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あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を(後編)」(2008/10/23 (木) 23:17:44) の最新版変更点

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**あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を(後編) ◆40jGqg6Boc ◇  ◆  ◇ 「デルフリンガー……徳川さん、ゆっくりと眠ってくれ……」 学校から少しはなれた場所。 一段と土が盛り上がった場所を振り返り、村雨がそう言って立ち去ってゆく。 出来るものであればもっと時間を掛けて、立派な墓を造ってやりたい。 だが、生憎、碌な時間はないため、村雨は下唇を噛みながら、自分の前を歩くかがみとエレオノールの元へ進む。 既に涙は流れていない。 涙を流しきる時間は、無力さを悔しむ時間、デルフリンガーと光成を悼む時間は充分に経過したから。 「村雨さん、やはり急がねばなりませんね」 「ああ、そうだな……」 口を開いたのはエレオノール。 首輪を外したため、今までその存在をBADANから隠すために発言を避けてきたエレオノール。 しかし、エレオノールは惜しげもなく言葉を発し、村雨とかがみもそれを不自然とは思わない。 何故なら既にBADANの親玉、大首領にエレオノールの生存はバレている。 ならば、今更エレオノールの生存を隠す事もないと彼らは決めた。 「俺と葉隠の力も元通りになっている……この力で奴らを叩く、大首領と覚悟の祖父……そう、徳川さんを殺した葉隠四郎もまとめてッ! 大首領の口振りから奴は俺達との闘いを望んでいる。何があったかはわからないが……この機会を利用しない手はない。 直ぐに皆と合流するぞ……独歩と運良く出会えれば良いんだがな」 そしてそれは首輪の解除の事も言えた。 首輪によって制限された力では大首領には全く叶わない。 今までは首輪を考えもなしに解除すれば、BADANの不審をかう事を恐れていた彼ら。 しかし、先程の大首領の口振りから彼は自分達が暗雲を抜ける事を希望している。 村雨の記憶からBADANの全てを握っていると思われる大首領。 そんな大首領の意思はなによりも優先され、村雨達が彼らの本拠地へ辿り着くまで手出しを行う可能性は低いと思える。 よって、彼らは一種の賭けに出て、全員の首輪を外した。 また、核鉄には解除した首輪を巻き付けて、パピヨンのように武装錬金が発動出来る事は確認済み。 BADAN側は首輪の反応が消えたため、不審に思っているのは間違いないだろう。 ならばやるべき事は一つ。 今すぐにホテルへ戻り、アカギ、服部、ジョセフ、独歩と合流し、暗雲を突き抜けるしかない。 だが、生憎ホテルは禁止エリアは以前の放送で禁止エリアに設定されている。 当然独歩は移動している筈だがどこへ向かっているかはわからない。 服部達が向かった神社か、それとも自分達が今居る学校か……二つに一つの確率。 距離的に考えれば神社の方が近く、独歩が向かっている可能性も高い。 しかし、万が一学校の方へ向かっている場合、すれ違いになり合流が遅くなる事も有り得るだろう。 禁止エリアにされた時の事も予め決めておけば良かったなと、今更ながら後悔した彼ら。 結局、少しの間此処で独歩を待ち、ある程度の時間が経過した後服部達が居る神社、もしくはホテル周辺へ向かう事に決めた。 時間も惜しいが何より独歩との合流も重要であるからだ。 そして暗雲を突き抜けた後はどうするか。 考えるまでも無い。 螺旋によって殺された光成、そして大首領率いるBADANを彼ごと叩き潰す。 覚悟の話からこの世に螺旋を使える者は、散以外に零式防衛術創始者である葉隠四郎しか居ないらしい。 恐らく強化外骨格開発のために協力を求められたのだろう。 それが双方望むべき協力関係かどうかはわからない。 だが、四郎は既に何千人も虐殺した男らしく、倒すべき敵を考えて可笑しくはないだろう。 「ええ、そうね……。 そういえば、葉隠君とヒナギク遅いな……何処で話してるんだろう」 「私が見てきます」 そんな時かがみのふとした言葉に答え、エレオノールが何処へ走り去る。 既にデルフリンガーと光成を埋めてから数十分以上が経過し、充分に追悼を終えた覚悟はヒナギクに話があると言い、彼女と何処か別の場所へ行った。 流石に目の前光成が死んだ事もあり、かがみはそんな二人を茶化す気にはなれなかった。 きっと、あの時不自然にギクシャクとしていた態度に何か関係があるのだろう。 よってあまり二人を心配している気持ちはなかったが。 そして、その場には村雨とかがみの二人が残った。 暫く二人とも特に何も話さそうとしないため、静寂が流れ始める。 「……すまないな、また俺は守れなかった。俺の完敗だ……」 悔しそうに呻く、村雨。 かがみはどうやって声を掛けてやればいいのかわからない。 気安く気にするなとはいえない。 人一人が実際に死んでしまったのだから。 だから、かがみは顔を上げて口を開く。 少しでも村雨の助けになる事を願いながら―― 「頑張ろう。私達、皆で徳川さん達の分も頑張ろう……今はそれだけしかないわ。 きっとね……」 村雨に言葉を投げ掛けた。 控えめながらかがみの表情に映る笑顔。 それは穏やかで、村雨にとって懐かしい思い出を呼び戻させるもの。 一度は手放してしまった、決して忘れたくは無かった記憶。 今は取り戻す事が出来た記憶をかがみの笑顔から噛み締め、そしてそれは村雨の生きる糧となる。 そう。幼い頃、いつも救われ、いつの日かは自分が絶対に守り通すと誓い、結局は失ってしまったもの。 「ああ、そうだな……」 姉の笑顔を再び思い出しながら、村雨は頷く。 BADANとの最終決戦――その時は刻一刻と近づいていた。 ◇  ◆  ◇ 村雨とかがみが二人きりになったほぼ同時刻。 デルフリンガー、光成の追悼を終えて、覚悟とヒナギクは学校のグラウンドに居た。 酷く真剣な表情を互いに浮べながら。 「ヒナギクさん、私は考えた……」 ゆっくりと口を開く覚悟。 既にヘルメットは脱いでおり、覚悟の口元の動きはヒナギクの視界にはっきりと映っている。 覚悟は先程の戦闘で負ったであろう疲れや負傷は微塵も見せない。 そんな覚悟を見てヒナギクは相変わらず強い人だなと、心の中で呟き、思う。 自分に向けられた覚悟の言葉に頷き、次に続くであろう彼の言葉を待ちながら。 「私が持つものは零式。 只、悪鬼を打ち倒すための威力(ちから)であり、屍山血河を築く事しか出来ず、人々の未来は創るコトは出来ない。 だが、私は零式に頼るしかない。勿論、苦痛に感じるコトは全くない。 私には零式を操り、果たさなければならない使命があるから……。 もう、これ以上悪鬼共に……徳川殿のような人々の生命を弄ばせんためにも……!」 覚悟の言葉の語気が強まる。 思わず拳を握り、不器用な自分を覚悟は恥じる。 只、零式防衛術で敵を砕く事しか出来ない自分を。 ヒナギクは頷くだけで無言のまま。 何も言葉が思いつかないわけではない。 只、どうしても口を開けなかっただけの事。 何故なら覚悟の表情がとても険しく――それでいて何かを思い悩んでいるように見えたから。 「そして零式は己を、己の感情を殺し常に流水の如く冷静な精神(こころ)で完成される。 敵に対する怒りや憎しみも抱いてはいけない。それらは拳を曇らせてしまう。 只、自分を殺すだけが必要なり……だからだ、だからヒナギクさん…………」 覚悟の表情が一瞬、ほんの少し歪む。 その時、ヒナギクは確信した。 自分が先程感じ取った疑問。 覚悟が見せた表情からどうにも気になった事。 そう。覚悟が口を開きながら、何かに思い悩んでいる事が確実的な事をヒナギクは確信した。 また同時にもう一つ重要な事も。 それは覚悟が今から言おうとしている事が、彼が一番言いたい言葉であるという事実。 自然にヒナギクの身体に緊張が走る。 今まで何度も顔を合わせていた覚悟の表情を見つめ、彼の言葉を待つ。 一言も覚悟の言葉を聞き逃さないように。 そんな意思を両目の視線に乗せて、ヒナギクは覚悟の口元が動くのを見つめ続け、やがて覚悟が言葉を口にする。 大きい声ではない、良く通る声で。 「私の人生に愛はいらない」 ヒナギクに短く言い放った。 覚悟の表情に映る感情。 先程までは確かに迷いが生じていた顔には、最早目に見える迷いはない。 「BADANに我が大祖父上、葉隠四郎が居るコトがわかった今、尚更私は零と共に因果を極めなければならない。 邪眼の瞳を持ち、今もなお彷徨える亡霊、葉隠四郎を野放しにするのは葉隠一族の恥。 徳川殿の、零を始めとした英霊達の無念を晴らす為にも、葉隠四郎は葉隠一族の名に賭けて私が必ず倒す。 だから、ヒナギクさん。 以前、君が言ったコトには私も――」 続けて覚悟は口を開く。 葉隠四郎は先の戦争の大罪人。 幾ら、血が繋がった者でも許せるわけにはいかない。 死んでいたと思われる四郎をこのまま野放しにする。 四郎の生存確認は覚悟に以前よりも自分に課せられた使命の重さを再認識させた。 そしてそれは自分を愛していたと言ってくれたヒナギクに、自分には男女の愛は必要ないと言い放つ覚悟すらも持たせてくれた。 直前まで生じた小さな迷いも完璧に断たせる程に。 更に覚悟の言葉は続き、その内容は以前、ヒナギクが覚悟の言った事について。 そう。ヒナギクがもう、覚悟を愛さないといった言葉に対する返事の事。 (そうだ、これで終わる。 これさえ言えば……また、俺達は元通りの仲間だ) 肯定の言葉を自分に言い聞かせる覚悟。 ヒナギクに言われるまでは微塵も気づかなかった。 だが、今となっては自分が崩れそうな時、いつもヒナギクに助けられたあの時を思い出せば――ゆれていたかもしれない。 自分を優しく、時には叱咤しながら言葉をくれたヒナギクの存在が他の仲間より大きなものになっていたかもしれない。 この殺し合いが始まって、直ぐに出会った桃色の髪の少女、ルイズとゲームセンターに行った時に感じたものと同じようなもの。 生憎、ルイズと過ごした時間はヒナギクに較べて短く、その感情は小さいものであったため、正体はあの時の覚悟にはわからなかった。 あの感情を更に大きくさせたもの。所謂、男女の恋心を自分はヒナギクに抱いていたのかもしれない。 いや、きっとそうだったに違いない。そうでなければここまで悩みぬいたわけがない。 そう。自分がヒナギクに惹かれていたのは最早、覆い隠せない事実。 しかし、覚悟は零式の教えに則り抱いてしまった感情を殺し、言葉を出そうとする。 勿論、あの時の返答の内容は今覚悟自身が言った言葉と同じもの――自分には愛はいらない。 自分も以前、君が言った言葉と全く同じ気持ち――自分も君を愛さないコトをヒナギクに伝えようとする。 だが、そんな時、突然覚悟の口元を何か柔らかい感触を持ち、温かいものが塞いだ。 「わかってるわ……私にもわかってるから、最後まで言わないで葉隠くん」 声を出したのは当然、覚悟の目の前に居たヒナギク。 見れば覚悟が口を開いている間に近づき、右の中指と人差し指を突き出して、彼の唇を押さえている。 指先に感じる覚悟の感触に少し、ヒナギクは顔を赤らめながら口を開く。 その表情には、不思議と覚悟の言葉に対する動揺やショックといったようなものはなかった。 寧ろ、どこかあっけらかんとした様子さえも窺える。 やがて突き出した指をゆっくりと戻し、半ば唖然とした覚悟にヒナギクは面と向かって言う。 「葉隠くんと零は皆の戦士なんでしょ? 助けを求めている皆を助ける……そう、アニメに出てくる正義のヒーローのような感じかな。 だったら、私だけを特別扱いするわけにいかないわ。 そんな不公平は駄目だもの。だから、私も貴方を特別扱いしない。 私達はこの殺し合いに反抗する仲間であって只の友達……それだけよ」 依然、ヒナギクが浮べる表情には迷いのような感情はない。 逆に清清しい程にヒナギクは毅然とした態度を取り、言葉を並べる。 覚悟は只、驚いたような表情で頷くだけで何も言わない。 ヒナギクの反応が自分の予想を越えたものであっただめだろう。 「だから、約束しましょう、葉隠くん。 もう、お互いを絶対に愛さないってコトをね……」 腰に両手を当て、覚悟の顔を覗き込むようにヒナギクは口を開く。 真剣な眼差しが覚悟を射抜く。 自分に向けられた視線に乗せられたヒナギクの真意は覚悟にはよくわからない。 だが、ヒナギクの言葉に対しての答えは悩みぬいた結果、既に出ている。 先程言ったようにヒナギクをもう、愛さない事。 その意思には変わりはなく、覚悟は大きく頷く。 そんな覚悟の反応を見て、ヒナギクは満足げな表情を浮べ、優しげな笑みを見せた。 「うん、よろしい! じゃあ、村雨さん達に直ぐに出発しようって言わないとね」 「ああ……」 「あ、私はちょっと用があるから先に行ってくれないかしら。 大丈夫、直ぐに追いつくから」 「り、了解」 そういってヒナギクは覚悟の背中を叩き、彼を急かす。 零を着装しているため、あまり衝撃は覚悟に伝わらない。 それでもヒナギクの急な行動に覚悟は驚かされ、早足気味に歩く結果となった。 二人分のデイバックを担ぎ、覚悟はヒナギクから離れていく。 『覚悟よ……辛い選択であっただろうが、ヒナギクが言うようにお前は牙なき人々の剣。 誰か一人のための戦士ではないのだからな……』 「わかっているさ、零。 俺もヒナギクさんと同じ意思。彼女と交わした約束は必ず守る……」 「ならばよい。では覚悟……必ず奴らを倒すぞ。 我らの倒すべき悪鬼、葉隠四郎もあの強大な力を誇る大首領もな」 「……応!」 零との交信で覚悟は己の決意を高める。 そう。自分には葉隠四郎と大首領を倒すという大義を為さなければならない。 そのためには恋など不要だ。 自分にはヒナギクを始めとした仲間が、心を繋いだ超鋼がある。 これ以上何を望めるだろうか。 いや、望めはしない。充分すぎる程の後方支援が自分にはある。 ヒナギクにどんな心の変化があっただろうかは気にはなるが、詳細はわからない。 だが、所詮、拳を奮うしか能がない自分には女子の心はとても未知なもの。 それならば、いっそ何も考えない方がいい。 その方が己の零式にも、ヒナギクにとっても都合がいい事であろうと思ったから。 ほどなくして、覚悟はある場所へ再び辿り着く。 其処は学校に来てから、村雨達に教えてもらった場所。 「川田……」 そう嘗ての友、川田章吾の小さな墓だった。 彼らの仲間、柊つかさを津村斗貴子の凶刃によって失い、修羅の道へ進んでしまった男。 斗貴子と組み、つかさの友人である泉こなたを殺してしまい、斗貴子も殺し、そしてこなたと仲が良かったらしいパピヨンに殺され、その人生を閉じた。 殺されたから殺したの連続。 もし神がこの世に居るのであれば何故、これほどまでに過酷な運命を用意したのだろうか。悲しみの連鎖が綺麗に繋がれ、何人も死ぬ結果となった惨劇に覚悟は心を痛める。 その惨劇の裏にいつも男女の愛が関係していた事が尚更、悲壮さを強調していた。 だが、だからといって川田に何も罪がないわけではない。 同情できる理由、わかってやりたい理由があっても人を二人も殺した事実は拭えない。 殺し合いに乗っていないこなたは勿論、心身が疲弊しきった斗貴子をきっと抵抗させる間もなく殺したのだから。 また、零によって川田の脳髄から情報を得るのを覚悟はしなかった。 以前、共に語らい、友好を築いた友の頭部を壊し、脳を取り出す事はなんとなく気が引けたから。 やがて、覚悟は徐に口を開く。 「お前は罪を犯した。今、お前がやるコトは黄泉の国で己の罪を償うのみ……。 だから、俺はお前を悪鬼とは言わない。 いや、悪鬼なんかじゃない。 お前も村雨殿や才賀殿と同じく、悲しき存在、そして我らと肩を並べるべき存在であったと俺は信じる……! だから、俺はこの言葉を送ろう、川田よ…………」 思い浮かべるのはあの懐かしき記憶。 初めて、川田、つかさ、ヒナギクの三人と出会った時。 半日ほどの時間でしかなかったのに色々なことがあった。 嬉しい事も可笑しい事も、そして身が裂けるような事も。 今でも鮮明に覚えているそれらを胸に秘めて、覚悟は言葉を送る。 「我らは常に戦友なり! 決してつかささんとの愛の詩を忘れはしなかったお前を……俺は一人の戦士であったと認めよう!」 言葉を言い終え、覚悟はその場を立ち去る。 その力強い背中を見せたまま、決して振り返る事なく進む。 そして覚悟は顔を上げ―― 「ゆれるな俺の心……既に進むべき道は一つ!」 全ての迷いを、懐かしいあの記憶を殺し、覚悟は只、進み続ける。 覚悟が村雨達の元へ向かった事でその場にはヒナギクが一人残される。 覚悟が充分離れた事を確認し、ヒナギクはふと溜息をついた。 大きく息を吐き、その場に座り込む。 別に立っていられなくなるほど疲れ果てたわけではない。 只、なんとなく座りたかっただけ。 大きな仕事をやり遂げた時に感じられる達成感のようなものを、ヒナギクは噛み締める。 ふと視線を上に上げれば日光が差し込む、蒼穹の青空がどこまでも広がっており、ヒナギクは暫しその美しさに見とれてしまった。 「うん、これで良かったのよね……これで……」 自分が出した答えを何度も考え、ヒナギクはその都度それは正しかったのだと言い聞かせる。 夢の中でつかさと言葉を交わし、今一度覚悟を愛するべきか愛さないべきかを悩み、彼に会ってから全てを決めようとした自分。 学校で待つ仲間達に余計な心配を掛けないように、精一杯平常さを保ち、脚を運んだつもりであった。 だが、教室を出ようとする覚悟の何処か悩んでいるような顔を見て、何も言えなくなった。 きっと自分が突然、愛していたと言ってしまい、流石の覚悟も多少は混乱してしまったのだろう。 一方的に自分の気持ちだけを伝え、覚悟の言葉を待たずに彼を突き放してしまった自分。 そんな自分を少し後悔したため、なかなか覚悟に話しを持ちかける事は出来なかった。 やがて、村雨と覚悟の特訓を目の当たりにして、再度覚悟は自分と違う事を認識し、ヒナギクの決意は強まった。 「やっぱり、葉隠くんは違うんだ……ハヤテくんよりももっと違う……私達とは根本的にね」 BADANによって改造手術を受けた、尋常でない力を誇る村雨。 そんな村雨と同等にやりあう覚悟は、やはり自分とはあまりにも違いすぎる。 そう。あの夜、白皇学園で自分が待っていた綾崎ハヤテよりも。 自分の目の前で繰り広げられる闘いの規模の大きさに、ヒナギクは答えを決めかけた。 それは自分が以前言った事を突き通す事。 覚悟の足を引っ張らないために、彼の負担にはならない事。 即ち、身を引く事である。 やがて村雨と覚悟の闘いが終わり、大首領が現れ一連の出来事が終わりを告げた時。 ヒナギクの答えは完全に決まっていた。 「だって、葉隠くんにはやらないといけないコトがある……。 私なんかがあの人を迷わせて、それで死ぬコトになるなんて……私は絶対に嫌。 葉隠くんには死んで欲しくない、出来るものならば彼を支えたい。 けど私に出来るコトはあの人に較べてあまりにも小さい……だったら、彼の負担にならないようにするだけよ」 言っている事は数時間前に、覚悟に話した言葉を同じ。 だが、あの時よりもヒナギクの表情には更に固い決意が見える。 つかさは言った。『愛するのには理由はいらない』と。 確かにそうかもしれない。人を好きになった理由なんて聞かれてもパッと答えは出ない気がする。 結局、『好きになったから』と、特に理由っぽくない答えを返してしまいそう自分の姿をなんとなく想像してしまう。 だが、好きになって事により、相手にどんな影響を及ぼすか。 特にこの殺し合いではいつ命を落とすかもわからず、この先相手と一緒になれる可能性があるかもわからない。 それに愛を育む事で良い事だけが起こる訳でもない。 嘗ての仲間、川田とつかさは皮肉な事だがとても良い実例であり、大きすぎる悲しみをヒナギクに与えた。 結局、この場で他の人を愛してはいけない。 あの時と変わらない結論をヒナギクは下し、覚悟と約束を交わした。 もう、決して互いを愛さないコトを。 終にはっきりと口に出してしまい、覚悟に伝え、彼の同意を確認し、なんだかとても疲れたような感覚に陥る。 そんな時、ヒナギクに近寄る人影が一つあった。 「エレオノールさん……?」 「先ずは盗み聞きしてしまったコトを謝らせてください、ヒナギクさん」 「ってコトは……私が覚悟くんにふられたのも見たの?」 「? 良くわかりませんが一部始終はしっかりと……」 「あーそう……まいったわねぇ……あはは……」 「も、申し訳ございません!!」 「ん、いいわよ。気にしてないからほら、土下座はやめてってば」 今まで飛び出す機会がなかったエレオノール。 意図したわけではないが、結果として盗み聞きの形になった事をエレオノールはとてつもない勢いで謝る。 そんなエレオノールをヒナギクは笑みを浮べながら、宥め始める。 自分がやった事には後悔はなく、別に見られてもそこまで気にする事ではない。 おずおずと子犬のように顔を上げ、此方を見てくるエレオノールを見て、次第に元気が涌いてきたような感覚に陥った。 屈みこんでエレオノールを立たせる事を補助して、ヒナギクは立ち上がる。 「さっ、行きましょう。皆が待ってるわ」 そう行ってヒナギクは歩き出す。 足取りは力強いものであり、エレオノールから次第に離れてゆく。 やがて、その場に棒立ちになっていたエレオノールも直ぐにヒナギクの後を追ってゆく。 (ギイ先生、私には愛の事についてはよくわかりません。 ですが、一つだけわかるコトがあります……) 持ってきたデイバックを担ぎ、己の胸に手を当てて、歩くエレオノール。 自分の心臓の鼓動を掌越しに感じ、己の生命の歯車が止まっていない事をしっかりと認識。 自分のやるべき目的を今一度、己の身体に刻む。 (ヒナギクさん達は死なせません。 私が追い求めた笑顔……彼女達がそんな笑顔を浮かべ、愛し合える未来。 その未来が広がる世界を創るためにも、私はこの舞台に立ち続けましょう。 BADANを倒すというフィナーレを迎えるまでは……必ず……!) 自然と両腕に力が篭り、エレオノールは自分の鼓動が早まったのを感じる。 それは戦の直前に武者震いを起こす戦士の如く。 そんな時、エレオノールには一つだけ気づいていなかった。 自分の前を歩いてゆく、ヒナギクの頬から一滴の雫が垂れ落ちた事を。 なんのために流した涙なのだろうか。 明確な理由はわからない。流したヒナギク自身にもよくわかっていない だが、一つだけヒナギクに思い当たる節もあった。 自分がほんの一滴の涙を流した理由。 きっとそれは最後の涙だったのだろう。 (さよなら、私の小さな恋…………) 覚悟に抱いた、淡い想いを完全に洗いきる涙だったのかもしれない。 【C-4 学校周辺 二日目 午前】 【葉隠覚悟@覚悟のススメ】 [状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり 首輪が解除されました。     胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、     両腕の骨にひびあり、零の推進剤により高速移動中 [装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ [道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟) [思考] 基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。 1:村雨とかがみの元へ向かう。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す 4:葉隠四郎を必ず倒す 5:ヒナギクを愛さない 【備考】 ※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。 ※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。 ※ラオウを倒した男が劉鳳だと知りました ※零と一体になる事に迷いはありません ※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。 ※アカギと情報交換をしました。 ※首輪を解除したため、身体能力への制限は解けました。 【零についての備考】 ※零の探知範囲は制限により数百メートルです。 ※零はパピヨンを危険人物と認識しました。 ※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。 ※零は村雨の体を調べ、その構成が、極めて高位の霊魂ならば、強化外骨格同様受け入れられる構造になっていると知ります 『大首領を殺す作戦』 •大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。 •そのためには大首領を弱らせる必要がある。 •強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。 【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中 疲労(小)首輪が解除されました。 [装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具 [道具]地図、時計、コンパス、 女装服     音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE     文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、     缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)     マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、[思考] 基本:BADANを潰す! 1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る 2:覚悟達を待ち、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:穿孔キックを完成させる。 4:パピヨンを止める。 5:仲間の首輪を外す。 6:かがみを守る [備考] ※傷は全て現在進行形で再生中です。 ※参戦時期は原作4巻からです。 ※村雨静(幽体)はいません。 ※連続でシンクロができない状態です。 ※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。 ※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。 ※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました ※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。 ※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※川田章吾の死体は、埋葬されました。 ※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。 ※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます ※デルフリンガーは破壊されました。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 [状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。 [装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた [道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳 [思考・状況] 基本:BADANを倒す。 1:村雨とかがみの元へ行く。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:覚悟を愛さない。 [備考] ※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。 ※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。 ※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。 ※エレオノールと和解しました 。 ※服は現地調達したものに着替えました。 ※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。 ※アカギと情報交換をしました。 ※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます 【柊かがみ@らき☆すた】 [状態]:全身に強度の打撲(ある程度は回復)、左腕欠損(止血済み)、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。 [装備]:巫女服 [道具]:二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金 ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン [思考・状況] 基本:BADANを倒す 1:みんな元気になれっ……もちろん自分も 2:覚悟達を待ち、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。 4:仲間の首輪を外す。 [備考] ※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。 ※零の暗雲についての推測を知りました。 ※かがみの主催者に対する見解。 ①主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている ②主催者は時を越える"何か"を持っている ③主催者は①・②の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある ④だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。 ※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。 ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。 清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。 神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。 ※ステルス機能について 漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、 解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。 ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。 ※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています ※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました ※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(二アデスハピネス)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます 【才賀エレオノール@からくりサーカス】 [状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。 [装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり) [道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの [思考・状況] 基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。 1:村雨とかがみの元へ行く。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。 4:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。 5:一人でも多く救う。 6:仲間の首輪を外す。 7:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い) [備考] ※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。 ※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。 ※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。 ※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。 ※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。 ※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。 ※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。 ※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。 ※自転車@現実は消防署前に落ちています。 ※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。  才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。 ※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。 ※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。 ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。 【空間の牢獄 二日目 昼】 【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本:空間の牢獄を脱出する。 1:赤木との再会。 2:肉体を得る。そして、赤木のいう「酔い」を味わう。 3:参加者がサザンクロスに突入するのを待つ 【備考】 ※大首領はあくまで、「肉体を得る」ことを優先しています。 ※強弱は拘っていません。また、バトルロワイヤル開催の理由は、ただの戯れ。 ※一時的に牢獄を脱出できましたが、持続的ではありません。明確な理由は不明です。 【サザンクロス内の一室 二日目 昼】 【葉隠四郎@覚悟のススメ】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:不明 [思考・状況] 基本:『凄』完成、大首領の復活の暁に、自分の世界で神国建国を行う 1:大首領の指示に従う 2:『凄』の様子をチェックする、もしくは一先ず休憩する。 3:覚悟の実力を見定める。 【備考】 ※首輪はついていますが能力制限装置はなく、起爆装置のみです。 ※血涙島で覚悟と散を待っている時に集められました。 [[前編>あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を]] |248:[[ダイヤモンドダスト・クルセイダース]]|[[投下順>第201話~第250話]]|:[[]]| |248:[[ダイヤモンドダスト・クルセイダース]]|[[時系列順>第6回放送までの本編SS]]|:[[]]| |240:[[運命のルーレット叩き壊して]]|葉隠覚悟|:[[]]| |245:[[チェイン]]|村雨良|:[[]]| |246:[[雛菊想恋]]|桂ヒナギク|:[[]]| |245:[[チェイン]]|柊かがみ|:[[]]| |245:[[チェイン]]|才賀エレオノール|:[[]]| ----
**あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を(後編) ◆40jGqg6Boc ◇  ◆  ◇ 「デルフリンガー……徳川さん、ゆっくりと眠ってくれ……」 学校から少しはなれた場所。 一段と土が盛り上がった場所を振り返り、村雨がそう言って立ち去ってゆく。 出来るものであればもっと時間を掛けて、立派な墓を造ってやりたい。 だが、生憎、碌な時間はないため、村雨は下唇を噛みながら、自分の前を歩くかがみとエレオノールの元へ進む。 既に涙は流れていない。 涙を流しきる時間は、無力さを悔しむ時間、デルフリンガーと光成を悼む時間は充分に経過したから。 「村雨さん、やはり急がねばなりませんね」 「ああ、そうだな……」 口を開いたのはエレオノール。 首輪を外したため、今までその存在をBADANから隠すために発言を避けてきたエレオノール。 しかし、エレオノールは惜しげもなく言葉を発し、村雨とかがみもそれを不自然とは思わない。 何故なら既にBADANの親玉、大首領にエレオノールの生存はバレている。 ならば、今更エレオノールの生存を隠す事もないと彼らは決めた。 「俺と葉隠の力も元通りになっている……この力で奴らを叩く、大首領と覚悟の祖父……そう、徳川さんを殺した葉隠四郎もまとめてッ! 大首領の口振りから奴は俺達との闘いを望んでいる。何があったかはわからないが……この機会を利用しない手はない。 直ぐに皆と合流するぞ……独歩と運良く出会えれば良いんだがな」 そしてそれは首輪の解除の事も言えた。 首輪によって制限された力では大首領には全く叶わない。 今までは首輪を考えもなしに解除すれば、BADANの不審をかう事を恐れていた彼ら。 しかし、先程の大首領の口振りから彼は自分達が暗雲を抜ける事を希望している。 村雨の記憶からBADANの全てを握っていると思われる大首領。 そんな大首領の意思はなによりも優先され、村雨達が彼らの本拠地へ辿り着くまで手出しを行う可能性は低いと思える。 よって、彼らは一種の賭けに出て、全員の首輪を外した。 また、核鉄には解除した首輪を巻き付けて、パピヨンのように武装錬金が発動出来る事は確認済み。 BADAN側は首輪の反応が消えたため、不審に思っているのは間違いないだろう。 ならばやるべき事は一つ。 今すぐにホテルへ戻り、アカギ、服部、ジョセフ、独歩と合流し、暗雲を突き抜けるしかない。 だが、生憎ホテルは禁止エリアは以前の放送で禁止エリアに設定されている。 当然独歩は移動している筈だがどこへ向かっているかはわからない。 服部達が向かった神社か、それとも自分達が今居る学校か……二つに一つの確率。 距離的に考えれば神社の方が近く、独歩が向かっている可能性も高い。 しかし、万が一学校の方へ向かっている場合、すれ違いになり合流が遅くなる事も有り得るだろう。 禁止エリアにされた時の事も予め決めておけば良かったなと、今更ながら後悔した彼ら。 結局、少しの間此処で独歩を待ち、ある程度の時間が経過した後服部達が居る神社、もしくはホテル周辺へ向かう事に決めた。 時間も惜しいが何より独歩との合流も重要であるからだ。 そして暗雲を突き抜けた後はどうするか。 考えるまでも無い。 螺旋によって殺された光成、そして大首領率いるBADANを彼ごと叩き潰す。 覚悟の話からこの世に螺旋を使える者は、散以外に零式防衛術創始者である葉隠四郎しか居ないらしい。 恐らく強化外骨格開発のために協力を求められたのだろう。 それが双方望むべき協力関係かどうかはわからない。 だが、四郎は既に何千人も虐殺した男らしく、倒すべき敵を考えて可笑しくはないだろう。 「ええ、そうね……。 そういえば、葉隠君とヒナギク遅いな……何処で話してるんだろう」 「私が見てきます」 そんな時かがみのふとした言葉に答え、エレオノールが何処へ走り去る。 既にデルフリンガーと光成を埋めてから数十分以上が経過し、充分に追悼を終えた覚悟はヒナギクに話があると言い、彼女と何処か別の場所へ行った。 流石に目の前光成が死んだ事もあり、かがみはそんな二人を茶化す気にはなれなかった。 きっと、あの時不自然にギクシャクとしていた態度に何か関係があるのだろう。 よってあまり二人を心配している気持ちはなかったが。 そして、その場には村雨とかがみの二人が残った。 暫く二人とも特に何も話さそうとしないため、静寂が流れ始める。 「……すまないな、また俺は守れなかった。俺の完敗だ……」 悔しそうに呻く、村雨。 かがみはどうやって声を掛けてやればいいのかわからない。 気安く気にするなとはいえない。 人一人が実際に死んでしまったのだから。 だから、かがみは顔を上げて口を開く。 少しでも村雨の助けになる事を願いながら―― 「頑張ろう。私達、皆で徳川さん達の分も頑張ろう……今はそれだけしかないわ。 きっとね……」 村雨に言葉を投げ掛けた。 控えめながらかがみの表情に映る笑顔。 それは穏やかで、村雨にとって懐かしい思い出を呼び戻させるもの。 一度は手放してしまった、決して忘れたくは無かった記憶。 今は取り戻す事が出来た記憶をかがみの笑顔から噛み締め、そしてそれは村雨の生きる糧となる。 そう。幼い頃、いつも救われ、いつの日かは自分が絶対に守り通すと誓い、結局は失ってしまったもの。 「ああ、そうだな……」 姉の笑顔を再び思い出しながら、村雨は頷く。 BADANとの最終決戦――その時は刻一刻と近づいていた。 ◇  ◆  ◇ 村雨とかがみが二人きりになったほぼ同時刻。 デルフリンガー、光成の追悼を終えて、覚悟とヒナギクは学校のグラウンドに居た。 酷く真剣な表情を互いに浮べながら。 「ヒナギクさん、私は考えた……」 ゆっくりと口を開く覚悟。 既にヘルメットは脱いでおり、覚悟の口元の動きはヒナギクの視界にはっきりと映っている。 覚悟は先程の戦闘で負ったであろう疲れや負傷は微塵も見せない。 そんな覚悟を見てヒナギクは相変わらず強い人だなと、心の中で呟き、思う。 自分に向けられた覚悟の言葉に頷き、次に続くであろう彼の言葉を待ちながら。 「私が持つものは零式。 只、悪鬼を打ち倒すための威力(ちから)であり、屍山血河を築く事しか出来ず、人々の未来は創るコトは出来ない。 だが、私は零式に頼るしかない。勿論、苦痛に感じるコトは全くない。 私には零式を操り、果たさなければならない使命があるから……。 もう、これ以上悪鬼共に……徳川殿のような人々の生命を弄ばせんためにも……!」 覚悟の言葉の語気が強まる。 思わず拳を握り、不器用な自分を覚悟は恥じる。 只、零式防衛術で敵を砕く事しか出来ない自分を。 ヒナギクは頷くだけで無言のまま。 何も言葉が思いつかないわけではない。 只、どうしても口を開けなかっただけの事。 何故なら覚悟の表情がとても険しく――それでいて何かを思い悩んでいるように見えたから。 「そして零式は己を、己の感情を殺し常に流水の如く冷静な精神(こころ)で完成される。 敵に対する怒りや憎しみも抱いてはいけない。それらは拳を曇らせてしまう。 只、自分を殺すだけが必要なり……だからだ、だからヒナギクさん…………」 覚悟の表情が一瞬、ほんの少し歪む。 その時、ヒナギクは確信した。 自分が先程感じ取った疑問。 覚悟が見せた表情からどうにも気になった事。 そう。覚悟が口を開きながら、何かに思い悩んでいる事が確実的な事をヒナギクは確信した。 また同時にもう一つ重要な事も。 それは覚悟が今から言おうとしている事が、彼が一番言いたい言葉であるという事実。 自然にヒナギクの身体に緊張が走る。 今まで何度も顔を合わせていた覚悟の表情を見つめ、彼の言葉を待つ。 一言も覚悟の言葉を聞き逃さないように。 そんな意思を両目の視線に乗せて、ヒナギクは覚悟の口元が動くのを見つめ続け、やがて覚悟が言葉を口にする。 大きい声ではない、良く通る声で。 「私の人生に愛はいらない」 ヒナギクに短く言い放った。 覚悟の表情に映る感情。 先程までは確かに迷いが生じていた顔には、最早目に見える迷いはない。 「BADANに我が大祖父上、葉隠四郎が居るコトがわかった今、尚更私は零と共に因果を極めなければならない。 邪眼の瞳を持ち、今もなお彷徨える亡霊、葉隠四郎を野放しにするのは葉隠一族の恥。 徳川殿の、零を始めとした英霊達の無念を晴らす為にも、葉隠四郎は葉隠一族の名に賭けて私が必ず倒す。 だから、ヒナギクさん。 以前、君が言ったコトには私も――」 続けて覚悟は口を開く。 葉隠四郎は先の戦争の大罪人。 幾ら、血が繋がった者でも許せるわけにはいかない。 死んでいたと思われる四郎をこのまま野放しにする。 四郎の生存確認は覚悟に以前よりも自分に課せられた使命の重さを再認識させた。 そしてそれは自分を愛していたと言ってくれたヒナギクに、自分には男女の愛は必要ないと言い放つ覚悟すらも持たせてくれた。 直前まで生じた小さな迷いも完璧に断たせる程に。 更に覚悟の言葉は続き、その内容は以前、ヒナギクが覚悟の言った事について。 そう。ヒナギクがもう、覚悟を愛さないといった言葉に対する返事の事。 (そうだ、これで終わる。 これさえ言えば……また、俺達は元通りの仲間だ) 肯定の言葉を自分に言い聞かせる覚悟。 ヒナギクに言われるまでは微塵も気づかなかった。 だが、今となっては自分が崩れそうな時、いつもヒナギクに助けられたあの時を思い出せば――ゆれていたかもしれない。 自分を優しく、時には叱咤しながら言葉をくれたヒナギクの存在が他の仲間より大きなものになっていたかもしれない。 この殺し合いが始まって、直ぐに出会った桃色の髪の少女、ルイズとゲームセンターに行った時に感じたものと同じようなもの。 生憎、ルイズと過ごした時間はヒナギクに較べて短く、その感情は小さいものであったため、正体はあの時の覚悟にはわからなかった。 あの感情を更に大きくさせたもの。所謂、男女の恋心を自分はヒナギクに抱いていたのかもしれない。 いや、きっとそうだったに違いない。そうでなければここまで悩みぬいたわけがない。 そう。自分がヒナギクに惹かれていたのは最早、覆い隠せない事実。 しかし、覚悟は零式の教えに則り抱いてしまった感情を殺し、言葉を出そうとする。 勿論、あの時の返答の内容は今覚悟自身が言った言葉と同じもの――自分には愛はいらない。 自分も以前、君が言った言葉と全く同じ気持ち――自分も君を愛さないコトをヒナギクに伝えようとする。 だが、そんな時、突然覚悟の口元を何か柔らかい感触を持ち、温かいものが塞いだ。 「わかってるわ……私にもわかってるから、最後まで言わないで葉隠くん」 声を出したのは当然、覚悟の目の前に居たヒナギク。 見れば覚悟が口を開いている間に近づき、右の中指と人差し指を突き出して、彼の唇を押さえている。 指先に感じる覚悟の感触に少し、ヒナギクは顔を赤らめながら口を開く。 その表情には、不思議と覚悟の言葉に対する動揺やショックといったようなものはなかった。 寧ろ、どこかあっけらかんとした様子さえも窺える。 やがて突き出した指をゆっくりと戻し、半ば唖然とした覚悟にヒナギクは面と向かって言う。 「葉隠くんと零は皆の戦士なんでしょ? 助けを求めている皆を助ける……そう、アニメに出てくる正義のヒーローのような感じかな。 だったら、私だけを特別扱いするわけにいかないわ。 そんな不公平は駄目だもの。だから、私も貴方を特別扱いしない。 私達はこの殺し合いに反抗する仲間であって只の友達……それだけよ」 依然、ヒナギクが浮べる表情には迷いのような感情はない。 逆に清清しい程にヒナギクは毅然とした態度を取り、言葉を並べる。 覚悟は只、驚いたような表情で頷くだけで何も言わない。 ヒナギクの反応が自分の予想を越えたものであっただめだろう。 「だから、約束しましょう、葉隠くん。 もう、お互いを絶対に愛さないってコトをね……」 腰に両手を当て、覚悟の顔を覗き込むようにヒナギクは口を開く。 真剣な眼差しが覚悟を射抜く。 自分に向けられた視線に乗せられたヒナギクの真意は覚悟にはよくわからない。 だが、ヒナギクの言葉に対しての答えは悩みぬいた結果、既に出ている。 先程言ったようにヒナギクをもう、愛さない事。 その意思には変わりはなく、覚悟は大きく頷く。 そんな覚悟の反応を見て、ヒナギクは満足げな表情を浮べ、優しげな笑みを見せた。 「うん、よろしい! じゃあ、村雨さん達に直ぐに出発しようって言わないとね」 「ああ……」 「あ、私はちょっと用があるから先に行ってくれないかしら。 大丈夫、直ぐに追いつくから」 「り、了解」 そういってヒナギクは覚悟の背中を叩き、彼を急かす。 零を着装しているため、あまり衝撃は覚悟に伝わらない。 それでもヒナギクの急な行動に覚悟は驚かされ、早足気味に歩く結果となった。 二人分のデイバックを担ぎ、覚悟はヒナギクから離れていく。 『覚悟よ……辛い選択であっただろうが、ヒナギクが言うようにお前は牙なき人々の剣。 誰か一人のための戦士ではないのだからな……』 「わかっているさ、零。 俺もヒナギクさんと同じ意思。彼女と交わした約束は必ず守る……」 「ならばよい。では覚悟……必ず奴らを倒すぞ。 我らの倒すべき悪鬼、葉隠四郎もあの強大な力を誇る大首領もな」 「……応!」 零との交信で覚悟は己の決意を高める。 そう。自分には葉隠四郎と大首領を倒すという大義を為さなければならない。 そのためには恋など不要だ。 自分にはヒナギクを始めとした仲間が、心を繋いだ超鋼がある。 これ以上何を望めるだろうか。 いや、望めはしない。充分すぎる程の後方支援が自分にはある。 ヒナギクにどんな心の変化があっただろうかは気にはなるが、詳細はわからない。 だが、所詮、拳を奮うしか能がない自分には女子の心はとても未知なもの。 それならば、いっそ何も考えない方がいい。 その方が己の零式にも、ヒナギクにとっても都合がいい事であろうと思ったから。 ほどなくして、覚悟はある場所へ再び辿り着く。 其処は学校に来てから、村雨達に教えてもらった場所。 「川田……」 そう嘗ての友、川田章吾の小さな墓だった。 彼らの仲間、柊つかさを津村斗貴子の凶刃によって失い、修羅の道へ進んでしまった男。 斗貴子と組み、つかさの友人である泉こなたを殺してしまい、斗貴子も殺し、そしてこなたと仲が良かったらしいパピヨンに殺され、その人生を閉じた。 殺されたから殺したの連続。 もし神がこの世に居るのであれば何故、これほどまでに過酷な運命を用意したのだろうか。悲しみの連鎖が綺麗に繋がれ、何人も死ぬ結果となった惨劇に覚悟は心を痛める。 その惨劇の裏にいつも男女の愛が関係していた事が尚更、悲壮さを強調していた。 だが、だからといって川田に何も罪がないわけではない。 同情できる理由、わかってやりたい理由があっても人を二人も殺した事実は拭えない。 殺し合いに乗っていないこなたは勿論、心身が疲弊しきった斗貴子をきっと抵抗させる間もなく殺したのだから。 また、零によって川田の脳髄から情報を得るのを覚悟はしなかった。 以前、共に語らい、友好を築いた友の頭部を壊し、脳を取り出す事はなんとなく気が引けたから。 やがて、覚悟は徐に口を開く。 「お前は罪を犯した。今、お前がやるコトは黄泉の国で己の罪を償うのみ……。 だから、俺はお前を悪鬼とは言わない。 いや、悪鬼なんかじゃない。 お前も村雨殿や才賀殿と同じく、悲しき存在、そして我らと肩を並べるべき存在であったと俺は信じる……! だから、俺はこの言葉を送ろう、川田よ…………」 思い浮かべるのはあの懐かしき記憶。 初めて、川田、つかさ、ヒナギクの三人と出会った時。 半日ほどの時間でしかなかったのに色々なことがあった。 嬉しい事も可笑しい事も、そして身が裂けるような事も。 今でも鮮明に覚えているそれらを胸に秘めて、覚悟は言葉を送る。 「我らは常に戦友なり! 決してつかささんとの愛の詩を忘れはしなかったお前を……俺は一人の戦士であったと認めよう!」 言葉を言い終え、覚悟はその場を立ち去る。 その力強い背中を見せたまま、決して振り返る事なく進む。 そして覚悟は顔を上げ―― 「ゆれるな俺の心……既に進むべき道は一つ!」 全ての迷いを、懐かしいあの記憶を殺し、覚悟は只、進み続ける。 覚悟が村雨達の元へ向かった事でその場にはヒナギクが一人残される。 覚悟が充分離れた事を確認し、ヒナギクはふと溜息をついた。 大きく息を吐き、その場に座り込む。 別に立っていられなくなるほど疲れ果てたわけではない。 只、なんとなく座りたかっただけ。 大きな仕事をやり遂げた時に感じられる達成感のようなものを、ヒナギクは噛み締める。 ふと視線を上に上げれば日光が差し込む、蒼穹の青空がどこまでも広がっており、ヒナギクは暫しその美しさに見とれてしまった。 「うん、これで良かったのよね……これで……」 自分が出した答えを何度も考え、ヒナギクはその都度それは正しかったのだと言い聞かせる。 夢の中でつかさと言葉を交わし、今一度覚悟を愛するべきか愛さないべきかを悩み、彼に会ってから全てを決めようとした自分。 学校で待つ仲間達に余計な心配を掛けないように、精一杯平常さを保ち、脚を運んだつもりであった。 だが、教室を出ようとする覚悟の何処か悩んでいるような顔を見て、何も言えなくなった。 きっと自分が突然、愛していたと言ってしまい、流石の覚悟も多少は混乱してしまったのだろう。 一方的に自分の気持ちだけを伝え、覚悟の言葉を待たずに彼を突き放してしまった自分。 そんな自分を少し後悔したため、なかなか覚悟に話しを持ちかける事は出来なかった。 やがて、村雨と覚悟の特訓を目の当たりにして、再度覚悟は自分と違う事を認識し、ヒナギクの決意は強まった。 「やっぱり、葉隠くんは違うんだ……ハヤテくんよりももっと違う……私達とは根本的にね」 BADANによって改造手術を受けた、尋常でない力を誇る村雨。 そんな村雨と同等にやりあう覚悟は、やはり自分とはあまりにも違いすぎる。 そう。あの夜、白皇学園で自分が待っていた綾崎ハヤテよりも。 自分の目の前で繰り広げられる闘いの規模の大きさに、ヒナギクは答えを決めかけた。 それは自分が以前言った事を突き通す事。 覚悟の足を引っ張らないために、彼の負担にはならない事。 即ち、身を引く事である。 やがて村雨と覚悟の闘いが終わり、大首領が現れ一連の出来事が終わりを告げた時。 ヒナギクの答えは完全に決まっていた。 「だって、葉隠くんにはやらないといけないコトがある……。 私なんかがあの人を迷わせて、それで死ぬコトになるなんて……私は絶対に嫌。 葉隠くんには死んで欲しくない、出来るものならば彼を支えたい。 けど私に出来るコトはあの人に較べてあまりにも小さい……だったら、彼の負担にならないようにするだけよ」 言っている事は数時間前に、覚悟に話した言葉を同じ。 だが、あの時よりもヒナギクの表情には更に固い決意が見える。 つかさは言った。『愛するのには理由はいらない』と。 確かにそうかもしれない。人を好きになった理由なんて聞かれてもパッと答えは出ない気がする。 結局、『好きになったから』と、特に理由っぽくない答えを返してしまいそう自分の姿をなんとなく想像してしまう。 だが、好きになって事により、相手にどんな影響を及ぼすか。 特にこの殺し合いではいつ命を落とすかもわからず、この先相手と一緒になれる可能性があるかもわからない。 それに愛を育む事で良い事だけが起こる訳でもない。 嘗ての仲間、川田とつかさは皮肉な事だがとても良い実例であり、大きすぎる悲しみをヒナギクに与えた。 結局、この場で他の人を愛してはいけない。 あの時と変わらない結論をヒナギクは下し、覚悟と約束を交わした。 もう、決して互いを愛さないコトを。 終にはっきりと口に出してしまい、覚悟に伝え、彼の同意を確認し、なんだかとても疲れたような感覚に陥る。 そんな時、ヒナギクに近寄る人影が一つあった。 「エレオノールさん……?」 「先ずは盗み聞きしてしまったコトを謝らせてください、ヒナギクさん」 「ってコトは……私が覚悟くんにふられたのも見たの?」 「? 良くわかりませんが一部始終はしっかりと……」 「あーそう……まいったわねぇ……あはは……」 「も、申し訳ございません!!」 「ん、いいわよ。気にしてないからほら、土下座はやめてってば」 今まで飛び出す機会がなかったエレオノール。 意図したわけではないが、結果として盗み聞きの形になった事をエレオノールはとてつもない勢いで謝る。 そんなエレオノールをヒナギクは笑みを浮べながら、宥め始める。 自分がやった事には後悔はなく、別に見られてもそこまで気にする事ではない。 おずおずと子犬のように顔を上げ、此方を見てくるエレオノールを見て、次第に元気が涌いてきたような感覚に陥った。 屈みこんでエレオノールを立たせる事を補助して、ヒナギクは立ち上がる。 「さっ、行きましょう。皆が待ってるわ」 そう行ってヒナギクは歩き出す。 足取りは力強いものであり、エレオノールから次第に離れてゆく。 やがて、その場に棒立ちになっていたエレオノールも直ぐにヒナギクの後を追ってゆく。 (ギイ先生、私には愛の事についてはよくわかりません。 ですが、一つだけわかるコトがあります……) 持ってきたデイバックを担ぎ、己の胸に手を当てて、歩くエレオノール。 自分の心臓の鼓動を掌越しに感じ、己の生命の歯車が止まっていない事をしっかりと認識。 自分のやるべき目的を今一度、己の身体に刻む。 (ヒナギクさん達は死なせません。 私が追い求めた笑顔……彼女達がそんな笑顔を浮かべ、愛し合える未来。 その未来が広がる世界を創るためにも、私はこの舞台に立ち続けましょう。 BADANを倒すというフィナーレを迎えるまでは……必ず……!) 自然と両腕に力が篭り、エレオノールは自分の鼓動が早まったのを感じる。 それは戦の直前に武者震いを起こす戦士の如く。 そんな時、エレオノールには一つだけ気づいていなかった。 自分の前を歩いてゆく、ヒナギクの頬から一滴の雫が垂れ落ちた事を。 なんのために流した涙なのだろうか。 明確な理由はわからない。流したヒナギク自身にもよくわかっていない だが、一つだけヒナギクに思い当たる節もあった。 自分がほんの一滴の涙を流した理由。 きっとそれは最後の涙だったのだろう。 (さよなら、私の小さな恋…………) 覚悟に抱いた、淡い想いを完全に洗いきる涙だったのかもしれない。 【C-4 学校周辺 二日目 午前】 【葉隠覚悟@覚悟のススメ】 [状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり 首輪が解除されました。     胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、     両腕の骨にひびあり、零の推進剤により高速移動中 [装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ [道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟) [思考] 基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。 1:村雨とかがみの元へ向かう。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す 4:葉隠四郎を必ず倒す 5:ヒナギクを愛さない 【備考】 ※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。 ※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。 ※ラオウを倒した男が劉鳳だと知りました ※零と一体になる事に迷いはありません ※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。 ※アカギと情報交換をしました。 ※首輪を解除したため、身体能力への制限は解けました。 【零についての備考】 ※零の探知範囲は制限により数百メートルです。 ※零はパピヨンを危険人物と認識しました。 ※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。 ※零は村雨の体を調べ、その構成が、極めて高位の霊魂ならば、強化外骨格同様受け入れられる構造になっていると知ります 『大首領を殺す作戦』 •大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。 •そのためには大首領を弱らせる必要がある。 •強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。 【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中 疲労(小)首輪が解除されました。 [装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具 [道具]地図、時計、コンパス、 女装服     音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE     文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、     缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)     マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、[思考] 基本:BADANを潰す! 1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る 2:覚悟達を待ち、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:穿孔キックを完成させる。 4:パピヨンを止める。 5:仲間の首輪を外す。 6:かがみを守る [備考] ※傷は全て現在進行形で再生中です。 ※参戦時期は原作4巻からです。 ※村雨静(幽体)はいません。 ※連続でシンクロができない状態です。 ※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。 ※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。 ※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました ※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。 ※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※川田章吾の死体は、埋葬されました。 ※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。 ※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます ※デルフリンガーは破壊されました。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 [状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。 [装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた [道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳 [思考・状況] 基本:BADANを倒す。 1:村雨とかがみの元へ行く。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:覚悟を愛さない。 [備考] ※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。 ※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。 ※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。 ※エレオノールと和解しました 。 ※服は現地調達したものに着替えました。 ※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。 ※アカギと情報交換をしました。 ※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます 【柊かがみ@らき☆すた】 [状態]:全身に強度の打撲(ある程度は回復)、左腕欠損(止血済み)、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。 [装備]:巫女服 [道具]:二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金 ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン [思考・状況] 基本:BADANを倒す 1:みんな元気になれっ……もちろん自分も 2:覚悟達を待ち、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。 4:仲間の首輪を外す。 [備考] ※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。 ※零の暗雲についての推測を知りました。 ※かがみの主催者に対する見解。 ①主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている ②主催者は時を越える"何か"を持っている ③主催者は①・②の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある ④だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。 ※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。 ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。 清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。 神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。 ※ステルス機能について 漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、 解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。 ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。 ※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています ※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました ※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(二アデスハピネス)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます 【才賀エレオノール@からくりサーカス】 [状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。 [装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり) [道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの [思考・状況] 基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。 1:村雨とかがみの元へ行く。 2:1の後、少しの間独歩を待ってその後神社、E-2周辺に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。 3:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。 4:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。 5:一人でも多く救う。 6:仲間の首輪を外す。 7:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い) [備考] ※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。 ※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。 ※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。 ※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。 ※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。 ※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。 ※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。 ※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。 ※自転車@現実は消防署前に落ちています。 ※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。  才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。 ※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。 ※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。 ※首輪の構造、そして解除法を得ました。 ※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。  首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。  スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。  また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。 ※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。 【空間の牢獄 二日目 昼】 【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本:空間の牢獄を脱出する。 1:赤木との再会。 2:肉体を得る。そして、赤木のいう「酔い」を味わう。 3:参加者がサザンクロスに突入するのを待つ 【備考】 ※大首領はあくまで、「肉体を得る」ことを優先しています。 ※強弱は拘っていません。また、バトルロワイヤル開催の理由は、ただの戯れ。 ※一時的に牢獄を脱出できましたが、持続的ではありません。明確な理由は不明です。 【サザンクロス内の一室 二日目 昼】 【葉隠四郎@覚悟のススメ】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:不明 [思考・状況] 基本:『凄』完成、大首領の復活の暁に、自分の世界で神国建国を行う 1:大首領の指示に従う 2:『凄』の様子をチェックする、もしくは一先ず休憩する。 3:覚悟の実力を見定める。 【備考】 ※首輪はついていますが能力制限装置はなく、起爆装置のみです。 ※血涙島で覚悟と散を待っている時に集められました。 [[前編>あの忘れえぬ思い出に『サヨナラ』を]] |248:[[ダイヤモンドダスト・クルセイダース]]|[[投下順>第201話~第250話]]|250:[[集結]]| |248:[[ダイヤモンドダスト・クルセイダース]]|[[時系列順>第6回放送までの本編SS]]|243:[[帝王無双BADAN~白蛇対峙~]]| |240:[[運命のルーレット叩き壊して]]|葉隠覚悟|250:[[集結]]| |245:[[チェイン]]|村雨良|250:[[集結]]| |246:[[雛菊想恋]]|桂ヒナギク|250:[[集結]]| |245:[[チェイン]]|柊かがみ|250:[[集結]]| |245:[[チェイン]]|才賀エレオノール|250:[[集結]]| ----

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