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**鬼ごっこ(後編)◆14m5Do64HQ 『   ~~ 続 名も無き戦闘員による報告書 ~~ 既に半数が死亡した現状、優勝すら囁かれていた強者が倒れて行く中、何故明らかな弱者が生存しているのか。 今回はその具体例として江戸川コナンの事例を挙げてみたいと思う。 卓越した推理力を誇る以外、身体的には学生組にすら劣る彼。 戦闘こそが至上であるこの会場において、確かに序中盤は逃げ惑う一般人の座に甘んじていた。 しかし、彼の持つポテンシャルはそんなものではないと断言する。 現に、一部では最も優勝に近い男と呼ばれていた吉良吉影を追い詰めたのは彼の功績であるし、 勇次郎、ラオウ、斗貴子と実績ある猛者に遭遇しながら生き残ったのは評価に値すると思われる。 ではそうやって生き残ってきた彼の能力とは、一体如何なるものかについて言及したいと思う。 江戸川コナンには、工藤新一には無い能力がある。 高校生探偵工藤新一として活躍した半生、しかしその頃以上の事件を江戸川コナンは体験している。 そんな中、コナンはその推理力だけではとても予測出来ないような様々な事件に遭遇しているのだ。 事件の中には、コナン自身の生死に関わるような物も数え切れない程あった。 それらを、コナンは持ち前の推理力とその時その場に最も適切な行動を瞬時に選べる能力によって、切り抜けてきたのだ。 この能力は生来の物ではないだろう。 与えられた僅かな時間、いや瞬間に、正しい選択肢を選ぶ思考の素早さと決断力。 元々の知能の高さを、例え短時間の思考でも発揮出来るそのもう一つの能力は、彼が年齢不相応に修羅場を潜り抜けて来た証でもある。 しかも、彼は大抵の場合、自分だけでなく他の仲間達の命まで背負ってそれらを決断してきたのである。 もちろん工藤新一であった頃も、人並み外れた思考の素早さがあったのだろうが、生死の際を数多くぐりぬけてきた江戸川コナンとは比べ物にならない。 服部平次と江戸川コナンに差があるとすれば、この点である。 服部は工藤新一時代同等であった経験に、大きく水をあけられている。 自らの生命の危機に瀕する。 そんな状況で、果たして人は冷静に物事を判断し得るものなのだろうか。 ましてや、他人の命まで預かるとなれば、そのプレッシャーたるや想像を絶するであろう。 腕が縮む、足がすくむ、当然である。その状況において平素と同様の行動を取れる人間がおかしいのだ。 そう、江戸川コナンはおかしいのである。 眼前に暴走車が迫る。高度数千メートルの高さで安全を確保できない。爆弾のすぐ側で殺意に満ちた人間の相手をする等々…… こんな状況で冷静に先を読み、推理し、数多の問題を解決に導く。 まともな精神でそんな真似が出来るはずがない。 彼の最も凄まじい所は、彼の持つ高い知能をいかなる場面においても発揮しうる精神力にあるのだ。 そしてそんな場面において要求される思考の速度。 瞬時の判断ではない。瞬時の推理という、おおよそ名探偵と呼ばれる者達ですら持ち得ない能力を彼は持っているのだ。 卓越した推理力、修羅場に動じぬ鋼の精神力、神速の思考力。 敢えて言おう、江戸川コナンはこの会場に呼び出された猛者達に劣らぬ異能者なのであると。  PS:これ以上こいつを褒めるの私には無理です。     いくら倍率差がひどいからって、トトカルチョの情報操作なんて真似、あまりオススメ出来ないのですが……  』 遂に、コナンが目指していた建物、病院へと辿り着いた。 病院は最後に見た時と同じように、今にも崩れ落ちそうな惨憺たる有様である。 「ここでいいアルか?」 「ああ、ここが最高だ」 神楽の表情が暗くなるのを、コナンは見逃さなかった。 ここは銀時の遺体があった場所であり、新八が殺された場所なのだ。 そうなる事はわかっていたが、ここ程今度の策に適切な場所が無かったのだ。 入り口前で車を止め、二人同時に飛び降りる。 勇次郎の姿が見える。 本気で怒ってるんだろうなあと思われる鬼の様な形相だ。 そりゃ、あれだけ一方的にバカスカ銃を撃たれれば怒りもする。 銃を恐れずまっすぐ突っ込んでくる辺り、やっぱ怪獣なんだなぁと改めて思うコナン。 あの身体能力なら、先回りや迂回、普通に追いつく事も出来ただろうし、そうしようと考えたのだろう。 コナンはそれら全てを、移動経路の選択の仕方だけで封じ込めてやったのだ。 肝はあの大手スーパー突入だ。 道路以外をあんな風に突き抜ける事が出来るのなら、道路の先に回った所で意味は無い。 そんな事をしてる間に、道路以外を突き抜けて何処か予想外の場所に飛び出したなら追跡は不可能になる。 まっすぐコナン達の姿を視界に納めたまま追跡する以外に無い。 そしてまっすぐに追いつくには、神楽の銃弾による牽制をすりぬけなくてはならない。 こちらは当てる気は無い、神楽も多分当てる気は無かった、いや、絶対無かったはずだ、にしても、当たれば大変な事になる。 あの銃は特製だ。大の大人でも持てないような重量のハンドガンなんて、何に使うのかわからないようなシロモノである。 幾ら勇次郎でもあの威力は無視出来なかっただろう。 だが、ここで捕まっては全てが水の泡になる。 最後の直線で結構離したので少し余裕はあるが、こっちもやる事は多い。 見た目以上に必死に病院内へと駆け込むコナンと神楽。 すると、神楽がひょいっとコナンの襟首を掴んで持ち上げる。 「お前、俺を猫か何かだと思って無いか?」 「こんな可愛くない猫居たら、生まれた事謝らせた上で下水に流すネ」 そのままぽんと、通路脇に置いてあった車輪の付いたベッドの上に放り投げる。 「いっくアルよーーーーーーー!!」 神楽はそのベッドを後ろから押しながら、病院の廊下を疾走する。 確かにこれは楽だし早い。階段がちとしんどいが。 コナンはベッドの先に立ち、次々神楽に指示をしていく。 最初は色々とその意図を訊ねていた神楽だったが、すぐに面倒になったのか、何も聞いてこなくなった。 「つーか、俺の言ってる事半分も理解してねーだろ神楽」 「わかったネ。私も同じ事考えて……」 「言い終わる前に嘘だとわかるよーな嘘つくんじゃねえよ!」 範馬勇次郎は憤怒の表情で、病院前に仁王のごとく聳え立っていた。 何と運の良いガキ共だ。 勇次郎が走る車に何か仕掛けようとする度、何かしらで不都合が起こる。 先回り出来るような道路は無く、車がカーブを曲がり向こうの視界から外れた時に別ルートから回り込もうとしても、うまい事あった更なるカーブであっさりと逃げられる。 それにあのスーパーへの突入。 あれは完全に予想外だ。 中で止まると思い、余裕を見せたのがまずかった。 まさか真裏から平気な顔して出てくるとは。 イカれた顔でケタケタ笑うあいつらならば、また同じ事をしでかしかそうで僅かでも目を離せない。 そして何よりもあの銃だ。 あんな威力のある拳銃なぞ、戦場でもお目にかかった事は無い。 二人が何故こんな病院で止まったのか。 イカレた奴等の考える事、深く考えてもしかたがない。 とは勇次郎は考えなかった。 『ただの狂人にかわされる程、俺はヌルくねぇ。どっちだ? 小僧の方か?』 小娘のあの馬鹿さは天然だと思われる。 となれば後は小僧しか居ない。 見た目通りのガキではないと思っていたが、ここまで小賢しい真似をしてくれるとは。 全部が全部ではないだろう、しかし幾分かの不都合はあの小僧の仕掛けと思われる。 ならば、病院でも何かを仕掛けてくる。 「俺に策が通じる幸運、何時までも続くと思うなよ」 コナンと神楽が段取りを半ばまで終えた所で、勇次郎が病院内へと侵入してきた。 モニターに映る勇次郎は、静かに、しかし確実に、病院内を進んでいく。 『嫌な予感は当たるもんだな。くそっ、全く油断してねえ』 用意していた仕掛け、その大半の使用を諦めるコナン。 病院内を疾走し、あの短時間で数種類の仕掛けを用意した。 これは、辿り着く前にコナンが何処をどう通って何をどう仕掛けるかを予め決めておいたおかげだ。 コナンは病院内の構造を、マリアや銀時達と一緒に居た時既に、ほぼ完璧に把握していたのだ。 しかし、そんな仕掛けの数々も勇次郎があの様子では通じそうに無い。 全くもって気は進まないが、どうやらコナンも覚悟を決める必要がある。 仕掛けさえ通じればコナンの考える最善に近い状態に勇次郎を持っていく事が出来たのだが、ここでまた予定変更を余儀なくされそうだ。 突然モニターから勇次郎の姿が消え失せる。 右上のモニターに一瞬その姿が映ったかと思うと、次は左端の一番下のモニターに居る。 どのモニターが何処に繋がっているのか理解していなければ、ワープでもしたのかと見まごうばかりの移動速度。 それを正確に理解出来る人物なら、勇次郎が一つ一つしらみつぶしに部屋を探している事がわかるだろう。 それはモニターだけを情報源とするのなら、そもそも病院内部の構造を熟知していなければ不可能な芸当だ。 素早く、そして確実に部屋を潰していく勇次郎。 そんな勇次郎に院内放送の声が届く。 『よう原始人。相変わらず効率の悪い事してんなぁ』 小憎らしいガキの声。 間違いない、これはあのガキの声だ。 『やっぱ頭使えねえ奴はダメだね。遊び相手ぐらいにしかなりゃしねえ。まあそれなりに楽しめたがよ』 院内放送? ならば放送室、いやそれで俺を呼び出してその隙に逃げる気か? 『しっかしお前、直接相手してよーっくわかったわ。てめえがどうしようもねえボンクラだって事がよ』 しらみつぶしは続行する。それを嫌がるからこそ、奴はこんな放送を始めたのだろう。 『弱い奴ばっか相手にしてボクちゃん強いのでちゅーってか? 死んだ方がいいぞお前。普通さあ、まずその首輪何とかしようって思うだろ』 一階は全て回った。次は二階だ。ここで仕掛ける。 『首輪を仕掛けられるような強い奴にゃ逆らわねえ。その癖俺は強いとかぬかして弱そうな奴から潰して優勝狙いか? 腰抜けにも程があんぞ』 突然策敵速度と順番を変える。壁をぶちぬき、柱をけり倒して最短距離を突っ走る。 『そんなチキン野朗だからこんな首輪に騙されるんだよ。俺はお前みたいなクソ見てるとムカムカしてくんだ』 好き勝手抜かしてやがるが知った事か。ぶち殺す時の楽しみが増すだけだ。 『お前俺が見た目通りじゃないって所まで見抜いておいて、何でその先に気付かないかねぇ。やっぱ直感だけの脳筋野朗にゃちっと難しかったか』 ここだ。ここから声が漏れてきやがる。けっ、酔狂な笑い声あげてんじゃねえ。 『ダメだ、やっぱ笑いが止めらねえわ。お前さ、この期に及んで俺が普通の参加者だと思ってねえか?』 ドアを蹴破り中に飛び込む。 そこは、ナースステーション内の放送室。 マイクの前に置かれていたテープレコーダーからその声は漏れ聞こえてきた。 『んな訳ねーだろ! 首輪の飾りごときに騙されてんじゃねえよ! 俺はこの企画の主催者側だバーロー!』 病院を抜け出し、神楽とコナンは近くの民家に避難していた。 「あれでよかったアルか? もっとあいつぶちのめすような手とかの方が……」 コナンはソファーにうつ伏せに寝っ転がりながら答えた。 「それじゃ、あいつの協力は得られねえよ。本当はもっと良い形で協力して欲しかったんだけどな」 『ここまで会場の事熟知してるぜーっての教えてやってたのにまるで気付かねえんだもんな。普通に逃げたらそりゃ捕まるって、衛星からの指示でももらわなきゃあんなん普通無理だろ』 いいだろう、言わせてやる。 好きなだけ言ってみろ。 『そもそもよぅ、この会場内でこんなガキがどうやって生き残るってんだよ。お前最初に会った時偉そうに言ったよな。己を偽ってるってよ。あの時俺ぁ噴出すの必死に堪えてたんだぜ』 大した記憶ではない。印象には残っていないが、一応記憶の片隅ぐらいには残っている。 『くだらねえ参加者風情がこの俺に説教かよってな。お前の目の前に居るっての、その首輪の事良く知る人間がよーって腹抱えて笑ったぜおい』 首輪、最初こそ癇に障ったが、今までさして気にはしていなかった。 『お前のその偉そうな態度も俺がボタン一つでボンだっての。全く、前の参加者の方がよっぽど骨があったぜ。連中俺の前まで来やがったからな』 ここまで、頭に来たのも久しぶりだ。 『お前じゃ無理だろうがな、連中頭も良かったしよ。そいつをちっと期待した俺が馬鹿だったって話だ。まあいいさ、優勝したらお情けで生かしといてやるからせいぜい頑張れ』 我慢する気なぞハナから無い。 勇次郎は腕を振り上げる。 『しっかし、首輪付きの鬼ってのも新しい発想だよ……』 勇次郎がその腕を振り下ろすと、置かれていた机ごとテープレコーダーは粉々に粉砕された。 「本当にこんなんでうまくいくアルか?」 神楽は勝手に冷蔵庫を開け、中にあったバナナを食べながら言う。 「勇次郎は俺が見た目通りの子供じゃ無いって見抜いてた。そこがポイントさ」 「?」 神楽にはまるでコナンの言いたい事がわからない。 「あいつは俺が見た目通りじゃないと見抜いた。じゃあ俺は何者だ? もしその隠してた物が肉体的な何かだったならあいつも気付いたろ。得意分野みたいだしな」 コナンが何を言いたいのかまだわからない神楽は首を小さく傾げる。 「だが、それが何かまで具体的にはわからなかった。だからその正体が主催者側の人間だったとしても不思議ではない、となる訳だ」 神楽は腕を組んで難しそうな顔をする。 「そんなもんアルか~」 「車で逃げてた時、俺明らかにアブナイ人だったろ? もちろんそれも演技だけど、それが演技故の不自然さなのか、元々違う人物が子供のフリをしていたゆえの不自然さなのかなんて、判断付かないだろうぜ」 不自然さが漏れてしまう事前提の演技。しかしコナンはそれを自己暗示をかける程のレベルで実行していた。 しかもやってる事は命賭け、そんなギリギリの気迫と徹底が、説得力を生むとコナンは知っているのだ。 「それがダメでも、最悪あいつの中に首輪を外さなきゃならないって意識を植え付ける事は出来るだろ。そうすれば、無差別に会う奴会う奴殺して回る事は出来なくなる」 「なんで?」 即座に問い返す神楽に、ずっこけるコナン。 「だーかーら! 殺した奴が首輪外せるかもしれない奴だったらどーすんだよ! もし俺の仕掛けを信じたのなら、あいつの気性じゃ主催者側に外してもらうなんて考え無くなるだろうしな」 わかったんだかわからないんだかな顔をする神楽。 「うんわかったネ。それじゃ私お風呂入ってくるヨ」 「はいはい、お好きに……って何!?」 「お風呂。覗いたら殺すアル」 大慌てでソファーから跳ね起きるコナン。 「いやお風呂じゃねーよ! 勇次郎がここ嗅ぎ付けたらどうするつもりだ!」 ひらひらと手を振る神楽。 「そうならないようにコナン色々やってたネ。だから大丈夫ヨ」 「待ておい! それでもアイツ相手じゃ……」 コナンの話も聞かずに脱衣所に入っていく神楽。 ここまで来ると、中に入って文句を言う事も出来ない。 相変わらずの危機感の無さに、ため息をつくコナン。 「あいつにゃ恐い物ってのがねえのか?」 そんな事を言ってはいるが、神楽は神楽でたくさんの辛い事を乗り越えて今の場所に居る事をコナンは知っている。 それでもこうしてコナンを信頼し、一緒に居てくれている。 何としても守りたい。無事に家に帰してやりたい。 だが、その為とやった手がこれである。 本来勇次郎をバックに置く事で、他参加者への牽制とする予定だったはずが、勇次郎が今後出会う人間が、条件さえ合えば何とか殺されないかもしれない程度までランクダウンしている。 「服部にあれだけ大見得切っといてこのザマだ。情けないったらありゃしねえ」 ここには居ない人に問いかけるコナン。 「なあ、俺はアンタみたいにやれてるかな」 その人とは、振り返ってみればほんの僅かな時間一緒に居ただけだった。 「俺はもっとやれたんじゃないのか、アンタみたいにもっと深く、強く」 それでも、コナンは生涯その人を忘れる事は出来ないと思う。 「なあルイズさん、俺はアンタみたいに勇敢で、優しい人になれるかな……」 シャワーを全開にして、その下にあられもない姿を晒す神楽。 普段ひっつめている髪をほどいており、少し癖のついたそれも、今はシャワーの水流に負けまっすぐに降ろされている。 タイル壁に両手をつき、俯き加減でお湯を全身に浴びる。 「銀ちゃん、新八。私、絶対泣かないアルよ……」 とめどなく零れる涙をシャワーで洗い流しながら、悲しみが過ぎ去るのを待っている。 色んな事を考える余裕が持てると、我慢出来なくなる。堪えきれなくなる。 それでも、我慢しなければならない。 頑張らなければ、頑張って頑張って絶対に勝つんだ。 「それまで、私絶対泣かないネ」 シャワーを止め、真上を向く。 涙はもう止まっていた。 シャワーを浴び終えると、神楽がコナンの居る居間へと戻ってくる。 少し様子が変わった事に気付いたコナンが、それを神楽に訊ねる。 「髪、降ろしたのか?」 「へ?」 慌てて自分の髪を撫でてみる。そういえばリボン付けるの完全に忘れていた。 慌てて取りに戻ろうと思い、それをやってはコナンに自分が動揺していた事がバレてしまうと思いなおし、瞬時に言い訳を考える。 「イメチェンアル。ガキの相手するには大人っぽい雰囲気が不可欠ネ」 笑えるぐらいわかりやすい神楽の挙動を見て、コナンは悪いとは思ったがつい噴出してしまう。 「ぷっ、そうかい。似合ってるぜ」 「……何がおかしいネ?」 「おかしくなんてない。似合ってるって言ったんだ」 「なら何で笑うネ!」 「笑ってねえよ。気のせいだ」 「いーや、絶対コナン笑ったネ!」 「気のせいだって、俺は知らねえよ。ほらさっさと行こうぜ」 「誤魔化す気アルか!? 大体コナンは……」 ぎゃあぎゃあ喚く神楽を引きつれ、楽しそうに神楽をいなしながら家を出るコナン。 二人共、先ほどの事など無かったかのように、いつもの調子で歩き出した。 話し相手にもなる、張った意地を見せ付ける相手にもなる。 どんな時でも、一人でないというのはとても大切な事なのだ。 『一度や二度うまくいかないぐらいで、俺は絶対諦めたりしねえ』 『こんな事しでかした連中、全員まとめてぎゃふんといわせてやるネ』 【F-4病院近くの民家 /2日目 深夜】 【江戸川コナン@名探偵コナン】 [状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い決意。 [装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達 包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 [思考] 基本:この殺し合いを止める。 1:範馬勇次郎を仲間に引き入れる。 2:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。 3:ルイズの最後の願いを叶えたい。 4:ゲームからの脱出。 5:ジグマールを警戒。 [備考] ※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。 ※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました ※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。 ※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。 ※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。 【神楽@銀魂】 [状態] 軽度の疲労  悲しみ [装備] 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(30)@HELLSING [道具]支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪 [思考・状況] 基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。 1:コナンを守ってやりたい。 2:キュルケ… 3:筋肉眉毛(ケンシロウ)に会い、話を聞く。 4:銀ちゃんとキュルケを殺した奴は許さない。 [備考] ※原作18巻終了後から参戦。 ※キュルケとケンシロウについては細かいことをまだ服部、劉鳳、コナンに話していません。 ※髪を降ろしています 【F-4病院 /2日目 深夜】 【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】 [状態]右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。    全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。 [装備]ライター [道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)    色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4 [思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す 1:Fuck you ……ガキめら…… 2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。   ただし、斗貴子に対してのみ微妙な所です。 3:首輪を外したい 4:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。(1が終わるまで保留) 5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求 [備考] ※シルバー・スキンの弱点に気付きました。 ※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。 ※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。 ※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。 ※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。 ※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。 ただし、三村とかがみの名前は知りません。 是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。 ※出血は止まりました ※梟は勇次郎に闘争を届けるため、ほかの参加者の下へ飛んでいます。 ※梟が持っているDISCに勇次郎は気づいていますが、興味はありません。 ※勇次郎がコナンの策にはまったか否かは次の書き手にお任せします |219:[[求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは――]]|[[投下順>第201話~第250話]]|221:[[たとえ罪という名の仮面をつけても――]]| |219:[[求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは――]]|[[時系列順>第5回放送までの本編SS]]|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|江戸川コナン|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|神楽|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|範馬勇次郎|222:[[夜兎と範馬]]| ----
**鬼ごっこ(後編)◆1qmjaShGfE 『   ~~ 続 名も無き戦闘員による報告書 ~~ 既に半数が死亡した現状、優勝すら囁かれていた強者が倒れて行く中、何故明らかな弱者が生存しているのか。 今回はその具体例として江戸川コナンの事例を挙げてみたいと思う。 卓越した推理力を誇る以外、身体的には学生組にすら劣る彼。 戦闘こそが至上であるこの会場において、確かに序中盤は逃げ惑う一般人の座に甘んじていた。 しかし、彼の持つポテンシャルはそんなものではないと断言する。 現に、一部では最も優勝に近い男と呼ばれていた吉良吉影を追い詰めたのは彼の功績であるし、 勇次郎、ラオウ、斗貴子と実績ある猛者に遭遇しながら生き残ったのは評価に値すると思われる。 ではそうやって生き残ってきた彼の能力とは、一体如何なるものかについて言及したいと思う。 江戸川コナンには、工藤新一には無い能力がある。 高校生探偵工藤新一として活躍した半生、しかしその頃以上の事件を江戸川コナンは体験している。 そんな中、コナンはその推理力だけではとても予測出来ないような様々な事件に遭遇しているのだ。 事件の中には、コナン自身の生死に関わるような物も数え切れない程あった。 それらを、コナンは持ち前の推理力とその時その場に最も適切な行動を瞬時に選べる能力によって、切り抜けてきたのだ。 この能力は生来の物ではないだろう。 与えられた僅かな時間、いや瞬間に、正しい選択肢を選ぶ思考の素早さと決断力。 元々の知能の高さを、例え短時間の思考でも発揮出来るそのもう一つの能力は、彼が年齢不相応に修羅場を潜り抜けて来た証でもある。 しかも、彼は大抵の場合、自分だけでなく他の仲間達の命まで背負ってそれらを決断してきたのである。 もちろん工藤新一であった頃も、人並み外れた思考の素早さがあったのだろうが、生死の際を数多くぐりぬけてきた江戸川コナンとは比べ物にならない。 服部平次と江戸川コナンに差があるとすれば、この点である。 服部は工藤新一時代同等であった経験に、大きく水をあけられている。 自らの生命の危機に瀕する。 そんな状況で、果たして人は冷静に物事を判断し得るものなのだろうか。 ましてや、他人の命まで預かるとなれば、そのプレッシャーたるや想像を絶するであろう。 腕が縮む、足がすくむ、当然である。その状況において平素と同様の行動を取れる人間がおかしいのだ。 そう、江戸川コナンはおかしいのである。 眼前に暴走車が迫る。高度数千メートルの高さで安全を確保できない。爆弾のすぐ側で殺意に満ちた人間の相手をする等々…… こんな状況で冷静に先を読み、推理し、数多の問題を解決に導く。 まともな精神でそんな真似が出来るはずがない。 彼の最も凄まじい所は、彼の持つ高い知能をいかなる場面においても発揮しうる精神力にあるのだ。 そしてそんな場面において要求される思考の速度。 瞬時の判断ではない。瞬時の推理という、おおよそ名探偵と呼ばれる者達ですら持ち得ない能力を彼は持っているのだ。 卓越した推理力、修羅場に動じぬ鋼の精神力、神速の思考力。 敢えて言おう、江戸川コナンはこの会場に呼び出された猛者達に劣らぬ異能者なのであると。  PS:これ以上こいつを褒めるの私には無理です。     いくら倍率差がひどいからって、トトカルチョの情報操作なんて真似、あまりオススメ出来ないのですが……  』 遂に、コナンが目指していた建物、病院へと辿り着いた。 病院は最後に見た時と同じように、今にも崩れ落ちそうな惨憺たる有様である。 「ここでいいアルか?」 「ああ、ここが最高だ」 神楽の表情が暗くなるのを、コナンは見逃さなかった。 ここは銀時の遺体があった場所であり、新八が殺された場所なのだ。 そうなる事はわかっていたが、ここ程今度の策に適切な場所が無かったのだ。 入り口前で車を止め、二人同時に飛び降りる。 勇次郎の姿が見える。 本気で怒ってるんだろうなあと思われる鬼の様な形相だ。 そりゃ、あれだけ一方的にバカスカ銃を撃たれれば怒りもする。 銃を恐れずまっすぐ突っ込んでくる辺り、やっぱ怪獣なんだなぁと改めて思うコナン。 あの身体能力なら、先回りや迂回、普通に追いつく事も出来ただろうし、そうしようと考えたのだろう。 コナンはそれら全てを、移動経路の選択の仕方だけで封じ込めてやったのだ。 肝はあの大手スーパー突入だ。 道路以外をあんな風に突き抜ける事が出来るのなら、道路の先に回った所で意味は無い。 そんな事をしてる間に、道路以外を突き抜けて何処か予想外の場所に飛び出したなら追跡は不可能になる。 まっすぐコナン達の姿を視界に納めたまま追跡する以外に無い。 そしてまっすぐに追いつくには、神楽の銃弾による牽制をすりぬけなくてはならない。 こちらは当てる気は無い、神楽も多分当てる気は無かった、いや、絶対無かったはずだ、にしても、当たれば大変な事になる。 あの銃は特製だ。大の大人でも持てないような重量のハンドガンなんて、何に使うのかわからないようなシロモノである。 幾ら勇次郎でもあの威力は無視出来なかっただろう。 だが、ここで捕まっては全てが水の泡になる。 最後の直線で結構離したので少し余裕はあるが、こっちもやる事は多い。 見た目以上に必死に病院内へと駆け込むコナンと神楽。 すると、神楽がひょいっとコナンの襟首を掴んで持ち上げる。 「お前、俺を猫か何かだと思って無いか?」 「こんな可愛くない猫居たら、生まれた事謝らせた上で下水に流すネ」 そのままぽんと、通路脇に置いてあった車輪の付いたベッドの上に放り投げる。 「いっくアルよーーーーーーー!!」 神楽はそのベッドを後ろから押しながら、病院の廊下を疾走する。 確かにこれは楽だし早い。階段がちとしんどいが。 コナンはベッドの先に立ち、次々神楽に指示をしていく。 最初は色々とその意図を訊ねていた神楽だったが、すぐに面倒になったのか、何も聞いてこなくなった。 「つーか、俺の言ってる事半分も理解してねーだろ神楽」 「わかったネ。私も同じ事考えて……」 「言い終わる前に嘘だとわかるよーな嘘つくんじゃねえよ!」 範馬勇次郎は憤怒の表情で、病院前に仁王のごとく聳え立っていた。 何と運の良いガキ共だ。 勇次郎が走る車に何か仕掛けようとする度、何かしらで不都合が起こる。 先回り出来るような道路は無く、車がカーブを曲がり向こうの視界から外れた時に別ルートから回り込もうとしても、うまい事あった更なるカーブであっさりと逃げられる。 それにあのスーパーへの突入。 あれは完全に予想外だ。 中で止まると思い、余裕を見せたのがまずかった。 まさか真裏から平気な顔して出てくるとは。 イカれた顔でケタケタ笑うあいつらならば、また同じ事をしでかしかそうで僅かでも目を離せない。 そして何よりもあの銃だ。 あんな威力のある拳銃なぞ、戦場でもお目にかかった事は無い。 二人が何故こんな病院で止まったのか。 イカレた奴等の考える事、深く考えてもしかたがない。 とは勇次郎は考えなかった。 『ただの狂人にかわされる程、俺はヌルくねぇ。どっちだ? 小僧の方か?』 小娘のあの馬鹿さは天然だと思われる。 となれば後は小僧しか居ない。 見た目通りのガキではないと思っていたが、ここまで小賢しい真似をしてくれるとは。 全部が全部ではないだろう、しかし幾分かの不都合はあの小僧の仕掛けと思われる。 ならば、病院でも何かを仕掛けてくる。 「俺に策が通じる幸運、何時までも続くと思うなよ」 コナンと神楽が段取りを半ばまで終えた所で、勇次郎が病院内へと侵入してきた。 モニターに映る勇次郎は、静かに、しかし確実に、病院内を進んでいく。 『嫌な予感は当たるもんだな。くそっ、全く油断してねえ』 用意していた仕掛け、その大半の使用を諦めるコナン。 病院内を疾走し、あの短時間で数種類の仕掛けを用意した。 これは、辿り着く前にコナンが何処をどう通って何をどう仕掛けるかを予め決めておいたおかげだ。 コナンは病院内の構造を、マリアや銀時達と一緒に居た時既に、ほぼ完璧に把握していたのだ。 しかし、そんな仕掛けの数々も勇次郎があの様子では通じそうに無い。 全くもって気は進まないが、どうやらコナンも覚悟を決める必要がある。 仕掛けさえ通じればコナンの考える最善に近い状態に勇次郎を持っていく事が出来たのだが、ここでまた予定変更を余儀なくされそうだ。 突然モニターから勇次郎の姿が消え失せる。 右上のモニターに一瞬その姿が映ったかと思うと、次は左端の一番下のモニターに居る。 どのモニターが何処に繋がっているのか理解していなければ、ワープでもしたのかと見まごうばかりの移動速度。 それを正確に理解出来る人物なら、勇次郎が一つ一つしらみつぶしに部屋を探している事がわかるだろう。 それはモニターだけを情報源とするのなら、そもそも病院内部の構造を熟知していなければ不可能な芸当だ。 素早く、そして確実に部屋を潰していく勇次郎。 そんな勇次郎に院内放送の声が届く。 『よう原始人。相変わらず効率の悪い事してんなぁ』 小憎らしいガキの声。 間違いない、これはあのガキの声だ。 『やっぱ頭使えねえ奴はダメだね。遊び相手ぐらいにしかなりゃしねえ。まあそれなりに楽しめたがよ』 院内放送? ならば放送室、いやそれで俺を呼び出してその隙に逃げる気か? 『しっかしお前、直接相手してよーっくわかったわ。てめえがどうしようもねえボンクラだって事がよ』 しらみつぶしは続行する。それを嫌がるからこそ、奴はこんな放送を始めたのだろう。 『弱い奴ばっか相手にしてボクちゃん強いのでちゅーってか? 死んだ方がいいぞお前。普通さあ、まずその首輪何とかしようって思うだろ』 一階は全て回った。次は二階だ。ここで仕掛ける。 『首輪を仕掛けられるような強い奴にゃ逆らわねえ。その癖俺は強いとかぬかして弱そうな奴から潰して優勝狙いか? 腰抜けにも程があんぞ』 突然策敵速度と順番を変える。壁をぶちぬき、柱をけり倒して最短距離を突っ走る。 『そんなチキン野朗だからこんな首輪に騙されるんだよ。俺はお前みたいなクソ見てるとムカムカしてくんだ』 好き勝手抜かしてやがるが知った事か。ぶち殺す時の楽しみが増すだけだ。 『お前俺が見た目通りじゃないって所まで見抜いておいて、何でその先に気付かないかねぇ。やっぱ直感だけの脳筋野朗にゃちっと難しかったか』 ここだ。ここから声が漏れてきやがる。けっ、酔狂な笑い声あげてんじゃねえ。 『ダメだ、やっぱ笑いが止めらねえわ。お前さ、この期に及んで俺が普通の参加者だと思ってねえか?』 ドアを蹴破り中に飛び込む。 そこは、ナースステーション内の放送室。 マイクの前に置かれていたテープレコーダーからその声は漏れ聞こえてきた。 『んな訳ねーだろ! 首輪の飾りごときに騙されてんじゃねえよ! 俺はこの企画の主催者側だバーロー!』 病院を抜け出し、神楽とコナンは近くの民家に避難していた。 「あれでよかったアルか? もっとあいつぶちのめすような手とかの方が……」 コナンはソファーにうつ伏せに寝っ転がりながら答えた。 「それじゃ、あいつの協力は得られねえよ。本当はもっと良い形で協力して欲しかったんだけどな」 『ここまで会場の事熟知してるぜーっての教えてやってたのにまるで気付かねえんだもんな。普通に逃げたらそりゃ捕まるって、衛星からの指示でももらわなきゃあんなん普通無理だろ』 いいだろう、言わせてやる。 好きなだけ言ってみろ。 『そもそもよぅ、この会場内でこんなガキがどうやって生き残るってんだよ。お前最初に会った時偉そうに言ったよな。己を偽ってるってよ。あの時俺ぁ噴出すの必死に堪えてたんだぜ』 大した記憶ではない。印象には残っていないが、一応記憶の片隅ぐらいには残っている。 『くだらねえ参加者風情がこの俺に説教かよってな。お前の目の前に居るっての、その首輪の事良く知る人間がよーって腹抱えて笑ったぜおい』 首輪、最初こそ癇に障ったが、今までさして気にはしていなかった。 『お前のその偉そうな態度も俺がボタン一つでボンだっての。全く、前の参加者の方がよっぽど骨があったぜ。連中俺の前まで来やがったからな』 ここまで、頭に来たのも久しぶりだ。 『お前じゃ無理だろうがな、連中頭も良かったしよ。そいつをちっと期待した俺が馬鹿だったって話だ。まあいいさ、優勝したらお情けで生かしといてやるからせいぜい頑張れ』 我慢する気なぞハナから無い。 勇次郎は腕を振り上げる。 『しっかし、首輪付きの鬼ってのも新しい発想だよ……』 勇次郎がその腕を振り下ろすと、置かれていた机ごとテープレコーダーは粉々に粉砕された。 「本当にこんなんでうまくいくアルか?」 神楽は勝手に冷蔵庫を開け、中にあったバナナを食べながら言う。 「勇次郎は俺が見た目通りの子供じゃ無いって見抜いてた。そこがポイントさ」 「?」 神楽にはまるでコナンの言いたい事がわからない。 「あいつは俺が見た目通りじゃないと見抜いた。じゃあ俺は何者だ? もしその隠してた物が肉体的な何かだったならあいつも気付いたろ。得意分野みたいだしな」 コナンが何を言いたいのかまだわからない神楽は首を小さく傾げる。 「だが、それが何かまで具体的にはわからなかった。だからその正体が主催者側の人間だったとしても不思議ではない、となる訳だ」 神楽は腕を組んで難しそうな顔をする。 「そんなもんアルか~」 「車で逃げてた時、俺明らかにアブナイ人だったろ? もちろんそれも演技だけど、それが演技故の不自然さなのか、元々違う人物が子供のフリをしていたゆえの不自然さなのかなんて、判断付かないだろうぜ」 不自然さが漏れてしまう事前提の演技。しかしコナンはそれを自己暗示をかける程のレベルで実行していた。 しかもやってる事は命賭け、そんなギリギリの気迫と徹底が、説得力を生むとコナンは知っているのだ。 「それがダメでも、最悪あいつの中に首輪を外さなきゃならないって意識を植え付ける事は出来るだろ。そうすれば、無差別に会う奴会う奴殺して回る事は出来なくなる」 「なんで?」 即座に問い返す神楽に、ずっこけるコナン。 「だーかーら! 殺した奴が首輪外せるかもしれない奴だったらどーすんだよ! もし俺の仕掛けを信じたのなら、あいつの気性じゃ主催者側に外してもらうなんて考え無くなるだろうしな」 わかったんだかわからないんだかな顔をする神楽。 「うんわかったネ。それじゃ私お風呂入ってくるヨ」 「はいはい、お好きに……って何!?」 「お風呂。覗いたら殺すアル」 大慌てでソファーから跳ね起きるコナン。 「いやお風呂じゃねーよ! 勇次郎がここ嗅ぎ付けたらどうするつもりだ!」 ひらひらと手を振る神楽。 「そうならないようにコナン色々やってたネ。だから大丈夫ヨ」 「待ておい! それでもアイツ相手じゃ……」 コナンの話も聞かずに脱衣所に入っていく神楽。 ここまで来ると、中に入って文句を言う事も出来ない。 相変わらずの危機感の無さに、ため息をつくコナン。 「あいつにゃ恐い物ってのがねえのか?」 そんな事を言ってはいるが、神楽は神楽でたくさんの辛い事を乗り越えて今の場所に居る事をコナンは知っている。 それでもこうしてコナンを信頼し、一緒に居てくれている。 何としても守りたい。無事に家に帰してやりたい。 だが、その為とやった手がこれである。 本来勇次郎をバックに置く事で、他参加者への牽制とする予定だったはずが、勇次郎が今後出会う人間が、条件さえ合えば何とか殺されないかもしれない程度までランクダウンしている。 「服部にあれだけ大見得切っといてこのザマだ。情けないったらありゃしねえ」 ここには居ない人に問いかけるコナン。 「なあ、俺はアンタみたいにやれてるかな」 その人とは、振り返ってみればほんの僅かな時間一緒に居ただけだった。 「俺はもっとやれたんじゃないのか、アンタみたいにもっと深く、強く」 それでも、コナンは生涯その人を忘れる事は出来ないと思う。 「なあルイズさん、俺はアンタみたいに勇敢で、優しい人になれるかな……」 シャワーを全開にして、その下にあられもない姿を晒す神楽。 普段ひっつめている髪をほどいており、少し癖のついたそれも、今はシャワーの水流に負けまっすぐに降ろされている。 タイル壁に両手をつき、俯き加減でお湯を全身に浴びる。 「銀ちゃん、新八。私、絶対泣かないアルよ……」 とめどなく零れる涙をシャワーで洗い流しながら、悲しみが過ぎ去るのを待っている。 色んな事を考える余裕が持てると、我慢出来なくなる。堪えきれなくなる。 それでも、我慢しなければならない。 頑張らなければ、頑張って頑張って絶対に勝つんだ。 「それまで、私絶対泣かないネ」 シャワーを止め、真上を向く。 涙はもう止まっていた。 シャワーを浴び終えると、神楽がコナンの居る居間へと戻ってくる。 少し様子が変わった事に気付いたコナンが、それを神楽に訊ねる。 「髪、降ろしたのか?」 「へ?」 慌てて自分の髪を撫でてみる。そういえばリボン付けるの完全に忘れていた。 慌てて取りに戻ろうと思い、それをやってはコナンに自分が動揺していた事がバレてしまうと思いなおし、瞬時に言い訳を考える。 「イメチェンアル。ガキの相手するには大人っぽい雰囲気が不可欠ネ」 笑えるぐらいわかりやすい神楽の挙動を見て、コナンは悪いとは思ったがつい噴出してしまう。 「ぷっ、そうかい。似合ってるぜ」 「……何がおかしいネ?」 「おかしくなんてない。似合ってるって言ったんだ」 「なら何で笑うネ!」 「笑ってねえよ。気のせいだ」 「いーや、絶対コナン笑ったネ!」 「気のせいだって、俺は知らねえよ。ほらさっさと行こうぜ」 「誤魔化す気アルか!? 大体コナンは……」 ぎゃあぎゃあ喚く神楽を引きつれ、楽しそうに神楽をいなしながら家を出るコナン。 二人共、先ほどの事など無かったかのように、いつもの調子で歩き出した。 話し相手にもなる、張った意地を見せ付ける相手にもなる。 どんな時でも、一人でないというのはとても大切な事なのだ。 『一度や二度うまくいかないぐらいで、俺は絶対諦めたりしねえ』 『こんな事しでかした連中、全員まとめてぎゃふんといわせてやるネ』 【F-4病院近くの民家 /2日目 深夜】 【江戸川コナン@名探偵コナン】 [状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い決意。 [装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達 包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 [思考] 基本:この殺し合いを止める。 1:範馬勇次郎を仲間に引き入れる。 2:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。 3:ルイズの最後の願いを叶えたい。 4:ゲームからの脱出。 5:ジグマールを警戒。 [備考] ※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。 ※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました ※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。 ※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。 ※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。 【神楽@銀魂】 [状態] 軽度の疲労  悲しみ [装備] 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(30)@HELLSING [道具]支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪 [思考・状況] 基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。 1:コナンを守ってやりたい。 2:キュルケ… 3:筋肉眉毛(ケンシロウ)に会い、話を聞く。 4:銀ちゃんとキュルケを殺した奴は許さない。 [備考] ※原作18巻終了後から参戦。 ※キュルケとケンシロウについては細かいことをまだ服部、劉鳳、コナンに話していません。 ※髪を降ろしています 【F-4病院 /2日目 深夜】 【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】 [状態]右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。    全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。 [装備]ライター [道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)    色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4 [思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す 1:Fuck you ……ガキめら…… 2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。   ただし、斗貴子に対してのみ微妙な所です。 3:首輪を外したい 4:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。(1が終わるまで保留) 5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求 [備考] ※シルバー・スキンの弱点に気付きました。 ※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。 ※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。 ※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。 ※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。 ※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。 ただし、三村とかがみの名前は知りません。 是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。 ※出血は止まりました ※梟は勇次郎に闘争を届けるため、ほかの参加者の下へ飛んでいます。 ※梟が持っているDISCに勇次郎は気づいていますが、興味はありません。 ※勇次郎がコナンの策にはまったか否かは次の書き手にお任せします |219:[[求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは――]]|[[投下順>第201話~第250話]]|221:[[たとえ罪という名の仮面をつけても――]]| |219:[[求めはしない 救いはしない 未来(あす)に望むものは――]]|[[時系列順>第5回放送までの本編SS]]|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|江戸川コナン|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|神楽|222:[[夜兎と範馬]]| |214:[[The show must go on]]|範馬勇次郎|222:[[夜兎と範馬]]| ----

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