徳川光成! きさま! 聞いているなッ! ◆ZhOaCEIpb2



―――それでは、バトルロワイアルを続行する!!』

ガチャンとマイクのスイッチが切れる音がする。第一回目の放送が終わりを告げる。
C-1の大通りを歩く一人の老人。長く伸びた立派の髭を手で弄びながら、放送の内容を一言一句聞き入っていた。
フェイスレスは内容を聞き終えるとふーんと息を漏らし、
放送で追加された事項を書き留めるためにパックから名簿と地図とメモを取り出す。
名簿に亡くなった順に横線を引く、地図に進入禁止エリアとその時間を書き込む、メモには追加されたルールを書き込む。
「よかった、よかった。死なれちゃ困るからね」
さも当たり前かのようにフェイスレスは頬を緩ませる。
自分の生まれ変わり先である才賀勝と愛しきエレオノールの二人は強い、簡単には命を落としはしないだろう。
でも、安心はまだできない。
フェイスレスは小さく肩を下ろし、ため息をつく。

そんな纏わり付く霞のような不安感の中、気づいたことがあった。
光成という禿の老人が告げた放送内容で参加者の死亡報告に違和感を感じた。
フェイスレスは参加者名簿を手に取り覗き込む。
名簿はA-4サイズの粗悪な紙切れであり、上から順に

 赤木しげる
 市川
 平山幸雄 
 鷲巣巌
 葉隠覚悟
 葉隠散
 本郷猛
 三影英介
 村雨良
 加藤鳴海
 才賀エレオノール
 才賀勝
 白金
 坂田銀時
 神楽

―――以下略

と、全60名の名前が記載されている。

一目見ただけで、普通の人なら並び順に違和感を持つだろう。なんとも統一感のない並び替え。
アルファベット順でも、あいうえお順でも、どの並び替えに全く該当しない。可笑しな名簿である。
一般人ならちょっとした違和感でそのままにするかもしれない。
しかし、フェイスレスはとっくの前から気づいていた。カンのいい奴ならすぐに気づくかもしれない。
カズキの情報から薄々と、ジャギからの情報から確信に近いものを持った。

フェイスレスは名簿のからくりをほぼ解析していた。
簡単に言うと、この名簿はある一定の間隔に分けられているのである。
名簿に載っている最初の15名を例に出し、ある法則に従い、区切ると―――

 赤木しげる(ア)
 市川(イ)
 平山幸雄(ヒ) 
 鷲巣巌 (ワ)
―――区切り―――
 葉隠覚悟(ハガクレカ)
 葉隠散 (ハガクレハ)
 本郷猛(ホ)
 三影英介(ミ)
 村雨良(ム)
―――区切り―――
 加藤鳴海(カ)
 才賀エレオノール(サイガエ)
 才賀勝(サイガマ)
 白金(バ)
―――区切り―――
 坂田銀時(サ)
 神楽(カ)

と、ある間隔ごとにあいうえお順に並べられていることが分かる。
これだけなら、偶然かもしれないが、自分はカズキの情報とジャギの情報、自分の情報に基づいた結果により、そのような仮説たてた。
より精度を上げるために、先ほどの仮説を当てはめ、武藤カズキとジャギ付近の名簿を見てみると―――

 セラス・ヴィクトリア (セ)
―――区切り―――
 アミバ(ア)
 ケンシロウ(ケ)
 ジャギ(ジ)
 ラオウ(ラ)
―――区切り―――
 防人衛(サ)
 蝶野攻爵(チ)
 津村斗貴子(ツ)
 武藤カズキ(ム)
―――区切り―――
 川田章吾(カ)

となる。

この区切りが最後まで繰り返し続いているので『一定間隔』で『あいうえお順』であることは確定的である。
そこで、何故、こんな不可思議な法則に並べられていると、疑問に思うだろう。
だが、フェイスレスは考察から並び替えの意図を導いていた。

それは、一定の間隔内は『顔見知り』で固められていると考察していた。
武藤カズキの情報から防人衛、蝶野攻爵、津村斗貴子は顔見知りであること。
ジャギの情報からケンシロウ、ラオウは顔見知りであること。
言うまでもないが、自分は加藤鳴海、才賀エレオノール、才賀勝は見知っている。
アミバという人物に関してはジャギから情報を手に入れていないが、
たぶんジャギの範囲内の人物が知っている可能性があると考えられる。
これは予想に過ぎないが、一定の間隔内は『顔見知り同士』で固められているとほぼ確定である。
しかし、この考察は本題に入る前の序章にしか過ぎない。
あくまで『相手の情報を引き出すカード』として利用できるということである。

本題は死亡者についてである。
杉村弘樹、毛利小五郎、―………―、アレクサンド・アンデルセン、を含む八名の死亡者。
彼らの名前を呼ばれる順番もバラバラであり、名簿の並び順よりも一貫性は感じられない。
ただ単にランダム順に死亡者を読み上げているのか、特に意図せず読み上げているのかは分からない。

―――だが、もしこの順番が死亡した順番だとしたら、ある疑問がよぎる。
それは、どうやって参加者の死亡状況を確認できたという疑問。

周囲のあちこちに盗聴器や監視カメラが仕掛けられているのか?
それとも、フウの蟲目(アイセクト)が監視しているのか? 
全部ありえないなあ。
僕はとってもシャイだから、監視とか盗聴は嫌いなんだよねえ。

フェイスレスは始めてバトルロワイアルの舞台に来て、即周囲にカメラや盗聴器がないかと全神経を張り巡らせていた。
フウの蟲目すら簡単に嗅ぎ取れるフェイスレスには監視カメラや盗聴器などただのおもちゃにすぎない。
結果は周囲にはカメラなどの類は一切なかった。
だが、光成の発言や口ぶりから参加者全員の行動が把握されていることは間違いなかった。
一体どうやって自分たちを監視しているのであろうか。

頭の中を一旦整理するためフェイスレスはサングラスを外す。朝早くから吹くそよ風がひんやりと眼に当たる。
爽やかな風だな、気持ちいいなと身体をほぐすように全体を伸ばす。
ここは発想を変えてみるか? もし、僕が主催者ならどうやって相手の行動を把握する? 周囲に監視カメラなど無しに。
自問自答してみる。でも、愚かな質問であった。

フェイスレスは最初から薄々と分かっていたのだ。自分たちの行動を最も容易に把握する方法を。
フェイスレスは殺し合いが始まってから、一度も主催者の反逆になりそうな行動や言葉を一切口にしていない。
首輪を解除することは『夢』という言葉で濁していた。このときにはまだ可能性の域で留まっていた。

だが、光成の発言から疑惑は確信へと変わる。
首輪に何か仕掛けがあることもはや言うまでもなかった。
カメラ機能が付いているのか、GPS機能が付いているのか、盗聴器が付いているのか。
もしくは全機能が付いているかは分からない。
でも、それらの一つが機能していることは自明であった。

こんなことならジャギ君の粉砕した首輪を回収すべきだったなあ、とフェイスレスは心の中で悪態を付いた。
パーツの破片からある程度、首輪の機能を判断できるのに惜しいことをしてしまった。
一旦回収に戻ろうか?


そうこうしている内に目的地である老人ホームの前に到着していた。
気配がないか周囲に感覚を集中させる。
人の気配はない。


フェイスレスは無人の老人ホームへと足を運ばせ、正面玄関のガラス張りの扉に手を掛ける。
ぎぃぃと扉を押し込め中に入る。
陰湿な雰囲気を漂わせるロビー、気配は一切感じられない。人がいたという面影ですら何も。
何か役立つものはないかとくまなく詮索する。個室のドアを開け、ひとつひとつ中を確認して行く。
そんな折、ある個室の扉が開いていることに気が付いた。

その中は、院寮した老人たちの寝室であった。
特に荒らされた形跡はないが、鏡の前の埃が少なく、窓は開いている。風で白色のカーテンなびいていた。
明らかに誰かがいた形跡がここにだけあった。
そして、埃の形跡を目で辿ると、窓から飛び降りたと考えられた。でも、ここは三階の個室であった。
わざわざ鳥のように羽ばたかせ、飛び降りるとは……ただの馬鹿なのか、それとも…。

フェイスレスは開いた窓から下を眺めた。
普通の人間なら下手すると骨折してもおかしくもない高さである。
しかし、あくまで普通の人間であるならである。自分のように機械化した者もしくは人外の者なら造作もないだろう。
「へえ、これは油断できないなあ」
と、にたにたと蛇のような狡猾な笑みを浮かべ、心に無いことを口からこぼす。
自分と同じような人を超越した存在いるとは油断できないと、決心を固める。

だが―――それはあくまで強者と判断した場合であった。

一般人とっては『強者』と思われるジャギはフェイスレスにとって『弱者』であった。
ジャギの数々の俊敏な動きもフェイスレスにとっては、ハエが止まっているかのように遅かった。
あれでは、最後の四人(レ・デルニエ・キヤトル)の一体の足元にも及ばない。
本気を出せば、ほとんど時間もかからない内に決着は付いていただろう。

しかし、フェイスレスは絶望したときの顔が見たいがために、
わざとジャギに勝てるかどうかの五分五分ぐらいまで身体能力を落とし、相手に勝てるという希望を持たせた。
そして、もう一歩のところで絶望という谷に突き落とす。
相手を騙したときの感情をむき出した顔はいつでも最高だ。
正二のときも、鳴海君のときも、ジャギ君のときも。
フェイスレスは笑みを浮かべ、感慨深く思い出にふけていた。

しかし、フェイスレスは弱い者に対して一度失態を犯していることを忘れていた。
才賀勝である。
フェイスレスと比べ圧倒的弱かった勝は自分の弱さから一時たりとも油断することはなかった。
そして、フェイスレスは油断から右腕を切断されてしまったのだ。
自分が『強者』であるという自信が招いた慢心。
その弱者に対する慢心はバトルロワイアルの舞台でどのような事態は招くのか分からない。

そして、フェイスレスは自分が強者であると誇示するかのように窓から蝶のように飛び跳ね、
誰も分からない次の場所へと老人ホームを跡にした。

【A-1 老人ホーム周辺 1日目 朝】
【白金(フェイスレス)@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:??? ベレッタM92F(弾丸数8/15)@BATTLE ROYALE
[道具]:支給品一式×2 ジャック・オー・ランターン入りケース(接着液残り4発、ロケット弾残り6発)@からくりサーカス ジャギのマスク@北斗の拳 不明支給品0~2(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:『夢』を叶えるために首輪を『分解』する
1:さーて、どこに向かおっかな?
2:利用できる奴は利用する(勝やエレオノールを守らせるなど、状況に応じて)
3:参加者から情報を得る
4:首輪を集める(少なくとも5つは欲しい)
5:利用できない弱者は殺す(首輪を集めるため)
6:極力強い人間との戦闘は避ける
7:ジャギ君の首輪を回収しようかな?
[備考]
※名簿の順番から一定の間隔であいうえお順で区切られたところは、お互いに顔見知り同士が固まっていると考えています。
※上記のことでフェイスレスは葉隠覚悟、葉隠散 、本郷猛、三影英介、村雨良は顔見知りで固められていると微妙に勘違いしています。
※フェイスレスは首輪から行動を把握されていると確信しています(盗聴器か、カメラはまだ判断できていません)


087:悪魔の子 投下順 089:眠れる奴隷?
087:悪魔の子 時系列順 089:眠れる奴隷?
067:MY DREAM 白金 111:心に愛を