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燃える決意――Resolution――」(2008/08/15 (金) 17:27:22) の最新版変更点

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**燃える決意――Resolution――  ◆3OcZUGDYUo 太陽が沈みかけ、ほのかに映える橙の色彩が空一面に、これでもかというくらいに広がっている。 橙の大空の下には、それと同じようにどこまでも広がる黒々とした力強い大地。 所々に緑の草木が生い茂っている事が、その大地の力強さをひっそりと印象付ける。 橙と黒と緑の協調によって描かれたこのエリアD-3。 そんなエリアD-3というキャンパスに銀という、異色ともいえる色が混じっていた。 その色の正体は、短く、それでいて丁寧に整えられた銀一色の髪。 そして強い意志を秘め、髪と同じ鋭い光沢を放つ銀色の両眼。 人形破壊者(しろがね)の名を持つ、才賀エレオノールだった。 「たしかこの辺りだったな……ギイ先生のオリンピアは」 透き通るような白い体躯に、ピエロのメイクをしたエレオノール。 しろがねの逸脱した身体能力のかいもあって、疲弊した身体でありながら彼女は一時の休憩も挟まずに走り続けている。 エレオノールは先刻の愚地独歩との闘いで失ったオリンピアを探すために再び、この地へ戻って来ていた。 全ての懸糸を断ち切られ、最早懸糸傀儡としての価値は見出せないオリンピア。 だがオリンピアの本来の操り手であって、“オリンピアの恋人”と称されるギイ・クリストフ・レッシュ。 エレオノールにとってギイは人形繰りの先生でもあり、まるで実の兄のように慕う人物。 そんなギイのオリンピアをエレオノールはある理由を持って探していた。 「あった……」 遂に力なく横たわっていたオリンピアを見つけ、エレオノールは口を開く。 だが、その声には嬉しさと悲しさが入り混じった複雑な感情が見え隠れする。 愚地独歩との激闘によって、無残な状態となったオリンピアを発見すれば、エレオノールがそう思うのも無理はない。 所々に独歩の剛力によってつくられた不自然なおうとつが一際印象深いオリンピア。 そのオリンピアの身体をエレオノールは抱き上げ、顔を覗き込む。 「申し訳ございませんギイ先生……私が未熟なばかりに……」 オリンピアの頭部をその成熟した身体でエレオノールは優しく包み込む。 まるで己の可愛い赤子に慈愛を持って接する母親のように。 そんなエレオノールの暖かい胸の中に抱かれたオリンピア。 だが、懸糸を根こそぎ切断されたオリンピアはもう優雅に舞う事は出来ない。 その事実がどうしようもなくエレオノールの心に不規則な、不快な波を立てる。 この不快な気持ちを落ち着かせるには、もう少しこのままオリンピアを抱き続けたいとエレオノールは切に思う。 だがいつまでもこの場に踏み止まるわけにはいかない。 同じ場所に留まり続けるという事は、銃や重火器で狙撃される可能性もある。 みすみすやられるつもりもなく、逃げる気もないがわざわざ不利な状況で闘うつもりも当然ない。 範馬刃牙、愚地独歩との闘いで少なからず疲弊した身体を休めようという考えもあったので尚更だ。 「ですが貴方のオリンピアはもうこれ以上傷つけさせません……絶対に!」 今はこの場に居ないギイに対して誓いをたて、エレオノールはオリンピアから一旦手を放す。 後ろに振り向き、両腕でオリンピアの身体を抱え、おんぶの状態でそれを持ち上げる格好となる。 支給品である何の特徴もない簡素な地図を、デイパックから取り出し片手を使い、折り畳まれたそれを開く。 目的は己の身体を休ませる事ができ、オリンピアをこれ以上傷つけさせないために隠す事が出来る場所。 地図からお目当ての場所を見つけた彼女はそれを片手で器用に折り畳み、デイパックに戻す。 その動作が終わった瞬間。 既に彼女はそのしなやかな身体をもって、全力で駆け出していた。 その速度は見る者に驚嘆を与える程に速い。 そう。畏怖させる程の速さで何処へ駆けて行く。 只、ひとえに己の目的の為に。 ◇  ◆  ◇ 鉄筋によって構築された建物がエレオノールの視界に映り、徐々にその大きさは増していく。 やがてエレオノールはその建物の入り口の前に立ち止まり、それのドアに備え付けられた取っ手を握る。 ドアを開け、忍び足で薄暗い部屋に侵入し、周囲に気配がない事を確認。 その後、すぐ傍に設置された蛍光灯のスイッチに手を伸ばす。 次第に明るさが灯っていくのを、エレオノールは少し眩しく思いながらも実感した。 「よし。此処で間違いないハズだ……エリアD-4、消防署は」 自分が居る部屋のすぐ横にガレージがあり、更に一台の消防車が停車されていたので確信は強まった。 また不自然に空いたスペースからもう一台何かが停まっていた事が推測できる。 他の誰かが乗っていったのだろうか? そう思考にふけるエレオノールだったが、どの道自分には関係ない事だと考え、自分が休憩できる部屋を探し始めた。 だが、この消防署に人物が潜んでいるかは勿論、今のエレオノールにはわからない。 そのため周囲への警戒を一層強めながら、エレオノールは探索を続ける。 「仮眠室か。この部屋ならいうことなしだな」 やがてエレオノールの鋭い両眼は“仮眠室”と記された白いプレートを捕らえた。 消防署に侵入した時と同じように、警戒を行いながらドアを開き、室内に片足を踏み入れる。 その部屋は奇しくも、エレオノールと同じくしろがねとなった少女、津村斗貴子が身体を休めた場所。 ただしエレオノールとは違い、愛する者のために、彼女は狂気のしろがねとなった。 当然その事を知る由もないエレオノールは視界に入った椅子に近づく。 「ふぅ……さすがにオリンピアを運んで走るのは少し疲れたか」 今まで背中に担いでいたオリンピアを、そっと椅子に座らせながらエレオノールは口を開く。 人間の血液を動力源とし、稼動する限りそれを求め続け、人を襲う自動人形。 自動人形を根絶するために、様々な武器や仕掛けが施され、しろがねが操る懸糸傀儡。 その為懸糸傀儡の重量は決して軽いものではない。 幾らしろがねの怪力と体力があるといってもそんなオリンピアを担ぎ、全力で走れば疲労するのは当たり前だ。 「だが、何か身体の調子がおかしい……これ程までに疲労が溜まってしまうとは」 首輪の力によってしろがねの身体能力に制限が懸けられていた為、エレオノールは傍にあったベッドに倒れこむ。 今まで色々な事を経験したエレオノールは心身ともに疲れきっていた。 「あの二人は今どうしているのだろうか……?」 そんな時ふとエレオノールは小さな声で呟く。 己を綾崎ハヤテと偽り、一時は行動を共にし、自分が捜し続けていた才賀勝。 そしてその生き方に感銘を受け、一時は憧れの存在となったが、不信感が漂う加藤鳴海。 この二人の言動が、そして存在が特にエレオノールの脳裏に焼きついていた。 「いや、私は決めたハズだ……この殺し合いに勝ち残り、人間になると……」 だが、エレオノールは人間になるためこの殺し合いに乗った事を既に決めている。 ならば彼らは自分の障害にしかならない。 そう考え、彼らの存在を消すかのように頭を左右に振り、支給された時計をデイパックから取り出す。 未だ定時放送までの時間は少なからずある事を確認し、エレオノールは少し睡眠を取る事を決意する。 “殺し合いに勝ち残り、人間になる”。 この言葉を言った時、何か忘れているのでないかとエレオノールは思わず感じた。 その疑問への答えが出る間もなくエレオノールの意識は段々と深い闇に沈んでいき、やがて沈みきる。 エレオノールの疲労は自身が感じていたそれよりも大きかったに違いない。 ◇  ◆  ◇ 何も色を帯びていない白一色でひしめく世界。 どことなく得体の知れない世界でエレオノールは一人、立っていた。 また今のエレオノールはピエロのメイクはしておらず、勿論衣装も着ていない。 この殺し合いに連れて来られる直前に着ていた、ノースリーブの上着。 そしてなんの変哲もない長ズボンとブーツといった格好だ。 自分は何処にいるのだろう?そう思い彼女はキョロキョロと辺りを見回す。 そんな時、エレオノールは一人の人物が自分の方を見ているのに気付き、その姿を見て驚く。 何故ならその人物がエレオノールにとって、とても馴染み深い人物だったからだ。 モデルのように細く洗練され、純白ともいえる程白い体躯と甘いフェイス。 更にその毛髪と両眼はエレオノールと同じ銀色の光沢を放つ人物。 「久しぶりだなエレオノール」 そう。その声の主はギイ・クリストフ・レッシュであった。 予期せぬギイとの対面に驚くエレオノールだったが、彼にはさして驚く様子は見受けられない。 只、己の長いコートのポケットに両手をつっこみ、口を開いているだけだ。 「ギイ先生……」 この殺し合いに呼び出され、初めて信頼できる人物と巡り会えた事をエレオノールは素直に嬉しく思う。 だが、エレオノールの口からはそれ以上の言葉は一向に出てこようとはしない。 嬉しさのあまり、言葉が喉の奥で詰まってしまったのだろうか? いや、それならばエレオノールが浮かべている、どこか不安そうな表情について説明できない。 そう。エレオノールはいいようのない不安に駆られていた。 「なぜそんな悲しそうな顔をなさるのですか……ギイ先生……?」 何故ならエレオノールを見つめるギイの表情はいつものように優しいものではない。 その表情はどことなく悲しさを漂わせていた。 ギイの目の前に立ち尽くすエレオノールは、何故彼がそんな顔をするのか皆目見当が付かない。 不可解な不安を抱えながらも、ようやくエレオノールは口を開く事が出来たというわけだ。 「エレオノール、君は何のために闘っている?」 ふいに告げられたギイのエレオノールへの質問。 その質問の意図を理解しようとエレオノールは暫し思考を巡らせる。 だが、一向に彼の意図をエレオノールには理解できない。 「……この殺し合いに勝ち残り、人間になるためです」 そのため、一瞬の間を置き、エレオノールは正直に自分の考えをギイへ示す。 現時点で自分が人間になるために、険しい道ではあるが、最も道筋がハッキリとしている方法。 だが、何かを忘れているような気を以前から感じていて、エレオノールの口調はあまり威勢のいいものではない。 そんなエレオノールの様子を見て、ギイは溜息をつく。 「なるほど、最後の一人になればどんな願いでも叶えられる権利というやつか。 だが、エレオノール……君には見落としていることがある」 冷たい声でギイがエレオノールに向ってそう言い放つ。 彼の言葉にエレオノールの身体が一瞬の震えを起こす。 いつも全てを見透かしたような瞳で自分に話しかけるギイ そんなギイに面と向ってこんな事を言われたら、エレオノールが動揺するのは無理もない。 「君にはあのトクガワという人物が信頼に値する者かどうか判断できるのか? 君がもし勝ち残ってもあの男が約束を守るとは限らないだろう?」 「それは……」 ギイの口から出された質問に対し、エレオノールは返答に詰まる。 何故ならギイの質問は至極まともな事であり、尚且つ重要な事だからだ。 確かにギイの言う通り、もし生き残る事が出来ても、優勝の権利が貰えなければ何の意味もない。 しかもあの徳川光成という老人は有無を言わさずに、こんな馬鹿げた殺し合いを引き起こした人物。 本当に信用できるのかと訊かれ、エレオノールが自信をもって肯定できるハズもない。 「どうなんだエレオノール? 君はこんな不確かなゲームに乗る事に価値が見出せるのか!?」 少し口調が強まったギイの言葉がエレオノールの胸に突き刺さる。 自分の正当性を証明するために何か言い返したい。 そんな事を必死に考えるエレオノール。 「そ!それでも……私は……私は人間に……人間になりたいのです!」 だが所詮、光成が信用出来るかどうかの確信が得られていないエレオノールに強く反論する事など無理な話だ。 だからエレオノールには精々、自分の望みを必死に口に出す事くらいしか出来ない。 幼き頃から自動人形を倒すために送った、道具のような日々。 来る日も来る日も人間になるために、願い続けてきた日々。 最早人間になるという目的はエレオノールにとって、絶対に諦める事は出来ない願望だからだ。 そんなエレオノールの様子を観察し、ギイは先刻よりも更に大きな溜息をつく。 「そうか……ならば、僕は君を止めはしない。僕にとって君はどんなコトよりも優先するべき存在だからな。 君がしたいようにすればいい……僕はそれで満足だ」 そう言ってギイは踵を返し、エレオノールに対して背を向けて歩き出す。 後ろを向いたギイの華奢な背中は、エレオノールにもう用はないと言っているかのように彼女は感じた。 一歩一歩、全く後ろを振り返らずに先を進んでいくギイ。 「ギイ先生……」 そんなギイのあまりにそっけない態度に、エレオノールは弱弱しく片手を伸ばす。 だが、エレオノールのか細い小声を聞いても、彼女の片手とギイの距離は広がり続ける。 明らかに満足していない様子で自分から離れていくギイ。 己の先生に嫌われてしまったのかと思うと、次第にエレオノールの表情に悲しみの火が灯る。 「ああそうだ、言い忘れてたコトがあったな……」 そんな時、ギイはふと歩みを止め、エレオノールの方へ向き直る。 ギイが立ち止まり、顔すらも向けてくれた事に嬉しさで満ち溢れるエレオノール。 自分にどんな優しい言葉を掛けてくれるのだろうか? また昔のように優しく自分の頭を撫でてくれるのだろうか? 様々な期待がエレオノールの心に押し寄せていく。 だがギイはそれ以上エレオノールの方へは近寄らず、その場で立ち止まるだけに留まった。 「エレオノール、加藤ナルミ……ナルミと出会い、そして闘え。きっとナルミは君に教えてくれるハズだ」 「なっ!……なぜ先生がカトウのコトを!? それにあの男が私に何を教えてくれるというのですか!?」 突然ギイの口から予想も出来ない名前、加藤鳴海が出てきた事に驚きの表情を見せる。 自分の先生であるギイと、日本人であるという事しか知らない鳴海。 この二人の数奇な関係など今のエレオノールにはわかるハズもなく、只、彼女の思考は乱れるばかりだ。 そしてそれ以上に理解不能な事は、鳴海が自分に何かを教えてくれるとギイが言った事。 紛れもない動揺を見せるエレオノールを見つめるギイは、彼女にそれ以上近づこうとはしない。 「“シェイクスピア曰く……この世は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ”という言葉がある」 そう言ってギイはゆっくりとエレオノールに近づく。 依然、ギイの言葉の真意を探ろうとし、困惑の表情を浮かべるエレオノール。 そんなエレオノールの目と鼻の先に、ギイは歩を進める。 そして昔やったようにエレオノールの頭を優しく撫でるギイに対し、エレオールの表情は緩む。 「才賀マサル……マサルも最後まで彼が守りたいものために命をかけた。彼は自分が命をかける舞台を見つけ、 自分の役を最後まで演じきったのさ。そしてナルミもまた、彼の舞台で自分の役を演じている……」 エレオノールの頭を撫でる手の動きを止め、ギイが言葉を続ける。 今度は才賀勝の名がギイの口から出てきた事に、再びエレオノールは驚き、顔を上げた。 何故己の名を綾崎ハヤテと偽っていた、勝の事までもギイは知っているのか? そしてギイが彼らの事を話し、自分に何を伝えたいのか? 「エレオノール、君にも当然ナルミやマサルのように、命をかける君だけの舞台がある。だが、君はその舞台が未だわかってはいない……。 だからナルミに教えてもらえ、君の命をかける舞台をな」 その疑問を口に出す前に、ギイの言葉がエレオノールの鼓膜に響く。 ギイが言った言葉の意味についてひたすら考えるエレオノール。 だが、依然思考の歯車が完全には噛み合おうとはしない。 何故加藤鳴海なのかがエレオノールには全くわからない。 「僕の話はこれでおしまいだ。できるものならば僕は君の手助けをしたい。だが……君達の居る舞台に僕の役は、 今のところ割り振られてはいないのさ。残念ながらね……」 そう言うや否や、ギイの身体が宙に浮き、エレオノールと離れていく。 浮遊しながら自分と離れていくギイを必死に追いかけるエレオノールだが、彼女の手は彼には届かない。 そんな非情な現実にエレオノールの瞳には涙さえも溢れようとしている。 だが、ギイはエレオノールの元に戻ろうとはしない。 「幸せにおなり――――エレオノール」 たった一つの言葉を残してギイの身体はエレオノールの視界から消えていった。 ◇  ◆  ◇ エリアD-4、消防署内の仮眠室。 簡素な造りで備え付けられた白色のドア。 そのドアが突如、荒々しく開かれる。 備品を後の者のために、丁寧に扱おうという気持ちは微塵にも感じさせない開け方。 そんな開け方をして、一人の男が仮眠室にその片足を踏み入れる。 芸術品ともいえる程、隆々とした筋肉で構築された体躯。 燃えるような真っ赤な色彩を放つ毛髪。 そして燃え滾るほど熱い闘争心を持ち、周囲の存在から“オーガ”と称される男。 「さて、放送とやらまでの間ここでヒマを潰すとするか」 範馬勇次郎がそう呟きながら、部屋の隅に置かれたベッドにその屈強な身体を投げ込む。 勇次郎の重量のせいで、悲痛な音色を軋ませるベッド。 だが、その事を勇次郎は考えていたせいか、ベッドが壊れる事はなかった。 勇次郎は参加者を集めるために花火を打ち上げる場所を、この殺し合いで呼びされた始めの地である消防署に決めていた。 その理由は単純で明快。 只、この殺し合いの会場の中心であるからという理由だけだ。 放送を聴くために周囲に耳を傾けた参加者を集めるために、放送が終わった後に花火を打ち上げる。 数分前に決めたこの目的のために、どうせやる事もないので今は身体を休めておこうと勇次郎は考えていた 「ン? 惜しいコトをしたな……もうすこし速く着いていれば楽しめたかもしれねぇなァ」 そんな時、勇次郎はふと鼻で周囲の匂いを嗅ぎ始め、その正体をつきとめる。 勇次郎の視線の先にはベッドに備え付けられた硬い枕に、うっすりと付いたシミ。 鍛え抜かれた嗅覚で勇次郎は数分前、別の参加者が此処で休憩を取っていた事に気付く。 更に辺りを見回してみれば、洗面所には未だ水滴が付着している事もわかったので確信は強まる。 その匂いからして女性であるということがわかったが、闘争を何よりも好む勇次郎は落胆せずにはいられなかった。 「まァしかたねぇな、なーにエモノはまだまだ居るハズだ。後で食ってやるぜ……鳴海と一緒になァ!」 勇次郎にとっても加藤鳴海は興味深い存在だった。 勝という少年の死を乗り越えて、再び自分の前に立ちはだかるか? それとも乗り越える事は出来ずに、無様に死んでいくのか? 色々と興味は沸いたが、勇次郎は鳴海の事を後回しにする事に決めた。 既に花山薫、範馬刃牙、ラオウ、坂田銀時、ケンシロウ、DIO、鳴海という実力者と拳を交えた勇次郎。 だが、勇次郎はもっと希望に胸を躍らせていた。 他にもきっと自分を楽しませてくれる実力者が居るに違いない。 そう。彼は別の参加者の味を知りたかった為、既に拳を交えた鳴海を後回しにしたという事だ。 「さーて、なにがくるか……楽しみなコトだな」 勇次郎はひたすらに闘争心という牙を磨く。 彼の至福の時が来る、その時まで。 ◇  ◆  ◇ 一台の消防車が北上している。 その消防車の助手席にはオリンピアが、整然と座る。 そして運転席でハンドルを握り、アクセルを踏んでいる運転手が一人。 そう。言うまでもなく才賀エレオノールだ。 「まさかあんな夢をみてしまうとは……しかしあれは夢だ。疲労のあまりあんな幻想を見てしまっただけかもしれない」 今の彼女はピエロのメイクもしておらず、私服を着ている。 そもそも才賀勝を守るために必要な変装だったので、最早意味などないからだ。 そんなエレオノールは夢の中でギイが言っていた事を思い出していた。 いくら考えても読む事ができないギイの真意。 だがたとえギイが言っていたとしても、所詮現実の世界ではなく夢の世界で言われた事。 その夢の内容をエレオノールはそこまで気にかけてはいなかった。 しかしエレオノールの脳裏にはある一人の人物の存在が以前よりもハッキリと焼きついていた。 「カトウナルミ……確かに私にはあの男ともう一度会わなければならない理由はある」 夢の中で鳴海の事を聞かされたエレオノールには、その話の真偽はともかく、鳴海への興味が沸いた。 それに鳴海がわざわざ刃牙に核鉄を与え、自分から逃げやすい状況をつくった事実についても真相を確かめていない。 刃牙に不快な声で捲し上げられ、冷静に考えれば短絡的だったと思えるあの時の自分の思考。 エレオノールの逆上しやすい性格が関与して、鳴海の真意を理解する猶予を与えなかった事で決めた自分の方針。 だがエレオノールはその方針を曲げるつもりはなかった。 エレオノールにとってやはり人間になる事はあまりにも魅力的な褒美だからだ。 たとえ本当にその褒美が貰えるのかわからずとも、その希望に縋りついていたかったから。 そのためにエレオノールは全ての心残りを絶つ事に決めた。 「カトウ……決着をつけるぞ。私にとってもお前にとってもそれで全てがわかるハズだ。 私達の進む道は別れてしまったというコトを……」 そう。この殺し合いで知り合った鳴海との決着をつける事だ。 正直自分にはあの拳法のようなものを操る鳴海と真正面からぶつかれば勝機は低い。 だが、自分にはサーカスで鍛えた身軽さがある。 一瞬の隙をつき、しろがねの力で繰り出す手刀なりなんなりを急所に叩き込めば、自分にも勝機はある。 そう自分を奮い立たせ、ハンドルを握る腕に力を込め、アクセルを更に強く踏み込む。 目的はかって行動を共にしていた時、待ち合わせの場所に決めていた喫茶店。 恐らく鳴海が居ると思われる場所にエレオノールは消防車を向ける。 冷静に考えれば、武器もないこの状況で鳴海と闘うのは無謀ともいえるエレオノールの行動。 そんな行動を起こしたエレオノールの意識には今もなお、深く根付いた言葉があった。 “命をかける君だけの舞台がある” 夢の中でギイが言ったこの言葉、この言葉だけはエレオノールの脳を揺らし続けていた。 【D-3とD-4の境界/一日目 夕方】 【才賀エレオノール@からくりサーカス】 [状態]:健康、消防車で移動中 [装備]:なし [道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式 [思考・状況] 基本:殺し合いに優勝し、人間になる。 1:人形以上に強力な武器が欲しい。 2:ナルミと会い、闘うために喫茶店へ向う 3:私の命をかける舞台とは一体……? [備考] ※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。 ※オリンピアは懸糸の切れた状態で消防車の助手席に座っています。 ※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。 ※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです ※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。 ※メイクは落としました 【D-4 消防署内、仮眠室/一日目 夕方】 【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】 [状態]闘争に餓えている 左腕切断(アクア・ウィタエの効果により自己治癒中) [装備]ライター [道具]支給品一式、打ち上げ花火2発 [思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す 1:戦うに値する参加者を捜す 2:首輪を外したい 3:第三回放送が終わった後、花火を打ち上げる 4:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求 [備考] ※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。 ※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。 ※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取しました。身体にどれ程の影響を与えるかは後の書き手さんに任せます。 |167:[[ラオウ敗れる]]|[[投下順>第151話~第200話]]|169:[[ホワイトスネイク-介入者]]| |167:[[ラオウ敗れる]]|[[時系列順>第3回放送までの本編SS]]|169:[[ホワイトスネイク-介入者]]| |158:[[一瞬のからくりサーカス]]|才賀エレオノール|180:[[真夜中のサーカス]]| |160:[[繋がれざる鬼(アンチェイン)]]|範馬勇次郎|181:[[贈り物]]| ----

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