ハッピーバースデー ◆d4asqdtPw2



――飛び散る血しぶきと脳。私の脳。

頭が破裂した瞬間に私が見た光景はそれだけ。たったそれだけ。
……いや、もう一つ。

『チェックメイトだヒューマン!』

私を「破壊」した張本人。

『面白い!とても面白い!!』

その男はとても楽しそうで。

『貴様も――』

本当に楽しそうに私を、私のことを


『貴様も私と同じ化け物か』


化け物と呼んだ。あの男と同じ化け物と。
化け物? 私が? この私が?
あノ、おとコと、おナジ、バケモノ?


★  ★  ★


「――を続行する!! 」
無人の野球場に老人の叫び声が響き渡る。


「……んあぁ、わたし……眠って……」
その声はスタンドで寝ていた柊かがみを浅い眠りから呼び起こすのだが、少しばかり遅かったようだ。
かがみが目を覚ましたのは放送がまさに終了する瞬間であった。
まだ眠そうな目を擦っているその少女は、大した時間寝ていた訳ではないのに汗にまみれていた。
「嫌な夢、見ちゃったわね」
彼女が見ていた夢。
それは先ほどの吸血鬼との戦いの記憶の断片であった。

アーカードに頭部を破壊され、激戦の力で復元。
また破壊され、復元。破壊、復元、破壊、復元、破壊、復元。
途中で笑い声と共に現れるアーカードの笑顔。
そのシーンだけが何度も何度もループする夢。

「ふぅ……喉渇いた」
起き上がったかがみはバッグから水を取り出し、口に含むが。

『ククク、ハハハハハハハ! 面白い! 面白いぞ化け物!』
男の笑い声、自分の頭が弾け飛ぶ映像が再び頭を駆け巡り。

「――ぶっ! う、うぁ……うげぁぁ!!」
胃液と共に飲んだばかりの水を座席にぶちまけてしまう。
「っはぁぁ! はぁ、はぁ……つかさぁ……」
かがみはつい数時間前まで普通の女子高生だった。いや、それは今でも変わらない。
そんな彼女が吸血鬼と殺しあった挙句、頭を粉々にされ、終いには相手を丸焼きにして生き延びたのだ。
平然としていられる訳がなかった。
そして彼女の心に最も深い傷を残したのは吸血鬼が残した一言。


貴様も私と同じ化け物か


自分は人間、化け物なんかじゃないただの女子高生。
そんなことは分かっている、分かっているはずなのに。
(私は……私は……)
頭蓋を砕かれ、脳味噌を飛び散らせ、中身を剥き出しにしてそれでも生存する。
炎を生み出し、全てを、あの恐ろしい吸血鬼を含む全てを燃やし尽くす。
これが普通の女子高生の姿だろうか。

(みんなを、みゆきを守るためには仕方なかった。逃げるにはああするしかなかった)
本当に、本当にそうだろうか?
あのとき、途中で逃げ出すチャンスは幾らでもあったのではないか?
あのとき、あそこまでしなくてもよかったのではないか?
あのとき――あのとき私は笑っていたのではないか?
あの男の歪んだ笑顔のように。

(そんなことはない! そんなことは……)
浮かんでくる映像を必死に振り払おうとするも、かがみの優秀な脳は1度覚えたイメージを簡単に忘れてはくれない。
(私は、違う! だって、わたしは、普通の、普通の、つかさもこなたもみゆきも……)
日常の思い出を必死に手繰り寄せようと頭を巡らせる。


「かがみとつかさってさ、双子のわりには似てないよねー」
一緒に登校しているこなたが私たちにそんな疑問をぶつけた。
「私たちは二卵性双生児だからね。普通の姉妹程度の違いが出るのよ」
「なるほどぉ、確かにつかさはのんびりした性格してるけど、かがみは凶暴」
「なんだと?」
こなたのボケに私が突っ込む。つかさは隣で笑っている。いつも通りの日常、これが私の日常。
「でも姉妹なんだし、髪型とかリボンとか合わせると似てるかもね」
そう言ったこなたがじぃっと考えこむ。つかさのような髪型の私を想像しているのだろう。
「ぷぷっ! 駄目だ、かがみにかわいい系は無理」
「るっさいな! 勝手に想像して失礼なこと言うな!」
こなたの失礼な発言に私は顔を真っ赤にして抗議する。
つかさは隣で相変わらずニコニコしている。
こなたは私の抗議など知ったことかと言わんばかりに笑い続けている。
「ククク……ゴメンゴメン、アハハハ」
しかし怒りの収まらない私は激戦をこなたの頭に深く突き刺した。
「アハハハ――あ?」
さっきまで笑っていたこなたが血を噴き出して崩れ落ちた。
しかし私の怒りはこんなものではない。激戦を構えて横たわるこなたへ何度も突き刺す。

「お、お姉ちゃん?! なにを」

叫ぶつかさには構わずに、ざく、ざくとテンポ良く激戦を突き刺す。突き刺す。突き刺す。
刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。刺す。
ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく、ざく。

「お姉ちゃんやめて!」
「かがみさん! やめてください!」
つかさと、どこからかやって来たみゆきが私を羽交い絞めにして邪魔をする。
「放しなさいよ、いま闘争の真っ最中なんだから」
分からず屋の2人は放してくれない。
「なに言ってるの? お姉ちゃんしっかりしてよ!」
「かがみさん! こんなことをしては」

仕方がないから、マジシャンズレッドで邪魔をする2人を丸焼きにして――


「――っ! わたし……なにを? ……ぅぷ! っあ、あ!」
そこで私は我に帰った。
あまりの光景にまた吐きそうになるが、吐き出すものすらなく、ただビクビクと痙攣するだけだった。
「あん、なの、わた、しじゃ、ない。わたしじゃ、な、い」

いつもの日常のはずだったのに、騒がしくて平和な日常のはずだったのに。
(私が……私じゃなくなっていく……!)
私が違う私に侵食されていく感覚。
それはかつてないほどの恐怖だった。あの吸血鬼と対峙したときよりも大きな恐怖。

(このままじゃだめだ。つかさにこなたに、みゆきに会わないと)
(私が『変わってしまう』……)
何も受け付けないと主張する胃袋に無理やり水を流し込み、かがみは再び歩き出す。
「つかさに、こなたに、みゆきに……会わ、ない、と。みんなに会って、会って……」
(会って……ドウスルノ?)
そこまで考えて、かがみは意識を失い、崩れるように眠りに落ちた。


【B-5 野球場入り口 一日目 朝】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:気絶 消耗大 無傷 精神不安定
[装備]:核鉄「激戦」@武装錬金 マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生きてみんなと一緒に帰りたい(?)
1:???
2:つかさ、こなた、みゆきに会いたい。
3:自分の変化が怖い。

[備考]
※第1回放送を聞き逃しました。
※ジャギを危険人物と認識しました(何故ジャギがケンシロウを名乗ったのかは不明)
※アーカードを不死身の化け物と思っています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
全身を再生した場合首輪も再生されます。自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
禁止エリア等に抵触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
炎のセンサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します。


076:美徳の不幸 投下順 078:フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ!
076:美徳の不幸 時系列順 078:フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ!
059:ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!―― 柊かがみ 097:COOL EDITION