とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

01章-2

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匿名ユーザー

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5 21:50

「……と言うわけです……ごめんなさい……」
「…………………………、」
まだ信じられないのか正座でだんまりな美琴。上条が説明している間ずっと黙ったまま正座しているので優に一時間近くその状態を維持していることになる。もっとも話の内容によっては黙しながら赤くなったり、ふにゃー(電撃防止に欠陥なし)とかしていたわけだが。
「……………………」
「……………………」
長い沈黙が二人を支配する。すでに説明してから10分ほど経っておりテレビの『トゥース!』とか『魚類なめんなっ!』とか『だったらここで満足するしかねぇ!』とか今の二人には全く笑えないバラエティー番組の音だけが部屋に響く。美栄は美琴に飛びついてしばらくしたら泣きやみ、それから現在までずっとにやにやしながら美琴にくっついている。
「………、」
「………、(く、空気重っ……。なにかこの空気を笑い飛ばせるような番組はないかっ……!)」
上条は自分の近くにあったテレビのリモコンを取りチャンネルを変える。
『――――誰が元キング』
ピッ
『DON'T来~い!異能力~!』
ピッ
『―――会は20億円にも昇る資金を学園都市外の組織に流用した疑いで現在行方不明の元科学者、木』
ピッ
『―――――日は新潟の車窓からお送りします』
(…………ろくなのがねぇ……)
上条はリモコンを放り投げる。
「………………、」
「………………、」
また沈黙。テレビが着いているので多少は気休めが出来るのだが、上条も美琴もお互いをチラチラと横目で相手の様子を伺っている。どちらもお互いの視線にだいたい気付いており、そのせいで変に意識してしまいどんどんドツボに嵌っていってしまう。
「………………、」
「………………、」
「ハッピョウしまーす」
美琴のお腹を抱きしめている美栄が天上から引っ張られるように手を上に挙げる。なんだ?と上条は思いつつもこの空気を一転してくれるなら何でもよかったので楽な姿勢になり耳を傾けた。美琴もやはり気まずかったのか安堵の表情でお姉さん座り(今はなんと言うのだろう?)をする。チラッとスカートの中を見るとこんな非常事態でもやはり短パンで上条はちょっと残念に思う。
そして美栄はニコニコしながら、
「――――ミコトへ、おまえはおれのたい―――――――――」
「だああああああああああああああああああああ!!!!何言ってんだああああああああああああああああああああああああああ?!?!?!?!?!」
ドバッ!と上条は起き上がり美栄の確保に向かうが美琴が「ちょ、ちょっと待って!と、とりあえず最後まで聞こっ!ね!?ね!?」とやや興奮気味に上条の顔をぐいぐい押しそれを遮る。美栄は鬼の血相のような美琴の顔に少しも驚かず、むしろ嬉しそうに「じゃーとくべつにカンゼンバン!」とまるで何千何万回と繰り返してきた、もはや生活の一部の動作をするようにこ慣れた事をするように、しかしそれでいてきちんと理解できるくらいの絶妙なスピードで、
「――おまえはたいようだそしておれはたいようがなければいきていけないヒマワリだおれはおまえをもとめてやまないえいえんにおまえをあいするおまえはかんぜんなるゼンあぁおまえのかおおまえのたましいおまえのすべてたとえせかいをてきにまわしてもおまえとミエだけはまもってみせるたとえほかのだれにもりかいされなくてもおまえとミエさえいればおれじゅうぶんだだからもうそろそろもうひとりこどもつく―――――」
―――――ろうおれのミコト。と美栄の口はそこで止まった。
「ぐあおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああ!!!!!!!(下心を詩に書くなああああああああ未来の俺えええええええええええええええ!!!!!!)」
「へ、へぇー、た、太陽なんだ私。アンタ、ひ、ひまわりなんだ。こ、こ、ど、子供欲しいんだ……」
「ぎゃわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
上条はまるで高度10000メートルからパラシュートなしでポイ捨てされたような顔で絶叫した。上条はうぅ……と最後の力でベッドの中にもぐりこみ毛布を全身に被せプルプルと震え始める。それを横目に美琴は、
「へ、へぇー……こ、子供欲しいんだ……」
ともう一度静かに呟く。上条はベッドの中で「うそだもん!欲しくないもん!」と大声で言うが毛布越しなので美琴たちにはただ叫んでるようにしか聞こえなかった。
「……なんかアタシのなかのイメージが……。もしかしてパパまちがえた……かな?」
未来の上条とあまりにもかけ離れているのか、美栄は「間違ってたらやばいなー……」みたいな顔をする。途端美琴は冷静な顔になった。
「…………ねー、未来の『パパ』とか言うのはどんな人?」
「うーん……クールっていうか、オシゴトがだいすき?アタシにもママにもタンジョウビとかクリスマスとかにはいっぱいプレゼントくれるし、すごくやさしいけどあんまりしゃべらない」
「……他は?……もうない?」
「えーとね……うーん」
美琴も確かにそれは上条ではないな、と同意したようで他に何か特徴はないかとどこか寂しそうに美栄の頭を撫でながら聞く。
「あ、いつもふこうっていってるくせによくオンナのひとにこえかけられて、かおあかくしてる」
「よーしアンタ。ビリビリと抜歯。どっちがいい?まぁーどっちにしても半殺しを3回ストレートセットコースはやるからあんま変わんないけど」
美琴が布団にのしかかってきて、
――――――上条は心身ともにひどい目に遭った。


「はい。事情は明日直接お伺いして説明しますのでその方向でお願いします。はい失礼します。」
美琴はお嬢様流電話の仕方(そうとしか表現できない)で電話をし先生から許可を得たらしく意味ありげな視線で上条(歯はちゃんとある)を見て、
「一応許可はもらったけど説明するにはアンタと美栄も一緒じゃないと信じてくれないでしょうね……」
「……やっぱそうか……」
まぁいきなり『未来からうちの子が来たので学校休みまーす』なんていったら残念な電波野郎と思われるだけで休ませてくれないだろう。
「後は俺か……」
上条たちは一通り家族の団欒を楽しんだ(?)あと今後美栄をどうするかと会議をし、結果学校を休んで面倒を見ることにした。上条的には出席日数が~って感じなので「あとは任せた!」と華麗に白を切りたかったのだが「私ね。磁力の応用ですっごい簡単に歯ぁもぎ取れるんだ……」と大切な歯を抜かれそうになったので首を縦に振るしかなかった。上条はゲコ太のストラップ付きのボロボロ携帯を取り出し『小萌先生』と表記されている番号をポチッと押す。三回目のコールで小萌は出てきた。
『?カミジョーちゃん?はいはーい。何でしょうかー?』
「あ、先生?ちょっと連絡したことがありまして……」
『はーい。無理ですねー』
「えぇっと実は…………………って、うぇえええええ!?まだ何も言ってませんよ!?」
『どうせ3週間くらい休むとかいいやがるんでしょー』
「どえ!?な、なんで期間まで先読みできるんですか!?」
『大体カミジョーちゃんの事は分かります。だって………』
「………?だって?」
『――――――――好き、ですから』
「ぶごっ!?」
『―――――手続きが』
「…………、(完全に嫌味じゃねーか………)」
小萌の声はドスが効いていて、幼い声だからこそ上条に普段は感じない冷たい恐怖を与える。
「で!でも!今回は結構マジでやばいことなんです!ケガはしてないけど!」
『……、』
はぁぁぁぁぁぁぁっと小萌が大きくため息をする。小萌は『ちょっといいですかー?』と言って上条の返事も待たずに保留の音楽が流し始める。上条の「あ、はい。どーぞ……」と言う声が空を切る。
「……、」
今の上条には下手に怒られるよりこういうふうに蔑まれた反応の方が辛い。
……。
5分くらい。こんな待てたのは恐怖のせいで逆に時間の感覚が麻痺してるからだと思う。
『ふー………お待たせしました。あのね、カミジョーちゃん。今のカミジョーちゃんはあと一日休むとめでたく100日も休んだことになるのですー。そうなると進級はおろか、学校にいることすらできなくなってしますのでーす。ふぁー………』
「ぶぇえええええええええええ!?ま、マジでせうかっ!!??(と言うかめっちゃタバコ吸っとるやん!!怖ッ!!!)」
『マジでーす。………ふぅー………』
ジリ………とタバコを思いっきり擦る音が電話越しに聞こえる。
(………………………ちょ、これは………………マ、マジで怖いぞ………………)
何か今までにない感情が上条の中に生まれる。
ちなみに公立の高校生が一年間で学校に登校する回数は意外と少なく200日もない。それは細かく計算すれば分かることだ。つまり上条は優に学校での青春の六分の一をベッド上で過ごしていたり、不良や、一瞬で人を殺せる力を持つ学生や、ゴーレムを操るゴスロリ女、その他ゴツくて怖ーいオジサン達と戦っていたわけになる。
俗にこのような人を運がない人といい、上条の口癖の不幸だというのも全くの正当な手順で成立するわけである。
上条は電話の向こう側の小萌に向かって
「いや、でも今回はホントのホントにまずいんです!なんとかなりませんか!?」
『公欠扱いならなんとかなるかもしれませんが、その場合その手の書類に記載しないとならないのでまともな理由にしてくださいねー』
「…書類に載せられるような…理由ですか…」
『そうでーす』
「(……未来から子供が来た、か……)……と……とりあえず明日の朝、俺のおかれた状況を説明しに行きます。口では何とも説明しにくいし、したくないというか……」
『ふぅー………分かりましたーじゃ明日の7時に私のうちにきてくださーい』
「……はい、分かりました……ホントいつもすみません……」
『チッ』
「!?」
ブツン・・・ツーツーツー・・・

(………………………………………………、)

「………うん……俺も同じような感じかな……あはは……」
「アンタ、一体どんだけ休んでんのよ」


7 10:30


「お前今日は帰るか?どうせ明日常盤台に行くわけだし」
「……と、泊まる。そ、外暗いし……こ、怖いし……」
「…………、(お前はそんなか弱いキャラから最も遠い所で高笑いしながら足組んでコインぶっ飛ばしまくるようなやつじゃなかったっけ?)」
じとーと上条は有り得ないものを見るような目で美琴を見る。美琴は上条の不満そうな顔に気がつき、
「な、なによ。言っとくけどこれはアンタのためでもあるんだから。どうせアンタ、美栄が泣いてもオロオロしてるだけでしょ?私だったら5秒よ5秒」
まるで蚊を掃うような動きで手をパーにする。確かに美栄は美琴に抱きついた時の方が早く泣き止んだし、上条の時のぎこちない表情も今は笑顔の一言。純粋に嬉しそうだ。美栄はその証拠と言わんばかりに美琴のお腹に抱きつき「そうだそうだーぶーぶー」と美琴の言っていることに賛同しているようだった。
「……、まぁ確かに」
「ふ、ふん。分かればいいのよ……」
そう言うと美琴は美栄の頭を撫で美栄の目に掛かっていた髪を払った。美栄は猫が日向で気持ちよさそうに背を伸ばすように「ママもっとー」と可愛らしい声で甘えた。上条はこのとき初めて美栄が5歳と言う事を実感した。出会ってからと言うもの美栄と自分の間には妙な距離を上条は感じていた。軽蔑という意味ではない。むしろプラスの感情が読み取れたが「子供が親に甘える」というものを一切感じなかった。
「ねー?パパ?ママ?みらいのこともっとしりたい?」
「え?あー……う、うん。知りたいかも」
「お、おい!」
馬鹿か!?と上条は思う。そんなことしたらさっきみたいに恥をかくことになる。それは美琴も同じリスクを背負っていると言うことになるわけだが、どうやらそれを承知の上でそう言っているようだった。
「お前!これ以上恥さら「ハッピョウ~!」すみたいですね俺もお前も……」
美栄に遮られた。さっきからなんか差別されているような気がする。美栄は男女比が1対2なので無意識のうちに同姓である美琴の肩を持っているのだろうがそれにしたって自分の意見が反映されない。上条は例え自称でも自分の娘を名乗る女の子にこんな扱いをされてなんだか悲しくなってきた。
「まずねー。ママったら、おしごとからかえってきたパパにいきなりキスしてねー。ごきんじょさんもあーんなにラヴラヴなフウフはみたことないってねー」
サラリと言う美栄に上条は顔を赤くして頭を抱えたくなった。美琴の方も恥ずかしいのは一緒らしく首をブンブンと振り顔を赤めた。
そんな事するくらいなら何故聞いたしっ!?と喉まで出かけたが、聞いたらビリビリされるような気がしたので何も言わないでおく。
「……、へ、へぇー。す、すごいいい感じの夫婦だねー……」
とりあえず感丸出しで美琴は上条をチラチラ見ながら口を尖らせ静かに呟いた。上条としては「うそ!?こんなやつと私が!?サイテー!」と言われるよりかは何倍もマシなのだが恥ずかしいのは嫌だった。
「……、も、もうないの……?その、み、未来の私たちの……その……あの……キ、キス……とか……」
「…………、」
「えぇーきになるぅ?だったらもっとナデナデしてー」
美栄が近頃のチャラい女子高生のようにお願いすると美琴は黙って美栄の頭を撫で始めた。いや、撫でると言うよりは大型犬の頭をブラシで洗っている、と言ったような感じで正直言うと物凄く頭皮にダメージを与えるような擦り方だ。流石に美栄も痛かったのか「やっぱりもうちょっとやさしくしてー……」と美琴の手を握った。
「は、早く続き……」
「……、」
美琴が美栄を撫でながらボソッと力なく言う。
話は飛ぶが上条は過去に美琴がコンビニで雑誌の立ち読みをしている所を目撃した事がある。その時美琴は何故か頬を赤らめてキョロキョロしていた。上条は棚の影に隠れてこっそり観察していたのだが美琴が出たのを確認すると「アイツ何読んでたんだろ?」と気になって美琴が読んでいた雑誌を手に取り読んでみると、あれまR18指定の雑誌で「……まぁ。アイツだって年頃だからな……少しくらいそういうのにも興味あんだろ……」とレールガンの意外な一面を見てしまった事がある。

今の美琴の顔はその時の顔と同じだった。

「……、」
しかし美琴の名誉のためにもそれは言わないでおいた。ちなみに真相はとあるメイドにそういう本(兄と妹がドロドロする系)を買って来るように頼まれ、しかしなかなかそのジャンル(兄と以下省略)の雑誌が見つからず長時間探しているうちに人の目が気になり始め恥ずかしくなりました~というわけだ。
それを知らない上条はどこか優越感に浸っていた。
が。さらにどうでもいい話をすると。
逆に美琴はガチで上条がエロ本を買っていたところを目撃したことがある。
防犯カメラ(当然ハック)で確認したその本のジャンルは美琴が危惧したとおりの20歳くらいの巨乳のお姉さんがOH!YEAH!な感じの物で「やっぱり大きいほうがいいのかな……」と美琴はその日からバストアップ筋トレ(本当に効果があるかは不明)を始めたりしていた。
という裏話は誰も知らない。
「……おめーな……、恥ずかしくねーのか?か、上条さんはもう爆発しそうなのですが……?」
上条は見た目気にならない内面バクバクのポーカーフェイス。しかし美琴は恥を忍んでも気になるのか震えた声で、
「ば、ばっかじゃないの?ふ、ふぅぅうぅ、ふ、夫婦になるって事はどうせあ、ああんなことやそ、そんなこともしちゃうってことでしょ……?な、なら先の知ってたほうが何かといいじゃない……」
「…………、……まぁ……お前がいいならいいけどさ……ちょっとは恥ずかしくねーの?」
「う、うっさいわね!」
美琴は指をくねくねとしながら角が生えたようにビリッと微弱に電気を発した。一瞬美栄が危ないと上条は思ったがその角はあまりにも細く弱弱しかったので、実際美栄もなんともないようなので気にしないことにした。よっこらせっと座りなおす。
「み、美栄……続き……」
「……、はぁー……やれやれ……(そんなに気になるんか?まぁ、かと言う俺も結構気になるわけだが……)」
そして上条と美琴に注目された美栄が、
「うーん……キスっていってもだいたいまいにちしてたから、もういうようなことは……あ!アレがあった!……あーでもそれいったらパパあしたからいきていけないかも……」
と、まるで「今夜もよろしくね……クヒッ!クヒヒヒ!」とセクハラしてくる上司のようにニタニタ笑う。
「(な……何したんだ未来の俺!?生きていけないってどういう事!?)」
「へ、へぇー。生きていけないんだー……大変だねそれは」
つまり美琴が言いたいのは「死んでもいいから続きをくれ」とのことだった。
お前はどこぞの小学生か!?と上条は思ったりしたが気になるには気になる。まるで週刊漫画を待ちわびるような気持ちだ。ちなみに上条がいつも買っている週刊誌がボロボロなのは何を隠そう、この御坂美琴が売り物にも拘わらず乱暴に読んでいるためである。
そして、
「えーっとね……アタシもママからきいただけなんだけどね……テレビの放送でね……」
上条の悲鳴は夜空に響いた。


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