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「真・仮面ライダー ~決着~(後編)」(2008/12/10 (水) 20:16:00) の最新版変更点
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**真・仮面ライダー ~決着~(後編) ◆KaixaRMBIU
「超電ドリルキックにも劣らぬの威力だ……。だが、俺はストロンガーのその技に耐えたことがある。
一発程度、どうということはない」
「なら……何度でも打ち込むまでだ!」
「そう簡単に叶うと思うなよ! キサマのZXキックが来る前に、俺が捻じ伏せてやる!」
心底楽しそうに、シャドウが告げた。ZXは戦いを続ければ続けるほど、強くなっていっている。
こちらに来る前に、プログラムに参加させられたことも影響しているだろう。
強敵と戦い、負ければ負けるほど、立ち上がって強くなる。
それがシャドウの知る仮面ライダーだ。シャドウの知るストロンガーだ。
ZXも彼らと変わらず、仮面ライダーである事実にシャドウの心が躍る。
ストロンガーの後輩が、ストロンガーに実力で追いつこうとしている。
この戦いのためにこそ、自分が黄泉返ったのだ。
この瞬間以外に、もはや存在価値などなくてもいい。
(……愚地独歩、キサマがただの空手家として死んだ……いや、生きたように、俺もただ奴らの、仮面ライダーの宿敵として戦う)
それが、ストロンガーを倒し最強を目指したシャドウの生きがい。シャドウの生きる理由。
シャドウ剣がトランプと共に踊る。
ZXの突進を、剣で捌いて脇に抉りこませた。
ZXキックに耐えられてしまった。その事実がZXを追い詰める。
それでも、突き出される剣を右に左に流しながら、次の技の機会を狙い続けた。
一度で駄目なら、二度でも三度でも続ける。ひたすら、勇次郎に殴られながら勝利の機会を得て、逆転した時のように。
これは己との戦いだ。己に勝ち、そして敵に勝つ。
シャドウの胸を、ZXの拳が強打した。やはり、ZXキックは効いている。動きは鈍い。
僅かな時間を、思考にまわした。その行為が仇となる。シャドウが右足を踏み、掌低をぶち当てた。
ZXの脳が揺らぐが、敵は容赦はしない。剣の柄が傷口を突き、激痛が走る。
ZXキックにシャドウが耐えた時に斬り裂いた痕だ。
だがZXも殴られてばかりではない。踏ん張り、シャドウの側頭部に手刀を繰り出した。
ZXキックで弱っているシャドウは避けきれず、壁まで吹き飛ばされた。
もう一度、ZXキックを。
ZXが跳び、構えを取る。なのに、赤く光りはしなかった。
(ダメージを受けすぎたか……!)
次のシンクロまで、傷が癒えなければ使えはしない。
制限が解けて再生力が復活し、核鉄を持つZXならすぐにでもキックを打てるほど回復するだろうが、戦闘中ではそうも言っていられない。
事実、シャドウはもうZXの眼前まで追いついている。
「隙だらけだ!」
シャドウは告げると同時に、ZXの胸元を掴んで地面へと叩きつけた。
全身にバラバラになるほどの衝撃が駆け巡る。
どうにかせねば。だが、シンクロができるほど体力が回復するまで待つことはできない。
(あの技を使うか……未完成だが)
ZX穿孔キック。学校でかがみたちと一緒にいたときに開発した絆の証。
ZXは穿孔キックに賭けた。
「どうした! 仮面ライダーZX!!」
シャドウが挑発しているが、ZXは冷静に剣の軌道を逸らす。
待っているだけでは駄目だ。こちらから攻め、穿孔キックを放つ隙を得なければ。
ZXキックのときと同じでは駄目だ。すでに一度使った戦法ではシャドウから隙を作ることはできない。
ならばどうすれば。
(待てよ……散は俺のZXキックを受けたときは、どうした?)
始めて散とであって激闘を繰り広げた時、彼はZXキックを受け止めながら螺旋を放った。
あの時の自分は、直線的な技だったのが災いした。
シャドウとZXは互いに距離をとって、何度目か分からない睨み合いをする。
そうだ。自分は待てばいい。次の手を。
「観念したかッ! 仮面ライダーZX!!」
神速の突きが、ZXに繰り出された。
「村雨さんっっ!!」
かがみがZXの名前を呼んでいるのが聞こえる。
応えてやるわけにはいかない。だけど、自分は大丈夫だと教えてやりたい。
だから、心の中で、
(大丈夫だ、かがみ。俺は……仮面ライダーは負けはしない……絶対に!!)
そう決意するのが、精一杯だった。
「なんと……」
シャドウから驚愕の声が聞こえてくる。ZXとて、ここまでうまくいくとは思っていなかった。
それでも、生まれた絶好の機会。ZXは逃がすわけにはいかない。
真剣白羽取りしたシャドウの剣を、思いっきり引っ張る。ZXキックのダメージが残るシャドウに抗うことはできなかった。
ZXは再度、シャドウの胸元を掴んだ。
「掴まえたぞ……!」
「クッ……!」
再び、風がうねりをあげる。仮面ライダー1号の技。不滅の絶技。
ライダーきりもみシュートによって、シャドウを真横に投げ飛ばす。
「ぐっ!」
「螺・螺・螺……」
地面を踏みしめ、右螺旋の構えをとる。全身を脱力させ、右腕を真直ぐ後方に向けた。
見様見真似の構えのまま、前方に風を巻き起こしながら振り切る。
「螺旋ッ!」
螺旋を描く風が、シャドウを捉まえた。
散の記憶が、シャドウを縫い付けている。今こそ、進むとき。
いっそう強く、地面に踏み込む。
足をスライドさせ、細かなステップを刻んで突進する。
「ハヤテの如く!!」
爆発力を持った突進。前進する力のまま、右足を前に向ける。
記憶に刻まれた、仮面ライダー1号の蹴り。
「ライダーキック!!」
螺旋に作られた風に乗って、身体を倒す。
影を絶つ男の、動きを身体に、技に姿勢を安定すべく投影する。
「絶影ッッ!! くらえ! ZX穿孔キィィィィィィッ……」
言葉も、絆も、全てを費やした技だった。
何もかも貫く、一筋の槍だった。その技を、ZXの肩に刺さる剣が遮る。
「惜しかったな……やはり、キサマはストロンガーに及ばん」
シャドウは、ZXの肩に突き刺さる剣を掴んで振り下ろした。
ZXの胸部から血が盛大に吹き出す。かがみのZXの名前を呼ぶ声が、二人を貫いた。
「ライダーキックから、回転に移る際……0.7秒の隙があった。
……ストロンガーの超電ドリルキックなら、そんな隙など見せない。やはりキサマは未熟だ」
ZXに決定的なことを告げるシャドウは、どこか寂しそうに見えた。
もともと、シャドウは死に場所を求めてZXとの決着を望んだのだ。
この結果はある種、不本意であった。とはいえ、戦いに手を抜く真似はしない主義。
ZXが駄目ならば、次の戦場を求めるだけだ。
(ストロンガー……キサマとの決闘に、決着が着くならばどのような結末だったろうな)
本来なら着いたはずの決着を、シャドウは知らない。
だからこそ、最後の結末を望んでやまない。最後の仮面ライダーを倒した足で、虚しく去っていった。
「待て……」
いや、去ろうとしたシャドウを、立ち上がったZXが引き止めた。
嬉しさに跳ね上がった心臓を宥めて、シャドウは首だけで振り返る。
「ほう……予想以上にタフなようだな」
「俺は……負けない。負けられない……お前を倒す!」
技を破られたのに、絶望をしない。これこそが、仮面ライダーだ。
ストロンガーがデルザー軍団の改造魔人に追い詰められた時も、諦めず、成功率の低い再改造を得て、自分たちの前に現れたのだ。
ZXもまた、シャドウの前に負けても負けても、立ちふさがる。
(やはり……仮面ライダーとはこうではなくてはな! キサマの後輩とは言えない!)
すでにいない、ストロンガーに向けて呟き、シャドウ剣を真横に抜く。
キィン……と甲高い金属音が鳴り、ZXと対峙する。
さあ、俺を殺してみろ。シャドウは言葉にせず告げた。
『ストロンガーの超電ドリルキックなら、そんな隙など見せない』
シャドウの言葉が、ZXの脳裏に響く。超電ドリルキック……コマンダーとして活動してたZXの記憶にある技だ。
ZXは最初から、改造人間ZXとして存在していたわけではない。
十三体の改造人間部隊の隊長として選ばれ、バダンの怪人として暗躍していた。
ZXは一つの指令を受ける。仮面ライダーストロンガーを始末するという、指令を。
肩幅に足を広げ、シャドウを見据える。いい具合に脱力している。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シャドウの気合を込めた斬撃を、ゆらりと後ろに数歩移動して躱す。
速さは今までに劣る物ではない。僅かに胸の装甲が削られたが、それだけだ。
『間合いがぬるい』
勇次郎と戦いの時に聞いた、散の声を思い出す。
一歩だけ前に踏み込んで、拳を振り上げた。
「ゼクロスパンチッ!!」
ZXの会心の一撃がシャドウの右胸に当たる。シャドウが吐血して、動きが鈍った。
以前に怪我をしていたのだろうか、とZXが疑問に思うが、究明している暇はない。
ZXが知ることはないが、それは独歩がつけた傷であった。
シャドウに僅かに隙ができる。胸板に蹴りを叩きつけて、距離をとった。
(散……螺旋に、きりもみシュートを合わせて……!)
螺旋の力を、仮面ライダー1号の技に重ねて竜巻を起こす。
(絆……俺の記憶の繋がり! 足りなかった物は……記憶!)
ZXは一切の迷いもなく、次の動作に入る。
ハヤテの突進、ライダーキック、絶影の軌道、視界に入るかがみ。記憶の中のストロンガーの言葉が蘇る。
『岬ユリ子はもう……ただの女だ』
自分を支えてくれたのは、自分の手を姉の代わりに握ってくれたのは、ただの女性の柊かがみ。
今なら、ストロンガーの気持ちを理解できる。大切な、自分が立てる理由。戦える正義。
『フン……互角ね。なら……俺の勝ちさ』
自分と同じ性能の改造人間が十三人いる事実に怯むことすらしなかったストロンガー。
コマンダーである自分に、瀕死の重傷を負わされても戦いをやめなかった彼。
だからここで倒れるわけにはいかない。身体がたとえ、壊れかけようとも。
仮面ライダーの名に懸けて。
『チャージアップ!!』
ZXは仲間との繋がりと、正義を示した男の記憶を合わせる。
自然とつながったそれは、最初から一緒だったかのように、ZXを滑らかに動かした。
『超電ドリルキィ――ック!!』
「ZX! 穿孔キィ――ック!!」
記憶の中のストロンガーの軌跡と、ZXの繋がりの集大成の軌跡が重なる。
この軌道、ZXが今まで出会い、刻み、歩んで来た重みがあった。
それは本来のZXが歩んで得る、ZX穿孔キックの重みに勝るとも劣らない。
記憶が、シャドウを穿ち貫いた。
(こ、これは……!?)
シャドウはZXと戦った中で、一番驚いた。
彼が放った技は、見た目だけなら先ほどの未完成の回転キックとたいした差はない。
しかし、明らかな違いがある。それを、シャドウは一目で見抜いた。
なぜなら、欠けていたピースを埋めたものは、
「超電……ドリルキック……」
シャドウの宿敵の技。身体に刻んだ、超電子の必殺キック。あれほど戦いを望んだ男の技。
ライダーキックから回転に移る際の、0.7秒の隙を完全になくしている。
隙をなくした、完成された回転キック。まさに、仮面ライダーの必殺技に相応しい。
右胸が痛む。この傷がなければ、いくら完成をしたからとはいえこの技を打たれることはなかっただろう。
その事実が、悔しくはない。むしろ、傷をつけた独歩に感謝しているくらいだ。
(ストロンガー……俺はお前と……)
シャドウが身体に、目に、記憶に刻み込んだ超電ドリルキックがシャドウの胴体を通り抜けた。
ZXと瞳が会う。自分に勝った男だ。文句はない。
「お前の勝ちだ。仮面ライダーZX」
そういえば、自分の勝ちをシャドウの勝ちだと主張したあいつにも同じことを言ったなと、穏やかな気持ちのままシャドウは告げた。
やがてシャドウの身体が、地面へと叩きつけられた。
□
「村雨さんっ!!」
かがみが変身を解いて、喘いでいる村雨に飛びついた。
彼の勝利を喜んでいるのだ。感情が先走って、思いっきり両手に力を込めた。
「すごいっ! すごいよ!!」
「……君たちのおかげさ」
かがみが血で汚れないように優しく離して、村雨は笑う。
村雨が仮面ライダーとして戦えるのも、この技を開発できたのも、すべては彼女らのおかげだ。
だから、万感の想いを込めて村雨は礼を言う。
「ありがとう、かがみ。俺を仮面ライダーにしてくれて……」
「な! わ、わたしだけじゃ……」
村雨の言葉に、かがみが赤くなるが、村雨は身体を壁にもたれさせ、傷の治癒を待った。
力の全てを出し切った。指一本すら動かない。
(ありがとうございます。先輩……仮面ライダーストロンガー)
今はどこにいるかも知らない、7号ライダーにZXは感謝の意を伝える。
彼の記憶があったから、自分の穿孔キックは完成したのだ。
仲間たちの記憶と共に。これで、自分はもう負けはしない。大首領を倒す。
村雨に迷いはなかった。怪我の手当てをしているかがみにもう一度、感謝の意を伝えようと首を動かした。
そこで、ZXの強化された瞳が、コマンドロイドの群れを発見しする。
無音で動く彼らを発見したのは、幸運だった。
(これが……ジェネラルシャドウの占い……仲間の死……させるか!)
だが、力尽きた村雨に取れる手段は一つしかない。かがみを抱き寄せて、背中を向ける。
「む、村雨さん! い、いきなり……」
説明している暇もない。無数の十字手裏剣が、村雨の背中に殺到した。
衝撃がいつまでたっても届かず、村雨が不思議に思う。首だけで振り返ると、白いマントが村雨の視界に入った。
シャドウが、村雨たちを庇ったのだ。胴に穴の開いたシャドウの全身に、十字手裏剣が全身に突き刺さっている。
舌打ちをするコマンドロイドが、再度攻撃を仕掛けようとするが、巨大なトランプが突如現れた。
「ギィッ!?」
「勝者が歩む道……キサマら程度が、邪魔をするな!」
そのトランプから、炎が吹き出て四体のコマンドロイドを火達磨にする。
燃え尽きたそれを見届けた後、シャドウが膝をついた。
「ジェネラルシャドウ!」
「くるな!!」
駆け寄ろうとした村雨を、シャドウは拒否した。村雨はシャドウに対しては、複雑な感情を抱いている。
独歩を殺し、かがみをさらったのは許せることではない。
しかし、ZXと戦うことを望み、一対一の正々堂々とした戦いを挑んだ彼を憎みきることはできなかった。
どう反応していいか迷う村雨に、かがみがシャドウに近寄る。核鉄を傷口に当てようとしたのだ。
「あの……」
「同情はいらん! 俺はキサマらの仲間、愚地独歩を殺している。勝者なら勝者らしく、さっさと立ち去れ!!」
「な、なにを……」
「行こう、かがみ」
シャドウに文句を言おうとしたかがみを押し止めて、村雨は倒れているクルーザーを起こす。
勝者が敗者にかける言葉など、ありはしない。なにより、生死を懸けた戦いこそ、シャドウが望んだものだ。
この結果は、彼も承認済み。村雨にできることなど、心の中で礼を言うことくらいだ。
「ジェネラルシャドウ。俺は仮面ライダーとして戦い続ける」
「……ストロンガーはそうした。当然だ」
どこか、シャドウの声が嬉しそうに聞こえたのは錯覚だっただろうか。
村雨に確かめるすべはない。とりあえず、休める場所から探そう。
かがみをクルーザーの後部座席に乗せて、村雨は去る。バダンを倒す。
その決意は揺らがない。
去っていく村雨を確認して、シャドウは口が吊り上がるのをやめられなかった。
ストロンガーの後輩は、ちゃんと彼の技を受け継いでいる。
予想外の事態だったが、望んでいた宿敵の技で死ねるのなら悪くはない。
かつて、デルザー軍団の主導権を握るために躍起だったころの自分が見れば、不思議に思うだろう。
自分は変わったのだろうか?
(いいや、俺は変わりはしない。昔も今も、ストロンガーとの決着を望み続けていた。そうだろう? ストロンガー・城茂)
自分が認めた男に勝ちたかった。自分が認めた仮面ライダーの正義に勝ち、世界一の男になりたかった。
ブラックサタンに雇われたのも、デルザー軍団を結成したのも、すべては奴に勝つため。
今では叶わぬ夢となったが、その後輩に負けたのなら自分はきっと、ストロンガーに勝つことはなかったのだろう。
だからこそ、
(あの世では負けぬ。冥途で決着を着けるか……ストロンガー……)
これで、奴の元にいける。魂のないシャドウが辿り着けるかは、本人にも分からない。
だが、その事実に関係なくジェネラルシャドウの最期は、ひたすらに満足だった。
カブトローの星型のヘッドライトが一瞬だけ光り、シャドウを照らす。
まるでストロンガーが、シャドウを肯定しているかのように。
「デルザー軍団! 万歳!!」
だからこそシャドウは、バダンの名ではなく、己がストロンガーと戦った組織の名を叫ぶ。
それこそが、ストロンガーとの繋がりだから。
爆発が起きて、シャドウの身体を吹き飛ばす。轟音が、天まで届いた。
&color(red){【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーSPIRITS? 死亡】}
□
轟音が後方で聞こえ、村雨は一旦バイクを止める。
振動が響いており、おそらくシャドウが死んだのだろうと村雨はあたりをつけた。
傷が痛む。どうにか、コマンドロイドがいない部屋を見つけた。そこにクルーザーを止めて、身体を壁に預ける。
二個の核鉄を傷口に当てた。自己治癒は鈍くなっている。核鉄で治癒力を促進して、戦える状態には最短で一時間は必要だ。
「早く……覚悟たちと……痛ッ!」
「駄目よ、村雨さん。しばらくはここで休んで」
「……ああ。動きたくても、今はうまく動けないからな……」
苦笑しながら、村雨はかがみに従う。本当は、先に進みたくて仕方がないのだが、シャドウが刻んだ傷は深い。
五体が無事なのは奇跡としか言えなかった。
粒子を上げて治っていく身体を見つめて、やはり自分は人間でないといっそう自覚する。
「村雨さん。お茶をの飲もう。こんな時に、ちょっとおかしいけど……」
「いや、ありがたいよ。最後の戦いも近いしな……」
「最後の戦い……」
かがみが黙る。きっと、仲間の心配をしているはずだ。
彼女はどの面子でチーム分けをしたのかは知らない。とはいえ、今知る必要もないのだが。
(きっと、俺たちは再会をする。それが約束だから……)
村雨は確信を胸に、お茶を口に運ぶ。
村雨の荷物から引っ張った物だが、かがみが入れてくれると、味が美味しくなるような気がした。
(最後の戦い……)
かがみは、村雨の告げた言葉に思考を向けた。
そうなのだ。最後の戦いは近い。バダンの幹部を倒して、大首領を倒し、強化外骨格に閉じ込められたみんなを解放する。
犠牲がでるかもしれない。独歩ですら、命を落としたのだ。
自分がここまで生きているのも奇跡。確実に足を引っ張っている。
(私にできることは、なんだろう……?)
誰も答えてはくれない。だが、自分が見つけねば意味がない。
だからこそ、かがみは絶望をしない。
それは、死んでいった仲間たちに、今を生きる仲間たちに失礼だから。
(だから、私は生きていいんだよね? つかさ……)
妹の穏やかな声が、そのかがみの呟きを肯定したような気がした。
身体を休め、戦いに備える村雨の思考はシャドウに及ぶ。
彼は信念を持って自分に対峙していた。その姿に、一人の男が重なる。
もしも三影が生きているのなら、今の自分をどう思ったのだろうか。
気にはなるが、確かめる術などない。現時点では、村雨はそう思っていた。
虎の咆哮が聞こえるまでは。
驚きのまま村雨が、咆哮が聞こえた場所へと顔を向ける。
そこには、戦いを始めたパピヨンたちがいたのだった。
運命の再会が訪れるか、訪れないか。結果はすぐに――
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に負傷大。核鉄の治癒力と自己再生で再生中。疲労(大)。首輪が解除されました。
[装備]十字手裏剣(2/2)、衝撃集中爆弾 (2/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:身体を休める。
2:虎の咆哮に驚き。
3:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る。
4:仲間と合流する。
5:パピヨンを止める。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※穿孔キックが完成しました。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康(クレイジーダイヤモンドにより、左腕復活)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン。
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:村雨を休ませる。
2:別れた仲間と合流。
3:独歩の死体に、手を合わせたい。
[備考]
※独歩の死体の在り処を知っています。
[[(前編)>真・仮面ライダー ~決着~]]
|253:[[虎! 虎! 虎!]]|[[投下順>第251話~第300話]]|255:[[覚悟のススメ]]|
|253:[[虎! 虎! 虎!]]|[[時系列順>第6回放送までの本編SS]]|255:[[覚悟のススメ]]|
|252:[[人の瞳が背中についていない理由は]]|村雨良|:258:[[拳]]|
|252:[[人の瞳が背中についていない理由は]]|柊かがみ|:258[[拳]]|
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**真・仮面ライダー ~決着~(後編) ◆KaixaRMBIU
「超電ドリルキックにも劣らぬの威力だ……。だが、俺はストロンガーのその技に耐えたことがある。
一発程度、どうということはない」
「なら……何度でも打ち込むまでだ!」
「そう簡単に叶うと思うなよ! キサマのZXキックが来る前に、俺が捻じ伏せてやる!」
心底楽しそうに、シャドウが告げた。ZXは戦いを続ければ続けるほど、強くなっていっている。
こちらに来る前に、プログラムに参加させられたことも影響しているだろう。
強敵と戦い、負ければ負けるほど、立ち上がって強くなる。
それがシャドウの知る仮面ライダーだ。シャドウの知るストロンガーだ。
ZXも彼らと変わらず、仮面ライダーである事実にシャドウの心が躍る。
ストロンガーの後輩が、ストロンガーに実力で追いつこうとしている。
この戦いのためにこそ、自分が黄泉返ったのだ。
この瞬間以外に、もはや存在価値などなくてもいい。
(……愚地独歩、キサマがただの空手家として死んだ……いや、生きたように、俺もただ奴らの、仮面ライダーの宿敵として戦う)
それが、ストロンガーを倒し最強を目指したシャドウの生きがい。シャドウの生きる理由。
シャドウ剣がトランプと共に踊る。
ZXの突進を、剣で捌いて脇に抉りこませた。
ZXキックに耐えられてしまった。その事実がZXを追い詰める。
それでも、突き出される剣を右に左に流しながら、次の技の機会を狙い続けた。
一度で駄目なら、二度でも三度でも続ける。ひたすら、勇次郎に殴られながら勝利の機会を得て、逆転した時のように。
これは己との戦いだ。己に勝ち、そして敵に勝つ。
シャドウの胸を、ZXの拳が強打した。やはり、ZXキックは効いている。動きは鈍い。
僅かな時間を、思考にまわした。その行為が仇となる。シャドウが右足を踏み、掌低をぶち当てた。
ZXの脳が揺らぐが、敵は容赦はしない。剣の柄が傷口を突き、激痛が走る。
ZXキックにシャドウが耐えた時に斬り裂いた痕だ。
だがZXも殴られてばかりではない。踏ん張り、シャドウの側頭部に手刀を繰り出した。
ZXキックで弱っているシャドウは避けきれず、壁まで吹き飛ばされた。
もう一度、ZXキックを。
ZXが跳び、構えを取る。なのに、赤く光りはしなかった。
(ダメージを受けすぎたか……!)
次のシンクロまで、傷が癒えなければ使えはしない。
制限が解けて再生力が復活し、核鉄を持つZXならすぐにでもキックを打てるほど回復するだろうが、戦闘中ではそうも言っていられない。
事実、シャドウはもうZXの眼前まで追いついている。
「隙だらけだ!」
シャドウは告げると同時に、ZXの胸元を掴んで地面へと叩きつけた。
全身にバラバラになるほどの衝撃が駆け巡る。
どうにかせねば。だが、シンクロができるほど体力が回復するまで待つことはできない。
(あの技を使うか……未完成だが)
ZX穿孔キック。学校でかがみたちと一緒にいたときに開発した絆の証。
ZXは穿孔キックに賭けた。
「どうした! 仮面ライダーZX!!」
シャドウが挑発しているが、ZXは冷静に剣の軌道を逸らす。
待っているだけでは駄目だ。こちらから攻め、穿孔キックを放つ隙を得なければ。
ZXキックのときと同じでは駄目だ。すでに一度使った戦法ではシャドウから隙を作ることはできない。
ならばどうすれば。
(待てよ……散は俺のZXキックを受けたときは、どうした?)
始めて散とであって激闘を繰り広げた時、彼はZXキックを受け止めながら螺旋を放った。
あの時の自分は、直線的な技だったのが災いした。
シャドウとZXは互いに距離をとって、何度目か分からない睨み合いをする。
そうだ。自分は待てばいい。次の手を。
「観念したかッ! 仮面ライダーZX!!」
神速の突きが、ZXに繰り出された。
「村雨さんっっ!!」
かがみがZXの名前を呼んでいるのが聞こえる。
応えてやるわけにはいかない。だけど、自分は大丈夫だと教えてやりたい。
だから、心の中で、
(大丈夫だ、かがみ。俺は……仮面ライダーは負けはしない……絶対に!!)
そう決意するのが、精一杯だった。
「なんと……」
シャドウから驚愕の声が聞こえてくる。ZXとて、ここまでうまくいくとは思っていなかった。
それでも、生まれた絶好の機会。ZXは逃がすわけにはいかない。
真剣白羽取りしたシャドウの剣を、思いっきり引っ張る。ZXキックのダメージが残るシャドウに抗うことはできなかった。
ZXは再度、シャドウの胸元を掴んだ。
「掴まえたぞ……!」
「クッ……!」
再び、風がうねりをあげる。仮面ライダー1号の技。不滅の絶技。
ライダーきりもみシュートによって、シャドウを真横に投げ飛ばす。
「ぐっ!」
「螺・螺・螺……」
地面を踏みしめ、右螺旋の構えをとる。全身を脱力させ、右腕を真直ぐ後方に向けた。
見様見真似の構えのまま、前方に風を巻き起こしながら振り切る。
「螺旋ッ!」
螺旋を描く風が、シャドウを捉まえた。
散の記憶が、シャドウを縫い付けている。今こそ、進むとき。
いっそう強く、地面に踏み込む。
足をスライドさせ、細かなステップを刻んで突進する。
「ハヤテの如く!!」
爆発力を持った突進。前進する力のまま、右足を前に向ける。
記憶に刻まれた、仮面ライダー1号の蹴り。
「ライダーキック!!」
螺旋に作られた風に乗って、身体を倒す。
影を絶つ男の、動きを身体に、技に姿勢を安定すべく投影する。
「絶影ッッ!! くらえ! ZX穿孔キィィィィィィッ……」
言葉も、絆も、全てを費やした技だった。
何もかも貫く、一筋の槍だった。その技を、ZXの肩に刺さる剣が遮る。
「惜しかったな……やはり、キサマはストロンガーに及ばん」
シャドウは、ZXの肩に突き刺さる剣を掴んで振り下ろした。
ZXの胸部から血が盛大に吹き出す。かがみのZXの名前を呼ぶ声が、二人を貫いた。
「ライダーキックから、回転に移る際……0.7秒の隙があった。
……ストロンガーの超電ドリルキックなら、そんな隙など見せない。やはりキサマは未熟だ」
ZXに決定的なことを告げるシャドウは、どこか寂しそうに見えた。
もともと、シャドウは死に場所を求めてZXとの決着を望んだのだ。
この結果はある種、不本意であった。とはいえ、戦いに手を抜く真似はしない主義。
ZXが駄目ならば、次の戦場を求めるだけだ。
(ストロンガー……キサマとの決闘に、決着が着くならばどのような結末だったろうな)
本来なら着いたはずの決着を、シャドウは知らない。
だからこそ、最後の結末を望んでやまない。最後の仮面ライダーを倒した足で、虚しく去っていった。
「待て……」
いや、去ろうとしたシャドウを、立ち上がったZXが引き止めた。
嬉しさに跳ね上がった心臓を宥めて、シャドウは首だけで振り返る。
「ほう……予想以上にタフなようだな」
「俺は……負けない。負けられない……お前を倒す!」
技を破られたのに、絶望をしない。これこそが、仮面ライダーだ。
ストロンガーがデルザー軍団の改造魔人に追い詰められた時も、諦めず、成功率の低い再改造を得て、自分たちの前に現れたのだ。
ZXもまた、シャドウの前に負けても負けても、立ちふさがる。
(やはり……仮面ライダーとはこうではなくてはな! キサマの後輩とは言えない!)
すでにいない、ストロンガーに向けて呟き、シャドウ剣を真横に抜く。
キィン……と甲高い金属音が鳴り、ZXと対峙する。
さあ、俺を殺してみろ。シャドウは言葉にせず告げた。
『ストロンガーの超電ドリルキックなら、そんな隙など見せない』
シャドウの言葉が、ZXの脳裏に響く。超電ドリルキック……コマンダーとして活動してたZXの記憶にある技だ。
ZXは最初から、改造人間ZXとして存在していたわけではない。
十三体の改造人間部隊の隊長として選ばれ、バダンの怪人として暗躍していた。
ZXは一つの指令を受ける。仮面ライダーストロンガーを始末するという、指令を。
肩幅に足を広げ、シャドウを見据える。いい具合に脱力している。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シャドウの気合を込めた斬撃を、ゆらりと後ろに数歩移動して躱す。
速さは今までに劣る物ではない。僅かに胸の装甲が削られたが、それだけだ。
『間合いがぬるい』
勇次郎と戦いの時に聞いた、散の声を思い出す。
一歩だけ前に踏み込んで、拳を振り上げた。
「ゼクロスパンチッ!!」
ZXの会心の一撃がシャドウの右胸に当たる。シャドウが吐血して、動きが鈍った。
以前に怪我をしていたのだろうか、とZXが疑問に思うが、究明している暇はない。
ZXが知ることはないが、それは独歩がつけた傷であった。
シャドウに僅かに隙ができる。胸板に蹴りを叩きつけて、距離をとった。
(散……螺旋に、きりもみシュートを合わせて……!)
螺旋の力を、仮面ライダー1号の技に重ねて竜巻を起こす。
(絆……俺の記憶の繋がり! 足りなかった物は……記憶!)
ZXは一切の迷いもなく、次の動作に入る。
ハヤテの突進、ライダーキック、絶影の軌道、視界に入るかがみ。記憶の中のストロンガーの言葉が蘇る。
『岬ユリ子はもう……ただの女だ』
自分を支えてくれたのは、自分の手を姉の代わりに握ってくれたのは、ただの女性の柊かがみ。
今なら、ストロンガーの気持ちを理解できる。大切な、自分が立てる理由。戦える正義。
『フン……互角ね。なら……俺の勝ちさ』
自分と同じ性能の改造人間が十三人いる事実に怯むことすらしなかったストロンガー。
コマンダーである自分に、瀕死の重傷を負わされても戦いをやめなかった彼。
だからここで倒れるわけにはいかない。身体がたとえ、壊れかけようとも。
仮面ライダーの名に懸けて。
『チャージアップ!!』
ZXは仲間との繋がりと、正義を示した男の記憶を合わせる。
自然とつながったそれは、最初から一緒だったかのように、ZXを滑らかに動かした。
『超電ドリルキィ――ック!!』
「ZX! 穿孔キィ――ック!!」
記憶の中のストロンガーの軌跡と、ZXの繋がりの集大成の軌跡が重なる。
この軌道、ZXが今まで出会い、刻み、歩んで来た重みがあった。
それは本来のZXが歩んで得る、ZX穿孔キックの重みに勝るとも劣らない。
記憶が、シャドウを穿ち貫いた。
(こ、これは……!?)
シャドウはZXと戦った中で、一番驚いた。
彼が放った技は、見た目だけなら先ほどの未完成の回転キックとたいした差はない。
しかし、明らかな違いがある。それを、シャドウは一目で見抜いた。
なぜなら、欠けていたピースを埋めたものは、
「超電……ドリルキック……」
シャドウの宿敵の技。身体に刻んだ、超電子の必殺キック。あれほど戦いを望んだ男の技。
ライダーキックから回転に移る際の、0.7秒の隙を完全になくしている。
隙をなくした、完成された回転キック。まさに、仮面ライダーの必殺技に相応しい。
右胸が痛む。この傷がなければ、いくら完成をしたからとはいえこの技を打たれることはなかっただろう。
その事実が、悔しくはない。むしろ、傷をつけた独歩に感謝しているくらいだ。
(ストロンガー……俺はお前と……)
シャドウが身体に、目に、記憶に刻み込んだ超電ドリルキックがシャドウの胴体を通り抜けた。
ZXと瞳が会う。自分に勝った男だ。文句はない。
「お前の勝ちだ。仮面ライダーZX」
そういえば、自分の勝ちをシャドウの勝ちだと主張したあいつにも同じことを言ったなと、穏やかな気持ちのままシャドウは告げた。
やがてシャドウの身体が、地面へと叩きつけられた。
□
「村雨さんっ!!」
かがみが変身を解いて、喘いでいる村雨に飛びついた。
彼の勝利を喜んでいるのだ。感情が先走って、思いっきり両手に力を込めた。
「すごいっ! すごいよ!!」
「……君たちのおかげさ」
かがみが血で汚れないように優しく離して、村雨は笑う。
村雨が仮面ライダーとして戦えるのも、この技を開発できたのも、すべては彼女らのおかげだ。
だから、万感の想いを込めて村雨は礼を言う。
「ありがとう、かがみ。俺を仮面ライダーにしてくれて……」
「な! わ、わたしだけじゃ……」
村雨の言葉に、かがみが赤くなるが、村雨は身体を壁にもたれさせ、傷の治癒を待った。
力の全てを出し切った。指一本すら動かない。
(ありがとうございます。先輩……仮面ライダーストロンガー)
今はどこにいるかも知らない、7号ライダーにZXは感謝の意を伝える。
彼の記憶があったから、自分の穿孔キックは完成したのだ。
仲間たちの記憶と共に。これで、自分はもう負けはしない。大首領を倒す。
村雨に迷いはなかった。怪我の手当てをしているかがみにもう一度、感謝の意を伝えようと首を動かした。
そこで、ZXの強化された瞳が、コマンドロイドの群れを発見しする。
無音で動く彼らを発見したのは、幸運だった。
(これが……ジェネラルシャドウの占い……仲間の死……させるか!)
だが、力尽きた村雨に取れる手段は一つしかない。かがみを抱き寄せて、背中を向ける。
「む、村雨さん! い、いきなり……」
説明している暇もない。無数の十字手裏剣が、村雨の背中に殺到した。
衝撃がいつまでたっても届かず、村雨が不思議に思う。首だけで振り返ると、白いマントが村雨の視界に入った。
シャドウが、村雨たちを庇ったのだ。胴に穴の開いたシャドウの全身に、十字手裏剣が全身に突き刺さっている。
舌打ちをするコマンドロイドが、再度攻撃を仕掛けようとするが、巨大なトランプが突如現れた。
「ギィッ!?」
「勝者が歩む道……キサマら程度が、邪魔をするな!」
そのトランプから、炎が吹き出て四体のコマンドロイドを火達磨にする。
燃え尽きたそれを見届けた後、シャドウが膝をついた。
「ジェネラルシャドウ!」
「くるな!!」
駆け寄ろうとした村雨を、シャドウは拒否した。村雨はシャドウに対しては、複雑な感情を抱いている。
独歩を殺し、かがみをさらったのは許せることではない。
しかし、ZXと戦うことを望み、一対一の正々堂々とした戦いを挑んだ彼を憎みきることはできなかった。
どう反応していいか迷う村雨に、かがみがシャドウに近寄る。核鉄を傷口に当てようとしたのだ。
「あの……」
「同情はいらん! 俺はキサマらの仲間、愚地独歩を殺している。勝者なら勝者らしく、さっさと立ち去れ!!」
「な、なにを……」
「行こう、かがみ」
シャドウに文句を言おうとしたかがみを押し止めて、村雨は倒れているクルーザーを起こす。
勝者が敗者にかける言葉など、ありはしない。なにより、生死を懸けた戦いこそ、シャドウが望んだものだ。
この結果は、彼も承認済み。村雨にできることなど、心の中で礼を言うことくらいだ。
「ジェネラルシャドウ。俺は仮面ライダーとして戦い続ける」
「……ストロンガーはそうした。当然だ」
どこか、シャドウの声が嬉しそうに聞こえたのは錯覚だっただろうか。
村雨に確かめるすべはない。とりあえず、休める場所から探そう。
かがみをクルーザーの後部座席に乗せて、村雨は去る。バダンを倒す。
その決意は揺らがない。
去っていく村雨を確認して、シャドウは口が吊り上がるのをやめられなかった。
ストロンガーの後輩は、ちゃんと彼の技を受け継いでいる。
予想外の事態だったが、望んでいた宿敵の技で死ねるのなら悪くはない。
かつて、デルザー軍団の主導権を握るために躍起だったころの自分が見れば、不思議に思うだろう。
自分は変わったのだろうか?
(いいや、俺は変わりはしない。昔も今も、ストロンガーとの決着を望み続けていた。そうだろう? ストロンガー・城茂)
自分が認めた男に勝ちたかった。自分が認めた仮面ライダーの正義に勝ち、世界一の男になりたかった。
ブラックサタンに雇われたのも、デルザー軍団を結成したのも、すべては奴に勝つため。
今では叶わぬ夢となったが、その後輩に負けたのなら自分はきっと、ストロンガーに勝つことはなかったのだろう。
だからこそ、
(あの世では負けぬ。冥途で決着を着けるか……ストロンガー……)
これで、奴の元にいける。魂のないシャドウが辿り着けるかは、本人にも分からない。
だが、その事実に関係なくジェネラルシャドウの最期は、ひたすらに満足だった。
カブトローの星型のヘッドライトが一瞬だけ光り、シャドウを照らす。
まるでストロンガーが、シャドウを肯定しているかのように。
「デルザー軍団! 万歳!!」
だからこそシャドウは、バダンの名ではなく、己がストロンガーと戦った組織の名を叫ぶ。
それこそが、ストロンガーとの繋がりだから。
爆発が起きて、シャドウの身体を吹き飛ばす。轟音が、天まで届いた。
&color(red){【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーSPIRITS? 死亡】}
□
轟音が後方で聞こえ、村雨は一旦バイクを止める。
振動が響いており、おそらくシャドウが死んだのだろうと村雨はあたりをつけた。
傷が痛む。どうにか、コマンドロイドがいない部屋を見つけた。そこにクルーザーを止めて、身体を壁に預ける。
二個の核鉄を傷口に当てた。自己治癒は鈍くなっている。核鉄で治癒力を促進して、戦える状態には最短で一時間は必要だ。
「早く……覚悟たちと……痛ッ!」
「駄目よ、村雨さん。しばらくはここで休んで」
「……ああ。動きたくても、今はうまく動けないからな……」
苦笑しながら、村雨はかがみに従う。本当は、先に進みたくて仕方がないのだが、シャドウが刻んだ傷は深い。
五体が無事なのは奇跡としか言えなかった。
粒子を上げて治っていく身体を見つめて、やはり自分は人間でないといっそう自覚する。
「村雨さん。お茶をの飲もう。こんな時に、ちょっとおかしいけど……」
「いや、ありがたいよ。最後の戦いも近いしな……」
「最後の戦い……」
かがみが黙る。きっと、仲間の心配をしているはずだ。
彼女はどの面子でチーム分けをしたのかは知らない。とはいえ、今知る必要もないのだが。
(きっと、俺たちは再会をする。それが約束だから……)
村雨は確信を胸に、お茶を口に運ぶ。
村雨の荷物から引っ張った物だが、かがみが入れてくれると、味が美味しくなるような気がした。
(最後の戦い……)
かがみは、村雨の告げた言葉に思考を向けた。
そうなのだ。最後の戦いは近い。バダンの幹部を倒して、大首領を倒し、強化外骨格に閉じ込められたみんなを解放する。
犠牲がでるかもしれない。独歩ですら、命を落としたのだ。
自分がここまで生きているのも奇跡。確実に足を引っ張っている。
(私にできることは、なんだろう……?)
誰も答えてはくれない。だが、自分が見つけねば意味がない。
だからこそ、かがみは絶望をしない。
それは、死んでいった仲間たちに、今を生きる仲間たちに失礼だから。
(だから、私は生きていいんだよね? つかさ……)
妹の穏やかな声が、そのかがみの呟きを肯定したような気がした。
身体を休め、戦いに備える村雨の思考はシャドウに及ぶ。
彼は信念を持って自分に対峙していた。その姿に、一人の男が重なる。
もしも三影が生きているのなら、今の自分をどう思ったのだろうか。
気にはなるが、確かめる術などない。現時点では、村雨はそう思っていた。
虎の咆哮が聞こえるまでは。
驚きのまま村雨が、咆哮が聞こえた場所へと顔を向ける。
そこには、戦いを始めたパピヨンたちがいたのだった。
運命の再会が訪れるか、訪れないか。結果はすぐに――
【エリア外 サザンクロス内部/2日目 日中】
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に負傷大。核鉄の治癒力と自己再生で再生中。疲労(大)。首輪が解除されました。
[装備]十字手裏剣(2/2)、衝撃集中爆弾 (2/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:身体を休める。
2:虎の咆哮に驚き。
3:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る。
4:仲間と合流する。
5:パピヨンを止める。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※穿孔キックが完成しました。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます。
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康(クレイジーダイヤモンドにより、左腕復活)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン。
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:村雨を休ませる。
2:別れた仲間と合流。
3:独歩の死体に、手を合わせたい。
[備考]
※独歩の死体の在り処を知っています。
[[(前編)>真・仮面ライダー ~決着~]]
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|252:[[人の瞳が背中についていない理由は]]|村雨良|258:[[拳]]|
|252:[[人の瞳が背中についていない理由は]]|柊かがみ|258[[拳]]|
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