とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part64

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まま


「なん、だって??」

草木がざわめく。

「おひょ? おかしい。 ここでその疑問はおかしいぞ??」

そのとき、老獪な表情をしていた少女の表情が再び歪んだ。
次に浮かんだのは、この上なく品のない笑み。

「おー、計算外のことがおこったか。『オレたち』木原にとっちゃ、計算外こそ生き甲斐だろってんだ!! はっはぁ!!」

次々と少女の表情が変わる。

「確かになぁ!! いい暇潰しだ「どぉせそれも無意味です。考えるのはさっさと諦めて結果だけ考えましょう」

2歩、3歩と足が下がる。
直感が告げる。
これ以上、聞いてはいけない。

「この少年、記憶を失っているようだ「つまり、われわれの想定より早くから、君のプランは狂っていたのだな、アレイスター」

病室では、戸惑う美琴を置いたまま、詩菜の独白が続く。

「あの医師がいなければ、あの子が死んでいた。あの子がこの世からいなくなることが、恐かった」

顔色は、病室の壁よりも白い。

「だから、逃げてしまった。自分では守りきれないからと、あの医者にあの子を預けてしまった。きっとあの子にとっては、捨てられてしまうことと同じ意味だったろうに!!」

布が引き裂かれるような声が病室に響き渡った。

「なのに、のうのうとあの子の前で、私は母親と名乗っているんです。だから、私は今日という日を、恐れながらも待っていました」

偽りの母である私なんかではなく、あの子を愛する人と出会えることを。

「私には、懺悔する資格も、罵られる資格もありません。ただ、あの子のことを、あなたに知っていて、欲しかった……」

カーテンが揺れる。
美琴は、混乱の極みにあった。

当麻が詩菜さんの子じゃない?
私も、当麻の横にいる資格なんてないのに。
なんでここで木原の名がでるの?
オティヌスを、この人に会わせなきゃ。
冥土返しなんて、あの人しかいないじゃない?
記憶喪失なら、このことを知らないんじゃ?

突然、意識が戻った。
理由は、

「ぐちゅっ、ふぇぇ、びゃぁええええええええ!!」

というインデックスの泣き声。
慌ててあやすと、自分をママとよび、その小さな手でしがみつく。

視界が、広がった。
まずは、

「……ごめんね、わたしが間違ってたね」

そして、美琴は、視線をインデックスから、目の前の咎人に向ける。

「この子は、わたしのことを、母と、そう呼ぶんです」

そっと、赤子の髪を撫でた。

「血のつながりなんてない。資格なんてもっとない。そんな私を、母と呼ぶんです」

少しずつ、詩菜の顔が疑問に彩られていく。

「じゃあ、母親になんなきゃ、ダメじゃないですか」

詩菜が、震えた。

「自信がなかろうが、力がなかろうが、覚悟がなかろうが、責任がなかろうが、この子を愛していて、この子がママと呼んでくれるなら、母親じゃなきゃダメじゃないですか!!!!」

この発言は、昨日の自分との決別。

「当麻が、あなたの罪を、責めたんですか?」

詩菜は首を振る。

「当麻が、あなたを拒絶したんですか?」

首を振る。

「当麻があなたを母親でないと言ったんですか!!?」

振る。

「じゃあ!!!!」

顔をぐしゃぐしゃに歪ませた詩菜の正面には、目から二筋の涙を流す少女が、赤子を抱えて微笑んでいた。

「…あなたは、当麻にとって、母親以外のなにものでもないじゃないですか……」











「君は上条夫妻の息子でもなんでもない。君はアレイスター=クロウリーが生み出した、新しい彼の入れ物だ」

「嘘だ!!!!」

公園の中、上条と対峙するのは、少女。
だが、様子がおかしい。
あまりにも老獪、いや、先程から人格がコロコロ変わっている。
そのたびに、首にかかっているスマートフォンが怪しく輝いた。

「嘘じゃねぇよクソガキ。なんだったらDNAでもなんでも調べりゃいいだろ?」

信じない、いや、信じたくない。

「オレを動揺させて、インデックスを狙う気か!!」

「落ち着けよ、狙いがそっちなら、テメェがいないうちに直接病院いってるってのよ」

「け、けど!!」

「諦めてください。認めなければ、ただの時間の無駄です」

(くそっ!! 一端退いて美琴達の無事を確認しねぇと……。ダメだ、敵の戦力がわかんねぇ!! オレが2人のところに向かったら場所を教えるようなもんだ!!)

「この異常な邂逅ならば、味方の心配をするのも当然とは思うが」

上条は、1つ息をつき、身構える。

「……身内を守ろうという、雄の本能。本能からの行動は嫌悪感を抱くことが多いが、こればかりは嫌いになれないな」

こぶしに力を入れた少年は、怪しき少女に向かって駆ける。

「……だが、科学の進歩に犠牲はつきもの。そうだろう? アレイスターくん」

そして、









そして…

この世界のどこか。

「なん、だと?」

突然降ってわいた情報。
上条当麻=アレイスター。
土御門は流れる冷や汗に気付かない。
裏を探れば探るほど、それが正しいという解答にたどり着く。
そこに至って、土御門は方針を変えた。
携帯電話を2つ机の上に置き、
通信用霊装に魔力を送り込む。
自身の細胞が死んでいくのを感じながら、
土御門は声を発した。

「お前ら、今からオレがいうことをよく聞け」





「当麻!!」

夕日が病室を赤く染めるなか、
焦りを含む声とともに病室の扉が開く。

「と、うや、さん?」

詩菜と美琴の腫らした目に映り込んだのは、焦燥にかられた刀夜。

「……詩菜さん、当麻は戻ってきていないか?」

「……どういうことですか?」

「……探してくる」

刀夜が出口に向かおうとした時だった。
看護士がドアを開ける。

「あっ。上条さま、今学園都市から連絡があって、息子さんが体調を崩し、救急車で直接学園都市に搬送されたそうです」

顔色を変えた3人に、キズがあるわけでもなく、命にも別状ないそうだと情報が追加される。
一安心する詩菜と刀夜と違い、美琴は逆に警戒心を強めた。

(対応がおかしい!!)

上条がイタリアに行っていたとき、
彼はボロボロでありながら、一端近くの病院に搬送されている。
直接学園都市に搬送するのは不可解だ。
そして、詩菜の話にあった不穏なワードの数々。

「……わたし、当麻が心配なので学園都市に戻ります!!」

今まで味方として頼もしかったあの男は、どこまで関わっているのだろうか。

「ここまでがオレの集めた情報だ」

相手に言葉はない。
口から流れる血を拭いながら、
土御門は今後の方針を語ろうとした。

そして、ようやく気付いた。

後ろに、誰かがいる。

ちょうど、美琴が神奈川を出たとき、夕日は上条にも降り注いでいた。

彼が眠っている場所はいつもの病室。
静かに彼を見下ろすあの医者の表情は、影に隠れているため窺えない。



倒れ伏した土御門を背に、その人物は歩みを進める。

光を反射する黄金の髪。
瞳は海よりも深い蒼。
見た目は10代の少女。
その表情が老獪に歪んだ。

「さぁ、時は来たれりよ。アレイスター」

曇天。
灰色に染まる世界のなかに、
その男は立っていた。

男の正面には、腰くらいの大きさの石。
いや、石碑か?
違う。そうじゃない。
あれは、

墓だ。

刻まれているのは英文。訳は、

「リリス=クロウリー、ここに永眠す」

少女の父親であった彼は、ただ立ち尽くしていた。

しかし、

彼の目は死んでいない。


システム復旧率、

100%









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