COOL EDITION

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mangaroyale

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COOL EDITION ◆VACHiMDUA6



「――それでは、バトルロワイアルを続行する!!」
 そう言って不快な放送は終了した。
 不快なことはこの老人の声ではない。思想、言葉、放送――その内容であった。

 放送が告げたものは、それはプログラムの犠牲者八名の死と、自分達の生存領域を減らす「禁止エリア」の告知。
 そして、
「杉村……」
 三村の級友、杉村の死。
 彼の死で自分達が――自分が信頼できる人間がいなくなってしまったのだ。それも放送が告げた、紛れもない事実。
 だがこれが三村にもたらすものは悲しみよりも、寧ろ絶望。

 しかしそれをも上回るやもしれないことがある。それはあの老人が発した言葉、「勘違いをしている人間」。
 これはハッキングを犯した自分達に向けた言葉かもしれないし、他の参加者――このバトルロワイアルとやらに乗らず、脱出を謀ろうとしている――に向けたものかもしれない。
 しかし確実、どちらにせよ先程の自分達の会話は聞かれている。これも紛れのない事実。
 絶望だらけのこの事実に絶望した。
 まさに絶望尽くしのこの状況。どうすれば良いのだろうか?
 落ち着け……クールになれ三村信史。
 脱出、主催へのカウンターパンチ、新たな策を考えようと脳をフルに稼働させる。

 「いッ!」
 すると突然、冷や汗、脂汗を額に浮かべて考える信史の頭に鋭い一撃が急襲した。
 デコピンである。
 犯人は目の前の男、ジョセフ・ジョースター。
「シンジ……杉村の死を悲しんで怖じ気づいてんじゃあねーぞ」
「怖じ気づく……? ジョジョ……俺は常に冷静だぜ。クールに考えてる」
「常に冷静? 汗をかきまくって顎がガチガチ震えているぜ」
「ハッ……」
 いつの間に、と顎に手をやる信史だが、頬を伝った多量の汗を確認できても顎の震えは確認できなかった。
 突沸した怒りをそのままに顎を触った手でジョジョの胸倉に掴みかかる。
「ジョジョ……テメー」
「次にお前は『騙しやがったな』という」
 信史が言葉を紡ぎ出すよりも早く、ジョセフの言葉が発せられた。
 そしてその言葉は信史の思考を確実に射抜く。
「騙しやがったな……はッ!」

 そんな信史の言葉に頷きつつも、ジョセフは信史を睨みつける。
「ああ、騙したぜ。だが……ビビっている奴は見つかったようだな」

 ビビっている奴、自分も気がつかない……いや、薄々と心の中では思っていたが目を逸らしたその言葉をジョセフに言い当てられたことに、信史は苦々しく顔を逸らした。
 確かに杉村の死、放送の警告に自分は恐怖していたのだ。

「シンジ、シンジ、シンジ、シンジよォ~~~~~~~~」
 ジョセフは何かいいたげな目で胸倉を掴んだ手をおさえ、そんな信史に向き合った。
「いいかシンジ……俺たちはな! ダム開発で潰れそうになった村で「クールになれ」「クールになれ」ってバット振り回してるようなスカタンとはワケが違うんだぜ。
 『クールになれ』と心の中で思ったならッ! その時スデに冷静になっているんだ!」
 その言葉に更に付け加えて言い放つ。
「今のお前は、自分が冷静になることに捕らわれ過ぎて冷静さを欠いているんだ。わかるかシンジ?
 そういうことを……本棚転倒……じゃなくて……本田工業……は違う……府中本町でもなくて、別府元町」
「……本末転倒か?」
「オーノーそれよそれ。それだったァ~~~~~~!」
 手を打ち合わせて信史を指差すジョセフ。
 瞬間、急速に、一時的ではあるが張り詰めていた弦のような場の空気が解凍された。

「オホン……え~~~~っとつまり、だ。シンジ、俺が言いたいのはな」
「いや、言わなくても良いぜジョジョ」
 ジョセフが何か言葉を紡ごうとするがそれを制した。
 自分は確かに恐怖していた。冷静さを欠いていた。絶望的、だがそんなことがどうしたのだろうか。
 そうだ。どうした……自分は第三の男、三村信史なのだ。絶望的? ……その方が、カウンターパンチのしがいがあるというものだ。
 そう、杉村の分も他に殺された七人の分も含めた、強烈なカウンターパンチをお見舞いしてやれば良い。
 ジョセフを制した言葉に信史はこう付け加えた。
「心で理解したぜ」
 心で理解した。そう答える信史の汗は止まっていた。目には力がみなぎり、その心中には炎が灯った。
 顔に恐怖や絶望の色はもう既になく、すう、と鼻から吸い込む午前の空気はさわやかに信史の肺の中を満たした。

「オーケージョジョ。取り乱して悪かったな」
「へへへ、そうか。それじゃあどうする?」
「ああ、そのことなんだが……こいつを見てくれ、どう思う?」
 こういってデイパックから信史が取り出したものは一枚の紙だった。
「すごく……地図だな。こいつがどうかした?」
「『どうかした?』とは嬉しいこと言ってくれるじゃないか」
 何か含んだような笑いを浮かべながら信史が指差した場所は地図の端だった。
「地図の……端っこ?」
「そう、ジョジョ。ここの端から先はどうなってると思う?」
「地図の端から先は……かかれてないな」
 極めて大真面目にジョセフは答えたが、その答えは信史の満足するものではなかった。
 そんなジョセフの言葉を聞いて信史は問い方を変えてみることにした。
「オーケー地図にはかかれていない部分がある。けど実際こんな正方形の地形があるわけはない。だったら、なんでその部分はかかれていないと思う?」
「なんでって……必要がないからだろ。それがどうしたのよ」
「そう、必要ないからだ。広すぎると参加者同士の争いが起こりづらくなるからな」
 そこで一旦言葉を区切って一息置き、信史は説明を再開した。
「さて、じゃあどうやってその必要のない空間と必要がある空間を区切っている?」
「どうやって区切っているかって? ……そりゃあ」
 壁で、ということは有り得ない。海や川があるということも考えられるが、自分のような波紋使いがいる以上それも考えがたい。
 波紋使いも含めて制限するなら、

「そうか、首輪だ!!」
「ご名答」
 こいつが邪魔者だ、とばかりに自身の首輪をコツコツと叩く。
 そして地図を裏返し、ペンを取り出す。
「とは言っても実際にそうかとは確信がない」
『こいつを解除したなら抜け出せる可能性が高い』
 言葉と同時に地図の裏にペンを走らせる。
「だったら、実際に確かめにいった方がいいだろう」
『解除したあとの為に、脱出用のルートを確保した方がいいかもしれない』
「どうする?」

 その言葉を聞いて、ニヤリといやらしい笑みを顔に浮かべる。
 そして、ジョセフもペンを走らせる。
「オーケーわかったぜシンジ。モチロンお前も行くだろう?」
『ただし、あのスカタンをブチのめした後だぜ』

「当然だぜ」
 ニヤリと、シンジも笑い返した。
 そして、二人は荷物を纏め、太陽の光を背負い颯爽と肩で風を切り歩き出した。

     ◇  ◆  ◇

 颯爽と二人が歩き出してから数時間。
 二人はまだマップの端に到着してなかった。現在地、野球場付近。
 何故こんなに遅いかというと……

「シンジ~~~~~やっぱりこの荷物捨てようぜェ~~~~~~」
「捨てるのはダメだ。常識的に考えて」
 荷物が大きく、分厚く、重かったからだ。
 デスクトップ型パソコン、そのハードディスク、バスケットボール……それは荷物というにはあまりにも重すぎた。
 常識的に考えて、デスクトップ設置型パソコンやハードディスク、バスケットボールなんてもの全てはデイパックには入りきらない。
 ならば必然的に手持ち。そして、こんなものを手持ちで移動するなんてあまりにも無謀。
 こんなものを持ちつつも周囲を警戒する。結果、二人の移動速度は遅くなるのだ。
「な~~~~シンジ~~~~~~」
 しつこい、と返して信史は一切の口をつぐんだ。
 ちなみに、持つ順番決めはジャンケン。ポイント一つごとにジャンケンをしようと言った信史に対して、目的地まででいいといったのはジョセフなので、ある意味自業自得だった。
「シンちゃん……ジョセフかなピー」
 気色の悪い言葉を呟きながら、デイパックから水を取り出した。
 修行のおかげでジョセフの息は乱れないものの、ここまで歩き続くと流石に喉が渇くのだった。
「そろそろ……野球場だな」
 野球……自国、大東亜共和国とも縁が深い。
 大東亜共和国……皆はどうしているだろうか?
 あのつまらない両親はどうしているだろうか?
 七原達はどうしているだろうか?

「シンジ」
 物思いにふけると、突然ジョセフから声を掛けられた。その顔は……険しい。
「気をつけろ……野球場に誰かがいる」
 水の入ったペットボトルを片手にジョセフはそういった。そのペットボトルには……何故だか渦のような波紋が浮いている。

「距離は……マズい、相当近いな。シンジ、注意しろよ」
 パソコンその他諸々を地面に置くと、ヨーヨーを取り出した。
 片手に石鹸のついたヨーヨー、片手に渦の浮かぶペットボトル。その光景は奇妙だったが、その背中は有無を言わさぬ歴然の勇士の風貌を醸し出していた。
 そのジョセフの様子に、シンジもトランプ銃を構える。
「動いてはいないようだが……」
 水に浮かぶ波紋を片手に距離を詰める。
「おれが先にいって確かめるからその後に来い」
 ジョセフが苦々しげに前方を睨む。
 その視線は、その場にいて動かない何かを見据えているようだった。
「ああ」
 そんなジョセフの言葉に素直に頷く。
 第三の男だ、なんだといわれてもこの場においてジョセフと自分の関係は幾多の闘争を制した戦士とちょっと他人よりできる素人中学生そのものだった。ジョセフの判断に従うより他はない。

 信史より10m先行してジョセフは野球場の円周を周り行く。
 そろそろ野球場入り口……波紋の探知した人物の位置。
 円周を回りきって入り口に達したジョセフはその場の光景に思わず声を上げた。
「OH MY GOD!!」

     ◇  ◆  ◇

「う……」
 言い争う大声でかがみは目を覚ました。
 誰だろう、とその場に目をやる。言い争っているのは大男と高校生、いや中学生程の男だった。

 言い争う大方の言葉から、自分が論争の原因だと理解できた。
 大男――ジョジョは自分の方に来ようとしている風で、中学生――シンジはその行為を止めようとしているようだった。

「おいおいシンジ、こんな場で人を助けなくてどうするんだ!」
「違う。こんな場だからこそだ!」
 ジョセフが波紋で探知した人物は倒れている少女だった。一瞬驚いて声を上げてしまったが、直ぐに気を取り戻した。
 解放しようとして女の子に近付こうとしたら、叫び声を聞きつけたシンジがこの場に来てそれを止めた。そういうわけでさっきからこんな調子だった。

「そうは言ってもよォ~~~~~~~シンジ、怪我してるみたいだぜ。手に血が付いているし、顔も切れてるぜ!!」

「冷静に考えろ。返り血かもしれない!」
「冷静に考えろ? おれは冷静だぜ。ぼやぼやして死んじまう前に、今助けたほうがましだ!」
「もし、彼女が杉村を殺したような化け物だったらどうする! 強力な支給品をもってるかもしれねー! こんな場所なら少しのことが命取りだ! 信用できるとは限らない!」
 言い争う二人はかがみが目を覚ましたことにも気がつかない。
「信用できるかわからない、化け物だって! シンジ、てめーーーそんなことがどうしたっていうんだ! くだらねえぜ!」
「話してもいないのに信用できるかこのバカッ!」
「なんだとォ~~シンジ!」
 かがみは考える。
 ジョジョ、という男は……言うならば、正義の味方、のような人物なのだろう。
 シンジ、という男も……言葉からこの殺し合いに乗っている様子はない。きっと、とても慎重なのだろう。
「うっ……」
 見ず知らずの人間を助けに来る、その行為に思い出した。
 自分が殺されそうになったこと。自分を殺そうとした男。見ず知らずの自分を助けてくれた男。やっと再開した友人。何故だかしっかりしていた小学生程の少女。
 自分の不注意で呼び寄せてしまった怪物。分断された自分達。襲ってきた怪物。相手をした自分。
 そして、血だらけの、夢。
 眠りからやっと立ち上がった脳髄が今まで起こったことを鮮明に思い出す。すると不意に、目から涙が零れ落ちた。
「うっ……うっ……」
 そのまま声を上げて、かがみは泣き出した。

     ◇  ◆  ◇

「――ということだったけどオーケー?」
「あ……ありがと」
 ジョセフ達は一先ず言葉の鉾を収め、それから泣き出すかがみを落ち着かせ、一先ずの情報を交換した。

「それじゃあ仲間と待ち合わせしているボーリング場に行くんだな」

「正午までって約束だからね」
 信史の言葉にかがみは頷く。みゆき達と正午にボーリング場、そう約束したからだ。
 聞いた放送では、みゆき達の名前は呼ばれなかった。無事ならばもうじきボーリング場に付いていてもおかしくはない。
 待ち合わせに遅れてはみゆき達に余計な迷惑をかけてしまう。
「じゃあ、ありがとね」
 足元の荷物を拾い上げる。急がなくては遅れてしまう。

「おほ、おほ、おほほん、おほぉ~~んっ!」
 かがみがその場を立ち去ろうとした時、唐突にジョセフが咳払いを始めた。
「どうしたジョジョ?」
「なに?」
 怪訝な顔をする二人にジョセフはこう問いかけた。
「なあ、シンジ~~おれたちこれからマップの端に向かうんだよなァ?」
「ああ、そうだけど」
 信史は肯定の意を表す。
「ボーリング場ってさぁ~~~マップの端が近いよなァ?」
「そうだな」
 再び肯定の意を表する。この問いかけでジョセフの真意が理解できた。

「だったらさぁ~~~~ボーリング場行ってからでいいんだろ? 都合もいいしさ」
「ジョジョ……」
「ジョースターさん……」
 つまり、ジョセフはかがみをボーリング場まで送りとどける、そういうことだ。

「俺のことはジョジョって呼んでくれ」


 再び、柊かがみは対主催を旨とするもの達と行動を共にすることとなった。
 だがしかし、柊かがみはここに『来た』時の彼女ではない。
 度重なる重圧で、精神が摩耗しているのだ。
 みゆき達が死んでしまったことを知ったなら、かがみはどうなるのだろうか?
 今は均衡を取り戻しているその心は、果たしてどうなるのだろうか?
 そして、彼女がもし『そう』なってジョジョ達はどういった行動にでるのだろか?
 それは――その時になるまでわからない。


【B-5 野球場入り口/一日目 午前】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康。
[装備]:ハイパーヨーヨー*2(ハイパーミレニアム、ファイヤーボール)、江頭2:50のタイツ(スパッツ)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:あのスカタンを一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇ~~。
1:ハッピー、うれピー、よれピくね~~
2:ボーリング場、マップの端を見に行く。
3:「DIO」は警戒する、一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
4:ところで、何で義手じゃないんだ?
[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※承太郎、吉良、DIOの名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。


【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神、肉体的に疲労
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)、 バスケットボール(現地調達品)、ハードディスクを抜き取ったデスクトップ型パソコン(現地調達品)、壊れたハードディスク(現地調達品)、基本支給品
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。
1:やれやれ……。
2:ボーリング場、マップの端を目指す。
3:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
4:集められた人間の「共通点」を探す。
5:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
6:『ハッキング』について考える。
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジー・ダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。


【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:無傷、精神消耗(小)、やや精神不安定
[装備]:核鉄「激戦」@武装錬金、マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生きてみんなと一緒に帰りたい(?)
1:べ、別に感謝なんてしてないんだから!
2:ボーリング場を目指す。
3:とりあえずジョセフ達と行動する。
4:つかさ、こなた、みゆきに会いたい。
5:自分の変化が怖い。
[備考]
※第一回放送の内容はジョセフ達から聞きました。
※アーカードを不死身の化け物と思っています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します


096:真赤な誓い 投下順 098:SPIRITS
096:真赤な誓い 時系列順 098:SPIRITS
061:続:ハッキング ジョセフ・ジョースター 116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
061:続:ハッキング 三村信史 116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
077:ハッピーバースデー 柊かがみ 116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)



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