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**帝王無双BADAN~白蛇対峙~ ◆c7qzxSVMQs ――サザンクロス研究室 「パピ、ヨン……!」 現在、バトルロワイアルの場において最も危険な参加者であるパピヨンの予想外の登場に、伊藤博士は言葉を無くす。 村雨の存在ばかりに頭が行き、ヘルダイバーというサザンクロスに突入出来うる道具と首輪という枷を外したパピヨンがこのような行動を取る可能性を失念していた。 いや、仮にその事からここに来るという可能性を考慮していても、今までのパピヨンの行動パターンから考えて、敵地に単身で乗り込むという手を取る筈が無いと心のどこかで否定していたのだろう。 「さっきも言っただろう?もっと畏怖を込めろ」 人差し指を左右に2,3度動かしながら、パピヨンは伊藤博士を見据える 敵地に単身で飛び込んで来たというのに、パピヨンは笑みを浮かべ、その不敵な態度を崩す気配はない。 マスク越しからでも感じられるドブ川の濁ったような目から発せられる視線に伊藤博士は言いようの無い恐怖を感じた。まるで蛇に睨まれた蛙の様に、上手く体を動かすことができない。 「伊藤博士!」 研究員の一人が伊藤博士の名を叫ぶのと、パピヨンの侵入した穴から3体のコマンドロイドが、パピヨン目掛けて攻撃を仕掛けるために飛び出したのは同時だった。 拳を固め、飛び掛るコマンドロイド達を、パピヨンは振り向きもせずに二アデスハピネスで迎撃、爆破した。 爆撃が直撃した事により四散したコマンドロイド達の残骸を気にも留めず、パピヨンは伊藤博士に向けて歪な笑顔を浮かべる。 「そうか、貴様が伊藤か」 伊藤、アカギから伝えられたBADAN側の内通者の名。 名前の前にDrと付けていた事とチャットの会話からして科学者の類である事は誰でも予想がつく。 BADAN研究員の確保、できうるならば伊藤なる人物の確保を目論んでいたパピヨンに取ってそれは願っても無い幸運だった。 それに対して伊藤博士は自分の名が告げられた事とパピヨンの浮かべた歪な笑顔を見て本能的に身の危険を感じる。 と、その時、首輪管理用の画面から電子音が鳴った。 伊藤博士とパピヨンの視線が自然とディスプレイへと移ると、NO.10――エレオノール――の首輪の反応が消える最中だった。 仲間割れをしたのか首輪の解除に成功したのか、生憎と二人にはそれについて考察する時間は与えられなかった。 廊下から複数の足音が響いてくる、パピヨンはその足音を察知するやいなや首輪を外した黒い核鉄を左手に、サーベル状にしたライドルを右手に構える。 「ダブル武装錬金」 左手に持った核鉄が展開してふくらはぎの部分に新たな蝶の羽を形成する。 敵の戦力は未知数、黒色火薬自体が武装錬金の二アデスハピネスは、それを用いて爆発させる事からその能力は有限であり、 使い果たすと丸々三日は使えなくなる以上、火薬総量を増やす為新たな二アデスハピネスを展開した。 そして研究室の入り口と、自分の破壊した壁から現れた異形達を見やり、口角を吊り上げた。 「来い、貴様等BADANとやらの力がどのような物か確かめさせてもらう」 その言葉が戦いの合図だった。 ――サザンクロス司令室 「侵入者1名! カメラに写った映像はライダーマン、現在までの盗聴の結果から、対象は数十分程前に首輪の反応が途絶えた蝶野攻爵!」 「現在地は研究室! 追撃に向かった蜘蛛男の生体信号途絶えました!」 「全兵士に告ぐ! 襲撃者は現在研究室にいる、各員総力を挙げて抹殺せよ!」 「先行していたコマンドロイド3体生体信号途絶!」 警報と通信が飛び交う中、暗闇大使は忌々しげにその顔を歪めている。 虫けらの一人が首輪を解除し、あろうことか単身でこのサザンクロスへと殴りこんで来たのである。 一人で乗り込んでくるとは余程の馬鹿か自信家か。どちらにせよその行為は彼の敬愛するBADANを嘗めきった、神に唾するも等しい行為だった。 「帝王を自称する虫けら風情がよくもやってくれるものだな……!」 暗闇大使の中で激情の渦が巻き起こり、怒りのあまり握り締めたその手からは血が滲み出ている。 現在、No.1のコマンドロイドとNo.5に収容している再生怪人を目覚めさせ追撃に当たらせているが、 制限の外れたホムンクルスの身体能力に仮面ライダーの力、そして二つの武装錬金の能力が上乗せしたパピヨンを相手にするのは力不足だった。 『こ、こちら第五分隊! 怪人部隊及びコマンドロイド部隊ほぼ壊滅!目標は我々構成員を捕食し……! あ、ああ……来るな、来るなぁぁぁぁ! うわああああああああああああああああ!!!』 『なんだ、BADANの精兵とやらはこの程度か笑わせる』 通信機越しの構成員の断末魔は、ボシュウゥゥゥという音と共に掻き消え、代わりに聞こえたのはパピヨンの嘲笑。 リアルタイムで仲間の捕食の瞬間を聞いた構成員達の顔が青くなり、BADANを侮辱された事で暗闇大使の顔が怒りによって赤く染まる。 虫けら一人を相手に此方の被害は甚大、これ以上無様は姿を大首領に見せる訳にはいかない。暗闇大使自らが出向こうとしたその時だった。 「エンリコ・プッチ、パピヨンと接触!」 プッチに首輪を表す光点が研究所へと到着していた。 ……余談ではあるが、伊藤博士が首輪の解除方法を送信したのとほぼ同時期にパピヨンの襲撃が起こった事により司令室は混乱、 襲撃者の操作に全力を注ぐこととなり、結果、幸運にも伊藤博士の反逆行為は今現在誰一人として気づく者はいなかった。 ――サザンクロス・プッチの部屋 エレオノール達がパピヨンのいる学校へと向かった事により策はならず、一旦自室に戻ってから、 生まれた者を確認しに行こうとした正にその時、パピヨンの襲撃が始まった。 突然鳴り響く警報にただならぬ物を感じたプッチは、近くを通りがかった構成員に何が起こったのかを尋ねた。 「参加者の一人がサザンクロス内に侵入した模様です」 それだけを告げて走り出す構成員、対するプッチはその事に内心狂喜し、改めて、今自分に運が向いているのだと確信した。 首輪を付けた参加者が入ってくる事はできないこのサザンクロスに突入してきたという事は、その侵入者は自分の首にもかかっている忌々しい首輪の解除方法を知っているということだ。 (どうやら『引力』は依然として私に向けて来ているようだな……!) 生かす必要はない、侵入者の記憶DISCだけを取り出して始末し、後でそのDISCの読み込み解除法を探せばいい。 今自分がすべき事は『侵入者の抹殺』そして『侵入者の記憶DISC』の回収、両方やらなければならないと言えど、ホワイトスネイクの力を使えばそうそう辛いものでもない。 そう結論付けたプッチは侵入者の捜索を開始する。 『侵入者1名! カメラに写った映像はライダーマン、現在までの盗聴の結果から、対象は数十分程前に首輪の反応が途絶えた蝶野攻爵!』 『全兵士に告ぐ! 襲撃者は現在研究室にいる、各員総力を挙げて抹殺せよ!』 場所は研究室、侵入者は蝶野攻爵。あの蝶野攻爵という参加者の性格から単身でここに乗り込むような真似はしないとふんでいたので少々以外ではあったが、それはこの際気にしないでおく。 ここから研究室は少しばかり距離がある、パピヨンがBADANの兵士に殺されていない事を祈り、プッチは駆ける。 が、どうやらそれは杞憂だったようだ。研究室行くにつれ大きくなっていく爆音と断末魔、この二つが聞こえているという事はまだ戦いは続いているという事である。 研究室が見えてきた、後数メートル、そこでプッチは思わず足を止めた。 火薬と血の匂いが鼻につく、研究室から流れる血で廊下は赤く染まり、誰かの断末魔が聞こえる、そこはまさに地獄絵図。 入り口の近くで震えていた研究員がプッチに気づいた。 「た、助……」 全てを言い終える前にホワイトスネイクの拳が伸び、研究員の頭からDISCを取り出した。DISCを取り出された研究員はそのまま昏倒する。 プッチは研究員の記憶DISCを頭に差し込む。 飛び掛った複数の怪人が周囲に展開した黒死の蝶による爆撃の直撃を受けて吹き飛ばされる。 爆煙の中から飛び出したコマンドロイド数体がライドルにより続けざまに両断される。 銃を乱射する構成員を意にも介さずその手で掴み捕食する。 ある者は爆散し、ある者は両断され、ある者は捕食される。 まさにそこはパピヨンの独壇場であった。あるのは一方的な虐殺、ホムンクルスにライダーの力と武装錬金があるだけでここまで出来るのかと戦慄する。 だがそれでもまだ勝機は残っている。ホワイトスネイクの能力には実際の戦闘力という物は関係ないのだから。 あっけない、それがパピヨンの感想だった。 制限下であれば苦戦はしただろうが、今の自分にとっては弱すぎる相手。 尤もそれは接近戦や中距離戦が主体の怪人やコマンドロイドが半径50mの射程を誇るニアデスハピネスに対応しづらく、 ライダーの戦闘能力が現在のパピヨンに上乗せされているからでもあるのだが。 これならばBADANの掌握も苦にはならないかもしれない、とパピヨンは考えるが、やはり一人で相手をするには数が多い。 二アデスハピネス、そして時折捕食をして回復はしていたが体力の消耗も馬鹿にはならない。そろそろ退きどきかとパピヨンは思案する。 逃げ出した伊藤博士以外の研究者には目もくれず、どさくさに逃げようとした伊藤博士だけは、逃がさないようにデスクの下に蹴りこんでおいた。当初の目的は達成されたのだ。 「さて、俺と一緒に来てもらうぞ、伊藤博士」 恐る恐るデスクから這い出てきた伊藤博士を、二アデスハピネスを黒い核鉄へと戻したパピヨンが見下ろしながら告げる。 その視線に肩を一瞬震わせながら、伊藤博士はキッ、とパピヨンを見据える。 「わ、私に何の用があるというんだね」 「お前には利用価値がある。だから俺と共に会場へと来てもらう。あらかじめ言っておくが貴様に拒否権などない、 断ったところで貴様の腕か足の骨をへし折って無理やりにでも連れて行くからな」 「残念ダガ、ソレハ許可デキナイ」 突然研究室の入り口から聞こえたその声に、パピヨンが振り向く。 そこにいたのは2m程の、全身に縞模様と奇妙なマークのある人型をした何かだった。 「貴様、スタンドか?」 「答エル必要ハナイ、オ前ハココデ終ワルノダカラナ」 いぶかしむパピヨンを相手に目の前の人型、ホワイトスネイクが構えを取る。 と、その瞬間、ホワイトスネイクの首元に黒い粉が舞い、爆煙を上げた。 何が起こったのか理解する暇も無く、首から上が泣き別れとなったホワイトスネイクは消滅し、廊下から、ごとりと何かが落下する音が聞こえた。 「残念、終わったのはお前の方だったな」 ホワイトスネイクの姿を確認した時、気づかれぬよう物陰伝いに、パピヨンは二アデスパピネスをホワイトスネイクへと向かわせていたのだった。 消滅したホワイトスネイクのいた場所に向け嘲笑を浮かべると、パピヨンは伊藤博士へと視線を戻す。 「さあ、一緒に来てもらうぞ?」 伊藤博士博士はおとなしく従った。 伊藤博士をライドルロープで自分としっかり括りつけ、ヘルダイバーを発進させる。 追っ手の声が段々と遠くなっていくに連れ、自分自身の口角が釣りあがっていくのがパピヨンには理解できた。その顔は愉悦に浸っていた。 ヘルダイバーはサザンクロスを抜け雷雲を抜け、バトルロワイアルの会場が見えてきた。そこでパピヨンは数人の人影に気づく。 会場まで後、数mの地点、目の前の人物達と話のできる距離でパピヨンはヘルダイバーを停止させた。 「全員、いや、一人を除いて揃っているようだな。村雨から場所を聞いたか」 そこにいたのは、愚地独歩、エレオノール、桂ヒナギク、ジョセフ・ジョースター、葉隠覚悟、服部平治、柊かがみ、村雨良の姿だった。 「何を言っている? これで全員だ。それより、その人は何だ?」 村雨の言葉にパピヨンは眉を顰める。村雨の発言から察すると赤木しげるが死亡しているという事になる。 まさか、JUDOとやらに呼び出されたあの時点で直々に手を下されたとでもいうのだろうか、パピヨンの頭に一つの疑念が沸く。 「ふん、こいつはBADANの研究員だ。貴様等に取引を持ち掛けに来た。」 「取引? あなたとの取引に乗る様な者はここにはいません」 敵意のこもった目でパピヨンを睨みつけるエレオノール。そのエレオノールを見てパピヨンは違和感を覚えた。 何かがおかしい、漠然とした物ではあるが確かに感じる違和感。 上から下までエレオノールの体を観察しながら不敵に言い放つ。 その時その違和感の存在に気づいた。 「首輪の解除方法を知っている人間でも、か?」 「されども我等悪鬼に従うは良しとしない!パピヨン殿、考え直してはくれぬのか?」 覚悟がパピヨンの取引を拒絶する。他の者も何も反応しない事から同じ意見なのだろう。 ライドルロープを解き、未だ状況が理解できていないのか戸惑っている伊藤博士を降ろす。 首輪の解除という取引は却下されたが、今のパピヨンにとってはそれはどうでもいい事であった。それよりも大事な事があるのだから。 「そうか、なら」 パピヨンが身構え、ある一人の人物に狙いをつける。 その手にはライドルが握られ、対する村雨達もただならぬ気配を感じたのか身構える。 「貴様等から死ね、武装錬金」 二つのニアデスハピネスを展開し、パピヨンが駆ける、周囲に連続して爆発を起こし、村雨たちの視界を遮る。 二アデスハピネスの狙いは爆殺ではなく目くらまし、本当の狙いは。 「ぐうっ!」 「捕まえたぞ」 ライドルロープがエレオノールを捕らえ、両腕と胴体をまとめてぐるぐる巻きにして拘束する。 そしてパピヨンは村雨達が反応するより早く、エレオノールごと禁止エリアに飛び込んだ。そして……。 「禁止エリアに抵触しています。後――」 けたたましい警報音と共に、エレオノールの首輪から禁止エリアに入った際の警告音が鳴り響いた。 パピヨンの感じた違和感が明らかな矛盾へと変わった。 これと似たような攻撃を一度経験しているパピヨンならばわかる。つまりこれは――。 エレオノールや村雨達が何かをいっているがそんなのはどうでもいい。どうせ偽者なのだから。 「成る程、時を止めるスタンドだっている。このようなスタンドがいても当然か」 矛盾を自覚したからか、パピヨンの周囲の風景が変わっていく。 世界が歪みだした。急速に意識が覚醒していく。 「パピ・ヨン!」 現実へと帰還した帝王が吼える。 そこはサザンクロスの研究室だった。 何が起こったのか、伊藤博士には理解ができなかった。 何者かの声が聞こえたと感じた瞬間に、急にパピヨンが仰向けに倒れた。 「無事カ? 伊藤博士」 その声に振り向くと、そこにいたのは奇妙な人型。 いや、伊藤博士はその姿を見た事があった。 「君は、プッチ神父の……」 「ほわいとすねいくダ」 プッチ神父のスタンド。伊藤博士は各世界から支給品を持ってくる段階でその姿を確かに見ていた。 マスクをかぶった頭部から見える瞳が伊藤博士を覗き込んでいる。 「これは一体……」 「コレハ私ノすたんどノ能力ダ。今カラ、コノ男ヲ始末スル。ココハ危険ダカラアナタモ避難シテイルトイイ」 その言葉と共に部屋がどろどろと溶けていくのを伊藤博士は見た。 部屋ごとパピヨンを溶かそうというのだろうか。 ごくり、と伊藤博士は唾を飲む。再生し性能は低下しているとはいえ、BADANの怪人の大群やコマンドロイド達を軽くあしらったパピヨンを始末する。 パピヨンを昏倒させたことから実際可能なのだろう。しかし、もしこの力が村雨達に向けられたら。伊藤博士の頬を冷たい汗が流れた。 (制限か、やはりこの力は体力の消耗が激しいな) 研究室の扉の前でプッチは肩で息をする。 ホワイトスネイクの相手を眠らせ、幻覚を見せている間周囲の空間ごと対象を溶かし、DISCを手に入れる能力は予想以上に体力の消費が大きかった。 だがこの能力が決まれば勝利は決まりだ。この能力を破る方法は『幻覚の中で矛盾を見つけ』かつ『外部からの刺激を受ける』事がなければ目覚めない。 一度破られた事はあるが、そのような偶然がそう何度も起こるわけがない。そう思っていた。 「パピ・ヨン!」 プッチはわが目を疑った。今目の前でパピヨンが目を覚ましたのだ。 幻覚の中で矛盾点を見つけたのだろうか、だが、外部からの刺激は一切与えていない。そこでプッチは一つの結論に辿り着いた。 (……これも制限の一つだという事か) このバトルロワイアルにおいて、ザ・ワールドやスタープラチナの時止め、キングクリムゾンの時間を吹き飛ばす能力などは目に見えた制限を受けている。 ご多分にもれず、ホワイトスネイクの能力も制限を受け、幻覚から抜け出す方法に『外部からの刺激を受ける』という過程が無くなってしまったのだろう。 歯噛みしながらホワイトスネイクの能力を解除する。 「どこから幻覚にかかっていたのか。お前が構えた時、いや声が聞こえた時かな?どちらにしろ参加者の現状は把握しておくべきだったな」 パピヨンの気づいた矛盾点。それはエレオノールの首輪だった。 研究室に突入してから、パピヨンは首輪管理用の画面からエレオノールの首輪が消えたのを確かに見ていた。つまりエレオノールは死亡したか首輪を外したという事になる。 だが幻覚のエレオノールは生きており、しかも首輪をしていた。 御前を使う為にあえて付けている可能性もあった、だからこそパピヨンはエレオールを禁止エリアまで連れ込んだのだった。 結果はエレオノールの首輪が作動するというありえない現象が起き、矛盾を確信したパピヨンの意識は覚醒した。 「俺が意識を取り戻しているのに幻覚を使わないという事は体力の消耗が激しいのか、一度かかった相手にはかからないのか……。 まあいい、これで貴様の能力は割れた。早々にお前を倒し、そこの男を連れて退散させてもらおうか」 口では余裕のようでも、パピヨン自身の消耗は激しい。第2、第3の部隊が次々と投入されるのは流石に厳しいものがあるのだ。 早々に目の前のスタンドを倒すためにパピヨンは考えを巡らせる。 対するプッチも目の前の化け物をどう対処するかを考える。 虎の子の幻覚攻撃が破られたとはいえまだまだ手段はある。 『これで貴様の能力は割れた』、パピヨンはそう言ったがホワイトスネイクの能力は幻覚を見せる能力だけではない。 いまだ勝機はあるにしてもこちらが動く前にあの爆撃を食らえば命は無い。 互いが互いにどのように動くかを構築し始める。 こうして第一Rは終わり、第2Rが始まりを告げる。 【マップ外/サザンクロス内部研究室 二日目 昼】 【パピヨン@武装錬金】 [状態]:疲労(大)。ドブ川の濁ったような瞳。帝王への決意。首輪が解除されました。 [装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS、マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン2、     猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙     サンライトハート(核鉄状態&首輪@パピヨンが巻かれている)@武装錬金     ニアデスハピネス・アナザータイプ=核鉄(激戦)@武装錬金、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS     ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾1発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITS [道具]:支給品一式、チョココロネ(残り4つ)@らき☆すた、     地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書     ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、首輪探知機@BATTLE ROYALE、     ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン     首輪(鳴海)、解除済みの首輪の残骸×2(赤木、川田)、ツールセット、不明支給品1(未確認) [思考・状況] 基本:BADANを打倒し、DIOにも届かなかった「真の帝王」の地位を手にする。 1:目の前のスタンドを倒し、伊藤博士を確保。一時退散。 2:「部下」になり「帝王パピヨン」に忠誠を誓うのなら、他の参加者の首輪も「解除してやってもいい」 3:赤木、大首領に自分を舐めたことを後悔させる。 [備考] ※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です ※スタンド、矢の存在に興味を持っています。 ※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。 ※こなたの死体を『食べ』ました。 ※覚悟、アカギのことを快く思っていません。 ※首輪の構造を理解しました。少なくとも、死体(川田)の首輪の分解には成功しました。  ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意、疲労(大) [装備]リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話 [思考・状況] 基本:天国に行く。 1:パピヨンを始末し、記憶DISCを手に入れる。 2:トイレの『生まれたもの』を確認しにいきたい。 3:『生まれたもの』が動き出せば、承太郎の記憶より知った『支配』する方法をためす。 4:2と3の為に、暗闇大使を遠ざける。 5:暗闇大使に首輪を起爆されるのは、避けねばならない。なんとかして解除を。 6:ジョセフ・ジョースターよ、私を押し上げてくれ。 [備考] ※首輪をつけています。 ※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。 ※暗闇大使とプッチの部屋の近くのトイレのロッカーに、『生まれたもの』を隠しました。 ※ホワイトスネイクの幻覚攻撃が制限により体力が大きく消耗し、『外部からの刺激』がなくとも矛盾点を見つければ幻覚から目が覚めます。 【伊藤博士@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]後頭部に異変、少し興奮気味 [装備]無し [道具]無し [思考・状況] 1:バダンに反抗する覚悟を決めた。 2:現在の状況に混乱 [備考] ※首輪をしていません。 ※解除された首輪が、自室の棚に隠してあります。 ※赤木しげるは、大首領により殺害されたものと判断しました。 ――サザンクロス司令室 「ホワイトスネイクがパピヨンと戦闘を開始したようです」 「被害状況は?」 「はっ、No.1のコマンドロイドとNo.5の再生怪人は全滅、また構成員の3分の1が殺害されました」 あまりの被害の多さに暗闇大使の顔が苦いものに変わる。 失態だった。よもやここまで被害を出すとは暗闇大使自身も思ってみなかったのだ。 暗闇大使は決心する。これ以上の被害を出すようでは自らの沽券に関わると。 暗闇大使が腰を上げた。 「プッチばかりには任せておけん、私が出向く。ここは任せるぞ」 構成員の返事を聞く事なく、暗闇大使が司令室を出た。 暗闇大使が出たのを確認すると、構成員達は人知れず溜息を着いた。 「虫けらが如きがいい気になりすぎたな」 こめかみに青筋を浮かべた暗闇大使の表情が残虐な笑みを浮かべる。 BADANに唾する愚か者に自らの手で制裁を加えるために。 その目は怒りにより赤く血走り、その両手は固く握られている。 帝王パピヨン、その眼前に立ちはだかる二つの障壁はあまりにも大きい。 【マップ外/サザンクロス内廊下 二日目 昼】 【暗闇大使@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]健康・激しい怒り [装備]エニグマのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]不明 [思考・状況] 基本:大首領の命令のままに。 1:パピヨンを自らの手で殺害する。 [備考] ※首輪をつけてます。 ※ガモン大佐がつけている首輪には、エネルギー抑制装置、盗聴器、GPSが付けられていません。 ※しかし起爆装置は点けられていませんが、付いてはいます。 ※その為にスタンドDISCが使えます。 ※プッチに大して少し不信感を抱いていたが、現在はある程度信用している。 ※赤木しげるは、大首領により殺害されたと思い込んでいます。 [共通備考] ※No.1のコマンドロイド部隊と、No.5の再生怪人部隊が全滅し、BADAN構成員の3分の1が死亡しました。 |242:[[襲来!蝶男の帝王舞]]|[[投下順>第201話~第250話]]|244:[[ふしぎなおくりもの]]| |249:[[あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を]]|[[時系列順>第6回放送までの本編SS]]|247:[[帝王賛歌]]| |242:[[襲来!蝶男の帝王舞]]|蝶野攻爵(パピヨン)| :[[ ]]| ----
**帝王無双BADAN~白蛇対峙~ ◆c7qzxSVMQs ――サザンクロス研究室 「パピ、ヨン……!」 現在、バトルロワイアルの場において最も危険な参加者であるパピヨンの予想外の登場に、伊藤博士は言葉を無くす。 村雨の存在ばかりに頭が行き、ヘルダイバーというサザンクロスに突入出来うる道具と首輪という枷を外したパピヨンがこのような行動を取る可能性を失念していた。 いや、仮にその事からここに来るという可能性を考慮していても、今までのパピヨンの行動パターンから考えて、敵地に単身で乗り込むという手を取る筈が無いと心のどこかで否定していたのだろう。 「さっきも言っただろう?もっと畏怖を込めろ」 人差し指を左右に2,3度動かしながら、パピヨンは伊藤博士を見据える 敵地に単身で飛び込んで来たというのに、パピヨンは笑みを浮かべ、その不敵な態度を崩す気配はない。 マスク越しからでも感じられるドブ川の濁ったような目から発せられる視線に伊藤博士は言いようの無い恐怖を感じた。まるで蛇に睨まれた蛙の様に、上手く体を動かすことができない。 「伊藤博士!」 研究員の一人が伊藤博士の名を叫ぶのと、パピヨンの侵入した穴から3体のコマンドロイドが、パピヨン目掛けて攻撃を仕掛けるために飛び出したのは同時だった。 拳を固め、飛び掛るコマンドロイド達を、パピヨンは振り向きもせずに二アデスハピネスで迎撃、爆破した。 爆撃が直撃した事により四散したコマンドロイド達の残骸を気にも留めず、パピヨンは伊藤博士に向けて歪な笑顔を浮かべる。 「そうか、貴様が伊藤か」 伊藤、アカギから伝えられたBADAN側の内通者の名。 名前の前にDrと付けていた事とチャットの会話からして科学者の類である事は誰でも予想がつく。 BADAN研究員の確保、できうるならば伊藤なる人物の確保を目論んでいたパピヨンに取ってそれは願っても無い幸運だった。 それに対して伊藤博士は自分の名が告げられた事とパピヨンの浮かべた歪な笑顔を見て本能的に身の危険を感じる。 と、その時、首輪管理用の画面から電子音が鳴った。 伊藤博士とパピヨンの視線が自然とディスプレイへと移ると、NO.10――エレオノール――の首輪の反応が消える最中だった。 仲間割れをしたのか首輪の解除に成功したのか、生憎と二人にはそれについて考察する時間は与えられなかった。 廊下から複数の足音が響いてくる、パピヨンはその足音を察知するやいなや首輪を外した黒い核鉄を左手に、サーベル状にしたライドルを右手に構える。 「ダブル武装錬金」 左手に持った核鉄が展開してふくらはぎの部分に新たな蝶の羽を形成する。 敵の戦力は未知数、黒色火薬自体が武装錬金の二アデスハピネスは、それを用いて爆発させる事からその能力は有限であり、 使い果たすと丸々三日は使えなくなる以上、火薬総量を増やす為新たな二アデスハピネスを展開した。 そして研究室の入り口と、自分の破壊した壁から現れた異形達を見やり、口角を吊り上げた。 「来い、貴様等BADANとやらの力がどのような物か確かめさせてもらう」 その言葉が戦いの合図だった。 ――サザンクロス司令室 「侵入者1名! カメラに写った映像はライダーマン、現在までの盗聴の結果から、対象は数十分程前に首輪の反応が途絶えた蝶野攻爵!」 「現在地は研究室! 追撃に向かった蜘蛛男の生体信号途絶えました!」 「全兵士に告ぐ! 襲撃者は現在研究室にいる、各員総力を挙げて抹殺せよ!」 「先行していたコマンドロイド3体生体信号途絶!」 警報と通信が飛び交う中、暗闇大使は忌々しげにその顔を歪めている。 虫けらの一人が首輪を解除し、あろうことか単身でこのサザンクロスへと殴りこんで来たのである。 一人で乗り込んでくるとは余程の馬鹿か自信家か。どちらにせよその行為は彼の敬愛するBADANを嘗めきった、神に唾するも等しい行為だった。 「帝王を自称する虫けら風情がよくもやってくれるものだな……!」 暗闇大使の中で激情の渦が巻き起こり、怒りのあまり握り締めたその手からは血が滲み出ている。 現在、No.1のコマンドロイドとNo.5に収容している再生怪人を目覚めさせ追撃に当たらせているが、 制限の外れたホムンクルスの身体能力に仮面ライダーの力、そして二つの武装錬金の能力が上乗せしたパピヨンを相手にするのは力不足だった。 『こ、こちら第五分隊! 怪人部隊及びコマンドロイド部隊ほぼ壊滅!目標は我々構成員を捕食し……! あ、ああ……来るな、来るなぁぁぁぁ! うわああああああああああああああああ!!!』 『なんだ、BADANの精兵とやらはこの程度か笑わせる』 通信機越しの構成員の断末魔は、ボシュウゥゥゥという音と共に掻き消え、代わりに聞こえたのはパピヨンの嘲笑。 リアルタイムで仲間の捕食の瞬間を聞いた構成員達の顔が青くなり、BADANを侮辱された事で暗闇大使の顔が怒りによって赤く染まる。 虫けら一人を相手に此方の被害は甚大、これ以上無様は姿を大首領に見せる訳にはいかない。暗闇大使自らが出向こうとしたその時だった。 「エンリコ・プッチ、パピヨンと接触!」 プッチに首輪を表す光点が研究所へと到着していた。 ……余談ではあるが、伊藤博士が首輪の解除方法を送信したのとほぼ同時期にパピヨンの襲撃が起こった事により司令室は混乱、 襲撃者の操作に全力を注ぐこととなり、結果、幸運にも伊藤博士の反逆行為は今現在誰一人として気づく者はいなかった。 ――サザンクロス・プッチの部屋 エレオノール達がパピヨンのいる学校へと向かった事により策はならず、一旦自室に戻ってから、 生まれた者を確認しに行こうとした正にその時、パピヨンの襲撃が始まった。 突然鳴り響く警報にただならぬ物を感じたプッチは、近くを通りがかった構成員に何が起こったのかを尋ねた。 「参加者の一人がサザンクロス内に侵入した模様です」 それだけを告げて走り出す構成員、対するプッチはその事に内心狂喜し、改めて、今自分に運が向いているのだと確信した。 首輪を付けた参加者が入ってくる事はできないこのサザンクロスに突入してきたという事は、その侵入者は自分の首にもかかっている忌々しい首輪の解除方法を知っているということだ。 (どうやら『引力』は依然として私に向けて来ているようだな……!) 生かす必要はない、侵入者の記憶DISCだけを取り出して始末し、後でそのDISCの読み込み解除法を探せばいい。 今自分がすべき事は『侵入者の抹殺』そして『侵入者の記憶DISC』の回収、両方やらなければならないと言えど、ホワイトスネイクの力を使えばそうそう辛いものでもない。 そう結論付けたプッチは侵入者の捜索を開始する。 『侵入者1名! カメラに写った映像はライダーマン、現在までの盗聴の結果から、対象は数十分程前に首輪の反応が途絶えた蝶野攻爵!』 『全兵士に告ぐ! 襲撃者は現在研究室にいる、各員総力を挙げて抹殺せよ!』 場所は研究室、侵入者は蝶野攻爵。あの蝶野攻爵という参加者の性格から単身でここに乗り込むような真似はしないとふんでいたので少々以外ではあったが、それはこの際気にしないでおく。 ここから研究室は少しばかり距離がある、パピヨンがBADANの兵士に殺されていない事を祈り、プッチは駆ける。 が、どうやらそれは杞憂だったようだ。研究室行くにつれ大きくなっていく爆音と断末魔、この二つが聞こえているという事はまだ戦いは続いているという事である。 研究室が見えてきた、後数メートル、そこでプッチは思わず足を止めた。 火薬と血の匂いが鼻につく、研究室から流れる血で廊下は赤く染まり、誰かの断末魔が聞こえる、そこはまさに地獄絵図。 入り口の近くで震えていた研究員がプッチに気づいた。 「た、助……」 全てを言い終える前にホワイトスネイクの拳が伸び、研究員の頭からDISCを取り出した。DISCを取り出された研究員はそのまま昏倒する。 プッチは研究員の記憶DISCを頭に差し込む。 飛び掛った複数の怪人が周囲に展開した黒死の蝶による爆撃の直撃を受けて吹き飛ばされる。 爆煙の中から飛び出したコマンドロイド数体がライドルにより続けざまに両断される。 銃を乱射する構成員を意にも介さずその手で掴み捕食する。 ある者は爆散し、ある者は両断され、ある者は捕食される。 まさにそこはパピヨンの独壇場であった。あるのは一方的な虐殺、ホムンクルスにライダーの力と武装錬金があるだけでここまで出来るのかと戦慄する。 だがそれでもまだ勝機は残っている。ホワイトスネイクの能力には実際の戦闘力という物は関係ないのだから。 あっけない、それがパピヨンの感想だった。 制限下であれば苦戦はしただろうが、今の自分にとっては弱すぎる相手。 尤もそれは接近戦や中距離戦が主体の怪人やコマンドロイドが半径50mの射程を誇るニアデスハピネスに対応しづらく、 ライダーの戦闘能力が現在のパピヨンに上乗せされているからでもあるのだが。 これならばBADANの掌握も苦にはならないかもしれない、とパピヨンは考えるが、やはり一人で相手をするには数が多い。 二アデスハピネス、そして時折捕食をして回復はしていたが体力の消耗も馬鹿にはならない。そろそろ退きどきかとパピヨンは思案する。 逃げ出した伊藤博士以外の研究者には目もくれず、どさくさに逃げようとした伊藤博士だけは、逃がさないようにデスクの下に蹴りこんでおいた。当初の目的は達成されたのだ。 「さて、俺と一緒に来てもらうぞ、伊藤博士」 恐る恐るデスクから這い出てきた伊藤博士を、二アデスハピネスを黒い核鉄へと戻したパピヨンが見下ろしながら告げる。 その視線に肩を一瞬震わせながら、伊藤博士はキッ、とパピヨンを見据える。 「わ、私に何の用があるというんだね」 「お前には利用価値がある。だから俺と共に会場へと来てもらう。あらかじめ言っておくが貴様に拒否権などない、 断ったところで貴様の腕か足の骨をへし折って無理やりにでも連れて行くからな」 「残念ダガ、ソレハ許可デキナイ」 突然研究室の入り口から聞こえたその声に、パピヨンが振り向く。 そこにいたのは2m程の、全身に縞模様と奇妙なマークのある人型をした何かだった。 「貴様、スタンドか?」 「答エル必要ハナイ、オ前ハココデ終ワルノダカラナ」 いぶかしむパピヨンを相手に目の前の人型、ホワイトスネイクが構えを取る。 と、その瞬間、ホワイトスネイクの首元に黒い粉が舞い、爆煙を上げた。 何が起こったのか理解する暇も無く、首から上が泣き別れとなったホワイトスネイクは消滅し、廊下から、ごとりと何かが落下する音が聞こえた。 「残念、終わったのはお前の方だったな」 ホワイトスネイクの姿を確認した時、気づかれぬよう物陰伝いに、パピヨンは二アデスパピネスをホワイトスネイクへと向かわせていたのだった。 消滅したホワイトスネイクのいた場所に向け嘲笑を浮かべると、パピヨンは伊藤博士へと視線を戻す。 「さあ、一緒に来てもらうぞ?」 伊藤博士博士はおとなしく従った。 伊藤博士をライドルロープで自分としっかり括りつけ、ヘルダイバーを発進させる。 追っ手の声が段々と遠くなっていくに連れ、自分自身の口角が釣りあがっていくのがパピヨンには理解できた。その顔は愉悦に浸っていた。 ヘルダイバーはサザンクロスを抜け雷雲を抜け、バトルロワイアルの会場が見えてきた。そこでパピヨンは数人の人影に気づく。 会場まで後、数mの地点、目の前の人物達と話のできる距離でパピヨンはヘルダイバーを停止させた。 「全員、いや、一人を除いて揃っているようだな。村雨から場所を聞いたか」 そこにいたのは、愚地独歩、エレオノール、桂ヒナギク、ジョセフ・ジョースター、葉隠覚悟、服部平治、柊かがみ、村雨良の姿だった。 「何を言っている? これで全員だ。それより、その人は何だ?」 村雨の言葉にパピヨンは眉を顰める。村雨の発言から察すると赤木しげるが死亡しているという事になる。 まさか、JUDOとやらに呼び出されたあの時点で直々に手を下されたとでもいうのだろうか、パピヨンの頭に一つの疑念が沸く。 「ふん、こいつはBADANの研究員だ。貴様等に取引を持ち掛けに来た。」 「取引? あなたとの取引に乗る様な者はここにはいません」 敵意のこもった目でパピヨンを睨みつけるエレオノール。そのエレオノールを見てパピヨンは違和感を覚えた。 何かがおかしい、漠然とした物ではあるが確かに感じる違和感。 上から下までエレオノールの体を観察しながら不敵に言い放つ。 その時その違和感の存在に気づいた。 「首輪の解除方法を知っている人間でも、か?」 「されども我等悪鬼に従うは良しとしない!パピヨン殿、考え直してはくれぬのか?」 覚悟がパピヨンの取引を拒絶する。他の者も何も反応しない事から同じ意見なのだろう。 ライドルロープを解き、未だ状況が理解できていないのか戸惑っている伊藤博士を降ろす。 首輪の解除という取引は却下されたが、今のパピヨンにとってはそれはどうでもいい事であった。それよりも大事な事があるのだから。 「そうか、なら」 パピヨンが身構え、ある一人の人物に狙いをつける。 その手にはライドルが握られ、対する村雨達もただならぬ気配を感じたのか身構える。 「貴様等から死ね、武装錬金」 二つのニアデスハピネスを展開し、パピヨンが駆ける、周囲に連続して爆発を起こし、村雨たちの視界を遮る。 二アデスハピネスの狙いは爆殺ではなく目くらまし、本当の狙いは。 「ぐうっ!」 「捕まえたぞ」 ライドルロープがエレオノールを捕らえ、両腕と胴体をまとめてぐるぐる巻きにして拘束する。 そしてパピヨンは村雨達が反応するより早く、エレオノールごと禁止エリアに飛び込んだ。そして……。 「禁止エリアに抵触しています。後――」 けたたましい警報音と共に、エレオノールの首輪から禁止エリアに入った際の警告音が鳴り響いた。 パピヨンの感じた違和感が明らかな矛盾へと変わった。 これと似たような攻撃を一度経験しているパピヨンならばわかる。つまりこれは――。 エレオノールや村雨達が何かをいっているがそんなのはどうでもいい。どうせ偽者なのだから。 「成る程、時を止めるスタンドだっている。このようなスタンドがいても当然か」 矛盾を自覚したからか、パピヨンの周囲の風景が変わっていく。 世界が歪みだした。急速に意識が覚醒していく。 「パピ・ヨン!」 現実へと帰還した帝王が吼える。 そこはサザンクロスの研究室だった。 何が起こったのか、伊藤博士には理解ができなかった。 何者かの声が聞こえたと感じた瞬間に、急にパピヨンが仰向けに倒れた。 「無事カ? 伊藤博士」 その声に振り向くと、そこにいたのは奇妙な人型。 いや、伊藤博士はその姿を見た事があった。 「君は、プッチ神父の……」 「ほわいとすねいくダ」 プッチ神父のスタンド。伊藤博士は各世界から支給品を持ってくる段階でその姿を確かに見ていた。 マスクをかぶった頭部から見える瞳が伊藤博士を覗き込んでいる。 「これは一体……」 「コレハ私ノすたんどノ能力ダ。今カラ、コノ男ヲ始末スル。ココハ危険ダカラアナタモ避難シテイルトイイ」 その言葉と共に部屋がどろどろと溶けていくのを伊藤博士は見た。 部屋ごとパピヨンを溶かそうというのだろうか。 ごくり、と伊藤博士は唾を飲む。再生し性能は低下しているとはいえ、BADANの怪人の大群やコマンドロイド達を軽くあしらったパピヨンを始末する。 パピヨンを昏倒させたことから実際可能なのだろう。しかし、もしこの力が村雨達に向けられたら。伊藤博士の頬を冷たい汗が流れた。 (制限か、やはりこの力は体力の消耗が激しいな) 研究室の扉の前でプッチは肩で息をする。 ホワイトスネイクの相手を眠らせ、幻覚を見せている間周囲の空間ごと対象を溶かし、DISCを手に入れる能力は予想以上に体力の消費が大きかった。 だがこの能力が決まれば勝利は決まりだ。この能力を破る方法は『幻覚の中で矛盾を見つけ』かつ『外部からの刺激を受ける』事がなければ目覚めない。 一度破られた事はあるが、そのような偶然がそう何度も起こるわけがない。そう思っていた。 「パピ・ヨン!」 プッチはわが目を疑った。今目の前でパピヨンが目を覚ましたのだ。 幻覚の中で矛盾点を見つけたのだろうか、だが、外部からの刺激は一切与えていない。そこでプッチは一つの結論に辿り着いた。 (……これも制限の一つだという事か) このバトルロワイアルにおいて、ザ・ワールドやスタープラチナの時止め、キングクリムゾンの時間を吹き飛ばす能力などは目に見えた制限を受けている。 ご多分にもれず、ホワイトスネイクの能力も制限を受け、幻覚から抜け出す方法に『外部からの刺激を受ける』という過程が無くなってしまったのだろう。 歯噛みしながらホワイトスネイクの能力を解除する。 「どこから幻覚にかかっていたのか。お前が構えた時、いや声が聞こえた時かな?どちらにしろ参加者の現状は把握しておくべきだったな」 パピヨンの気づいた矛盾点。それはエレオノールの首輪だった。 研究室に突入してから、パピヨンは首輪管理用の画面からエレオノールの首輪が消えたのを確かに見ていた。つまりエレオノールは死亡したか首輪を外したという事になる。 だが幻覚のエレオノールは生きており、しかも首輪をしていた。 御前を使う為にあえて付けている可能性もあった、だからこそパピヨンはエレオールを禁止エリアまで連れ込んだのだった。 結果はエレオノールの首輪が作動するというありえない現象が起き、矛盾を確信したパピヨンの意識は覚醒した。 「俺が意識を取り戻しているのに幻覚を使わないという事は体力の消耗が激しいのか、一度かかった相手にはかからないのか……。 まあいい、これで貴様の能力は割れた。早々にお前を倒し、そこの男を連れて退散させてもらおうか」 口では余裕のようでも、パピヨン自身の消耗は激しい。第2、第3の部隊が次々と投入されるのは流石に厳しいものがあるのだ。 早々に目の前のスタンドを倒すためにパピヨンは考えを巡らせる。 対するプッチも目の前の化け物をどう対処するかを考える。 虎の子の幻覚攻撃が破られたとはいえまだまだ手段はある。 『これで貴様の能力は割れた』、パピヨンはそう言ったがホワイトスネイクの能力は幻覚を見せる能力だけではない。 いまだ勝機はあるにしてもこちらが動く前にあの爆撃を食らえば命は無い。 互いが互いにどのように動くかを構築し始める。 こうして第一Rは終わり、第2Rが始まりを告げる。 【マップ外/サザンクロス内部研究室 二日目 昼】 【パピヨン@武装錬金】 [状態]:疲労(大)。ドブ川の濁ったような瞳。帝王への決意。首輪が解除されました。 [装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS、マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン2、     猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙     サンライトハート(核鉄状態&首輪@パピヨンが巻かれている)@武装錬金     ニアデスハピネス・アナザータイプ=核鉄(激戦)@武装錬金、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS     ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾1発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITS [道具]:支給品一式、チョココロネ(残り4つ)@らき☆すた、     地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書     ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、首輪探知機@BATTLE ROYALE、     ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン     首輪(鳴海)、解除済みの首輪の残骸×2(赤木、川田)、ツールセット、不明支給品1(未確認) [思考・状況] 基本:BADANを打倒し、DIOにも届かなかった「真の帝王」の地位を手にする。 1:目の前のスタンドを倒し、伊藤博士を確保。一時退散。 2:「部下」になり「帝王パピヨン」に忠誠を誓うのなら、他の参加者の首輪も「解除してやってもいい」 3:赤木、大首領に自分を舐めたことを後悔させる。 [備考] ※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です ※スタンド、矢の存在に興味を持っています。 ※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。 ※こなたの死体を『食べ』ました。 ※覚悟、アカギのことを快く思っていません。 ※首輪の構造を理解しました。少なくとも、死体(川田)の首輪の分解には成功しました。  ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意、疲労(大) [装備]リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話 [思考・状況] 基本:天国に行く。 1:パピヨンを始末し、記憶DISCを手に入れる。 2:トイレの『生まれたもの』を確認しにいきたい。 3:『生まれたもの』が動き出せば、承太郎の記憶より知った『支配』する方法をためす。 4:2と3の為に、暗闇大使を遠ざける。 5:暗闇大使に首輪を起爆されるのは、避けねばならない。なんとかして解除を。 6:ジョセフ・ジョースターよ、私を押し上げてくれ。 [備考] ※首輪をつけています。 ※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。 ※暗闇大使とプッチの部屋の近くのトイレのロッカーに、『生まれたもの』を隠しました。 ※ホワイトスネイクの幻覚攻撃が制限により体力が大きく消耗し、『外部からの刺激』がなくとも矛盾点を見つければ幻覚から目が覚めます。 【伊藤博士@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]後頭部に異変、少し興奮気味 [装備]無し [道具]無し [思考・状況] 1:バダンに反抗する覚悟を決めた。 2:現在の状況に混乱 [備考] ※首輪をしていません。 ※解除された首輪が、自室の棚に隠してあります。 ※赤木しげるは、大首領により殺害されたものと判断しました。 ――サザンクロス司令室 「ホワイトスネイクがパピヨンと戦闘を開始したようです」 「被害状況は?」 「はっ、No.1のコマンドロイドとNo.5の再生怪人は全滅、また構成員の3分の1が殺害されました」 あまりの被害の多さに暗闇大使の顔が苦いものに変わる。 失態だった。よもやここまで被害を出すとは暗闇大使自身も思ってみなかったのだ。 暗闇大使は決心する。これ以上の被害を出すようでは自らの沽券に関わると。 暗闇大使が腰を上げた。 「プッチばかりには任せておけん、私が出向く。ここは任せるぞ」 構成員の返事を聞く事なく、暗闇大使が司令室を出た。 暗闇大使が出たのを確認すると、構成員達は人知れず溜息を着いた。 「虫けらが如きがいい気になりすぎたな」 こめかみに青筋を浮かべた暗闇大使の表情が残虐な笑みを浮かべる。 BADANに唾する愚か者に自らの手で制裁を加えるために。 その目は怒りにより赤く血走り、その両手は固く握られている。 帝王パピヨン、その眼前に立ちはだかる二つの障壁はあまりにも大きい。 【マップ外/サザンクロス内廊下 二日目 昼】 【暗闇大使@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]健康・激しい怒り [装備]エニグマのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]不明 [思考・状況] 基本:大首領の命令のままに。 1:パピヨンを自らの手で殺害する。 [備考] ※首輪をつけてます。 ※ガモン大佐がつけている首輪には、エネルギー抑制装置、盗聴器、GPSが付けられていません。 ※しかし起爆装置は点けられていませんが、付いてはいます。 ※その為にスタンドDISCが使えます。 ※プッチに大して少し不信感を抱いていたが、現在はある程度信用している。 ※赤木しげるは、大首領により殺害されたと思い込んでいます。 [共通備考] ※No.1のコマンドロイド部隊と、No.5の再生怪人部隊が全滅し、BADAN構成員の3分の1が死亡しました。 |242:[[襲来!蝶男の帝王舞]]|[[投下順>第201話~第250話]]|244:[[ふしぎなおくりもの]]| |249:[[あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を]]|[[時系列順>第6回放送までの本編SS]]|247:[[帝王賛歌]]| |242:[[襲来!蝶男の帝王舞]]|蝶野攻爵(パピヨン)| 247:[[帝王賛歌]]| ----

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