まま
『疫病神??』
『ああ』
まだ、アレイスターとの決着がつく前のこと。
上条から、過去のことを聞いた。
彼自身の話なのに、聞いた話として語る彼の姿に、苦しさを覚えた。
話の内容の方は……腹立たしかった。
上条から、過去のことを聞いた。
彼自身の話なのに、聞いた話として語る彼の姿に、苦しさを覚えた。
話の内容の方は……腹立たしかった。
当然のように話す彼の様子が許せなかった。
だから、幸せなんだと伝えてやった。
「自分が」ではなく、「周りの人みんな」といってごまかしたけど。
「自分が」ではなく、「周りの人みんな」といってごまかしたけど。
呆気にとられた表情のあと、
にっこり笑い礼をいう彼に、
珍しく素直に返事をした記憶がある。
にっこり笑い礼をいう彼に、
珍しく素直に返事をした記憶がある。
でも一緒に暮らすようになって気付いていた。
なにかない限り、
なにかない限り、
彼は自分やインデックスに右手で触れることを避けている。
病院前の公園を歩く上条父子。
「こうやって2人で散歩するのも久しぶりだなぁ」
「へ? あ、うん」
なぜ散歩??
上条は理解できない。
どう考えても、どう考えても美琴が気まずいはずなのだ。
母親と彼女だけで待機とか、彼氏として申し訳ない。
上条は理解できない。
どう考えても、どう考えても美琴が気まずいはずなのだ。
母親と彼女だけで待機とか、彼氏として申し訳ない。
……
「まあまだそんな関係じゃないけどね!!!!!!」
「どうした当麻?」
「い、いや、別に…………って、その人誰?」
グラマラスなお姉様が刀夜に侍っている。
「やっぱり戻る。母さんに報告しなきゃいけないことが増えた」
「当麻!! 誤解だ!! 道を尋ねられただけだ!!」
「うっせーー!! そんなニヤケ顔で説得力あるか!!」
「と、とりあえず道案内してくるから、当麻はここで待ってなさい」
「えーいやだ「後で仕送りの金額を相談しよう」どーぞ行ってらっさいまし!!」
背中が見えなくなった父親に、どっとため息を吐く。
そんな時だった。
そんな時だった。
「久しぶりだね」
後ろからかけられた声に背中が震えた。
そうだ、ここは実家のある神奈川だ。
『自分が知らない上条当麻の知人』に出会う可能性がある。
最近、油断していた。
内心ビクビクしながら平静を装う。
そうだ、ここは実家のある神奈川だ。
『自分が知らない上条当麻の知人』に出会う可能性がある。
最近、油断していた。
内心ビクビクしながら平静を装う。
「んぁ? えーと……誰だっけ?」
後ろを振り返って、視界に入ったその人物、
見覚えは当然ない。
当然無いのだが。
見覚えは当然ない。
当然無いのだが。
団子を2つ作った髪、
ある程度整った顔つきの少女。
彼女が首から下げている、いくつものスマートフォンの光と、
顔に貼り付けられたような歪んだ笑みに、嫌悪感が走った。
ある程度整った顔つきの少女。
彼女が首から下げている、いくつものスマートフォンの光と、
顔に貼り付けられたような歪んだ笑みに、嫌悪感が走った。
「詩菜さん!!」
体が、震えている。
尋常ではない。
尋常ではない。
「あ、あの子は…あの子は…」
「無理しないで!! そんなになるまでなら話さないでいいから!!」
少女の笑みは、例えるなら、
そう、
そう、
「久しぶりだねぇ、元気だったかな?」
あの、木乃伊のような…。
「いいえ、言わせてください!!」
あの時の私は、こんな顔をしていたのかもしれない。
美琴がそう思うほど、詩菜の表情は歪んでいた。
美琴がそう思うほど、詩菜の表情は歪んでいた。
上条は、ようやく自分が少しずつ後退していることに気付いた。
「おや? 挨拶もなしかい? 昔のキミは礼儀正しいと思っていたがねぇ?」
「あの子は…当麻さんは!!」
「いったいどうしたというんだぃ?」
「私が産んだ子じゃ、ないんです…」
「様子が変だぞ? アレイスターくん」
「え?」
そう、声を出すので精一杯だった。
「私達夫婦は……子供に、恵まれませんでした」
ゆっくりと話す詩菜は、実年齢より30以上老け込んだように見える。
「刀夜さんに八つ当たりすることもあり、もうダメだと思っていたんです」
淡々と、何かにとりつかれたかのように、その女は無表情で続ける。
「そんなとき、あの子に出会ったんです。病院からの帰り道で元気に泣くのを見て、私達が育てなくちゃいけないと……」
直感だったと話す。
ふと声音が変わった。
ふと声音が変わった。
「親が名乗り出ることもなく、名実ともに私達の子になったあの子との生活は、毎日が忙しくて……」
ゆっくりと、柔らかく、
母は語る。
戻らない日々を慈しむように。
だが、
母は語る。
戻らない日々を慈しむように。
だが、
「ふと、気付いたんです。あの子にちょっとしたケガが付き物になっていることに」
空気が、急に冷え込んだ。
美琴は、言葉を発することもできない。
美琴は、言葉を発することもできない。
「人より多くの不幸にあの子が苦しんでいると気付いたのは、あの子が幼稚園に通うようになってからです」
詩菜が見ているのは、インデックスではないのだろう。
「私達は、何があってもあの子を守るつもりでした。どんな不幸にも立ち向かえると思っていたんです」
一際、表情が歪んだ。
「でも、私達はなにもできなかった……。あの子の命が失われそうになっても、なにもできなかった」
彼女は、腕に自分の指が食い込んでいると気がついていないようだ。
「あの子の命が脅かされても、なにもできなかった!!」
美琴の直感が、彼女自身の肩を震わせる。
「あの!! 木原幻生という男が刃をかざしたとき、何もできなかった!! あの冥土返しが通りがからなければ、あの子は死んでいたのに!!」
え……?
今、なんといった??