Drastic Soul ◆UpgLCR69iY



エリアF‐6の道路を一人の男が走るとはいかないまでもかなりの速度で歩いている。
その男の名はカズマ。シェルブリットのアルターを持つ“反逆者(トリーズナー)”カズマである。
そのカズマにやや離れた位置から不安そうに彼の後を追う男。彼は南斗聖拳、そして自己流の北斗神拳を操る自称“天才”アミバである。
彼らは真っ直ぐ北へ向かっている。目的はカズマとケンシロウのリターンマッチのみ、それ以外には何もない。

「も、もう一度言うぞカズマ! 先ほどの放送でジャギという奴が呼ばれた。
こいつは俺やケンシロウ程ではないが北斗神拳の使い手でもありそれなりの実力者だ!
そんな奴がもう殺された…………こ、ここはやはりケンシロウに…………。」
要するにこの会場には恐ろしい力をもった参加者で溢れている。
ここはやっぱりケンシロウに保護してもらおう。
そんなことをアミバはカズマに数十分前からしきりに促しているがカズマは振り向きもせず無言で歩き続ける。

(な、何故だ? 俺の言ってることは間違ってはいない。この状況であのケンシロウともう一度闘うなど一体どういう物の考え方をしているのだ? 
何がこのカズマをここまで意固地に動かしているのだ!? )
わざわざ一度完敗した相手に逃げるのでなく自分から闘いを仕掛ける。
考えれば考えるほどわからない。自分にはない何かがカズマを動かしているのではないかとふと思うがその『何か』がわからない。そうこう考えている内にカズマはどんどん先を行ってしまいアミバは一旦考えを中断し慌てて彼の後を追う。

(ふざけやがって……何様のつもりだ? あのクソじじいが……。)

放送を聞く前から不機嫌気味だった顔をさらに不機嫌に歪めカズマは歩き続ける。
別にカズマはアミバに対して悪意があって無視したわけではない。
むしろ自分を介抱し先ほども禁止エリアの場所を手早くメモし自分に見せてくれたアミバには感謝の念もある。
だが同じことを何度も言われ続ければ当然返事をするのも億劫になるものだ。
それに……

(俺たちを何だと思ってやがる? 活躍に期待するだと? 
俺たちはてめぇの手の上で踊り続ける存在か?……考えるまでもねぇ。絶対にノゥだ! クソッタレが!!! )
クソッタレのスーパーホーリーにロウレスを壊滅されられた時とはまた違った怒り。
どうにかしてこの怒りをぶちまけてしまいたい。
今のカズマにはアミバの言葉に耳を傾ける余裕は殆ど存在していなかった。


歩き続けているとカズマの視界に入っていた先ほど自分たちが居たような民家の
玄関から白ずくめの奇妙なコートを纏い、これまた奇妙な帽子を顔が隠れるほど深くかぶりショットガンを持った人物が出てきた。

「おいアンタ! ケンシロウっていう奴を見かけなかったか? 」

カズマは立ち止まり、そう言葉を投げかけると白コートの男はゆっくりカズマの方に身体を向けカズマに退屈そうに問う。
「ん~その男がどうかしたのかね? 」
「質問に質問で返すんじゃねぇ! 知ってるのか知らないのかどっちだ!? 」
明らかに真面目に質問に答えようとしない白コートの男にカズマの苛立ちが募り更にカズマの顔が不機嫌になる。
アミバもやっとカズマに追いつき状況を把握し事の成り行きを見守る。

「ああ、良く知っているよ……なぁ? 『負け犬のカズマ君』? 」
「なっ!? 」
「わしはケンシロウの元に行かなければならない、そしてわしはこのバトルロワイアルというのを楽しみたい。
だからわしはお前を相手にする時間なんかないのだよ? 『負け犬のカズマ君』! 」
そう言い放ち白コートの男は背中を向け北へ歩き出す。
アミバは恐る恐るカズマの様子を見ようと顔を覗き込むが……。
カズマは笑っていた。怒りを通り越し静かに笑っていた。

「アンタ、ケンシロウに負けて見逃してもらったんだろ? そんなアンタが俺を負け犬と呼ぶとはなぁ。」
カズマが呟いた言葉に白コートの男はピクンと反応し思わず立ち止まる。

「……何故そんな事が言えるのかね? 」
「俺でもわかる簡単なことだ、見ろよ? 
お前が出てきた民家の周りにガラスが散らばってやがる……どうせケンシロウにぶっ飛ばされたんだろ? てめぇこそ負け犬ってことだ! 」
確かにカズマの言う通り民家の周りに散らばっているガラスが朝日を反射しその存在を示している。

「カカカ……このわしが負け犬だと? ククク……。」
カズマの言葉を聴き白コートの男は背中を向けながら不適に笑う。
そして遂に身体をカズマとアミバの方に向け

「お前はッわしを本気で怒らせた!! 」
怒りを隠すことなく狂気を含ませた叫びをあげ、ショットガンの銃口をカズマに向けた。

「カズマ! このアミバも協力するぞ! 」
アミバにとってカズマが死んでしまえば自分がケンシロウに殺されてしまうので見捨てるわけにはいかない。
それにあの白コートの男が持っているショットガンを手に入れれば少しはこの殺し合いを生き延びる確立が高くなる。
そう思いカズマに協力を申し出たのだが

「いらねぇよ。」
左腕でアミバを制し、カズマは提案をあっさりと跳ね除けた。

「な、何故だ? 俺の力など役には立たないと言いたいのか!? 」
「そういうわけじゃねぇ!……姿勢が見えないのさ」
顔に疑問符を浮かべたアミバにショットガンを自分に向けた白コートの男を無視してカズマは言葉を続ける。

「アンタがあいつと闘う理由は何だ!? 俺は確かにケンシロウに負けた!
だがその事であいつに負け犬と呼ばれ引っ込むわけがねぇ!
だから奴をブチのめすことで俺の強さを刻み込み二度と殺し合いに乗るなんて言わせなくしてやる! 
誰のためでもねぇ! それが俺の信念だ!……アミバさん、アンタにはあるか!? 信念ってやつが! 」

『信念』
欲望はあれど今までのアミバの人生には全く無縁のものであった言葉。
今まで意味を考えたこともない。ただこの殺し合いにつれてこられて漠然的にだが決定的に何かが自分に足りない事はわかっていた。

(もしやこのアミバに足りないものというのは信念か?……し、しかし俺の信念とは一体……。)
アミバが俯きながらカズマの言葉を必死に考えている内にカズマは右腕を天に向かって突き出す。
その瞬間カズマの後方の道路の一部が削り取られたかのように消失し、
原子レベルまでに分解された粒子がカズマの右腕を包み込み黄金の腕“シェルブリット”が展開され、
カズマは勢い良く白コートの男へ向かって跳躍する。

「三枚羽発動! 功速のシェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
右の背中から生えた三枚の真紅の羽を展開し落下速度を利用し、
更に最速の男ストレイト・クーガーの速度を吸収したシェルブリットを放つべくカズマは叫ぶが……。
BANG!!!
ショットガンの銃口から撃ち出された散弾がカズマの下腹部に直撃、バランスを崩しそのままカズマは道路に落下した。


(ククク……素晴らしい! これでもうわしはケンシロウにも負けることはない!
このキング・クリムゾンの新たな力があればな! )

カズマが跳躍するほんの少し前にすでにショットガンの銃口を跳躍地点に向け、
カズマを見事撃ち抜いた白コートの男……鷲巣厳は歓喜に満ちていた。

数十分前、丁度放送が流れ自分の獲物であるアカギの生存を知り歓喜していた鷲巣はふと自分がこの殺し合いに連れてこられてから食事を取っていない事に気が付き一先ず食事を取ることに決めた。
その時、鷲巣はキング・クリムゾンの説明書を食事を取りながら何気なく読み返していた。
何か隠された能力があるのではないのか? 王の名を持つには何か理由があるのではないのか? と思いながら。
そして鷲巣は見つけた……キング・クリムゾンの恐るべき力を。

(小僧……貴様は絶対にわしの領域には届くことはできん!
なぜならこのわしにはキング・クリムゾン・エピタフがある! )

『キング・クリムゾン・エピタフ』
キング・クリムゾンの能力の一部であり、可視範囲の物体の数秒後に必ず起こる未来の画像を見ることができる力。
鷲巣はカズマが右腕を上げた瞬間キング・クリムゾン・エピタフを発動し、
カズマの数秒後の未来を確認することでカズマを撃ちぬくことに成功していたのだった。
更に追撃の散弾を撃ち込むべく鷲巣はショットガンの予備弾丸を冷静に装填し
BANG!!!
引き金を引いた。

「へっ! そうそうまぐれ当たりなんか起きねぇ! 」
下腹部からは血を流し、血反吐を吐きながらもカズマは素早く起き上がり横っ飛びに飛びのき散弾を回避、
腰を落とし右腕を鷲巣の方に向け再びシェルブリットの構えを取る。
鷲巣の方もカズマの動きを見て銃弾を装填しながら再びエピタフを発動、カズマの数秒後の未来の画像からカズマの移動位置を見つけようとするが……
未来の画像にはカズマのシェルブリットが自分の下腹部に直撃しシルバースキンが弾ぜている画像が映し出されていた。

(な、何!? 20メートル……い、いや30メートルはあるこの距離をたった数秒で詰めてきただと!? )

自分の予想を裏切る事態となり驚く鷲巣を尻目にカズマの動きは止まらない。

「反撃のシェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
拳を打ち出しまさに弾丸の様な圧倒的な速度でカズマが鷲巣に迫る。
しかしエピタフの未来の画像は必ず起こる未来を示す。
シェルブリットは鷲巣の下腹部に直撃するが鷲巣を数歩後ろに引かせ、
シルバースキンの装甲を弾ぜ六角形の白片を散らばせるだけに終わった。

「な!俺のシェルブリットが!? 」
例え首輪による制限が掛かっていようとも北斗神拳を極めたケンシロウの渾身の蹴りを受け止めたシルバースキン。
同じく制限を受けたシェルブリットを受け止める事は造作もない事であった。
只の奇妙なコートだと思っていたシルバースキンの予想も付かない能力にカズマは驚き一瞬無防備になる。
すでにエピタフによりこの結果を知っていた鷲巣はこの隙を見逃すことも無く咄嗟にショットガンを放り出し、
キング・クリムゾンの左腕を発現し伸びきったシェルブリットの手首を掴み更に右腕を発現。
そのまま右腕の指を揃え手刀の形を作り右腕を天に向け……勢い良く振りぬきカズマのシェルブリットを右肩ごと文字通り切り落とした。

「うあああぁぁぁぁ! 」
「ククククク! これでわかっただろうカズマ君!? わしは負け犬ではない! これが王の力だ! 」
キング・クリムゾンの腕の発現を止め鷲巣は高らかに言い放つ。
エピタフの使用により実際には疲れが徐々に蓄積しているのだが鷲巣はそんなことはもはや気にしていなかった。
なぜなら目の前の小僧の唯一の武器であるシェルブリットを身体から引き離してやったからだ。
後は思う存分いたぶるだけ。そう思い鷲巣は改めてカズマの様子を見るが…………。

カズマの意思は、弾丸は……曲がっていなかった。

「……何勝った気でいやがるんだよ……変な腕も出しやがって……勝負はここからだろーがぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」
カズマが咆哮をあげた瞬間切り落とされた右腕がひとりでに宙に浮く、
そしてその腕が先ほど粒子に分解され再びカズマの右腕があった部分に集まり『再々構成』が完了し再び黄金の腕“シェルブリット”が展開される。

「激昂のシェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
再々構成に驚愕の表情を見せる鷲巣にシェルブリットがまたも直撃する。
だが、結果もまた同じこととなり六角形の白片が周囲に弾ぜる。

「ククク! カズマ君! 君の力でh
「まだだ! 双撃のシェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
「な、何ぃ!? 」
鷲巣が言葉を言い切らぬうちにカズマはもう一度同じ箇所にシェルブリットを撃ち込む。まだ制限により完全に修復されていないシルバースキンでは受け止めることが出来ず鷲巣は派手に後方に吹っ飛び、そのままの勢いで道路に叩きつけられた。

(ば、馬鹿な! 何故王であるこのわしがあんな小僧に……許さん! 絶対に許さん! )
血反吐を吐き、カズマへの怒りを募らせ、下腹部の痛みや道路に打ちつけた衝撃を感じながらも急いで鷲巣は身体を起こしカズマの方に向き直る。

「形勢逆転ってやつだな……だがまだ俺の右腕にある弾丸は燻り続けてんだ! まだ終わりじゃねぇぞ! 」
カズマがそう叫び鷲巣に向かって突進する。

(どうする? エピタフをもう一度使って……い、いやどうせさっきと同じ結果になる。
ショットガンもない、こうなれば……あれしかあるまい! )

「そろそろそのツラを見せてもらうぜ! くらえ! 強攻のォォォォーーー」
更にカズマは必死に思考を張り巡らす鷲巣に接近しシェルブリットを向ける。

(ここでこの小僧に負けたらわしはケンシロウに永久に届かん……それだけは絶対に認めるわけにいかん! )

「シェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
カズマの咆哮が響きシェルブリットが真っ直ぐ弾丸の如く鷲巣に向かって突き進む。
鷲巣は避けるどころかその場から一歩も動かない。
ケンシロウとの闘いの時のように恐怖で身体を動かせないのだろうか?
否、確かにカズマは鬼気迫る勢いで鷲巣に接近しているが決してそうではない。

(この鷲巣厳には王としての意地がある! 貴様如きに負けるわけにはいかん! 
1秒では足らん! キング・クリムゾン! 貴様も王の名を冠するのであれば5秒……いや3秒でいい! 
王の証であるために……時間をぶっ飛ばしてみろ! )

カズマのシェルブリットが鷲巣に迫る。
その距離はすでに1メートルを切っている。そして…………

「キング・クリムゾン!! 」
形こそ人と同じではあれどとても人間とは思えないほど禍々しいキング・クリムゾンの全身が鷲巣のすぐ傍に発現。
鷲巣の生気を振り絞り、精神力と体力を糧にした叫びが響き渡った。

カズマがとてもゆっくりと、まるでビデオのスロー再生のように動き、鷲巣にシェルブリットを撃ち込む。
いや、撃ち込むのではなくシェルブリットは鷲巣の身体を……通り抜けた。

(ハァ、ハァ、ハァ……やはりわしはツイている。キング・クリムゾンの力で3秒間時間をぶっ飛ばした……わしの勝ちだ。)
キング・クリムゾンの真の力。
一定の範囲内の時間を本来の力であれば十数秒間消し去る力。
その消し去られた時間の間全ての物体は時間の経過を認識できずに結果だけを認識する事になり消し去られた時間の間何者にも触れることも触れられることもできなくなる。

(カカカ……随分手こずらせてくれたな……だが貴様はもう終わりだ! )
しかし自分だけは自由に動くことが許され『傍観者』となる。
鷲巣は既にキング・クリムゾンの真の力を使ったことにより体力、精神力を殆ど使い果たしていたが勝利への執念、
何より王としての意地が鷲巣の身体を突き動かす。
シェルブリットからやや右に位置を置きキング・クリムゾンが発動して3秒が経過する瞬間、


鷲巣はキング・クリムゾンの右腕の拳をカズマの左胸……心臓に向けて放った。

「カ、カズマァァァァァーーーー!!! 」
今までカズマと鷲巣の闘いを見守っていたアミバは目の前で起きたことに驚きを隠せず絶叫した。
カズマが白コートの男に突進し、間違いなくシェルブリットが直撃すると思ったら何故かシェルブリットは鷲巣に当たらず、
代わりに禍々しい人形の右腕がカズマの左胸をブチ抜いていたからだ。

(わ、わからん。俺にはあの男が何をやったのかわからん。
しかしこれだけはわかる……ケンシロウまでとはいかないまでもカズマ程の男がやられたのだ、俺ではあの男には勝つことはできん! )
ケンシロウに全く臆せず立ち向かい、比類無き剛拳を持つカズマと自分では技術的にも精神的にも大きな差が存在する。
いっそ、このまま逃げてしまおうか? そんな考えが一瞬アミバの脳裏を巡り一歩後ずさりをするがそれ以上アミバの足が動くことは無かった。
なぜなら

「……なぁあんた……アルターって意味知ってるか……?
英語で言うとオルタ……へっ、忘れちまった。とにかく『進化』っていう意味らしいぜ……。」
左胸からおびただしい血液を流し、
口元が朱に塗れながらも未だ反逆の意思が消えない眼光でカズマが鷲巣にそう呟いたからだ。

(カ、カズマ! お前はまさかまだ闘うつもりか……何がお前を……お前の心を動かすのだ!? )
アミバにはカズマの表情は当然わからない、だがアミバも拳法家の端くれ。
カズマの放つ闘志でカズマの意思が曲がっていないことを感じ取る。

「カカカ……『進化』、この先わしが世話になる言葉じゃな。」
満身創痍でありながらも薄ら笑いを浮かべ鷲巣は答える。
心臓に致命傷を与えたという事実が鷲巣に余裕を与えていたからだ。

「へっ……アンタにはこの先なんて……ねぇよ。何故なら俺のシェルブリットが……てめぇをブチのめすからな! 」
「カッカッカッ……面白い! ならお前はやってみせるのか!? 『進化』を! 」
カズマの叫びを鷲巣はせせら笑い、冗談交じりにカズマに問いかけた。
鷲巣がそうするのも無理も無い。
鷲巣には鉄壁の防護服シルバースキンは未だ健在でありキング・クリムゾンもある。
何よりキング・クリムゾンの右腕がカズマの左胸をブチ抜き心臓に致命傷を与えているからだ。
だが……“反逆者(トリーズナー)”カズマはその事実にも反逆する。

「当然の……パーぺキだ!!! 」
口角を吊り上げ、不適に笑い言い放つカズマを見て鷲巣は一瞬たじろぐ。

(使わせてもらうぜ……じいさん)
右腕の拳を握りしめ、右腕を思いっきり天に向け振り上げる。
そしてカズマは叫ぶ。このバトルロワイアルに連れてこられる寸前に一人の老人から託された『進化』の言葉を。


「s.CRY.ed(スクライド)!!! 」
その瞬間カズマの身体が光る。
そして青白く、眩く、激しい光が周囲に放出された。


(な、何だ? 一体何をしたのだ!? この姿は一体……? )
カズマの身体から放たれた青白い光に目を眩ませながらもカズマの姿を見て鷲巣は驚く。

「……これが俺の『進化』……『凄いアルター』だ!!! 」
右腕だけでなく左腕、首、両耳、両足の付け根のやや下から足の裏まで、
眉間のやや下の丁度両目の間の位置を中心としX上に顔に広がる部分。
これら全てに重量感を伴った黄金の装甲が纏われ、更に右目は緑色に光るガラスの様な物体に覆われ、
右の背中からしか生えていなかった3枚の真紅の羽は変化し両の背中から計6枚の真紅の羽が生えている。
また胸部には左右2個ずつ人間の眼の様な赤く握りこぶしひとつ分の大きさの物体が縦に並び上の2つからは肩の周りに、
下の2つからは丁度腰の辺りにまで背中の真紅の羽と同形質のものが伸び、
右腕は更に強大になりまるで竜の頭部の様な装甲から手が突き出している。
そのカズマの姿は人と言うよりは人の形をした獣と言える程の威圧感を鷲巣に与えていた。

「初撃の『新』シェルブリットォォォォォォォーーーーー!!! 」
本来は劉鳳によって『ハイブリット』と名付けられるはずだったカズマの進化したアルター。
その強大な剛拳が鷲巣の胸部に撃ち込まれ、直撃箇所のシルバースキンが弾ぜ……否、
ハイブリットのあまりの衝撃により直撃箇所だけでなく上半身全てのシルバースキンが一斉に弾ぜ、
その瞬間シルバースキンは解除され核金が道路に落ちる。

「き、貴様ぁぁ! キング・クリムゾンが確かに致命傷を与えているのだぞ!?
何故その痛みに耐えられる!? 」
ハイブリットの衝撃により帽子まで弾き飛ばされ、
カズマとの闘いの中で一番の驚きを見せている鷲巣の素顔が完全に晒される。

「俺は“反逆者(トリーズナー)”だ……ならその痛みに……反逆する!!! 」

鷲巣はならば止めを刺そうとキング・クリムゾンの左腕を必死に動かそうとするが全く動く様子はない。
何故なら鷲巣は首輪の制限以上にキング・クリムゾンの真の力を使っていて心身ともに最早余力は残されていなく、
キング・クリムゾンを操る事は鷲巣には荷が重い事になっていたからだ。
そしてカズマが再び大きな血反吐を吐きながらありったけの叫びをあげる。

「……吼えろよ! 俺の『新』シェルブリット!!! 野郎に見せつけろ!!! 」
右腕の竜の頭部の様な装甲が音を立てて爆発し、代わりに右腕全体がまるで虎と獅子を掛け合わせた様な猛獣の頭部に形を変え、
その周りには視認出来る程膨大なアルターのエネルギーが放出されている。

(ま、まさかこのわしがこんな所で死ぬというのか?
わしはアカギやケンシロウを殺さなければならない、何よりわしは王だ……王なのだ!わしが死ぬわけがない! )
絶望が支配する中鷲巣は自分の運を信じ、キング・クリムゾンが動く事を願う。
だがキング・クリムゾンは動かない……皮肉にも自分を『王』と信じ続けた鷲巣は『帝王』に見捨てられる結果となってしまった。

「この俺の……自慢の拳をォッ!!! 」
マーティン・ジグマールのアルターであるギャラン=ドゥ。
絶対壊滅無敵殲滅軍団旗艦、天地無用を一撃の下に粉砕したハイブリットの最大出力。
それ程の威力を誇るハイブリットが、シルバースキンを弾かれた鷲巣の胸部に撃ち込まれる……
そして鷲巣の胸部から上の部分は粉々に砕け散り、鷲巣だった残りの物体は力を失い道路に倒れた。

「……これが……反逆だ……。」
そう呟きカズマはアルターを解除し……道路に前のめりに倒れ伏した。

「だ、大丈夫かカズマ!? 」
思わずアミバはカズマの元に走り寄り、急いで介抱する。
早く手当てをしなければと思いカズマの傷を確認するが……
カズマの左胸にあいていた大穴は六角形の奇妙な物質に覆われていて中心からツララの様な突起物が生え、傷は塞がれていた。

「へっ……どうって事……ねぇよ。傷はアルターで塞いだからな……それよりアミバさん……アンタは見つけられそうかい?
自分の信念……アンタが誰のためでなく自分がやりたい事をよ……? 」
依然苦痛の表情を浮かべながらもカズマはアミバに問う。
だがアミバは未だその答えが出せないでいた。

「あ、ああ! だが今は身体を休めることが先だろう? 水でも飲ましてやるから少し待ってくれ。」
ここまで激しい戦いをしてくれたカズマを失望させるような返事をするわけにもいかず、
慌ててアミバは自分のデイパックから水を取り出そうとする。
水を探している時ふとカズマに貰った核金の説明書に書いてあった治癒力を思い出し共に取り出す。
「ほれカズマ、水とお前が俺にくれた核金だ。
何でもこの核金というのには治癒力があるらしいぞ……カズマ? 」
自分の言葉に何の反応を示さないカズマにアミバは奇妙に思う。
もしや疲労が限界まで溜まり寝入ってしまったのではないか?
アミバはそんなことを思っていたが彼は見てしまった。
先ほどまでカズマの傷を覆っていたアルターが……影も形も消えてしまいその大穴から……
赤い心臓が見え脈動が……止まっていた。

「カ……」
ショットガンによる流血、再々構成による体力の消費、心臓への致命傷、
そして初めての覚醒により力の加減が出来ず放った最大出力のハイブリットがカズマの身体を確実に蝕んでいた。
本来のカズマなら恐らく耐えられたかもしれない。
だが彼の首に黒く光る首輪の制限により……それは叶わなかった。

「カズマァァァァァーーーー!!! 」
“反逆者(トリーズナー)”カズマの意思、弾丸は……遂に曲がってしまった。
だが不思議にもカズマの表情は……苦痛では無く何か安堵に満ちていた。

◇  ◆  ◇

F‐6の民家の傍に墓が立っている。
それは民家でアミバが手に入れた椅子の足の部分を墓標として、
『“反逆者(トリーズナー)”カズマここに眠る』と地面に書かれたとても簡素な墓であった。
そしてその墓の前にはシルバースキンで全身を……その表情までも隠し、ショットガンを持ったアミバが立ちすぐんでいた。

(カズマ……何故お前の様な男が死んで俺のような者が生きているのだ……?
お前にはこの先輝かしい未来が、やるべき事があったに違いない。
そして俺がこのバトルロワイアルというものに巻き込まれる前に殺した村人たち、6~7時間前に殺した盲目の老人にも……
今更弁解することはない、罰なら地獄に落ちた後で受けてもきっと遅くないだろう。)
血が出るほど唇を噛み締め怒り、悲しみ、罪悪感が入り乱れる心境でアミバは思う。

(しかし……あのふざけた放送の老人……貴様だけはゆるさん!
こんな俺でももうカズマの様な者は出してはならない事をようやくわからせた事には感謝する……だがそれだけだ!
 貴様のような下衆は同じ下衆であるこのアミバが必ず地獄に叩き落す!
そのためには殺し合いに乗っていない者達に協力を頼まなければならない。
ケンシロウにも協力を頼みたいが……いや俺はあれ程の事をしたのだ。
今更どう言っても信用されないのも無理は無い、ならば無用な争いは避けよう。)

そしてアミバはショットガンを天に向け

(見ていてくれカズマ……このアミバの信念を! )
決意を込め引き金を思いっきり引き
BANG!!! と銃声が響き、アミバは誰に言うわけでもなく天に向かって叫ぶ。

「聞け! たった今このアミバは命が続く限りこのバトルロワイアルというふざけた殺し合いに……
『反逆』を開始する!!! 」

【カズマ@スクライド:死亡確認】
【鷲巣厳@アカギ:死亡確認】
【残り45人】

【F-6 民家付近 1日目 朝】
【アミバ@北斗の拳】
[状態]:唇が切れているが心体健康、強い決意、今までの自分に強い自己嫌悪。
[装備]:シルバースキン@武装錬金、ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)
[道具]: 支給品一式(×3)(一食分消費済み)携帯電話、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく、ノートパソコン@BATTLE ROYALE(これら三つは未開封)
   ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、核鉄(ニアデスハピネス)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ゲームの破壊、主催者の殺害。
1:ゲームに乗っていない人物と協力する。
2:ゲームに乗った人物と遭遇した場合説得を試みて駄目なら殺害する。
3:ケンシロウとラオウには出来れば会いたくないがいざとなったら闘う覚悟はある。
[備考]
※参戦時期はケンシロウに殺された直後です
※キング・クリムゾンのDISCと鷲巣のデイパックはハイブリットに巻き込まれました(回収不可能)
※鷲巣の肉片、胴体より下の死体が道路に転がっています。
※アミバが何処へ行くかは次の書き手さんにお任せします。


084:はらわたをまく頃に~侠客立ち編~ 投下順 086:漫画キャラバトルロワイアル特別編『SAGA』
084:はらわたをまく頃に~侠客立ち編~ 時系列順 086:漫画キャラバトルロワイアル特別編『SAGA』
065:反逆ノススメ アミバ 089:眠れる奴隷?
065:反逆ノススメ カズマ 死亡
073:帝王と死神 鷲巣厳 死亡