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4話


《偽典・八戸のぶなが物語4》

賭けに負けた八戸のぶながは、一か月後素直に手術を受けた。
手術は成功した。
さらにその後三か月半ものリハビリを経て、
八戸少年は退院をはたし学校生活へと復帰した。
手術のおかげか。あるいは必死にリハビリを行なったおかげか。
八戸少年の身体はすでに病弱だったそれから脱却し、まったくの健康体になっていた。
八戸少年は学校へ戻るとすぐに地元の少年野球のチームに入った。
もちろん、そこにはあの偉大な記録が関係していた。
あの晩の※選手とのやり取り、そして※選手が描いた鮮やかな五本のアーチが、
八戸少年に野球への、そして※選手への憧れを抱かせたのだ。
毎晩の夕食時のナイター観賞も、以前と異なり八戸少年は真剣に、
かぶりつくように見るようになった。
そんな八戸少年の様子を、母と姉はなぜか複雑な表情で見つめていたが。

さて、野球チームへ入った八戸少年だったが、最初は何もかもが上手くいかなかった。
病み上がりというのもあったが、そもそも以前の彼はテレビゲームばかりに熱中する少年で、
運動らしい運動とはまったく無縁の生活を送っていたのだ。
もちろん、チームに入ったばかりの八戸少年がいきなりバットを握らせてもらったり、
ピッチャーの練習をやらせてもらったわけではない。
彼が最初にやらされたのはランニングを始めとする基礎体力作りと、
ネット裏での玉拾いであった。
それでまったくこなせないほどに、八戸少年の体力不足は深刻だった。
彼はその少年野球チームにとって、まったくのお荷物以外の何ものでもなかった。

…だが、そんな八戸少年でも一か月も走り続けサボることなく練習を続ければ、
多少は他の皆に付いていくことができるようになる。
ある日、いつものように玉拾いに励む八戸少年を見つめていた監督が、
ベンチから大声で彼を呼んだ。
「よし!八戸!今日からお前も他の皆と同じ練習に加われ!」
八戸が最初にやったのはバッティング練習だった。
バットに触れたのは嬉しかったが、いきなり素人が生きた球に当てるのは難しい。
八戸の身体はクルクルと扇風機のようにまわり、チームメイトの失笑を買った。
次に八戸がやらされたのはピッチング練習である。
「適性を見るためだ。一応な」とコーチは説明した。