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**絡み合う思惑、散る命 ◆L9juq0uMuo 「ふぅ、何とか12時前には着いたか」 病院の正門に着き新八はホッと一息を着く。 だが、その顔はすぐ緊張の色に染まった。 病院の壁の一角が破壊されている。しかも破片の飛び散り具合からして内側から。 それが意味する所は、何者かが病院の内部から出てきたと言う事だ。 そして、ドアを開けずに壁を破壊したという事は何かしらの争いが起こった可能性が高い。 恐ろしい光景が新八の脳裏に浮かぶ。 「ぎ」 銀さん、と呼ぼうとして新八は慌てて口をつぐむ。 もしも襲撃者がまだこの近辺にいたら……? 言い様の無い不安が新八の頭によぎる。 (おおおお落ち着くんだ!とにかく慎重に身を隠しながら進まないと!) 明らかに動揺した様子で匍匐前進から壁を背にし壁伝いに入り口へと進み、前転をしながら入り口に突入。某潜入工作員もかくやという動きっぷりである。 「ふー、潜入成功」 「何やってんのお前」 見つかるか見つからないかのちょっとしたスリルに興奮しながら額の汗を拭う新八にかけられた言葉に新八が固まる。 ギ、ギ、ギ、と音が鳴りそうな程ぎこちない動きで前を向くとそこには銀時が立っていた。 「あれ? 銀さん……、何で?」 「何でってトイレの帰りにお前が変な事してるからよ。頭でも打ったか?」 銀時が無事だった事に内心安堵する。が、それと同時ある疑問と不安が湧いてくる。 「……ちなみにどこから見てたんです?」 「匍匐前進」 つまり、新八の奇行は最初から最後までしっかりと見られていたのである (終わったァァァァァァァァ!) 心の中で新八は絶叫した。 「……何をやっているんだあの男は」 屋上から新八の一連の奇行を見ていた吉良は溜息を一つつく。 「坂田に比べまだまともだと思ったがどうやらそうでも無かったようだな。いや、今はそんな事はどうでもいいか」 そう、それよりも吉良には大事な事があった。それは、葉隠覚悟がいなかった事である。 「どういうことだ……? 死んだか、それとも何らかの事情で別行動を取ったか……、だがどちらにせよ計画は変更せざるを得ない、か」 ルイズに仕掛けた爆弾で覚悟を殺害する計画も、当の本人がいなければ意味が無い。 当初の予定が狂った事に吉良は若干のストレスを感じた。 「まったく、ストレスなどという物とは極力縁の無い生活を送りたいというのに。とりあえずは部屋に戻り志村から事の顛末を聞くしかないな。 なに、先の争いで皆は私を信用しきっている。策ならばいくらでも練りなおせる」 自分に言い聞かせるように呟きながら吉良は屋上からマリア達のいる部屋へと向かった。 「そうですか、美形さんが……」 「私と坂田とルイズで痛めつけたが、惜しくも逃がしてしまったのはな」 吉良が屋上から降り、全員が揃った所でそれぞれに起こった事を話し合った。 美形が乗っていた事に新八は驚きを隠せなかった。 そして、新八と覚悟が遭遇した人々についても驚きを隠せない人物がいた。 「そんな、あいつが殺し合いに乗ってて、しかも覚悟と戦ったなんて……」 ルイズと覚悟が病院に来る前に遭遇した男――新八の言からラオウという名が判明した―― 三人で朝食を摂っている時はどこか近寄りがたい物を感じたものの決して好戦的な態度では無かった男がこの殺し合いに乗っていた事が、ルイズには信じられなかった。 「あー、あのキン肉マン、ラオウっていうのか。しっかしあんなのとやりあってよく生きてたもんだ」 「ん?」と、銀時とルイズは互いに顔を見合わせる。 「ギントキ、あいつの事知ってるの?」 「あ? お前もあいつにあったのか? あいつぁ意味わかんない野郎だよ、いきなり星が見えるかーとか聞いてきたから、『はい』って答えたらいきなり襲ってきてよぉ」 「私達は一緒に朝食を食べた後、ギントキと同じ事聞かれたから見てないって答えたら見逃してくれたけど」 一瞬の間。そして銀時の怒りが爆発した。 「おいぃぃぃぃぃ! 何よそれ、見てませんってのが正解ってか? そんなの解る訳ねぇぇぇぇぇだろぉぉぉぉ! 普通あんな質問されたら『はい』って答えちゃうって、常識的に考えて!」 「うるっさいわねぇ! 私に怒らないでよ! 大体見てないなら見てないって素直に言えばいいでしょ? それをあんたが嘘ついたからいけないんじゃない! 自業自得よ」 「あんな『見たことあるよね?』的な質問されてそんな事言ったらどうなるかわかんないでしょぉぉぉぉ! 銀さんはそんな危ない橋渡りたくありませんー、安全策を取りたいんですー」 「そんな事私のしった事じゃないわよ! 大体あんたはねー……」 「二人とも話が進まないので少し黙っていただけないでしょうか」 言い合いをする二人にマリアがぴしゃりと言い放つ。 笑顔を浮かべながらもどこかドス黒いオーラを放つマリアに気おされ、銀時もルイズもすごすごと引き下がる。 「とりあえず覚悟君が同行したメンバーですが、私達の他にもこの殺し合いに乗っていない集団がいるというのは心強いですね。新八君の話、そしてヒナギクさんがいる事から信用もできると思います」 その発言を聞き、新八の表情がわずかに沈む。 「どうしましたか?新八君」 「いえ、やっぱりヒナギクちゃん達を連れてきた方が良かったかなって。やっぱり知り合いに会えたら心強いっていうか、その……」 申し訳なさそうにうなだれる新八の肩にマリアは手を添える。 「そんなに申し訳なさそうな顔をしないでください、聞けばヒナギクさん達もやることがあるようですし仕方ありません。ね?」 「は、はい、ありがとうございます」 元気付けるように微笑みかけるマリアを見て、新八はその微笑に思わず見とれ、ドギマギしつつも笑みを返した。 そして、その微笑に見惚れていた人物はもう一人だけいた。 (やはり、マリアさんは美しい) 微笑みを浮かべ、新八を元気付けるマリアを見て、吉良はまるで一枚の絵画を見ているかのような気分だった。 そして、彼女のその美しい手が添えられている新八を少し羨ましく思う。 自分の肩にあの手が置かれたらどうだろうか、吉良の思考は妄想の海に埋没しかける。 (……待て、今は妄想に浸っている場合じゃあない) 妄想の世界から現実に戻り、吉良は今後の事を考える。 一番厄介な葉隠覚悟が別行動を取った今、とっととルイズを爆破し、銀時、新八を殺害しマリアの手を手に入れてもいいだろう。 その後覚悟と遭遇しても乗った人間に襲われたとでも言えばいい。 バイツァ・ダストの為に生かしておこうと考えていたコナンだが、新八の話からあちらにもコナンのように無力な一般人がいるようであり、それを利用すればここでコナンを殺しても問題無さそうだ。 寧ろ、ジグマールを逃がした一件、そして子供の割に高い洞察力から、今後の為に殺しておいた方がいいとさえ思える。 だが、今それを実行するのはリスクも高い。 一つ目は覚悟達の明確な場所がわからない事、それがわからない以上長時間単独で行動する可能性が高い。 二つ目は新八の言うラオウの存在。新八の話ではラオウは繁華街の方向に向かったという。もしかたら医療品の調達にこちらに来る可能性もあるのだ。 吉良はあの男と単独で遭遇する危険性を冒したくは無かった。 三つ目は彼らが自身と合流する前に空条承太郎と遭遇する可能性。 その時点でバイツァ・ダストが使えなくなるどころか自分の立場まで悪くなる。 吉良にとって一番の目的は『マリアの手を手に入れる事』ではなく、『平穏な生活を送る事』だ。 だから彼は当面は現状を維持する事にした。ここで信頼を作っておけば承太郎が何を言ってもそう簡単には信じては貰えないだろう。 (いざという時の為にルイズに仕掛けた爆弾も解除した。後は機会が来るのを待てばいい) 人知れずこっそりとルイズの首輪に仕掛けた爆弾を解除し、今後の方針を決めた時。二回目の放送が流れた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「どうやらケンシロウも覚悟もまだ死んではおらぬようだな」 病院へと向かう道を歩きながらラオウは呟いた。 病院と繁華街そのどちらに向かうかを決定付けた理由は葉隠覚悟と本郷猛の存在だった。 この殺し合いで負ける気などは到底ないが、消耗をしていた本郷を相手に勝ったとはいえ地に膝を着き、敢えて受けた覚悟の攻撃の威力も馬鹿にならなかった。 この殺し合い、本郷や覚悟のような実力者もまだ残っているだろう。 そのような相手と相対するのであれば、万全とはいかなくとも最善の状態で戦わねばならない。 負傷した体を少しでもよりよい状態にしておくには医療品もあった方がいい。 そう考えラオウは参加者を探すついでに医療品を回収しに病院へと歩を進めたのだった。 そして、ラオウの目に病院が見え始めた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 老人の言葉と共に、放送は病院内の彼らにとって残酷な事実を伝え終了した。 「銀さん……」 「……」 銀時は何も喋らない。うつむいたその顔からは表情は読み取れなかった。 (灰原……) コナンは一人、奥歯を噛締める。彼はまた一人、仲間を失ってしまった。 「嘘、嘘でしょ……、サイト……サイトォッ……!」 愕然とした表情でルイズはへたりこんでいる。 いつもの強気な彼女はなりを潜め、その目からは涙が溢れている。 『サイトを元の世界に戻す』結局それは叶わぬ夢となってしまった。 沈痛な面持ちの四人にいたたまれなくなりマリアは顔を伏せた。 (優勝者への褒美、か) そんな中、吉良は一人思案に耽っていた。 (死んだ人間も生き返るとなれば今まで乗らなかった人間でもこの殺し合いに参加するだろう。それはこの場の人間も例外ではない) 吉良はルイズへと視線を向ける。 (坂田や志村、そしてコナンの性格からしてもそのような褒美があった所で殺し合いに乗ることはあまり考えにくい。問題はあのルイズだ) 吉良は考える。 銀時もコナンも襲ってきた殺人者の命を助けようとすような甘ちゃんだ。そんな人間が乗るとは考えられにくい。新八についても銀時の知り合いからして同じような人間だろう。 ルイズも基本は同じだ。だが彼女の激しやすい性格から考えて、乗る可能性はこの場にいる他の人物より高くなる。 激しやすい性格というのはメンタル面で見れば脆い分類である。 更に付け加えれば、彼女のショックは他の三人より大きく見えた。恐らく才人という人物は彼女にとってそれ程までに大事な人物だったのだろう。 もしも、そんな人物が死んだとすれば……。彼女がその才人という人物を生き返らせる為に乗ってもおかしくは無い。 (首輪につけた爆弾を解除したのは早計だったか? いや、いきなり爆発しても怪しまれる可能性がある。やむなし、か) そんな事を考えながら吉良がふと外に目をやる。病院の前に筋骨隆々とした男が立っていた。 「皆、どうやら沈んでいる時間はないらしい」 吉良の発言に皆は顔を上げ吉良の視線の方向へと顔を向けた。 「あいつは……っ!」 銀時が驚愕の声を上げるのと、ルイズが自分のデイパックを担ぎ走り出したのはほぼ同時だった。 (許せない) 結論から言えばルイズは殺し合いに乗る気は無かった。 才人がキュルケやタバサを殺してまで生き返りたいとは思ってはいないだろうし、何よりその為には覚悟達を殺さなくてはいけない。 ルイズはそんな事をしたくは無かった。 だが才人の死は少なからず彼女の精神を歪ませ、激情は心を蝕む。 思えば何回彼を叱り飛ばしただろう。 思えば何回彼に助けられただろう。 思えばいつから彼に好意を抱いていただろう。 もう、好意を抱いていた彼を叱り飛ばすことも、彼に助けて貰う事もできない。 ルイズは心にぽっかりと穴があいたように感じた。 それ程までに平賀才人という人間は彼女の中で大切な存在になっていたのだ。大切な物は失った時にその重みを知る。 才人を生き返らせるという思いはない。その変わりに彼女の心に芽生えたのは殺人を犯した人間に対する強烈なまでの殺意。 (サイトを殺した奴も。誰かを殺した奴も) もしかすると新八達と分かれた後、ラオウが才人を殺したのかもしれないとルイズは思い始めた。 怒りに染まった心に疑念が渦巻く。ルイズにはここにいる自分の知らない人間すべてが才人を殺したように思い始めてきた。 (許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せ ない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない――」 気づけば考えていた事が言葉に出ていた。『許せない』という単語を呪詛のように呟きながらラオウの元へと駆ける。 「――絶対に、許さない!」 低く轟くように叫びながら、ルイズは玄関前の広場にてラオウと対峙した。 (あの小娘、怒りに我を忘れたか、誰かが死んだか?) 目の前に憤怒と憎しみの入り混じった形相で自分を睨むルイズを見てもラオウは身じろぎ一つしなかった。 「いつぞやの小娘か。このラオウ、小娘如きを傷つける拳は持ち合わせておらぬ。去ねい」 「あんたに無くても私にはあるのよ」 今にも噛み付きそうな表情でルイズは杖を構える。 「あんたは人を殺した。あんたみたいなのがいるからサイトが死んだ」 杖を握る手に力が込められる。 「だから私はあんたみたいな人殺しを絶対に許さない!」 激情を、敵意を、殺意をそのままぶつけてくるルイズをラオウは無言で見つめていた。 「よかろう」 その言葉と共にラオウの瞳に殺意が宿る。 「女子供は傷つけぬとは言え、このラオウに向かってくるのであらば容赦はせぬ。この拳王の力、身をもって知れい」 「……ッッッ!!」 ラオウの体から放たれた圧倒的なまでの覇気と殺気。 今まで経験した事のない圧力にルイズは居竦む、蛇に睨まれた蛙のように体が思うように動かない。 その構図は正に狩る者と狩られる者。それでも尚、ルイズは眼前の男を殺す事を諦めてはいないようだった。 (呪文が唱えられればこんな奴……) しかし声が出ない、口がうまくうごかない。 (サイト……ッ!) ラオウが眼前まで迫ろうかというその時、ラオウは何かに気づいたようにルイズを後方を見た。 (……え?) つられてルイズが後ろを向くとそこに元に戻った天然パーマの銀髪を風にたなびかせながら一人の男が立っていた。 「ギン、トキ」 「おいおい、いい年したおっさんがそんな女の子に襲い掛かってんじゃねーよ。ロリコンですかコノヤロー」 いつもと同じ調子で、いつもと変わらぬふてぶてしい態度で、ただしいつもは死んだ魚のようなその目だけは輝いて。 ソードサムライXを片手に銀時は立っていた。 「うぬもこの場にいたか」 獰猛な笑みを浮かべるラオウに対し、銀時はソードサムライXを構える事で答える。 その時、ルイズはふと自分の手を引かれた。新八達である。 「新八、吉良さん、三人の事は任せたぞ」 視線はラオウに向けたまま、銀時は呼びかける。 「待って!私も……」 「駄目だ」 ルイズの発言を銀時が拒否する。 「こいつはさっきの美形とは格が違う。それはお前が一番よくわかってんだろ」 「それは……」 ルイズは言い返せなかった。実際ラオウの強烈な気にあてられまともに動く事はできなかったのだから。 俯くルイズに銀時は笑みを浮かべる。 「だからここはこの銀さんに任せなさい。こんなとこで全員やられる訳にはいかねーだろ」 「ルイズさん、ここは坂田さんの言うとおりだ。俺達がいても坂田さんの足をひっぱる可能性が高いだけだ」 銀時の発言にコナンが続く。 ルイズは俯いたまま逡巡する、そして答えを出した。 「……わかったわよ!」 怒ったように叫びながら、ルイズは新八達と共に駆け出した。 「銀さん!」 「安心しろ、逃げるのは得意だ。」 その場から遠ざかりながら叫ぶ新八に銀時は手を挙げて答える。 「さて、と」 銀時とラオウが対峙し、張り詰めた空気が場を支配する。 「あー、その前に一つ言っておきたい事があんだけどよ」 銀時が頭をぽりぽりと掻きながら続ける。 「最初にあんたに北斗うんたらの脇の星を見た事あるっつったけど、あれ嘘なんだわ」 「嘘だと?」 銀時の発言にラオウは怪訝な表情を浮かべる 「そうそう、俺とあんたが会うまで俺殆どあの家の中いたからよ。つまり、俺はそんな星見てないってことだ、ノリで『はい』って言っちまったけどよ」 「ノリで、か。まったくおかしな男よ」 ラオウが目を瞑りくつくつと笑い出し、銀時もまた笑みをうかべている。 「ってわけでさ、見逃してくんない?」 「断る」 ラオウが目を開く。その目には変わらず殺気が宿っている。 「貴様のような読めぬ男と戦うもまた一興よ。このラオウ目の前の獲物を二回もむざむざと見逃す男ではないぞ」 「……だよなぁ」 銀時は相変わらず笑みを浮かべている。だが、その眼光が鋭くなった。 「一つ、聞かせろ」 ラオウが銀時に尋ねる。 「うぬは『優勝者は何でも願いを叶えられる』という褒美に興味は無いのか」 単純な興味から出た言葉であろう。それを銀時はなんでもないように答える。 「生きてても魂が折れたら死んだも同じだ。俺も、俺の知り合いも同じ意見だろうさ」 それが当然とでも言いたげに銀時が答える。 「そうか」 つくづく奇妙な男だとラオウは思った。 普段は軽薄な男だが、その実、内に一本の強い芯を持っている。 ラオウの脳裏に雲のジュウザの姿が浮かぶ。あまり自分が知らないタイプの人間だ。 だが嫌いではない。 「時間を取らせたな」 「なーに、時間を取ってくれた方が俺にはありがたいさ」 軽口を叩く銀時にラオウは不敵な笑みを浮かべる。 そして、二人は駆けた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ねぇ! どこ行くのよ!」 病院を出て、一息着きながらルイズが尋ね、マリアが答える。 「とりあえずは覚悟さん達と合流を目指します。明確な場所まではわかりませんのでほぼ手探り、という形になりますが」 「坂田が時間を稼いでくれている今、少しでも奴から遠ざかるというのも急務だな」 「ギントキ……」 銀時の名を聞いた瞬間、ルイズの顔が暗くなる。 自分があの男を相手に気おされずに、しっかり殺していれば……。 ルイズの脳裏にドス黒い後悔の念が湧き上がる。 「ルイズちゃん、そんな顔しちゃ駄目だ」 不意に新八が声をかける。 「銀さんはそんな顔をさせる為にあそこに残ったんじゃないんだ。だからそんな顔をしちゃいけない」 そうは言うものの新八の手も震えている。覚悟とラオウの戦いを目の当たりにしているのだ、ラオウの強さは嫌と言うほどわかっている。 それでも新八は弱気な態度は出さない。 「大丈夫、銀さんはせこい戦いと逃げ足には自信があるんだ。きっと生きて帰ってくるさ、今までだってそうだったんだから」 新八も不安なのだろう。だが、彼が不安になれば不安は伝播する可能性がある。だから彼は笑顔で元気付ける。 「そうね、……ありがとう新八」 「どういたしまして」 笑顔になるルイズを見てコナンは一息つく (ひとまずは大丈夫みてーだな) 不安定に見えたルイズも新八のおかげで今は平衡を保ったようだ。 コナンは思う、今はいない、灰原と毛利の事を。 夢だと思いたい、だが現実は残酷だ。そんな事はわかっている。 (死者すら甦る、か) 優勝者への褒美、それを使えば彼らも甦るだろう。だがコナンはそれを望まない。 (探偵が人殺しをしちゃならねぇ) そう、彼は目的の為ならば人の命まで奪う人殺しではない。 彼は、彼の目指す物はそのような人間や今回の主催者のような奴等を追い詰め、捕まえる探偵なのだ。 探偵に憧れ、探偵として生きてきた彼が殺し合いに乗らなかったのは当然の事である。 「ん?」 その時、コナンは道路の先に赤い点が見た。それは次第に大きくなっていくように感じられる。 「皆!何か来る!」 コナンの言葉に全員が反応しそちらを見る。 どうやらその赤い物体はこちらに向かってきているようだ、それもかなりの速度で。 (速度を落とさない? こちらの姿は見えている筈だが) 疑問が悪寒へと変わっていく。ぐんぐん近づいて尚、消防車は止まる気配を見せない。 この距離ではブレーキを踏んだ所で間に合わない。吉良の中で悪寒が確信へと変わった。 (間違いない! あの車の搭乗者は乗っている!) 「皆!左に飛べぇーっ!」 吉良の叫びとともに全員が慌てて左に飛んだ。その横を消防車が疾走する 「キラークイーン!」 左に飛びながら、吉良は運転席の扉にキラークイーンの一撃を入れる。 横からの衝撃に、消防車は横にそれ、轟音と共に電柱に激突した。 「皆!相手が出てくるかもわからない、私の近くに来るんだ!」 吉良の言葉と共に、全員が吉良の近くに向かう。 (よし、キラークイーンで運転席のドアを爆弾にした。後は襲撃者が運転席のドアに触れた時に見えないようにキラークイーンのスイッチを押せばいい) キラークイーンを待機させ、吉良は待ち構える。 「ぐぅ……」 消防車の運転手、津村斗貴子は意識を取り戻した。 失敗した。道路上の集団を見つけたのは偶然だった。 消防車は一刻も早く病院に向う為に走らせていた。そのまま彼らを轢き殺そうと思ったのは単なる思い付きだ。 だがそれは失敗した。集団にはよけられた挙句、サラリーマン風の男の体から現れた奇妙な物体に消防車を横から思い切り殴られ、そのまま電柱に激突した。 この時の傷は生命の水の効果で治癒しはじめていた。だが、斗貴子はそれに気づかなかった。それよりも最初にある物が目に入ったからだ。 助手席は電柱の直撃を受け見事にひしゃげている。電柱が消防車にめり込んでいると言ってもいい。 そして、助手席に乗っていたカズキの死体もまた、電柱に押しつぶされ、その四肢と首は壊れたマリオネットのようにひしゃげていた。 「あああああああああああああああああああああああああ!!!」 絶叫が響く。 「……る……さない……」 絶叫を止めた代わりに、ぶつぶつと斗貴子が呟く。その目は彼女の忌み嫌っていたどぶ川の濁ったような目をしていた。 許さない。 カズキを殺した人間も。 カズキを奪った人間も。 カズキを破壊した人間も。 私の前からカズキを奪おうとする全ての人間も。 ――だから、全て殺す。 愛する者の無残な姿に、不安定だった彼女の精神は崩壊した。 彼女の目にサイドミラーに映る何人かの姿が目に入った。 その中には消防車を攻撃し、カズキを破壊した人間がいた。 (殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロス――) 彼女の手にカズキの核鉄が握られる。 あの男の臓腑をぶちまけ、その首根をかっ切る事を斗貴子は心に誓う。 「武装、錬金」 その掛け声とともに核鉄がサンライトハートへと姿を変えた事に、斗貴子は驚愕する。 (どういう事だ!? 何故バルキリースカートでは無くカズキの武装錬金が……) そこまで考えて、斗貴子はその疑問を振り払った。 (いや、そんな事はどうでもいい。今は目の前の男を殺す事だけを考えろ。それにカズキの武器でカズキの仇を討つのも一興だ) 「待っていろ、カズキ」 奇妙なオブジェとなったカズキにいとおしげに微笑かける。 「あいつは必ず殺す」 微笑みを携えた顔が、一転して修羅へと変貌を遂げた。 (カズキのサンライトハートは感情を力にする) サンライトハートのエネルギーをチャージする。 (私の怒りが、私の憎しみが、奴を完全に粉砕する) 「臓物を――」 寸分たがわず狙いを付け、狭い車内でどうにか突撃の姿勢を作る。 「ぶち撒けろォォォォォッッッ」 怒号とともに、ドアを吹き飛ばしながら、斗貴子は突撃した。 「何だとっ!?」 それに驚いたのは吉良だった。爆弾に変えたドアが吹き飛ばされ、槍を持った少女が物凄い勢いで突撃してきたのだ。 (いかん! あの速度ではいくらキラークイーンでも防ぎきれない) 例えキラークイーンを使ったとしてもあの速度で突進してくる槍を防ぐの無理だろう。 絶望が吉良を襲う。 その時、吉良は誰かに突き飛ばされた。 (何!?) 突き飛ばされながら吉良が見た光景は、槍の直撃を受け、電車に飛び込んだ自殺者のように胴体が吹き飛んだマリアだった。 新たな絶望が吉良を襲った。 咄嗟の事だった。ただ漠然と助けなければと思った。気が付けば吉良の事を突き飛ばしていた。 槍が眼前に迫る。ひどくゆっくりと感じられた。 太陽の様な山吹色の光を放つ槍が、一瞬全てを燃やし尽くして尚止まらぬ黒い太陽の様に見えたのは気のせいだったろうか。 (ナギ……ハヤテくん……) 今もこの殺し合いの場のどこかにいるであろう二人の姿が最後に浮かんだ。 そして衝撃が襲い、マリアの意識は途絶えた。 「マリアさぁぁぁぁぁん!!!!」 絶叫を上げる新八達を他所に、吉良は呆然と立ち尽くしていた。返り血を浴び、赤く染まっていた。 ごろり、と吹き飛んだ生首が転がってきた。 「マリア……さん……なんて、なんて事だ……」 咄嗟に両手で前を庇ったのだろうか、吉良の恋焦がれていた両手も無残な姿になり転がっていた。 生気を失ったマリアの生首を直視した時。吉良の中で何かが切れた。 「君達」 狼狽している三人に吉良は声を掛けた。狼狽しながらもどうやらまだ人の話を聞くことぐらいはできるらしい。 激しい殺気を自分へと向ける襲撃者に構えながら吉良が告げる。 「ここは私が相手をする。君達は逃げろ」 「バ、馬鹿な事言わないで……」 「逃げろと言っているんだッッッ!」 ルイズの反論を吉良は一喝する。 突如怒声を上げた吉良に三人は息を呑んだ。 「あの女は私が狙いのようだ、そのせいでマリアさんは私を庇って死んだ。私がいては危険なんだ、だから早く行くんだ」 それでも、三人ともまだ納得はしていないようだ。彼らからみれば吉良もまた仲間なのである。目の前で仲間を失ってすぐ、仲間を見捨てるような真似はできない。 「いいか? 私たちの目的は殺し合いの破壊であって目の前の女を倒す事じゃない。ここで全滅は避けねばいけないんだ。だから早く行ってくれ。頼む」 「……わかりました」 新八が口を開いた。頷いている事からコナンも同意見のようだ。もっとも二人とも苦渋に満ちた顔であるが。 「新八!?」 「でも!」 ルイズの非難を無視し新八は続ける。 「絶対に死なないでくださいね」 「……善処しよう」 そして、新八とコナンはいやがるルイズの手を引き駆け出した。 「安心しろ、とっとと貴様を殺し、すぐにあいつらも後を追わせてやる」 刃物の如き殺気と共に、斗貴子がサンライトハートを構える。彼女の姿もまた、返り血で真っ赤である。 「黙れ、『とっとと殺す』のはこちらの方だ」 隠しようのない殺気と共に吉良はキラークイーンを構えさせる。 吉良は考える。 目の前の女は自分に強烈な殺意を向けている。力の無いコナン達ではなく自分にだ。 あの絶叫から察するにあの消防車に乗せていた大切な物でも破壊されたのだろう。 吉良は知っている。この手の輩は執念深く、自分を殺すまで追ってくるだろう。 目の前の女は平穏な生活を邪魔する最も危険な存在だ。 そんな危険な存在を生かしておく訳ににはいかない。 そして何より 「貴様は、マリアさんを殺し、あろうことか彼女の美しい両手までも吹き飛ばした……」 そう、吉良もまた『マリア』と『マリアの手』という大切な物を破壊されたのだ。 それが吉良にとって一番許せない事だった。 お互いに大切な物を壊された者同士が向かい合う。 「足でまといになる奴らは追い払った。これで安心して、貴様を殺す事だけに傾注できる」 人質に取られる危険性や、殺すな、などと甘い意見をほざく可能性のある邪魔者は、もっともな意見で全員遠ざけた。 殺した事を責められたら自害したか逃がしたとでも言えばいい。 キラークイーンの力を使えば証拠すら残さず跡形も無く消し飛ばせるのだ。理由はどうとでもなる。 今、目の前の憎たらしい『仇』を殺す事になんの遠慮も躊躇も制約もない。 吉良の顔が憤怒に歪む。 「覚悟しろこのクソカスがッ! 貴様はこの吉良吉影とキラークイーンが全身全力をかけて殺す事を約束しよう!」 殺人者同士の殺し合いが、今、幕を開けた。 &color(red){【マリア@ハヤテのごとく!:死亡確認】} &color(red){【残り39人】} 【F-4 病院玄関前 1日目 日中】 【坂田銀時@銀魂】 [状態]:全身に中程度の負傷。小程度の疲労。 [装備]:蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン [道具]:支給品一式 ソードサムライX@武装錬金(攻撃に使う気はない)    あるるかん(紙状態)@からくりサーカス ハーミット・パープル(隠者の紫)のDISC(紙状態)@ジョジョの奇妙な冒険 [思考] 基本:このゲームをどうにかする 1:ラオウをどうにかする。 2:新八達と合流する。 3:神楽を探す。 4:覚悟達と合流する。 4:ジグマールを警戒 [備考] ※零のことはよく分かっていません ※あるるかんとハーミット・パープルのDISCについては説明書をほとんど読んでいません。また読む気もありません。 ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました。 ※ソードサムライX エネルギーを使う攻撃を吸収し、攻撃に転用します 制限、効果の対象となる攻撃は任せますが、少なくとも「魔法」には効果アリです 【ラオウ@北斗の拳】 [状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 [装備]無し [道具]支給品一式 [思考・状況] 1:坂田銀時と戦う。 2:ケンシロウ・勇次郎と決着をつけたい。 3:強敵を倒しながら優勝を目指す。 4:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。 【F-4 西部市街地 1日目 日中】 【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:全身に中程度の負傷。疲労小。精神的ショック。返り血で真っ赤 [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考] 基本:普段どおり平穏に過ごす。 1:目の前の女(斗貴子)を殺す 2:マーティン・ジグマールを殺す。 3:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。 4:できる限り力無き一般人を演じる。 5:もし脱出できるのであればしたい。 [備考] ※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。 ※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。 ※覚悟、ルイズ、ジグマール、劉鳳をスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません) ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手にいれました 【津村斗貴子@武装錬金】 [状態]:健康 しろがね化 精神崩壊、判断力低下(本人は極めて正常だと思っている) 返り血で真っ赤 [装備]:核鉄(サンライト・ハート) USSR AK74(30/30) 水のルビー@ゼロの使い魔 支給品一式×2(食料と水無し)  USSR AK74の予備マガジン×6 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔 キック力増強シューズ@名探偵コナン 工具一式 医療具一式 [思考・状況] 基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせる。 1:目の前の男(吉良)をとっとと殺し、逃げた奴らも殺す 2:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す 3:勇次郎、カズキを殺した者、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。 ※本編終了後、武装錬金ピリオド辺りから登場 ※上着が花山、カズキの血で滲み、顔と腕にカズキの血が付着しています。 ※消防車の中には消防服が一着あります ※消防車の水量は(100/100)です ※軍服の男(暗闇大使)は参加者の一人だと勘違いしています ※斗貴子が飲んだ液体は生命の水(アクア・ウィタエ)です また斗貴子は生命の水の事は知らず、只の治療薬の一種かと思っています ※カズキの死体は暗闇大使に掘り起こされ、今は消防車の助手席に座らされていますが、壊れたマリオネット状態です。 また暗闇大使は大首領の力を借り、ワープ能力を使いました 今後暗闇大使が介入するかは不明です ※しろがねとなったため、身体能力、治癒力が向上しています また斗貴子はまだその事に気付いていません ※核鉄の異変に気づきました 【江戸川コナン@名探偵コナン】 [状態]:健康、精神的ショック [装備]:ヌンチャク@北斗の拳 [道具]:基本支給品、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、鷲巣麻雀セット@アカギ [思考] 基本:仲間を集める。 1:マリアさんを殺した相手から逃げる 2:灰原哀、服部平次、新八の知り合い(神楽)と合流する。 3:覚悟さん達と合流 4:ゲームからの脱出 5:ジグマールを警戒 [備考] ※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。 ※自分達の世界以外の人間が連れてこられていると薄々感づきました。これから、証拠を集めて、この仮説を確認しようとしています。 ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました 【志村新八@銀魂】 [状態]:健康 疲労(中) 精神的ショック [装備]:なし [道具]:基本支給品、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた、首輪 [思考]基本:仲間を集める。 1:マリアさんを殺した相手から逃げる。 2:銀さんと神楽ちゃん、コナン君の知り合い(服部平次)と合流する. 3:覚悟君達と合流 4:杉村くんを弔う 5:ゲームからの脱出 6:ジグマールを警戒 [備考] ※川田、ヒナギク、つかさと情報交換をしました 【ルイズ@ゼロの使い魔】 [状態]:右足に銃創、中程度の疲労、強い決意、精神不安定、精神的ショック [装備]:折れた軍刀 [道具]:支給品一式×2 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?  キュルケの杖 [思考] 基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。殺人者に対する強烈な殺意 1:マリアを殺した相手から逃げる 2:覚悟達と合流 3:覚悟が戻ってきたら、スギムラを弔う [備考] ※川田、ヒナギク、つかさの情報を得ました [共通備考] ※マリアの持ち物(支給品一式、犯人追跡メガネ&発信器×3@名探偵コナン)はF-4市街地に放置してあります |129:[[大切なのはゲームのやり方]]|[[投下順>第101話~第150話]]|131:[[戦闘潮流]]| |129:[[大切なのはゲームのやり方]]|[[時系列順>第3回放送までの本編SS]]|124:[[薔薇獄乙女]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|江戸川コナン|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|&color(red){マリア}|&color(red){死亡}| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|坂田銀時|140:[[激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時]]| |119:[[吉良吉影の発見]]|吉良吉影|135:[[ありったけの憎しみを胸に]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|ルイズ|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |117:[[揺ぎ無い意思貫くように]]|志村新八|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |124:[[薔薇獄乙女]]|津村斗貴子|135:[[ありったけの憎しみを胸に]]| |120:[[拳王の夢 暴凶星の道]]|ラオウ|140:[[激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時]]| ----
**絡み合う思惑、散る命 ◆L9juq0uMuo 「ふぅ、何とか12時前には着いたか」 病院の正門に着き新八はホッと一息を着く。 だが、その顔はすぐ緊張の色に染まった。 病院の壁の一角が破壊されている。しかも破片の飛び散り具合からして内側から。 それが意味する所は、何者かが病院の内部から出てきたと言う事だ。 そして、ドアを開けずに壁を破壊したという事は何かしらの争いが起こった可能性が高い。 恐ろしい光景が新八の脳裏に浮かぶ。 「ぎ」 銀さん、と呼ぼうとして新八は慌てて口をつぐむ。 もしも襲撃者がまだこの近辺にいたら……? 言い様の無い不安が新八の頭によぎる。 (おおおお落ち着くんだ!とにかく慎重に身を隠しながら進まないと!) 明らかに動揺した様子で匍匐前進から壁を背にし壁伝いに入り口へと進み、前転をしながら入り口に突入。某潜入工作員もかくやという動きっぷりである。 「ふー、潜入成功」 「何やってんのお前」 見つかるか見つからないかのちょっとしたスリルに興奮しながら額の汗を拭う新八にかけられた言葉に新八が固まる。 ギ、ギ、ギ、と音が鳴りそうな程ぎこちない動きで前を向くとそこには銀時が立っていた。 「あれ? 銀さん……、何で?」 「何でってトイレの帰りにお前が変な事してるからよ。頭でも打ったか?」 銀時が無事だった事に内心安堵する。が、それと同時ある疑問と不安が湧いてくる。 「……ちなみにどこから見てたんです?」 「匍匐前進」 つまり、新八の奇行は最初から最後までしっかりと見られていたのである (終わったァァァァァァァァ!) 心の中で新八は絶叫した。 「……何をやっているんだあの男は」 屋上から新八の一連の奇行を見ていた吉良は溜息を一つつく。 「坂田に比べまだまともだと思ったがどうやらそうでも無かったようだな。いや、今はそんな事はどうでもいいか」 そう、それよりも吉良には大事な事があった。それは、葉隠覚悟がいなかった事である。 「どういうことだ……? 死んだか、それとも何らかの事情で別行動を取ったか……、だがどちらにせよ計画は変更せざるを得ない、か」 ルイズに仕掛けた爆弾で覚悟を殺害する計画も、当の本人がいなければ意味が無い。 当初の予定が狂った事に吉良は若干のストレスを感じた。 「まったく、ストレスなどという物とは極力縁の無い生活を送りたいというのに。とりあえずは部屋に戻り志村から事の顛末を聞くしかないな。 なに、先の争いで皆は私を信用しきっている。策ならばいくらでも練りなおせる」 自分に言い聞かせるように呟きながら吉良は屋上からマリア達のいる部屋へと向かった。 「そうですか、美形さんが……」 「私と坂田とルイズで痛めつけたが、惜しくも逃がしてしまったのはな」 吉良が屋上から降り、全員が揃った所でそれぞれに起こった事を話し合った。 美形が乗っていた事に新八は驚きを隠せなかった。 そして、新八と覚悟が遭遇した人々についても驚きを隠せない人物がいた。 「そんな、あいつが殺し合いに乗ってて、しかも覚悟と戦ったなんて……」 ルイズと覚悟が病院に来る前に遭遇した男――新八の言からラオウという名が判明した―― 三人で朝食を摂っている時はどこか近寄りがたい物を感じたものの決して好戦的な態度では無かった男がこの殺し合いに乗っていた事が、ルイズには信じられなかった。 「あー、あのキン肉マン、ラオウっていうのか。しっかしあんなのとやりあってよく生きてたもんだ」 「ん?」と、銀時とルイズは互いに顔を見合わせる。 「ギントキ、あいつの事知ってるの?」 「あ? お前もあいつにあったのか? あいつぁ意味わかんない野郎だよ、いきなり星が見えるかーとか聞いてきたから、『はい』って答えたらいきなり襲ってきてよぉ」 「私達は一緒に朝食を食べた後、ギントキと同じ事聞かれたから見てないって答えたら見逃してくれたけど」 一瞬の間。そして銀時の怒りが爆発した。 「おいぃぃぃぃぃ! 何よそれ、見てませんってのが正解ってか? そんなの解る訳ねぇぇぇぇぇだろぉぉぉぉ! 普通あんな質問されたら『はい』って答えちゃうって、常識的に考えて!」 「うるっさいわねぇ! 私に怒らないでよ! 大体見てないなら見てないって素直に言えばいいでしょ? それをあんたが嘘ついたからいけないんじゃない! 自業自得よ」 「あんな『見たことあるよね?』的な質問されてそんな事言ったらどうなるかわかんないでしょぉぉぉぉ! 銀さんはそんな危ない橋渡りたくありませんー、安全策を取りたいんですー」 「そんな事私のしった事じゃないわよ! 大体あんたはねー……」 「二人とも話が進まないので少し黙っていただけないでしょうか」 言い合いをする二人にマリアがぴしゃりと言い放つ。 笑顔を浮かべながらもどこかドス黒いオーラを放つマリアに気おされ、銀時もルイズもすごすごと引き下がる。 「とりあえず覚悟君が同行したメンバーですが、私達の他にもこの殺し合いに乗っていない集団がいるというのは心強いですね。新八君の話、そしてヒナギクさんがいる事から信用もできると思います」 その発言を聞き、新八の表情がわずかに沈む。 「どうしましたか?新八君」 「いえ、やっぱりヒナギクちゃん達を連れてきた方が良かったかなって。やっぱり知り合いに会えたら心強いっていうか、その……」 申し訳なさそうにうなだれる新八の肩にマリアは手を添える。 「そんなに申し訳なさそうな顔をしないでください、聞けばヒナギクさん達もやることがあるようですし仕方ありません。ね?」 「は、はい、ありがとうございます」 元気付けるように微笑みかけるマリアを見て、新八はその微笑に思わず見とれ、ドギマギしつつも笑みを返した。 そして、その微笑に見惚れていた人物はもう一人だけいた。 (やはり、マリアさんは美しい) 微笑みを浮かべ、新八を元気付けるマリアを見て、吉良はまるで一枚の絵画を見ているかのような気分だった。 そして、彼女のその美しい手が添えられている新八を少し羨ましく思う。 自分の肩にあの手が置かれたらどうだろうか、吉良の思考は妄想の海に埋没しかける。 (……待て、今は妄想に浸っている場合じゃあない) 妄想の世界から現実に戻り、吉良は今後の事を考える。 一番厄介な葉隠覚悟が別行動を取った今、とっととルイズを爆破し、銀時、新八を殺害しマリアの手を手に入れてもいいだろう。 その後覚悟と遭遇しても乗った人間に襲われたとでも言えばいい。 バイツァ・ダストの為に生かしておこうと考えていたコナンだが、新八の話からあちらにもコナンのように無力な一般人がいるようであり、それを利用すればここでコナンを殺しても問題無さそうだ。 寧ろ、ジグマールを逃がした一件、そして子供の割に高い洞察力から、今後の為に殺しておいた方がいいとさえ思える。 だが、今それを実行するのはリスクも高い。 一つ目は覚悟達の明確な場所がわからない事、それがわからない以上長時間単独で行動する可能性が高い。 二つ目は新八の言うラオウの存在。新八の話ではラオウは繁華街の方向に向かったという。もしかたら医療品の調達にこちらに来る可能性もあるのだ。 吉良はあの男と単独で遭遇する危険性を冒したくは無かった。 三つ目は彼らが自身と合流する前に空条承太郎と遭遇する可能性。 その時点でバイツァ・ダストが使えなくなるどころか自分の立場まで悪くなる。 吉良にとって一番の目的は『マリアの手を手に入れる事』ではなく、『平穏な生活を送る事』だ。 だから彼は当面は現状を維持する事にした。ここで信頼を作っておけば承太郎が何を言ってもそう簡単には信じては貰えないだろう。 (いざという時の為にルイズに仕掛けた爆弾も解除した。後は機会が来るのを待てばいい) 人知れずこっそりとルイズの首輪に仕掛けた爆弾を解除し、今後の方針を決めた時。二回目の放送が流れた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「どうやらケンシロウも覚悟もまだ死んではおらぬようだな」 病院へと向かう道を歩きながらラオウは呟いた。 病院と繁華街そのどちらに向かうかを決定付けた理由は葉隠覚悟と本郷猛の存在だった。 この殺し合いで負ける気などは到底ないが、消耗をしていた本郷を相手に勝ったとはいえ地に膝を着き、敢えて受けた覚悟の攻撃の威力も馬鹿にならなかった。 この殺し合い、本郷や覚悟のような実力者もまだ残っているだろう。 そのような相手と相対するのであれば、万全とはいかなくとも最善の状態で戦わねばならない。 負傷した体を少しでもよりよい状態にしておくには医療品もあった方がいい。 そう考えラオウは参加者を探すついでに医療品を回収しに病院へと歩を進めたのだった。 そして、ラオウの目に病院が見え始めた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 老人の言葉と共に、放送は病院内の彼らにとって残酷な事実を伝え終了した。 「銀さん……」 「……」 銀時は何も喋らない。うつむいたその顔からは表情は読み取れなかった。 (灰原……) コナンは一人、奥歯を噛締める。彼はまた一人、仲間を失ってしまった。 「嘘、嘘でしょ……、サイト……サイトォッ……!」 愕然とした表情でルイズはへたりこんでいる。 いつもの強気な彼女はなりを潜め、その目からは涙が溢れている。 『サイトを元の世界に戻す』結局それは叶わぬ夢となってしまった。 沈痛な面持ちの四人にいたたまれなくなりマリアは顔を伏せた。 (優勝者への褒美、か) そんな中、吉良は一人思案に耽っていた。 (死んだ人間も生き返るとなれば今まで乗らなかった人間でもこの殺し合いに参加するだろう。それはこの場の人間も例外ではない) 吉良はルイズへと視線を向ける。 (坂田や志村、そしてコナンの性格からしてもそのような褒美があった所で殺し合いに乗ることはあまり考えにくい。問題はあのルイズだ) 吉良は考える。 銀時もコナンも襲ってきた殺人者の命を助けようとすような甘ちゃんだ。そんな人間が乗るとは考えられにくい。新八についても銀時の知り合いからして同じような人間だろう。 ルイズも基本は同じだ。だが彼女の激しやすい性格から考えて、乗る可能性はこの場にいる他の人物より高くなる。 激しやすい性格というのはメンタル面で見れば脆い分類である。 更に付け加えれば、彼女のショックは他の三人より大きく見えた。恐らく才人という人物は彼女にとってそれ程までに大事な人物だったのだろう。 もしも、そんな人物が死んだとすれば……。彼女がその才人という人物を生き返らせる為に乗ってもおかしくは無い。 (首輪につけた爆弾を解除したのは早計だったか? いや、いきなり爆発しても怪しまれる可能性がある。やむなし、か) そんな事を考えながら吉良がふと外に目をやる。病院の前に筋骨隆々とした男が立っていた。 「皆、どうやら沈んでいる時間はないらしい」 吉良の発言に皆は顔を上げ吉良の視線の方向へと顔を向けた。 「あいつは……っ!」 銀時が驚愕の声を上げるのと、ルイズが自分のデイパックを担ぎ走り出したのはほぼ同時だった。 (許せない) 結論から言えばルイズは殺し合いに乗る気は無かった。 才人がキュルケやタバサを殺してまで生き返りたいとは思ってはいないだろうし、何よりその為には覚悟達を殺さなくてはいけない。 ルイズはそんな事をしたくは無かった。 だが才人の死は少なからず彼女の精神を歪ませ、激情は心を蝕む。 思えば何回彼を叱り飛ばしただろう。 思えば何回彼に助けられただろう。 思えばいつから彼に好意を抱いていただろう。 もう、好意を抱いていた彼を叱り飛ばすことも、彼に助けて貰う事もできない。 ルイズは心にぽっかりと穴があいたように感じた。 それ程までに平賀才人という人間は彼女の中で大切な存在になっていたのだ。大切な物は失った時にその重みを知る。 才人を生き返らせるという思いはない。その変わりに彼女の心に芽生えたのは殺人を犯した人間に対する強烈なまでの殺意。 (サイトを殺した奴も。誰かを殺した奴も) もしかすると新八達と分かれた後、ラオウが才人を殺したのかもしれないとルイズは思い始めた。 怒りに染まった心に疑念が渦巻く。ルイズにはここにいる自分の知らない人間すべてが才人を殺したように思い始めてきた。 (許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せ ない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない――」 気づけば考えていた事が言葉に出ていた。『許せない』という単語を呪詛のように呟きながらラオウの元へと駆ける。 「――絶対に、許さない!」 低く轟くように叫びながら、ルイズは玄関前の広場にてラオウと対峙した。 (あの小娘、怒りに我を忘れたか、誰かが死んだか?) 目の前に憤怒と憎しみの入り混じった形相で自分を睨むルイズを見てもラオウは身じろぎ一つしなかった。 「いつぞやの小娘か。このラオウ、小娘如きを傷つける拳は持ち合わせておらぬ。去ねい」 「あんたに無くても私にはあるのよ」 今にも噛み付きそうな表情でルイズは杖を構える。 「あんたは人を殺した。あんたみたいなのがいるからサイトが死んだ」 杖を握る手に力が込められる。 「だから私はあんたみたいな人殺しを絶対に許さない!」 激情を、敵意を、殺意をそのままぶつけてくるルイズをラオウは無言で見つめていた。 「よかろう」 その言葉と共にラオウの瞳に殺意が宿る。 「女子供は傷つけぬとは言え、このラオウに向かってくるのであらば容赦はせぬ。この拳王の力、身をもって知れい」 「……ッッッ!!」 ラオウの体から放たれた圧倒的なまでの覇気と殺気。 今まで経験した事のない圧力にルイズは居竦む、蛇に睨まれた蛙のように体が思うように動かない。 その構図は正に狩る者と狩られる者。それでも尚、ルイズは眼前の男を殺す事を諦めてはいないようだった。 (呪文が唱えられればこんな奴……) しかし声が出ない、口がうまくうごかない。 (サイト……ッ!) ラオウが眼前まで迫ろうかというその時、ラオウは何かに気づいたようにルイズを後方を見た。 (……え?) つられてルイズが後ろを向くとそこに元に戻った天然パーマの銀髪を風にたなびかせながら一人の男が立っていた。 「ギン、トキ」 「おいおい、いい年したおっさんがそんな女の子に襲い掛かってんじゃねーよ。ロリコンですかコノヤロー」 いつもと同じ調子で、いつもと変わらぬふてぶてしい態度で、ただしいつもは死んだ魚のようなその目だけは輝いて。 ソードサムライXを片手に銀時は立っていた。 「うぬもこの場にいたか」 獰猛な笑みを浮かべるラオウに対し、銀時はソードサムライXを構える事で答える。 その時、ルイズはふと自分の手を引かれた。新八達である。 「新八、吉良さん、三人の事は任せたぞ」 視線はラオウに向けたまま、銀時は呼びかける。 「待って!私も……」 「駄目だ」 ルイズの発言を銀時が拒否する。 「こいつはさっきの美形とは格が違う。それはお前が一番よくわかってんだろ」 「それは……」 ルイズは言い返せなかった。実際ラオウの強烈な気にあてられまともに動く事はできなかったのだから。 俯くルイズに銀時は笑みを浮かべる。 「だからここはこの銀さんに任せなさい。こんなとこで全員やられる訳にはいかねーだろ」 「ルイズさん、ここは坂田さんの言うとおりだ。俺達がいても坂田さんの足をひっぱる可能性が高いだけだ」 銀時の発言にコナンが続く。 ルイズは俯いたまま逡巡する、そして答えを出した。 「……わかったわよ!」 怒ったように叫びながら、ルイズは新八達と共に駆け出した。 「銀さん!」 「安心しろ、逃げるのは得意だ。」 その場から遠ざかりながら叫ぶ新八に銀時は手を挙げて答える。 「さて、と」 銀時とラオウが対峙し、張り詰めた空気が場を支配する。 「あー、その前に一つ言っておきたい事があんだけどよ」 銀時が頭をぽりぽりと掻きながら続ける。 「最初にあんたに北斗うんたらの脇の星を見た事あるっつったけど、あれ嘘なんだわ」 「嘘だと?」 銀時の発言にラオウは怪訝な表情を浮かべる 「そうそう、俺とあんたが会うまで俺殆どあの家の中いたからよ。つまり、俺はそんな星見てないってことだ、ノリで『はい』って言っちまったけどよ」 「ノリで、か。まったくおかしな男よ」 ラオウが目を瞑りくつくつと笑い出し、銀時もまた笑みをうかべている。 「ってわけでさ、見逃してくんない?」 「断る」 ラオウが目を開く。その目には変わらず殺気が宿っている。 「貴様のような読めぬ男と戦うもまた一興よ。このラオウ目の前の獲物を二回もむざむざと見逃す男ではないぞ」 「……だよなぁ」 銀時は相変わらず笑みを浮かべている。だが、その眼光が鋭くなった。 「一つ、聞かせろ」 ラオウが銀時に尋ねる。 「うぬは『優勝者は何でも願いを叶えられる』という褒美に興味は無いのか」 単純な興味から出た言葉であろう。それを銀時はなんでもないように答える。 「生きてても魂が折れたら死んだも同じだ。俺も、俺の知り合いも同じ意見だろうさ」 それが当然とでも言いたげに銀時が答える。 「そうか」 つくづく奇妙な男だとラオウは思った。 普段は軽薄な男だが、その実、内に一本の強い芯を持っている。 ラオウの脳裏に雲のジュウザの姿が浮かぶ。あまり自分が知らないタイプの人間だ。 だが嫌いではない。 「時間を取らせたな」 「なーに、時間を取ってくれた方が俺にはありがたいさ」 軽口を叩く銀時にラオウは不敵な笑みを浮かべる。 そして、二人は駆けた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ねぇ! どこ行くのよ!」 病院を出て、一息着きながらルイズが尋ね、マリアが答える。 「とりあえずは覚悟さん達と合流を目指します。明確な場所まではわかりませんのでほぼ手探り、という形になりますが」 「坂田が時間を稼いでくれている今、少しでも奴から遠ざかるというのも急務だな」 「ギントキ……」 銀時の名を聞いた瞬間、ルイズの顔が暗くなる。 自分があの男を相手に気おされずに、しっかり殺していれば……。 ルイズの脳裏にドス黒い後悔の念が湧き上がる。 「ルイズちゃん、そんな顔しちゃ駄目だ」 不意に新八が声をかける。 「銀さんはそんな顔をさせる為にあそこに残ったんじゃないんだ。だからそんな顔をしちゃいけない」 そうは言うものの新八の手も震えている。覚悟とラオウの戦いを目の当たりにしているのだ、ラオウの強さは嫌と言うほどわかっている。 それでも新八は弱気な態度は出さない。 「大丈夫、銀さんはせこい戦いと逃げ足には自信があるんだ。きっと生きて帰ってくるさ、今までだってそうだったんだから」 新八も不安なのだろう。だが、彼が不安になれば不安は伝播する可能性がある。だから彼は笑顔で元気付ける。 「そうね、……ありがとう新八」 「どういたしまして」 笑顔になるルイズを見てコナンは一息つく (ひとまずは大丈夫みてーだな) 不安定に見えたルイズも新八のおかげで今は平衡を保ったようだ。 コナンは思う、今はいない、灰原と毛利の事を。 夢だと思いたい、だが現実は残酷だ。そんな事はわかっている。 (死者すら甦る、か) 優勝者への褒美、それを使えば彼らも甦るだろう。だがコナンはそれを望まない。 (探偵が人殺しをしちゃならねぇ) そう、彼は目的の為ならば人の命まで奪う人殺しではない。 彼は、彼の目指す物はそのような人間や今回の主催者のような奴等を追い詰め、捕まえる探偵なのだ。 探偵に憧れ、探偵として生きてきた彼が殺し合いに乗らなかったのは当然の事である。 「ん?」 その時、コナンは道路の先に赤い点が見た。それは次第に大きくなっていくように感じられる。 「皆!何か来る!」 コナンの言葉に全員が反応しそちらを見る。 どうやらその赤い物体はこちらに向かってきているようだ、それもかなりの速度で。 (速度を落とさない? こちらの姿は見えている筈だが) 疑問が悪寒へと変わっていく。ぐんぐん近づいて尚、消防車は止まる気配を見せない。 この距離ではブレーキを踏んだ所で間に合わない。吉良の中で悪寒が確信へと変わった。 (間違いない! あの車の搭乗者は乗っている!) 「皆!左に飛べぇーっ!」 吉良の叫びとともに全員が慌てて左に飛んだ。その横を消防車が疾走する 「キラークイーン!」 左に飛びながら、吉良は運転席の扉にキラークイーンの一撃を入れる。 横からの衝撃に、消防車は横にそれ、轟音と共に電柱に激突した。 「皆!相手が出てくるかもわからない、私の近くに来るんだ!」 吉良の言葉と共に、全員が吉良の近くに向かう。 (よし、キラークイーンで運転席のドアを爆弾にした。後は襲撃者が運転席のドアに触れた時に見えないようにキラークイーンのスイッチを押せばいい) キラークイーンを待機させ、吉良は待ち構える。 「ぐぅ……」 消防車の運転手、津村斗貴子は意識を取り戻した。 失敗した。道路上の集団を見つけたのは偶然だった。 消防車は一刻も早く病院に向う為に走らせていた。そのまま彼らを轢き殺そうと思ったのは単なる思い付きだ。 だがそれは失敗した。集団にはよけられた挙句、サラリーマン風の男の体から現れた奇妙な物体に消防車を横から思い切り殴られ、そのまま電柱に激突した。 この時の傷は生命の水の効果で治癒しはじめていた。だが、斗貴子はそれに気づかなかった。それよりも最初にある物が目に入ったからだ。 助手席は電柱の直撃を受け見事にひしゃげている。電柱が消防車にめり込んでいると言ってもいい。 そして、助手席に乗っていたカズキの死体もまた、電柱に押しつぶされ、その四肢と首は壊れたマリオネットのようにひしゃげていた。 「あああああああああああああああああああああああああ!!!」 絶叫が響く。 「……る……さない……」 絶叫を止めた代わりに、ぶつぶつと斗貴子が呟く。その目は彼女の忌み嫌っていたどぶ川の濁ったような目をしていた。 許さない。 カズキを殺した人間も。 カズキを奪った人間も。 カズキを破壊した人間も。 私の前からカズキを奪おうとする全ての人間も。 ――だから、全て殺す。 愛する者の無残な姿に、不安定だった彼女の精神は崩壊した。 彼女の目にサイドミラーに映る何人かの姿が目に入った。 その中には消防車を攻撃し、カズキを破壊した人間がいた。 (殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロス――) 彼女の手にカズキの核鉄が握られる。 あの男の臓腑をぶちまけ、その首根をかっ切る事を斗貴子は心に誓う。 「武装、錬金」 その掛け声とともに核鉄がサンライトハートへと姿を変えた事に、斗貴子は驚愕する。 (どういう事だ!? 何故バルキリースカートでは無くカズキの武装錬金が……) そこまで考えて、斗貴子はその疑問を振り払った。 (いや、そんな事はどうでもいい。今は目の前の男を殺す事だけを考えろ。それにカズキの武器でカズキの仇を討つのも一興だ) 「待っていろ、カズキ」 奇妙なオブジェとなったカズキにいとおしげに微笑かける。 「あいつは必ず殺す」 微笑みを携えた顔が、一転して修羅へと変貌を遂げた。 (カズキのサンライトハートは感情を力にする) サンライトハートのエネルギーをチャージする。 (私の怒りが、私の憎しみが、奴を完全に粉砕する) 「臓物を――」 寸分たがわず狙いを付け、狭い車内でどうにか突撃の姿勢を作る。 「ぶち撒けろォォォォォッッッ」 怒号とともに、ドアを吹き飛ばしながら、斗貴子は突撃した。 「何だとっ!?」 それに驚いたのは吉良だった。爆弾に変えたドアが吹き飛ばされ、槍を持った少女が物凄い勢いで突撃してきたのだ。 (いかん! あの速度ではいくらキラークイーンでも防ぎきれない) 例えキラークイーンを使ったとしてもあの速度で突進してくる槍を防ぐの無理だろう。 絶望が吉良を襲う。 その時、吉良は誰かに突き飛ばされた。 (何!?) 突き飛ばされながら吉良が見た光景は、槍の直撃を受け、電車に飛び込んだ自殺者のように胴体が吹き飛んだマリアだった。 新たな絶望が吉良を襲った。 咄嗟の事だった。ただ漠然と助けなければと思った。気が付けば吉良の事を突き飛ばしていた。 槍が眼前に迫る。ひどくゆっくりと感じられた。 太陽の様な山吹色の光を放つ槍が、一瞬全てを燃やし尽くして尚止まらぬ黒い太陽の様に見えたのは気のせいだったろうか。 (ナギ……ハヤテくん……) 今もこの殺し合いの場のどこかにいるであろう二人の姿が最後に浮かんだ。 そして衝撃が襲い、マリアの意識は途絶えた。 「マリアさぁぁぁぁぁん!!!!」 絶叫を上げる新八達を他所に、吉良は呆然と立ち尽くしていた。返り血を浴び、赤く染まっていた。 ごろり、と吹き飛んだ生首が転がってきた。 「マリア……さん……なんて、なんて事だ……」 咄嗟に両手で前を庇ったのだろうか、吉良の恋焦がれていた両手も無残な姿になり転がっていた。 生気を失ったマリアの生首を直視した時。吉良の中で何かが切れた。 「君達」 狼狽している三人に吉良は声を掛けた。狼狽しながらもどうやらまだ人の話を聞くことぐらいはできるらしい。 激しい殺気を自分へと向ける襲撃者に構えながら吉良が告げる。 「ここは私が相手をする。君達は逃げろ」 「バ、馬鹿な事言わないで……」 「逃げろと言っているんだッッッ!」 ルイズの反論を吉良は一喝する。 突如怒声を上げた吉良に三人は息を呑んだ。 「あの女は私が狙いのようだ、そのせいでマリアさんは私を庇って死んだ。私がいては危険なんだ、だから早く行くんだ」 それでも、三人ともまだ納得はしていないようだ。彼らからみれば吉良もまた仲間なのである。目の前で仲間を失ってすぐ、仲間を見捨てるような真似はできない。 「いいか? 私たちの目的は殺し合いの破壊であって目の前の女を倒す事じゃない。ここで全滅は避けねばいけないんだ。だから早く行ってくれ。頼む」 「……わかりました」 新八が口を開いた。頷いている事からコナンも同意見のようだ。もっとも二人とも苦渋に満ちた顔であるが。 「新八!?」 「でも!」 ルイズの非難を無視し新八は続ける。 「絶対に死なないでくださいね」 「……善処しよう」 そして、新八とコナンはいやがるルイズの手を引き駆け出した。 「安心しろ、とっとと貴様を殺し、すぐにあいつらも後を追わせてやる」 刃物の如き殺気と共に、斗貴子がサンライトハートを構える。彼女の姿もまた、返り血で真っ赤である。 「黙れ、『とっとと殺す』のはこちらの方だ」 隠しようのない殺気と共に吉良はキラークイーンを構えさせる。 吉良は考える。 目の前の女は自分に強烈な殺意を向けている。力の無いコナン達ではなく自分にだ。 あの絶叫から察するにあの消防車に乗せていた大切な物でも破壊されたのだろう。 吉良は知っている。この手の輩は執念深く、自分を殺すまで追ってくるだろう。 目の前の女は平穏な生活を邪魔する最も危険な存在だ。 そんな危険な存在を生かしておく訳ににはいかない。 そして何より 「貴様は、マリアさんを殺し、あろうことか彼女の美しい両手までも吹き飛ばした……」 そう、吉良もまた『マリア』と『マリアの手』という大切な物を破壊されたのだ。 それが吉良にとって一番許せない事だった。 お互いに大切な物を壊された者同士が向かい合う。 「足でまといになる奴らは追い払った。これで安心して、貴様を殺す事だけに傾注できる」 人質に取られる危険性や、殺すな、などと甘い意見をほざく可能性のある邪魔者は、もっともな意見で全員遠ざけた。 殺した事を責められたら自害したか逃がしたとでも言えばいい。 キラークイーンの力を使えば証拠すら残さず跡形も無く消し飛ばせるのだ。理由はどうとでもなる。 今、目の前の憎たらしい『仇』を殺す事になんの遠慮も躊躇も制約もない。 吉良の顔が憤怒に歪む。 「覚悟しろこのクソカスがッ! 貴様はこの吉良吉影とキラークイーンが全身全力をかけて殺す事を約束しよう!」 殺人者同士の殺し合いが、今、幕を開けた。 &color(red){【マリア@ハヤテのごとく!:死亡確認】} &color(red){【残り39人】} 【F-4 病院玄関前 1日目 日中】 【坂田銀時@銀魂】 [状態]:全身に中程度の負傷。小程度の疲労。 [装備]:蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン [道具]:支給品一式 ソードサムライX@武装錬金(攻撃に使う気はない)    あるるかん(紙状態)@からくりサーカス ハーミット・パープル(隠者の紫)のDISC(紙状態)@ジョジョの奇妙な冒険 [思考] 基本:このゲームをどうにかする 1:ラオウをどうにかする。 2:新八達と合流する。 3:神楽を探す。 4:覚悟達と合流する。 4:ジグマールを警戒 [備考] ※零のことはよく分かっていません ※あるるかんとハーミット・パープルのDISCについては説明書をほとんど読んでいません。また読む気もありません。 ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました。 ※ソードサムライX エネルギーを使う攻撃を吸収し、攻撃に転用します 制限、効果の対象となる攻撃は任せますが、少なくとも「魔法」には効果アリです 【ラオウ@北斗の拳】 [状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 [装備]無し [道具]支給品一式 [思考・状況] 1:坂田銀時と戦う。 2:ケンシロウ・勇次郎と決着をつけたい。 3:強敵を倒しながら優勝を目指す。 4:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。 【F-4 西部市街地 1日目 日中】 【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:全身に中程度の負傷。疲労小。精神的ショック。返り血で真っ赤 [装備]:なし [道具]:支給品一式 [思考] 基本:普段どおり平穏に過ごす。 1:目の前の女(斗貴子)を殺す 2:マーティン・ジグマールを殺す。 3:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。 4:できる限り力無き一般人を演じる。 5:もし脱出できるのであればしたい。 [備考] ※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。 ※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。 ※覚悟、ルイズ、ジグマール、劉鳳をスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません) ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手にいれました 【津村斗貴子@武装錬金】 [状態]:健康 しろがね化 精神崩壊、判断力低下(本人は極めて正常だと思っている) 返り血で真っ赤 [装備]:核鉄(サンライト・ハート) USSR AK74(30/30) 水のルビー@ゼロの使い魔 支給品一式×2(食料と水無し)  USSR AK74の予備マガジン×6 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔 キック力増強シューズ@名探偵コナン 工具一式 医療具一式 [思考・状況] 基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせる。 1:目の前の男(吉良)をとっとと殺し、逃げた奴らも殺す 2:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す 3:勇次郎、カズキを殺した者、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。 ※本編終了後、武装錬金ピリオド辺りから登場 ※上着が花山、カズキの血で滲み、顔と腕にカズキの血が付着しています。 ※消防車の中には消防服が一着あります ※消防車の水量は(100/100)です ※軍服の男(暗闇大使)は参加者の一人だと勘違いしています ※斗貴子が飲んだ液体は生命の水(アクア・ウィタエ)です また斗貴子は生命の水の事は知らず、只の治療薬の一種かと思っています ※カズキの死体は暗闇大使に掘り起こされ、今は消防車の助手席に座らされていますが、壊れたマリオネット状態です。 また暗闇大使は大首領の力を借り、ワープ能力を使いました 今後暗闇大使が介入するかは不明です ※しろがねとなったため、身体能力、治癒力が向上しています また斗貴子はまだその事に気付いていません ※核鉄の異変に気づきました 【江戸川コナン@名探偵コナン】 [状態]:健康、精神的ショック [装備]:ヌンチャク@北斗の拳 [道具]:基本支給品、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、鷲巣麻雀セット@アカギ [思考] 基本:仲間を集める。 1:マリアさんを殺した相手から逃げる 2:灰原哀、服部平次、新八の知り合い(神楽)と合流する。 3:覚悟さん達と合流 4:ゲームからの脱出 5:ジグマールを警戒 [備考] ※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。 ※自分達の世界以外の人間が連れてこられていると薄々感づきました。これから、証拠を集めて、この仮説を確認しようとしています。 ※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました 【志村新八@銀魂】 [状態]:健康 疲労(中) 精神的ショック [装備]:なし [道具]:基本支給品、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた、首輪 [思考]基本:仲間を集める。 1:マリアさんを殺した相手から逃げる。 2:銀さんと神楽ちゃん、コナン君の知り合い(服部平次)と合流する. 3:覚悟君達と合流 4:杉村くんを弔う 5:ゲームからの脱出 6:ジグマールを警戒 [備考] ※川田、ヒナギク、つかさと情報交換をしました 【ルイズ@ゼロの使い魔】 [状態]:右足に銃創、中程度の疲労、強い決意、精神不安定、精神的ショック [装備]:折れた軍刀 [道具]:支給品一式×2 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?  キュルケの杖 [思考] 基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。殺人者に対する強烈な殺意 1:マリアを殺した相手から逃げる 2:覚悟達と合流 3:覚悟が戻ってきたら、スギムラを弔う [備考] ※川田、ヒナギク、つかさの情報を得ました [共通備考] ※マリアの持ち物(支給品一式、犯人追跡メガネ&発信器×3@名探偵コナン)はF-4市街地に放置してあります |129:[[大切なのはゲームのやり方]]|[[投下順>第101話~第150話]]|131:[[戦闘潮流]]| |129:[[大切なのはゲームのやり方]]|[[時系列順>第3回放送までの本編SS]]|124:[[絶対負けるもんか]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|江戸川コナン|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|&color(red){マリア}|&color(red){死亡}| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|坂田銀時|140:[[激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時]]| |119:[[吉良吉影の発見]]|吉良吉影|135:[[ありったけの憎しみを胸に]]| |100:[[気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい]]|ルイズ|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |117:[[揺ぎ無い意思貫くように]]|志村新八|147:[[必要なのは助けてくれる人]]| |124:[[薔薇獄乙女]]|津村斗貴子|135:[[ありったけの憎しみを胸に]]| |120:[[拳王の夢 暴凶星の道]]|ラオウ|140:[[激突! ラオウ対範馬勇次郎!!        ……特別ゲスト坂田銀時]]| ----

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