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しょってけ! ランドセル」(2008/11/06 (木) 07:29:29) の最新版変更点

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**しょってけ! ランドセル ◆qvvXwosbJA 路上での邂逅からしばらく後。こなたとハヤテは、駅前のとある建物の前に立っていた。 「駅前デパート……あるだろうとは思ってましたが、本当にありましたね」 「商品があるかは分かんないけどね。そういや店員さんいなかったら、勝手に持ってっちゃっていいのかな?」 「大丈夫じゃないですか? どうやら僕たち参加者以外には、この街に人はいないみたいですし」 そう、駅前デパート。 ある程度の規模を備えた駅ならば、その近くには百貨店の類があるのが常である。 とはいえここは殺人ゲームの会場。あるかどうかは微妙だったが、想像を裏切らずステーション3の前には立派なデパートがあった。 複数の路線が交差する駅の前というその立地にふさわしい威容をたたえるその外観。 外壁には「期間限定特別セール」とかいう垂れ幕が下りていて、日の出前の冷たい風になぶられて揺らめいていた。 明らかに開店前の時間でありながら、店内には煌々と明かりが灯っている。 「開店前のデパートかー、一度探検してみたかったんだよね」 「開店前といっても、電気も設備もいつも通りみたいですけどね」 「野暮なこと言っちゃ駄目だよハヤテ。こういうのは楽しんだもの勝ちなんだからさ」 ごきげんなこなた。好奇心全開、マイペース全開のいつものこなたである。 そんなこなたの背中には、黒く輝くランドセル。 こなたのミニマムな体躯に限りなくジャストフィットするそのランドセルは、こなたが歩くたびに背中でぴょこぴょこ僅かに弾んでいた。 (……それにしても似合うなぁ……) ハヤテの感嘆もむべなるかな。まさしくこなたの為にあるような支給品である。 それでは、こなたがランドセルを背負うに至った経緯を(経緯というほど大げさなものでもないけれど)、時を遡って見てみよう。  ▼ ▼ ▼ 「ちゃらららん、『ニードルナイフ』~~」 ともすれば謎のBGMが聞こえてきそうな擬音とともに、こなたは大量のナイフをデイパックから取り出した。 であってから数十分後、二人はこなたに支給された品物の確認の真っ最中である。 ちなみに幼児体型の件は、こなたが「一部の人のニーズには確実に答えてるわけだし」と強引に自分で納得してしまった。 思わず突っ込みそうになったハヤテだが、こなたが立ち直るのはいいことだと思い直して何も言わずに今に至る。 そんなこんなでこなたが取り出したナイフの一つをハヤテは手に取って、角度を変えてみながらしげしげと眺めた。 「なんだか、変な形ですね。投げナイフなのかな? やけに長細い気もしますけど」 「えーと、説明書によると……『GOLANのマッド軍曹の愛用武器で、ナイフ全体が管のような構造になっているのが特徴。  相手に刺さるとその管を通って血が噴き出し続けるため、相手は失血死するのである』……だってさ」 「なんというか、えげつない武器ですね……」 「そーだね……できれば使いたくはないかも」 人の体から血が噴水のように噴き出す様子を想像したのか、流石のこなたも心なしか神妙な表情でナイフをしまった。 仕切り直しとばかりにデイパックをごそごそあさり、エニグマの紙を引っぱり出す。 ついでに説明書の文字を目で追ってから、好奇心を抑えきれないのを顔いっぱいに表してこなたはハヤテの方に向き直った。 「ふふふー、こっちは私もまだ中を見てないんだよねー、楽しみ楽しみ。それっ」 一気に紙を開く。 同時に、毎度のことながら紙の大きさとは明らかに釣り合わないサイズのランドセルが物理法則をさらりと無視して出現した。 どこにでもありそうな、普通のデザインのランドセルである。別に何かの仕掛けがしてありそうなわけでもない。 ただ持ち上げるとずしりと重く、中に何かが入っているのは明白だった。 「それではさっそく開けてみよ~」 「やっぱり中身が支給品なのか……何が入ってるんですか?」 ハヤテの問いに答えるよりも早くこなたはランドセルの中に両手を突っ込んで何やらまさぐっていた。 すぐにお目当てのものは見つかったようで、こなたの顔が期待でぱっと輝いた。 うんしょっと掛け声をかけて持ち上げる。 そうしてランドセルの中から出てきたのは、何の変哲もない植木鉢だった。 本当に平凡な植木鉢。――それに植えてあるものを除けば。 「……なんですかこれ? この草、なんだか猫の顔みたいに見えますよ?」 「ふっふっふー、これこそが『猫草』なのだよハヤテくん」 訝しがるハヤテを見て、こなたは得意そうにぺったんこの胸をずいと張ってみせる。 もっともこなた自身もよくは分かっていないようで、またしても説明書のお世話になることとなったのだが。 【猫草:  スタンドの矢に射抜かれた猫が埋葬された場所から生えてきた、猫とも草ともつかない生き物。  猫なので性格は非常に気まぐれ。また草なので日光の当たらない所では殆んど動かない。  空気の塊を自在に操作するスタンド能力『ストレイ・キャット』を持つが、戦うのは自分の身を守る時のみである。  自力では移動できないので、植木鉢に植えられた状態で川尻早人のランドセルに入っている】 「………………」 「あれ、どしたの?」 「いやあ、突っ込み所が多すぎてどうしたものかと」 「ほんとにびっくりだよね、こういうものを見ると世界は広いって実感するよね」 「こなたさんは楽しそうですね……」 「動いてるところも見たかったんだけどなー、日が昇るまでのお預けか。ちょっと残念」 「たくましいなぁ……」 こなたのマイペース、もとい環境適応能力の高さにハヤテは改めて感嘆する。 それはともかく、この猫草が超能力を使って戦うというのが本当なら、敵に襲われたときにも代わりに戦ってくれるかもしれない。 ただ、ハズレではないがアタリというほどには期待してはいけない、というのが本当のところなのだろう。 ハヤテはそのまま猫草の利用法について考えていたから、こなたがすでに三枚目を取り出しているのに気がついて驚いた。 「時間も無いし、サクサクいくよ。実はこれこそが大本命なんだよね」 何故かその場で紙を開くでもなく、説明書の方をハヤテに突き出してくる。 なぜここで開けないのか、その疑問は説明書を読むうちにはっきりした。 もっとも、それとは別の部分でもやもやしたものを抱えることになったのだが。 【魔法『フレイム・ボール』:  火系統の魔法「フレイム・ボール」によって作り出された火球が入っている。  紙を開くことで出現し、その瞬間に使用者が意識を向けた対象を自動追尾する。  命中精度および威力はともに高く、命中した場合対象は激しく燃焼する。  一発のみの使い捨て。ちなみに紙を破った場合、紙を中心に炎が広がるので注意されたし】 読み終わったハヤテは一言、 「なんというか回を追うごとに加速度的に胡散臭さが上がってきてますね……」 「魔法だって魔法! いやーこれこそほんとにびっくりだよね」 こなたはといえばろくにハヤテの言ったことも聞いていない。 「開いたら火の玉がぼーん!ってことじゃん? ゲームとかならよくあるけど、これって本物なのかな?」 「というか紙の中に火の玉が入ってるってこと自体がすでにウソくさいんですが」 「そこらへんはお約束としてさらっと流さなきゃ。あー早く使いたいなー」 心底楽しみにしている様子のこなたを見ながら、ハヤテは『細かいことを深く考えたら負け』という悟りの境地に達しつつあった。 ▼ ▼ ▼ 結局、支給品はハヤテが.454カスールとニードルナイフを、こなたが猫草の入ったランドセルと『フレイム・ボール』を持つことになった。 ハヤテは銃もナイフ投げもそれぞれロボット相手に大立ち回りを演じられるほどには扱えるし、その腕前を最大限に発揮するには猫草は逆に邪魔だ。 その点こなたが持てば、自衛専門とはいえ猫草が本当に戦ってくれるのであれば戦闘能力を持たないこなたの身を守ることになるので一石二鳥となる。 フレイム・ボールは単に安全対策である。ゲームに乗った者と戦うのは基本的にハヤテになりそうなので、破ると危険な紙を持ち歩くのは避けないといけない。 「じゃ、そろそろ出発しよっか」 ひょいとランドセルを背負うこなた。その姿を見たハヤテの脳裏に電撃が走った。 (に……似合うっ! ランドセルが黒い男の子用だってことを除けば、普通に通学路で見かけても納得してしまいそうだ……!  ……いや、落ち着くんだハヤテ。こなたさんは僕よりも年上……そう、言ってみるならマリアさんと同い年!  そんな人にランドセルが似合うとか考えるなんて失礼にも程があるぞ!  ……あれ? マリアさんと同い年? なんだろう、それはそれで逆に違和感が……なんというかマリアさんと僕が一つ違いという自体に……  って違う! 違うぞ! 論点はそこじゃない! 根本的に何かが間違ってる! 落ち着くんだ綾崎ハヤテ!) 葛藤するハヤテを尻目に、こなたはランドセルを背負ったままマイペースに歩き出した。 「どうしたの? 早く来ないと置いてっちゃうよ?」 「え!? あっ、すみませんこなたさん、今行きます!」 前を行くこなたが振り返ったのに気付いて、ハヤテは慌ててその後を追った。 ▼ ▼ ▼ 「そうこうしているうちに到着したのが冒頭でも登場した駅前デパートというわけですね」 「ずいぶん説明的なセリフだね」 「ここらへんは展開上の都合というやつですよ」 「むー、言うようになったねハヤテも」 細かい描写は冒頭でやったので省略。 早朝でも問題なく動く自動ドアを通って、二人は中に入った。 どうやら無人とはいえ設備は一通り生きているようなので、この様子ならもしかしたら商品も殆どがそのままである可能性が高い。 確かにこれなら役に立つ道具が何か手に入るかもしれなかった。 「でも、なんでまずデパートなんですか? 人探しをするなら、もっと他にも行くところがあると思うんですけど」 ハヤテの問いに、こなたは何の気もないような口ぶりで答えた。 「急がば回れっていうじゃん? もちろん私だってかがみやつかさやみゆきさんのことは心配だよ。  でもさ、下準備無しじゃ何が出来るかも分からないじゃん」 さらりと口に出したこなたの一言に、ハヤテは虚を突かれて立ち止った。 どちらかといえばこなたはあまり先のことを考えない性質かと思っていたので、意外な気がしたのである。 しかし、言われてみればその通り。闇雲に動いてもどうしようもない。 (こなたさんはちゃんと先のことまで考えているんだな……僕も今できることを頑張らなきゃ) 拳を無意識に握り締める。 最初に出会ったのがマイペースなこなただったのは、もしかしたらかなりの幸運だったのかもしれないとハヤテは思い始めていた。 そうでなければ焦燥感に駆られて走り回るばかりで、何一つできずに終わっていたかもしれない。 焦っちゃ駄目だ。焦って自分を見失ったら、お嬢様も、マリアさんも、ヒナギクさんも、誰も助けられなくなる。 (ありがとうございます、こなたさん……おかげで僕は自分を見失いそうにすみそうです。  そして……待っていてくださいお嬢様。必ず、僕が迎えに行きますから) 守る。その為に自分が出来ることを精一杯やる。ハヤテは決意を胸に抱き、一歩前へと踏み出した。 もっとも、ハヤテが真剣になっている時に当のこなたが考えていたことはと言えば、 (ロープレ風にいうと銃とナイフのハヤテはガンナーかアサシン、猫草連れてる私は魔獣使いって感じかな?  パーティの編成としてはいまいちだよねー……接近戦でガシガシ削れる前衛キャラを仲間にしなきゃ) いまいち現実味に欠ける内容だったりしたのだけど。 なにはともあれ、夜明けは近そうだ。 【2-D 繁華街/駅前デパート 一日目 黎明】 【泉こなた@らき☆すた】 {状態}ごきげん {装備}猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険 {道具}支給品一式 魔法『フレイム・ボール』@ゼロの使い魔(紙状態) {思考・状況} 1:開店前のデパート巡りってわくわくするねー 2:パーティに前衛キャラ(近接戦闘が得意な参加者)を加える 3:デパートで役に立ちそうな道具を調達する 4:かがみ、つかさ、みゆきを探して携帯を借りて家に電話 ※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます。 【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】 {状態}健康 {装備}.454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING {道具}支給品一式 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 {思考・状況} 1:デパートで役に立ちそうな道具を調達する 2:こなたを守る 3:ナギ、マリア、ヒナギクを一刻も早く探し出し合流する 4:出来るだけ多くの人を助けたい 基本行動方針 全員で帰る |031:[[花嫁は月輪に飛ぶ]]|[[投下順>第000話~第050話]]|033:[[:出動!バルスカ神父]]| |030:[[A forbidden battlefield]]|[[時系列順>第1回放送までの本編SS]]|033:[[:出動!バルスカ神父]]| |001:[[Two people meet you in a night town]]|泉こなた|048:[[主のために♪]]| |001:[[Two people meet you in a night town]]|綾崎ハヤテ|048:[[主のために♪]]| ----
**しょってけ! ランドセル ◆qvvXwosbJA 路上での邂逅からしばらく後。こなたとハヤテは、駅前のとある建物の前に立っていた。 「駅前デパート……あるだろうとは思ってましたが、本当にありましたね」 「商品があるかは分かんないけどね。そういや店員さんいなかったら、勝手に持ってっちゃっていいのかな?」 「大丈夫じゃないですか? どうやら僕たち参加者以外には、この街に人はいないみたいですし」 そう、駅前デパート。 ある程度の規模を備えた駅ならば、その近くには百貨店の類があるのが常である。 とはいえここは殺人ゲームの会場。あるかどうかは微妙だったが、想像を裏切らずステーション3の前には立派なデパートがあった。 複数の路線が交差する駅の前というその立地にふさわしい威容をたたえるその外観。 外壁には「期間限定特別セール」とかいう垂れ幕が下りていて、日の出前の冷たい風になぶられて揺らめいていた。 明らかに開店前の時間でありながら、店内には煌々と明かりが灯っている。 「開店前のデパートかー、一度探検してみたかったんだよね」 「開店前といっても、電気も設備もいつも通りみたいですけどね」 「野暮なこと言っちゃ駄目だよハヤテ。こういうのは楽しんだもの勝ちなんだからさ」 ごきげんなこなた。好奇心全開、マイペース全開のいつものこなたである。 そんなこなたの背中には、黒く輝くランドセル。 こなたのミニマムな体躯に限りなくジャストフィットするそのランドセルは、こなたが歩くたびに背中でぴょこぴょこ僅かに弾んでいた。 (……それにしても似合うなぁ……) ハヤテの感嘆もむべなるかな。まさしくこなたの為にあるような支給品である。 それでは、こなたがランドセルを背負うに至った経緯を(経緯というほど大げさなものでもないけれど)、時を遡って見てみよう。  ▼ ▼ ▼ 「ちゃらららん、『ニードルナイフ』~~」 ともすれば謎のBGMが聞こえてきそうな擬音とともに、こなたは大量のナイフをデイパックから取り出した。 であってから数十分後、二人はこなたに支給された品物の確認の真っ最中である。 ちなみに幼児体型の件は、こなたが「一部の人のニーズには確実に答えてるわけだし」と強引に自分で納得してしまった。 思わず突っ込みそうになったハヤテだが、こなたが立ち直るのはいいことだと思い直して何も言わずに今に至る。 そんなこんなでこなたが取り出したナイフの一つをハヤテは手に取って、角度を変えてみながらしげしげと眺めた。 「なんだか、変な形ですね。投げナイフなのかな? やけに長細い気もしますけど」 「えーと、説明書によると……『GOLANのマッド軍曹の愛用武器で、ナイフ全体が管のような構造になっているのが特徴。  相手に刺さるとその管を通って血が噴き出し続けるため、相手は失血死するのである』……だってさ」 「なんというか、えげつない武器ですね……」 「そーだね……できれば使いたくはないかも」 人の体から血が噴水のように噴き出す様子を想像したのか、流石のこなたも心なしか神妙な表情でナイフをしまった。 仕切り直しとばかりにデイパックをごそごそあさり、エニグマの紙を引っぱり出す。 ついでに説明書の文字を目で追ってから、好奇心を抑えきれないのを顔いっぱいに表してこなたはハヤテの方に向き直った。 「ふふふー、こっちは私もまだ中を見てないんだよねー、楽しみ楽しみ。それっ」 一気に紙を開く。 同時に、毎度のことながら紙の大きさとは明らかに釣り合わないサイズのランドセルが物理法則をさらりと無視して出現した。 どこにでもありそうな、普通のデザインのランドセルである。別に何かの仕掛けがしてありそうなわけでもない。 ただ持ち上げるとずしりと重く、中に何かが入っているのは明白だった。 「それではさっそく開けてみよ~」 「やっぱり中身が支給品なのか……何が入ってるんですか?」 ハヤテの問いに答えるよりも早くこなたはランドセルの中に両手を突っ込んで何やらまさぐっていた。 すぐにお目当てのものは見つかったようで、こなたの顔が期待でぱっと輝いた。 うんしょっと掛け声をかけて持ち上げる。 そうしてランドセルの中から出てきたのは、何の変哲もない植木鉢だった。 本当に平凡な植木鉢。――それに植えてあるものを除けば。 「……なんですかこれ? この草、なんだか猫の顔みたいに見えますよ?」 「ふっふっふー、これこそが『猫草』なのだよハヤテくん」 訝しがるハヤテを見て、こなたは得意そうにぺったんこの胸をずいと張ってみせる。 もっともこなた自身もよくは分かっていないようで、またしても説明書のお世話になることとなったのだが。 【猫草:  スタンドの矢に射抜かれた猫が埋葬された場所から生えてきた、猫とも草ともつかない生き物。  猫なので性格は非常に気まぐれ。また草なので日光の当たらない所では殆んど動かない。  空気の塊を自在に操作するスタンド能力『ストレイ・キャット』を持つが、戦うのは自分の身を守る時のみである。  自力では移動できないので、植木鉢に植えられた状態で川尻早人のランドセルに入っている】 「………………」 「あれ、どしたの?」 「いやあ、突っ込み所が多すぎてどうしたものかと」 「ほんとにびっくりだよね、こういうものを見ると世界は広いって実感するよね」 「こなたさんは楽しそうですね……」 「動いてるところも見たかったんだけどなー、日が昇るまでのお預けか。ちょっと残念」 「たくましいなぁ……」 こなたのマイペース、もとい環境適応能力の高さにハヤテは改めて感嘆する。 それはともかく、この猫草が超能力を使って戦うというのが本当なら、敵に襲われたときにも代わりに戦ってくれるかもしれない。 ただ、ハズレではないがアタリというほどには期待してはいけない、というのが本当のところなのだろう。 ハヤテはそのまま猫草の利用法について考えていたから、こなたがすでに三枚目を取り出しているのに気がついて驚いた。 「時間も無いし、サクサクいくよ。実はこれこそが大本命なんだよね」 何故かその場で紙を開くでもなく、説明書の方をハヤテに突き出してくる。 なぜここで開けないのか、その疑問は説明書を読むうちにはっきりした。 もっとも、それとは別の部分でもやもやしたものを抱えることになったのだが。 【魔法『フレイム・ボール』:  火系統の魔法「フレイム・ボール」によって作り出された火球が入っている。  紙を開くことで出現し、その瞬間に使用者が意識を向けた対象を自動追尾する。  命中精度および威力はともに高く、命中した場合対象は激しく燃焼する。  一発のみの使い捨て。ちなみに紙を破った場合、紙を中心に炎が広がるので注意されたし】 読み終わったハヤテは一言、 「なんというか回を追うごとに加速度的に胡散臭さが上がってきてますね……」 「魔法だって魔法! いやーこれこそほんとにびっくりだよね」 こなたはといえばろくにハヤテの言ったことも聞いていない。 「開いたら火の玉がぼーん!ってことじゃん? ゲームとかならよくあるけど、これって本物なのかな?」 「というか紙の中に火の玉が入ってるってこと自体がすでにウソくさいんですが」 「そこらへんはお約束としてさらっと流さなきゃ。あー早く使いたいなー」 心底楽しみにしている様子のこなたを見ながら、ハヤテは『細かいことを深く考えたら負け』という悟りの境地に達しつつあった。 ▼ ▼ ▼ 結局、支給品はハヤテが.454カスールとニードルナイフを、こなたが猫草の入ったランドセルと『フレイム・ボール』を持つことになった。 ハヤテは銃もナイフ投げもそれぞれロボット相手に大立ち回りを演じられるほどには扱えるし、その腕前を最大限に発揮するには猫草は逆に邪魔だ。 その点こなたが持てば、自衛専門とはいえ猫草が本当に戦ってくれるのであれば戦闘能力を持たないこなたの身を守ることになるので一石二鳥となる。 フレイム・ボールは単に安全対策である。ゲームに乗った者と戦うのは基本的にハヤテになりそうなので、破ると危険な紙を持ち歩くのは避けないといけない。 「じゃ、そろそろ出発しよっか」 ひょいとランドセルを背負うこなた。その姿を見たハヤテの脳裏に電撃が走った。 (に……似合うっ! ランドセルが黒い男の子用だってことを除けば、普通に通学路で見かけても納得してしまいそうだ……!  ……いや、落ち着くんだハヤテ。こなたさんは僕よりも年上……そう、言ってみるならマリアさんと同い年!  そんな人にランドセルが似合うとか考えるなんて失礼にも程があるぞ!  ……あれ? マリアさんと同い年? なんだろう、それはそれで逆に違和感が……なんというかマリアさんと僕が一つ違いという自体に……  って違う! 違うぞ! 論点はそこじゃない! 根本的に何かが間違ってる! 落ち着くんだ綾崎ハヤテ!) 葛藤するハヤテを尻目に、こなたはランドセルを背負ったままマイペースに歩き出した。 「どうしたの? 早く来ないと置いてっちゃうよ?」 「え!? あっ、すみませんこなたさん、今行きます!」 前を行くこなたが振り返ったのに気付いて、ハヤテは慌ててその後を追った。 ▼ ▼ ▼ 「そうこうしているうちに到着したのが冒頭でも登場した駅前デパートというわけですね」 「ずいぶん説明的なセリフだね」 「ここらへんは展開上の都合というやつですよ」 「むー、言うようになったねハヤテも」 細かい描写は冒頭でやったので省略。 早朝でも問題なく動く自動ドアを通って、二人は中に入った。 どうやら無人とはいえ設備は一通り生きているようなので、この様子ならもしかしたら商品も殆どがそのままである可能性が高い。 確かにこれなら役に立つ道具が何か手に入るかもしれなかった。 「でも、なんでまずデパートなんですか? 人探しをするなら、もっと他にも行くところがあると思うんですけど」 ハヤテの問いに、こなたは何の気もないような口ぶりで答えた。 「急がば回れっていうじゃん? もちろん私だってかがみやつかさやみゆきさんのことは心配だよ。  でもさ、下準備無しじゃ何が出来るかも分からないじゃん」 さらりと口に出したこなたの一言に、ハヤテは虚を突かれて立ち止った。 どちらかといえばこなたはあまり先のことを考えない性質かと思っていたので、意外な気がしたのである。 しかし、言われてみればその通り。闇雲に動いてもどうしようもない。 (こなたさんはちゃんと先のことまで考えているんだな……僕も今できることを頑張らなきゃ) 拳を無意識に握り締める。 最初に出会ったのがマイペースなこなただったのは、もしかしたらかなりの幸運だったのかもしれないとハヤテは思い始めていた。 そうでなければ焦燥感に駆られて走り回るばかりで、何一つできずに終わっていたかもしれない。 焦っちゃ駄目だ。焦って自分を見失ったら、お嬢様も、マリアさんも、ヒナギクさんも、誰も助けられなくなる。 (ありがとうございます、こなたさん……おかげで僕は自分を見失いそうにすみそうです。  そして……待っていてくださいお嬢様。必ず、僕が迎えに行きますから) 守る。その為に自分が出来ることを精一杯やる。ハヤテは決意を胸に抱き、一歩前へと踏み出した。 もっとも、ハヤテが真剣になっている時に当のこなたが考えていたことはと言えば、 (ロープレ風にいうと銃とナイフのハヤテはガンナーかアサシン、猫草連れてる私は魔獣使いって感じかな?  パーティの編成としてはいまいちだよねー……接近戦でガシガシ削れる前衛キャラを仲間にしなきゃ) いまいち現実味に欠ける内容だったりしたのだけど。 なにはともあれ、夜明けは近そうだ。 【2-D 繁華街/駅前デパート 一日目 黎明】 【泉こなた@らき☆すた】 {状態}ごきげん {装備}猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険 {道具}支給品一式 魔法『フレイム・ボール』@ゼロの使い魔(紙状態) {思考・状況} 1:開店前のデパート巡りってわくわくするねー 2:パーティに前衛キャラ(近接戦闘が得意な参加者)を加える 3:デパートで役に立ちそうな道具を調達する 4:かがみ、つかさ、みゆきを探して携帯を借りて家に電話 ※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます。 【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】 {状態}健康 {装備}.454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING {道具}支給品一式 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 {思考・状況} 1:デパートで役に立ちそうな道具を調達する 2:こなたを守る 3:ナギ、マリア、ヒナギクを一刻も早く探し出し合流する 4:出来るだけ多くの人を助けたい 基本行動方針 全員で帰る |031:[[花嫁は月輪に飛ぶ]]|[[投下順>第000話~第050話]]|033:[[出動!バルスカ神父]]| |030:[[A forbidden battlefield]]|[[時系列順>第1回放送までの本編SS]]|033:[[出動!バルスカ神父]]| |001:[[Two people meet you in a night town]]|泉こなた|048:[[主のために♪]]| |001:[[Two people meet you in a night town]]|綾崎ハヤテ|048:[[主のために♪]]| ----

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