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**1話
《偽典・八戸のぶなが物語》
八戸のぶながは※※年※※月※※日に、※※県の※※で生まれた。
彼の家は母子家庭で、父の名も顔も知らずに育った。
母や姉に父のことを訪ねても、二人は何も答えずに首を振るだけだった。
ただなぜか八戸の家のテレビではゴールデンタイムにはプロ野球の試合が流され、
特に野球が好きにも見えない母や姉は、その画面を
何とも言えない表情で見つめているのだった。
幼き日の八戸のぶながは、そんな家族の様子を
「なぜなんだろう」といつも不思議な気持ちで見つめていた。
子供の頃の八戸のぶながは体を動かすのが嫌いな内気な少年だった。
そして実際彼は身体が弱く、病気がちな少年でもあった。
そんな八戸のぶなが少年の運命に転機が訪れたのは、
彼が小学三年生の時のことだった。
その頃、彼は大病を患い、一か月以上も病院で入院する毎日を送っていた。
八戸がかかっていたのは治すのには必ず手術が必要な病気だったが、
手術さえすれば95パーセント完治するという類のものだった。
だが、八戸少年はそのわずか5パーセントの失敗に怯え、
手術を拒否する日々を過ごしていた。
…その日も朝から八戸少年は医師の説得を拒否し、
病室のベッドでぐずっていた。
そんな時、彼の病室のドアが不意にノックされた。
母は朝から仕事に出かけ、姉は学校で、病室には八戸のぶなが一人しかいなかった。
「誰ですか?」といぶかしみながらも、八戸少年はベッドから出てドアを開けた。
「やあ、はじめまして。君が八戸のぶなが君か」
ドアの前には見たこともないほど大きな男の人が立っていた。
男の人は八戸少年を見ると破顔して、
やはり見たこともないほど大きな右手を差し出した。
「毎日病室で退屈しているんだって?お母さんに頼まれて君を励ましに来たんだ」
そう穏やかな笑みを浮かべて言う男の人の右手を、
八戸のぶなが少年はおずおずと握り返した。
警戒しなかったのは、その顔を八戸少年は知っていたからである。
直接会うのは初めてだ。
だが、ブラウン管を通して、八戸少年は何度も彼の姿を見ていた。