とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part047

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



第3部 第07話 第二章(2)


9月7日(月)16時  風紀委員本部 副委員長室
本来なら下校デートの時間だが、今日珍客がいるので、お湯を沸かしながら待つ。
外に出るのが、大好きな性分だが、一応は管理職なので、莫大な事務処理
をこなす必要もある。ほぼすべては電子決済だが、一部事件調書などの紙書類が
あり、サインを記入する。

事務作業は、退屈極まりないと思っていたが、不謹慎ながら、各学校の恥部にあたる
事件調書を見るのはなかなか興味深く、読み漁ってしまう。刑事捜査や探偵物が外の
テレビドラマで人気を集める理由の一旦がよくわかる。私は、訪問者のベルの音に現
実へ戻され、慌てて意識を取り戻す。モニターで確認し、入室を許可する。

「大脳生理学者 木山先生ですね久しぶりですね」
「釈放の件、ありがとう。」
私は、木山春生を、来客用ソファーへ案内する。紅茶を来客用のマイセンに
入れテーブルにおく。

「早速ですが、情報提供ありがとうございます」
私は提供を受けたUSBメモリーをPCで再生させながら、謝意を伝える。
「あの子たちの無念が晴らせるのなら、なんでもする」
私は、暴走能力実験と体晶を悪用したポルタガイスト事件を思い出し、木山先生の
無念を思い起こす。実際には難しい話なのだ。極限まで、先端研究を追求するこの
街では成果さえ上がれば少々の無理は許容される。

そんなこの街で、極限まで先端を追求し、外部の基準では違法な実験を繰り返した
木原唯一を犯罪者として拘束するのは、困難な仕事だ。
 ・・だが・・不可能ではない。・・
「方法を今は言えませんが、かなり状況は変わりつつあります」
「私は、君にぶちのめされ、救われた。だから・・君を信じるよ」

私は、熱い紅茶を一気に飲み干し、立ち上がって握手を求める。
「先生の無念もそう遠くなく晴れる日が来ますよ」
私は、木山先生の手を握り握手をする。
(さあ・・行動開始よ)
私が、学園都市の表の顔とするならば、裏で実験を差配し、学園都市の闇を操って
きた木原唯一は、ある意味裏の顔といえる。彼女の存在はある意味学園都市の必要悪
という存在だった、今までは。

だが、庇護者を失った彼女はどうなるのだろう?他人事ながら心配になる。
正直な話、向こうがちょっかいを出さなければ、私は共存するのは全然構わない。
現状公表していないがレベル6になり、アレイスターとの直接交渉権を確保して
いる私。別に焦る必要もない。それに私は無駄な争いはしたくない。

だが、人間正気を失うと、枯れ尾花が幽霊に見えるのだろうか?
彼女は勝手に自滅の道を選んでいる。
(同情なんかするのは失礼よね。研究者としては大先輩にあたる彼女へ)
だから私は彼女を全力で叩き潰す。
 ・・・・・・・・・・・

19時 自宅
天気予報で19時ちょうどから雷雨の予定だったので、急いで自宅へもどる。
エントランスで指紋認証と暗証番号を押し終えたころ、滝のような豪雨が降り始め
危うく難を逃れる。日中36度まで上がっていた気温も急降下し、涼気が辺りをつつ
む。窓を雨が打ち付ける音が結構激しい。

「美琴 おかえり 濡れなかったか?」
「ふふ・・危なかったわ。なんとかね無事よ」
「それはよかった」
「今日風紀委員は非番だったのよね。小テストどうだった?」
当麻が誇らしげに、英語と数学の小テストを見せびらかす。
「へへ。聞いて驚くな、満点だよ・・」
私は、不幸がさく裂しなかったことに胸をなでおろす。あのソフトのガイダンスどおり
問題をこなせば確実に満点がとれるはずなのだから。
「すごいじゃない。おめでとう」
「まあ・・とはいえ、たかだか小テストだけど、先生にびっくりされた
それと、課題を提出したことも驚かれた。」
「ふふ・・小さな成功を積み重ねるには良いことだわ。だけど慢心はしないでね」
「ああ・・まだ離陸したばかりなのは良くわかっている 」

食卓から漂ってくる匂いが食欲を誘う。
「あらニンニクのいい匂いね。へえ・・生姜焼きね・・」


「今日も暑かったからな。まあ古典的なスタミナ料理ですよ」

食卓の上に、ご飯とネギと豆腐の入った味噌汁、生姜焼きと付け合わせのキャベツと
人参、キムチと、オニオンスープ
(美味しそう・・)
「悪いわね、こんなに手間かけさせちゃって」
「満点なんて久しぶりなんで、感謝してますよ」
「ありがとう。じゃ・・早速」
「いただきます」
私は着席して、食べ始める。生姜焼きね・・何年振りだろう。
(B級グルメの定番みたいなものね。)
 ・・だけど、食べ始めるとやみつきになるのよね・・
私はいつの間にかバクついて、10分少々で食べ終えた。

「お肉が美味しかったわ?ブランド豚?」
「お粗末様、普通のイベリコ豚だけどな、近くのスーパで特売だった」
「へえ・・ブランド豚と区別がつかなかったわ」

私は、手早く食器を洗浄機に入れ、マイセンを食器棚から出し、紅茶を入れる。
「じゃ・・飲んで」
「ああ」
私は、一仕事を成し遂げ誇らしげな当麻を、見つめる。
「AIはすごいわね。私が教えるより全然いいじゃない」
「ああ、でも開発者の美琴はすごいと思うよ。本当、勉強しないダメな奴の
心理をよく読んで作っている」
「まあ・・当麻を見ていれば、ね・・」
「はあ?まあそれもそうだな」

美琴は、いつものように手を握り、体を寄せて甘えてくる。外では頼れるお姉さまを
意識的に演じているせいもあるのだろうか、素顔の美琴はその反動もあり、甘えん坊
ぶりを隠さない。
「ねえ、今日は久々に早く帰ったしいろいろしたいなあ」
「いろいろ?」
今日は何か嫌な事で会ったのだろう。いつにもなく甘えてくる。スカートをまくり
太ももを見せつけ触るように、妙なテンションで燥ぎまくる。付き合いは短いが
素顔の美琴は、自省的で、人の痛みを自分の事として感じる感性の持ち主でもある。
その一方で、職場ではリストラ役を顔色一つ変えず、完璧に演じ切るんだから。
そのプレッシャーは小さくはないだろう。
(そうか・・慰めてもらいたいんだな)
(美琴の悩みは・・木原唯一か・・だったら)

「なあ・・木原唯一と仲良くなる方法はねえのか?」
私は、苦笑いを浮かべ当麻の顔をまじまじと見る
「美琴と利害が衝突しているのは確かにわかるし」
「それに、先方が美琴を敵視とか嫉妬しているのも分かる」
「だけど・・それをなんとかできるのが美琴のよさじゃないか?」
美琴は急に表情が引き締まり、外向きの顔に代わる。器用にも微笑みまで
浮かべて。

「そうしたいけど、先方が私を抹殺したいと思っている以上なかなか難しいわ」
「現実的に可能性はないだろう?」
「いや・・アイツは私の弱みを知っているから侮れないわ」
「弱み?」

「アイツはね、私と違って、任務の遂行にためらいがない、ねじが吹っ飛んだ
人間よ。手段を択ばない。それに周りの人間に手を出すのよ。しかもアイツは
光学迷彩や心理を操るすべを持っている。ある意味最強の敵よ。私が人を殺せない
性格であることを明確についてくる。」

美琴は、右手を突き出し、能力を使いたい雰囲気を醸し出し始める。
「まあ・・正直な話・・アイツを今この瞬間に殺すことはできるけどね」
「居場所はわかっているし、テレポートはミリ単位でできる。マイクロ波を
ミリ単位で飛ばす事もできる。携帯電話を使用中に爆発させることもできる。」
「でもそれを私がやっちゃおしまいじゃない」
美琴は、一瞬苦々しい表情を浮かべるが、すぐに表情を隠し笑顔に変える。

「まあ、正攻法で行きましょう。暗部も潰したことだし」
「ああそうだな」
「アイツが、私の大事な人に手を出そうとするならその時には叩きつぶすだけよ」

「ごめん、じゃお風呂入ろう」
「ああ」

俺は美琴と手をつなぎ浴室へ向かう。この年で誰もが羨む婚約者を持ち、高級
マンションでのカップル生活。低空飛行だった、学力は離陸に成功し、風紀委員活動の
おかげで無意味な能力開発から解放された。間違いなく俺の人生は、転機を迎えた。
俺は今の状況を幸福だと捉えている。
(先の事は考えても仕方ないか)
浴室で、お互いの体の隅々まで洗う。浴室でお互いの温もりを感じ、お互いの
呼吸を感じる。美琴の華奢な体に負わされた重すぎるほど重い荷物。
そのギャップの大きさに、俺は切なさと愛しさを感じる。

日常的に荒事をこなしているとは思えない、シミ一つない、無垢な体。
唯一少し割れた腹筋と、弾力のある太ももに荒事の片鱗を見せるだけだ。
その弾力がある太ももを触るのが心地よく、美琴もなすがままにされている。

30分ほどの濃密な肉体接触で、身も心も十分にスタンバイが完了し、ベッドへ
向かう。その前に、スポーツドリンク500cc缶を2つ冷蔵庫から取り出し、2人で
飲み干す。美琴がLEDライトを消し、暖色系の淡い間接照明に切り替える。
柔らかな照明が、多少幼さは残すものの、端正で整った水準を遥かに上回る美琴の
容姿を照らす。
「じゃ・・そろそろいい?」
「ああ」
「今日は、ゆっくりしようね。」
「え。。。」
「こうゆうことは、自分だけ楽しんだじゃダメ。そのたどり着く過程と、終わった後が
大事よ。」
「ええ善処いたしますが、もう・・パンパンです」
「2分じゃだめよ。ちゃんともたせてね」
 ・・・・・・・・・・・・

9月8日(火) 午前5時

昨晩の寒冷前線による雷雨が嘘のように、晴れ上がり、初秋の冷気が辺りをつつ
む。昨日は忙しくてサボった登下校デートの代償のように、私は当麻と手を繋ぎ
肩を寄せ合い歩く。
(今度こそ3日坊主にはさせないわ)
私は、微笑みながら当麻へ謝意を伝える。

「約束を守ってくれてありがとう」
当麻は私の表情から私が何を伝えたいのか理解したのか、私の聴きたい言葉を発する。
「ああ。今度は3日坊主にしない」
「嬉しいわね。だけど5時が明るいのもせいぜい今月いっぱいね」
「そうだな。そしてすぐに冬が来るか」
「私がオバサンになっても愛してくれる?」
「森高千里か・・まだ早いよ。それに美鈴さんを見る限り、美琴がオバさんになって
も全然問題ないぞ」

私は、婚約式の4次会で歌った歌の歌詞を思い出し、あるいやな想像をする。今後
結婚してもこの旗男に振り回される危惧を。
「ありがとう。でも何かそれ胸小さいて暗に言われているみたいね」
「なわけねえだろう。美琴。美琴はすべてが特別だよ。だけどデリカシーなくて御免
な。でも・・まだ胸の事を気にしていたのか?」
「気にしていないといえば嘘になる。」
「だけど、それで私の価値が損なわれると思うほど愚かではないわよ」

「そうか・・美琴らしいな」
「まあ少しやせ我慢もあるけど、矜持て大事でしょ。私のイメージも大事にしたいの
よ。外ではね」

約20分ほどの散策を終え、自宅マンション前に到着する。

私はエプロンを装備し、朝食の支度を始め、当麻は教材を薄いカバンへ詰める。
2人で手際よく一連の作業を終え、私はフランス・パンにローストビーフと程よい
サイズに切り分けられたトマトをスライスチーズとレタスで巻いたサンドを食卓へ
飾る。そしてコーンスープの甘い香りと、サイフォンから漂うコーヒーの香りが
食欲をそそる。
(やっぱり朝はしっかり食べないとね)
当麻が目を輝かせて着席、私にねぎらいの言葉をかけてくる

「悪いね。美琴手間かけちゃって」
「ありがとう。」
「美琴は、手際いいな。短時間にこんな美味しそうなものを作ってくれて」
「ある程度前の晩に軽く準備するからね。でもちゃんと手間をかけないでいるわよ」
「いやいや立派なものです。」
「ありがとう。でも・冷めるから早く食べて」

当麻は5分ほどで食べ終え、食器を洗浄機へ運ぶ。

朝の支度を終え、今日の日程を確認する。私は、寝る前に当麻に話した今日の
メインイベントを説明する。正直自分が何とかしたいが、その同時刻に風紀委員会の
幹部会ではどうもならない。
(まあ・・しょうがないわ。でも・・やきもきしそうだわ)
正直、会議なんて形式だが、自分が副委員長では抜けようもない。

「昨日話した件、よろしくお願いね」
「ああ・・」
「正直もどかしいのよね。AI捜査支援ソフトで何が起こるかだいたい分かって
いるのに、それが発生する直後にならないと動けない」
「そうだな」
「それに、今回は私が不在」
「ああ、風紀委員会本部で会議だったな」

「欠席するわけにもいかないし」
「大丈夫なんとかするよ」
「頼もしいわ。5分なんとかして。かならず応援を手配するから」
「ああわかった」
「さ・・そろそろ時間よ。行きましょ」
私と当麻は、オートロックのマンションを出て学校へ向かう。
 ・・・・・・・・・

9月8日 午後4時

自宅マンション前 90m地点 歩道上

そろそろ時間だな。
俺は時計を確認する。き美琴になるべく時計は見るなと言われたが気なってしょう
がない。そもそも自分が襲われると分かっていて、無心でいるなんて俺には
できない。襲撃予定時刻5秒前に俺はなるべく不自然にならないように深呼吸をする。

(さあ そろそろ)
5、4、3,2,1
時間に合わせ咄嗟に身をかわす、さっきまでに俺がいた場所に、銃弾のようなものが
突き刺さる。
(アブねえなあ)
攻撃されることがなければ絶対に避けることなんてできなかった。隣の屋上から
銃で攻撃されると分かっていなければ絶対避けれるはずもない。

俺は、美琴との打ち合わせどおり、全速力で現場を回避する。引き続いて催涙弾もま
き散らされるがそれも回避する。
(はあ・・美琴がいれば即座になぎ倒すんだけどな・・)

俺の右手は異能には絶対的な効力を有するが、ライフル銃や拳銃には対抗力を有し
ない。ライフル銃と催涙ガスの攻勢の前には逃げ回る以外に、道がない。
約束の5分が何十分にも感じる。広い道では追いつかれるので、路地を駆け抜け、ご
み箱を倒し、自転車をひっくり返し、走り抜ける。だが・・逃走から3分ついに前後
を囲まれ、万事急す。

男達が俺に狙いをつけ腹に複数照準があたる。もう逃げたところで回避不能だ。
(くそ・・もうダメか・・)
 ・・後1分30秒逃げ切れば・・
だけど、結局逃げ切れなかった。俺は時間稼ぎを試みる。本当に狙いは美琴のはず
なのだ。俺は美琴を釣る餌のはず。ならばすぐに殺しはしないはず。
「な・・どうせ、すぐ美琴にばれる。・・なら無駄じゃねえか・・」
男達が、囲む中つかつかと、女が無言で突進してくる。女は、冷酷に俺に死刑宣告
を発する。
「時間がない、撃て」
俺はそれでも諦めきれず、言葉による無駄な抵抗を続ける。
「オイ」
だが、女は俺の時間稼ぎには何らの反応を示さず、作業のように命令する。
「問答無用、発砲」
だが、その命令は実施されることはなかった。突然催涙ガスがまかれ、同時に男達
は、頭を抱えて苦しみはじめる。十数人の黒ずくめの男達は全員うずくまる。
(間に合ったのか・・?)
俺もばらまかれた大量の催涙ガスで目がくらむ。
少し遅れて数十人のアンチスキルが乱入し、黒づくめの男達が一挙に検挙される。
そして、美琴の言うとおりちょうど5分ですべてが完了し、事態は収束を始める。
(はあこれで終わりか・・)
だが科学の尖った先兵は、美琴の予想どおり簡単にはくたばらない。

リクルートスーツの女はなりふり構わず、突進する。複数のアンチスキルを強引に


なぎ倒し、アンチスキルもその突進力を抑えることができない。まるで数十トンの
モンスタートラックが突っ込んだような圧迫感を感じる。俺は尋常ならざるパワー
を感じ、バックステップでかわすが、ぐんぐん距離を詰める。俺は、なんとか躱し
続けるが、執拗な攻勢でついに態勢を崩され、つまずいてしまう。

そのすきに、リクルートスーツの女は、いっきに間合いを詰め、俺を追い詰める。

ついに腕を掴まれ、羽交い絞めにされる。ただの女性とは思えない、まるでレベル
4の肉体強化系の尋常ならざるパワーで俺を締め上げる。おそらく高度な、駆動鎧の
駆動機構を人体へ応用し、圧倒的なパワーを可能にしているのだろう。
駒場利徳も使っていたが、其練度精度は遥かに上だ。科学を極めた女は、そんじょ
そこらの能力者では太刀打ちできない力を発揮する。
(くっそ・・なんてパワーだ。このままでは背骨を折られる)
「さあ・・上条・・御坂美琴を葬る前にテメエの首をもぐ」
「ぐ・・テメエが美琴を葬る?」
「はあ・・それは無理だろうな」

女は、無関心を決め込むが、少し動揺し始める。その瞬間女の駆動部分の関節が軋み
はじめ、女は、苦痛に顔をしかめる。

俺を締め上げる力が弱まったのを確認し態勢をよじり、なんとか拘束を逃れる。
 ・・ハア・・ハア・・
「ハア・・バーカ・・木原唯一・・テメエの行動は全部読まれているだよ」
「くそ・・関節がいうことを気かねえ・・テメエ何をした?」
木原唯一は、激痛に顔を顰め、もんどりうつ。

俺は学生服から、小型の装置を取り出す。発信機のようなマイクロ波発射装置
皮膚を貫通しある特定の物質のみを効率的に加熱する装置。
「テメエがやりそうな事はバレバレなんだよ。だから・・対抗措置を確保している
んだよ」

「くそ・・・。特定物質を効率的に加熱するマイクロ波か・・どうせテメエの知恵じゃねえだろう」
「ああ・・こんな知識があるのは、学園都市でも美琴かテメエくらいだろう」
「けえ・・御坂美琴・・忌々しいクソガキが。正義の味方面で世間知らずのふりを
しながら、アレイスターに取り入る、計算高い女か・・」
「だがな・・上条・・私が負けたわけじゃねえ。まだ・・」
俺は、唯一へ聞こえるように大きな声で溜息をつく。

「A.A.Aならもうテメエは使えねえよ」
「はあ?・・」
「A.A.Aは脳波制御だろう?やってみ」
「え・・」
「テメエのA.A.Aはもう全部美琴にハッキングされているんだよ。もう手遅れだ」
俺は、スマホの美琴からのメールを確認し、言葉を続ける。
「うそ・・そんな・・」
「テメエが手配した猟犬部隊も全部拘束済みだ」
「諦めろ。もうテメエは終わりだ」

「テメエが、学園都市のために、危ない事に手を染め、人間を捨て、暗部や
キタネエ実験を主導したことは全部美琴から聞いている。糞たれな実験で
置き去りや、犯罪者を使い、非道な実験を行ったことも、ただ尊敬する
脳幹先生のためだったことも」
「だが・・今のテメエはなんだ、ただの逆恨みじゃねえか」
発条包帯の異常加熱で関節が焼かれ激痛に打ちひしがれていた木原唯一の
顔が激情でゆがむ。

「くそ・・、上条・・いままで散々利用されて捨てられる気持ちがわかるか・・」
「知らねえうちに、糞みたいな力を偶然得た女に、全部奪われる理不尽がテメエに
わかるか」
木原唯一は、うめきような 不気味な声で意味不明な言葉をつぶやき始める。
「オイ・・それ以上美琴を侮辱するな。テメエが何を奪われたて言うんだ」
「そもそもテメエが何を奪われたんだ?テメエは同じ顔のクローンを殺された
のか?テメエは自分の力が世界をいつぶっ壊すかおびえながら暮らしたのか?
テメエの悩みなんぞくだらねえだよ。そんなテメエが美琴を逆恨みするのなら
テメエの逆恨みごと全部ぶっ飛ばしてやる。ハア食いしばれ糞女・・」
 ・・バッキ・・
木原唯一は数メートル吹っ飛び、気絶する。
「なんとか終わったようだな」
だが、俺もすでに限界だった、限界を超えた筋肉の過剰使用がたたり
俺もその場に倒れこむ。


 ・・・・・・
19時 カエル顔の医師の病院

「当麻起きた?」
「ああ美琴か、俺は気絶したのか?」
「ええ、2時間30分ほどね。発条包帯の駆動鎧のパワーで肉離れと脚が剥離骨折、目に見えないけど結構ダメージを受けたみたい。骨折の縫合は終わったから、今日
1晩入院すれば退院できるわよ。」
「ごめんね。アンチスキルの手配が遅くなって」

「いや・・5分が長かった。逃げ切れなかった俺の方がすまん」
「で・木原唯一はどうした?」
「とりあえず、仲良く同じ病院よ。隣の病室にいるわ。あっちは結構かかると思うわ。
マイクロ波で発条包帯が約1000度に加熱したんだもん、脚はボロボロだわ」
美琴は、少々疲れたような表情を見せる。俺が寝ている間に、俺には理解できない
交渉事でもしていたのだろうか。だがその表情はいつも快活な表情に置き換わる。

「今日は本当、迷惑かけたわね」
「気にしなくてもいいよ。美琴がいろいろ手配してくれなければ、俺は死んでいた。」
「当麻・・だけど私のせいよ。アイツがアンタをついでに殺そうとしたのは」

俺は、美琴をみつめ正面から美琴の悩みに向き合う。
「美琴、結局この右手がある限り俺は、普通には生きられない。」
「だったら、同じ悩みを持つ美琴とともに手を携えておれは生きる。」
美琴は俺の顔を食い入るようにみつめる。
「当麻、ありがとう。元気でたわ。そうね。」
「木原唯一の問題なんか氷山の一角だわ。彼女は私を目の敵にしてぶつかってきた。
だけど、研究者は多かれ少なかれ私や能力者に実験動物という感覚を持っている。
だから、ことあるごとにその負の感情と戦わなければ、先へ進むことができない」

「美琴・・・」
「だから、当麻に一緒に壁にぶつかりながら、挫折しながらでも一歩一歩生きていこう」
「ああそうだな」
私は、当麻の口をふさぎ、軽く接吻をする。
(きっと忙しくなるだから当麻・・助けてね。お願いよ)

続く










タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー