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7話


《偽典・八戸のぶなが物語7》

…すぐに救急車で病院に運ばれた※選手だったが、
結局一度も意識を回復することなく、その日の未明に息を引き取った。

そのニュースが翌朝報道されるのを見た時、八戸少年の両の瞳からとめどなく涙が流れた。
母も姉も八戸と同じように瞳を濡らしていた。

その日の晩、八戸家に来客があった。
黒いスーツに身を包んだいかにも堅物といった印象のその男は、
ドアを開けた八戸少年に「※選手の知り合い」だと名乗った。
そして厳しい目付きで八戸少年を見据え、母を呼んでくれと言った。

八戸少年の言葉を聞いた母は、男を家に上げると、
八戸少年には姉と一緒に部屋にいるように命じた。
その口調に抵抗しがたいものを感じて、
八戸は素直に姉と共に部屋に入り、ドアを閉めてカギをかけた。
部屋の中で、姉はギュッと口を真一文字に結び、
八戸少年の手を握り締めていた。
ときおりドアの外からは母の悲鳴にも似た怒鳴り声が断片的に聞こえてきた。
普段大声さえあげることのない母には似つかわしくない声だった。
「…はじめから…に出席するつもりなんか…」
「………こんなもの受け取るわけ……」
「…だから最初から認めてもらう気は…」
そうした母の怒声が漏れ聞こえて来るたびに、八戸の手を握る姉の手に、
ぎゅっと一層力がこもるのだった。

黒いスーツの男が帰った後、八戸と姉がリビングへ行ってみると、
母は目頭を押さえてときおり嗚咽を漏らしていた。
テーブルの上には見覚えのない分厚い茶封筒が、無造作に置かれていた。
姉が母の様子を見て、八戸少年に今日はもう遅いし眠ろうと言った。
その言葉に、八戸少年は素直に頷いた。

…ベッドに潜り込んでも、八戸少年はなかなか眠りにつけなかった。
昨日からあった様々な出来事が頭の中を駆け巡っていた。
八戸少年にももう薄々わかっていた。※選手と自分がどんな関係にあるのかを。
そして自分にとって父親にあたる人物が、永遠にこの世界から消えてしまったということも。