SPIRITS  ◆3OcZUGDYUo



青と白を基調とし、江戸川コナンの様な一般人から見れば
「なんというコスプレ…」と言われかねない和服を纏った少年――志村新八。
人間の自由のために仮面ライダーと共に闘った一人の男の魂――SPIRITが
刻み込まれた漆黒のライダースーツを纏った少年――葉隠覚悟。
共に眼鏡を掛けた二人の少年はこのバトルロワイアルを潰す事に
必要不可欠な首輪の解除を行うために首輪のサンプルを手に入れるべく
東へ向かっていた。
何故彼らは東へ向かっているのだろうか? 答えは簡単だ。

「覚悟くん、東の方に当てでもあるの? 
その言いにくいんだけど……首輪を取るための死体の…… 」
例えどんな理由があろうとも仏様の身体を弄くりまわす事は許される事ではない。
首を落とす事など言語道断である。
これから自分達が行うかもしれない行為に
重い罪悪感を感じながら新八は覚悟に訊ねる。

「無論、只闇雲に歩いているわけではない。
私が以前倒した悪鬼の首輪を回収しに行こうと思う。
首輪が手に入り、それが牙なき人々の剣となるのならば
私は悪鬼の死体から首を落とす事に一時の迷いはない」
淡々とそれでいて力強い口調で覚悟は新八の問いに返答し更に東に歩を進める。
その迷いのなさに新八は咄嗟に思う。
――――残酷だ。
先程のコナンの話に少なからず感化されていたのであろう。 
覚悟が言う悪鬼にも何か守る物があり、望まぬ闘いに身を投じた所を
悪鬼と認識されただけなのかもしれない。
そんな可能性のある人の死体から首を落とす事に
迷いがないと言う覚悟は残酷だと思ってしまう。
だが直ぐに別の感情が新八に押し寄せる。

(…でも何て言うか……凄いな。
そこまで他の人の為に行動出来るのは…そうそう出来る事じゃないよ )

覚悟程の身体能力、徒手空拳の技術があればこのバトルロワイアルに
生き残り優勝を目指す事は決して不可能な事ではないだろう。
それを放棄しわざわざ自分が死体漁りという汚れ役を
進んで引き取り、力なき人々のために尽力する。
口で言う事は簡単だが行動で表すとなると耐え難い苦痛を伴う茨の道。
そんな道を目の前の自分と然程歳が変わらなさそうな少年――
葉隠覚悟は迷わず進むと言っているのだ。

(死体の首を落とすなんて勿論良くない事だ。
でもこのままあのおじいさんを好き勝手にさせておく事はもっと良くない事だ!)
未だこのバトルロワイアルに乗った人物を絶対に殺すという覚悟はないが、
みすみす殺されてやる義理はない。
新八は決意を新たに胸に秘める。とそこで新八はふと思う。

(でも僕も自分の身を護る事ぐらいは出来ておかないと!
えーっと僕の支給品は確か……)
歴史の裏側から世界を見守ってきた五人の集団や、
「待てぃ! 」の掛け声で現れその場にぴったりの格言を言ってくれるナイスガイ
の様な徒手空拳の技術を新八は持っていない。
……まぁ比べる対象が少々人外すぎるかもしれないが。
とにかく自衛のために必要な武器を今一度確認しておこうと新八は思い、
自分の手に握られている物に目を向けるが……新八は言葉を失った。

(あれ?僕の支給品ってハリセンだっけ……?)
あまりにもハリセンの頼りなさに今まですっかりハリセンの事を忘れていた
新八は考える。

(そういえば確かコナン君に会う前に確認したなぁ……。
神様、二回目は面白くないですよ? なんでこんな状況でハリセンなんですか?
同じギャグにツッコミをするのは読者も白けると思うんですよー。
ハッ! もしかしてこれは覚悟くんが無茶をしそうになったらこのハリセンで
覚悟くんに決死のツッコミをし、その場の空気を和ませよという神様のご啓示なのか!?
そうか、やっぱり神様は凄いなぁーこんな伏線を張ってたなんて……
ってそんなわけあるかぁぁぁー! どう考えてもちげーって! 
神様! あんた絶対ドSだよぉぉぉぉぉーーーーー!!! )

長ったらしいボケツッコミを心の中で行い、神様の理不尽さに怒りを抑えきれずに
地面に向かって怒りの根源であるハリセンを投げつけ
パシン!
と軽快な音が周囲に響く。
「どうした志村? 何事だ? 」
先を進んでいた覚悟は新八の方に振り返り即座に臨戦態勢をとり、
周りの状況を窺いながら新八に問う。
その表情は既に少年のものでなく戦士のものとなっていた。

「い、いや! 何でもないよ。
ちょっとうっかりこのハリセンを落としちゃっただけさ! 」
「……承知。ならば先を急ごう」
バツが悪そうな表情で覚悟に言葉を返す新八に覚悟は
それ以上は問い出さずに更に歩を進める。
その覚悟の後を新八はハリセンを拾い慌てて追う。
何故新八は役に立たないのにハリセンを持っていったのだろうか?
それはやはり……ツッコミ担当という悲しい『SAGA』が働いたのかもしれない。

(ごめんよ覚悟くん……ぶっちゃけ僕役に立たないどころか
足手まといになるかも……いや、現在進行形でなってるかも。
誰かに武器でも借りてくれば良かったよ。
というか僕ハリセンで何をするつもりだったんだろう……)
心なしか涙目になり新八は今更ながら後悔の念にからまれる。
「そりゃツッコミするためだろ? 」
とどこからかいやにいかつい天の声が聞こえた様な気がするが
気にしない、気にしない。

『気にしたら負けだと思ってる』
16歳、万事屋アルバイト店員、志村新八。辞世の句……。
(いやいやまだ死ぬ気はねぇぇぇーーーって! 
せめてこの話しが終わるまでは大丈夫……自信が持てないのは不安だけど。
というかこんな言葉辞世の句にしたくねぇぇぇーーーって! )
やはり新八はツッコミという名の下に生まれた少年なのだろう。
◇  ◆  ◇

(……俺はどうすればいいのだ? )
丁度F-3エリアとG-3エリアの境界に当たる位置で覚悟は考える。
勿論先程のコナンとの会話で出てきた悪鬼への対応の事だ。

今まで覚悟は父――葉隠朧の仇でもあり自分の兄でもある現人鬼――
葉隠散とその配下――戦術鬼の毒牙から牙なき人々を護るために
最終格闘技『零式防衛術』を身を削って磨いてきた。
――零式防衛術は己のための剣にあらず、牙を持たぬ人の剣なり。
ゆえに剣を抜くのは決して己ではなく、牙を持たぬ人の祈りなり――
という父の言葉を一時も忘れずに。

だが『守るべきものがある悪鬼』という存在は覚悟にとっては
完全にイレギュラーな存在であり覚悟に迷いを生じさせていた。
当然相手が散や散が造った戦術鬼と言う存在ならば
一時の迷いもなく因果を極める事が出来る。
零式防衛術訓練終了の日にいかなる理由があったかは知らないが
自分の目の前で父を殺した散。
人体改造により誕生し、罪なき人々を食い散らす。
最早人間とは程遠いと言う戦術鬼。

しかしこのバトルロワイアルでの悪鬼は
同じ人間の血が流れた人間なのだ。
厳密に言うと人間ではない存在も参加者に混ざっているが、
覚悟にとってそのような異形な者は散と虎の怪人しか知らない。
以前自分が倒した虎の怪人は人間とは言い辛い者であり、
杉村弘樹を殺した者でもあるので後悔はない。

(……もし愛する者の為に、成すべき事の為に
望まぬ闘いに身を投じた女人やまだ若年な子供が目の前に現れたら……
俺はこの拳を揮う事が出来るのか? )
コナンとの会話により生み出された迷い。
常に平常心を保つ事により完成される零式防衛術にとって
紛れもなく大きな枷となっていた。

(このままでは満足に因果を極めることは出来ない……
父上、零……俺はどうしたらいい? )
大きな迷いを抱えながら覚悟は東へ向かう。
その時、覚悟の視界に見覚えのある人影が入ってくる。
世紀末覇者――ラオウがこちらに向かってゆっくりと歩いて来ていた。

(この人、最初の場所であの赤髪の人と戦おうとした……
覚悟くんの知り合いかな? )
ラオウに対してそのような感想を漏らし、
新八は覚悟と巨漢の男の会話を見守る事にした。

「貴殿は……」
最初に言葉を発したのは覚悟。
短い時間ではあったが一時の交流でラオウを誇り高き武人と認識し、
悪い印象を持っていない覚悟はラオウとの再会を喜ぼうとした。
しかし目の前の巨漢の男の名を訊いていなかった事に気付き、
二の句を続ける事が出来なかった。

「うぬは確か覚悟といったか……ワシの名はラオウ。
見たところ傷は癒えたようだな?」
ラオウは仮面ライダー一号――本郷猛との激戦での疲労を一時の休憩により
回復させ、何処かへ行くという目標もないので人が集まると考えられる場所――
繁華街に行くという事を仮初の目標としていた。
覚悟の困惑した表情を読み取り、ラオウは自分の名を明かし、
覚悟の容態を問う。
当然この問いは覚悟の容態を気遣ったものではないが
覚悟は純粋にこのラオウの言葉に感動し、返答する。

「無論! 未だ多少の違和感は残るものの
この程度! 痛みの内には入りはしない! 」
実際には常人にとって充分すぎる程の痛みは残っていたが
幼少の頃からあまりにも過酷で、厳しい零式防衛術の訓練を積み、
常人では痛みのあまり絶命すると言われる『零式鉄球』を
計八つ己の身体に埋め込んだ覚悟にとっては決してやせ我慢などではない。

「そうか、ならば……」
だが覚悟は気付かない。
ラオウにとっては『最高』であったが、自分にとっては『最悪』の返答
をした事を……

「始めるとするか。このラオウとうぬ、どちらが上であるかを確かめるためにな」
一体何を始めるつもりなのだろう?
そんな質問は不粋なものだ。
何故なら……ラオウがその剛拳を覚悟の後ろに居る新八もろとも
覚悟に向かって撃ち出したからだ。
新八の事は見えていないのだろうか?……いや、実際には見えているが
全く気に留めていないのだろう。
強き者との闘いを何よりも望むラオウにとって新八のような
弱者には興味が湧かず、言うなれば只アリが居るなという認識だった。
まさに大砲のごとく、筋肉で固められた剛拳が容赦なく覚悟と新八を襲う。

ラオウの予想外の行動に覚悟は驚きながらも
自分の行うべき事を開始。
自分の後ろでこの世の終わりの様な表情をした新八の腕を引き
横っ飛びにラオウの剛拳から回避する事に成功する。

「た、助かったよ覚悟くん! どうもありがとう……
なっ!? 覚悟くん!背中が……」
覚悟と共に横方向に倒れ込んだ新八が叫ぶ。
覚悟のライダースーツの背中の部分に斜め一文字に亀裂が入り、
白い学生服が覗いているからだ。

「問題はない。それよりも此処は危険だ!
一刻も早く退避してくれ! 私はラオウ殿の説得を試みる」
「わ、わかったよ!」
初めての戦闘に慌てながらも新八は覚悟の指示を受け、
直ぐに立ち上がり出来るだけ足を早く動かし、腕を振り上げ
覚悟とラオウが居る位置から大体20メートル強の距離で立ち止まり
二人の様子を見守る。
このまま仲間が待つ病院まで逃げ切る事も出来るだろう。
だが新八は逃げない。

(覚悟くんは足手まといの僕を助けてくれた……
ここで彼を見捨てて逃げるなんて真っ平御免だ!)
志村新八は仲間を見捨てて逃げる程卑怯な『魂』は持ち合わせていない。

「ふむ、この拳王の拳を足手まといが居ながらもそこまで
避けてみせるか。やはりワシとうぬは闘う運命であったようだな」
以前から目を付けていた覚悟との闘いの到来に対する
喜びを鉄の表情に封じ込めラオウは再び己の剛拳を放つべく構える。

「待てラオウ殿! 私は貴殿と争うつもりはない!
当方の拳は悪鬼を葬るためにあるもの。決して私闘を演じるためのものではない! 」
対して覚悟は新八からの距離を更に稼ぐために横方向に跳躍、
零式防衛術の構えは取らずあくまでも説得を試みる。

「私闘ではない。戦士と戦士が今出会ったのだ!
これを決闘と言わずに何と言うか! 覚悟よ!
うぬも戦士であるなら脆弱な言葉ではなくその拳で答えてみせい! 」
既にラオウにとっては覚悟の言葉はなんら意味をもっていない。
先程の身のこなしから強者と認めた覚悟にどのような技をかけるか?
どのような技で応えてくるか? という純粋な戦士としての興味のみが
ラオウの脳を支配する。

そして大地を蹴り、前方に位置する覚悟に向かって突進を
開始しようとした瞬間――
「いたしかたあるまい。貴殿のような武人に対して失礼を謝罪する……
当方に迎撃の用意あり!!! 」
覚悟はデイパックから髑髏が描かれたあまりにも強化外骨格零の頭部
に較べて頼りない……だがそれでいて熱き魂が籠もったヘルメットを
取り出し、装着する。
――覚悟完了。再び覚悟は闘いに身を投じることを決意する。

最初に連れて来られた場所で訊いた覚悟の決意の言葉。
その言葉を再び訊きラオウは覚悟の戦いの意志を全神経で認識、
ほんのわずか口角を上げて――
「その潔さ……このラオウの相手に相応しい。
いざ参らん!!! 」
覚悟に向かって戦士にとって逃れる事は出来ない――決闘を開始した。

「ぬぅん!」
その身に似合わない速度で接近して来るラオウから繰り出される
正拳が覚悟を襲う。
体を横にずらす事で覚悟はラオウの正拳を回避する。

(なんという拳速……散と勝るとも劣らない。
とても手加減をして勝てる相手ではない! )
自分の予想通り一流の中の一流の武人であるラオウの技量に感嘆し、
迎撃手段を模索、即座にラオウの正拳の力を利用すべく
因果を極めようとするが――

「ふん! 」
「何!? 」
第一撃が終わった途端、間髪いれずにラオウの第二撃が飛び込んできたのだ。
予想以上の速さで放たれた第二撃の拳を回避すべく、瞬時に因果を極める
事を放棄、大地を蹴りラオウの頭上を飛び越えて跳躍――
間合いを取る事に成功する。

「まさに流水のごとく流れる剛拳!
この覚悟感服した! 」
決してラオウの事を挑発しているわけではなく只ひとえに
戦士として、武人として純粋に尊敬の念を込めた言葉を
覚悟は送る。

「言葉で相手を飾る余裕があるのならば、
その余裕全てをうぬの拳に込め、このラオウに示してみせよ! 」
対して覚悟の自分に対する賛辞を意に介さず、ラオウは依然
表情を変えずに覚悟に言葉をぶつける。

「承知! 正調零式防衛術、葉隠覚悟。いざ参る!!! 」
ラオウの言葉を受け、覚悟は咆哮を上げながら大地に足を
走らせ、一直線にラオウの元へ向かう。

「直突! 」
覚悟の拳がラオウの身体に吸い込まれていくかの様に
撃ち込まれるのをラオウは左腕を使って受け止める。
左腕に受けた衝撃にラオウはわずかにその表情を歪め、その事を
確認した覚悟は更なる追撃を放つ。

「零式積極直突撃! 」
己の拳を勢い良く相手の腹に直撃させることにより、
水月を経由し脊髄中枢に衝撃を与える『零式積極直突撃』を
覚悟はラオウの腹に空いた手で叩き込もうとするが
ラオウが咄嗟に身を後ろに引いた事で完全に成功する事は叶わなかった。
だがそれなりの手ごたえを感じた覚悟は更に次の一手を打つべく
ラオウの様子をみるため顔を上げるが……何故かラオウの表情は
物足りんと言わんばかりのものであった。

「このラオウ……うぬには失望した」
「なんだと!? 」
ラオウの予想外の言葉に衝撃を受け、驚愕の表情を浮かべた覚悟に
ラオウの反撃の剛拳が迫る。
先程よりも更に速い速度で迫り来る剛拳に反応しきれず覚悟は
両腕を交差させ防御の姿勢に入り、ラオウの剛拳を受け止める。
(くっ! この力は……骨にひびが入ったかもしれん)
あまりの衝撃で腕を交差させたまま覚悟の身体は後方へ吹っ飛ぶが、
覚悟は空中で姿勢を整え大地に両足から着地し、ラオウに向かって
即座に構えを取る。

「先程の言葉の真意を知りたい! 」
覚悟は先程生じた疑問をラオウに問う。
「笑止! このラオウの拳を受けてもまだわからぬとはな! 」
「ならば! 貴殿との決闘に勝ちその後、直に訊くまで! 」
そう叫び覚悟は再びラオウに向かって加速――大地を蹴り跳躍する。

(狙いは顔面! やはりラオウ殿と俺が今此処で私闘を行うなど
無意味な行為だ! 我らの力は牙なき人々の為に使うもの……
ラオウ殿を気絶させこの場を終結させる! )
左足を何故か微動だにしないラオウの顔面に向け、そのまま
勢い良く左足を前方に突き出し――
「零式因果直蹴撃! 」
鍛え抜かれた零式防衛術の技の一つ――『零式因果直蹴撃』
をラオウの顔面に叩き込んだ。

(手ごたえは充分! これで……なっ!? )
手ごたえを感じながらも覚悟は驚愕する。
何故ならラオウは倒れるどころか自分の伸びきった左足の
足首をその大きな手で掴み、その手によって引き起こされている
左足に掛けられた圧力を感じたからだ。

「ぬぅぅぅん! 」
鼻の骨が折れたのだろう、ラオウはそのまま鼻血を垂らしながらも
覚悟の左足首を握り締め、後ろを振り返りながら、
急激に腕を後方に振りぬく。
その時何故か新八にはラオウに左足を掴まれ、宙に舞った覚悟の
動きがとてもゆっくりと見えた。

「か……」
そのままゆっくりと……実際には一秒にも満たない時間で覚悟の身体は
頭から大地に叩き落され――
「覚悟くんーーーーー!!! 」
一つの『魂』が今このバトルロワイアルで砕け散った。

志村新八がラオウの前で力なく座り込んでいる。
そして新八の傍には先程砕け散った魂――滝和也のライダースーツの
ヘルメットの破片が散乱し、頭から血を流した覚悟が地に伏している。
幸い命に別状はなく、ヘルメットにより多少は弱められたが頭部への
ダメージは強く、また大地に叩きつけられた時の衝撃で更に
両腕の骨のひびが大きくなり覚悟は必死に立ち上がろうとするも
即座に立ち上がることが出来ない。
そんな覚悟にラオウは言葉を投げかける。

「今のうぬはどう足掻いてもこのラオウには絶対に勝てん。
うぬの拳には迷いがある。」
「私の拳に……迷い? 」
力を振り絞り覚悟はやっとの思いで立ち上がり、ラオウの
言葉に疑念を持つ。

「先程の決闘でうぬの拳から殺気は感じられなかった。
何故このラオウを殺す事を考えなかった? 」
「無論、貴殿は一流の武人。
貴殿の様な者を葬る拳など持ち合わせていない! 」
覚悟は力強く反論をする。
自分の認識は間違っていない、そう固い自信を持っているからだ。
だがラオウはどこか呆れたような顔をし、言葉を繋げる。

「愚か者め。うぬのその姿勢は一流の戦士に、うぬが言う武人
に対しての冒涜にしか過ぎぬ。
例え相手にどのような信念、主義、主張があれども全力で
拳で応え相手を滅する……それこそ戦士が行う決闘というものだ」
言い終わるとラオウは既に覚悟に興味はないと言わんばかりに
新八の方を向きお決まりのたずね文句を問う。

「貴様は北斗七星の脇に輝く蒼星を見たことがあるか?」
正直者の新八は直ぐに――
「い、いえ!見たことないですけど……」
怯えながらも返答する。

新八の返答に「そうか」と短く答えラオウは歩き出し、繁華街の方向に
向かっていくが――
「待ってくれ」
覚悟が発した言葉でラオウは立ち止まり
「何だ? 」
いぶかしげにラオウは覚悟に訊ね
「貴殿はもし愛する者の為に、成すべき事の為に
望まぬ闘いに身を投じた女人やまだ若年な子供が闘いを
挑んできてもその剛拳で彼らの思いごとねじ伏せる事が出来るか? 」
神妙な表情で覚悟はラオウに問うた。

先程のラオウの言葉には概ね同意ができた。
確かに此方を殺す覚悟で決闘を申し込んできた相手と同じ
覚悟で迎え撃たなければそれは相手にとって屈辱に値するだろう。
だが今自分が言った事については思考が纏まらない。
そう思い覚悟はラオウに訊ねた。武人としての答えに期待を寄せながら。

「笑止、姿形は関係ない。
天の道への障害はねじ伏せる。只それだけだ。」
覚悟の期待を裏切った答えを残し、ラオウは歩を進ませる。
その圧倒的な闘気に覚悟はそれ以上言葉を繋げる事は出来なかった。
◇  ◆  ◇

(あのような事をぬかすとは……若い、若すぎる。
ケンシロウや本郷よりも甘すぎる)
そのような事を考えながらラオウは歩く。
もう既に鼻血は止まっているが乾燥し、鼻の下にこびりついた血液を
取りながら更に繁華街を目指して歩く。

(迷いがなければ倒し甲斐があったのだがな……)
ラオウは第一撃の直突を左腕で受け止めた時に覚悟の迷いを感じ、
己の技も使わず、あえて覚悟の技を受けねじ伏せていた。
迷いがある輩には何があっても負ける事はないという自信から
来た行動であった。
ラオウは進む。更なる敵を求めて……戦士としての『魂』がある限り。

一方エリアH-3の中心部に向かって覚悟が新八に
肩を貸してもらいながら歩いていた。
「かたじけない、志村」
頭からの出血は止まったが先程のラオウとの激闘で受けたダメージは
深刻で、覚悟は一人では歩けない状態となっていた。
「気にしないで覚悟くん、僕にはこれくらいしか出来ないからね」
面目なさそうな表情をしている覚悟に対して新八は笑って答える。
覚悟の鍛えられた身体に肩を貸し歩いていくことは
決して楽な事ではないが、新八にはそれを放棄するという
選択肢はハナから入っていない。

(覚悟くん、君は充分頑張ったよ。だからせめてここからは
僕が根性をみせて、首輪を手に入れてみせるんだ! )
覚悟を支えながら新八は歩き続け前方に何かを発見する。
それは下半身は喪失し、上半身は黒こげになり覚悟に己の『魂』を
託し殉死した男――杉村弘樹の死体であった。

「う、うわぁぁぁ!!! 」
あまりにも凄惨な杉村の死体を見てバランスを崩し、
新八は思わず覚悟を落としそうになるが懸命に体勢を再び整え阻止する。
(ひ、酷すぎるよ! こんな死に方って……
でも首輪を持っていくには首を落とさないと……出来るのか? この僕に)
ゴクリと唾を飲み込み、これから自分が行う行為に対して不安が
新八の脳裏を駆け巡るがふと覚悟の方を見るととても
神妙な表情となっているのに気付いた。

「もしかして覚悟くんの知り合い……? 」
恐る恐る新八は覚悟に訊ね、覚悟は応える。
「彼は杉村、ルイズさんを悪鬼から守った男だ。
共に闘った事はないが彼もまた牙なき人々を守るために闘った……
守るべきものが同じである私と杉村は『戦友』だ」
そういい終わると覚悟は杉村の死体に向かって敬礼を行い、
数秒間の敬礼を終えて再び覚悟は口を開く。

「志村、死体を選別するような真似はしたくないのだが……
杉村の、戦友の首を落とすなど私には心が痛む。
私が倒した悪鬼の方の首輪を回収したいのだが」

一刻も早く首輪を手に入れ、首輪の解析をしなければならない
状況である事は覚悟も当然理解しているため自分の行動は
決して得策ではない事を自覚している。
そのために申し訳なさそうに志村に提案をするが――
「わかったよ。それなら早速行こう」
新八は覚悟の予想を裏切り即座に歩き出す。
(覚悟くんがそこまで認める人なんだ……僕にもそんな人の
首を落とすなんて出来ないよ。
杉村くん……いつか落ち着いたらきっと埋葬しにくるからね)
心の中でそう呟きながら。

その後覚悟と新八は覚悟の記憶を頼りに覚悟の言う悪鬼――三影英介、
またの名をタイガーロイドの死体を捜し続けたが結局見つける事は出来なかった。
実際には首輪の爆発により首が吹き飛ばされ、死亡した三影の死体は見つかったが
タイガーロイドの姿しか知らない覚悟にとってはその事実は
知る由もない事だった。
三影の死体に黙祷を捧げ、落胆の表情を浮かべながら覚悟は
言葉を発する。

「もうしわけない……すでに誰かに死体ごと持ち去られたか、
私の記憶違いであったのかもしれない……」
最早杉村の死体から首輪を入手するしかないのかもしれない……
そう考えると自然と覚悟の口調は重々しいものになっていく。
素直に新八に謝罪を行い、これからどうするかを考えていると
突然新八が口を開いた。
「覚悟くん、まだ歩ける? 」
「無論、志村に支えてもらっていたお陰で疲労はない。
それが何か?」
質問の意図がイマイチわからないが覚悟は正確に応える。

「なら、隣のH-4のエリアまで調べてみようよ。
もしかしたら首輪だけが落ちてるかもしれないし
丁度病院までの距離も縮まるしね」
そう言って覚悟を支えながら新八は歩く。
「なるほど、承知した。だが志村の方の疲労は……」
一方そこまで言って覚悟は新八の顔に今までにない疲労の色が見えている
事に気付く。

「大丈夫か!? やはり一旦身体を休めてから向かうべきだ! 」
やはり怪我人の覚悟の身体を支え、足場の悪い林の中を歩き続ける
のは一般人である新八にとって過酷な事であったのだろう。
だが新八は狼狽する覚悟を尻目にエリアH-4に向けて歩く
のを止めない。

「大丈夫だよ覚悟くん……休憩するのはH-4のエリアを
調べてからでも出来る。
一刻も早く、杉村くんや首が吹き飛んだ男の人みたいな人を
出さないためにも首輪を手に入れる必要がある。
今は踏ん張る時なんだ……意地があるでしょ? 男の子には!」

疲労の色は出来るだけ見せずに、力強い口調で返答する
新八を見て覚悟は滝和也のライダースーツから感じたものと同じくらいの
『魂』を感じ取り、反論は放棄した。
(志村、俺はお前を見くびっていたようだな。
その信念……お前を戦士として認める)
心の中で敬礼を送り、戦士として認めた新八に身体を預け、
覚悟は新八と共に進み続ける。
その『魂』が燃え尽きるまで。
◇  ◆  ◇

エリアH-4を歩き続け丁度中心部に差し掛かった時、
覚悟と新八は少女――桂ヒナギクを守るため、神父アレクサンド・アンデルセン
のバルキリースカートにより首を落とされた迷探偵――毛利小五郎
の死体を発見した。
だが一つの幸運もあった。

それは首が落ちた時に偶然にも首輪が首から外れていた事だった。、
目の前の死体を考えれば決して手放しで喜べないがそれでも
二人にとっては幸運な事であった。
死体に黙祷を捧げ、首輪をデイパックに回収した二人は
少し西側に移動してから休憩を取ることにした。
流石に首が落ちた死体の傍で休憩を取るのは気が引けたからだ。

(なんとか首輪も手に入った……後はこれをみんなの
元に届ければ)
言葉を出すのにも疲れ座り込み、木にもたれながら新八は考える。

「志村、私はあれから考えてみた」
同じ様に木にもたれかかり、隣に座っていた覚悟が突然口を開く。
「何を? 」
小さな声で新八は覚悟に訊く。
「ラオウ殿が言った言葉についてだ」
そして覚悟はラオウの言葉を思い出しながら
立ち上がり言葉を続ける。

『笑止、姿形は関係ない。
天の道への障害はねじ伏せる。只それだけだ』

「私には女人や若年な子供を悪鬼としてラオウ殿のように倒すことは
出来ないと思う……だがこの身は現代鬼・散や戦術鬼を倒すための手段。
彼らに殺されるつもりはない」
一見矛盾したような事を覚悟は話す覚悟の口は止まらない。

「例えいかなる打撃を、思いをぶつけられたとしても拳で応えるつもりはない。
この身は果てしなく牙なき人々のためにある……彼らの悲しき思いは全て
この身で受け止め、私はあの老人を斬る剣となろう……」
「でも覚悟くん! 抵抗しなければいくら君でもそれは……」
――死ぬ。そう言おうとしたが新八の言葉を
覚悟の淡々とした言葉が遮る。
「何も恐れる事はない、只剣が磨かれるだけだ。
この身は牙なき人々の希望で出来ている……
何があろうと希望の力は悲しみの力に屈する事などない! 」
――覚悟完了

三つの『魂』が一つの『魂』と出会い、一つの『魂』が砕けた。
そして一つの『魂』が新たなる闘いを求めて去っていき、残された『魂』が
輝きもう一つの『魂』の輝きも増した……。
『魂』の交錯は終わらない。

【H-4 西部 1日目 午前】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に重度の火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃による重度のダメージ(治療済み) 全身に打撲(どれも致命傷ではない、治療済み)、頭部に大ダメージ、両腕の骨にひびあり、 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。 この戦いの首謀者を必ず倒す。
1:休憩を取り、昼の12時までには病院に戻る。
2:杉村を弔う。
3:再びラオウと会い、自分の決意を伝えたい。
4:怪我が治ったらルイズとゲームセンターに行く
[備考]原作一巻第一話、逆十時学園入学初日より参戦
※決意が強まりました、殺し合いに乗った者が戦士であるならば容赦はしません。
※戦士でないと判断した者(一般人の女性や子供など)に対しては決して抵抗せず、
説得を試みます。
※戦士であるかどうかの判断は次の書き手さんにお任せします。


【H-4 西部 1日目 午前】

【志村新八@銀魂】
[状態]:健康 疲労(大)
[装備]:大阪名物ハリセンちょっぷ
[道具]:基本支給品、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた、首輪
[思考]基本:仲間を集める。
1:休憩を取り、昼の12時までには病院に戻る。
2:銀さんと神楽ちゃん、桂さん、コナン君の知り合い(灰原哀、服部平次)と合流する.
3:杉村くんを弔う
4:ゲームからの脱出

【F-3 中部 1日目 午前】
【ラオウ@北斗の拳】
{状態}腹部強打、内臓、左腕、顔面に中ダメージ 、鼻の骨を骨折、
{装備}無し
{道具}支給品一式
{思考・状況}
1:ケンシロウ、勇次郎と決着をつけたい
2:坂田銀時に対するわずかな執着心
3:強敵を倒しながら優勝を目指す
4:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい
5:人が集まりそうな繁華街に行く


097:COOL EDITION 投下順 099:明日を生きる君に
097:COOL EDITION 時系列順 099:明日を生きる君に
094:仮説 葉隠覚悟 117:揺ぎ無い意思貫くように
094:仮説 志村新八 117:揺ぎ無い意思貫くように
079:Blue sky ラオウ 120:拳王の夢 暴凶星の道