とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫
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とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫
ja
2023-03-25T13:30:37+09:00
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある学園の執事喫茶/Part2
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある学園の執事喫茶)
とある学校の執事喫茶
「まあ、馬子にも衣装というし、とりあえず見た目は悪くないわ。上条当麻。」
吹寄が満足そうに言う。
言われて自分の格好を見直した。黒のタキシード一式を纏っている。
しわ等はない。上から下まできちっとした格好だ。
髪型がいつものままなので多少そこだけ浮いている気もする。
しかしこの格好はなんかものすごく恥ずかしい。服にはないのに眉間にはしわがよってく。
「じゃあ、一通りやるわよ。」
店に入ってきた吹寄に一礼し、を席にエスコートする。吹寄が椅子の隣に立ったのを見計らって、椅子を引く。
そこに吹寄が座る。メニューを開いて渡し、注文を受け一礼し、バックヤードに戻る。
開店直前の作業確認として吹寄をお客として最後の練習を行う。
とりあえず一通りこなしたところで、こまごまとチェックがはいる。
「紅茶の入れ方が雑だ。机にあるベルを鳴らしてから来る。遅いだのもうすこしすばやくかつゆったりと歩く。」
高校生にそこまですごいものを求めてられても困るのだが、吹寄の委員長体質に妥協はない。
どうやら、別のクラスにも喫茶店をしているクラスがあるらしく、対抗意識を燃やしているようだ。
説教されている上条の後ろでは土御門が姫神をお客として接客の練習中だった。
いつものアロハシャツでなくタキシードをきちっと着ている。
髪の毛もいつもの髪型ではない。なんとオールバックだ。サングラスもしていない。
ぶっちゃけイケメンだ。いつもそのカッコでいいんじゃないかというほどに。
妹のプロデュースだからやる気満々のようだ。
ちなみに順番待ちボードに名前を書くと~~お嬢様と呼ばれる。男は旦那様統一。
「野郎の名前なんてよんでられまへんがな」
と青髪ピアスがいったからだが。その青髪ピアスは
『こんな変態執事はいやだ』
と乙女な女性陣の痛恨の一言で裏方行き。
「うう、僕も女の子に愛を囁きたかった……」
世界三台テノールもびっくりの野太いボイスで囁く愛に身震いしつつ接客の手順を読み直す。
ぶっちゃけ難しい。ポイントはお客に何もさせないこと、とでかでかと蛍光ペンで書いてある。
そのほか注意事項と接客の対応例がかなりびっしりと書かれている。
(まあ何とかなるかな。一応あんだけ舞夏にたたきこまれたしな。)
そんなこんなでとある学校の執事喫茶祭が始まる。
「ここね……」
早速目的のクラスへと到着した。まだ早めの時間なのに短いながらも列が出来ている。
友達連れや、カップルが目に付くが、中には自分と同じように一人で来ている女の子もいる。
(普通の喫茶店として食事するだけ、うんうん。ついでにあの馬鹿をからかって、そして明日の予定を聞かないと……)
自分にガッツポーズ。
後二人で自分の番に回ってくる、そのとき、扉の横においてある注意書きが目に入った。
『店内での写真撮影はご遠慮ください。また、騒がしいと思われる行為もご遠慮願います』
ちょっとだけへこんだ御坂美琴だった。
次のお嬢様を案内して、一息ついたときに、軽く辺りを見回してみる。
注意書きが効いているのか、お客が全員学生の割りに店内は意外とまったりとしていた。
女性が多いのは予想通りなのか?
まあ、その女性の大半は土御門イケメンバージョンに夢中なせいもある。
時折自分のほうをちらちらと見ている人もいるが、土御門と見比べられてるんだろう。
(ま、本日は午後から自由時間だし、あと2~3人接客したら交代か。何とかうまく出来たな)、
うん、うんと自分なりに満足していると扉からガランガランと多少重い音が響く。
次のお嬢様のご来店のようだ。
わざわざ引き戸の入り口を扉に改造したというこだわりの入り口から見たことある顔が入ってきた。
「……はぁ」
お嬢様に見えない本物のお嬢様だ。上条の不幸センサーがビリビリ反応した。
(アイツの教室かあ。うわ、なんか緊張する)
一人でファミレスに入ることくらいなんともないのに、アイツがいつもいる空間だと思うとなにやらくすぐったい。
店内をぐるっと見回すと目的のツンツン頭と目が合った。
そのツンツン頭執事バージョンは『わー、不幸だー』という顔をしていた。ムカッときた。
(何よその顔は。私が来るのがそんなにいやなわけ?)
そのまま睨み付けていたら、ため息をついてこちらに向かってきた。
「お帰りなさいませ、美琴お嬢様」
丁寧な言葉遣いと綺麗な一礼をする上条に思わず噴出した。
御坂を席へと案内していると、声をかけてきた。
「い、意外と似合ってるわね、アンタ」
なんだか微妙に引きつった笑みで言われても、からかわれてるようにしか思えない。
顔も微妙に赤いのは笑いでもこらえているのか?
「クラスの出し物だからビリビリとかは勘弁してくれよ。」
顔を近づけてこっそりと耳打ちすると御坂は顔をもっと赤くして空中に目を泳がせている。
「大丈夫よ。美琴せんせーだってそれくらい心得てるわよ。」
「ほんとか?」
疑わしそうに言い返してみる。御坂は少しむっとした顔で
「ほんとよ。見てなさい。吠え面かかせてあげるわ」
いまだにちょっと疑いの目を向けてみるが、ここで時間をとるわけにもいかないので
ここは御坂を信用してみることにした。
「……あれは本当に御坂なのか。」
思わず呟く。御坂はすごかった。
なんだか本にしか出てこないような本物のお嬢様の振る舞いをしていた。
自販機に回し蹴りを入れるいつもの常盤台の制服なのに、別のものに見える。
優雅に紅茶を飲み、ベルを鳴らすのも流れるようによどみないその動作は気品を感じさせる。
吹寄が憧れのまなざしを向けている。
他のお客さんもちらちらと御坂を盗み見している。そしてその後動作を真似ている人もいるくらいだ。
上条も例外でなく、一度ベルを鳴らしている動作がなにか別の世界の出来事に見えてしまっていて、
それが自分を呼んでいることと認識できなかったくらいだ。
ものすごい緊張しながら紅茶を入れるとやわらかい微笑で
「ありがとう。」
といわれた。本当に心臓が飛び出すかと思った。
手が空くとつい御坂のほうを見てしまう。
(常盤台のお嬢様……か……)
御坂の知らない一面を見た気がしてなぜか少し寂しい気がした。
その常盤台のお嬢様も実はちらちらと上条を盗み見していた。
いつもの学生服でなく、フォーマルな格好をしているアイツはずいぶんイメージが違う。
(ちゃんとしてれば見た目だって悪くないのに。あれ?でも見た目もいいとまた女の子に囲まれるんじゃ……)
複雑な感情が沸き立つ。
見渡すと、自分と同じようにちらちらとアイツを見ているお客がいる。
どうも自分と同じ臭いがする。
(むうぅ、アイツはほんといつも何してるのよ。)
その子に紅茶を入れ、にこやかに微笑むあいつの顔が目に入る。
ちょっと頭にきたのでその席から離れたタイミングを見計らってベルを鳴らしてみた。
仕方なさそうな、だけどちょっとだけ嬉しそうな表情を一瞬だけ浮かべ、こちらへとやってくる。うん。それでよろしい。
しかし、ベルで呼べば向こうからアイツが来てくれて、紅茶を入れてくれたり、自分の世話をしてくれる。
いつもはこっちから突っかからないと相手にもしてもらえないのに。
(な、なんか楽しいかも)
どうやら意外とはまっているらしい。
紅茶などの準備をしている簡易なキッチンで上条のクラスメートは会議を行っていた。
ホールにいる土御門、上条を除いてここにいるほぼ全員が集まっている。
青髪ピアスは放心している。どうも目の前の現実が受け入れられないらしい。
ときおりぶつくさ呟いてる声が聞こえるが、この上条会議では役にたたなそうなので無視。
「司会は私、吹寄制理。議題は上条当麻と常盤台のお嬢様についてです。忌憚なき意見をお願いします。」
「どう見ても怪しいです。」
「あの子、どう見ても上条君気にしてるよね。ちらちら見てるし。」
「というか、彼女あの超電磁砲じゃ?」
「え!?レベル5もカミやん病の被害者?もはや新手のウィルスじゃないのか?」
「上条も気にしてるみたいだぞ。やっぱりちらちらみてる。」
「あ、お互い目があった。あ、高速で二人ともそっぽ向いた。」
「え?目と目で通じ合ってるの?」
「クラスの出し物でいちゃいちゃするとわ……」
どこからどう見てもお嬢様の彼女とクラスの三馬鹿の一人とはさすがにつりあわない気がするのだが、
相手はあの上条。何が起こっても不思議ではない。
とりあえず
「「「「ブチ殺し確定ね」」」」
全会一致で会議は滞りなく終了した。
御坂が相変わらずとてつもないお嬢様雰囲気を出している。
そのまま机に座らせておけば絵画としても通用するんじゃないかというくらい。
(うう、今日の御坂さんはおかしくないですか。)
俺の知ってる御坂がこんなに可愛いはずがない。
いつもはもっとビリビリして怒って騒いで追っかけてきて。
そんな御坂が好きなのに。
(って俺何考えてるんだ!?)
頭を振って今の考えを振り払う。その際、ふと時計が目に入る。
「あ、もうこんな時間か。見送りしないと。」
よく見ると御坂が入ってきてからもう一時間近くが経過していた。
だが、これはあくまでクラスの出し物である。一人に長時間いられても困るので、時間制限がある。
ゆっくりと席に近づき、
「美琴お嬢様。お出かけのお時間ですが。」
と御坂に告げる。すると御坂はこちらをみつめ、目を少し細めて片手を空中に置いた。
その動作も優雅で、自然とその手をとった。
その手に体重を乗せて優雅に御坂が立ち上がる。
いつもとまったく違う本物のお嬢様をしている彼女にどぎまぎする。
声も出せないまま出口へと案内する。扉を開けると御坂が店の外にでて、そして
上条の手を思いっきり引っ張って店の外へと引きずり出した。
「ふふーん。どうよ美琴せんせーのお嬢様っぷりわ。」
両手を腰に当ててふんぞり返るような姿勢だ。さっきまでの深窓のお嬢様はどこへやら。
いつもの知ってる御坂がそこにいた。
「……いつの間にか御坂妹と入れ替わってたわけじゃかったんだなってあぶねえっ!」
言い終わる前に電撃が飛んできた。本当にいつもの御坂だ。
「あのねぇ。アンタはアタシのことどういう目で見てるのよっ!」
「あーいや……いつも追いかけっこばっかりしているイメージしかなくてな……はははっ。」
もう一発飛んでくる電撃も打ち消して、先ほどのお嬢様を思い出す。
名門お嬢様学校常盤台中学。その認識を改めて実感した。
だけどいつも自分を電撃撒き散らしながら追いかけてくる常盤台のお嬢様を思い出し笑みがこぼれる。
時折雷撃が混じるのが少し怖いがいつものやり取りが楽しいと思える。
「……何がおかしいのよ。」
「いや、なんでもない。っと、そろそろさすがに戻らないと。気合入れてがんばってくるぜ。」
話を無理やり切り上げ、部屋に戻ろうとすると、御坂があせったように声をかけてくる。
「あ、待ちなさい!ちょっと!!」
またなーと言う声を残して扉を開け、教室に戻る。
「あのー、皆さんなぜこちらを睨み付けてるのでしょうか。」
先頭には腕組みした吹寄制理。後ろには土御門と青髪ピアス。そして魔法のステッキことスタンガンを構えた姫神。
後ろはクラスメート。お店のほうは大丈夫なのか不安になるくらい人数が来ている。
「上条当麻!まさか中学生にまで手を出しているとは。しかもあんな完璧なお嬢様相手になにをやった!白状しろ!」
どうも吹寄はお怒りのようだ。おでこDXになってるし。そのおでこに青筋浮いてるし。
「にゃー、カミやん……この前の夜、フラグなんてないって言ったのはだれだっけかにゃー。」
土御門、言葉使いは軽いままだが目つきが半端ではないぞ。てかサングラスないから本当に怖いんですけど。
「あの中学生、夏休み最後にカミやんに抱きついた女の子だよな!そうだよな!ほ、ほんとに付き合ってたのか!?」
青髪ピアス、関西弁忘れてるぞ。
「君の性根はすこし矯正すべき。この魔法のステッキで。」
姫神さん。一昔前のヤンキーみたいです。
じりじりと詰め寄るクラスメート。
うん、とりあえず逃げよう。
くるりと後ろを振り返ると扉を開けて全力疾走を開始する。
「まてー!」
うん、あれだ。とりあえず今回は声に出そう。
「不幸だーっ!」
「はぁ……」
軽くため息をく。明日は予定を空けてあるのだ。思い切ってアイツを誘うつもりだった。
黒子は3日目に一日いっしょにいてやることで何とか説得した。
本当はさっき教室から連れ出したタイミングで明日の予定を聞いてみるつもりだったのだが。
(いつものノリになっちゃったからなあ……)
しかも、それが楽しかった自分もいる。お嬢様はやっぱり性に合わない。
そして思い出したようにかばんを開ける。そこからカメラを出した。
アイツをからかうフリでもしながら写真を撮りたかったのだが、
お店の中では写真撮影は禁止。さすがに迷惑をかけてまで撮ることは出来ない。
「アイツの写真取れないかなあ……できればいっしょに」
家においてあるペア契約のときにもらった写真立てを思い出す。
と、そこまで考えてはっとする。
「い、いやあのカッコをとっておけばからかうのに使えると思うのよね。うんうん。」
自分で自分に意味不明の言い訳をしてみる。顔に熱を感じるのはきっと気のせいだ。うん。
「御坂ー。誰をからかうつもりなんだー?」
突然自分にかけられた声にぎょっとして振り返ると土御門舞夏がそこにいた。
「つ、土御門?なんでここに?」
「ここに兄貴がいてなー。ついでにこの店のケーキやら店内をプロデュースしたのは私だぞー。」
えっへん、と舞夏が胸を張る。
「で、誰と写真を取りたいんだー。私が撮ってやってもいいぞー。プロデューサー権限でー。」
舞夏の言葉にうっと声が詰まる。
写真は撮ってほしいが舞夏にアイツの写真を撮って、と言ってもいいのだろうか。
しかし、それを察したのか舞夏は
「誰の写真を撮るのかはちゃんと秘密にしておくぞー。」
その言葉を聴いた御坂は少し黙った後、カメラを土御門に差し出した。そして小さな声で頼もうとする。
「えっと……その……かみ」
「不幸だー!」
とりあえず教室から飛び出してみたら御坂が目に入った。
「なんでそこにいるんだー!?」
自分は逃げ切れても御坂がつかまったら意味ないのではないか?
ならばとその手をつかむ。
「えっ!?ちょ、ちょっとまってー!」
事情がつかめていなさそうな御坂をそのまま連れ出す。
何かいってるけどとりあえず無視!
「アレー、御坂ー?」
舞夏がちょっと首をかしげなら呟く。手元にカメラを持ったまま。
御坂の声がドップラー効果を残して遠ざかっていく。
その舞夏の前を兄貴を含めた何人かの人間が追っていく。
みんな鬼の形相だ。
とりあえず面白そうなのでついていくことにした。
結構な距離を走り、校舎の外にでて、いつもの自販機の前まで走りきった。
「な、なんで逃げてるのよ!」
「いや、うちのクラスのやつらは……」
と言いかけて思った。
『うちのクラスのやつらは御坂をおれの彼女と勘違いしている。』
こんなことを言えば目の前のお嬢様からドンだけの電撃が降ってくるかわからない。
うーん、困ったな。
腕組をしようとして気づく。まだ御坂の手を握ったままだった。
「っと、わりい、痛くなかったか?」
手を離すと御坂があっと小さな声を出した。
「う、ううん。大丈夫。」
なんだかもじもじしている。今日の御坂はいつもといろいろ違うなあ。
違うといえば
「そういえば、お前本当にお嬢様してたな。びっくりしたよ。」
御坂は髪を書き上げながらちょっと得意そうに言った。
「まあね。一応学校でも礼儀作法の授業はあるしね。」
やっぱり、そういうことも出来るのか。
でもいつもの活発な御坂がやっぱり……
「どうしたのよ。突然黙っちゃって。」
「いや、お嬢様よりもやっぱりいつのもの御坂のほうが好きだな。と思って……」
あれ?待った。私こと上条さんはなんかとんでもないことを口走ってませんか?
もう後の祭りであった。目の前にはりんごもびっくりなほど真っ赤な御坂が。
「へ?アンタ?好きってなにいって!?」
彼女のまわりからバチバチと空気の破裂する音がする。
「漏電してる!漏電してるから!」
あせって右手を伸ばし、御坂に駆け寄る。
そこで、巻き起こるかみじょーわーるど。
漏電によって自販機からジュースが吐き出されていた。そしてそれにつまずいた。
それでも何とか御坂の肩を右手でつかんだのだが
勢いが止まらず、そのまま御坂の頬にキスをしてしまった。
「!?!?!???」
御坂の目がぐるんぐるんまわっている。そして
「ふにゃー」
ぷしゅーっと音を立てた。
御坂美琴は目を覚ました。突然の出来事に頭がついていかなくて気を失ったらしい。
ボーっとする瞳が徐々に焦点が合ってきた。
「お目覚めですか?お嬢様。」
はっとすると目の前にアイツの顔があった。
「って!?」
意識がはっきりとしてきたところで気づいた。どうやら膝枕をされているらしい。
またまた真っ赤になる。
「おいおい。また気を失うのは勘弁してくれよ。」
アイツがちょっと嫌そうにいう。
「……アンタのせいじゃない。」
自分の頬に手を伸ばしてみる。相手も気づいたらしく
「あれは忘れると健康に良いと上条さんは思います!」
罰の悪そうな顔をしてそっぽを向く。
はあ、とため息をついてから頬を軽くなでてみる。
むう……ほっぺだったのがよかったような惜しかったような……。
とりあえず、体を起こそうとする。
だが、頭を抑えられ、膝枕に固定させられる。ちょっと硬い膝の上に後頭部がこつんとあたる。
「もう少し休んどけ。もうどうせ、今日はなんもできねーよ。」
上条の頭越しに見える空はもう星がちらちらと見えてきていた。
コイツには少し悪いことをした。結局今日は膝枕で自由時間をつぶしたのだから。
なんかしてやろうかな、と思っているとまた頭をなでられた。
「まあ、今日はちょっと変わったお前が見れて楽しかったからよしとするさ。」
頭をなでられて少しくすぐったい。
そうか、今日はもう終わりなのか……そうだ。明日のことを言っておかないと。
決心して話しかける。
(明日暇ならいっしょに回ろう!)
言葉が出なかった。
(落ち着け私!?)
一度つばを飲み込み、深呼吸する。
よし、今度は声がでそうだ。
「暇そうなアンタのために、明日アタシがいっしょに回ってあげても良いわよ!」
(だめだー!なんでここで上から目線ー!?)
心の中で頭を抱える。だが、返事は思いがけずすぐ帰ってきた。
「ああ、良いぜ。どうせ暇だったしな。誰かと回れるならそのほうが面白いしな。」
クラスのやつとは明日遊ぶのは危険そうだしなあと呟いていたが。
「え、ええ美琴せんせーに任せなさい!」
(う、うまくいった!?えー!?)
なんだかまた顔が赤くなった。
(明日はコイツと一端覧祭か)
今日のお嬢様か、いつものビリビリか。
はたまたまだ知らない御坂美琴が出てくるのか。
いつものビリビリとなら面白そうだな。
まあ、もし知らない御坂が出てきても、そのときはさらに相手のことをよく知ったんだと思えば良いさ。
自然と笑顔がこぼれてくる。
(あー、そうか。俺コイツのことをもっと知りたいんだ。いろいろと。)
昼間にふと思ったことを思い出す。そのときに思ったこととは少し違うことも確信して
(俺はコイツのこと、好きなんだなあ……)
膝の上で気持ちよさそうにしている御坂を上条はじっと見つめていた。
明日の予定をきめたりしているとすっかりあたりが遅くなり、御坂を寮の近くまで送ることにした。
自分の横を歩く常盤台のお嬢様をちらりと見る。
好きだということを意識したら、なんだかむずがゆくなってきた。
それでも、時間は経つし、歩けば目的地へと到着する。
少し名残惜しいが、明日がある。……言ってみるか。
「じゃあ、また明日な。美琴」
「うん、また明日ね。……あれ!?」
後ろで御坂が何か言ってるが、聞こえない。振り向くことも出来ない。
この暗がりでも顔が赤いのがばれる気がするから。
御坂美琴は部屋に戻って枕を抱きかかえながらごろごろと転がっていた。
(最後の言葉……聞きまちがえじゃないわよね)
名前を呼ばれていた。間違いなく。
(うう、私も名前を呼ぶ絶好のタイミングだったんじゃないかなあ。)
まあ、明日タイミングを見て、こちらからも呼んでやろう。うん。これが目標。それに
(また明日、か。)
そういえばアイツとこういう挨拶で別れるのって初めてだったんじゃ?
いつもはうやむやだったりするし、翌日いっしょに会うなんて約束をすることはなかった。
(ふふっ、明日か。楽しみだな。明日はいっぱい写真……ってカメラー!)
唐突に起き上がる。土御門舞夏に連絡を取って、今のうちに回収しなければ!
勢いよく扉を開けると
「おっーっす。御坂ー」
探し人が目の前にいた。
「ちゃんと写真撮っておいたぞー。ありがたく思えー。」
と、カメラを差し出してくる。
「あ、ありがと。今日は変なことに巻き込んじゃってごめん。」
「いやいやー楽しかったぞー。いろいろとなー。じゃまたなー。」
舞夏はなんだかご機嫌で帰っていった。
とにもかくにも、とりあえず手元に戻ってきたカメラ。これで明日も安心。
とりあえず、故障していないかだけは確認しようとし、電源を入れると
「あれ?」
撮影モードでなく、写真閲覧モードになっている。
しかもなぜか写真が録画されているようだ。
舞夏が勝手に使ったのかな?とおもって取り合えず、適当に一枚を再生してみると
「!?!?」
そこにはアイツの膝枕の上で横になっている自分の姿が!
ふと思い出す。そういえば舞夏は
『楽しかったぞー』
『ちゃんと写真を撮っておいたぞー』
「……~~~っ!!!」
見られてた。公園での出来事。まさか、まさか!
結構な枚数の膝枕の写真の次に、それはあった。
唇でこそないものの、正真正銘のキスシーン。
しかも自分の顔が正面で上条が横からとコマーシャルで使われそうなアングルで。
「つ、土御門ー!」
探し人の姿はもう見えない。その代わりに、今会うと一番危険な人物が視界に入る。
「ああ、お姉さま!わたくしの帰りを部屋の前で待っていてくれるなんて!」
白井黒子がそのままの勢いで飛んできた。
「く、黒子!今はだめ!ちょっと待ってーーーーー!」
常盤台中学女子寮はエースと変態により今夜も騒がしかった。
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある学園の執事喫茶)
2023-03-25T13:30:37+09:00
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲/Part07
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1738.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
上条当麻の苦悩
だからだったのか。最近会えなかった理由はそれか・・・ただでさえ有名人の美琴がアイドルをするってなるとどうなるんだ?
外を歩いていた女の子達のゲコ太やファンシーグッズブームは美琴が原因だろう。いや、確実だ。
アイドルってことは雑誌のインタビューでもするだろう。恐らくインタビューで
「最近ハマっているものはありますか?」と聞かれて迷わず「ゲコ太!」と答えたのだろう。
ゲコ太の素晴らしさを散々語り、きっとそれを読んだ女の子達が「憧れの超電磁砲が好きなら私も!」となったのだろう。
でも何故俺はその情報を知らなかったのだろう?まあ、雑誌やテレビをほとんど見ない生活のため仕方がなかった。
「会えなかったり連絡もあまり取れなかったのは撮影やら取材やらで忙しかったの」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「でね、この雑誌はもう発売されてるけどこの雑誌とCDはまだ発売される前で、いち早く当麻に見せたくて持ってきたの。ほら、他にもまだ雑誌あるんだ」
「凄い!短髪可愛いかも!!これも、この本も!」
「この話は黒子達にもまだ言ってないからね?まあ知っているだろうけど。明日はそのイベントがあるの。来てくれるよね?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が突然すぎて全く付いていけてない俺がいる。もう少しわかりやすく・・・」
「わかりやすくと言われてもそのまんまなんだけど・・・」
「アイドルって大勢の前で歌って踊るんだぞ?それともしかしたら際どい水着とか着させられるかもしれないんだぞ!?」
「大げさね。人前で歌うのは確かに緊張するだろうしちょっとフリフリしたスカートだけど私はこのCDジャケットの服好きだよ?
あ、アイドルは恋愛禁止って言われたけど当麻と付き合っていることは事務所の人たちは知ってるから。
でも公然には内緒にしないといけないから当麻にとって少し辛くさせてしまうかもしれないけど・・・大丈夫?」
「そ、そうか・・・気にするな。応援するよ」
「ほ、本当?ありがとう当麻!大好き!!」
気にするなと言ったが俺の心に何かが引っかかっていた。美琴がアイドルになって会えなくなるから寂しいとかではない。
美琴がやる気なら一番に応援してあげようとも思う。雑誌やCDジャケットを見ても俺からすれば生唾モノだ。
目の前で着てほしいとも思う。歌っている所を見たいし、サイン握手会があるなら俺も列に並んで握手とサインしてほしい。
今までより会う機会が減っても毎日雑誌やテレビやらで美琴の活躍を見られるのであればそれでいいし美琴は忙しくても
この1週間のように多少なりとも連絡もくれるであろう。
ここまで考えると俺の気持ちは美琴がアイドルになるのは大いに構わない。精一杯応援してやる。
なのにどこかズキっと心が痛んでいた。
「はい、これ明日のイベントのチケット。最前列よりも前のVIP席だからよく見えると思うわよ」
「あ、ああ。ありがとう」
美琴からインデックスと2人分のチケットを受け取り、手に取ったチケットを見てみる。
『御坂美琴デビューイベント LEVEL5~RAIL GUN~』とカッコいいデフォルトで書かれていた。
「あとは黒子と佐天さんと初春さんと春上さんに渡して・・・じゃあ最後に!」
「ん?」
「明日の私の衣装、特別に見せてあげる」
「んぉ・・・」
そう言い残すと美琴はバスルームにさっさと消え、数分後に再び俺とインデックスの前に現れた。
「お、おまたせ・・・///」
「おぉ~!短髪、カッコいいし可愛い!!」
「・・・・・・・・ゴクリ」
制服から衣装チェンジしてきた美琴は・・・これまたヤバイ。男性諸君の妄想を色々豊富にさせてしまうことを恐れて
あえてどんな衣装なのかは教えないでおこう。きっと妄想の衣装で間違いないから問題ないので心配するな。
「さすがにこれは・・・見てる俺が恥ずかしいかも・・・」
「私も着てみたい!!」
「あはは・・・明日が終わったら着せてあげるから。サイズ大きいかもしれないけど」
「うん!楽しみにしてるんだよ!!」
「で、当麻。そ、その・・・か、感想とかないの?」
「え、えっと・・・」
感想と言えば似合っている、可愛い、綺麗、それ以上の言葉があるなら教えてほしいくらいだ。
見とれていたせいで思考が停止していた。
「あの、なんていうか・・・すごく似合ってると思う」
「本当!?よかった~。えへへ」
思ったことをそのまま言っただけだが美琴は嬉しそうに笑顔を作った。
「じゃあ特別大サービスしてあげる。てい!」
「うぉわ!!」
俺からするとドキドキして仕方ない衣装のまま美琴が抱きついてきた。なんか肌が直接当たっている箇所が多いんですけど!?
「なんかこうするのも久しぶりだね?」
「そ、そうでございますね・・・」
「明日からこうやって遊んだりするのも減ることになってしまってゴメンね?」
「気にしないでいいですことよ?」
「だから私はこうやって当麻エネルギーをもらってるの」
「俺は生気を吸われているようだ・・・」
「えへへ。どこにいても私は当麻のこと大好きだから。忙しくてもあえなくても離れてるなんて思わないよ?」
「俺はわからんかもな。寂しくなるかもしれない。でも俺は応援してるから」
「うん、ありがとう。当麻」
俺も美琴を抱き返して幸せな空間を噛み締めていた。
「あ~あ、目の前でこんなにいちゃつかれても困るんだよ」
翌日の日曜日、美琴のアイドルデビューイベントの会場は学園都市で一番大きいであろうアリーナホール。
2万人は収容できる広さであり俺なら2万人の前で歌えと言われたらせいぜい「不幸だー!」と叫ぶのが精一杯だろう。
会場は既に満員。俺の予想通り比率的に男が圧倒的に多いがその中でわずかにいる女の子達がかわいそうに見える。
それもそうだろう。美琴が帰った後オークションサイトを見てみたらチケットの値段がバカみたいに高かった。
そこまでして見に来る女の子はきっと少ない。やれやれ、この嫌な熱気の中で美琴は歌って踊るのか。大丈夫か?
美琴が準備してくれた席に行くと俺とインデックスの席の隣には見慣れた顔がいた。
「あ!上条さんとインデックスさん!お久しぶりです!」
黒髪ロングの女の子が俺たちに声をかけてきた。確か佐天さんだったっけ。佐天さんの隣にいる花飾りをした女の子は俺を見てソワソワしているようで
その隣にはおとなしく俺たちのやりとりを見ている女の子が。
「こ、この人が御坂さんのか、か、かれ・・・」
「おっと!!ここで言うのは御坂さんのアイドルデビューに大きく響きそうだから我慢しようね初春?」
「は、はひ!すみません佐天さん!」
「全く、何故あなたのような男が・・・私は今日この日のために昨日お姉さまに教えてもらってから徹夜で法被を作ったというのに
あなたは私服ですの?せめてスーツとは言いませんが制服で来るのが義務でしょう?それがお姉さまの恋b・・・」
「おーっとぉ!?白井さんも興奮しないで言葉を選びましょうねー?」
白井は応援する気満々で背中に「お姉さま命」と書かれた法被を着て準備万端。しかし佐天さんは気が利くなぁ。
これからアイドルとして活躍する美琴にとっては恋愛事などタブーになるだろうし、しかもここで「この人が御坂さんの彼氏です!」
なんて言われたら全員からタコ殴りに合うかもしれん。
そんなことを考えていると全ての証明が突然消え、まだ美琴本人も出て来てないのに会場の盛り上がりは一気にヒートアップしだした。
会場にいる男達の御坂コールが響き渡り、少し耳が痛いくらいだ。でもその大御坂コールに白井たちも便乗して
「み!さ!か!み!さ!か!」とペンライトを振り回す。インデックスもこういうイベントは初めてのようで興奮を隠せていないようだ。
そして
ドーン!!
いきなり爆発のような花火がステージから何十発も上がり、煙幕があたりを包む。煙幕が薄れてくると・・・
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
野太い声が地鳴りのように会場全体を包んだ。そう、気づいたら美琴がステージに立っていた。前日俺に見せてくれた
あの衣装を着て、バックダンサーも従えている。
「むっひょぉああああああああああ!!!お姉さまぁぁぁぁぁ!!!」
「御坂さんかっこいい!!!本物のアーティストみたい!!」
「いや、もうなったんだけど初春・・・」
「短髪!短髪!私はここにいるんだよ!!」
白井は失神寸前になり、佐天さんと花飾りの女の子は何故か抱き合いながらステージを見て、
インデックスは美琴に気づいてもらおうとしているのか美琴に向かって必死に手を振っていた。
美琴が会場全体を見渡し、次第に美琴の視線は俺たちがいる所に、そして最後に美琴は俺を見て笑った気がした。
「それじゃ、いっくわよぉ!!!」
美琴の合図とともに音楽が流れ始めた。音楽に合わせ美琴とバックダンサーが踊りだしその動き一つ一つに全くのブレがない。
素人の俺から見ても美琴のダンスは完璧だ。いや、美琴のことだからよりその上を目指し練習していたのだろう。
これ、デビューイベントというより大規模なコンサートじゃねえか?そう思ってしまうくらい圧倒されるパフォーマンスだった。
この会場にいる人俺も含めて全員美琴の華麗で激しいダンスと歌に心を酔わせた。
美琴が話す言葉一つ一つに会場は歓声を挙げたり拍手をする。
見たことのない美琴が目の前にいる。心底可愛いと思った。これが俺の彼女なのか・・・
改めて思うと凄い人間と付き合っているんだと実感する。
でもここにいる人全員と同じように美琴に酔いしれいているのにも関わらず、俺は何故か素直に喜べなかった。
だって、他の男に可愛い美琴のこんなセクシーな衣装着て頑張ってる姿見られるのって・・・嫌じゃん?と上条さんは惚気てみたり。
「さて、初春、佐天さん、春上さん、シスターさん、お姉さまの楽屋に行きますわよ!」
イベントが終わってすぐ、白井がみんなを警備員がいる通路に促した。
「え?御坂さんに会えるんですか!?」
「お姉さまはそのために私たちにVIP席をご用意してくださったんですのよ?これで行かないなど非国民ですの!!」
「やったね初春!!御坂さんと写真撮っても~らおっ!」
「は、はい・・・私、御坂さんとお友達で本当によかったです・・・」
「短髪がいる部屋にお菓子があるの!?」
「どこをどう聞いたらそうなりますの?・・・あ、上条さん、アナタはすみませんがダメですの」
「えぇ!?」
俺もみんなと通路を通ろうとしたら白井から不意打ちを喰らうような言葉が飛んできた。
「きっとマスコミもいるでしょうしそこにアナタ一人男がいると色々嗅ぎ付回されるハズですの。
ここはお姉さまのためにも辛抱されてください」
「あ、あぁ・・・わかったよ・・・んじゃ、外で待ってるから出る時に連絡してくれ」
もちろんショックではあったが仕方ないと思うと意外と踏ん切りついたので俺はさっさと会場を後にした。
会場を出てたまたま近くで見つけた自販機でジュースを買い、ベンチに座って一息つく。素直に喜べなかったとは言っても
何気に騒いだから喉が少し痛い。ヤシの実サイダーの炭酸がちょうどいい具合に刺激してくれる。
周りに目をやると帰る連中でごった返し。小さい女の子から「うわぁ・・・」と嘆きたくなるような男、イケメンまで様々な人たちが
美琴を見に来たということだ。
「しっかし、まさかいきなりアイドルとはねぇ・・・俺に少しくらい教えてくれてもいいんじゃないの?」
誰にも聞こえないくらいの声で呟いたつもりだったが、
「全くその通りだぜい」
「っ!???」
反応されて驚き、つい慌てて周りを見ると・・・そこには土御門元春がいた。
俺と美琴の関係を学校で唯一知っている土御門だからか俺はほっと安心したが土御門は相変わらずニヤけた顔をしている。
「いんやぁ、カミやんの彼女に不覚にもときめいてしまったぜよ、あのステージはよかったにゃ~」
「誉め言葉として受け取ってやるよ。ていうか見たのかお前?」
「にゃ~。舞夏が超電磁砲からチケットもらったらしいんだけどにゃ~?
舞夏は今日メイド学校の実習があって行けなくてそれで俺が代打ってことだぜい」
「そうかよ。お前のことだから舞夏の代打ってだけでも嬉しいんだな」
「そんりゃあ!後でどうだったと聞かれたら詳しく教えてあげるのが兄の勤めぜよ。んで、どうして超電磁砲はカミやんに
このことを教えなかったと思う?」
「どうしてって・・・そりゃあ、美琴のことだから俺を驚かせようと思って黙っていたんじゃないか?」
俺の憶測を聞いた土御門は相変わらず笑っているがサングラスの奥に見える眼は笑っていなかった。
「それならどんだけいいことか・・・カミやん、超電磁砲とはどんなヤツか知っているだろ?」
「え?可愛いし優しいし料理もできる・・・いだぁ!!」
指を折りながら美琴がどんな子か思い出しながら答えていると土御門は俺の頭にゲンコツを放ってきた。
「カミやん視点じゃないにゃ~。学園都市だとどう言われているかってことぜよ」
「レベル5の第3位。学校の授業でも模範例に出されるくらいで知らない学生はほとんどいない?」
「アイドルで成功するとどうなるかにゃ~?」
「そりゃあ有名になるだろ」
「なら学園都市で知らない人間はほとんどいないのに何故アイドルになる必要がある?」
「え・・・」
「学園都市にいるほとんどが知っているなら上層部の連中は日本中、世界中と売り込むだろうな。学園都市のレベル5第3位のアイドルとして・・・」
「どういうことだ・・・」
「例えば大覇星祭は外の連中からすれば年に一度学園都市を見られるイベント。学生達が能力を使ってドッカンドッカンやり合うのを見せて収益を計っているがその反対に
見せしめている・・・という風にとらえることもできるんだぜい?」
「み、見せしめ!?」
「学園都市に歯向かうとこうなりますよ?ってとこかにゃ?」
「じゃ、じゃあ美琴は・・・」
「アイドルとしてバラエティー番組とかに出て超電磁砲でもぶっ放してみろい。普通の連中は凄いと面白がるだろうが
各国の首脳陣は縮み上がるだろうな。つまり、こんな凄い怪物が第3位でしかも上にあと2人いますよとアピールになるしな」
「それって美琴を脅迫変わりに使うってことか?」
「簡単に言えばそうなるにゃ~。海原が超電磁砲デビューというニュースに胡散臭さを感じたらしく調べてくれたらしいがな」
「じゃあ何故俺に教えてくれないことと繋がるんだよ!?」
「恐らく超電磁砲も脅迫されていると考えられるぜい。上層部の言う通りにしなかったら家族とカミやんと友人を殺す・・・とかな」
「・・・ふざけんなよ」
俺の中で怒りがこみ上げてきた瞬間だった。好きでやっていると思っていたのにまさか上層部の連中が美琴に手を出していたなんて・・・
「どうするんだカミやん」
「決まってるだろ。美琴を上層部から連れ戻す」
「残念ながら今は奇襲はお勧めしないぜい。上層部はカミやんが動くことに一番警戒している」
「じゃあどうすればいいんだよ!今すぐにでも・・・」
「いや、俺がタイミングを計って知らせてやるぜい。カミやんはその間超電磁砲が出る作品、テレビ、雑誌全て欠かさずチェックしてくれ。
何か変化が見えるかもしれないからな。あと、超電磁砲にも言ってはいけないぜい?」
「・・・・・わ、わかった」
今の俺は動く手段がなかったため土御門に従うしかなかった。
しかし土御門は終始口のニヤけをやめることはなかった。
「ん?」
怒っている真っ最中に俺の携帯が鳴った。携帯を開くと美琴からのメールが。
『見に来てくれてありがとう。当麻の姿バッチリ見えたよ。ていうかほとんど当麻を見ながら歌ったから(笑)
また連絡するね。当麻大好き!!』
その文章と一緒に写真が添付されていた。恐らく楽屋の中でみんなで撮ったものだ。
中央に美琴が立ち、その周りに白井、佐天さん、花飾りの子、一回も話さなかったおとなしい子、インデックス。
その他に御坂妹、打ち止め、そして何故か一方通行が写っていた・・・・・・・
それからというもの、俺と美琴が会える数はめっきり減ったがお互いメールでやりとりをし、夜寝る前に美琴が必ず電話をくれる。
撮影などで遅くなったりするが俺は電話が来るまで起きて待つ。
時にはまだ日が昇ってない朝方にメールで『今帰って来た。疲れたよ~』と来て慌てて俺から電話をかけたりもした。
まだ中学生なのに労働基準に思いっきり反した仕事をさせやがって上層部め・・・
そう思って美琴にやめてもいいんだぞ?と言ってみたこともあった。
でも美琴は、
「ううん、やめたくない。撮影とか楽しいし芸能界ってこれが普通らしいから。心配してくれてありがと。大丈夫だから心配しないで?
それにカッコいい役者さんとかと会っても私の一番は当麻だから」
と逆に俺が励ましてもらう始末。きっと上層部からの口止めされているのだろう。確かに俺なんかに正直に言えないよな。
もし言ったら俺やみんなが殺されるのかもしれないんだろう?
「とうま!!短髪が出てきたよ!!うはぁ!また綺麗なんだよ~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
思いふけているとこうやって毎回インデックスが俺を呼んでテレビを見ろ!と言ってくる。デビューイベントから数週間が経ち、
今は美琴の姿をテレビで見ない日はないと言えるくらいの引っ張りだこ。音楽番組、バラエティー、ドラマ、ニュースのコメンテーターをやっていた時はさすがにびっくりしたが
老若男女どの世代の人達がテレビをつけて「超電磁砲の御坂美琴だ!」と外の人間でも認知するくらいの活躍っぷり。
「ねえとうま、この番組、学園都市外のテレビ局で作られてるバラエティー番組だよね?」
「ああ、そういえば最近人気の芸人達に口説かれまくっているらしいんだ。美琴を信じているけどそんな話を聞くとさすがに俺の心臓に悪いよ」
「短髪は大丈夫!シスターである私が断言するからもう大丈夫!!」
「何を根拠に・・・」
そんな他人事のように言うインデックスを見て少し怒りを感じるがきっと彼女なりの励まし方なのだろう。
しかしなんだかんだ言って俺もインデックスと一緒に美琴が出演している番組は全てチェックしていた。そして雑誌も。
女性誌まで買ってチェックするくらいだ。
というより雑誌で御坂美琴特集が組まれていないほうがおかしいくらいの美琴フィーバー。学園都市を歩いても
100メートル歩けば違う美琴のポスターなり大きい看板を見かける。
俺からでもこの活躍なら多忙どころじゃないとわかる。いつ帰っていつ寝ているのだろうか。帰った時は必ず連絡をくれるが
あれは俺に心配させないための嘘なのだろうか。
そう思い俺は常盤台の寮監に美琴は遅くてもちゃんと帰っているのかと聞きに行った。
「ああ。御坂はどんなに遅くなっても帰ってくるぞ。それが活動を許可した時の約束だからな」
「そ、そうですか・・・」
「ちなみに御坂にお前に聞かれたらこう言ってくださいなんて言われとらんからな?たとえそう言われても私は絶対に言いつけを守らん主義だからな」
「ありがとうございます。少し不安がとれました」
「私も一人のファンでもあるから御坂がテレビに出るのが楽しみなのだよ。君には負けるかもしれないがね」
寮監の話を聞いて安心できたのもつかの間、俺の不安を今まで以上に駆り立てる出来事をテレビの前で見ることになった。
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
2023-02-08T17:22:53+09:00
1675844573
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲/Part05
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1717.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
胸ポケットと手のひらに
(あの時携帯持ってないって知ってたのに何で連絡くれないで帰ったのよ!)
常盤台の寮に戻ってからの美琴はすっかり不機嫌になっていた。携帯は美琴のベッドにあった。朝のいざこざで
持って行くのを忘れていたが、この体では持ち運びなど到底できないことはわかっていたが何か納得いかなかった。
体全体を使って携帯を開くと上条からのメールが。
『すまん、戻れなくなった。こっちから連絡するから待っててくれ』
とだけ。それにますます腹が立ち、美琴にとっては山のようにでかいきぐるまーをボスボスと殴っている。
(早く、今日中に!できるなら黒子がシャワー浴びてる時に連絡してよ!バカ!)
心で訴えても仕方ないのでボタンを踏んで
『今すぐ連絡しなさい!』
と心のこもったメールを送るが恋人からすぐ返信が来るわけでもなければ、何分待っても電話も来ない。
ここでもまた怒りをきぐるまーにぶつけた。
「あ~・・・どのような事でお怒りかわかりませんがそのお姿で怒ってらっしゃるお姉さまに萌え~。ですの」
カチンと来る一言を白井が放ってきたが今はこんな姿だし彼女と言い合いしても色々とまずいので我慢するしかなかった。
「さてお姉さま、黒子とのお風呂タイムですわよ?」
「何でよ!この大きさでも一人で入れるっつうの!!」
「いえいえ、もし万が一お風呂で溺れたりなどしたら黒子がマウストゥー・マウスをしてさしあげますのでご心配なさらず。
いや、むしろ溺れていただいたほうがいいのでは・・・」
両手をワキワキと動かしながら美琴にゆっくりと近づく白井。その間にヒュン!と着ていた制服が消えており
既に全裸状態になっている。
「く、黒子!?私に触ったらどうなるかわかっているでしょうね!」
「今のお姉さまは能力が使えない体。元に戻った時になんなりと罰は受けますの。
なので今日は・・・黒子が・・・・・・・お姉さまの体の隅々、いや、体内の隅々まで洗ってさしあげますの!!」
「いやああぁぁぁぁぁ!!」
上条からもらったハンカチで体を隠して最後の悪あがきをしようとした。
しかし数秒経っても白井が襲って来る気配が感じられなかった。あれ?と美琴は恐る恐るハンカチから顔を出すと・・・
「ふむ、白井は小さい子はいじめるなと教育されてないようだな。なら私がおしおきする義務がある」
白井の首を刈った事後の寮監が立っていた。
「御坂、奇遇だな。ちょうど2人きりになったとこだし話をしないか?」
「は、はい・・・」
このタイミングのどこが奇遇なんだろう・・・しかし美琴は寮監に逆らうことはできない。
「早速だが御坂、お前はどうしてそのような体になったと思う?」
「いえ、全く・・・朝起きたらこんなことになってたので何が何やらさっぱり・・・」
「そうか・・・話題を変えよう」
「は、はあ・・・」
「御坂、上条当麻とはどうだ?上手く行っているのか?」
「え、えっと。多分順調だと思います。今日会いましたけど私のこの姿を見てもいつもと変わらずな感じでした」
「そうか。お前はそれで満足なのだな?」
「あ、まあ・・・満足してます」
「キスもしてないのにか?」
「っ!!!?」
「図星のようだな。恐らくお前がこのようになったのはそれが原因だ」
何故寮監がまだ上条とキスしてないのを知っているのだろう。いや、今はそっちではない。
何故キスしてないのが原因になるのか。
「先ほど調べさせてもらったんだが御坂、お前がその姿になってしまったのは恐らくストレスが原因だ」
「ストレス?私そんなストレスなんて・・・」
「お前は上条当麻といるだけで嬉しいと思っているだろうがそれは間違いだ。
思い返してみろ。手を繋いで歩いている時、お前は嬉しいか?抱きしめられているとき、お前は嬉しいか?」
「そ、それはもちろん・・・」
「では何故キスしてくれない・・・そう思ったことはないか?」
「・・・・・・・・あります」
「共同生活をしていた時、2人っきりなのにどうして手を出して来ない?どうして襲って来ない?
どうしてキスしてきてくれない?そう思っただろう。私ならそう思ってしまうがな」
「え?あの・・・」
「その感情が大きくなりすぎて今回のようになった訳だ。まあ、前回の「自分だけの現実」が崩壊しかけたのに近いものだ」
「い、いやあの・・・どうしてそこまで詳しく知っているんですか?私たちが生活していた時をそんな詳しく・・・」
嫌な汗が体から出てきて顔を引きつかせる美琴。その様子を見ても微動だにしない寮監。背後からゴゴゴゴゴと音が聞こえる気が・・・
「すまんな御坂。実はあの部屋を監視していた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぅ」
「でもおかげで今回の解決策もこうやって簡単に見つかった訳だ。軽く上条当麻とブチュっとしてこい」
さらりと低い声で言いのけてくる寮監。恋人とキスしたくてたまらない結果体が小さくなった。なら恋人と
キスすれば元に戻る。そんなに簡単でいいのだろうか・・・
美琴はというと・・・
言いたいことがある。いや、かなりたくさんある。
プライバシーの侵害じゃないですか!!あんなのを見てどう思ったんですか?もしデータ残っているならください!!など・・・
「あの・・・寮監?」
「・・・・・・・・・何だ」
キラりと眼鏡が光り美琴を見るが奥の瞳が全く笑ってない。というより殺気立っているようにも見える。
クイっと眼鏡をかき上げて、
「言いたいことがあるなら言ってみろ。言えるならな・・・」
と威圧感を激しく感じる。
「な、何でもありません・・・」
「なら早くキスしてこい。常盤台を代表するお前がそのままだと色々大変なのだからな」
そう言って寮監は部屋を後にした。「はあ、大圄先生・・・」と聞こえたのは気のせいにしておこう。
寮監に「上条当麻とキスをすれば元の姿に戻れる」と聞いてから当然のように連絡をとろうとする美琴。
だが上条の電話にいくら電話してもメールを送っても返ってこない。
会いたいのに会えないもどかしさと早く戻りたいしキスもしたい葛藤にモヤモヤする。
「軽くブチュっとしてこい」
寮監が放ってきた一言が脳裏に過る。あれからはずっとそのことしか考えてない。
勝手にドキドキしている自分がいて何だか嫌になった。
だが上条と連絡がとれなくなって3日が経過し、冒頭の感情が3日も続くとさすがの美琴もおかしくなってきた。
「お姉さま、最近元気ないですけど大丈夫ですの?」
「うう、当麻、とうまぁ・・・会いたいよぉ」
白井には付き合っていることを内緒にしていたがついに我慢の限界になってしまい白井の前でも堂々と上条の名前を連呼し泣く始末。
そんな環境にいてもたってもいられない白井。
「きぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!おのれ類人猿めえええええ!!!!!お姉さまの涙の先が
貴様だとはぁぁぁぁぁぁ!!!!!殺す殺す殺すぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「・・・で、白井さんが不在なのを狙って私はここに呼び出されたと」
「ごめんなさい。頼れる人がいなくて・・・」
白井が部屋にいない時を狙って佐天を呼んだ美琴。とりあえず簡単に説明を受けた佐天は
「なら上条さんとキスすれば終わりでしょ?簡単じゃないですか。恋人だしそうためらうことでもないですよ」
「でもまだ一回もしたことないし連絡つかないからどうすればいいかなって・・・」
「う~ん。御坂さんのその姿じゃ簡単に出歩くこともできないですからね。手段はなくはないですけど・・・」
「え?何か作戦でもあるの?」
「私が御坂さんを上条さんの部屋まで連れて行けば問題ないです。それに・・・・」
「どうしたの?」
佐天が少しためらったような顔をするため不安になってしまうが勇気を出して聞いてみた。
「上条さんと連絡取れないって言ってましたけど、私上条さん見ましたよ?」
「は?」
「いや、きっと学校帰りだと思うんですけど前会った時と比べると相当ゲッソリした印象があるというか。
フラフラ歩いていたのを見ただけで声はかけきれなかったんです。」
「全くあのバカは・・・生きてるならなんで連絡つかないのよ。泣いて損したじゃない・・・
佐天さん、お願いできるかな」
「もちろん!邪魔はしませんから安心してくださいね?」
という訳で・・・・
「緊張してきたわ・・・」
「何だか私もです」
上条の部屋の前に到着。もし上条がいなくてもインデックスはいる。事情を話せば上条が帰ってくるまで
待たせてもらえるだろう。
チャイムを押すとインデックスが出てきた。案の定、上条は不在。
「短髪!?一体どうしちゃったの!?」
「いやぁ、話せば長くなるんだけどね?」
恋人の部屋にどうして違う女の子がいるんだろう。佐天は突っ込み所満載なこのシチュエーションに
あえて何も言わない。きっと深い理由があるに違いない。いやそうであってほしい。きっと上条さんは二股とかしない。
だって御坂さんは普通に接しているし。きっと目の前のシスターとはそんな関係ではない。
結果的にそうなのだが佐天はその心配が絶えなかった。
「と、ととっと、とうまとキスしないと元の体に戻れない!?」
「らしいんだ・・・」
テーブルにインデックス、佐天が向かい合って座り、テーブルの上に美琴が座ってインデックスにしては珍しい
お菓子とお茶まで出してもらい、一通り説明をした。
「でさ、当麻に連絡つかないんだけどアイツ最近何してるのかな?って思ってここに来たの。何か知ってる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・どうりで」
ぼそっと何か理解したような顔をするインデックス。美琴と佐天は顔を合わせてなんだろう?と考えた。
「とうまの様子が最近おかしいことと繋がるかも」
「様子がおかしいって・・・いつから?」
「私の完全記憶能力だと・・・3日前だよ」
「3日前?」
美琴と佐天は3日前を思い返した。
あの日美琴の体が小さくなってちょっとした騒ぎになり、上条と合流できたが、土御門元春に連れて行かれてから連絡がない。
「でも、毎日ここに帰ってきてるのよね?」
「うん。でも夜遅かった。しかもいきなり私に「キスってしたことあるか?」って聞いてきたんだよ!」
「なんと・・・」
恐るべし上条さん・・・佐天は顔を引きつらせた。
「ま、ままままさかアンタ、当麻とキスしてないでしょうね!!」
「そこは神に誓ってしてない。私が怒って噛み付いてからはスフィンクスにキスしようとしていたけど」
「スフィンクスって・・・・・・・・・・ちょっ!!その猫に!?」
「うん」
何だか凄い会話の中にいるなぁ。御坂さん、このシスターさんが上条さんに噛み付いたことには怒らないんだ・・・
しかし猫相手に練習って・・・上条さんもウブな所もあるんですね。
既に美琴とインデックスの会話にあまり着いて来れない佐天。
「でもスフィンクスに返り討ちに遭ってたみたいだけど。顔を何度も引っかかれてたし」
「でも何で当麻はそんなに・・・」
「恐らく誰かから短髪を元に戻す方法を聞いたんじゃないかな?そうでもないとあのとうまの事だから
あそこまでやることはないかも」
「ということはあの時土御門っていう人は上条さんに教えたんじゃないですか?御坂さんにキスしないと戻らないって事」
「なら何で戻って来なかったのよ。そこがわからないわね」
う~んと3人考え込んでしまった。が都合良く本人が帰ってきた。
「ただいま~・・・って佐天さんに・・・美琴?」
「おじゃましてます上条さん」
「連絡とれなくてどんだけ寂しい思いしたと思ったのよバカ。それに何であの日連絡もしないで勝手に帰ったのよ」
「とうまおかえり。短髪に連絡取ってないなんて最低かも」
「えっと~・・・」
帰ってきてすぐにこの仕打ちとは・・・不幸だとしか言えない上条。でも彼なりの理由もあった。
「あのですね、あの日土御門から変なこと言われて戻りづらくなったと言いますか。
急用ができたと言いますか。とりあえずやましい事なんて一つもごまいませんよ?」
「やましくないなら教えてくれてもいいんじゃないですか上条さん?」
「う・・・」
予想だにしなかった佐天からの攻撃にたじろぐ上条。美琴とインデックスはジト目で睨みつけてくる。
もはや上条に逃げられる余地はない。
「もしかしてキスすれば元に戻るって知っていたの?とうま」
「ギクぅ!!」
「ギクって何よ・・・」
「はぁ・・・」
全てを諦めたかのように上条はため息を吐いて言葉を続けた。
「実はあの時、土御門から聞いて初めて知った。すぐ戻してやりたかったけどその・・・恥ずかしくて」
「恥ずかしい!?」
思わず佐天は声をあげてしまった。
「えっと・・・この上条さんが美琴とキスなんてしてもいいのかと思いまして。ていうか俺したことないし。
そう考えると段々男として情けないなと思って・・・元に戻してあげたいのに俺の勝手な羞恥心だけが出て。
でも、俺はどんな姿であろうと美琴が好きだし。だから恥ずかしいけどクラスのみんなにキスのやりかたを
教えてもらったりして。でもなぁ・・・」
「どおりでボロボロな訳ですね」
「キスのやりかたを教えてくれって言ったらクラスメートみんなから追いかけられるし・・・
俺ってやっぱりダメなのかなぁ?」
いや、そこは今まで蓄積させておいたフラグが原因だろう。
「で、とうま。短髪はわざわざここまで来てくれたんだよ?どうするつもり?」
「わかってるよ。俺も腹を括る。するよ。美琴とキス」
「ほほぉ~!!超展開来た!!」
「さ、佐天さんやめてよ!!///」
「では、お2人お願いします!」
佐天がささっ!というように促すが・・・
「佐天さん、さすがにみんなの前でするのは・・・」
「すまん。俺もちょっと無理だ。悪いけどインデックスと二人外で待ってもらえないか?」
「ええ~?・・・ま、そうですよね。まだキスしたことないし。インデックスさん、行きましょ?」
「うん。とうま、短髪にキス以外のことしたら許さないんだよ?」
「まだ上条さんにはそこまでの度胸はありませんので・・・」
「御坂さん、後で詳しく聞きますからね~」
インデックスは上条に釘を刺すように、佐天は美琴を冷やかしながら外に出て行った。
残った2人。上条はテーブルの前に座り、テーブルの上にいる美琴に優しく手を伸ばした。
「ほら、乗れよ」
「う、うん」
ぴょん!と美琴は上条の手に乗り、上条はその手を自分の顔に近づける。
「まさかファーストキスがこんな形で奪われるとは考えもしなかったわ」
「俺だって初めてなんだからな・・・・んじゃ、するぞ?」
「ま、待って!!」
突然美琴が上条を静止させる。緊張のせいか、顔がこの上なく赤い。下を俯いたかと思えば急に大人しくなったりと
上条の手の上で忙しい。すると美琴は何を思ったのか、おもむろに手の上で横になった。
思いっきりのびをしたと思えばまるで右手の全てを堪能しているかのように右手に触る。
「美琴さん?」
「ちょっとこのままでいさせて?当麻の右手を体全体で味わうことって二度と経験できないでしょ」
「はあ・・・」
「なんか当麻にも、この右手にも何回も救ってもらったんだよな~って思うとね。
しかもこの右手は今私だけのものだもん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でもね、手を繋いでいる時、当麻に抱きしめてもらっている時も凄く嬉しいよ?でも今回でそれじゃ
足りないって思い知らされたんだ」
「と言いますと?」
上条の質問にガバっと体を起こし、上条を睨むように、そして直後に笑顔で
「私の全部が当麻のことでいっぱいだから当麻も私でいっぱいになってほしい。当麻の全部を独り占めしたいの」
「それはなんというか・・・光栄です」
「インデックスは仕方ないとして私だけを見てくれる?」
「もちろんでございますよ姫」
「なら誓いの・・・・キス・・・してよ」
「お前・・・それは反則だ・・・でも、誓います」
チュ
お互い目を瞑り上条は美琴の唇に軽く触れるキスをした。ほんの一瞬触れたかどうか。
「ん・・・?」
右手に乗っていたハズの美琴の重みを感じなくなっていた。その代わり両肩にずしりとした重みが。
目を開けると美琴が。その姿は紛れもなく元に戻っていた。どうやら美琴が両肩に手を置いているようだ。
「よかったな、戻って」
「でもあのままだったら当麻ずっと私を甘やかしてくれたかも。そう考えるとあの生活も悪くなかったかもね」
「俺に厳しい美琴が小さかったら威厳もないしな」
「何よ、どんな姿の私も好きなんでしょ?」
「その言葉には嘘はございません姫」
「えへへ・・・ねえ?」
「ん?」
「もう一回して?今度は長いのしてほしいな・・・」
「・・・・・・・ゴクっ」
「あ~。今エッチなこと考えたでしょ?」
「うるせえ。してやんねえぞ?」
「いいもん。私からしてあげるから・・・」
再び一つになった2人。今度は長く、お互いを離さないほど時間を忘れさせるキス。
だがその2人を玄関からこっそり覗いているシスターと中学生の女の子が目を光らせていた。
「あの2人、長いんだよ」
「熱々ですね~。もしかしてインデックスさん妬いてます?」
「そんなこと・・・ないんだよ」
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
2023-02-08T17:05:10+09:00
1675843510
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲/Part01
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1685.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
御坂がこんなに可愛いわけがない
私上条当麻は、現在いつも住んでいる寮ではなく訳あって学園都市上層部から与えられたマンションに無期限で住んでいる。
その部屋は1Kといかにも学生らしい部屋だが軽く12畳はあるだろうこの広さ。しかも
家電、棚、テーブル、茶碗や皿、生活に必要な物まで完璧に揃っている。
いつも住んでいる寮はユニットバスだけどこの部屋はトイレ、風呂は別、キッチンなんて
コンロが3口もあるという貧乏学生上条さんにとっては贅沢極まりない。
おまけに生活費も多少だが支給される。インデックスとスフィンクスは今回のことでしばらく小萌先生の所に
お世話になっており、いわばこの支給されるお金は全て上条さんの物!この上条当麻、恐らく
人生初であろう「贅沢」というものを堪能している訳であります。
インデックスによって消えて行く食材、家計なんて気にせず自分の好きな料理を作り
好きなだけ食べる。俺がどれだけバカ食いしてもインデックスのいつもの食事代の10分の1はかからない。
というより多少といえども支給額はいつもの生活費の2倍にもなるから上条さんからすれば
「このお金でなんでもできちゃう」のですよ。ふふふ・・・
そしてこれも訳あって学校もしばらく行かないで済み(なんと欠席扱いにもされない!小萌先生から届くプリントを済ませるのみ)、
好きな時間に起きて好きな時間に外出し、好きな時間に食事を取り好きな時間に床につく。
こんなに幸せでいいのでせうか?
いいえ、必ず幸せとは限らないのです。というより今のは不幸中のほんの幸いとでも言いますか。
何せこの部屋には・・・・・・
まずそこから話しましょう。
突然隣の住人の土御門が俺の部屋を訪問して来て、問答無用でこの部屋に連れて来られた。
「カミやんにしかできない指令なんだぜい?羨ましいにゃ~」
と言われたがさっぱりだった。のだがこの部屋の充実感、支給される金額に心を奪われ、インデックスの
保護は学園都市、イギリス清教連携での保護というあまりのVIP体制に頷くしかできなかった。
だがもちろん学園都市は無償でこの上条さんにこの幸せ生活を与えてはくれなかった。
そう。これは全て上層部からの指令。
適任は上条当麻しかいないと上層部が勝手に決めつけ、俺に有無を言わせない程の待遇を準備したとのこと。
まあ、これくらいで喜ぶ俺だから上の連中からすれば痛くもかゆくもない金額だろうが・・・
そんなこんなでこの部屋に連れて来られた時はまだ俺一人だったがある程度説明をしてくれた土御門は
「カミやん以外にもう一人ここに来るぜい」
としか教えてもらえなかった。それが誰か?俺をここまでVIP扱いするくらいだからまた
生死をかけて魔術師とでも戦うのか?
もしかして魔術師の誰かとここで重大な任務を任せられるとかいう不幸なのか?いや、
もっと不幸な任務なのか?
ない頭をフル回転させても無駄だと思ったからベッドに身を投げ出す。
「まあ、誰が来ても関係ないか」
とポツリと呟いたけど、全然関係あった。
ピンポーン!
チャイムが鳴りきっと俺と同じ扱いのヤツが来たんだろうと思いながらドアを開けると・・・
「は?何で・・・お前が?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
常盤台中学の制服を身に纏いトランク片手に顔を真っ赤にした御坂美琴がそこに立っていた。
「これ・・・」
御坂が固まったまま俺に封筒を差し出してきた。
『上条当麻様
この度は誠に勝手ながらあなたに学園都市を代表する超能力者で第3位の御坂美琴様に対する御協力をお願いします。
御坂美琴様は現在、「自分だけの現実」が著しく崩れかけておりその理由が我々でも不明です。
ですがその理由に上条当麻様が関係しているということだけわかりました。
このままですと御坂美琴様は超能力者から大能力者にランクダウンしてしまう恐れがあります。
「自分だけの現実」が崩れている原因の上条当麻様にも解決策を御坂美琴様と一緒に探していただきたいのです。
最善を考えた結果お二方が同じ屋根の下で生活をすれば早いと思い、この場所を提供させていただきました。
なので問題が解決するまでの期間、生活面はある程度の額ですが支給させていただきますので
心配なさらず。
あとこの事は学園都市全体に大きく関わりますので外では絶対口しないようにお願いします。
是非、御坂美琴様と学園都市のために御協力お願いします。
学園都市統括理事会』
「なあ御坂、つまりお前の「自分だけの現実」が元に戻るかそれ以上にならない限りここに二人で生活すると?」
「うん・・・ごめん」
「あ、いや・・・お前が謝ることなんてないんだぞ?俺が原因なんだろ?」
確認を取るための質問のつもりだったが御坂を傷つけてしまったように思えた。しかし
俺が知っている御坂じゃないみたいだ。
俺の顔を見る度に顔を赤くして下を俯くし、強気な口調も仕草もまだ一回も見ていない。
出会い頭に突っ込みたかったがそんな空気でもなかった。
「ま、まあとりあえず中に入れよ。ここで話しても何だからさ、トランク貸せよ、持ってやるぞ?」
「あ・・・・・あり・・・ありがとう」
とりあえず御坂が重症なのはわかった気がする。ありがとうがまともに言えないなんてよほどだよ。
でも何故俺が原因なんだ?トラウマになるような事はしてないハズだし・・・
俺の後を恐る恐るついて来る様子も変だ。とりあえず部屋の隅っこにトランクを置き、詳しい話を聞こうと
椅子に座らせる。
「ほら、この部屋にあるもの好きに使っていいらしいから座って話そうぜ?」
「・・・・・・・・・うん」
こんな大人しい御坂も気持ち悪いものだ。御坂も椅子にゆっくりと座ったのだが
「っ・・・・・・!!!」
俺と目が合った途端頭から電気をバチバチ言わせて漏電し始めた。
「み、御坂!?」
慌てて右手を頭に置いたが御坂は
「いや!離して!」
と拒否して右手を振りほどこうとしてきた。
「バカ!ここで手を離したら部屋がめちゃくちゃになっちまうぞ?」
「ごめん」
「謝るなって、「自分だけの現実」が回復するまで俺とここで生活しないといけないんだぞ?
そう考えたら早く治したいだろ?少しの辛抱だから頑張れ御坂!」
「・・・・・・・・・・・・」
しばらくしてようやく漏電も収まり、「詳しいことは今じゃなくてもいいからいつか話してくれ」と一旦話は止めることにした。
「そうだ御坂、晩飯買いに行って来るから少し留守番頼むわ」
「うん」
支給されたお金を持ち、急いで玄関の外に出た。
「ふう・・・御坂・・・大丈夫なのか?」
部屋の中から御坂の泣いている嗚咽が聞こえてきた。先ほどから今にも泣き出しそうだったし
傍にいてもさっきみたいに拒否されたら俺が怖いし・・・
それにあの場所からすぐにでも逃げたい自分がいたことに腹が立った。
食材を買いにスーパーに着くと
「カミやんどうだい?新婚生活気分を味わえているかにゃ~?」
土御門が待ってましたと入り口付近に立っていた。
「何が新婚気分だ。どうしたんだよ御坂のヤツ?ちょっと見ない間に人が変わったようだったぞ?」
「さあにゃ~、俺には全くわからんことぜよ。でもそれを解決するのが今回のカミやんの使命だぜい」
「成績も悪い俺がどうやってレベル5の問題を解決するんだよ?訳わかんねーよ」
「じゃあ言い方を変えよう。超電磁砲を助けるのがカミやんの使命だ」
「助ける?」
「そう、人は解決策を求める=助けを求めているんだ。物理的、論理的解決とかじゃなくカミやんが
今までやって来たように今回また超電磁砲を助けてあげれば問題ないと思うぜい?」
「とは言われてもさっぱり・・・」
「そうかい。俺が海原だったらカミやんをぶっ飛ばしているセリフだぜい今のは」
「御坂に・・・恋をしている?」
「にゃ~、俺はいつでも舞夏一筋だぜい。でも今のは友人からささやかなヒントだぜい?
んじゃ、俺はこれから舞夏の愛ある晩飯が待っているから帰るにゃ~」
そう言ってにゃーにゃーうるさい土御門は去って行った。
「アイツに言われるとムカつくけど・・・恋・・・か」
御坂が誰かに恋をしても当たり前だろう。そういう年頃だしあの顔立ちといい性格といいモテるに
決まっている。でもそこに何故俺が原因なんだろう?やっぱり自分の頭の中から解決策に
導く答えが出てこなかった。
今日の御坂はあんな状態だし俺が料理を作ろうと張り切ったのは良かったが食材を選ぶのに時間が
かかりすぎて帰るのが予定より結構遅れてしまった。
「ただいまー。悪い!食材選ぶのに時間かかって遅れちまった!」
部屋に入ると御坂は普段着なのだろうか、女の子らしく可愛らしい服に着替えておりベッドに座って
枕を抱き顔をうずめていた。
きっとさっきまで泣いていたのだろう。
俺が帰ってまだ泣いていたら余計心配させてしまうかもという彼女のプライドなのかもしれない。
でも
「バカ、遅い」
とだけ言ってきた。泣いて鼻声でまだ弱弱しい声だったけど俺はこれだけの事で少し嬉しくなった。
少しだけいつもの御坂に戻ったのかなと。
「今日は俺が飯作るから御坂は適当にくつろいでていいぞ?」
「・・・・・バカ」
「・・・・・・・・・・・・・?」
何故ここでバカと言われるのでせう?まあコイツとは昔から話が噛み合わないのはよくあることだから
そう気にしなくてもいいよな?
出来上がった料理は見るからに男料理。豆腐しか入れてない味噌汁、牛と豚を適当に入れた生姜焼き、
気休めに盛り付けた野菜サラダという地味で変哲もないメニュー。
お嬢様の御坂の口に合うとかは気にしなかったが御坂の出来上がった料理を見る目が
「何この適当感丸出しの料理・・・」
だったためここで初めて後悔した。インデックスに食べさせる訳ではなかったんだと・・・
「文句があるなら食べてから言えよ?」
御坂に言うがやはり顔を赤くして俯いたままだった。でもいざ食べてみると意外と口に合ったらしく完食してくれた。
でも食事中も俺が話しかけると顔を赤くして俯くの繰り返し。
「なあ御坂、もし俺に何かしてほしいことがあるなら言ってみてくれ」
ソファーに座りテレビを見ていても何をしていても御坂は落ち着かない様子だったし、俺もその姿を見ていると
こっちも落ち着かない。何かしてあげたいけど何をすればいいかわからないのもあり、
聞いてみたほうが早いと思った行動でもあった。
でも今日御坂と会話をしたと言えば最初に封筒をもらった時と漏電したときのみ。果たして御坂は
少しでも俺に何かサインを出してくれるのだろうか。
「・・・・・・・・・・・ある」
ついに答えてくれた&今日初めての御坂とまともな会話!!つい嬉しくなってしまった。
「何だ?俺ができる範囲で頼むぞ?電撃喰らえってのはナシだからな?ハハハ」
もちろん最後の言葉はギャグのつもりで言ったのだが御坂はギャグとは受け取っていなかったようだ。
心底怒っている顔をしていた。
「そんなことしない・・・・・ここ・・・・座って?」
「??」
御坂が指をさした先は自分が座っているソファーの隣。相変わらず顔はリンゴのように赤い。
「そんなんでいいのか?でもさっき漏電したとき離せって言ってたけど・・・大丈夫か?」
「大丈夫、もし漏電しても防いでくれるから」
「・・・わかった。でも嫌だったらすぐに言えよ?」
御坂がコクリと頷いたのを見て俺は御坂の隣に座った。でも御坂は早速
「うぁ・・・もうダメ・・・」
パチパチと嫌な音が聞こえてきた。ゆっくりと右手を頭に乗せるが今度はさっきと違う反応をしてくれた。
「・・・ありがとう。すっごい嬉しい」
「っ・・・・///・・・お安い御用ですことよ?」
相変わらず俯いたままだったが初めて緊張を解いたような顔をしていた。不覚にも俺はこの時
御坂にドキっとした。
「ありがとう、私お風呂入るから・・・」
「そっか」
右手を御坂の頭から離し、御坂はトランクごと風呂場へ持って行った。
「あ・・・着替えとかあるんだよな・・・」
今のは完全に俺のミスだと思った。
御坂が風呂場から出てきた。ゲコ太の柄が入ったいかにも御坂らしいパジャマを着ていた。
相変わらず御坂は何でも似合う。こんな子供っぽいパジャマも御坂が着れば流行のファッションにもなりそうだと思う。
「あ~、御坂?俺も風呂入るからその間に服とか、し・・・下着とか棚に入れておけよ?
一応こっちは使ってないから」
言いづらいな~と思いながらタンスを指差し助言のつもりで言う。ここでもまた顔を赤くされ
こっちも顔が熱くなるのを実感した。
急いで風呂場に入り湯に体を入れる。考えてみると今日初めてリラックスできたのかもしれない。
御坂の「自分だけの現実」が回復するまでこの生活が続くと思うと・・・不幸だ。
いや、御坂はもっと辛いはず。俺が初日からこんなこと言ってたら御坂はもっと辛い。
御坂のために何かできることはないか・・・でもやはり今の俺の頭は導いてくれない。
考えるのをやめて風呂場から上がったが、ここでの生活での最大の問題点を見つけてしまった。
御坂は服や下着をタンスの中に入れ終わって既にベッドで眠っている。そう、この部屋にベッドは一つしかない。
どことなく誰かのスペースが空いているように見えるのは気のせいだろうか・・・
深く考えるのはやめよう。紳士上条さんが取る行動はただひとつ!
この部屋には俺の寮にはないものがある。そう、ソファーという素敵アイテムが。
風呂場で寝るという地獄より500倍天国だ。迷わず俺はソファーで横になり、眠りについた。
記憶が薄れて行く最中、御坂が「バカ」とぼやいていたのはきっと寝言だったんだろう。
翌朝、目が覚めると・・・
「うわぁ!!」
「ひゃ・・・・・・」
俺の目と鼻の先に御坂の顔がどアップであった。近い、近すぎ。俺が悲鳴を上げると御坂はサッと
キッチンのほうへ消えて行った。
相変わらず顔は赤い。でも昨日と変わった所があった。
「お・・・・おはよ」
「おぉ、おはよう」
姿は隠れて見えないが御坂から話しかけてくれ(ただの挨拶だが)た。
「き、昨日、晩御飯作ってくれたから朝ごはん・・・私が作った・・・から」
「あ、だから今起こそうとしてくれたのか?」
「・・・・・・・・・・/////」
う~んわからん。何故ここでまた固まるんだろう?恐らくこのパターンだと顔も赤くしているに違いない。
顔を洗い服を着替え、御坂が作った朝食を取る。やばい、めちゃくちゃ美味い。これが本当に
何でもできるという典型的な女の子なんだな~と実感した。
「御坂、これ全部凄い美味いよ!」
「・・・失敗したけど」
「どこが失敗してるんだよ?」
「全部・・・」
顔は俯いたままだけど少し会話ができるくらいになってきた御坂。でもそろそろ顔を合わせてくれないかな~と思うが
ここはもう少し時間をかけて解決していかないといけないのだろう。
朝食を食べ終え、御坂は「私が片付けるから」とさっさと食器を持ってキッチンへ再び消えて行った。
朝からこう特にやることがない。テレビをつけても朝のニュースしかやっておらず俺の興味を
持つようなものはない。ソファでいつの間にかまた眠ってしまった。
何だか右手を握られている気がする。それに気がつき目が覚めたのだが・・・
「・・・な、何をされているのでせうか御坂さん」
「ごめん」
「いや、謝られても・・・」
御坂は両手で俺の右手を握って黙ってこっちを見ていた。そんな見られるとさすがの上条さんも
ときめいてしまうと言いますか・・・
「あ・・・アンタを見ていたらまた漏電しそうになって」
「そうか。落ち着くまで待ってるよ」
「うん、ありがとう」
そうして御坂はなんと平日のお昼人気バラエティー番組が始まるまで俺の右手を握っていた。
別に御坂と手を繋いでいるからって紳士上条さんはドキドキなんてしませんことよ?
「なあ御坂、どこか行かないか?」
昼になり、部屋にいてもすることないし退屈しのぎに外出でもと思って発案したら御坂は
今日一番の「いい顔」をした。
「行きたいっ」
いつもみたいな元気はまだないがこの生活始まって一番嬉しそうな表情だ。
「着替えるから外で待って」
「ああ、お前まだパジャマだもんな」
必要最低限のものだけ持って玄関の外で着替え終わるのを待つ。10分、20分と経過する。
ちょっと長くないですか?制服に着替えるだけだろ?と思っていたがそれは間違いだった。
「おまたせ」
現れた御坂は私服。白いワンピースが凄く似合っており、少し弱っている今の御坂を際立たせていた。
正直に言うと「守ってあげたい」キャラに脳内で変換されてしまった。
「制服じゃないんだな?」
「平日のこの時間に制服で歩くとおかしいでしょ?私服での外出も許可出てるから」
昨日から御坂の一番長いセリフだった。すると御坂は俺の右腕にしがみつき
「いつ漏電するかわからないからこうしてていい?」
現在か弱いお嬢様と化している御坂にこう言われるとNOとは言えない。いや、いつもの御坂に
言われてもNOとは言えないだろう。
「そんなにひっついて歩きづらくないか?」
「歩きづらくてもこっちのほうがいい。安心するから」
御坂はどうやら俺を頼りにしてくれているようだ。昨日は触っただけで拒否したのに不思議なもんだ。
女の子の気持ちはわからない物だとどこかの偉い人が言っていたけどそれは頷ける。
「んじゃ、地下街にでも行くか」
御坂が右腕にくっついて歩きづらいがここは我慢して地下街へと足を運んだ。
「御坂、どこ行きたい?」
「あ・・・アンタが行きたいとこでいい」
地下街に着くまでは以外と会話ができた。御坂は「うん、いや」しか言っていないが
それでも御坂の表情が緩んでいたのでよかったなと思っていたが、地下街に着いてから
また大人しくなり、俺の右腕にしがみついた動物みたいだ。
でも御坂の性格上、こうやって俺の行きたい所でいいと言うのはきっと行きたい所があるのだろう。
この素直じゃないお姫様が行きたい所に連れて行くのが今の俺の使命だと思った。
「じゃあ、こっちだ」
俺が急に方向を変えたので御坂は俺の腕から離れそうになったが慌てて腕を握り返してくれた。
その仕草が可愛いと思ってしまった俺はこの時からもう手遅れだったのだろう。
「まずは、ここかな?」
連れて行った店は御坂が好きそうなファンシーショップ。御坂が喜びそうだと考えたが
御坂は「はっ?」という顔をしていた。
「お前、こういう店好きだろ?なんかいつもの100倍以上大人しいからここで少しでも
スッキリできればと思って最初にここを選んだのですが・・・」
「・・・うん」
アンタにすればよくできた行動じゃない?とでも言いたいのかな?眉間にしわをよせ俺の顔を覗いてくる。
しかも結構顔が近い・・・
「は、入るぞ?カエルのストラップでも買ってやるよ」
「カエルじゃない!ゲコ太!」
作戦成功。ようやくいつもの感じに近い御坂に戻ったようだ。俺は御坂のこの突っ込みをどれだけ
待っていたのだろう。素直に嬉しかった。でも唯一違うのはずっと俺の腕にしがみついて離れないこと。
気に入った品物を手に取りジーっと眺めている時も「これ欲しい」と決めた時も右腕に巻きついたままと
表現したほうがわかりやすいだろう。嫌じゃないけどさすがに人が多い所だとちょっとなぁ・・・
さすがの上条さんでも恥ずかしいのですよ。
「これ、あげる」
「んあ?あぁ、サンキュー」
会計を済ませ、御坂は買ったばかりの袋からおもむろに取り出したカエルストラップ(ゲコ太ではない違うキャラとだけわかった)
を唐突に俺に差し出して来た。自分で持っていろよといいそうになったが、俺が何らかの
原因で御坂の「自分だけの現実」を崩していると考えると御坂のこの要望を断ることはできない。
「御坂、次どこか行きたい所あるか?」
「・・・じゃあこっち」
俺の腕をグイっと引っ張って歩き出した。さきほどより表情が落ち着いたようにも見える。
でも実際俺はまだ何もしてない。ただ御坂が元気になればと思って案を出したり右手を貸した
だけであって助けになっている訳でもない。一緒にいるだけだ。
でも俺はそれだけでも御坂と一緒にいると楽しいと思った。御坂は俺が原因でこんなに苦しんでいるのに俺は
なんて能天気なことを思ったのだろう。助けになれないか御坂?俺は何をすればいい?
こんなこと直接聞ける訳ない。でも俺は御坂に腕を引かれている時にある決意をした。
「御坂美琴を守る」と胸に・・・
「楽しかったか?」
「うん」
地下街からの帰り道、口数は少ないが会話らしい会話がようやくできてきた御坂。そろそろ
本人のためにも色々聞いておいたほうがいいかもしれない。部屋に到着し、途中スーパーで買った
食材をテーブルに置き、一息つこうとソファーに身を投げ出した。御坂はというと・・・
俺・・・ではなく俺が座っているソファーの空いている所を見てもじもじしている。
座りたいなら座ればいいのに・・・俺が座っているから座らないのか?
「御坂、ソファーに座りたいならいいぞ?俺、椅子でもいいから」
立ち上がろうとしたら突然
「待って!!」
慌てたように俺を制止させてきた。
「あの、隣に座るから・・・また漏電するかもしれないから・・・行かないで」
「お、おぅ」
弱弱しい喋り方でお願いをしてくる姿が正直やばい。隣くらい勝手に座ってくれよ!!
俺が意識してしまうだろ!?
御坂は俺の隣に座り、外にいた時のように俺の右腕にしがみついてきた。最初より慣れて来たが
最初よりドキドキしている俺がいる。理性よ落ち着け!今の御坂は俺が原因で苦しんでいるんだ!
勝手な行動は許しませんよ!?
「・・・・・・・・・・けど」
「え?」
俺が数秒トリップしている間に御坂が俺に何か言っていたようだ。
「聞いてもらいたい話があるんだけど」
御坂が言い直した言葉ははっきりと聞こえた。弱弱しい態度から一転、しっかりと喋っていた。
御坂はきっと今回のことについて何かあるのだろう。
「ああ、聞いてやるよ」
「私の「自分だけの現実」なんだけど。何故原因がアンタだと思う?」
「考えたけど正直俺にはわからない、すまん」
「アンタらしいわ。でもね、私には理由がわかるの」
「じゃあ何で・・・」
御坂は目で俺の言葉を遮った。
「もし回復しなくてもレベル5からレベル4にランクダウンしても私は全然いいんだ。だって・・・」
「だって何だよ?」
「アンタといっしょにいるだけで今凄い嬉しいもん」
嬉しい・・・その言葉を聞いただけで俺の心も嬉しくなった。
「でも原因は俺ってどうしてなんだ?」
「ここまで言わせておいてまだ気付いてないの?」
「悪い、さっぱり・・・」
「何故私はこんなに顔が赤いの?何故私はアンタの隣にいると漏電してしまうの?
何故私はその漏電を言い訳にしてアンタの腕に抱きついているの?何故私はアンタにほんの少し
気遣いされるだけでこんなに嬉しくなるの?何故アンタはその私の気持ちに気付いてくれないの?それが理由よ」
大胆というか何というか・・・一変して御坂のキャラが変わった気がするのは俺だけだろうか?
いや、その前に答えを出さないと。
「・・・すまん、わからない」
「嘘・・・ここまで言わせておいてそれはないでしょ」
「悪い」
「やっぱりアンタみたいな鈍感には直接言うしかないのね」
「なら言ってくれよ。俺がこういうのもなんだけどさ」
「ダメ、無理・・・私が死んじゃう」
「はあ?それじゃ解決できないだろ!」
「いいの。だって・・・解決しなければずっとここでアンタと生活できるでしょ?」
「それでいいのか?」
「いい。ずるいけどこれで少しずつ「自分だけの現実」するかもしれないし」
とまあ、こうしてズルズルと御坂との生活ももうすぐ一ヶ月になろうとしている所だ。
御坂というと・・・あれからは少しはまともに会話もできるようになった。どちらかといえば
元の御坂に戻ったと言ってもいいだろう。でも何かしら腕にしがみついて来るし外出する時も
俺の腕はがっちりロックされている。漏電はしなくなったし顔も赤くすることも減った。
そして俺たち2人が一番変わったことは・・・
お互いを下の名前で呼び合うようになった。
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲)
2023-01-17T07:36:12+09:00
1673908572
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/短編
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1500.html
す|COLOR(#FFFFFF):&exk(){__}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|COLOR(#FFFFFF):&exk(){______}|
||[[Part1>./Part01]]|[[Part2>./Part02]]|[[Part3>./Part03]]|[[Part4>./Part04]]|[[Part5>./Part05]]|[[Part6>./Part06]]|[[Part7>./Part07]]|[[Part8>./Part08]]|[[Part9>./Part09]]|[[Part10>./Part10]]|
||[[Part11>./Part11]]|[[Part12>./Part12]]|[[Part13>./Part13]]|[[Part14>./Part14]]|[[Part15>./Part15]]|[[Part16>./Part16]]|[[Part17>./Part17]]|[[Part18>./Part18]]|[[Part19>./Part19]]|[[Part20>./Part20]]|
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2022-07-06T02:14:28+09:00
1657041268
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛/Part05
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2549.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛)
「何しに来た、お前は……っ」
「当麻、俺はお前のこと。弟みたいに思ってるんだぜ。今でもな。そりゃ俺に初めて話しかけてくれたのはお前だしな」
「……後悔してる。今は」
「まぁ普通の精神ならそうだろうな。六年前の内乱を滅茶苦茶にしたのは俺とお前だしな」
上条は撃たれた場所を抑えながら、キッと垣根を睨みつける。
「まぁこんな昔話をしに来た訳じゃねぇ。なぁ当麻。俺の作る暗部組織『スクール』に入らないか?目的は
学園都市の転覆……そうだな。つまらねぇ格差社会体制の崩壊だ」
「……入る訳ねぇだろ!」
「だろうな、でもな。俺のほうが必要性の高い情報を持ってる。木原数多とかよりな」
「な、なんでそれを……」
垣根はニヤリと上条へ笑いかけた。
背筋が凍り、上条は全身の力が抜け椅子へ座り込んだ。
「木原数多はただ、上条当麻と手を結んだっていう事実が欲しかっただけだぜ。上の連中はお前の事はどうとも思っていないが学園都市のどこかに居ると言われてる
元学園都市統括理事長のアレイスター=クロウリーを警戒してる。
アイツはプランとやらを完成させたかったみたいだが、虚数学区の生成や幻想殺しをうまいポジションに置けなかった事もあり、今は訳わかんねぇ組織に乗っ取られてる。
お前は妹達(シスターズ)……クローンを助けたい。俺は学園都市体制の崩壊。俺はそれに協力してやる。その代わりにお前は俺の手下になってもらう。
何年我慢した。毎日、ペットの餌みたいな量のご飯を食べて、キノコが生える家へ住んで。それも学園都市が作った『ディストピア』のせいだろ?お前は一番の犠牲者だ。
なぁ、俺と組まないか?上条当麻」
「……分かった。でもクローン達を助けるのは手伝ってもらう」
ディストピア。ユートピアとは相対的な意味合いを持ち、管理社会体制の事だ。
上条の『大罪人』システムはディストピアであり、風紀委員などの警備組織が無いのもそのせいだ。
万引きなどしない。詐欺などしない。暴行などしない。何故なら『罪人』になるからだ。
誰も『罪人』には成りたくない。だから警備組織は存在しない。そして上条は学園都市でも3人しかいない『大罪人』。
彼らに『犯罪を行うなどの概念がない』。
これは完成された管理社会。平凡で能力開発を行い、犯罪者などいない。そんな理想郷(ユートピア)に偽装した幻想郷(ディストピア)だ。
しかし、上条は今の学園都市の制度を変えたいとか、差別に苦しむ人々を開放したいなんて高尚な事は考えていない。
ただ、無力に処分されていく『人間』を助けたいだけだ。人形じゃない、人間だ。女の子だ。
そのために上条はスクールに入った訳じゃない。そんな意志は垣根にも伝わった。
垣根は微笑みながら上条に一枚のメモを渡して、待合室から消える。
「次の人どうぞー」
「あ、はい」
診察室で待っていたの蛙顔のおじいさんだ。一応、冥土帰し(ヘブンキャンセラー)と呼ばれていて、医療界でも有名な医者らしいが。
上条は包帯で止血をしていて、冥土帰しは少し驚いた様な表情を作った。
「血は止まってるね?今から、縫うから三○七号室へ来なさい」
「縫うんですか……」
「何当たり前の事を言っているんだい?君、そのまま放置してると化膿したりして右腕を切り落とさないといけなくなるんだけど。それに
顔も青いし、血もかなり失われてるだろう?輸血もしないとね」
「わかりました……」
第四話 『暗部組織の暗躍と意外な人物達との戦争』
「何してんのアンタ」
「……すみませんでした」
「銃弾で肩を撃ちぬかれるって、何しでかしたの?ったく……まぁ良いわ」
「御坂……?」
御坂はハァ、と溜息をつくと椅子へ座った。
「白井と佐天さんはどこにいった?」
「……出かけてるわ。確か買い出しって言ってた」
「そうか」
「ああ、そう。1つだけ言いたい事があるの。くれぐれも、気をつけてね」
「?」
上条はハテナマークを浮かべたまま、自室に戻っていく。
次の日、御坂美琴は上条の部屋へ突入した。
「おっはよー!」
「うわわっ!?」
上条はその大きな声に驚き、目を覚ました。彼の枕元にある時計の針は八時をさしていて、大遅刻だった。
まだ休日だからよかったものの、4時半に起きなければならないはずが、3時間半後の8時に起きてしまうのだから。
「すまねぇ……」
「いいわよ、それより。アンタに手伝って貰いたい事があるんだけど」
「なんだ?」
「買い物に付き合いなさい。生活用品諸々をね」
上条はボサボサの髪の毛をクシャっと押さえつけて、いいよ、と返事した。
ていうか、撃たれた次の日に「買い物に付き合え」とは少し無理強いるなぁと上条は皮肉というか露骨な嫌味を心のなかで呟く。
しかし思う。撃たれたというのに、余りにもサバサバしてない?と。
上条は御坂美琴が笑顔で部屋から出て行ったのを確認して、寝衣を脱ぐ。
これは買い物という名のデートだ。上条はそんな心意気で望むらしく、いつも犬のように扱われているような気がする上条としてはまずは人間として意識してもらいたいという
気持ちが強かった。数少ない衣服からオシャレなものを選んで着ていく。
「こんなモンか」
上条は着替え終わり、服装をもう一度鏡で確認し直す。
トントン、と軽い足取りで降りていく階段。上条は御坂へ「行くぞ!」と言った。
携帯電話で誰とメールをしていたらしく、「送信完了っと」と小さく呟くと玄関前まで歩く。
上条はその御坂の匂いがとても甘い匂いだと気づいて、少し顔を赤くした。
常盤台中学校は制服着用がルールとしてあり、私服は見たことが無かった。
まだ日が頭上にあって、蝉の鳴き声が更に暑く感じさせる。昨晩に降った雨は既に乾き、湿気と気温の高さが注意された。
7月2日、もうすぐ真夏に突入する様な時期だ。ここに来てから二週間足らずが過ぎようとしていた。
御坂は「あっつー」と愚痴をこぼす。上条もまた、右手で雲ひとつ無い空から降ってくる光を遮っていた。
「早く行きましょ、暑いわ」
「そうだな……」
「第一の目的地はセブンスミスト。靴下買いに行って……」
「そうか、早く行こうぜ。暑すぎる……」
「そうね……」
御坂は特に気にした様子は無かったが、上条は始終御坂の私服をチラ見しては悶えていた。
可愛い、というか似合い過ぎてるらしく悶えている。その様子を見て御坂が「何してんの」と尋ねる。
「い、いやっなんでもない!」
「そう?体調悪い?」
セブンスミストでは涼みに来ている人も少なくなく、中にあるカフェは人で埋め尽くされていた。
御坂は贔屓している量販店に向かい、靴下と数足買ってベンチに腰を下ろした。
「次、どこ行くんだ?」
「隣の学区にあるアクセサリー店。今から行ったら夕方くらいになるかも」
「そうか、それなら言ってしまおうぜ」
「分かった、ちょっとジュース買ってくるからアンタはここにいなさい!」
御坂はブランド物の高級財布を持って近くの自動販売機に向かっていく。
それから数分した頃、上条の手にはきなこ練乳とゴーヤプリンのゲテモノジュースが握られていた。
彼女の手にはみりんコーラが握られていて、苦虫でも噛み潰したような表情を浮かべて「失敗ね……」と呟いた。
きなこ練乳のプルタブを開けて、一気に流しこむ。悪くない、きなこの甘さと練乳がうまくマッチしていた。
しかし手元にあるゴーヤプリンはどう考えても地雷だが。御坂は上条の手からきなこ練乳を奪い取ると一気に流しこんだ。
「お、おい!?」
「アンタがボサっとしてるから悪いのよ」
少ししか残っていないきなこ練乳を飲むか、飲まないか葛藤する上条。
これに口をつけたら間接キスじゃないか?と思い飲むか飲むまいかそう考えているのだ。
まぁ何の躊躇いもなく飲んだ御坂には異性の対象としては見られていないのだな、とがっかりする。
(なんだ、コレ。俺ショック受けてる?)
ハンッ、と鼻でその感情を笑い飛ばす。
そんな訳がない。上条は熟考に末にきなこ練乳の残りを飲み、カンのゴミ箱に入れた。
「さて、そろそろ行きますか」
「だな」
環境保安上安全科学総合施設郡。別称、第九学区。
ストレージロードという街にある学園都市の環境や天気などを研究する分野が集まった施設群。
その研究中に生まれた鉄鉱石の貴重な部分のみを摘出し、組み合わせた魔法のキーホルダーを探しているらしく、一般販売はされていないらしい。
そこまで行くには電車かモノレールしかなく、二人はモノレールで施設群まで向かった。
しかしお目当てのキーホルダーは無く、実は三日前にとある客が見つけて買っていったらしく完全に無駄骨だった。
「……おっ?御坂このペンダント可愛くない?」
「……可愛いわね、買おうかな?」
「御坂、俺が買ってやるよ。ま、まぁ?なんだかんだ世話なってるしこんな時じゃないと恩返し出来ないだろ?ほら1500円。
買ってこいよ」
「いいの?」
「ああ、俺ちょっとトイレ行ってくるな」
上条は照れ隠しに店の外に出る。突然、バン!!という銃声がした。
暗い裏路地、日が暮れかけているということもあり殆どその状況を目指できなかった。
しかし、上条は持っていた買い物袋を地面に落とした。暗い裏路地に居た二人の影。
垣根に貰った護身用の拳銃を少女達へ向けた。
「な、なにしてんだ……それなんだ……おい、おいッそれはなんだって訊いてんだァぁぁああああ!!!!」
「なによ……ちょっとだけ格好良いとこみせてさ……」
顔を赤くして御坂は会計を済ませる。
初めて彼を格好良いと思った。袋に入ったペンダントを満足した表情で眺めていた。
バン!と外から銃声が聞こえる。御坂はしまった、と思いその音源を探して店を飛び出した。
計算外だった。考えてもいなかった。今日の反乱分子の処分はココだったじゃないか。
「しまった……」
*
「あなたは……」
「上条さんですのね?」
「白井、佐天さん!そこに居る男はなんだ……おい。死んでんじゃないのか?」
「まだ息はありますわね。もうじき死ぬとは思いますが」
白井黒子は鉄矢をクルクルと回す。佐天の手にはショットガンが持たれていて何をしたかなんて一目瞭然だった。
一つ言える事は垣根帝督や木原数多と同じ『場所』にいるということ。
学園都市の闇に居る少女たち。だかえあ最近、屋敷に居なかったのか。何をしていたんだ。そんな物はわかってる。人殺しだ。
手慣れた手つきでショットガンをリロードすると上条へ銃口を向けた。
怯むことなく上条も佐天に拳銃を向ける。
「チーフ、その拳銃どこで……」
「……なぁ御坂は関わってるのか」
「それは……」
そう言いかけた瞬間、拳銃は真っ二つに裂けた。砂鉄、電気を帯びて一層攻撃力を増した砂鉄だった。
一秒に数千回とチェーンソーの様に振動する砂鉄は拳銃を切り裂いて、上条の首元へ突きつけた。
「御坂……ァ!!!お前も……関わっていたのかよ……なぁ御坂あああああ!!!!」
「佐天さん、黒子。もうコイツはクビにする。だから……殺さないで」
「どういう事だよ!?なぁああ!!!」
「アンタは……見てはならない物を見た。せめてもの情け、もう。関わらない方がいい」
ゴッと骨が鈍い音をたてた。上条は力なくその場に倒れた。
「ごめんね……」
「お姉様。報告が、木原数多によると10000号から11000号までの処分は延期となり、開始日は未定ですの」
「……そう。良かった………さ、戻りましょ」
御坂はペンダントを握って、その場に上条を置いて出て行く。
せめてもの情け、それが『関わらせないこと』。それだけ御坂達は深い位置にいるのだと感じさせる。
しかし計算外といえば、既に上条は彼女達より深く、そして強い『スクール』に所属していることだ。
学園都市の数少ない『暗部』は動き出す。彼女達『プライム』は妹達の処分撤回の為。『スクール』は学園都市の崩壊。そして第四位の『アイテム』は何を目標とするのか。
プライムは四人だ。その残りの1人に、『アイテム』の目標の鍵があった。
「当麻、第三位にしてやられるとはなぁ。心理定規、適当な下部組織呼んで当麻をアジトまで運ぶぞ」
「はいはい、呼べってことよね?」
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛
2022-03-29T08:39:28+09:00
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛/Part01
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2545.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛)
プロローグ 『最下層の生活』
学園都市、人口230万人。その8割以上が学生という街だ。
世間から技術力が30年も進んでおり、何より特徴的というのが『能力開発』。
そんな学園都市の能力者はレベル0からレベル5の六段階に分けられている。
その様な格差が出来てしまっている学園都市では『格差社会』となったおり、優遇され、裕福に暮らせる貴族のような扱いのレベル4、レベル5。
逆に冷遇され、貧乏な暮らしを送っているのはレベル0やレベル1だ。
その中でも知名度が格段的にある第三位の『超電磁砲』。
学園都市の女王と呼ばれ、また『姫君』や『エリザベス』と呼ばれていた。
その正反対の呼称がある上条当麻。『大罪人』、『悪魔』などと呼ばれ最下層人物としてそれ相応の暮らしをしていた。
しかし上条は『大罪人』と呼ばれても『悪魔』と罵られても。あの行動を後悔しない。
「……不幸だー。今日の晩御飯は鮭の塩焼きと白ご飯~。はぁ足らねぇよなぁ」
照明がピカピカ、と光ったり消えたりを繰り返していく。
部屋の隅には蜘蛛の巣が貼ってあったり、ふすまにはキノコが生えている。
とってもとっても生えてくるのが何故か悲しい。
上条は学園都市でも三人しか居ない『最下層人物』だ。それ相応の暮らしを用意され、奨学金は雀の涙にも及ばない。
たったの七千円。一ヶ月をこれで暮らすのは不可能に近い。
「このキノコって食えんのかな?」
ふすまに生えたキノコを見つめていった。しかし頭をブンブンと振ってキノコを強引に引きぬいた。
そして壊れかけの窓を開いて、投げた。
ポチャン、と音がして川に流れたのが分かった。
「さ、さて食うか」
上条は箸を加えて骨がところどころ見える鮭をつまんでいく。
そして白ご飯と一緒に口に含んでいった。
それにしても暑い。蒸し暑い。外は雨で、天井から雨漏りしてバケツからは雨が溢れていた。
上条の体は雨臭い。そうだ、雨で体を洗っているからだ。
無能力者(レベル0)でもこんな暮らしをしている人は居ないだろう。上条は少し泣きたい気持ちになった。
「……ごちそうさま」
鮭を冷蔵庫になおす。固まった白ご飯を雨水で綺麗に流しそしてシンクに置いた。
梅雨。6月の真ん中で、湿気と雨が上条家を襲う。
キノコがそこら中に生えて、随分前には制服にも生えていた。
「はぁ、一度でいいから肉食ってみたいな」
そんな時だった。壊れかけの木のドアがドンドン!と叩かれた。
「はい?」
「カミやーん、俺だにゃー」
「おお、土御門か。今昼飯食ったとこだ」
ドアを開けて、傘をさしている土御門を招き入れる。
彼の手には半分食べた野菜炒めがあって、上条に手渡す。
「……ありがとうな。土御門」
「いいんだぜい?」
そう言って土御門は上条家を出た。
上条は冷蔵庫になおして、湿っている畳みの上に寝転がった。
ボサボサで傷んだ髪の毛を掻いて、そして硬い床で昼寝をする事にする。
*
「アレイスター、お前の幻想殺しはあんな極貧の生活を送っているが」
「もう幻想殺しなど必要ない。もちろん、エイワスを顕現する事も出来ない。プランはもう完成する事すら出来ないのだ。
学園都市の体制の崩壊によってな。統括理事会などもう何の権限もない。
今、一番力を持っているのは外部個人主義組織だ。体制は既に『格差社会』になっている。
警備員(アンチスキル)も風紀委員(ジャッジメント)も存在しない私の作っていた学園都市とは全く違ったモノになってしまった訳だ」
「それで、無能力者達に支援していると言う訳か」
アレイスターと呼ばれた者は大きな生命維持装置の中で培養液に浸かりながら苦虫を噛み潰した様な表情をした。
しかし決してこの格差社会を打開できない訳じゃない。
全体の六割を占める無能力者を使えば。
「土御門、学園都市はもうすぐ改革するぞ。幻想殺しはあんなに有意義な者だとは。彼は誰よりも良い位置にいる。
底辺と頂点か……こういうのは嫌いなんだが」
「何が言いたい」
「直に判る。それまで彼が死なない様に支援しておいてくれたまえ」
「……アレイスター……あとで泣きを見るのはお前だ」
「ふふ、それは―――楽しみだ」
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛)
2022-03-28T19:40:10+09:00
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある底辺と頂点の禁断恋愛
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2550.html
*とある底辺と頂点の禁断恋愛
【本文】
| プロローグ 最下層の生活| [[◆>./Part01]]|
| 第一話 女王と大罪人| [[◆>./Part02]]|
| 第二話 専属黒服学生としての役割| [[◆>./Part03]]|
| 第三話 廃棄処分される人形達| [[◆>./Part04]]|
| 第四話 暗部組織の暗躍と意外な人物達との戦争| [[◆>./Part05]]|[[◆>./Part06]]|
| 最終話 学園都市の崩壊と自覚と救出| [[◆>./Part07]]|[[◆>./Part08]]|
【著者】
サッド(22-344)氏
【初出】
2013/01/31 初投稿
2013/02/16 完
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&link_parent(text=Back)
2022-03-28T19:37:52+09:00
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind/Part03
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2173.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind)
第2話 誤解
ここは第7学区にある、とある公園。
公園、といっても、普段人が足を運ぶことは以外と少なく、ツンツン頭の少年が通ったり、常盤台の制服を着た少女が自販機にキックしに来るくらいだ。
そんな公園は今日も人気は少なく、今公園内にいるのは、地面に転がっている青髪の少年と、ベンチに座り、息を整える不幸少年だけだ。
「い、痛ってえ…青ピの野郎思い切り殴りやがって…」
上条は頬をさすり、側にうつぶせの状態で倒れている青ピを見る。
学校からここまでほぼ全力で走り疲れていたため、なんとか相打ちに持ちこめたものの、かなり怖かった。
また、相打ちなのに上条だけ意識があるのは、やはり打たれ強いからだろうか。
「それにしても…いったい何がどうなってんだ……」
息がようやく調ったところで、上条は呟いた。
いろいろとおかしすぎる。
吹寄の態度も小萌先生の態度も、普段じゃ絶対にありえない。
「マジで何が起こってるんだ…?まさか魔術………やっぱり魔術か。」
上条が第一に考えたのは、夏休みの『御使堕し』や、ヴェントの『天罰術式』のような広範囲魔術が発動しているのではないか、ということだった。
今回は『天罰術式』のように攻撃的なものではないため、『御使堕し』のような偶然発動された魔術の可能性もある。
だとすれば、どうやって解決するべきか。
と、上条が解決策を本格的に考え始めていたところへ
「魔術じゃなくて、これのせいじゃないかにゃー?」
「え?土御門?」
いつのまにか土御門がすぐ側に立っていた。
彼の手には、上条が飲んだ『あの』増強薬が握られている。
「え……いやいやそりゃねーだろ?また『御使堕し』の時みたいに、広範囲魔術が発動したんじゃないのか?」
「残念ながら今、学園都市内で魔術は使われていないぜい。」
「え、マジ?」
「ああマジぜよ。まあ間違いなくこの『増強剤』が原因だろうな。」
吹寄と小萌がおかしくなった原因は、魔術ではなく土御門の薬。
ありえなくもないが、上条には疑問があった。
「いや待てよ。もしその薬が原因だとしたら、朝から吹寄と小萌先生はおかしくなってたはずだろ?なのに変化があったのは、3限目が終わった後からだったぞ?」
「…朝はまだ薬が効ききってなかったからじゃないか?」
「効ききってなかった?」
「ああ。上やん、3限目が終わった後に体調が治っただろ?それは多分、薬が完全に効いたからだと思うんだにゃー。」
「………」
そう言われてみると、つじつまが合わないことはない。
だが本当なのだろうか、と考える上条に対し、土御門が言う。
「だから、この薬が上やんの『フラグ体質』を増強しちまったんだにゃー。だから吹寄も小萌先生も、おかしくなったはずぜよ。」
「『フラグ体質』が強化された?それってどういうことだ?」
「……はぁ…」
上条の言葉に土御門は大きなため息をついた。
『これだから鈍感は困る』とか思っていることを、上条は知らない。
そして土御門は上条にとんでもない事実を言い放つ。
「つまりだな、周りにいる女子はみんな、上やんのことを好きになっちまうってことだにゃー。」
「な、なんやってぇ!!!」
「うおっ!」
土御門の台詞に反応したのは、上条ではなく青髪ピアスだった。
上条と相打ちになり地面に転がっていたはずだったが、いつの間にか2人の前に立っていた。
しかも何やらやたら興奮している。
「つ、つ、つまりそれを飲めば、ボクも上やんみたいにモテモテになれるんやな!!」
「いやそれは違う「ツッチー!!早くそれボクによこすんや!!」にゃー……」
土御門の話を全く聞かずに青ピは小瓶を奪い取り、迷うこと無く怪しい液体を一気に飲み干した。
「「あ……」」
止める間もなかった。
青ピは一体どうなるのか、2人は呆然と見つめていると
「んん……?おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
青ピは急に大声を発した。
ビビる上条と、唖然とする土御門。
そして何か覚醒したっぽい青ピは、両手をわなわなさせ、自らの身体に何か変化を感じているようだ。
「こ、こ、こ、これは……」
「「これは…?」」
上条と土御門はおそるおそる尋ねた。
すると青ピは
「で、できる!今ならなんでもできる気がするで!!待っとるんや女の子たちぃ
ぃぃぃぃぃいいいいい!!」
「え、ちょっと待て……って、はやっ!!…もうあんなとことまで…」
上条が静止しようとするも、公園から勢い良く走り出していった青ピは、もうすでに遥か彼方に小さな点として見えるくらいだった。
最早わけがわからない上条は、全ての元凶である土御門に尋ねることしかできない。
「おい土御門……何がどうなってんだ?」
「……多分青ピは上やんと違って『変態』が増強されてしまったんだにゃー。」
「変態が増強って…ていうか、なんで俺と違ってすぐ効果が出たんだ?」
「ああ。それなら上やんが苦しんでるのを見て、なんとなく中身を薄めておいたから効きが早かったんだと思うんだにゃー。……まあアンチスキルもいることだし青ピは放っておくぜよ。」
「放っとくな!!お前の責任なんだから今すぐ追えよ!!」
「いやー、俺は『増強剤』について詳しく調べるため、一度寮に戻らなきゃいけないにゃー。だから追うなら上やんが追ってくれ。」
完全にめんどくさいことを押しつけている。
だが、薬の詳細は上条も知りたいので、ここは了承するしかない。
「わかったよ…俺が探す。でもその前に一つ聞きたいことがあるんだけど。」
「ん?なんだ?」
「お前がさっき言った『女子がみんな俺のことを好きになる』っていうのが本当なら、なんで吹寄と小萌先生にだけがあんな態度になったんだ?」
最もな疑問である。
上条に対しての態度が変わったのはあの2人だけで、姫神もクラスや学校内の女子も、変化はなかった。
土御門は手を口に当て、少しだけ考える素振りを見せた後
「それは……わからないぜよ。とりあえず俺は寮に戻っていろいろ調べるから、それまで青ピでも探して待ってるんだにゃー。」
そう言い残して、土御門は公園から去っていった。
残された上条は“ああ、俺って本当に不幸なんだなー。”とか思い、深いため息をついた。
「…しょうがない、青ピでも探す……ん?」
ここで上条はあることに気づいた。
暴走した青ピは街中にいる女の子の元へ向かったはずだ。
そして今日は学園都市中の学校が3限目で授業が終わるため、街には学校を終え買い物をしたり友達と遊ぶ学生たちで溢れているのは間違いない。
つまりそれは――――――
「ま、ま、ま、マズい!!!御坂が危ない!!御坂が青ピに襲われる!!」
学校を終え、おそらく街にいるであろう美琴にも危害が及ぶ可能性があるということ。
それを思いついた上条の顔は急激に青ざめた。
(ヤバい、それはヤバいぞ。御坂はあれだけ可愛いんだから、青ピの標的にされる可能性は高いよな。御坂が強いのはわかってるけど、万が一覚醒した青ピに何かされたら……)
もうお分かりかと思うがこの上条、美琴のことが大好きであった。
これは『増強剤』の影響ではない。
ここ数ヶ月の間に彼女の可愛さに惚れ込み、本気で付き合いたいと思っている。
もっと詳しくどれくらい好きかというと、好き過ぎるあまり、美琴以外の女子の遊んだり、2人きりになることを嫌うくらいだ。
そして、この『女子と2人きりになることを嫌う』というのが、吹寄や小萌の家に行くことがきできない理由であり、『増強剤』を喜んで飲んだのも、美琴にモテたいという一心からであった。
ちなみに上条が美琴を好きだという事実は誰も知らない。情報通である土御門ですら知らないのだ。
「あ、青ピ!青ピを探さなねーと!えーとアイツどっちに走って行ったっけ?こっちの方向だったような…いや待て、御坂を探した方がいいんじゃないか?そうだ!御坂をメインに探しつつ、青ピも探そう!!」
予定変更。
青ピを探すより、大好きな美琴を探した方がテンションが上がる。
よって美琴を見つけるため、街へ向かって走り出そうとしたのだが
「そうと決まれば早速……って、電話すればいいじゃん。」
これぞ文明の力。
電話をするということは、美琴と確実に会うことができる上、先行して声も聞ける。
上条は意気揚々とポケットから携帯電話を取り出した。
「…ん?……で、電池が切れてる…どんだけ俺不幸なんだよ…」
作戦失敗。文明の力にも弱点はあった。
結局、美琴がどこにいるかわからない状態で、探さなければならなくなってしまった。
と、思いきや
「あれ?アンタ何してんの?」
「え?」
ふいに背後から聞こえてきたのは聞いたことのある声。
上条が振り返ってみると…
「あー……結標か…」
立っていたのは美琴ではなくレベル4のテレポーター、結標淡希だ。
上半身には胸にさらしを巻くだけという、露出率の高い服装の彼女はズボンのポケットに手を入れた状態でこちらを見ている。
上条が思ったことは
(…御坂だったらよかったのに……)
聞こえた声で美琴ではないことくらいわかってはいたが、落胆の色は大きい。
すると結標は上条が少し大きめのため息をついたからか詰め寄ってきた。
「ちょっとなんなのよその反応は?なんかムカついたわよ?」
「わ、悪かった悪かった!じゃ、俺御坂探さねぇといけねえから!」
これ以上この場にいると、何かめんどくさいことになりそうだったので、上条は美琴を探すために走り出す。
が、
「だから待てっての。」
「うぉう!?」
腕組みをした結標が道を塞ぐように目の前にテレポートしてきた。
「な、なんだよ……なんか用か?」
「……アイツ…ていうか御坂を探してるの?」
「え、ああ、まあな。だから俺は急いで「御坂の居場所なら知ってるわよ?」る……」
「だから案内してあげようか?」
予想外のところから助けの手が差し伸べられた。
まさに女神が降臨したと上条は思った……が
(いや…ちょっと言い過ぎたな…俺の女神は御坂だけだから結標は……救世主だな。)
まさに美琴バカである。
独りでにうんうんとうなずく上条に、結標が少し呆れながら声をかける。
「で?どうすんの?」
「あ、ぜひともお願いします!結標様!!」
「はいはいっと。」
こうして上条は結標と並んで歩き始めた。
美琴以外の女子と2人きりになることを嫌う上条だが、美琴に会うためなら我慢できる。
(御坂に会えるのか…ヤベ、テンション上がってきた。)
上条はわくわくしながら、街へと向かう―――
♢ ♢ ♢
「映画だ映画だー!ってミサカはミサカは嬉しさのあまり飛び跳ねてみたりっ!!」
と、とあるマンションの室内で無邪気にはしゃぐのは、打ち止め(ラストオーダー)だ。
本当に嬉しいらしく、言葉通りソファの上でぴょんぴょんと飛び跳ねる少女に、目つきの悪い白髪の少年が言う。
「おい、部屋ン中ではしゃぐンじゃねェよ!埃が舞うだろうが!!」
彼の名は一方通行。学園都市最強の能力者であり、打ち止めの保護者であった。
この日、2人は映画を見に行く約束をしており、今まさに出かけるところだ。
喜びを抑えられない打ち止めは、
「だってもう楽しみで楽しみでしょうがないんだもん!ってミサカはミサカは嬉しいという感情を押さえきれないから全身を使って表現してみたり!!」
「わかったから少し落ち着け。じゃあ、俺らは行って来るから留守番頼むぞォ。」
と、一方通行が声をかける先にいるのは2人の女性。
“了解”と言うかのように、イスに座ったまま無言で右手を挙げたのは、芳川桔梗。相変わらずの無職である。
そしてもう一人、ソファに寝転がって雑誌を読んでいた、た少女はニヤリと笑って
「はいはーい。ミサカたちに気にせずデート楽しんできてね☆」
その台詞は悪意丸出し、もちろん番外個体(ミサカワースト)から飛び出た台詞だ。
しかし、当然ながら一方通行にデートなどという考えがあるはずもなく、“デートじゃねェよ”と、ストレートにつっこもうとしたところへ
「うん!この人とのデート楽しんでくるね!ってミサカはミs」
「だから違うって言ってンだろ!!」
一方通行は思わず叫んだ。
そしてその後もしばらくデートだ、ちげェよ、と騒ぎながらも打ち止めと一方通行は黄泉川のマンションを後にした。
♢ ♢ ♢
上条と結標が並んで歩くこと約15分。
「着いたわ。ここよ。」
「ここか!!」
上条が結標に連れてこられた場所は、街中に位置する大きめの広場だった。
この広場には移動式のアイスクリーム屋があり、今日は午前中に多くの学校が終わるためか、店にも広場にも、高校生や中学生による多くの人だかりができている。
だが…
「……御坂いないじゃん。」
肝心の美琴が見当たらない。
公園内を一通り探してみたのだが、目に映るのはただの学生ばかり。
どこをどう探しても、やはり美琴が見つかることは無かった。
「いないってことは、移動したのか……くっそどこ行ったんだよ…早くしないと御坂の貞操が危ないってのに…」
上条はもちろん美琴がレベル5だということを忘れてはいない。
普通に考えれば青ピなど秒札できる。
だがもし、万が一暴走した青ピによって何かされたら、それを考えるといてもたってもいられなくなる。
(とにかく第7学区中を探すか。御坂が真っすぐ寮に帰ってる可能性は低しい、コンビニとかにいるのか?)
携帯の電池が切れている今、とにかく美琴がいそうな場所を虱潰しに探すしかない。
「ありがとな結標、こっからは俺1人で探す「はいアイス。」から……?」
結標は上条の言葉を遮ると同時に、バニラ味のアイスクリームを手渡してきた。
どうやら上条が美琴を探している間に買ってきたようだ。
とりあえず受け取ったことは受け取ったのだが、
「え、いや、なんで……?」
「なんでってアイスクリーム屋に来たんだから買ったんだけど……何?私が買ったアイスが食べられないって言うの?」
「いやそういうわけじゃ「あー!!!」ない……」
また上条の言葉は遮られた。
誰だよ大声出して、などと上条は思わない。
なぜならば、上条はこの声が誰の声か知っているのだから。
「御坂!!」
今、一番会いたい相手、御坂美琴だ。
上条は喜びを露にしながら振り返ったのだが
「……あれ?」
急に上条の顔からは笑顔が消え、自然と一歩後ずさった。
振り返ったところに立っているのは、茶色い髪の毛、ヘアピンで止められた前髪、常盤台の制服、ちょっぴり漏れている電気、間違いなく美琴だ。
にもかかわらず、上条が後ずさったのは
「あの……なんで機嫌悪そうなんでせうか…?」
「はぁ?機嫌?別に悪くないわよ?」
と、美琴は言うもののあきらかに悪い。だって帯電しているし。
額の辺りからパチパチと電気が漏れだしている。
しかし上条には美琴が怒っている原因が全くわからない。
(な、なんで?やっぱり俺が何かしたのか?でも……名前呼んで振り返っただけだよな…)
上条が少しビビり、一歩後ずさると美琴は怒ったような口調で
「それでアンタ、なんでこんなところにいるわけ?しかも結標なんかと2人で。」
ここで1つ説明しておこう。上条は美琴のことが大好きだ。好きで好きで仕方がない。
いずれは結婚して子どもは3人くらいほしいと思っている。
だが、上条は人を好きになることをになっても、鈍感さは一切治っていないのだ。
普通なら美琴が機嫌が悪い原因は、『結標と一緒にいることに嫉妬しているから』、とわかるはずなのだが、鈍感な上条にわかるわけもなく、美琴に結標と一緒にいる理由を説明しようとした。
「ああ、結標と一緒にいるのは「デートだからよ。」……そうそうデート……はい?」
上条の言葉を遮ったのは結標。
『御坂を一緒に探してもらってたんだ。』と言うつもりが、結標によって言い換えられたのだ。
それを聞いた美琴は驚愕の表情を見せている。
「はぁ!?え、え?何?どういうこと?デートってアンタ達……付き合ってたの……?」
美琴の顔色はどんどん悪くなり、先ほどまでの元気がウソのように大人しくなってしまった。
そんな美琴を見た上条の顔も青くなる。
「いや違う!誤解だ誤解!!おい結標、なんでそんなこと言い出すんだ……あ」
慌てて誤解を解こうとしている途中に上条は思い出した、『あの』薬のことを。
今まで結標に何の変化も見られなかったので気にしていなかったが、よくよく考えてみれば、結標も『増強剤』の影響を受けている可能性が十分にあるのだ。
(まさか結標もあの薬の影響で俺に惚れて……ってそれはともかくまずは誤解を解かねーと。)
影響されているなら、結標の状態はヤバい。
しかしそれ以上に美琴に『結標と付き合っている』と誤解されているほうがヤバいのだ。
上条は大慌てで美琴の誤解を解こうとしたのだが、結標がそれを許さなかった。
「そう付き合ってんのよ!だからアンタはとっとと消えときなさい。」
そう言って結標は、魂が抜けたかのように呆然と立ち尽くしている美琴に近づき、肩に手を置いたかと思うと、
「じゃあね。もう私たちの邪魔しないでくれる?」
「あ―――」
美琴の肩に手を置き、能力を使いどこかに飛ばしてしまった。
上条も右手を伸ばし、止めようとしたものの、全く間に合わなかった。
「御坂…ッ!……これはまずいんじゃ……」
非常事態発生。
美琴にあらぬ誤解を招いてしまった。
今結標は美琴を飛ばす前に、はっきりと『付き合っている』と美琴に告げていた。
ということは、結標と付き合っていると美琴に勘違いされたことは間違いない。
「やっべ……早く御坂を探して誤解を解かねーと……」
今までは青ピから守るために探していたが、今度は別の理由で美琴を探さなくてはならなくなった。
とにかく一刻も早く見つけ出し、誤解を解きたい上条なのだが
「どこに飛ばされたんだろ…」
美琴が飛ばされた場所がわからない。
近くなのか、それとも遠くなのか、それがわかるのは美琴をテレポートさせた本人である結標のみ。
ということは、聞くしか無い。
「あのー…結標さん。」
「何?あ、これからどこへ行くかの相談?私としてはまず買い物に行きたいんだけど。」
「いや、そうじゃなくてだな。御坂をどこに飛ばしたのか聞こうと思って。」
この時上条は気づいていなかった。
『結標に美琴の場所を尋ねる』という行動が、激しく間違った行動だということを。
「あ、あれ?結標…?なんか……怒ってる?」
目の前の結標から黒いオーラが見える。
表情からは笑顔が消え、眉間にしわが寄っている。
「あ、あはは……じゃあ上条さんはもう行くから。ま、またな!!」
上条は逃げ出した。
ヤバい。
絶対ヤバい。
もう間違いなく、結標は自分対して怒りの感情を持っている。
このままだと何をされるかわからないと考えた上条は、多くの学生の間をすり抜け広場を飛び出した。
「やっべー…絶対結標怒ってたよ…でもなんで怒ってたんだ?」
本当に理由がわからない。
自分の行動に問題があったのだ、それとも台詞だろうか。
理由を考えようとするも、走りながらではまともに考えることができないし、今はそれどころではない。
とにかく美琴を探し出し、誤解を解かなければならない。
「よし、結標は追いかけてきてないみたいだし……このまま探すか。」
結標から離れることに成功した上条は、街中を走る足を止めることなく、美琴を探し始めた。
しかし忘れてはならない。
結標は学園都市の中で、最も優れたの『テレポーター』だということを。
「ん…?」
走っている上条は背後に何かの気配を感じ、サッと後ろを振り返ると
「うおっ!結標!?」
明らかに今までとは違う、怒気を丸出しにした表情の結標が、走る上条のすぐ後ろへテレポートを繰り返し追いかけてきていた。
そして結標は叫ぶ。
「アンタね…私から離れられると思ってんの!!?」
「ええ!?て、ていうかなんでキレてるんだよ!!」
だがその答えは結標から返ってはこなかった。
結標は走る上条の後ろへ、ただひたすらテレポートを繰り返す。
周りには多くの人がいるのだが、そんなことおかまい無しだ。
こうして上条と結標との奇妙なペアで、壮絶なる追いかけっこが始まってしまった―――
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Love is blind)
2022-03-26T18:50:11+09:00
1648288211
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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?/Part04
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1107.html
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?)
御坂美琴は上条当麻の婚約者になりました。
「一体いつまで待たせるのよ、あの馬鹿はーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
御坂美琴の怒りは頂点に達しようとしていた。
今日は美琴が電撃プロポーズをした翌日の11月23日。美琴は婚約者上条当麻を公園の自販機前で待っていた。
付き合い始めたのだから登下校も一緒にするの、という美琴の半ば強引な取り決めに前日混乱していた上条は未だ姿を現さない。もちろんこの自販機を通るのは上条だけではないので、美琴は人影が見える度に一喜一憂し一憂の後は辺りに電撃を撒き散らしている。
通りがかった学生は自分が何か悪い事をしたかのようにブルブルと震え、そそくさと早足で逃げていく。
美琴の出す電撃は相当押さえ込まれてるとはいえレベル5クラスなので仮に当たろうものなら気絶は間違いなしだ。このままでは上条が姿を現す前に自販機前に罪も無い学生の山が出来てしまう。急げ、上条当麻。学生の命運は君の両足にかかっている。
…と、大げさに思っていた白井黒子は公園の木の陰から美琴の事を監視していた。
白井の監視の原因。それは言うまでも無く上条当麻との関係なのだが、監視をするに至ったのには昨夜の出来事が関係している。
前日の常盤台女子寮。
美琴は上条と買い物(塩)をした後に別れて208号室に戻ってきていた。
ルームメイトの白井は11月22日、学園都市では「いい夫婦になる日」に風紀委員の支部で美琴の告白を予感し、懸命に探していたが結局は見つからず仕舞だった。
そんな白井が美琴を会ったのは同日の夜で美琴が常盤台の寮に帰ってきた今この瞬間だ。
白井はもしもの時は申し訳ないと思うも、今日の恐らく起こったであろう美琴の告白の結果が気になり美琴に話かけようとしていたが、美琴の様子を見て思いとどまった。
何やら妙にハイなのだ。
美琴は208号室に帰ってくるなりベッドにダイブするし、その後枕を抱きしめたと思ったら今度は携帯を見て何やらニヤニヤしてるし、シャワーを浴びに行った風呂場からは鼻歌が聞こえてくるしと確実に成功したのを物語っていた。
しかしもしかすると何か他にいい事があっただけなのかもしれない。
そう思った白井は恐る恐る美琴に尋ねてみると、最初こそあうあうしていたものの暫くして返ってきた返事は予想を遥かに上回っていた答えだった。
「けっ、結婚を前提に付き合ってるの。今日アイツの親と私の親を入れての食事会だったんだけど…、そこで言っちゃった」
白井はその言葉を聞いた時に、苗字と同じように真っ白になった。
21日の夜の美琴を見れば翌日に何か凄まじいイベントがあるのは容易に想像出来たハズだ。
翌日22日も朝の美琴はテンションが下がってはいたが、決してこれから起こる事が嫌な事でないことくらい美琴一筋の自分なら見抜けたに違いない。
ただ一つ不覚だったのが「いい夫婦になる」という都市伝説があるのを忘れていた事。
白井はしばらく目の前が真っ暗になり発狂していたが、思いのほか早く自我を取り戻した。そして今度は名前と同じように真っ黒になったのだ。
「(あの類人猿を消し去るしかありませんわ。お姉さまは…、お姉さまは黒子のものですのォーーーーーーーッ!!!!)」
その夜美琴が幸せそうに寝ているのを横目に、白井はテーブルライトだけ点いた部屋で一人鉄矢に砥石をかけていた。明日起こるであろう上条当麻との決戦のために。
☆
そして今日11月23日。
白井は普段より30分も早く寮を飛び出し足取り軽く登校している美琴を尾行(ストーキング)している。こんなに早く常盤台中学に行って何をしようというのか。
しかし、どうやら行き先は常盤台ではないらしい。
美琴は公園の自販機前まで一気に駆けていくと手ぐしで乱れた髪を直し、誰かを待っているようにキョロキョロと落ち着かない素振りを見せ始めた。
そこで白井は確信する。美琴は今日抹殺予定の上条当麻を待っていると。あんなにも頬を赤く染めて…、キィィィィ! 許すべからず類人猿んんんんんんんんっ!!!
茂みの中で隠れていた白井がハンカチを噛み千切ったのと同じ時に、美琴は電撃を撒き散らしていた。流石にこれ以上は被害者が出るだろうと思った白井は茂みから出て止めようとしたその時―――
「おーーう。御坂ー。おまたぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
能天気に上条当麻が現れたのだ。散々待たされたのか美琴は上条にレベル5の電撃をぶっ放す。
上条は慣れてるとは言え、恐怖な事には変わらないらしく美琴のそれを打ち消すと猛ダッシュで駆け寄り命の尊さについて猛抗議した。
「お、おまえなっ! 出会い頭に電撃ぶっ放すなって何度言えば分かるんですかちくちょう! さすがの上条さんにも命というものは一つしかないかけがいの無い物でしてですね―――」
「うっさいうっさい! 今日から一緒に登下校するって言ったでしょ! のんびり行きたいからいつもより30分前にここに着くようにとも言った! それがなんでいつも会う(待ち伏せ)時間を15分もオーバーしてふごっ」
「まぁまぁ。落ち着いて御坂さん。これから上条さんが言い訳…じゃなかった、遅れた理由を言いますんで」
「ふごごごごっ…」
「まず第一に素で忘れていたというこぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
「…ぱぁっ! すっ、すすすすす素で忘れてたですってぇ!? あ、あああアンタって奴はっ……!」
「うおおおおおおっ!? みみみみ御坂さん落ち着いて! 話せば分かるっ!」
「分かるか! アンタそこを動くんじゃないわよ! 最近編み出した超電磁砲コイン4枚同時撃ちで両手足を根こそぎ打ち抜いて―――」
「待て待て待て! そんな事したらただじゃ済まされないですぞ!」
「アンタが最低なのがいけないんでしょうが! 喰らえっ――」
「わーーーーっ!!!! し、死んじゃう! 上条さん死んじゃうーーーーーっ!!!!」
「はっ!」
「…………………………あ、あれ?」
「し、死んじゃうのは…、困る」
「ええっと…? 御坂さん?」
美琴は今にも溢れ出さんばかり(いや、既に溢れてはいたんですけどね)の電撃をしまうと、上条に抱きつき胸に顔を埋めた。
わたくし上条当麻、女の子の柔らかさと香り、そして御坂さんの究極のツンデレに不覚にも頬を赤らめてしまいました。
「ご、ごめんな。たくさん待たせて…、明日からちゃんと時間通りにくるからさ」
そして美琴の頭を撫でる。
美琴はひとしきり撫でられると顔を離した。頬は上条よりも真っ赤に染め上げ、目はとろみが出ている。
「うん。待ってるね、えへへ」
ビリビリビリビリビリッと白井はハンカチ(二枚目)を噛み千切りながらその様子を見ていた。
美琴との待ち合わせ時間に遅れたのであろう上条は、美琴にガミガミと叱られている様だったが、上条が美琴の頭を撫でた瞬間に美琴の怒りはおさまったらしい。
上条は抱き合った後遅れた理由として、頭を何かに噛まれたというジェスチャーとしている様だったが、距離を取っていた白井には会話の内容までは聞こえない。
しかし…、上条と話す美琴は本当に幸せそうに見える。
昨日カップルになりたてという事で少々ぎこちなさが残るが、自分ではあんな風に美琴を笑わせる事は出来ないだろう。
―――――が、今日の白井はどこか違った。打倒上条&愛しのお姉さま奪還を心に誓い、昨日泣きながら夜なべをして磨き上げた鉄矢を装備し、茂みから一気に駆け出した。
「上条当麻ぁぁぁぁぁぁあぁあああぁ! いざ尋常に勝負ですのォォォォォォォぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
「げっ!? し、白井っ!!!」
上条当麻vs白井黒子。幻想殺しvs空間移動。
白井自身を掴めば上条が圧倒的有利だが、その辺りは白井も熟知しており、間合いを取って攻撃してくる。
瞬間移動で上条の周囲300度(残り60度は美琴に当たらないように)に放った鉄矢を出現させた空間攻撃は、不意をつかれた上条には全く反応できなかった。
…が、その彼の隣にいた学園都市に7人しかいないレベル5の超電磁砲こと上条当麻の婚約者こと御坂美琴である。
「黒子! やめなさいっ!」
美琴は、その鉄矢と地面とを磁力で引き合わせ攻撃を回避させた。この間1秒弱。
「ぐっ…な、なぜわたくしの攻撃を…!」
「アンタの生体電気で寮からここまでつけてきているのは分かってたの」
「流石ですわ、お姉さま…」
「黒子、何だってこんな事をしたのよ?」
「…」
「怒らないから。言ってごらん?」
「……寂しかったんですの。お姉さまがどこかに行ってしまうようで」
白井はそう言うと美琴に抱きつきエンエンと泣き出した。
美琴は何が起こったのかいまいちよく把握出来ていない上条の方をチラッと見るが、彼は失笑しているだけだった。
「…馬鹿ね。別に黒子の前からいなくなるワケじゃないじゃない。今でも黒子の事は大好きよ?」
「おねえだば…」
そして美琴の説得もあって殺意が消えた白井は、上条と謝罪の握手を交わす。…ガムのついた手で。
「…。不幸だ…」
「お姉さま。上条さんに夢中になるのは構いませんが、くれぐれも学生として節度を弁えたお付き合いをなさって下さいな!」
「な、なによ黒子…。そんなの私の勝手―――」
「いいえ。付き合い始めて浮かれているからといって、平気で一線を越すお姉さまを知ったらご両親はどのような心中になるか!」
「はっ!」
「中学を卒業し、高校を卒業し、もしかしたら大学、院生まで視野に入れていたお父様とお母様は涙を流し…、うぅ…」
「あわわわわわわわ…、あうあうあうあう」
「確かに結婚は公認したが、しかし! しかしいくらなんでも早すぎるんじゃないだろうか! そんな事を止めれない上条当麻! そんな男に大切な愛娘を任せてはおけない、と二人の交際を無かった事に―――」
「ふにゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!????????」
「…分かってもらえましたか、お姉さま」
「く、黒子ぉ…ありがとう。私が間違っていたわ」
「いいえ。他ならぬお姉さまの為ですもの」
「黒子…」
「(一体さっきからこの子達は何の話をしてるのでせう?)」
「(ケケケケケ。猿がッ! そう簡単にお姉さまを独り占めはさせませんわ! とりあえず最低でも中学卒業まではお姉さまの貞操は安泰ですの)」
上条は美琴と白井に二人の世界を築きあげられ頭をポリポリと掻きながら溜息を吐いた。
ところで何か忘れているような…。
「……って、ゲッ! 登校時間ギリギリじゃねぇか!」
「ええええええええっ!?」
「あら、本当ですわね。後5分で遅刻ですわ」
「遅刻ですわ。じゃねぇよ! 急がないと遅刻―――」
「大丈夫ですの。わたくし、テレポーターですので。余裕で間に合いますわ」
「そうだった! 流石白井さん! たまには役に――」
「あら。上条さんは右手がどうとか言って効かないじゃありませんの。早く走った方がよろしいですわ」
「え」
「でわ、わたくし達はこれで。お姉さま。行きますわよ」
「ふぇ? ちょ、ちょっと待っ―――」
そして美琴と白井は消えた。
残された上条当麻。朝のホームルームまであと5分を切った。どんなに急いでももう間に合わない。
「不幸だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
それでも懸命に走る。
いいぜ、あと5分以内で教室に着けないと言うのなら…まずはっ! そのふざけた幻想をぶち殺すっ!
☆
「上条ちゃん! 遅刻はする! 課題は忘れる! ちょっと廊下に立ってるです! ついでに今日の放課後はみっちり個人授業です!」
「はい…」
上条当麻の右手『幻想殺し』。
それは異能の力なら神のご加護だろうと全て打ち消す事の出来る未知の能力。
なので異能の力でない時間などは打ち消せるわけも無く、汗だくになりつつやっとの思いで着いた時にはホームルームが終わって一限目が始まったところだった。
今日の一限目は小萌先生の授業だったので廊下に立っているだけで済んだが、体育担当のじゃんじゃん言ってる先生だったら校庭30周はかたいだろう。
「あ。メール着てる」
上条は廊下に立たされてる間とても暇だったので携帯を取り出すと、新着メールが一通入っていた。送り主はもちろん御坂美琴である。
#asciiart(){{{
Time 2010/11/23 08:38
From 御坂
Sub 遅刻しなかった?
―――――――――――――――
いかにアンタと言えどあの距離を
あと5分は無理でしょ?これに懲
りて明日からはもっと早く来る事
ね!
あ、そうそう。
今日帰りに、はっ、初デートする
からね!ま、まぁアンタは遅刻し
そうだから私がアンタの高校まで
行ってあげるわ!何時に終わるか
教えて!
}}}
…と、メールでもどもってしまっている美琴の可愛らしいメール見て、上条は『バッチリ遅刻した。あと今日課外授業あるから遅くなるかも』と返信した。
それを受け取った美琴は我を忘れて席を立ちクラスメイトの注目の的になるのだが、そんな事は上条は知る由もなかった。
☆
そんな事があった放課後、美琴は上条の通う高校の正門前まで来ていた。
朝の事もあって美琴は上条に授業中何度かメールを送ったが、返って来たメールはあの一通だけだった。
「ったくあの馬鹿はっ! フィアンセからのメールをことごとく無視し続けるとはいい度胸してるわねっ!」
などと正門で帯電しながら仁王立ちしている美琴に他の高校生は恐怖していた。
本編でも学校名すら出ていない高校は、女の子といえど常盤台の制服を着ているだけでレベル3確定な能力者に勝てるわけもなくただただ目を合わせないように通り過ぎるだけだった。
しかしとある男女のグループがそんな美琴に話しかける。
「んにゃ? あれ…、確か前にカミやんと一緒にいた…」
「ん?」
そこには土御門と青ピ、吹寄に姫神の姿があった。デルタフォースも今日は上条だけがみっちり絞られてるので、帰っていいと言われたようだ。
「上条当麻ならまだ先生の個人授業を受けてるわよ。まぁ遅刻はするわ課題は忘れるわで当然の報いね」
「しっかしええなぁカミやんは。今は教室で小萌先生と。それが終わったらこんな可愛い子が校門前で待っててくれるんやから」
「ああああ、あの…」
「ところで。さっきあなたフィアンセからのメールとか言ってたけど。」
「ああ、それはオレも気になってたにゃー。一体なんなんだにゃー?」
「えええええっと…、あの、その…」
「…」
そこで青ピは考える。フィアンセ、今日から一緒に下校、昨日、11月22日、いい夫婦の日………、はっ!
「まさか…、カミやんの奴昨日のいい夫婦の日でこの子に告白されたんとちゃう?」
「…」
「…」
「…」
「…」
上条当麻の不幸体質は、その現場にいようがいまいが見境無く不幸を訪れさせるようだ。
☆
その頃上条は小萌先生の個人授業が終わり、机に伏せっていた。
上条の脳は一日7限目分もの授業時間に耐えられるように出来ていない。と、言うか3限目と6限目で既に煙を上げていたのだ。
1,2限目は何とか耐えられるが、3限目だけはどうしても耐えられない。それまで先生はわけのわからん英語みたいな日本語をぺちゃくちゃ喋ってるし、問題を指名しようとしてる先生とは必ず目が合って、それで解けなくて不幸になるしでもう…、もうダメだった。
4限目は次が昼休みなので元気になれる。残り10分を切った何とも言えない時間帯は時が経つのが遅く感じるが。
5限目も大丈夫。脳を使わないので。もちろん簡単な授業とかでは無く寝てるだけだ。食休み。寝るの大切。
6限目も普段なら大丈夫な筈なのだが、今日はこの後にまた個人授業がついてくるので上条は頭から煙を上げていた。もしかしたら彼のあの髪型は勉強のし過ぎで爆発した頭なのかも。
「それじゃあ上条ちゃん。明日はちゃんと遅刻しないで来るんですよー? もし遅れたらまた個人授業ですからねー?」
そう言って小萌先生はよちよちと教室を出て行った。
上条はそこで携帯を取り出すと、美琴からの溜まりに溜まったメールに驚愕した。
「メール12件…、アイツも授業真剣に受けてないんだなぁ」
上条は自分と美琴が同類であるのだとしみじみするが、決してそんな事はない。だって第三位だもの。真剣に聞かなくても大体は分かってしまうんだもの。
上条は学校に美琴が迎えに来ている事を思い出し、ノートやペンケースを鞄に詰め込み教室を後にした。
1時間くらい待たせているので恐らくは美琴は雷神になっているだろうが、ちょっとでも早く行くことにより雷神からの電撃が弱くなるのだ! …と、思いたい。
猛ダッシュで校門に向かうと、案の定美琴はそこにいた。しかし何かが変だった。
「…御坂さん? お、おまた…せ?」
「あぅ…」
美琴は顔を真っ赤にしてモジモジしているだけ。上条からして言えば助かったのだが、ここまで来るのに右手を差し出す予行演習を入念にしていたので予想外の反応に戸惑っている。
「ど、どうしました? 何かあったんでせう?」
「あ、あの…」
「ん?」
「明日の朝のホームルームは気をつけた方がいいかも…」
「???」
☆
「かっ、カップルになったからにはまずは記念撮影よねっ!」
そう言って上条の手を引っ張って来たのがゲームセンター。そこで記念すべきカップル成立後初のプリクラを取ろうとしていたらしい。
「女の子って何だってそんなに写真とかプリクラが好きなの?」
「ふぇ? わ、私は別に…た、ただ記念よ! き・ね・ん!」
美琴はゲームセンターに着くなり色々あるプリクラ機からどれがいいかと入念に調べている。上条の事だから全部で撮ろうと言っても撮ってくれるだろうが、2回目からは確実にやる気の無い顔になるに違いない。
上条も今や美琴の彼氏なので、彼女が楽しそうならそれでいいかと思い美琴の様子を見ているようだ。
すると、あれでもないこれでもないと探している美琴にとって、運命的と言ってもいい程のプリクラ機を出会った。
「ゲコ太のデコレーションが出来る…! これしかない!」
恋人の上条には及ばないが、同等クラスの愛を注ぐゲコ太のデコが出来るプリクラ機を見つけた美琴は、上条を中に押し込んでお金を入れた。
「あ、一緒に撮るなら俺も出すよ」
「ん? いいわよ別に。私が撮りたいだけだから」
「んー…、でもなぁ」
「えっとえっとサイズと…」
「聞いてないし…」
上条が溜息を吐いているのを横目に、美琴はプリクラの撮影設定をどんどん決めていく。しかし全てを決め終わっていざ撮影という所まで肝心な事を忘れていた。
「あ、ポーズ決めてない! えっとえっと…、あ」
一枚目はあうあうしている美琴を上条がジト目を使い見ているのになってしまった。プリクラは全部で五枚撮れるらしい。
「ちょ、ちょっと! 何かいいポーズないの?」
「そんな事言われましても…、こういうのはノリで撮るもんじゃないの?」
「ノ、ノリ!? じゃ、じゃあ…えいっ!」
「うおっ!?」
二枚目は美琴が上条の首元に抱きついた瞬間に撮られた。
ノリでやった美琴も、いきなり美琴に抱きつかれた上条も茹ダコのように真っ赤になっている。
三枚目は二枚目と同じ構図だが、顔だけ真っ赤になっていた。二人は緊張のあまり動けなくなってしまっていたのだ。けしからん、もっとやれ。
「みっ、みみみみ御坂さん…」
「な、なななななによ」
「こ、このままじゃ…残りの撮影も全部同じ格好になってしまうのでは?」
「う、うん」
「うんって…、ち、違うポーズも織り交ぜた方がいいのではないでしょうか?」
「そ、そうね。でも…なんでか動けないの」
「なんですと? そ、それはどうして」
「ど、ドキドキしすぎちゃって…動けない」
「御坂っ…! お前こんな状態でそんな事言うなんて…! このままじゃ黒歴史をプリクラに残され末代まだ笑われる事に―――」
「ねぇ…、私もうダメみたい…」
「はいぃぃぃぃぃっ!? だ、ダメとか言うな! こっちがダメになりそうだ!」
「ん…」
「えええええええええええええええええええっ!!!!????? な、何でそこで目を瞑るんでせうっ!? せうせうーーーーーーっ!?」
「早くしないと…、もう四枚目だよ…?」
「がああああああああああああああああああああああっ!!!! み、御坂ァ…!」
「んー」
「………ごくりっ。い、いいんだな?」
「う、うん」
「で、では失礼して…、んー」
「………なーんて、ねっ♪」
「んぐっ!?」
美琴は上条がキスする状態に成るや否や、頬を両手で挟んでカメラの方に強引に捻じ曲げた。
その瞬間シャッターが押され、苦痛で顔を歪める前の、顔を真っ赤にしながらカメラに向かって唇を差し出す上条のドアップが撮影されたのだ。
「あっはっはっはっ! こっ、これは確かに黒歴史ね! こんなの見たら一生笑われ続けるわ! あっはっは!」
「て、テメェ…人の決死の思い&純情な心を弄びやがって…!」
「なによー、いいじゃんこれくらい。今までの溜まり溜まったツケだと思えばさ」
「ツケなんか付けた覚えはないんですけど!」
「うっさいわねー。男はそんな細かい事気にしないでいいの。ほら、もうすぐ五枚目よ?」
「…」
「そうねー、最後は…、んー…」
「…御坂」
「ふぇ?」
物事には攻守があり、攻める時は攻めて守るべき時にはしっかりと守る。そういう立ち回りが出来る人間が成功するのだ。
先程の上条は守りに失敗し某デフェンダーのようにオウンゴールをしてしまったが、そのお陰でプレーは中断され今度はこちらからのキックオフだ。
そう上条当麻の逆襲劇の火ぶたが切って落とされた。上条は美琴の両肩を掴むと真剣な眼差しで語り出したのだ。
「あああああああああの…!」
「御坂さん。上条さんはもう辛抱たまりません」
「そっ、そんな事言ってさっきの仕返しをしようってんでしょ!? そ、そんな手には乗らないんだからっ!」
「そっか。ダメか…」
「あ…」
「まぁダメなら仕方ないですよね。はぁ…、上条さんはとても悲しいです…」
「あ、あの…ホントに?」
「…本当です」
「じゃ、じゃあさ…その、あの…」
「んー」
「ふぇぇぇぇぇっ!? わ、私からなのっ!?」
「さっきは御坂さんが待ってたんで、今度は上条さんが待つ番だと思って」
「そっ、そそそそそそそれは…」
「早くしないと五枚目来ちゃうよー」
「じゃ、じゃあ。ん、んんーー…」
「………なーんて、むぐっ―――」
どうやら上条当麻の攻撃陣はボールを持たずにただ走っていただけのようだ。
いつのまに攻守が逆転したのか、上条は二失点目を喫した。否。この場合は1ゴールなのだろうが。
「んんっ、んー」
「―――はっ、はぁ…」
「み、御坂さん…」
「…えへ」
「みさっ――」
「ふにゃー」
「えええええええええええええええっ!!!????? 自分からしておいてええええええええええっ!!!????」
これが五枚目にもバッチリ映されていた二人のファーストキスだった。
しかし美琴が気絶してしまったのでこのプリクラにはデコレーションされる事なく、意識を取り戻した美琴はもう一度プリクラを撮ろうと哀願したのだった。
☆
「今日は課題出たの?」
上条と美琴はゲームセンターを出ると、バス停にて常盤台女子寮行きのバスを待っていた。
今日は上条が帰るのが遅かったのに加え、美琴がさっきまで気絶してたのでそろそろ完全下校時刻なのだ。
「いや、今日は出てないけど。明日また遅刻しようものならまた個人授業だって」
「ようはアンタが家を早く出ればいいんじゃない。私が言ったのと合わせても一石二鳥よ。遅刻はしない、かっ…彼女と登校できる。完璧っ!」
「彼女ねぇ…」
「な、なによ。何か文句あんの?」
「だってさぁ世間の彼女様は愛しの彼氏に電撃飛ばしたりアンタ呼ばわりしないと思うのですが? その辺りどう思います? 彼女さま?」
「うっ…、それはアンタが」
「ほらまたアンタって。俺には上条当麻ってちゃんとした名前があるんですよ?」
「ううううっ…、かっ、上条…先輩?」
「……うわ。何か今鳥肌たったわ」
「なんでよ! こ、このっ…!」
「うわああああああ、お、落ち着け! その…なんだ、うん。当麻でいいよ、普通に当麻」
「とうっ―――」
「あ、あれ? 御坂さん?」
「ふにゃー」
「またかよ…」
美琴がふにゃーとしたのと同時に女子寮経由のバスが来たようだ。
上条は美琴をおぶるとバスに乗り込んだ。もちろん男が女の子を、しかも常盤台の子をおんぶしてバスに乗る光景は珍しいのか注目の的になっている。
上条は真っ赤にまった顔を伏せ、いそいそと最後尾の席まで歩いていき美琴を座らせた。
「お、おい御坂。大丈夫か?」
「ふにゃー?」
「ダメか…」
上条は女子寮の前までバスが来ると、またしても注目を浴び恥ずかしそうに降りていった。
「んっ…」
美琴は上条がバスを降りた瞬間に目を覚ます。
あ、そうだ。これからバスに乗って寮に…って、あれ? もう寮の前…なんで? って何か温かいわね…、ん?
「…」
「みーさかさーん。もう着きましたよー。起きてくださいよー」
「…」
あれ。なに私。コイツにおんぶされてるんですけど。何かとっても温かくて気持ちいいんですけど。
「御坂さんってばー、ったく…」
「…」
美琴はバス停から寮の玄関までの僅かな時間だったが、ちょっとだけ抱きしめる力を強め幸せな一時を味わう事にした。顔に触れるツンツンな髪の毛がくすぐったい。上条の体は服の上からだと想像出来ないようなガッシリとした体だった。
「えへへ」
「ん? あれ御坂さん。起きたの?」
「うん。でももう少しこのままがいい…」
「つってももう玄関先なんですが」
「中の扉まで連れて行って」
「…はいはい」
上条は寮の二重扉の外側を頑張って空けると、インターホンが付いてる内側の扉まで来た。美琴はそこに着いても、しがみ付いてなかなか降りようとしなかったが、上条が「終点ですよ?」と言うと諦めたように上条から離れた。
「じゃあな、御坂。また明日」
「う、うん。明日は遅れないでね?」
「わかってるって。じゃあ、おやすみ」
「う、うん。…あ、メール! メール送るからちゃんと返してね!」
「はいはい」
「えへ。おやすみ、とっ…当麻」
「おやすみ、御坂」
こうして上条当麻と御坂美琴の恋人生活一日目が終了したのだった。
☆
否。まだ終わっていない。
「お姉さまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
寮のドアを開くと、白井がテレポートして現われ美琴にしがみ付いてきた。何やら相当に焦っているらしく顔は恐怖一色だ。
「ど、どうしたのよ黒子! 何かあったの!?」
「にっ、逃げてくださいましお姉さまっ…! あの方が…あの方が来ますわっ…!」
「あの方? …ん?」
「きっ、来ましたわっ! ひぃぃぃ…」
白井が美琴の慎ましい胸の中でガタガタと震えていると、カツーンカツーンという音と共に寮の奥から眼鏡を光らせた寮監が現われた。
「白井ー…、ダメじゃないか。寮の中で能力の仕様は禁止だろう?」
「お、お姉さまっ…」
「へっ? 寮監? 逃げるって…私まだ時間内よね?」
「おやおや、御坂じゃないか。丁度良かった…うふ」
「え」
「いやぁ…、おめでとう御坂。何でも昨日の『いい夫婦になる日』で告白したら結婚まで前提に付き合えてるそうじゃないかぁ…いやぁ、目出度いな。ホントウニメデタイ」
「ふぇ? ど、どこでそれを…」
「そこで震えている白井がブツブツ一人で言ってるのを聞いてなぁ…」
「…黒子あんたっ!」
「ごめんなさいですのごめんなさいですの!」
「で、でもそれが…どうして?」
「私は未だに恋人も出来ていないんだよぉ…。やっと好きになった人もあろう事か私よりも遥かに年上の熟女好きだったとは…、くふふ」
「…」
「悲しい…。私は悲しいよ、御坂、白井…。今日は就寝時間は気にしないでいいから朝まで私の愚痴を付き合ってはもらえないか?」
どうやら上条当麻の不幸がちょっとだけ美琴にもついてきたようだ。
その夜、美琴が上条にメールする事は無かった。
☆
翌日。今日は昨日とは反対で上条が美琴の事を自販機の前で待っていた。
「あんの野郎ォ…、俺には遅れるなとか言っておいて自分で遅れるとはいい根性してるじゃねぇかァ…」
上条はイライラして待つも、美琴のように電撃を撒き散らす事は出来ないので携帯で昨日の昼間着た美琴のメールを読み直していた。
一通一通のメールでご丁寧に題名は変えてるし、ここでは表現出来ないが可愛らしい絵文字もたくさん使っている。まぁそれに返信する上条のメールはたまに顔文字がある程度の真っ黒なメールなのだが。
そして上条がメールを読み直していると、ドドドドドドという地鳴りと共に御坂美琴が現われた。美琴は猛スピードでコーナーを曲がる為、遠心力に耐え切れなくなった体は大きな弧を描くが、備えてある街灯と自分とを磁力で引き合わせ最短の距離で近づいてくる。
道行く学生も上条も、そんな美琴を口を開けて眺めていた。
「ご、ごめん。寝坊しちゃって…」
美琴は上条の前まで来ると、何事も無かったように乱れた髪を直してそう言った。
どうやら俺は時間に間に合おうとする気持ちが足りなかったのかもしれないな。このくらい全力で駆けて来ないと間に合うものも間に合わないというものだ、うん。
「…? ど、どうかした? もしかして、遅れた事怒ってる?」
上条がそんな事を思ってると、美琴は不安そうに上条の顔を覗きこんできた。
美琴も昨日あれだけ騒いでおいて自分が遅刻するなんて、と思ってはいたが昨夜は夜中三時まで寮監と楽しい(?)お話タイムがあったので寝たのが四時前だった。
「うぅ…、ご、ごめん。昨日あまり寝てなくて…」
「へっ? いや、まぁ…まだいつもの時間だからさ。遅刻にはならないからいいよ。うん」
「ほんと?」
「あぁ。上条さんも勉強させてもらいました」
「???」
なので上条はそんな美琴を許してあげる事にした。
二人は公園を出ると、上条の高校と常盤台中学までの分かれ道まで一緒に登校する。
昨日は何だかんだ言って待ち合わせはしたが、白井が美琴を瞬間移動で連れて行ったしまったから一緒に登校は出来なかった。美琴は付き合う前には、上条の事を追いかけたり待ち伏せしたりなどと一緒に登校していたが、肩を並べて楽しく話しながら…なんてのは初めての体験だった。
「(あうあうあう…)」
美琴は上条との登校が気持ちよくてあうあうしながら頭からプスプスと煙を上げているが、何とかふにゃー化するのは抑えている。
「そういやさ、今日のホームルームで何があるって?」
「ふぇ?」
「昨日言ってただろ? 明日のホームルームは気をつけろって」
「あ、あー…、それは…、その…」
「ん?」
「昨日ね、アン…と、当麻を待ってる時ににゃーにゃー言ってる人と関西弁の人とおでこな人と黒髪の人に会って」
「…土御門と青ピと吹寄に姫神か。んで?」
「……言っちゃったの」
「言った? 言ったって…何を?」
「その…、つ、付き合ってる事…とか?」
「ぶっ! お前何て事を―――」
「い、いいでしょ別に! 何も悪いことしてるワケじゃないんだから!」
「いやそれでもですね。男の友情と言うのは固く結ばれているが、脆く儚く消え去ることもあるというとなんというか…」
「はぁ?」
「……ん? とか? お前まさか結婚前提って事も言ったんじゃないだろうな?」
「…」
「…」
「…えへ」
「…………不幸だ」
上条はこれから起こりえるであろう恐怖の時間に顔を青くする。
それは血と涙に染まる教室。いや、しかし諦めるな。諦めたらそこでうんたらかんたらだ、うん。
上条は美琴と別れると力強く歩きながら学校へ向かった。その日『上条当麻』は死んだ―――、そうならない為に。生きるために。
☆
「判決を言い渡す。被告人は起立せよ」
「はい…」
上条は今裁判所と言う名の教室にいる。
廊下側に二組、窓側に二組、中央に一組ある机椅子。そして他の机はご丁寧に全て廊下に出されており、残りの椅子は教室の奥の方に綺麗に並べられていた。
その椅子一つ一つにクラスメイトが鬼の形相で座ってるし、検察側からは土御門と姫神に睨まれるし、裁判長の青ピは妙に役に入ってるし、弁護側には誰も座ってないし、黒板にはでかでかと『カミやん病事件』と書かれているしで色々と不幸だった。
この裁判所は三審制で第一審、第二審共に上条は死刑判決だった。もちろん上条は控訴、上告を行ったのだが「上告理由にあたらない」とワケの分からん事を言われて第三審の裁判は却下された。ちなみに一時間目は都合のいいように自習だった。上条にとってはこの上なく都合悪いが。
「もう一度だけ聞きます。被告人上条当麻は、その恋人と本当に健全なお付き合いをなさっておるんですか? 結婚の約束までしておいて?」
「そ、それだけはハッキリと自信を持って言えます。俺達は何もやましい事をしているワケでは無く、一学生として節度あるお付き合いを―――」
「嘘ばっかつくんじゃないにゃー! オレはカミやんの隣の部屋だからよぉく知ってるぜぃ! 昨日の夜はうるさくて寝れなかったにゃー!」
「土御門テメェーーーーッ!!! よくもそんな嘘偽りデタラメをっ! デルタフォースの結束はどうしたーーーーッ!!!」
「うるせぇにゃーカミやん! そんなもんはとうの昔に崩壊したぜよっ!」
「11月22日だったら私もメール送ったのに返事が無かった。」
「私もよ!」
「私も!」
「私だって!」
「あたしもそうよ!」
「(上条ォ…!)」
「いやそれにつきましては本当に申し訳無いの一言なんですよ。マナーモードにしててですね? メールに気付いたのが次の日の朝でですね」
「そんなの信用出来ない。私達のメールを無視し常盤台の子と宜しくやってたに違いない。」
「たっ、確かにその子といたのは事実ですけど…」
「酷いよ上条くん! 私にあんな激しくしておいて!(危ないところを助けてもらっただけだけど)」
「えぇっ!?」
「私の事は遊びだったの!? うぅ…(買い物袋持ってもらっただけだけど)」
「はいぃぃぃっ!?」
「駄フラグ駄フラグ言ってたからカミやんの事信じてたのに…」
「つ、土御門…」
「はいはい静粛に。ここは一つ、もう一度あの方に決めてもらいましょ」
「…」
「吹寄! 助けてくれぇーーーーーーっ!!!」
どこにいたのかあの方こと吹寄制理は、長い髪を払い上条の前に立った。
「確かに上条当麻には情状酌量の余地はあるわ。男女の交際は本人達の自由だしね」
「さ、さすが吹寄委員長! 話が分か―――」
「でも」
「る?」
「死刑」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」」」」」」」
「不幸だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
☆
そんな事があった放課後、上条当麻はトボトボと校門へ向けて歩いていた。
一限目の『カミやん病事件』裁判は第二審で死刑判決が下されボコボコにされると、昨日撮った美琴とのプリクラを携帯に送った待ち受けを見られて再度ボコボコにされた。
…という展開にはさすがにならなく、小萌先生がどこからかやってきて止めに入ってくれたのだが、今の今までクラスメイトにしつこく質問攻めにあってクタクタになっていたのだ。
「あ。と、当麻ー」
上条が校門まで着くと、そこには既に美琴が待っており上条を見つけると元気に走り寄ってきた。
「きょ、今日は早かったわね」
「…御坂たん」
「ふぇ?」
上条は美琴が来るなり優しく抱きしめた。今まで一緒にいたクラスメイトが悪魔なら、彼女の美琴は天使や女神様に見えたのだ。
「ああああああああのっ! その…、あうあうあう」
「御坂たん。御坂たんだけだ、上条さんに優しいのは…うぅ」
「ふぇ? あ、や、やっぱり…朝ヤバかったの?」
「はい…」
「ご、ごめんね。私が余計な事言わなければ…」
「いやいや。まぁ何だかんだで皆にも分かってもらえたんで大丈夫ですよ」
「皆? い、一体何があったのよ?」
「実は―――」
「―――てな事がありまして」
「ちょ、ちょっと待って! 色々聞きたい事はあるけど、アンタ一体何人の子からメールなり電話なり貰ってたのよっ!?」
「10人くらい?」
「…」
美琴は恐怖した。この手を離したら一瞬にして他の女に上条はかっ去られるという恐怖感に。
そしてそんな女の子に心の中で謝りつつも、御坂美琴は上条当麻を一生愛し続けると再度固く誓ったのだった。
「そんな心配する必要はねぇだろ。あんな激しい告白されて、上条さんはもうメロメロですよ」
「えへへ。嬉し♪ でもあまり告白の事は言わないで。思い出しただけでも恥ずかしくて死んじゃいそうだわ」
そう言って美琴は上条の胸に真っ赤になった顔を埋めた。もう二人は立派なバカップルなようだ。
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#navi(上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/11月22日は何の日?)
2021-12-02T17:20:35+09:00
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