768 名前:タイゾウ[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:29:04 ID:C8BAVtrQ
「ごめんなさい…少し…疲れました」
愛ってなんだろう? 姉さんの様にひたすら前向きにいれば良いのか、烏丸先輩の様に秘めた思いを押し込む生き方が良いのか…。
…私にはわからなかった。…私に好意を持つ異性は大概が性欲まじりだった。それも愛の形だとは理解している。
(わからない…わからないよ…誰か教えて下さい…)
今、私の前には播磨さんが居てくれている。
(播磨さん…あなたは…あなたなら…)
「今夜は…一緒に歩いて下さいませんか?」
今はこの人に寄りかかっていたかった。
…私を特別視してくれないでいてくれる、この人なら…。

「あぁ…俺もさっき…ヒマになってよ」
播磨さんはそれだけ言い、歩きだした。
(何も言わないのね。…姉さんとどんな言葉を交わしたのかな…)
今、姉さんは烏丸先輩といる。それは播磨さんが送りだしたからだ。
(播磨さん…あなたは姉さんを諦めてくれたんですか?)
歩く彼の表情は見えない。だけど、その佇まいは寂寥感が漂っていた。
(そんな所に私は播磨さんにすがり付いたんだ…)
急に恥ずかしい感情が溢れてきた。思えばそれは自分が異性にはじめて示した行動だったのだ。
自分とて異性…男子に対して興味がある。誰かの恋人として、女として男性に抱かれる妄想に耽った事もあったのだ。
(…播磨さんは私をどう見てくれているんだろう? 私を女として見てくれるのかな)
女として…。そう思った瞬間、鼓動が早くなった。
…彼の背を見上げる。広く、厚い上背があった。
(そう言えばウェディングドレスの私をお姫様だっこしてくれたんだ…)
(もし…もしそれが現実になるのなら、私は播磨さんに抱かれるのね)
今までなら、それは妄想以前の空想であったが、今はそれが現実の手前にあるんだとわかる。(…私は好意を抱いているんだ…)
…胸に違和感を覚えた。それは胸の先端、2つの先端が過敏になっていた感覚だった。
(あ…)
姉さんの想い、烏丸先輩の想い…自分の想いに感情が高ぶり、はじめての想い描いた異性。
播磨拳児という男の存在に自分の中の女が反応したのだった。身体が火照ってきたのがわかる。その生々しさにとらわれ、傍らの男が何かを話しているのに気がつかなかった。
「………だからよ妹さん。もしアンタがその…」
(え…あ?)
「その…なんだ…言いづれェこったが」
(は播磨さん…何を言おうとしてるの)
鼓動がさらに速まった。

続く

770 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:28:03 ID:C8BAVtrQ
>>768の続き

「女としての気持ち的に問題がねぇなら…これから一緒にょ」「え…?」
月明かりの下、播磨さんの表情が強ばっているのが見えた。
(女としての気持ち…って、これから一緒に…って)
身体の火照りが耐え難く、意識せずジャージのチャックを引き下げていた。熱さを逃がすように、鼓動を伝えたいように…。(それってつまり…、その…私を……?)
頬の火照り、胸の痛み…そして…下腹部からそれらと違う熱い何かを感じていた。
(あ…あぁ播磨…さん)

「妹さんが烏丸のことをよ…まあ俺に無理して…」
「え?」
(なに?)
急に話がわからなくなった。
「あ…あの!」「いやァ、ホレさっきよ…烏丸のことが気になってたんじゃないかとさ…」
「あ…あれは違うんです! 全然違います!」彼の勘違いに思わず声を荒げてしまった。
(私が好きなのは…)
「…! 私が…好きなのは!」…衝動が私をつきだした。播磨さんの身体に飛びついたのだ。
もう知ってしまった。知ってしまったのだ。
(沢近先輩…私卑怯です。卑怯でいいです!)決めてしまった。覚悟を決めたのだ。後ろめたさは感じなかった。
…私は、ひとりの女として覚悟を決めた。
「私が好きなのは! 播磨さんです! 播磨さんが好き…好きです!
好きです!!」「!? お…おい妹さん…なに言って」
見上げなくても動揺しているのがわかる。私もそうなのだから!
私は彼の首に腕を伸ばし、しっかりと力を込めた。
(離したくないんです。私を…私だけを感じて下さい)
「妹さん…俺…俺は…天満」
「!」
言わせたくなかった。それ以上言わせては私は…。
もう衝動だけが私を動かすチカラだった。そのままに…そのチカラのままに、彼を引き寄せた。
後悔したくなかった。うつ向いての告白では駄目…。私は思いきって播磨さんに視線を合わせた。
…驚きに目を見張る播磨さんがいた。私にとってはじめての距離であったけど、絶対に必要な距離だから。
(播磨さん。私を見て下さい…。姉さんでもなく、沢近先輩でもなく…私を)
「…好きです。…播磨さん…私を見て…私を選んで下さい」
そのまま全身を押しつける。私の胸が彼のたくましい胸板で潰れる。
(感じて下さい。私の鼓動も何もかも!)
「い妹さん」
播磨さんの強ばった腕が私の身体に回された。(…播磨さん)「妹さん…」
(選んで下さい!)
「…俺は…」
(お願い!)

続く


772 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 02:22:09 ID:C8BAVtrQ
>>770の続き

(今、あなたは私をどう見ているんですか?)クラクラして思わず目を閉じてしまった。
その瞬間、私の唇に何かが重ねられた。
(!)
播磨さんの唇を感じた。…はじめて口づけ。
(これが…キス…)
不思議な感覚がそこにあった。誰かと…異性と触れあうなんて思っていなかった。
(…あぁ…播磨さんを感じる)わずかに位置がずれ、どちらともなく舌が唇の隙間から侵入を果たした。
頭が…思考が痺れたように働かない。ただ互いの息づかいと舌だけが生きていた。
触れあう舌が口腔内に広がり、私と彼が競いあうように求めあった。
…思考がおぼつかなくても、情欲を感じる事が出来る。
私の下腹部が…子宮が更なる欲望を求めていた。
(…濡れて…いるんだ…)
今まで異性の好意が私を辱しめてきた。
嫌悪し、絶望してきた女の性。だけど、今は違う。
…今は自分の性が全てを上書きした。
(…もう抗えない。だけどわかるよ。…私…今は播磨さんが欲しい)
彼が何を思っているのかはわからない。しかし、私の身体をまさぐっている。それで十分だった。
…嫌悪感は感じなかった。むしろ先ほどまでの自分なら考えられない程…積極的に胸を押しつけ、腰が押しつけていた。

男の手がジャージの中に侵入してくる。下着をまさぐり、そして素肌へとたどり着く。
(播磨さん…もっともっと触って下さい。もっと私を感じて下さい!)
情欲になぶられ、いやます興奮に脳が溶けていった。
舌は一瞬すら離れる事なく、手は素肌を這い、互いの秘所へと導かれた。
(あ? …これが播磨さん…の…)
はじめて触れる男性の性器。知識では習ってあるし、密かに回ってきたAVを見て、どんなモノかは知っていた。
そしてそれがどういう事に使われるのか間近に迫っているのに嫌悪感も無くなっていた。
自分を辱しめ、悩ませてきた事は過去へ押し流されたのた。
…今や播磨のソレは幸せになる魔法のアイテムに他ならない。硬くても柔らかみがあり、熱いソレは待ち望んでいた未来であった。
(これが…播磨さんの…、私の…な…か…に)熱く溶け出した情欲に流されていたが、不意に理性が現実に還せてしまった。
「…は播磨さん?」
「! うぉっ! す済まねえ妹さん!」
互いに正気に戻ってしまった。いや、熱量は変わらない。変わってはいけなかった。
「…その、服を脱いでもいいですか?」
流される? …違う。進むの。
続く

773 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 04:27:45 ID:C8BAVtrQ
>>772の続き

もう引く気にはならなかった。夜明け前の森は寒くもあったが、全てをさらけ出す事に躊躇はなかった。
…最後まで行き着くのかどうかは判らない。だけど、自分の全てを見て貰いたかったし、播磨さんの全てだって見たかった。
(だけど…それだけじゃない…)
私の心の奥底では自分が卑怯である事はちゃんと認識していた。いや、だからこそ寒さを無視して全裸になった。
衣擦れの音が途絶えた。視線が私を捉える。
(…いつもなら、異性の視線が辛い…けど、今の視線は暖かいんだ…)
自分を捉える意識…播磨拳児という男の想いが流れてきた。
普段より熱く暴力的で、それでいて寒さをはね除けるように包みこむ柔らかい暖かさ。そして美しいと思ってくれている思考。
嬉しかった。
他の誰からも与えられなかった想いが確かにあったのだ。
「播磨さん…私…見て下さい。私だけを見て下さい…」
(そして…選んで…)
向き合った先に一糸纏わぬ男の姿があった。普段、夜中であっても外すことのないサングラスさえ無い、本当の播磨拳児という男がそこに居た。
「…妹さんよぉ…。イイんだな? 決めたんだな?」
播磨さんの言葉と思考が重なっている。初めてのオンナ。初めての行為。僅かな恐怖…そして情欲。
何よりも、私を…私という存在そのものをちゃんと見ていてくれている。
(…播磨さん、ありがとうございます。…絶対後悔しませんから!)
「あ…あの播磨さん。…その…妹さんって呼び方…、呼び方やめて下さい。姉さんの付属じゃなく…あの、その名前で…呼んで下さい…!」(…これで私の壁は全て取り払いました。播磨さん、後は…)…後はそう…。だけど、もう構う必要は認めない事にした。
一つは避妊。ちゃんと周期は測っていて、今なら大丈夫なハズ…。
…そしてもう一つ。いやもう決めたから、私はもう進みだしたから。
…だから先輩…そこで見ていて下さい。…じゃましないでいて下さい。
「あ、あのさ…妹さ…あ~八雲さん…でイイか?」
「はい!」
播磨さんは不器用だけど真っ直ぐな男性。すぐに姉さんから代えてはくれないだろうけど、絶対に私を見てくれる人だから…。
(だから、私は躊躇わない)
「播磨さん…播磨さんの望むどんな事でも…して下さい」
私は今から…あなたに抱かれます。
私を愛して下さい。私だけを愛して下さい! 私だけの男でいて下さい!
(……ずっと…ずっといつまでも…)
愛してます

終わり

774 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 05:01:32 ID:C8BAVtrQ
>>773の続きではなく、後書き。
尺が誤り、高野達が覗いているシーンはカットしました。
一応、これで終わりです。
今回の投稿は21刊の後日談として、①純愛系八雲 ②ヤンデレ系八雲 ③絃子の三本から選びました。
構想とか投下時間の制約から①を選び、②③は廃案です。まあ③は…先日投下したやつの改改定版みたいなんで、あんまり意味なかったですからね。
あとヤンデレについては自分と周囲の捉えかたが随分違うんでねぇ…。まだまだ勉強不足ですよ。
とゆーところで逃走します。お粗末様でした。

最終更新:2009年05月25日 20:47