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葉隠散には夢がある」(2008/08/09 (土) 23:30:22) の最新版変更点

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**葉隠散には夢がある ◆TJ9qoWuqvA  風を切り裂き、赤い仮面の戦士の拳が唸り迫る。  それを散は華麗にかわし、脇腹を蹴りつける。  金属の硬い反響音を耳に、戦士が僅かに揺れる。  しかし、それだけだ。骨が折れたり、痛みに呻く様子は無い。 (なるほど。痛みを感じないというのは本当らしいな)  口角を吊り上げ、散は不適に笑う。これほど滅し甲斐のある相手も珍しい。  散は肩幅以上に足を広げ、地面の力を蓄える。左肘を曲げ、顔と平行に構える。  右腕は手刀を形作り、右後方へとまっすぐ伸ばす。  零式防衛術「右螺旋の構え」。散が最も得意とする型の一つだ。  尋常でない技である事を察したのだろう。ZXも跳び、赤く輝いて右腕と左腕を右へ伸ばす。  この構えを見て、最強の技を仕掛けるのは一流の証。  散の相手にとって不足でないことに、笑みを浮かべ敵を見つめる。 「ウオオオオオオオオオオオオ!!」 「螺旋―――――――――――!!」  視界が光に染まり、建物を砕いていく。  空間が爆ぜ、二人が吹き飛んだ。  散が膝をつき、ため息を吐く。右腕は血に染まっている。  螺旋も不完全にしか決まらず、右足を吹き飛ばしたのみである。 (強いな。それにしても、気になることがある。あやつ、まるで強化外骨格と戦っているような錯覚を持ってしまうが……)  ゆらりと、幽鬼のようにZXが立ち上がり、こちらの右腕を見つめる。 「痛いか?」 「笑止!! この程度、痛みにも入らぬ!!」 「……そうか。なら、俺に痛みを見せろ!!」  ZXが腕よりチェーンを取り出し、電柱に巻きつける。  巻き取る勢いで身体を浮かばせ、散に左足で蹴りを放った。  受け止め、散は螺旋の構えをとろうとする。だが、それは叶わなかった。  負傷している右脚で蹴りこまれたのだ。 「千切れた足で……」 「俺の身体は痛みを感じない! 痛みという記憶すらない!!」  さすがの散も予想外。血がかかり、衣装が汚れたことに顔を顰め、殴りかかるZXの拳をひらりとかわす。  地面を抉り、粉塵を盛大に立てるZXを睨みながら間合いを取る。  霧が発生し、粉塵が晴れた先には、ZXが二人いた。  その様子を見つめ、散は余裕たっぷりに笑みを浮かべる。 「身軽な動き、分身の術。まるで忍者のような奴だ」  迫るZXを無視し、構えをとる。こいつらに実体はない。  瓦礫を吹き飛ばし、地面よりZXが現れた。予想通り。  しかし、足が砕かれているというのに、神速の速さで迫ってくる。この速さ、予想外。 「くらえ!! オオオオオオ!!」  ZXの拳が散の腹に当たる。血を吐き、辛うじて螺旋を放った。  しかし、拳の威力で狙いがそれ、ZXに引っかかっているデイバックを傷つけたのみだった。  一枚の紙が舞い落ちる。そこに書かれている文字を見て、散は目を見開く。  身体を回転させ、蹴り飛ばす。そして、散は紙を取った。  強化外骨格「霞」と書かれた紙。いったいこの紙が何なのか、知らない。  しかし、散は迷いなく紙を開き、予想通り現れた強化外骨格「霞」を顕在させる。 「瞬着!!」  鎧を身に纏い、散はZXの眼前でその姿を見せる。  複眼のようなレンズが、額と散の目に当たるところに四つ存在している。  後頭部には女の髪のように、チューブが伸びている。白いマフラーをなびかせ、黒い外骨格の姿。  不退転の塊が、魂を持って立ちすくんでいた。 □  ―― 口惜しいや ――  現れたのは、銃弾に穴を開けられた身体を持つ女。  本来、強化外骨格には千単位の亡霊が宿る。  しかし、この強化外骨格「霞」に宿るのはたった一人の女の霊。  なのに、その戦力は万の亡霊を宿した強化外骨格にも勝る。  それはひとえに、 「すまぬ。私は勘違いをしていたようだ。 冥、お前と共に、真実を見たはずなのに」  その昔、戦争が行われていたころ、冥は一人息子を軍に徴集されてしまった。  まだ、0才になる幼子をである。  霞の材料にされた事を怒り、母の恨みを持って、霞へと宿ったのだ。  散もまた、その鬼畜のごとく行いを見て、人類に絶望した。  彼女の住む地球は最早滅びの道を行く。このまま人の行いを許容しておけば、物言わぬ生命が犠牲になると考えた。  冥の右手を、散はとる。もう二度と、血迷いはしない。  死合など、戯けた事を言っている暇などない。  主催者もろとも人を滅する。  それが、冥と散の目的。  ―― 鋼我一体! ――  散の胸に宿るのは、物言わぬ生命の嘆き。  冥の悲しみ。玉太郎への哀れみ。葉隠四郎を含む人類への怒り。  ―― 心は一つ! ――  両脚で大地を踏みしめ、瞳を燃やす。  ―― 人間の世の燃え尽きる日まで! ――  その手刀、鋼鉄を切り開く鋭さを持つ。  散に怖いものだと、もう無い。  ―― 血盟!! ――  不退転鬼・散。『星義』を胸に、全人類に宣戦布告を行った。 □  散はZXを見つめる。霞を纏った散には、彼の身体に多くの亡霊が纏わりついているのが見える。  彼もまた、強化外骨格と同じく多くのものを犠牲に、存在しているのだ。  ゆえに、彼は全てを失ったのだろう。それもまた、人の残酷さが生んだものと散は判断した。 「ウオオオオオ!!」  ZXの拳を受け止める。哀れなほど、重い。 「お前の痛み、受け取った!!」 「俺は痛みなど、感じていない!」 「否! 記憶が無いと、嘆いている!! それは痛みだ!!!」  ZXの攻撃が僅かに緩む。  その彼の腹に、重みを乗せた一撃を当てる。ビルの壁に叩きつけられ、今度はZXが膝をつく。  それもそうだろう。先程とは、乗せている想いが違う。  冥と心を繋いだ散に敵はいない。何より、散はZXが哀れでならない。  息も荒く、ZXは立ち上がる。それを前に、静かに右螺旋の構えをとる。  また、ZXも空を跳び、先程と同じ構えをとる。 「オオオオオオオオオオオ!!」  赤く光るZXが、右脚を再構成して、迫り来る。  まだ、散は構えたままだ。  ―― ゼクロスキック!! ――  まだ、散は動かない。  蹴りが散の胸を突き、後退させ続ける。  しかし、光は途切れる。 「ッ!!」  これは、制限によるものだが、二人が知るよしも無い。  そのまま散はZXによって壁に叩きつけられた。  だが、その構え、微動だにせず。 「痛いな。この散に痛みを与えるとは、見事!!」  大地を踏みしめ、地球の力を右手に込める。  狙いは、ZXの左腕! 「螺・螺・螺・螺旋――――!!」  ZXの左腕を砕いて、逆方向に存在しているビルへと叩きつける。  不退転の一撃。それは、目的を思い出させてくれたZXに対する礼だ。 □  水滴が一滴、村雨の顔に垂れる。  顔を顰め、辺りを見回すと、廃墟のような埃っぽい一室に倒れていた。  ズキッとした感覚を感じ、左腕を見る。再生をしているが、自分が感じた感覚に疑問を持つ。  そして、一つの答えが出た。 「これが、痛みか」 「ほう、痛みを思い出したようだな」  声の主へ視線を向ける。  兜を脱ぎ、こちらを興味深げに見ている、先程戦った相手。 「なぜ、俺を助けた?」 「答える前に一つ聞きたい。お前の名は?」 「……ムラサメ」 「フム、名簿から察するに、村雨良がお前の名か」 「村雨良……それが俺の名前……」 「いい名だな。良、この散と共に往かぬか?」  その言葉に呆気にとられ、顔を見つめる。  人の気持ちなど分からないが、冗談を言っているようには見えない。 「心配するな。散の部下は、元は私を討ちに来た人類の勇将だった。 良はそのいずれの部下にも劣らぬ。安心して私と共に歩むがいい」  村雨の顎を散は掴む。そのまま上げられ、唇に、熱く、甘く、柔らかい感触を感じた。  この感覚、村雨には未知数。 「これはその証! 散と共に歩む事を許した。さあ、愚かな人間の世を終わらすため、共に往こう!!」  散の言い草に、三影を思い出す。彼もこの殺し合いに参加していたはず。  合流するまで、散と組むのも悪くは無い。  何より、散は自分に『痛み』を思い出させてくれた。  無言で頷く。その姿に満足をしたのか、散はデイバックを放り投げた。 「お前のものは破れたから、散のデイバックに荷物をまとめた。 支給品とやらも入っているが、私は霞以外要らぬ。お前にやろう」  中身をさぐり、一つの紙を見つける。  クルーザーと書かれた紙。開くと、バイクが顕在した。 「驚かぬのか? つまらない」 「驚く? 何だ、それは?」 「そうか、良は記憶が無かったのだな。まあいい。この散が、全てを思い出させてやる。安心しろ」 「どうやって記憶を取り戻させるつもりだ?」 「知らぬ。だが、必ず記憶を取り戻させる。私に二言は無い!!」  やけに自信満々な散には悪いが、期待はしない。  バイクに跨り、散が後ろに乗る。 「まずはホテルへと向かおう」 「なぜだ?」 「汚れを落としたい。私は常に美しくなければならない。なぜなら、王であるからだ」 「分かった。ホテルへ向かう」  本来なら、ツッコム場面だが、村雨はそのままの意味で受け取る。  それでいい、と呟く散を背に、ホテルに向かう。  朝日が目に差し込んできた。  村雨の背中に抱きつき、散は思考する。 (この死合、放棄してしまうのはいささか無責任だな。だが、この散にはやらねばならぬことがある。 マリアよ。初めに会った縁で、お前を殺すのは最後にしてやろう。良と共に、人と主催者を皆殺しにしてくれる!!)  それが、散の『星義』だから。  彼らの進む道は明るかった。  【E-5 南部/1日目/早朝】 【葉隠散@覚悟のススメ】 [状態]:右腕負傷。全身に中程度の負傷。疲労(中) [装備]:強化外骨格「霞」 [道具]:なし [思考]基本:人類抹殺。 1:南のホテルに向かい、汚れを落とす。 2:人間を殺す。しかし、村雨のように気に入った相手は部下にする。 3:マリアを殺すのは最後。 【E-5 南部/1日目/早朝】 【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:左腕破損(再生中)。全身に中程度の負傷。疲労(中) [装備]:クルーザー [道具]:支給品一式(散&村雨。デイバック一つにまとめてある)、不明支給品1~4品(本人&散。確認済み) [思考] 基本:殺し合いに乗る。 1:散と共にホテルへ向かう。 2:三影と合流。 [備考] 参戦時期は原作4巻からです。 村雨静(幽体)はいません。 連続でシンクロができない状態です。 再生能力はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。 |065:[[反逆ノススメ]]|[[投下順>第051話~第100話]]|067:[[MY DREAM]]| |065:[[反逆ノススメ]]|[[時系列順>第1回放送までの本編SS]]|067:[[MY DREAM]]| |040:[[零式防衛術外伝 すごいよ!!散さん]]|津村斗貴子|075:[[双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.―]]| |040:[[零式防衛術外伝 すごいよ!!散さん]]|花山薫|075:[[双剣のサーヴァント―I have created over a thousand blades.―]]| ----

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