とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある乙女のバレンタインデイ・キス




第02話


2月13日(月) 夕刻17時

私は、食蜂に会う前に大丁の提案を纏める。
あの女にはノープランで会うのは危険で誘導されるのも嫌なので
こっちペースで進めることにする。
正直食蜂の力を借りるのは癪だが、他に手段もない以上
選択も余地もない。そもそも上条当麻はなぜ昏睡しているのか?
心電図にも脳波も異常もない、つまり自分の意思で起きることを拒否している。
そういう結論になる。

だとすると、叩き起こすというよりは、アイツがこの世へ復帰する意思を促すよりほかに
ないという結論になる。クリスマスの最後の審判事件とそれ以降の学園都市の復興事業
で気が付いたことだが、アイツのアレイスターによって作られた不幸と、オティヌスとの
対峙で無限ともいえる期間繰り返された一方的な虐殺、アイツはその不条理に耐えた。

私は怒りがふつふつ沸いてくる。何がこの世の基準点だ。何がこの世の審判者だ。
だけど、それは自分にも突き刺さる。自分も含めて誰もアイツの苦悩を理解できていな
かった。アイツの右手を過度に信頼し、知らないうちにアイツなら何があっても大丈夫
と思っていなかったか?

そんな周囲の過度の、過信とも言うべき信頼が知らず知らずのうちにアイツを追い詰めて
いたのではないか?後悔の念が私の脳裏をよぎる。もっとアイツに触れ、アイツの悩みに
アイツの立場に立って考えることはできなかったか?

だけど、覆水盆に返らず、起きてしまったことはどうにもならない。
これから、自分の本当の気持ちを伝えて行こう。そのためにはどんな手を使う。たとえ
自分が苦手な奴だろうが、そんなことは関係ないのだと、自分を納得させる。

・・・・・・・・・・・

私は再建された常盤台中学の生徒会室にいる。食蜂が副会長で私が会長だ。
あの女は、私を焚き付け、「この非常時には御坂さんの野蛮力が必要なの」
なんていい半ば強引に生徒会長に据えた。
(まあそのおかげで金集めもボランティア集めをはかどったのは事実だけど・・)

私は、この女が苦手だ。どちらかと言えば余り関わりたくない。ドッペルゲンガー事件
以来腐れ縁になりつつあるがその関係性にはさほど変わりがないと思っている。
だが、・・上条当麻の事なら話は別
それに、これはおそらく私だけでもダメ、食蜂だけでもダメだろうから・・

私は、会長席に座りながら対面の女に話かける。ほかの委員は席を外している。
「慰労会の件、ありがとうね」
私はとりとめもない世間話から話を始める。
「で、今日はどうゆう風の吹き回し、御坂さんからわざわざ私に依頼ごとなんて・・意外力
一杯ね」
私は席が立ち上がり、防弾仕様の窓から外を眺める。改装時に、木原唯一襲撃や熱波事件
の教訓から、学園の主要部分は核戦争を想定した作りへ私が改装した。

「アンタの事だから知っているだろうけど、上条当麻が昏睡状態なのよ」
食蜂は笑い始める。
「え・・まさかァ知らなかった?」
「意外?正直必死だったのよ・・200万人の家を失った学生や教師のためにこの街の日常
を取り戻す活動でそれ以外の周りが見えていなかった」

「そう?・・」
私は自分の古傷をえぐりそうな食蜂に待ったをかける。
「それ以上は言わないで。ええ・・私は彼の悲惨な姿に心を閉ざしていたかもしれない」

それまでいたずらっ子のようにクスクス笑いをかみ殺していたあの女の表情が真剣なものに変わるのを私は見逃さない。

「それでエ・・御坂さんは今さらどうしたいの?」
「彼は科学力的な方法では覚醒しないわよ。もちろんオカルト力でさえもね・・」
私は溜息をつく。まったくこの女の情報網には適わない。いつも私が知らない情報を
どこからかかき集めて私を焚き付ける。
(それでも・・コイツも結局常識の範囲を超えない・・)

「ええ・・普通の方法ならね・・」
私は、低音で少しドスを効かした声に変える。
「だけど・・アイツを殺す気でやればどうかな・・」
食蜂がぶるぶる震え始める
「正気?」
「このままでは・・アイツは、人生を踏み外すわ・・人助けの末にアイツが人生をふみはずすような事は絶対あってはならない」
「だから私がアイツを叩き起こす」

食蜂が驚いたような半ば呆けた顔で私を見つめる
「本気なのね・・」
「ええ、大嫌いなアンタに頭を下げるほどには・・ね」
私は食蜂へ深々と頭を下げる。

「残念ながら今回も微力な私の力では、上条当麻を正気に戻すことができない」
「だから今回も食蜂操祈の全力を貸してほしい」
2人の間には微音の空調音のみしか聞こえない。

沈黙を破り食蜂が声を発し始める。
「御坂さん・・頭をあげて・・御坂さんは簡単に頭を下げてはいけないわ・・」
「私を変えた彼のことだもの、私も微力を尽くすわ・・」

あの飄々とした食蜂の目から涙が零れ落ちていることを私は確認する。
(食蜂も・・私と同じように彼に救われた一人だから・・)
「ありがとう」
食蜂は目から流した液体をさりげなく、ハンカチで拭き私に囁きかける
「で、・・具体的にはどうする気?」
「科学もオカルトを見逃した彼をどうやって救う気?」

私は、食蜂の服越しでもはっきりわかる豊かな胸を眺めながら口を開く
「ね・・なんで上条当麻は覚醒を拒否しているのかな・・」

「それは・・・・」

「脈動も呼吸も脳波も正常、普通なら8時間も睡眠すれば起床する」
「これは、医学の問題ではないと思うわよ。」
「だから・・これはどっちかというと食蜂の領域だと思うわ・・」
食蜂は慌てて、否定し始める。あらゆる幻想をぶち壊す幻想殺しに洗脳などできない
とでも言いたいように。

「だけど・・御坂さんも知っているように彼の洗脳はできないわよ・・」
「ええ・・全身に効果が及ぶ能力は彼に効き目はない。だけど、確かテレパスなら
私と同じく、貴方の能力も上条当麻へ届くはずよ・・」
「え?・・」
「ダメ元とも言う・・諦めることを確定する前にやれることは全部やろう」

「分かっているわよ・・」

・・・・・・・・・・・・・

病院 2月13日 20時

アイツは、上条当麻は本当に幸せそうな顔で目を覚まさない。
(本当に幸せそう・・正直・・コイツにとって何が幸せか・・私にはわからない・・だけど
私は幸せになるためにコイツに起きてほしい)
それは、私のエゴかもしれない。だけど・・コイツには笑って生きてもらいたい。
それは隣にいる食蜂も同じだろう。それだけでなく、コイツに救われた多くの
不幸な運命をコイツに救われた女の子達の願いだろう。

私はコイツの左手を握る。
「さて始めるわよ」
私は頭に紫電を蓄え、数億Vに達する静電気を作り出す。
「まずは・・これを左手に流す・・」
私は右手でアイツの左手を掴み、左手で頭を触り電流の回路を作る。
青白い眩い輝きが当たりを包む。

「そろそろいいかな・・」
私は夏休みのレベルアッパー事件を思い出す。木山春生を電撃で気絶させた後で
偶然つながった電気回路ごしに、伝わった彼女の記憶。

もちろんそれだけでは、上条当麻の心のドアを開ける事はできない。
だから、
「食蜂・・今回路がつながっている・・私の心の声を彼につなげてくれる・・?」
食蜂が、ち密な操作で私の心の声を上条当麻へ繋ぐ。

食蜂には足りない電気的な出力を私がこじ開け、私ではできないち密な精神回路制御を
食蜂が行うことで、上条当麻の強固な精神に風穴を開ける事に成功する。
とはいえ、強大な電流でまだ心をこじ開けただけにしかすぎない。
私は精神を研ぎ澄まし、繋いだ回路で呼びかけを始める。


「よし・・」
莫大な情報が彼の心の声が聞こえる。

多くの不幸な少女を救った記憶。
何度も強大な力に蹂躙され、それに抗い生き残った記憶。
魔神オティヌスに幾万回と殺された記憶。そして、あらゆる時空・次元を
破壊しようとしたアレイスターの狂気。彼の狂気のような経験が奔流のように流れ込んでくる。

分かっていたつもりだった。彼の置かれた理解しがたい異様な環境。彼が立ち向かってきた
この世のあらゆる悪意。その重苦しさに私の心は壊されそうになる。彼が最終局面で私の
参戦を拒否した本当の理由を始めて悟る。直接触れたわけでないのに、少し触っただけで
押しつぶされそうになる。

だけど・・ここで私が折れるわけにはいかない。全人類のため?
いいや、そんな御大層な物じゃない。
救ってくれた幾万の不幸な少女なため・・それは違う。
そう・・全部自分の為だ。だから私はそのすべてをかけて今度こそ彼を救い出す。

・・・・・・・・・・・

正直楽じゃなかった。私は自分の心を侵食する悪意にくじけそうになる。
「くそ・・このままじゃ飲み込まれる」
彼の引き籠った心を邪悪な心が包み込んでいるのがはっきりわかる。
「食蜂・・私の脳を刺激して」
私は生体電流を操作し、私への精神攻撃を物理的に破壊する。

電圧・電流を精緻に操作し、彼の心へ悪意を植え付けている回路を特定し、超電磁砲の
イメージを形作り攻撃を加える。細胞と神経細胞の単位で超電磁砲に見立てたナノ単位の
電磁パルスを使い外科手術的に粉砕する。

だが・・破壊しても破壊してもまるでガン細胞にように再生され、一向に減る気配はない。
(AIMバーストやドッペルゲンガーと同じ・・再生の核を壊さない限り何度も復活する)
私は、食蜂にサインを送り、微細に回路情報から彼に負のイメージを送る核をサーチさせる。
私はその情報を読み取り、素粒子の単位で位置を特定する。
(魂とは言ったところで、脳細胞なしに心は成り立たない。私はそのエネルギーの核を
叩く)
正直私の脳細胞もきつい、普段しないような、数百億を超す脳細胞とその脳細胞から
張り巡らされたニューロン、小さな宇宙とさえ呼ばれる複雑極まりない世界を、慎重に
なおかつ、私の脳への精神攻撃を防ぎつつコアをサーチする作業は目もくらむ作業だ。

雨あられのように悪意の塊が高速回転する電磁シールドに見立てた防壁に突き刺さり
まるで精神内とは思えない程の衝撃を感じる。だけど・・

食蜂だけなら出力が足りない、私では細かな操作ができない。不足するものを補い合った
2人の少女の協業は、ついに・・悪意のコアを見つけ出す。

「みいつけた」
「これがコアね・・」

電圧・電流をち密に調整し、周りに被害を与えずかつ完全に破壊する超電磁砲に見立てた
電磁パルスを形成する。
「アンタを追い詰めている悪意を粉砕する」
「いけえ・・」

閃光が辺りを包みコアの破壊を確認する。
「終わったわね・・」
すべてが終わった私は、精力を使い果たしへたり込む。
(久しぶりの電池切れね・・)

だけど・・本当に良かった・・
(今の自分でやれることはすべてやった)

・・・・・・・・・・・・・・・

2月13日 23時30分 病室

時間にして20分くらいだろうか・・へたり込んだ私は意識を取り戻す。
彼は・・どうなったんだろうか・・

まだはっきりしない意識の中・・私の目は彼を捉える。
あ・・私は兆候を見逃さない。生き物のように瞳孔が動いている。
(よかった・・)


「御坂か・・」
「おはよう・」

「ふ・・しばらく・・寝てたな・・生まれて初めて・・ここちよく寝れた」
陰惨な感情から解放された彼はとてもまばゆく見える。

「ところで、御坂・・俺は何日寝ていた・・?」
「えーと51日になると思うわ・・」
「は?・御坂今なんて言った」
「アンタは51日寝ていたのよ・・」
「嘘だろう・・そんなバカな・・」
つやつやとしていた上条当麻の顔色が変わる。
「御坂今何月何日だ・・?」
「え・ああ‥2月13日 のもう後25分で2月14日になるわ」

上条当麻の顔に落胆の表情が浮かぶ
「うそ・・」
「まじで?」
「そうか・・」
上条当麻が血相を変える。
「はあ・・とうとう・・ダメか・・」

世界を3度も救った英雄がたかが日常のそれも底辺校の期末試験で
思い悩むそのギャップに可笑しさを隠し切れない。

「ふ・・はははは・・」

「へ?」

「ふふ・・感謝してほしいわね・・」
「上条当麻の顔が驚きに包まれる・・」

「それは・・」
「まあ・・世の中には知らないことがいいこともあるんじゃないかな・・」
「まさか・・」
「ふふ・・細かいことは気にしないの・・」
私は、彼の学校のサーバーを改竄し、出席日数の記録をごまかそうとした。
(だけど・・そんなことは上条当麻が喜ばない)

「いや・・御坂の能力のすごさはよく知っているし、絶対それがバレないこともわかる
けどさ・・」
「だけど・・不正はよくないと思う・・」
「もちろん、俺の留年を回避するために御坂がそんな事をしたことは感謝する」

「だけど・・俺のために御坂に犯罪に手を染めさせるわけにはいかない」

「ありがとう。だけどね。・・」
「正直アンタは日本とか学園都市の基準で何か誇れる実績がある?」
「アンタが学園都市はおろか世界を3度救ったなんてさ・・誰が評価するの?」
「それを評価すべきアレイスター・クロウリーはもうこの世にいないのよ」

「それは・・」
「もちろん私にとってアンタは命の恩人よ。それにイギリス清教とか・・アンタを慕う
人間は少なく無いでしょう・・」
「だけどそれがアンタの・・」
私は敢えて核心はつかない。またトラウマをこじらせても困る。
「まあ・・ここから先は言うまでもないわね・・」

「ああ・・御坂の言う通りだよ」
「俺は確かに自分自身が見えてねえ・・いくら魔神や最強の魔術師に勝とうが
俺の成績不振や出席日数不足の事実は消えしねえ・・」
「つまんねえよな・・ライトノベルの主人公なら全部チャラになってさ・・なんとなく
出席不足も成績不振も全部うやむやになってさ・・」

「安心して私もアンタの悩みは分かっているつもり」
「ちゃんと・・後づけだけど統括理事会の特別公休に振り替えているわ」
「まあ・・やろうと思えば成績だって下駄をはかせるわよ。」

「御坂・・」

「約束したでしょ・・」
「私は、必死で御坂美琴と周りの世界を守り切ったわよ」
「その中にはアンタの世界を守ることも含まれるのよ」


「御坂にはかなわねえな・・ありがとう」

上条当麻にとって特に11月以降、御坂美琴の存在は多きなものになりつつある。
その事実は、12月の頃には第3者には見え見えの事実だが、以外に鈍感な美琴は
気が付くことはなかった。だけど・・3度目の命を懸けたやり取りで美琴も上条の
自分に対する思いを感じ取ったのだろうか・・初めて美琴は自分の心を伝える覚悟
を固める。

「いいのよ・・」
「私はいつでもアンタの味方になる。」
私は、気分が高揚していたのだろう・・それに・・正直アイツは、上条当麻は
いつみても危なかったしい。最後の審判事件のあの時だって、結局自分の命を投げ出した。
そんなアイツに単純に明日は明日の風が吹くなんて予定調和はあり得ない。
そのことに気が付かされた私は、いつもなら絶対しない選択を選んだ。

(もっと・・いい雰囲気で言いたかったわね・・)
(だけど・・今この場で言わなければ後悔する)

一言いえば結果は出る。だけど、臆病な自分は10月のある日にそれを意識して以来
何度も言う機会があったにも関わらず最初の一歩を踏み出す事が出来なかった。
(だけど・・今しかない。)

「ね・・」
正直、一言言うのがつらい。鼓動が高まり、脈動が早くなる。
バクバクと効果音のような心臓の鼓動。美琴は入学試験もレベル5に初めて認定された
システムスキャンもいつも驚くほどの平常心で乗り越えてきた。

だけど、この恋愛感情だけは、うまくコントールできない。自分だけの現実を侵食され
レベル5には恥ずかしい能力の暴発する引き起こすほどの、管理できない感覚。
(だけど・・それは決して恥ずかしいことではない)
(そして、・・分かってもらえるなんて・・そんな他力本願では通じない)

自分が思うなら、自分が抱えきれない思いを抱えるなら、それを伝えなければならない。
だから・・私はこの思いをはっきりと誤解のしようがない、あの鈍感野郎にも分かる言葉
で伝える。

「ね・・上条さん・・当麻の傍に私の居場所はあるのかな」

言い方を変えたせいなのか、上条当麻の目に驚きが浮かぶ
「え?御坂何を」

「これは一人の女の子の話よ・・」
「8月の夜、その子は、化け物に蹂躙され、1万人の血を分けた親族を嬲り殺しに
された。助けを求めようにも敵はこの街そのもの」
「アンタはその絶望した女を右手ひとつで救いだした。」
「でも素直になれないその子は、自分の気持ちを気が付くこともなく、その想いを伝える
こともできなかった。」
「でもその子は、アックアという化け物に、アンタが立ち向かったときに自分の莫大な感情にようやく気が付いた」
「それが、恋という固有名詞で書かれる感情であることにようやく気が付いた」

いつもはおちゃらけた上条当麻の顔色が真剣な表情へ変わる。
「本当に・・不器用だったわ・・御坂美琴という女は」
「でももう私は自分の心を偽らない」
(もう言ったことに後悔しない)
「上条当麻さん、私は貴方の事が、大好きです。私は貴方のためになんでもやりますので
どうか、私を傍においてください」

「御坂・・」
上条当麻の顔が驚きに包まれる
ふう・・
上条当麻はよろよろと長期の入院で弱り切った体力を振り絞り立ち上げる。
「本当に・・いいのか?」

「え?」
(いったい何を言いたいんだ・・この男は・・まさか・・)
「俺は・・美琴が知っている通り、不幸な男だ」
「しかも・・成績も良くない」
「金銭的にも恵まれない」
「まあ・・そんなことは御坂美琴ほどの人物が全部承知な事は分かっている」
「正直・・美琴の気持ちはうれしい」


「だけど、美琴は、常盤台いや学園都市の顔と言ってもいい存在」
「そんな美琴に俺は釣り合うのか・・?」
「底辺の高校で、進級さえままならないそんな男に」
「学園都市でも最高レベルの学校でトップの成績を誇る御坂美琴がな」

(私はおかしくなる・・魔神さえ、学園都市の独裁者さえ右腕でぶっ飛ばした人智を超えた
存在そんな人物がたかがレベル5くらいで何をためらうのだ)

(だけど・・そこまで真面目に考えてくれるのは嬉しい)
私は、少し変化球を投げ返す
「ふふ・・当麻ありがとう。そこまで私の事をちゃんと考えてくれて」

「美琴・・」
「だけど・・当麻・・私は当麻を愛する気持ちに嘘はつけない」
私ははやる気持ちを抑えて呼吸を整える

「ごめんね当麻」
「いつも素直になれなくて私は、自分の思いをきちんと伝えなかった」
「だけど、不器用な女の子の告白は本心よ・・嘘偽りもない。それに・・」
「私が、上条当麻とその周りの世界を守る。どんな手を使ってもね」

「美琴・・」

「だから答えを聞かせて、こんな可愛げもない御坂美琴は上条当麻の傍に居ていいの?」

「え・・それは」
「まだ答えを聞いていないわ。」
何かを悟ったのか当麻が訥々としゃべり始める。

「正直突然の事で、本当に俺が美琴を幸せにできる自信もない」
「だけど、俺は美琴を大事に思っているし、とても頼りにしている」
「だから、美琴の俺を思う気持ちは大事したい」

当麻は、背筋を伸ばし惚れ惚れするほど真摯な顔で、私を見つめる。
「俺は、正直一人の女の子の人生を保証できるほどの甲斐性もない」
「だけど・・」
当麻は私の手を病み上がりとは思えない意外としっかりとした握力で握る。
「美琴は自分の気持ちを偽らずに答えてくれた」

「俺も、自分の気持ちに偽らずに答える。」
「美琴を幸せにすることは多分俺にはできない」
「だけど、俺は美琴が傍にいれば幸せになれると思う」
「だから俺が美琴の傍に居させてほしい」

「本当に・・本当にいいの・・?」
私は当麻の手を握り返す。
そして、私は当麻にはっきりと伝える
「2人で一緒に、お互いとその周りの世界を守ろう」
当麻は笑い始める。

「そうだな・・」

「まずは・・期末試験から頑張ろうか」
「そうね。しばらく人助けは忘れてね・・」
「ああ」
「それと」
病室のデジタル時計が2月14日の午前0時を確認し、私は病室の冷蔵庫から、
病院内のコンビニで買ったショートケーキと缶コーヒを当麻に渡す

「これは私の気持ち」
「え?」
「御免、最近までボランティア活動でバレンタインデーのこと
すっかり忘れていた」
「だから」
私は、無防備な当麻の頬へ軽く接吻する。
その頬の感触が甘酸っぱくとても暖かい

「明日からまず勉強頑張ろう」
「そして当麻の失った日常を取り戻そう」
「ああ」
やっと届いた片思いの恋
これでやっと自分に素直になれたそんな気がした。

続く









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