とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part045

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



第3部 第05話 第一章(5)


9月5日(土) 夕刻 16時

母美鈴は、爆発がショックだったのだろうか?
朝マンションへ立ち寄り、当麻や私と一緒に雑談を交わしたのち、昼飯を
食べてそそくさと横浜へ帰った。
「AI捜査支援システムコナン君」の演算結果では問題ないとの判断だったが、とは
いえ暗殺未遂という事実もあり一応町田周辺にある南ゲートまで送った。

研究所や学園都市のランドマークを案内し、夕方まで付き合うつもりが14時で
終わりまるまる時間が空いてしまったので、久々に自宅のそばのカラオケ・ボックスで
2時間ほど歌いまくった。

通常J-POPの楽曲は4分前後なので2人で30曲ほど歌ったことになり、結構
いい塩梅につかれた。最後は定番の結婚式ソングを歌い締めた。
最初は、打算で始めた恋。だけど・・もう・・私の心は当麻への思いではちきれ
んばかりだ・。

私はある意味、単純なのかな・・ようするに何で彼に引かれたか?
自分を崇拝や、化け物扱いする学園都市にあって、一人の女として扱ってくれた。
それにつきる。彼に基準点たる右手があるから?それは小さくない要素だが、それは
一部にすぎない。彼の心音に本質がある。どんな人物も、肩書ではなく本質を見てく
れる。そんな彼に心惹かれた。

まあいいわ。そんなこと結局は大した問題ではないのだから。
今、自分がこうして生きていて、上条当麻を愛しているということ自体が
大事なんだから。

なんか・・母親を暗殺されかけて少し感傷的になっていたのかしら。
さあ、前を向いて歩こう。当麻と一緒に

カラオケ・ボックスを出て手をつないで、目的地へ向かう。
ゆっくりと話しをしたいので磁気による高速移動はやめ、あえて配車サービスで
手配したタクシーを拾う。

暗部の悩める少女たちの救済も風紀委員特別部の大事な仕事なのだから。

「当麻、今日はママのことありがとう」
「お義母さん少し元気なかったな。無理にいつも通りにふるまっていたけど」
「そうね。あんなことが会った後ではね。ただけどママも当麻に勇気づけられ
ていたと思うわ」
「美琴あんまり思い悩む必要はないぞ」
当麻は私の腕をとり、体を密着させる。当麻の底がない優しさにどれだけ助けられた
か。私も当麻も半袖の薄着、薄着ごしに温もりと心音が伝わる。外はいまだ残暑は
厳しいが、キンキンにエアコンの効いたレクサスの車内で、当麻の温もりが心地よさと
安心感を私に与える。

「当麻大丈夫よ。とはいえ母が暗殺対象になるほど、私の存在が憎悪の対象になるのが
ショックだったのは事実。でも・・いまさら私の立場を放棄するわけにもいかないわ」
当麻は、私の上半身を引き寄せ、私は当麻の胸に自分を預ける。
「何があろうと、俺は美琴の味方になる。」

私が当麻以外の誰にも見せない、涙を流す。これほどの地位も、能力も母ひとり
安泰にできない。だけど。いやだからこそ必死に守りぬかなければならない。
それに、今の私は一人じゃない。部員が、なにより当麻が支えてくれる。
私は、涙を手で拭い、笑顔に表情を作り変える。なにより当麻は言ってくれた
(美琴は笑顔がとてもかわいいぞ)
「当麻は本当優しいのね。ありがとう。らしくもなく悩んじゃった」
「そろそろ目的地ね」
「ある意味休日出勤だな」
「まあ風紀委員なんてやり始めたからある程度覚悟はしたけどね。」

レクサスは、目的地へ到着し、私はカードで支払いをすます。
「で、先方の要望は?」
「副委員長の座を賭けて私と勝負してほしいと言っていたわ」
私は、押しつられたただ面倒くさいと思っていたこのポジションが、たった
1週間で暗部の関係者にとって魅力的なそれに代わったのだろう。

「ある意味無謀だな」
「先方には先方なりの勝算はあるでしょ。たぶん。結局無駄なんだろうけど」
「で・・どうする?」

「さあてどうしょうか?」
能力開発を謳う学園都市でも、原則能力を使って他人を襲うことは禁止されている。
だが、実際にはそんなのは日常茶飯事で少々の喧嘩は大目に見られる。
そんな学園都市で唯一の例外が、アンチスキルや風紀委員への暴力の行使。
これだけは厳禁で、重く罰せられる。
「まあ、最悪は公務執行妨害で留置するだけよ。遺恨を残さずさっさと
終わらせましょう」
「ああ」

私達は目的地の廃墟へ到着する。絶対能力者進化実験の頓挫により放棄された
施設。広大な施設だが生気はまったくない。

「アイテムだったよな」
「ええ、統括理事会直轄の暗部組織の一つよ」
「本当は、昨日夜会う予定だったけどあの騒ぎで延びてしまったわ」
「そうか」
「悪いけどしばらく、私に会話させて、一応副委員長の業務だから」
「ああ」

私達は、施設の中へ入る。
ほどなく、エントランスをすぎホールのような空間で4名の美少女を発見する。
私はリーダらしき人物へ声をかける。
身目麗しい、しかもスタイル抜群な麦野。その周りに3名の構成員が取り囲む。

「麦野沈利さんですね、御坂美琴です」
「まさか・・本当に本人が来るとはね。一方通行でもよこしてさっさと終わらせる
と思ったのに」
「そんな失礼なことはしませんよ。麦野さんは、私のような電子操作系の能力者
にとっては大先輩ですから。」
「大先輩ね。・・」
私は、形式的な美辞麗句でその場を取り繕う。スマイルとお世辞はただという
古来からの社交術だ。

「で・・さっそくですが、メールの件、返事をいただきたいのですが?」
「答えはわかってるだろう?時間の無駄だ」
「ええ。ですが組織と法律は形式で動いています。少し付き合ってください。」

「麦野さん、あなたには2つの選択肢があります。ひとつは、私の提案を受諾すること。
この場合には、あなたの奨学金は保証され、また今までの功績に対して相当の報奨金を
支給します。また志願するなら風紀委員会特別部員に任命します。」
「もうひとつの選択肢は、・・」
私の言葉は麦野の言葉でさえぎられた。
「御坂美琴をぶち殺し、実力で風紀委員副委員長になる。」
(勝手に自滅してくれたわね。録音も証言もとれた)
私は口調をため口モードにシフトさせ戦闘モードへ突入する。

「タダではすまないわよ。殺人未遂で放り込むわよ。それでもやる?」
「正義の味方気取りが余裕かましちゃってさこれを見て同じことが言えるか?」
麦野が、スマホの映像を私に見せる。
「てめえが大事にしている、クローンを一人確保してる」
そこには、男が拳銃を突き付け、私と同じ顔のクローンを拘束している映像が
映っていた。
(私は麦野のらしくない行動に愕然とする。たかがリストラでここまで落ちるの?)
「それで。それがハンデてわけ?」
「テメエみたいな化け物相手に手段を選んでられネエんだよ」
「ふーん。そう。監禁の現行犯も追加ね」
「そんなことをテメエにできるわけが・・」
私は、能力でスマホを操作し、気がつかれないようにメールを送信する。
「ふーん?その程度でハンデになるんだ?なめられたものね」
「はったりか?余裕かまして・・」
(もう証拠もそろったしさっさと終わらせるか。)
私は、敵の自信の根拠をひとつ一つつぶしていく事とする。
( 私に盾突くとどうなるか見せしめが必要かもね)

「そろそろ到着時間かな」
「へ?」
私はわざとらしく独り言をしゃべる。
「浜面さんだっけ?もういいわよ」
麦野が突然動揺しだす。
「はあ?」
クローンを監禁していた男は拘束をとき、到着した結標へ引き渡す。
結標は現場にいた数人のほかの男達をコルクで無力化する。

「さあて、麦野さんハンデはもうないの?」
「なんで、居場所が」
「さあね。」
「くそ・・浜面の奴最初からだましていたのか」
(いまごろ気がついたの?もう遅いわ)
「で・・もうネタはないの?いい加減投降したら?」
「へ・・テメエと一戦交えるんだ、これからだよ」
だが、
爆発音の轟音が響きわたると血相を変える。

「なんか小細工をしていたようだけど、破壊させてもらったわよ」
「テメエ・・」
「だから・・キャパシティダウンとかAIMジャマ―を使うなんて想定済みなのよ」
「くそ忌々しい能力だな?電磁波で破壊しやがったか?ガンマ線とかか」
私は、腕組をして嘲笑うように言葉をつなぐ。

「そんなことわかりきったことじゃない。もう1度言ういまなら見逃してもいいわよ」
「いまさら・・できるわけないだろう」
「説得に応じないわけね。あなたは私の大事な物をまるでモノでも扱うかのように
踏みにじった。それ相応の罰は受けもらうわよ。」
その言葉がきっかけになったのだろうか?麦野は全身に高エネルギー化した電子を
纏い武装を始める。

「くらいやがれ、原子崩し」
まばゆいばかりの光に発する高エネルギー電子が大気を貫通し、轟音があたりに
響き渡る。私は、あらかじめ展開したプラズマシートで吸収し、周囲の被害を
回避する。
「危ないわね。私が阻止しなければ、建物を貫通して周囲へ被害が出たわよ」
「くそ・・これでもダメか」
麦野は最後の切り札を阻止され、悪態をつく。
(ああ・・せっかく見逃すつもりだったのに風紀副委員長への公然な殺人未遂・・
 処罰するしかないわね。正当防衛で腕の一本くらい、蒸発させようか?)

麦野には、かすかな勝算があった。滝壺が、御坂のAIMへ干渉できれば原子崩しが
あたる可能性がある。そして体晶で強化された原子崩しなら御坂の吸収を突破できる
可能性がある。

だが・・麦野の希望はもろくも崩れ去る。滝壺がうめき声をあげ苦しみはじめ、頭
を抱え始める。私は、アイテムのデータと照合し、体晶の過剰使用という言葉を導き
出す。
(私の能力を妨害しようとしたのかしら。でも・・私がレベル6になっていたのを知らなかったのが運の尽きね。結局彼女のほうが暴発したようね。)
私は、両手でやれやれと表現し、抗戦をやめるように促す。

「ああ・・いわんこっちゃない。副作用でしょ。体晶のそれも過剰使用じゃない?」
滝壺がたった1回で副作用を起こし、麦野は動揺を隠せない。
「テメエなんで・・それを」
「滝壺理后、AIMストーカ、さらに体晶を過剰投与すれば、能力者の演算を妨害
する能力を持つ。そのくらい私が知らないとでも思っていた?私は、書庫へのフルアクセス権限があるのよ。」
麦野は、肩を落とし溜息をつく。ただ目の憎悪は消えことはない。

「気に食わねえな。なんでテメエだけ学園都市で優遇される?レベル5のくせに
暗部にも落ちず、表の世界でのうのうと、しかもお嬢様学校を優等な成績で飛び級
卒業。不公平じゃねえか」
「さあ・・心がけの問題じゃない?」
「くそ・・テメエだけは許せねえ。体晶を使えばテメエなんて1発で消し炭に
できる」
「そう・・」
麦野は、全身にエネルギーを纏い、原子崩しの発射準備をする。遮蔽物という
概念さえ無用にするそれが。だが・・

ドガ^ン まるでマンション解体で使用される鉄球がぶち当たったような轟音が
響く。麦野は前にぶっ飛ばされ壁にぶち当たり、昏倒してぶっ倒れる。
頑丈な、抜群の体力を誇る麦野が一発で気絶する。

「絹旗さん、フレンダさん もういいですね。勝負はつきました。無駄な抵抗は
やめてください」
だが絹旗は、麦野の敵を取ろうとでも言うのだろうか?突進を始める。
ひょい・・と。私は右手を伸ばし絹旗の脚周りの窒素の分子運動エネルギーを急速に
奪い、瞬間凍結させる。急速に増大した摩擦エネルギーで脚をとられ、絹旗は転倒する。
私は転倒した絹旗に軽く、電撃を食らわせ気絶させる。

フレンダは両手をあげ降参スタイルをするが、

「フレンダさん陶器爆弾ならもう無害化してますよ」
「え?」
「私はね電子を自在に操作できるのよ」
「へ・・?」
「理解できないならいいわ。試してごらんなさい」
フレンダは慌てて試すが、爆弾はうんともすんとも言わない。
爆発物とは究極的には分子間の電子結合の過剰エネルギーを瞬間的に開放できる
物質だ。分子間の電子配列が変わることで爆発物は無効になる。

「チェックメイトね。うるさいから寝ててくれる?」
 ・・バチ・・
私は、電撃の槍でフレンダを眠らせる。

「当麻、いつも悪いけどケアお願いね」
「美琴そばにいてもいいぞ。」
「雑事が結構あるのよ」
「え?」
「殺人未遂犯を救済するのはそれなりに手間なのよ」
「そうか分かった」
「じゃお願いね」
私は、当麻を残しホールを離れる。

 ・・・・・・・

約1時間後  18時

俺はホールで麦野が起きるのを待つ。壁にめり込むほどの衝撃で壁に衝突したにも
かかわらず、麦野は起き上がる。ただ骨が折れたのだろうか?苦痛に顔をしかめて
いる。フレンダと滝壺、絹旗は美琴が呼んだ特別部員が拘束し連行された。

「麦野、起きたか?それより肋骨おれてねえか?」
「ああ・・効いたな・・。ずきずき痛みやがる」
「で・・お忙しい1位様は?」
「美琴は風紀委員の雑用で本部へ帰った」
「ほう・・でテメエは御坂美琴の婚約者 上条か?」
「有名人と婚約すると、俺も有名人になるんだな」
「けえ・・言ってろ。学園都市で御坂美琴を知らねえ奴なんていねえ
だろう、テメエはその婚約者、テメエを知らねえ奴もいねえよ」

「なあ麦野なんで人質なんてとった?」
「あの化け物に勝つ方法なんて他にあるのか?破壊力は馬鹿デカい、たいがいの攻撃は吸収する。手数は多い、頭は回る」
「じゃ・・なおさら」
「こっちは今まで何年も、くそたれな学園都市のために体を張っていたんだ」
俺は嘆息して麦野の表情を観察する。目に憎悪が浮かびまだまだ心の災を静まって
いない。

「そうか 悔しかったんだな」
「悔しい?そんな生易しい言葉で済むか。血反吐を吐く思いで、切り刻んでそれで
やっと任務を達成したんだ」
「俺は暗部の事はよく知らねえ。だけど美琴は、テメエのことを尊敬していたそうだぞ。
さっきまではな」
「尊敬?は~あ1位の余裕て奴か・・。へえへえ心高潔な1位様はおっしゃることが違いますねえ・・ふざけんじゃねえ。上条・・アイツは甘やかされているんだよ」
俺は美琴が侮辱され怒りを顔ににじませる。

「テメエは性根が曲がっているようだな。アイツはテメエも知っている通り最初は
レベル1だった、何度も挫折をしたが・・」
「はあ?御坂美琴サクセスストーリか・・下らねえ。アイツは学園都市が莫大な金を
つぎ込んで作り上げた偶像なんだよ」
「いいか上条・・御坂美琴はな、小1のころから、特別のカラキュラム、養成プログラムで純粋培養されたいわば学園都市の顔、アイドルとして作られた偶像。それが
実際の話だ」
「つまねえ話だな。ようは学園都市はその顔として美琴を選び、テメエを捨てただけだろう。能力・学力・識見すべてテメエが美琴以下だった話じゃねえか」
「素直に負けを認めたらどうだ?そうすれば楽になるぞ」

麦野にとって、年下で「同性」の美琴に序列が抜かれたことは、・・言われたく
ない、触れられたくない事実だった。麦野は怒りで顔を紅潮させる。
「ぐちゃぐちゃうるせえなあ、上条、テメエだって所詮は虎の威を借りるなんとか
じゃねえのか?」

「テメエの幻想殺しとやら見せてくれよ」
麦野は、怒りを電子のエネルギーに変え、原子崩しの発射準備を整える。
「受け取れるものなら受けとってみな」

「しょうがねえ、テメエが現実を目を背けるというならその幻想をぶち殺してやる」
だが・・麦野の原子崩しが発射されることはなかった。

発射直前に、上条が麦野を右手でつかみ、その発射エネルギーを打ち消す。
「くそ・・忌々しい右手だな・・だけど体晶と滝壺さえいればテメエなんて
どうでもなる」
「そうかもな。」
「だけど・・それは体晶による暴発だろう?結局」
「そ・・それは」
「なあ、もう体晶だよりはやめねえか?」
「麦野と滝壺、両方不幸になる。それより・・もっと違う道を選択しねえか?」
「え・・それは」
麦野は俺の思わぬ言葉に動揺を始める。

「美琴は、テメエの体の事を心配していたぞ。私のせいで麦野さんが体晶だよりに
なってしまって申し訳ないてな」
「くそ・・あの女は、自分だけいい子で・・」
「美琴は結構リスクはとっているんだ。あれだけ憎んでた、木原幻生も一方通行
とも手を組んで、より大きな敵と対峙しようとしているんだ」
「それは・・」
「アイツはそんなことを言わない。だけど、アイツだって相当のリスクを取って
行動しているんだ」
「アイツは言っていたぞ、「自分の思いを果たすためなら悪魔でも手を結ぶ」」
「だから・・正直どうなるか俺にもわからない、だけど今のアイツはお前たちが
より良い方法になるように手を尽くしているはずだ」
「なあ、俺たちと手を組まねえか?」
「え?」
「まあ、今日は留置所へ入ってもらうけどな。」

そこへ美琴が現れ、麦野の怒りが収まったことを確認し、一言告げる。
「麦野さん、公務執行妨害の現行犯で拘束します」
「え?いいのか?」
「麦野さん。おとなしく出頭してください」
より重い罪を覚悟していた麦野は唖然として美琴を顔を見つめる。
「ああ・・わかった」
状況を察したのか、麦野はおとなしく身をかがめ出頭する。
俺は、美琴が安堵の表情を浮かべているのも見て、安堵する。

 ・・・・・・・・

20時 とあるイタリアン・レストラン

「当麻いつも済まないわね、面倒なこと頼んで」
美琴は、いつも以上に顔を紅潮させ俺に腕を絡ませてくる。
「ああ・・。でどうする気だ?」
「公務執行妨害で1週間拘留、その後は・・社会奉仕活動かな」
「結構厳しいな」
美琴の目にいたずらっ子のような茶目気を確認し、俺は安堵する。
美琴はその堂々とした見栄えにも関わらず、意外にナイーブで純情な
性格な持ち主で、今回の麦野の件で相当傷ついているはずなのだ。

「当麻は、私がいくらでも犯罪をもみ消せるとか思っていない?」
「ええ・・それは・・いつも・・」
「それは幻想というのよ。ちゃんと責任はとってもらう」
「それは本心か?」
「本心を言うなら八つ裂きにしたいくらいよ。」
俺は、美琴の表情に苦笑いのような微妙な感覚を読み取り、軽口をたたく。

「ツンデレのくせは直したほうがいいぞ」
美琴はほとんど笑いそうになりながら、口だけはつーんと済ますという
器用な表情を作り、しゃべり続ける。
「わかっているわよ。自分が素直な性格でないことぐらい。でも」
俺は美琴へ抱き寄せ、頭をなでる。美琴は気持ちよさそうに撫でられるままに
している。そんな美琴が今はただ愛おしい。

「美琴つらいんだろう。敬愛していた先輩の首切りは誰だって気分のよいもん
じゃない」
「そうね。後味悪いわ。でも・・卑劣な手段で抵抗した麦野を憎むことができない。
法の執行者として殺人未遂として処理すべきなのに胡麻かした。私は、ダメな女だわ。
法律家としても、捜査関係者としても」

「だけど・・。殺人の構成要件を満たさないだろう?そもそも」
「え?」
「殺人未遂たってさ・・現実的には不可能じゃない?所詮小細工を弄しても4位が
1位を殺すことは不可能。だろう?」
美琴は目を見開き、顔色に喜色を浮かべる。

「当麻。それは屁理屈と言うのよ。だけど、私の考えとまったく同じでうれしいわ」
美琴はよほどうれしかったのだろうか、いきなり抱きつき始める。
「美琴・・今日は変だぞ」
「なによ・・こんな可愛い女の子が甘えてくるのが嫌なの?」
俺は周囲がざわざわ騒ぎ始めるのが気になる。明らかに周囲が俺たちを注目し
始めているのがわかる。
「いや・・だけど、周りが・・」
「へ?」
美琴は周囲の視線に気がついたのか、顔を赤らめる。
「え?・・。」
恥ずかしいのだろうか、美琴の顔がみるみる真っ赤になり、俺の手を掴む。
「しょうがないわね。じゃ・・続きは内でね」
「ああ、いいぞ。その前に会計済ませよ」
美琴は、機嫌よさそうに、会計をいつもにようにブラック・カードで
済ます。
「さあ、帰ろう当麻、続きはうちでね」
美琴は俺の手をひっぱるように外へ駆け出す。
「さあさっさと走る。急いでいくわよ。」

俺はそんな美琴が誰よりも好きだったんだ。
生気に溢れた、見目麗しい御坂美琴。とても強く、凛々しく、
だが本質は傷つきやすい、夢見がちなただの少女。
だけど・・この平和な日々もそう長くはないだろう。
そんな気がした。

続く










タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー