とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part3

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「外に出たのは良いけど、どこ行くんだ?」
 無計画中の無計画でなんとなく家を飛び出した、そんな二人に目的も計画もあったもんではない。
 上条に至ってはこの姿の美琴を他の誰かに目撃されたらどう説明しようか考えている。どうやら見つかる事前提で考えているらしい。
 しかし上条が全くの無計画だったせいか、天候は悪くならない、引き続き心地いい日差しが降り注いでいる。

「どこ行きましょっか? この姿でしか体験出来にゃい場所に行ってみたいわね」
 美琴はというと姿以外はいつもの調子である、気持ちを切り替えて“今の姿”で楽しむ事を考えている。

「んじゃ、ペットショップとか、ペット同伴でしか入れない喫茶店とか? でも姿見られちゃマズイってのに…」
「ペットって何よ! 私だってにゃりたくてにゃったわけじゃないんだからねっ!」
「耳が生えてるからある程度ならごまかせるかも…髪の色もそれっぽいし。仕方ねぇ、ブラブラしてるくらいなら行ってみっか」

 行きたい場所が決まっていると気持ちに余裕が出来るので少し遠回りし散歩をしながら進むことにした。
 だがこれが不幸へのルート、気持ちに余裕は持っても緩めてはダメなのだ。しかし上条は緩めていた、というより癒されていた。
 そしてちょっとだけ自然の多いルートを選び進む。

「♪~♪~」
「随分とご機嫌ね」
「いや~オマエと居ると癒されるわ、多分ネコ効果だと思うけどな」
「にゃ、にゃによそれ!」
「それだよそれ!」
「にゃ?」

 美琴は首をかしげる、正直意識していないと自分でも気付けない。時々「にゃ」という言葉が入ってしまうのだ。
 上条はそれが良いらしく、もっとやれと言わんばかりに笑っている。心からリラックスしている雰囲気。だがそれをぶち壊したのは…。

「カミや~~~~~ん!」
「ゲ…」

 誰かが走ってくる、というにはもう人物がハッキリしすぎている「青髪ピアス」と「土御門」
 これを見て上条がヤバイと思ったのは言うまでもない、特にこの二人は…と思っていた人物が二人一緒に登場するという最悪のパターン

「(み、御坂、オマエはネコだもし見つかっても「にゃ~」以外は喋らなくて良い、取り敢えずここは乗り切らないとマズイ)」
「(わ、分かったわ…「にゃ~」よね「にゃ~」)」
 上条は小声で美琴にここはやり過ごす意思を伝えた、ハナから演技力なんざ期待しちゃいないというのが本音なのだが。

「奇遇やな~カミやん」
「にゃ、にゃ~」
「ん? 今“何か”の鳴き声がしたぜよ」
 フライングにも程がある、存在を知られずにやり過ごす方法が一番だと考えていた上条は心の中で頭を抱える。
「あ、ああちょっとな~ネコを預かってる」
「でもネコにしちゃハッキリと「にゃ~」って言いすぎじゃなかったかにゃー?」
「他に何の生き物が居るってんだよ!」
「人間がネコに変身した!という可能性も考えられるでぇ~」
「(こいつら無駄に鋭い…)あ~もう何だって良いだろ! じゃ急いでるからこの辺で…」
 そうはさせん!と言わんばかりに青髪ピアスが上条の肩を後ろからガッチリ掴む、少しでも“前”を見られたら存在がバレる。

「え、えーっと…」
「カミやん……」
「(や、ヤバイ!)」
「……小萌ちゃんをあんまり泣かせんといてな~」
「へ…? は、はい」
 緊張の糸が切れたせいで一気に上条の表情が緩む、この顔を誰かが見たらきっと誘われて笑ってしまうに違いない。
 しかしその顔を下からではあるがしっかりと見ていた“モノ”が居た。そう美琴である。
「にゃは…っ!?」
「…今笑い声が確かに聞こえたぜい」
「…明らかに人の声やったなぁ」
「……、ふ、不幸だぁーーーーーー!!!!」
「胸に何が居てるのか確認しまっせ~」
「待てい!カミやん!」
「(ふ、不幸ね…)」

 その後一時間に及ぶ追いかけっこの末、上条は向こうを諦めさせる事に成功…決して逃げ切ったワケではない。
 そう…あの二人には嫌でも会う事になる、言葉通り本当にその場しのぎでしかなかったのだ。

「ハァ…ハァ…アイツら…」
「あ、アンタは大丈夫にゃの!?」
「……これくらいならどうってことないぜ」
 そして一息置いた後、上条は美琴に謝らなければならないことに気付いた。
 気温関係なく人間ある程度の時間を動き続ければ当然汗もかいてしまう。
 そう…今学園都市のとある場所でヌレヌレムレムレの男女二人が密着しているのだ。
「……オマエも大丈夫か? 長い時間揺られてたんだから気分が悪いなら言えよ」

 この一言で美琴もとある事に気付いた、ネコは性質上汗はかかない。だが自分はヌレヌレのムレムレである事。
 そして自分以外の汗であることも同時に明らかになった、そうなると相手は一人しかいなくなるという事。

「(こ、これがコイツの匂い…じゃにゃくて!! は、早くどうにかしないと…そ、そうだわ!)」
 美琴は自分が小さくなってしまった時に、携帯と財布、そしてレールガンを撃つのに利用するコインは小さくならずにその場に…
 という事は運が良ければまだ残っているはず。そうすればこの場はもちろん、心配している人間に連絡することも可能。

「今すぐダッシュ!」
「え・・・どういう事でしょうか?」
「こんくらいにゃらどうってことにゃいんでしょ? じゃ今すぐ走りにゃさい!」
「……俺から体力をとったら何も残らないってのに…不幸だ」

 上条はひたすらに走る、美琴はちょこっと顔を出しルートを指示する。
 日が暮れる前までに終わらせたいので精々持って二時間だろう、それ以降の捜索は困難。
 こうして二人の美琴のオ・ト・シ・モ・ノ探しが始まった―――

その頃
「あいさ!今日はここに泊まる!」
「え?」
「(二人の邪魔は絶対にしないんだよ)」
 インデックスがここまでするのには理由があった、美琴を元の姿に戻すには一つ簡単な行為をすればいいだけ。
 だけどそれは非常に重い事を知っている、なのでその環境を作り上げる為に最低限の協力をしている。今夜インデックスは家に戻らない―――


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