とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

07章

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THE_EPISODE 2/2 BEYOND_THE_BOUNDS_AND_TO_THE_NEARLY_FUTURE


こんな不幸な日も悪くない。上条はそう思った。最初は未来から娘が来るなんて、なんて面倒なことになったのだろう、自分の不幸もとうとう極まったか、そう思ったが存外。何事も極めるところまで極めれば大体いいことが起こるのもんだな、と身をもって実感した。

23:50 上条宅

部屋には時計の音がカチ…カチ…と絶対のリズムで時を刻んでいる。そしてトクントクンと人が生きていることを証明する心臓の鼓動が3つ。それぞれのリズムで確実に死に向かっている。

……すぅ……すぅ…… 

「すぅ……すぅ……すぅ………すぅ………」
「……………………………………………」
「クカー………クカー…クカー……クカー………」
「………………、ねぇ……起きてるでしょアンタ?」
ボソッと独りごとを言うような大きさでボソッと美琴は寝ているはずの上条に話しかける。
「ん?何だ?」
さも起きているのが当たり前のように上条は言う。まぁ結局寝れなかったのだ。
「なんだ。アンタ普通に起きてんじゃない。寝ろって言ったのはどこのどいつよ?うそつき」
「高校生は特別って法則があってだな」
「なにそれ」
「いいじゃねーか。別に起きてったって」
「ふーん」
二人の顔の距離は10センチとない。もし何かの拍子で少し前に進んだらそのまま唇と唇がぶつかってしまう程だ。しかし二人ともその距離を改めようとしない。それどころか木が地面に根を生やすように根強くその場に居続ける。
「………ねぇ?何か考えてたんでしょー?何考えてたの?」
「………、なんだと思います?」
「えぇ?えぇ-と………、明日のこと?」
「ブー。残念」
「…………、じゃあ何よ?」
「レモンちゃんのこと」
上条がそういうと美琴はトマトみたいな顔になり驚いた拍子にぽっぺに涎を垂らした。美琴は慌ててそれをふき取り、親のかたきでも見るような目で上条をジッとにらみつける。
「…………、アンタ、人に散々痴女やら恥知らずみたいなこと言っといてそれはないんじゃない?」
「どういう意味だよ?」
「くさいのよ。アンタが言うことっていちいち。その幻想を~とか色々。」
「だってかっこいいじゃん」
「…………………、それよかさ」
「ん?」
「やっぱアレ着た私見てみたくない?」
「アレ?」
「ワンピース」
「ああ。今?」
「うん」
「まぁいいけど?途中で寒いって言っても知らねーぞ」
「いいからいいから」
そういうと美琴は着替えるため、美栄を起こさないように足音を殺し洗面台へ向かった。上条はその間台所に行き水を飲む。
ああいう服ってそんなに時間かかんねーよなとか思っていたがそんなことはなかった。既に5分くらい経った今でも「まだー?」と聞くと決まって鏡で自分の顔を見るように同じ言葉が返ってきた。たまにヘキシ!!と豪快にくしゃみをする音が聞こえ、やっぱ寒ーよなと再確認する。
そしてもう飲みたくない水が五杯目に入ろうとした時に、
「終わったわよー」
洗面所から小声だがよく響く声が聞こえた。というか「終わったわよー」って。俺がそっちいくんかい、と上条は内心不満に思う。飲みかけの水をそのまま置きしぶしぶ洗面台に行く。

「………………………………あーさむさむさむ」
上条は何か言わないと自分を保ってられなかったのでとりあえず寒いとぼんやりと言う。なにせあの服と美琴の夢の共演だ。期待しないほうがどうかしている。

「うお…………まぶ」
洗面台は強すぎる電気がついており、光に慣れていない上条は一瞬立ちくらみした。まだ目が慣れるまでしばらく時間がかかるだろう。
そのわずかな時間をも、もどかしい。
目を早く慣らすためパチパチしているとドンッ!と何か自分の体全てに衝撃が走った。おまけに首を締め付けられているらしい。「な、なんだ?」と口にしようとするがそれすら出来ない。い、一体なんだ?と思い、唯一自由な目でことを確認しようとする。ぼんやりとだが、ゆっくり視覚が戻っていく。

ゆっくりと。

ゆっくりと目が光に慣れていった。

そして正常になった目で一番最初に目にした衝撃の正体は、

あのワンピースを着て、上条の首に腕を巻き、キスしている美琴だった。

「―――――――――――――――――――――――」




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