とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part003

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

クリスマスの奇跡




第03話


12月19日 午後9時 8月21日のあの橋の上

なんでここに来たんだろうな・・?
街をさまよいなぜか来てしまったここ。

なぜ逃げ出したんだろう?
(そうね、多分アイツにAAAを使っていることをやましいとおもっているからかな)

妙に鋭いアイツは、あの鼻血がAAAの、アイツが「魔術」という異形のテクノロジー
の副作用を感知している。それは間違いない。

多分アイツの言うとおりなのだ。学園都市でも殊に電子制御系でトップの自分、御坂
美琴はこんなものに頼らなくも十分すぎる戦力を持っていると・・

10日前の私の状況とは違う。木原唯一を訴追する過程で膨大な情報を入手した私は
迷えるか弱い乙女は卒業した。食蜂に教わり、食蜂と手を携え、木原唯一とその後ろ盾に
完全な報復を果たした。

学校は再建され、その事業の中で私と常盤台生は格段に強くなった。
だけど、そんなものではアイツに全然足りない。
魔神を知った私は、魔神が別世界に隔離されたことを知っても安心できない。

だから・・アイツになんと言われようとAAAを手放すつもりなどない。
だが・・アイツの正論に私は立ち向かえるだろうか?
私はその件については今一つ自分を信用できない。
だから・・弱い自分は、アイツに立ち向かうことができない私は逃げてしまった・・

・・・・・・・・
どこをどう走ったかわからない。気がつけばここへきてしまった。
私の心の闇の中を示すかのように多摩川の川面から欄干を北風が吹き抜ける。
あの晩夏の夜、私は一方通行と言う怪物へ、ささやかな・・でも自分にとっては
最後の特攻をしようとしていた。

今となっては、あの時の心境はどこか悪夢のように漠然としつつあるものの
雷としかいいのようのない飾り物ではない、本気のそれをぶつけた事実だけが
この腕に感覚として残っている。

あの時に膝上の死にかけたでもとても暖かい上条当麻の、一旦止まった鼓動が、滴り落ちる
涙とともに、復活し、命を懸けて化け物へ立ち向かった、魂のやり取りが、心の中でよみがえる。私のクローン 9969人と、そして私を悪意に満ち溢れた学園都市から救いあげた。その大恩に比べたら、何をしても小さく感じてしまうのだ。

私は、いつも彼の為に何かをしようと焦っていた。受けた大恩を1日でも早く返そう
と気がせいていた。だけど、世界の最深部で、そして世界の頂点で戦う彼の姿はいつも
遠く、追いかけては置き去りにされた。

やっとデンマークの雪原でファイブオーバーの大群から彼を守ることで追いつけたと思ったのもつかの間、あの僧正に、そして彼の右手に私の自分だけの現実は木っ端みじんに打ち砕かれた。

あの晩、私はベッドへふさぎ込んだ。
アイツが遠く感じた。所詮自分は、安定戦力の自分は尖った個性がないゆえに彼の力になりえない、周回遅れの存在。もう私は、上条当麻の傍で戦うこともできないのか?
大恩を返すこともできないのか?

本来なら、好きな男に打ち勝ちたいとか、一緒に戦いたいとか、そんなことは
普通の女の子は考えないだろうな・・

(まあ、守られる女なんて、私には似合わないわね)

小学校のころから、男にだけは負けたくなかった負けず嫌いの自分
その負けん気が、私のパーソナルリアリティの根本を形成する。

今もそれは基本変わらない。上条当麻に守られるだけの女になんかなりたくもない。
彼と共に、支え合う関係になりたい。
だから泣いた、あまりに遠いアイツの距離に打ちひしがれた。

だから・・AAAを知り、閉塞が打ち破られた時は本当に嬉しかった。
ためらいはあった。だけど私は一歩を踏み出した。
(そうだから、これを掴んだことは後悔はしない。)

全部は守れなかったかもしれない。失敗もあった、だけど私は一番大事なものを守ることはできた。

(私には全部を守る力はない、だから自分の一番大事なものだけを必死に守る)

私は拳を握り、欄干を軽くたたく。気合を入れなおす。

(そうね、アイツはまだ私を振っていない、だから自分の気持ちだけは確定させない)

諦めない気持ちが今の私を作ってきたのだから。
私はすべてをアイツにぶつける。今度こそ逃げないと・・

気持ちが固まり、ホテルへ向かおうとする。
(今日はもう遅いし・・寮はやめましょう、もともと外泊予定だし)

だが、私が困ったときにいつも駆け付けるアイツは、・・
こんな時も私にとっても都合のいいヒーローをやめなかった。

私が踵を返したその時、息を切らしたアイツが病院を脱走してアイツが
私の視界へ現れる。

そして、・・・アイツは、上条当麻は言い放つ、私の一番聞きたかった言葉を

「御坂美琴・・俺は魂をぶつけに来た、だから逃げるな」
「ええ上条当麻、私も全力をぶつける、アンタをこの場で叩きのめす」

すべてが似通った、本質的にヒーロー体質の2人があの日のように、ぶつかり合う。

・・・・・・・・・・・
その1時間前、病室

御坂美琴が病室を去った後、俺は呆然としてすぐに後を追うことができなかった。
美琴に告白されたという事実が、俺にはすぐに自分のものとして理解できなかった。

ましてやAAAの副作用をちょっと言っただけで美琴が逃げ去るように退出
した事はなおさら理解できない。

(それにしても、告白か・・)

俺が御坂美琴をどう考えているか?
恋愛というものを、不幸という幻想に包まれていた俺には、自分のモノとしてどうに
も実感を持って理解できない。

美琴は、普段は、俺の前では、不器用な情緒も不安定な年相応の女の子だ。
だが、訳もわからず、ただ目の前の女の子を助けた、最初はそんないつもの
俺の日常の一コマにすぎなかった。

だが、・・8月31日にアステカの魔術師に「御坂美琴とその周りの世界を守る」
と約束したその瞬間から運命の糸に導かれるように何かが変わり始めた。

そして・・あの僧正襲来の中、フィアンマという俺が知る限り最強の男が
まったく歯が立たない、危機的な状況で、自分の能力が全く役に立たない状況
で、臆することなく、最善手を模索し続けていた美琴。

美琴は、自分の役割が不満でしょうがないようだが、客観的に見て、あの僧正を
いらいらさせるほど、美琴の頭脳は冴えていた。

何より、あの絶望的な状況で、美琴がいるだけでどれだけ心が落ち着いたか。
魔術の事なら、確かにインデックスやオティヌスはいる。だけど・・あの
状態で、美琴なしにどれだけ落ち着いたか俺にはわからない。

何より、美琴は命を懸け、俺の為にAAAを起動させ、死にかけても、俺の
手を振り払った。
守っているつもりだった。だけど、俺はそれが俺の思い上がりであることを
いやでも認識せざろう得ない。

客観的に、俺は御坂美琴がいなければ、ここにいない。
「何が都合のいいヒーローだ」
俺は手を握りしめる。
「はっきり言って、俺は美琴にとって本当にヒーローなのか?」

俺は、「御坂美琴」という存在に何を感じているのか?
いろいろ考えるが、はっきり思考がまとまらない。
はっきりしているのは、アイツは凄いいい奴だ。どんな状況でも折れず、自分を
投げ出して周りを守ろうとする。善性の塊、いるだけで、心地の良さと安心感と
爽快感を周りにもたらす。

そして俺にとって御坂美琴の存在がとてつもなく、大きな存在であること。
その事実は、はっきりわかる。

だけど、・・それが恋愛対象かどうか・・

美琴を大事な存在に思うがゆえ、俺は簡単に告白を受けいることができない。

とても、身近で頼りになる存在だから、それだからこそ、俺は考え込む。

この学園都市、いや日本という、さらに言うなら世界的に見ても
屈指のお嬢様学校、その頂点に君臨する御坂美琴。

その本物のお嬢様の御坂美琴は、何に恋しているのか?

俺にも、答えは分かっている。要するに、この右手が一方通行を叩きのめしたからだろう。
美琴の目には、俺は地獄の底から引き揚げた、とてつもない能力者・・そう映っているだろう。
だが、美琴の目には、俺の学校の悲惨な日常は見えているだろうか?

御坂美琴の目には、竜王の首を持つ、とんでも能力しか見えてないかもしれない。
それが、俺自身にも制御不能で、簡単には使いこなせない、能力である事さえ、多分
知らない。

だけど・・俺は頬を叩く

結局は御坂美琴に本気の告白にどう考えるかそれだけじゃねえか・

御坂美琴という本気の告白が俺の鈍感な心を揺り動かす。

そして、彼女と積み上げた激動の特に12月以降の日々が脳裏を駆け巡る

そうだな、
俺は気が付いてはいなかった、でも俺も心のどこかで、美琴を求め続けて
いたのかもしれない。
それがどうゆう感情か、俺は知らないだけだったのかもしれない。

だが、今なら言える、俺にとって御坂美琴はかけがえのないそして
俺が命をかけるべき唯一の存在であることを、
だから、・・俺はそれを告げる。

・・・・・・・・・・・・・・・

再び橋の上

私は、上条当麻とあの因縁の橋の上で対峙している。
ある意味くだらない素直になれない男女の意地と意地のぶつかり合い。
だが、その関係も終わりが近づいている。2人ははっきりと、似た者同士
の性根にひかれあい、その惹かれ合う心に気が付こうとしている。

「なあ美琴」
「何?」
私は、当麻が初めて、私を美琴と呼んだことに心音が高くなる。

「俺は、この前までお前のことを異性と思っていなかった」
「ふ・・アンタらしいわね、どうせ喧嘩友達くらいにしか思っていないでしょ」

「はは、確かに、な・・」
「だけど、お前は、いつも俺を体を張って助けてくれた。ロシアでもハワイでも
東京でも、そしてデンマーク、でも」
「何より、熱波でもな・・俺とその仲間をエレメントから救ってくれた」
「本当にありがとうな」

私は胸が熱くなる、手段はともあれ、上条当麻にはっきりと頼っていると
言われた。まだまだその背中は遠く、簡単には届きそうもない。
、だけどしっかりと、一歩づつ、彼の力になれている。
顔を綻ばせ、しっかりと彼に答える。
「ありがとう、少しは頼ってもらえるようになったかな」
「正直、12月以降は美琴がいなければ俺は詰んでいた、それが事実だよ」

私は、当麻のいつもの鈍感さに警戒心をいただきつつ、答えを期待してしまう。
それに、もう曖昧にしたくない。

だが、現実は甘くなく、当麻は私の触れられたくない不都合な真実に触れてくる。

「俺は、美琴を信頼できる友人だと思っているし、とても頼りになる存在と思っている」

「だから、お前にとって不都合な事実でも言わなくていけないと思っている」

私は大凡当麻が言いたいことは理解し、身構える。どちらにせよ、この問題は
避けては通れない。だから私はこの目の前の男を論破しなければならない。
場合によっては殴り飛ばしても

「はっきり言う。もうAAAは捨てろ」
「電子制御系で圧倒的な能力者、あらゆる駆動鎧を制作・運用できる御坂美琴には
無用なはずだ」

私はおかしくなる。そう・・レベル5で済む事態ならAAAなんていらない。
木原唯一の研究成果を調べ上げ、あらゆる小細工の仕組みと制御方法を脳
コピーした今では、大概の敵はどうにでもなる。
だけど・・そんなものは上条当麻の八竜には遠く及ばない。

「心配してくれてありがとう。だけど、まだAAAを手放すわけにはいかないわ」
「確かに副作用はある、死にかけたこともある。だけど、私はこの奥底にある
アレイスタークロウリーも、魔術も全然理解できていないわ」
「そんなんじゃ、魔神達には全然足りない」

・・・・・・・・・

俺は、美琴の心に僧正が残した傷跡の深さに愕然とする。表面上に毅然と、常盤台
中学のエースを貫いている美琴が心の奥底で、魔神に踏みにじられた、自分だけの
現実の喪失感にさいなまされている現実に、身を焦がされる。

「美琴はまだ僧正の事を気にしているのか?」
「気にしていないと言えば嘘になる」
「正直、こんなAAAに頼りたくなるほどね、自分のポリシーをまげてまで、
副作用があるとわかりつつ、でも・・やっぱり捨てられない」

(俺は、美琴が自分だけの現実が崩壊するほどのショックに耐え、必死に周り
の世界を守り続けるようもがき苦しんでいた現実に、その心が痛む)

「私は、AAAに手を出したことは決して後悔しない」
「失敗したこともある。でも、守れた命もある、それに・・」
「常盤台中学の件、覚えている?」

美琴の目が真剣なものに変わるのを俺は見逃さない

「ああ確か校舎が全壊した・・」

俺は、胸が締め付けられる、俺の力不足で、早々にリタイヤし、結局美琴一人に押し付け
てしまった常盤台防衛戦、美琴は絶望的な状況の元、一人で惨劇に立ち向かった。

「私はあの崩壊した常盤台を仲間とともに再建した」
「え?・・」
「私は、自分の力不足で、木原唯一に敗北し、学校のみんなに迷惑を掛けた」
「それを、みんなの支えによって、どうにか取り戻すことができた」
美琴の顔に決意がみなぎり始める。責任感、自責の念、そして悪意や、闇に立ち向かう
「お姉様」の凛とした顔に変わる。

「今の私のパーソナル・リアリティ(自分だけの現実)は、AAAの使用を前提に
最適化している、今更それを捨てることはできないわ」

「それでも・・」

俺は悟る。御坂美琴は、常盤台・学舎の園を守れなかったことを、自分自身の自責の
念として心に深く刻み込んでいる。

(だけど、このままではロシアンルーレットのようにいつか美琴は致命的な重傷を追う)
俺は、美琴にどうにか説得しようと試みる、美琴は本質的には理性的で話せば分かる
タイプの人種だから

だが、俺が言う前に美琴が先に口を開く
「私はね、正直僧正くらいでこんなに取り乱したりしないのよ」
俺は美琴に意外な話に耳を傾ける
「上条当麻の右腕に潜む、八竜の力に絶望させられたのよ」
「私は、アンタの傍にいた、アンタの力に少しでもなれると思っていた、だけど上条当麻
の右腕は、日常の世界に住む私の理解では想像すらできない性質のものだった」
「だから・・こんなものに手を染めたのよ」

俺は、あの誇り高い強靭な精神を持つ御坂美琴を苦しめていたのが俺の右手だった
現実にぶちのめされる。

「だけど、今の私はある意味AAAに救われたわ、これで失敗をなんとか取り戻した
木原唯一の一味を打倒し、壊れた学舎の園の日常を短期間に再建した」
「だから・・これを手放すわけにはいかないわ、何より」
「私は、決めたのよ。上条当麻が、私とその周りの世界を守るなんて幻想は私が
ぶち壊してやるとね」
「神は自らを助けるものにしか手を伸ばさない」
「私が、自分の手で周りの世界を守り、アンタを、上条当麻をその周りの世界ごと守るとね
そのためには手段は選ばないわ」
「もちろん、あのシスターも、元魔神の妖精も猫もね」

俺は、覚悟を決めた美琴のただならない雰囲気に圧倒される。
あの8月21日の橋の上なんて比べようもないほどの圧力を感じる腹をくくった
本気の御坂美琴

学園都市の闇の木原一族の狂気を知り、それでも折れることなく立ち向かうとても
強い少女。あのデンマークの頃よりもさらに科学を極めた女。

だけど・・その少女が本当は性根の優しいただの少女であることを俺は知っている
そしてその少女を何があっても守ると決めた以上は・・

俺は・・・俺がなすべきことは・・ひとつしかない
俺に取って御坂美琴はただ一つの守るべき存在である事実を今告げる。

「美琴、・・俺は・・御坂美琴のすべてを受け入れる」
「お前一人で戦わせない、俺も一緒に立ち向かう、だから」

俺は美琴の前に進み、華奢な腰に手を回す。美琴を引き寄せ、顔をみつめる
こわばった美琴の顔色が驚愕につつまれ、ほのかに紅く染まる

俺は、美琴の端正な顔に頬を寄せる。
「だから・・もう一人で悩むな、命を捨てるなんて言うな」

美琴が万感の思いに、包まれたのか、目から透明な液体がこぼれ落ちる。
よほど耐えていたのだろうか、常盤台のお嬢様たちの前で決して見せることのない
表情を俺に向ける。
やがて少し落ち着いたのだろうか、涙を拭い、端正な顔を作り直す。

そして美琴は形のよい唇を俺の頬に寄せ、意思の籠った声で語り始める。

「当麻はずるいわ・・私の心のなんて、すべて当麻のものよ。8月21日からね」
「だから・・」
「これは、私からのファースト・キスよ」

美琴の、端正な顔、意思の強そうな瞼、その今まで気がついていなかった異性
としての美琴に俺の鼓動が高まる。

(よく見れば、美琴て本当綺麗な女の子だな・・今更だけどな)

俺は、美琴軽く抱擁し、接吻を促す。
美琴が、俺の口に、軽く口を合わせる。

そして・・・

その瞬間、二人の距離が0になる。
2人の口がひとつになる。熱い何かが通い合い、魂が交わり合う
とても似通った、自分の命よりも周りの世界を大事にする2人がお互いを認め合い
一つになった瞬間、感極まった美琴が、その意思の示す凛とした瞼をつぶり枯れたはず
の液体を滴り落とす。

漆黒の闇の中、数々の試練を乗り越えた2人はしばし、お互いの思いを知った喜びに
身を任せ、時の流れに身を任せていた。

だが、・・歩み寄った2人が本当にひとつになるまでまだ、大きな課題が残っている
事を2人はまだ知らない。

だけど、共に手を取り合った2人なら、どんな艱難辛苦も乗り越えるだろう。
2人はそう信じていた。

続く










タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー