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「天の道を往き、拳の王となる者」(2008/08/16 (土) 00:20:00) の最新版変更点
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**天の道を往き、拳の王となる者 ◆WXWUmT8KJE
満天の星が瞬き、闇の中に僅かな光を月と共に送る。
人に光を与えんと瞬く星のもと、コンクリートで舗装された道路が照らされていた。
吹き荒れる冷たい風の中、転がるものはゴミしか存在しない。
道路の周囲にある団地群から考えれば、本来ならこの時間は帰宅に急ぐサラリーマンがチラホラいるであろう。
それはこの殺し合いが行われている現在では無意味な事実。
バダンに用意された舞台では参加者を追い詰め、精神に異常をきたすため以外に存在価値はない。
孤独は人を狂わせる。
ショッカーから続く悪の組織はその事を熟知している。
ゆえに、この舞台の広さに、たった六十人しか存在させないのはバダンにとっても好都合だった。
殺し合い、人数を減らす。
誰もバダンがそのような事をするのは分からない。
もしかしたら、進行役となっているものにも、分からないのかもしれない。
大首領とは、バダンの一員にとっても恐れ多いもの。
おいそれと真意を計ることは出来ない。
まさに、バダンにとっての天。
しかし、天を目指さんと道を往く漢が月の光の下に現れた。
漢、筋骨隆々。短く刈り上げた金髪を持ち、威厳溢れる眼差しで全てを射抜く。
弱きものが見れば、闘気で陽炎のようなものを漢の背中から見たのかもしれない。
また、別の弱きものが見れば、あまりの巨大な影を錯覚し、地響きを感じたのかもしれない。
その威圧感に押しつぶされ、地に伏したのかもしれない。
一言で言うなら、圧巻。
おそらく、この殺し合いに連れてこられた参加者の半分程度なら、目の前に立つだけで勝利を得ることが出来る。
もっとも、漢にそんなものは興味はない。
もともと彼が存在していた世界は、核の炎に全てが焼かれ、力が全てとなった。
その世界、彼にとってはまさに望んだとおりの世界だ。
この殺し合いも同じ。
ただ己の拳を信じ、己が覇道を信じ、己が戦いを信じ、歩んできた。
だからこそ、立ちはだかるもの全てを砕いてきた。
元いた世界で、天の道を往くために父であり、師であるリュウケンを自らの手で殺した。
愛を持って挑むレイを秘孔新血愁を突き、苦しんで死ぬ役目を与えた。
コウリュウをケンシロウとの戦いで得た傷の癒え具合を試すためだけに、その剛拳で葬った。
病んでいる弟、トキと激突し、弱りきったその姿に人として最後の涙を流しきった。
黒王号すらも背に跨らせたほどの漢、雲のジュウザを下し、山のフドウに恐怖を覚え、それでも天への道を諦めたことはない。
突き進み、邪魔するものを砕く。たとえ邪魔するものが、無二の弟であったとしても。
今までそうしてきた。これからもそうするつもりだ。
一歩、ラオウが足を踏み出す。
月光に照らし出されたその瞳に、最大の障害と判断した、弟のケンシロウ。
そして、最大の敵と認めた範馬勇次郎。
自分に立ちふさがるにふさわしい葉隠覚悟。
まだ見ぬ強敵を映しながら。
□
大通りを堂々と歩くのは、ある種ラオウの自信の表れだった。
奇襲するなら好きにしろ、その程度では死にはしない。
口には出さないが、ラオウの威圧感と、圧倒的な強さがそう示している。
大またで道を往くラオウが、ふと足を止める。
本郷の蹴りが突き刺さった、いまだ痛む脇腹へと手を当てた。
あの者は強かった。素直にラオウはそう思う。
鍛え抜かれた身体から生み出す、脅威的な怪力。そのスピード。多彩な技。森林である地の利を活かそうとした冷静な判断力。
何より、その凄まじい信念がラオウの心に焼き付いている。
死をも辞さない一撃。信念とともに、本郷はラオウの心に一生生き続ける。
生涯の強敵(とも)の一人として。
その強敵も本郷だけではない。
坂田銀時、彼もまたラオウの心に焼き付いている。
死兆星を見たと答えたのは、ノリだと答えたつかみ所のない男。
雲のジュウザを重ねるほど、ラオウにとっては理解しがたい、不思議な男であった。
その剣術はみごとの一言に尽きる。
ラオウと戦い、その間合いを利用して拳王に攻める隙を与えなかった。
何より、勇次郎の腕を奪ったあの奇襲。
もし、標的が自分であったなら、腕が切られたのは勇次郎でなくラオウであっただろう。
そう思えるほど速く、美しい銀の輝きだった。
そして、その戦いのさなか、再会を果たした男範馬勇次郎。
もっとも、最初の場所で楽しめそうな相手と見初められ、ラオウ自身は最大の障害の一つと認識したにすぎない。
お互いに激突は避けられず、また避ける気もなかった。
熾烈といえるその戦い。
本郷と負けないくらいの激戦を勇次郎と繰り広げた。
銀時の奇襲がなければ、地に伏したのは己だったかもしれないと、珍しく思う。
そこまでの思考を、凶暴な笑みで否定する。
次に会えば、完膚なきまで叩きのめす。
そのための北斗神拳。そのための拳王。
勇次郎の高笑いが、ラオウの耳に蘇り、いっそう強く地面を踏む。
あの男は生きている。
あの男はまた自分と戦う。
再会は命を懸けたやり取りとなるであろう。
それが、待ち遠しくてたまらない自分がいる。
そのことにフッと笑って、自分に自嘲する。
自分が心を躍らせるほどの強敵。
そのものと出会えたことだけは、光成に感謝してもいいかもしれない。
しかし、その思考も数秒。
修羅として歩む拳王は脇腹より手を外し、またも歩みを進める。
□
道を行きながら、ラオウはケンシロウが地下で北斗神拳究極奥義、無想転生を使った事実を思い出していた。
自分と対等に渡り合える実力……いや、奥義を使える分、ケンシロウが上をいっているかもしれない。
もっとも、ラオウはそんな考えは己のプライドで粉砕する。
弟であるケンシロウが自分よりも上を行くなど、認められるはずがない。
むしろ、ケンシロウでさえ身につけた奥義、ラオウのものにしてくれようと更に闘志を煮えたぎらせる。
静かに目を瞑り、ケンシロウにあり、ラオウにないものは何か、考える。
愛…………先ほどのトキとのやり取り。まるで、トキはラオウに足りないものは愛だと言いたげだった。
確かにケンシロウなら愛に満ちているだろう。
暴力が支配する世界で、無力な人間を救うために北斗神拳を振るっていた稀有な男。それがケンシロウだ。
ラオウは今まで、そんなケンシロウを脆弱だと思っていた。
だが、結果はどうだろう?
ケンシロウは北斗神拳の究極奥義を身につけ、拳王に迫るほどの力を得た。
そして、本郷に銀時。
彼らもまた、ケンシロウと同じく愛を持って拳王に、勇次郎に傷を与えた。
彼らに愛があったかと尋ねられれば、拳王はあったと答えるであろう。
おそらく、残された者も。
その愛が、本郷のライダーキックに力を与えたのだろうか?
その愛が、銀時に勇次郎の腕を斬りおとすほどの動きを見せたのだろうか?
なら、二人にそれだけの力を与えた愛とはいったいなんだろうか?
ラオウの疑問に月は答えない。
今まではその答えを必要ともしていなかった。
天を目指す覇者に愛はいらない。必要なのは力のみ。
そう考えていたからだ。
今でもその考えは間違っていないと信じているが、一つの疑問が生まれたのだ。
力を得るために、愛は必要か。
その迷いが、トキに指摘された。
しかし、迷いを振り払ったのは、愛ではない。
溢れるほどの獣性、勇次郎の不遜な闘気が幻影を振り払った。
ラオウには勇次郎が愛によって強くなったようには見えない。
むしろその逆、愛を持って強くなるものを餌に、己を練り上げていったように見える。
実際そうなのだろう。あの勇次郎に愛など見受けられない。
そして、赤木。
ケンシロウたちを逃がすために拳王に立ち向かった男。
それは愛などではないと彼は言い切った。
確かに、思い返してみればあの男は正義感、慈愛、優しさ、ケンシロウや本郷が持つ雰囲気全てに当てはまらない。
感じたのは、狂気。
赤木はこの殺し合いに乗せられるのを良しとしない。
ただそれだけで、ラオウへと立ち向かったのだ。
狂気の沙汰といってもいい。
だからか。愛を持たず、強く存在する赤木をラオウが気になる理由は。
強さに愛はいらぬ。
その一言こそ、ラオウは待っていたのかもしれない。
だからこそ……
「ケンシロウよ、うぬが愛を持って拳王に立ちふさがるのなら、この拳で打ち砕いてみせる。
愛などいらぬ。ただ覇道へと向かい、拳をまじあわせるものが強敵(とも)でよい」
愛への興味を己がプライドで隠したラオウの呟きが天に飲み込まれる。
彼の歩みは、ケンシロウを追ってS3駅へと向けられた。
天の道を往く拳の王。
それが――――ラオウだ。
【E-2 南東大通り 1日目 夜中】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 胴体に刀傷 限界に近い程の全身フルボッコ(強がって気にしないフリをしている)
[装備]無し 核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]支給品一式
[思考・状況]
1:ケンシロウを追うためにS3の駅へ向かう。
2:強敵を倒しながら優勝を目指す。
3:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。
4:赤木が気に入った。
5:愛などいらぬ!(本当は愛について知りたい)
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。又、秘孔を破られやすくなっている事にも
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※自らが認めた相手に敬意を払いその生き方をも認める事をしました
※コーラに対する耐性がつきました
※誰か猛者が逝ったの感じました。
※さらに強くなるにはもしかしたら愛が必要なのかもしれないと思っていますが、表面上では愛を否定しています。
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