御坂美琴殿婚約誓約書に署名願います。」
まず私がサインし、その上に当麻がサインをする。こうして婚約は正式に成立する。

「では、婚約の証としてエンゲージリングを取り交わします」
私と当麻は、あらかじめ用意したエンゲージリングをまず私が当麻にはめ、当麻が私に
はめる。私は心の中で女としての喜びが膨らみ始める。だけど私の心は喜びだけではない。

私は、自分の選択の負の側面を忘れることはない。私が当麻を手に入れたことは、
食蜂をはじめとする不幸だった少女の希望を奪うことになるのだ。だけど・・全員が幸福になることはできない。
だったら、私が当麻を愛し、当麻が私を愛することが贖罪なのだと割り切る。

(そうよ。さいは投げられたのよ。当麻を奪った私は誰よりも幸せにならないといけない)
そして式は最後の新郎から新婦へのキスと場面は切り替わる。
「では最後に上条さんから御坂さんへ誓いのキスをお願いします」
食蜂の声にかすかな震えが混じる。同じ学校のライバルに初恋の相手を告白することもできずに
奪われる女の気持ちはいかほどのものだろうか私には想像もできない。

もう何度も、今では毎日の習慣のように行っている接吻。だけど今日ばかりは全く別の
神聖なものに感ずる。

当麻は、口を合わせる前に一瞬間を置き、らしくもなく私をじらせる。この旗男は、こうゆう
ことを自然にできるからずるいのだ。だけど・・当麻の自然に女の心をつかむやさしさに
私はメロメロになったんだ。だから・・・

当麻はためらいを振り切り、一気に私の口に自分の口を合わせる。
熱い物が私の口の中で広がり当麻の味が広がる。
(激しい・・当麻てこんなにラテンだったんだ)
たちまち私の全身に電撃のような奔流が流れ、体が熱くなる。
約5秒・・その5秒が長い。だがそろそろ周りの視線が痛い。潮時を感じ私は終わらせる。

「当麻そろそろいいかな」
「ああそうだな」

「ご出席の皆さま、これにて婚約式はつつがなく終了致します。2人の門出を
祝し、ご起立ください」
そして、私と当麻はバージンロードを結婚行進曲のBGMの中を退場する。
まるで結婚式のような、婚約式はつつがなく終わる。

「ではひき続き、2人の婚約を祝して食事会へ移行します。来賓に皆さま御着席ください」

私とウエディングドレスを脱ぎ、当麻はフォーマルを脱ぎ、通常のスーツへ着替える。
急ぎ、式場へ戻る。

すでに、出席者は食事会を始めているが、入場のさいには紹介される。
ブッフェ形式なので、各々好きな料理をとりわけている。

私と当麻をおのおのビール瓶をもち生ビールを継ぎまわる。


ひと段落し、着席する。やや緊張しているせいかあまり食欲はない。
それでも、ローストビーフと、ピラフ、伊勢海老、サイコロステーキと小皿にとりわけ
当麻と食べ始める。当麻は腹が減っただろうか、机一面にさらを広げ
がっつきはじめる。
「おなかすいた?」
「ああ・・美琴は小食だな」
「うーん、正直な話あまり食欲ないわね。まだ深夜までいろいろやることあるし」
「美琴・・あんまり気張ると後が大変だぞ」
話を始めるが、出席者が入れ替わりたちかわりはなしにくる。
改めて気が付くが、人が社会で生きるということは多くの人とのつながりなしに
生きていくことはできないということだ。いくら力があろうが、
この星のすべてを吹っ飛ばせる力があろうが、それは変わらない。

だから・・私は一人ひとりのつながりを大事にしたい。
だから・・頑張る。一人ひとりは小さくともそのつながる力が、人類を変えると
信じて、生きていく。面倒くさくても泥くさくても、一歩一歩問題を解決していくのだと。
90分の食事会は瞬く間に終わり、中締めを行い、出席者が帰路へつき始める。
私と当麻は300名近い来賓一人ひとりと握手をする。

パパ、ママとは抱擁を交わし、感極まり、がらでもなく泣く。
当麻のご両親には、私が当麻を守りますなんていちゃった。
普通は逆だろうにご両親が違和感を持たない。そうね。今は私の稼ぎで当麻を
養うのだから当麻が経済的に自立するまでは私が当麻を守ることになる。

でも・・そんなことは些細な問題なんだ。私の心が当麻に依存しているんだから。

2次会から4次会まではっちゃけた。
JC、JKが大挙して群れればトラブルのひとつやふたつは起こる。
常盤台のお嬢様も、とある高校の生徒も、未成年のくせに大酒を飲むやつが
出てくる。だけどなんとか騒がしい行事をこなし、全員を無事に返し終える。

だけど。。私はどんちゃん騒ぎの中でもとある高校の女子生徒の多くの
ため息を感じる。上条当麻へ思慕の念を抱く女の子達の諦めきれない
ため息を。

私が、レベル5だから食ってかかる子はさすがにいない。
能力至上主義の学園都市で雲の上のレベル5に喧嘩を売る馬鹿はそうはいない。
しかも堂々と上条当麻を婚約者として、密着する私に・・

でも、明らかに彼女たちは心の底では諦めきっていない。
(これは安心できないわね。)改めて上条当麻の恐ろしさをひしひしと感じる。
私がもたもたしていたら危なかった。婚約式をやってよかったと本当にそう思う。

自宅へ帰り、見違えるほどたくましくなった当麻に甘える。
私の欲目だろうか。たった1日で、上条当麻が大人の男へ脱皮したように感じる。
行事を終えた私の当麻が抱き寄せる。
その動作は自然で、まるで意思が通い合った夫婦のように。

「当麻、今日はありがとうね」
「お疲れさん」
「正直何を焦っているんだと思う。だけど、
今当麻とちゃんと婚約しないと後悔すると
 思った。もう2年なんて待てなかった」
「ああ、それは俺も同じだよ」
「当麻、わがままで生意気な私だけど、当麻を愛する気持ちに偽りはない。
だから今後ともよろしくお願いね」
「ああこちらこそ」
「じゃ・・」
「ああまず風呂だな」
「今日も甘えさせてね」
「俺は凛々しいことで定評がある御坂美琴の惚けた顔を見れて幸せです」

「ふふ当麻以外には見せないわよ」
「じゃ・・」
「ええ・・」
私と当麻は、新婚カップルのように二人で手をつなぎ浴室へ入る。
浴室に入り会話を交わす。
「当麻の体あたたかいわ」
「美琴はいい匂いがするな」
「ふふ・・今日は酒臭くない?」
「そんなわけないだろう」
「ありがとう。うれしいわ」
裸の付き合い。浴室には不思議な力がある。


何一つまとわず、心と心のやりとりをする。
言葉を交わさずとも、伝わるものがあるのが裸の付き合いだ。

夫婦というのは本質は他人、他人が運命共同体たるためには、邪心なく
お互いの真心を交わし、共感しなければならない。
お互いを尊重し、背中を預け世の荒波に抗わなければならない。だから
私は上条当麻を愛し、上条当麻は私を愛する。共にお互いの唯一無二の存在として。

敵の多い私、共通の利害で今は手を組んでいるアレイスターも明日はどうなるかわからない。
だから今日だけはお願いね。上条当麻。貴方のぬくもりを感じさせて。時間のある限り
甘えさせて。明日になれば私があなたを守る。命に変えてもね。


Ⅱ部 終り










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