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**2話
《偽典・八戸のぶなが物語2》
「…※選手!※選手じゃないですか!」
差し出された手を握り返した瞬間、八戸少年はそう叫んでいた。
その時まで八戸少年の声帯は驚きのあまり、
一時的にその機能を失ってしまっていたのだ。
八戸少年が叫んだ通り、その大きな男の人は※という名の人物はプロ野球の選手だった。
それも日本でも一、二を争うほどの人気と知名度を誇る超一流の。
※選手がプロで成功に至るまでの話は広く世間に知られている。
元々※選手は即戦力のピッチャーとしてプロ入りしたのだが、
一軍でやっていくには今一つ突き抜けたものが足りなかった。
※選手は三年間ピッチャーとして二軍暮らしをした後、
この先もプロの世界で生きて行くために一大決心をする。
そう投手としての道を諦め、打者として再スタートしようと言うのだ。
元々高校時代は四番を打ち、バッターとしての素質にはかねてより評判が高かった。
だが、それにしてもそれは一大決心には違いなかった。プロ入り後の三年間、
彼はほぼピッチャーと送りバントの練習しかしていなかったのだから。
誰もが※選手の決断を無謀と笑う中、
ただ一人のコーチだけが※選手のバッター転向を支持した。
※選手とコーチはマンツーマンで血の滲むような修練を積み、
ときには日本刀でロウソクの炎を消すという特殊な特訓まで積んで、
ついに※本足打法という※選手にしかなし得ない特殊なバッティングフォームを身に着けた。
そして※選手はバッターとして一軍のレギュラー入りを果たした。
その後彼はその独特のフォームで毎年ホームランを量産し、
三冠部門で常に首位を争うほどまでになった。
幾度もホームランの日本記録を塗替え、ついには世界記録さえもたたき出した。
ファンの間からは「世界の※」と呼ばれるようになり、
野球仲間からは「※ちゃん」と親しまれている……
その※選手が自分の前にいて、握手をしている。
八戸少年は何とも不思議な気持ちを覚えた。まるで夢でも見ているような。
「母から聞いた」と※選手は言ったが、そんな話は一度も聞いたことがない。
正直にその疑問をぶつけると、※選手は何とも言えない困ったような表情を浮かべた…