とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第3部 第08話 第二章(3)


9月9日(水)午後4時 とある高校 校門前

なんかただ待つだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろう。
接吻だって、アレだって毎日やっているのに、もう婚約式だってやったのに、それ
でもこの下校デートにそわそわする自分。
ふふ・・もう恋人じゃないのにね。だけど、・・私は風紀委員の業務を思い出し、顔
を引き締める。

 ・・そろそろ時間かな・・

校門から少し離れた、コンビニでコーヒーを飲んでいた私は、スマホの着信を
確認し、校門へ向かう。想い人を発見し、私は、駆け足で駆け寄る。
木原唯一を殺人未遂の現行犯で捕まえるためとは言え、当麻を守れなかった
事で胸がづきづき痛む。正直、木原唯一に殺されかけた当麻には、お詫びの
しようもない。

「お疲れ様」
「お迎え、ありがとう」
「脚の負傷は大丈夫そうね。さすが・・あのリアルゲコ太ね」
「リアル・・ああ・・あの先生ね」
私は、当麻の足さばきの違和感から当麻の脚がまだ完治していない事を悟る。

「まあ・・今日は待機でいいわよ。公傷だし」
「え・・それは寂しいな。脚ならもう治っているぞ」
当麻は私とよっぽど一緒に捜査がしたいのか健在ぶりをアピールする。
(そりゃ 私もしたいけどさ・・まだ無理よ)
「当麻・・今日はペーパワークだから内勤でいいわよ」
「大覇星祭の警備計画の会議資料も作成し終えないといけないし」
当麻はしばらくは残念そうにしていたが、状況を理解したのか渋々納得した。

「そうか・・わかった。」
私は、自分の勤務する研究所が試験的に運行を開始した無人タクシーが到着して
いることを確認し、当麻と一緒に後部座席に座る。

「じゃ・・行きましょ」

私は、いつもように当麻の腕を組み、体を密着させる。
磁力と活用すれば1~2分で移動できるのにわざわざ20分もかけて不便
な無人タクシーを利用するのは、体を密着させてゆっくりと話したいからだ。
他にすることもなく、ある意味密室空間のタクシーは、当麻に癒してもらう
恰好の場所だ。それに周りを気にせずいちゃいちゃできる。
密着させた太ももと、絡み合った腕の滑らかな感触が、ともに生きている満足感
を感じさせる。
しばらく私と当麻はその感触を楽しんでいたが、やがて何かを思い出したのか当麻
が口を開き始める。

「なあ、美琴・・木原唯一はどうなるんだ?」
「そうね。・・普通なら殺人未遂で5年は刑務所ね」
「そうか・・」
当麻は、自分を殺そうとした相手に、憎しみではなく、救えなかったことに
後悔の念を見せる。私は溜息をつきつつ当麻の底抜けに善良なある意味お人
よしすぎるポジティブな発想に、苦笑いを浮かべる。

「救うのは困難よ」
「え?」
「私はね、彼女を支持する統括理事や、脳幹先生と交渉ずるつもりだったのよ」
「は?そうだったのか」

「お互いに、研究内容が被らないように、相互に利益があるように、共存をするつもり
だった」
「だけど、彼女が全部ぶち壊してくれた」
「どうかしているわよ。当麻と私を殺そうとするなんて」
私は、眉間にしわを寄せ、当麻の楽観論にくぎを刺す。私が、調書を書き換え、犯罪
者を免責するのは、私にもリスクがある。それに、私はどうにもあの女を許す気には
なれない。人を小娘扱いし、何かあるたびに私に敵意をむき出しにするあの女。

私の心のどこかに、あの尊大な女が失脚したのを喜んでいる小さな自分がいる。
だけど・・当麻の前では隠してしまう。
(本音と建て前か・・まあいいや。アイツを釈放するくらいなら)


「ああそうだな。」
「美琴が、怒るのも当然だし、風紀委員が捜査を捻じ曲げることができない。」
「だけど・・それで本当にいいのか?」
「え?」
私は、当麻が何か予想もつかないとんでもない事をいいだす予感に心を震わせる。
「木原唯一は、ある意味美琴をライバル視していた」
「まあそうかもね」

「それはたぶん周りも同じだ」
私は、だんだん当麻の言わんとしていることを理解する。
「まさか・・」
「勝ちすぎはよくないことだよな」
私は、普段は鈍い時わりに本質的には鋭い当麻の頭脳に改めて驚かされる。
私は、あの女の失脚を喜ぶ一方、その危惧が片隅にはあった。その事
を一発で言い当てられて、驚くとともに惚れ直す。
(さすがね・・)
「ええ・・そうね。今はまだ私が勝ちすぎるのはよくないことぐらいは理解する。
でもいくら私でもあれだけ多くの証人がいる事件をなかったことにするのは難し
いわ、なんか理由を見つけないと。それに」
「分かっている。俺も木原唯一が何をしでかしたか理解はしている。だから・・
正当な償いと、謝罪なしには無理だということは理解する」

「理屈ではわかるけど、ちょっと考えさせて。」
「そうか・・どうゆう結論でも美琴の判断を俺は尊重するよ」
「ありがとう」
当麻が私の悩みと立場をちゃんと考えて同じ目線で、最善解を導き
導き出してくれたことに感謝する。相性だろうか。まるで神様が、くれた
出会い。

つきあいは短いのに、当麻と私の関係はまるで、何年を連れ添った夫婦
のように、お互いを労わり合い、励まし合う関係になれた。ストレスの
多い私にとって、何にも変えようがない時間。だが無人タクシーというある意味
密室の楽しい時間は、あっという間に終わり、私は現実へ引き戻される。

激しいほどの触れ合いで乱れた、黒のタイトミニスカートのもつれを直し、着衣
を整える。意識を現実へ切り替え、いつも御坂美琴へ表情を切り替える。

 ・・・・・・・・・
午後 6時 風紀委員会本部 副委員長室

私は、机の上に山積された書類を1時間少々で決裁を行い、処理済みポストへ
移し終える。脳構造が、電子情報解析に特化しつつある私にとって、高速処理が
可能な電子情報に比べて紙媒体の処理は面倒くさい。

当麻はまだ脚が完治していないので、早めに帰宅させた。それに・・
(当麻は・・荒事はできるけど、書類仕事は・・無能だしな)

それでも、能力開発の一環で身に着けた速読法を駆使し、常人よりは高速で会計書類
や調書・報告書の類にサインを押印する。基本学生能力者で構成される風紀委員の中
で、私のような実際の管理職はほぼ皆無なので、風紀委員会ではデスクワークでも
相当重宝され、書記長のような仕事までさせられている。大覇星祭の警備計画の原案
とか、予算編成とか装備計画立案とか。
まあ、喜んでもらえる分には、いいんだけど、・・ね。

基本お人よしの性格な私は頼ってもらえるのは嫌いではなく、仕事自体は大好きな
のでついつい引き受けてしまう。なまじ尋常ならざるポテンシャルがあるので
莫大な作業を涼しい顔で回し、周囲が感嘆しますます仕事が集中してしまう。
(そろそろ応援を呼ばないとな・・過労で倒れてしまいそう)

まあいいや。しばらく雑事をこなして、風紀委員会の実態を知るのも悪くないし。
書類を通じて各委員の個性を採点するのも悪くないし・・どうせ人事評価だの
支部長人事案を作成させられるのだから。今のうちに書類で各委員の能力・適性
を把握するのも悪くない。

本当なら私の権限で、支部の有能な風紀委員を本部へ吸いあげて自分の秘書でも
させればいいのに自分が平秘書の真似事をして、書類作成だの計画立案という雑用
をするのも、使える風紀委員を選別するためなんだからさ・・

ひととおりの決裁業務終え、翌日の警備計画・アンチスキルとの連携計画を担当
の親船統括理事の提出を終え、私は、今日のメインイベントへ関心を移す。

絶滅犯 サロメ か・・

今日は久々に骨のありそうな奴に出会えそうでわくわくする。
 ・・・・・・・・・・・・・
午後 7時 国際空港 保税貨物地区

私はサロメから指定された場所へ5分前に到着し、相手の到着を待つ。
国際刑事機構(ICPO)のデータベースによると、某所で歩兵1師団を捻りつぶし、
某国陸軍特殊部隊が、なんとか取り押さえたサロメ。

その表向きは陸軍特殊部隊が、聖人を中心とする魔術側の最精鋭部隊であり
政府の最高機密であることは、統括理事会のマル秘ファイルに記載されていた。

(なんでこんな奴が表に出てきたのやら)
夏なのにレインコート姿の少女をみつけ、声をかける。
化学的な手法で体をサイボーグ化した異形の存在サロメ
私は、学園都市でもなかなかいない、ケルト神話で、異能を積み上げた存在に
声をかける。

「サロメさんですか」
残暑厳しい中、なぜかこだわりでもあるのか裸にレインコートを羽織る
少女は薄ら笑いを浮かべ、熱帯夜の闇の中私へ対峙する。

「わざわざどうもでしょ」
「で・・今日はわざわざ学園都市の治安機関の幹部でかつ能力者1位をこんな
場所へ呼んで何用ですか?」
「私のメールアドレスをご存じなら御用件をメールでも送ればいいでしょうに」

「へ・・そうね まあ挨拶させてもらいましょ」
サロメは私を値踏みするかのように視線でなめ尽くす。
「アンタがカタログどおりの性能かどうか確認しましょ」

(これは有名税かしら。わざわざ私を呼び出して、何を頼みたいのかしら)
最近、なぜか突然力をつけたらしくあまり詳細な情報がない、あるいみ未知の存在
絶滅犯サロメ・・何を私に頼みたいのやら。

私は、久々に意図のよくわからない相手に、多少身構える。
同時に、学園都市の暗部を掌握し、新たな刺激を求め始めた私はある意味
好奇心で彼女の奇怪な姿を凝視する。
ザワ・・ザワ
(背中をなめるような感覚が走る)
(・・なるほど・・電撃使いの感性に悪感情を与える電磁波攻撃か)
(まあ・・面白いからしばらくお付き合いしましょう)
「さすがに・・吸収できるからこのくらいじゃ驚きもしないか」
サロメは、想定通りの結果にたいして驚くこともなかった。

「ええまあ・・。で攻撃はしないのですか?」
「じゃ・・これならどうよ?」

サロメは、生体パーツの内的御供で積み上げた圧倒的な身体能力で私に迫る。
投石器のような圧倒的な拳で意識を刈りに来る。
(だけど・・それだけなら・・ぎりぎりレベル5の肉体強化系・・削板以下だな)
私は機械的に攻撃を分析し対応する演算をミリ秒の単位で組み立てる。

ひょい・・。私は保護膜で運動エネルギーを吸収しただの熱へ変える。
「それが運動エネルギーならいくら攻撃しても無駄だと思うけど」

「チ・・さすがに「吸収」?・・」
「さ・・まだないの?」

「じゃ・・これならどうよ」
サロメは本来の日本刀をベースにした能力を某国歩兵師団を喰った能力
で外的御供攻撃を始める。数万もの日本刀のようなものから放出される約30
00度の火炎。

だが・・それはすべて超高温・高密度プラズマの保護膜で吸収されなんら影響を与え
ない。そして・・所詮は熱。熱とはつまり分子の運動にすぎない。結局分子の運動エ
ネルギーを吸収すれば・・火炎はただの30度の常温大気に戻るだけだ。

彼女はさらにガトリング砲のようなものや、戦車の滑空法のようなものを
それこそ数限りなく日本刀に上乗せして攻撃する。

私は機械的に、感情を消して事実だけを指摘する。
「だから・・ただのエネルギーの放出なんてきかないのよ・」


「実弾の運動エネルギーも火薬の分子結合エネルギーも結局はただの
エネルギー・・全部熱に変えてプラズマ保護膜が吸収するわよ」
運動エネルギーも実態弾もすべてプラズマに変換され、保護膜に吸収され
雲散霧消する。

だから、もうやめましょ。いまならまだ話し合いで済みますよ」

さすがにそれまで余裕をかましていたサロメの顔色が変わり始める。
「くそ忌々しい程下種な能力しょ。」
サロメは、背中のバッグから何やら取り出し、組み立て始める。
「これは、使いたくないんだが」
(とうとう小型戦術核爆弾か・・そろそろ本気だそうかな)
私は、一応最後に一線を超えそうな女に最後通告をする。

「もういいでしょ。そろそろ目的を教えてくれませんか?あなたの手持ちの札は
もう時間切れではないですか?後10秒で3分ですよ」

「ケ・・やっぱ、そこまでわかってるかあ?しょうがねえこれで最後だ」
サロメは、両手で、巨大な刀のようなものを生成し、火の玉のようなものを
こね始める。
「御坂美琴・・これが吸収できるわけないしょ・・」
私は、多少焦ったふりをしながらそれでも、話を続ける。

だが、手段をえらばない、サロメはついに一線を越え、
最後の切り札を投入する。

 ・・ピカ・・
サロメが外的御供で積み上げた虎の子の戦術核兵器、都市を破壊し、一瞬に
して軍隊を、地上から消滅させることを当然のこととする、究極兵器。
だが、それは一瞬閃光を発したが、爆風も熱風もx線もγ線もα線も
1ベクレルも放出することはなく避雷針のように、突き出された私の
右手に吸収されつくす。

「はあ・・噂以上の化け物じゃん・・」
(どうやらカードはもうないようね)
私は、右腕を伸ばし吸収を強化する。その結果サロメの周囲からエアコンのように
分子の運動エネルギーを吸収しつくし、瞬間的に絶対0度(▼273.15度)まで
凍結させる。

それまで動き回っていたサロメが突然活動を止める。まるで、氷の彫像にように
全く動けなくなり、唐突に活動を止める。
「え・・」
「何が起きたかわからない?」
「あなたのサイボーグ体から熱を吸収させてもらった」
「摩擦もない、電気抵抗もない、あらゆる分子が活動を止める、絶対0度の世界」
「もう動くことも、攻撃することもできない、この状態で電気流せばどうなるかしらね。
超電導状態でね:数十億アンペアの電流なんて流れたらどうなるんだろうね」
「脳なんか、吹っ飛ぶんじゃないの。超電導が終わった瞬間のジュール熱で」

恐怖を感じたのか、それとも自分以上の狂人を発見したのか、サロメは、呆けた
ような視線を私に向ける。
(まだ・こんなもんじゃ足りないわね・・)
私は、この危険人物を法的に処分する方法を考えながら、恐怖を与える方法を
いくつか試案する。

まあインパクトがでかいのは、単純な方法よね。
この状態なら、生体電流で強化した拳でぶっ壊すか・・

 ・どうせ3分経過しもう普通の子になったころだし
 ・どうせ体は、飾りらしいし・・あとは1Aを頭に流して半殺しにするか。
こんな奴は、1回痛い目に合わないと世の中を舐めきってろくな奴にならない。

私は、拳に規格外の力をこめ、前にパンチングマシンを一撃でぶち壊した
それを食らわせようとする。

サロメは、目をつぶり半ばレイプ目で、衝撃に備える。

 ・・だが・・

私が拳でぶちのめそうとしたとき、聞き覚えのありすぎる、声を聴き、私は
それを止める。
「と・・当麻?」
どこで聞きつけたのか、突然現れた当麻の姿を視認し、私は狼狽える。


「美琴・・殺す気か・・らしくないぞ」
私は、当麻の指摘に、我に返る。私は手を震わせ、久々に骨のある相手に出会い
興奮し我を忘れ殺しかけたことに赤面する。

「御免、つい頭に血が上って」
当麻は私を抱きしめ、頭を撫で始める。あれほど、心の中を渦まいていた
まがまがしい迄の興奮は一気に覚め、いつも、御坂美琴へ戻る。
ああ結局私は当麻にまた救われるのか・・当麻自身は気がついていないが
この夏以来私は何度も当麻に救われている。当麻の底知れないやさしさに。
代償を求めない純粋な心に。

「美琴・・ストレス貯めすぎだぞ」
「ありがとう」
「で、サロメはどうする」
「そうね・・」

私はあたりを見渡す。私がサロメの完全武装の核弾頭を含む1師団クラスの
攻撃をすべて吸収したこともあり、特段の被害は見当たらない。
私は、当麻に抱擁され緩み切った容姿をいつもの峻厳公正な風紀委員のそれに
変え、いつもの職場の御坂美琴へ切り替える。

「まずは、特別部で事情を聴くわ」
「ただ司法職員である私の職務質問に答えないから、公務執行妨害で1晩留置ね。」
私はサロメの処理を終えていないことに気がつき当麻に了解をもとめる。
 ・・御免・・ちょっと面倒くさいやつだから眠らせる。

私は、落ち着きを取り戻し、溜息をついているサロメに、頭部に軽く電撃をくらわし、
気絶させる。ナノマシンを注入し、神経を遮断ののち、すぐに冷凍を解除する。

「そうか」
「ところで木原唯一はどうする?」
私は、サロメのおそらく目的を考慮し決断をする。
「本来なら、私と彼女とはライバルであり敵同士」
「だけど・・サロメの目的の為には手を結ぶ必要があるかもしれない」
「それはどうゆうことだ?」
「サロメの目的はおそらくは兄の救済だわ」
「兄?」
「私はね、微細な生体電流を通じて意識を読み取ることができる」

私は、読み取った内容を仔細もらさず当麻へ伝える。
「そうか、で・・兄を助けたいと・・」
「ええ。・・サロメは私が兄の敵と思ったみたいね」

「逆恨みもいいとこだな」
「でもあながち間違いでもないかも。魔神を成仏させたのは私だし、魔神の願いであるこの世の基準点の右手の所有者を独占したのも私。」
「サロメの兄と慕う、上里翔流は私が、魔神を成仏させた日に、忽然とこの世から姿
を消した」
「サロメは、その原因が私のせいだと疑っている」
「なぜ・・そんな」
「サロメが言うには、上里翔流は、ある日・・正確には私が婚約式を上げた日に
謎の力を突然手に入れその日から運命が狂いだした。」
「周りに謎の不幸な女達が集まりはじめ、その女達を魔神がくれた、謎の力で救い
出してきた。でも・・彼は突然・・忽然とこの世から消えた。右手だけを残して」
「彼女は上里の知り合いの不幸だった女達の知恵をかき集め、その謎の消滅
が魔神とそれを消滅させた私が原因らしいと突き止めた」

「そしてそれを知ったサロメは私に上里を助け出してほしいらしいわ」

「へ・・?」
「あの子も大概よね。口で一言助けてくれと言えばいいのに」
「まあ、それだけ人を信用できない不器用な子なんでしょうね」

「ふふ・・なんか・・昔の美琴みたいだな」
「そうかしら・・でも・・当麻も私と付き合う前には似たようなもんじゃない」
お互いに へ・・という顔で見つめ合う。
当麻は不幸な昔を思い出したのか、苦笑いで答える。少しわざとらしく咳払いをし
無理やり話を切り替える、
「で・・具体的にはどうする?」
「魂や魔術に詳しい木原脳幹先生の力を借りるわ」

「まあただではとはいかないわね。たぶん・・木原唯一の釈放と
引き換えになるだろうね」

基本、自分の命よりも人の不幸を気に回す当麻が顔色を変える。
「そうか・・。それはよかった」
「本当にいいの?唯一はアンタを絞め殺そうとしたのよ?」
「いいさ・・それで美琴の悩みが解決するなら」
私は、自分のこと以上に私の悩みで胸を痛める当麻に心が締め付けられる。
「ありがとう。そうね・・私のせいで不幸になるなんてそんな幻想は
私がぶち壊さなきゃね」

私は、電極でサロメの脳の活動状況がほぼ停止状態であることを確認し、
能力者用拘置所の手配を終える。さらにあらかじめ起案済みの調書を
回付する手続きをオンラインで開始する。

「まあ、不法入国と公務執行妨害にしましょ。事件が解決したら強制送還よ
サロメは」
「そうか・・」

「木原唯一は、罪状を公務執行妨害と傷害罪にする。傷害罪は、本人と
と示談が成立し、不起訴処分で退院しだい保釈にするわ」

「美琴ありがとう。美琴はちゃんと考えていたんだな」

「当麻ありがとう。私は婚約式以来、うまく行き過ぎて浮かれていたわ」
「でも・・やっぱりそう簡単にはいかない。一人が幸せになればかならず何か
反動が発生する。だけど・・それをまとめて全部、不幸から救済しなければ私の
幸せは完結しない」
「だから・・上里、木原唯一まとめて糞たれな神と運命から解放しましょう。
そしてみんなで幸せをつかみましょう
私は連絡した風紀特別部員がサロメを回収したことを確認し、当麻に告げる。
「じゃ・・そろそろ帰りましょう」

私は当麻と手を繋ぎ、帰り支度を始める。私も、そしてアレイスターも含め
古来より人間の運命をもてあそんできた魔神・・その清算をすべきときは迫っている
そんな気がした。

続く











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