極めて近く、限りなく遠い『運命』へ   ◆3OcZUGDYUo



爆音を唸らせ二人の男女を乗せたバイクがエリアD-8を疾走する。
行き着く先は希望か? それとも絶望か? その答えへのLOADを
風を切ってバイクは走り続ける。

「何や! この道路のへこみは!? 」
エリアD-7から南下し爆発音のあった方向へバイクを走らせていた
色黒の少年――服部平次はホテル付近の道路に存在する不自然な道路の凹凸を
横目で見て、思わず感想を漏らす。

(普通の力じゃこんなへこみは……いや、足跡はつけへん。
まさか全身に機械を詰め込んだような奴が参加してるんとちゃうやろな?)
いつもの平次なら笑い飛ばせるような滑稽な考えだが
この状況では決して笑い飛ばすことはできない。
なんせエニグマの紙という只の紙がまるでSF映画にでも出てきそうな
奇妙な銃や美味しそうなサラダに変化するような世界なのだ。
今更吸血鬼や改造人間のような類のものが出てきても受け入れてしまいそうな
自分に驚いていた。

(ハハ……こんなケッタイな事を考えるとはオレもヤキがまわったかもしれへんな。
まぁ一つ言える事は今までの常識で考えてたらアカンって事や。
この状況は考えるまでもなくえらい異常事態……そのためにも情報は集めとかんとな。)
更にアクセルを踏みながら平次は思考とバイクを走らせ爆発音の方行に
向かい――
「しっかり掴まっとれよタバサ! ちょっくら飛ばすで! 」
自分の身体に腕を回し、振り落とされないように座っている水色の髪を
した少女――タバサに声を掛ける。

「うん」
そう短く返事をし、タバサはより腕に力を込めながら考える。
何故自分は爆発音の方向に行くと行ったのだろうか?
その事についてだ。

(良くわからない、でも……行きたいと思った)
風を切る事で生まれてくる心地よさに僅かにまぶたを下ろし、
心に疑問を残しながらタバサは身体を平次に預け、バイクは走り続ける。
その疑問という氷を溶かしていくために。
◇  ◆  ◇

(先程の轟音……何らかの戦闘があったとみて間違いないな)
白く、白銀に光る奇妙なコートを纏い、これまた奇妙な帽子を
被った男――アミバは更に速度を上げながら考える。
ステッキイ・フィンガーズのDISCを拾った後、その異常な速度で
既に田園地帯を走り抜け、アミバはエリアD-8のホテル前に到着した。

(この道路にも戦闘の跡がある。ここで闘っていた者達があの轟音を引き起こした
のか、それとも別の関係ない者達か……)
一旦走るのを止め、腰を下ろしホテル付近の道路をアミバは注意深く観察する。
道路に残された戦闘痕から相当の実力者同士が争ったと判断し、
同時に彼らの行動についての推測を始める。

(これ程までの戦闘を行ったのに死傷者がこの場に居ないというのは
腑に落ちん……やはり戦闘の場を移したと考えるのが妥当か)
ゆっくりと立ち上がり、爆発音のした方向に目線を向けながらアミバは思う。
そこまで考えふとアミバは思い出すかのように考える。
自分はどうするか? 何をするべきなのか? 己の信念の為成すべき事は何か?

(答えなど決まっている……このふざけた殺し合いに乗っている奴が居るなら
俺の拳で、俺の技で、俺の信念でその考えを改めさせる! 
もし最後までその意志を貫くというのなら容赦はしない!
そして殺し合いを望まぬ者とは背中を預け共に闘う! それが俺の信念だ!!! )
つい数時間前に一人の“反逆者(トリーズナー)” ――カズマとの交流、カズマと今
自分が纏っているコート――鉄壁の防護服シルバースキンを纏った自分を王と称する男
――鷲巣厳の文字通り己の命を賭け札とした激闘を目の当たりにした事により
生まれたばかりの『信念』。

最早曲げる事を許すつもりのないその信念を強靭な胸に宿し、シルバースキンを
太陽の光に輝かせながらアミバは再び走り出す。
彼を待つ、行き着く先は未だわからない『運命』と名づけられた海の流れに
その身を投じるために。
◇  ◆  ◇

エリアC-8の西部で一人の男が力なく座り込んでいる。
銀色のアルター――絶影を持つ男――劉鳳である。
劉鳳のすぐ傍には青いパーカーを朱に濡らした少年――平賀才人の
亡骸が微笑を浮かべ横たわっていた。
何故彼は笑っているのかは劉鳳にはわからない。
つい先程命を散らした亡骸とは思えない才人の顔を見ると激しい後悔が
劉鳳を襲う。
――お前のせいだ。
何故かそんな事を目の前の才人が言っているように思えた。

(すまない平賀才人……俺があの二人を断罪出来ていればルイズという
子にも巡り会う事も出来たかもしれないというのに……本当にすまない)
血が滲む程唇を噛み締め、絶え間ない後悔の波が身体中に押し寄せている
のを感じ、劉鳳は一人後悔の念に打ちひしがれている。
自分が守ると誓ったはずの才人を守ることが出来ず、あまつさえ助けられ
てしまった自分にどうしようもない憤りを覚える。

(人類を滅ぼす事が正義だとほざいた散と言う女。
そして赤く、昆虫の様な怪人に姿を変えた良と言う男。
俺の力、俺の絶影が奴らに届いていればこんなことには……)
絶影の真の姿を開放しても一瞬の隙を突かれ敗北し、
更には絶影を文字通り木っ端微塵に破壊された……自分を支えてきた
『絶対正義』という誇りと共に。

(俺の正義は人類を滅ぼすという腐った正義にすら劣るというのか? )
そんな事は決してない!
そう何度も言い聞かせるが自分が完全に負けたという事実は紛れもない事実。
行き場のない怒り、悔しみ、悲しみを肌が露呈した右の拳に乗せ、
ガツン!
その忌まわしい事実を砕くかのように劉鳳はどこまでも広がる大地を殴りつける。
ガツン!ガツン!ガツン!
何度も何度も心のおもむくまま拳を撃ちたてる。
ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!
自分の右の拳に熱い何かが流れているのを感じ劉鳳はふと自分の右の拳に目をやる。

どうやら何度も大地を殴りつけたせいで皮が破れ出血が起きたようだ。
――痛い。
大きく蓄積された疲労により全力の力を出せないためあまり酷い出血ではないが、
自分の一部である右の拳が朱に塗れながら静かにそう訴えかけている。
だが劉鳳の動きは止まらない。

(痛い? 痛いと言うのか劉鳳? )
ガツン!
(貴様の横で眠っている平賀才人は貴様のせいで……)
ガツン!
(貴様とは比べものにならない程の痛みを伴って死んだ……)
ガツン!
(貴様に痛みを……正義を語る資格など……)
ガツン!
(あるはずがない!!! )
ガツン!!!
ここ一番の力を込めた拳を大地に殴りつけようやく劉鳳の動きは止まった。
既に右の拳は朱一色に染まり、骨が折れたような感覚も残っている。
あまりに無意味な行動を行った自分に劉鳳は更なる嫌悪感を募らせる。

「俺は…………無力だ」

そう力なく呟き劉鳳は大空を見上げる。
俺はどうしたら良い? 俺の正義は間違っているのか?
まるでそう訊いているかのように劉鳳は見上げるが当然答えは出ない。
只大空は気を失いそうな程蒼く、広がっていくだけ……果てしなくどこまでも。
劉鳳にはその大空がなにか自分を嘲笑しているかのように見えた
◇  ◆  ◇

「この辺りから音が聞こえてきたはずや。そうやろタバサ?」
「うん、多分この辺りから」

エリアC-8に入った後もしばらく平次はバイクを走らせていた。
後ろに座っているタバサも頭を左右に振りながら状況を確認する。

「ん? あれは……」
やがて平次の視界に青と白で彩られた奇妙な制服を纏い、背中を向けて、
座り込んでいる劉鳳が入って来た。
劉鳳の方よりその奇妙な制服に平次の関心は向けられる。
それもそのはずだ。
血に塗れていたとは言えども先程自分に棍棒を投げつけ、ハイキックを食らわせ、タバサの支給品を奪い、
自分の前から逃走した青髪の少女――シェリスと同じ制服だったからだ。
殺人を犯した可能性がある少女と同じ制服を着ている劉鳳に対して
警戒をしないわけにはいかない。
バイクをゆっくりと停車させ平次はバイクから降り、タバサも同じように降りる。
流石のタバサも目の前に座り込んでいる劉鳳の制服を見て、本を読もうとはせずに
平次の出方を見守っている。

「なぁあんた――――っ!? 」
そこまで劉鳳に声を掛けたところで平次は驚く。
バイクに乗っていた時は劉鳳の身体で隠れていて見えなかったが、
なんと劉鳳のすぐ後ろには自分と同じくらいの歳頃の才人の胸に何か破片
のようなものが突き刺さり、横たわっていたからだった。

(胸に刺さったあの破片が凶器とみてまず間違いないやろ。
でもあの仏様には悪いけど問題はそこじゃあらへん。
問題は……あの男がこの犯行をやったかどうかやな)
一旦劉鳳に話しかけるのを止め、平次はいつでもデイパックから支給された銃を
取り出せるように用意しながら慎重に考える。
この後どのように探りを入れていくかという事も忘れずに。

「……何者だ? お前達は? 」
ほんの数秒間、だがそれでいて平次とタバサには数分間に感じた沈黙を
破ったのは劉鳳。
ゆっくりと立ち上がり、平次とタバサの方を振り向き劉鳳は問う。
明らかに覇気がなく、いつもの劉鳳とは考えられない程弱弱しい声で。

「別に怪しい者やあらへん。只首輪を外したろとおもっとるだけや」
「首輪を外すだと……? 」
今まで自分の絶影はどこかいつもより弱弱しく、アルターの発動による
疲労も大きく感じた。
ロストグラウンドに居た時の自分と今の自分にある違い……勿論この
家畜の証ともいえる黒く光る首輪の有無だ。
もしこの首輪が絶影の力を奪い、自分の疲労を加速させているのならば、
そしてもしこの推測があたっていて首輪を外すことに成功出来たら……

(その時は……『正義武装』で奴ら二人を纏めて倒す事が出来る! )
正義武装――進化の言葉『s.CRY.ed』を叫ぶ事により己の身に絶影――正義
を纏う事により完成する劉鳳の、絶影の最終進化。
先程の戦闘でも正義武装を使っていればZXか散、どちらかを倒す事は決して
不可能ではなかっただろう。
だが正義武装は自然の流れにより起こる進化ではなく、強制された進化。
そのため肉体の負担は大きく、更にそこに首輪の制限も加わり負担は
大きいものとなり長時間の使用は間違いなく死に繋がる。
だが決して己の身よりも目の前の悪を断罪する事を優先するのが劉鳳。
しかし劉鳳は目の前の悪を残して死ねるわけにいかず、
全ての悪を断罪するのが彼の正義。

よって劉鳳には「ZXか散のどちらかを倒す、もしくはどちらかと共倒れになる」
という選択肢はなく、「両方を倒す、もしくは両方と共倒れになる」という選択肢しか
なかった。
そのため途中で力尽きる可能性のある正義武装は出来るだけ温存し、真・絶影で
勝負をつけようとしたがその結果、予想をはるかに上回る力を誇ったZXと散に完敗した。
だが首輪を外せればそのような憂いを気にせず正義武装を発動できるかもしれない
……劉鳳の目に希望が再び舞い上がってくるのが見える。

「そういう事や。ほな、こっちの質問をさせてもらうで」
「何だ? 」
「あんたの後ろに横たわっている仏様……あんたが殺したんか? 」
平次は遂に最大の疑問を劉鳳に投げかけその反応を注意深く見守る。

(この兄ちゃんが切り裂きジャックの様な殺人を生きがいとし、殺し合いを
楽しんでいる人物ではない事は確かやな……)
何故平次はそう思うのか? 答えは「自分たちは首輪を外そうとしている」という
情報を劉鳳に教える事で劉鳳の反応を見ることにあった。

(なんせ首輪を外すと言ったらどこかしら期待の色が見えよった。
いつでもあのじいさんによって爆発でき、オレらの逃走を阻止するための拘束の
役目を果たすこの首輪……これを外そって事は当然このけったいなゲームを崩したろ
と言ってるようなもんや。
殺し合いを楽しんでいる人物がゲームの崩壊を望むって奴を見つければ、
恐らく……殺すやろな)
だが目の前の劉鳳は全く自分たちを襲う気はないどころかむしろ希望に満ちた
表情を此方に向けてくる。
この劉鳳の行動から平次は恐らく劉鳳は快楽殺人者であるという最悪のケース
は回避された事に安堵しながら劉鳳の返答を待つことにした。
やがて劉鳳の口が動く。

「俺が平賀才人を殺しただと……?
確かにある意味俺が殺したとも言えるかもしれんな……」
俯きながら劉鳳は静かに、だが目線は逸らさずに平次に向かって応える。

(ある意味やて?……どうやらシロと考えていいやろな)
普通自分に全く関係がなければ断固として否定する、また自分が犯人の場合は
否定するという選択肢の外に目撃者……つまり平次達を口封じの為始末するという
のが追加される。
その全ての選択肢は取らずに只劉鳳は後悔の言葉を発している。
恐らく理屈よりも感情で行動するタイプで、横の平賀才人は同行者であり、周りの
荒れ果てた状況から何らかの戦闘に巻き込まれ、年下の者を守りきれかった
という罪悪感からそういう言葉が出たのであると平次は暫定的に判断する。

(けどこれはあくまでも常識の範囲内の考えや、もう少し判断材料が欲しいところやな)
そう、これはあくまでも探偵としての常識に基づく考え。
この推測だけでは完全ではない。
とそこまで考えて平次は今劉鳳の口から出た平賀才人という人物について
考察する。
平次の知り合いではないが、タバサの知り合いである可能性もある。
そう思い、タバサの表情を覗き込むが……彼女の表情には若干の震えがあった。

「…………」
無言で才人の亡骸に近づき、タバサは見つめる。
只、本当に何も言わずに見つめるだけ……。

「タバサ……知り合いか? 」
「……うん、知り合い」
「そうか……」
あまり才人との交流が深くなかったタバサにとってはそれほど深い悲しみが
襲ってくるというわけではなかったが、それでも知り合いが実際に死んだという
事実はタバサに重く圧し掛かる。
もしタバサがこのバトルロワイアルに呼び出されたのがもっと未来で
あったならばこの悲しみは今より大きいものだっただろう。
その事は今のタバサにとって知る由もないが幸運であったかもしれない。

「俺にもっと力があれば……」
タバサの行動を見て、血だらけの右の拳を握り締め劉鳳は俯き、呟く。
血だらけの右腕を見て不自然に思った平次は劉鳳が座り込んでいた場所も
不自然に血だらけになっているのに気づき劉鳳が行った行動を推測する。

(なるほどな、後悔のあまり地面をボコってあの有様ってことやな……)
合理性はなく、全くの無意味な行為。
だが――
(ホンマにその平賀才人っていうのを殺したんならその行動は不可解や、
もうほぼシロであると考えていいやろ。
全くホンマにアホなやっちゃなぁ……まぁ嫌いやないで、そういうアホは)
幸運にも『西の名探偵』と称され、洞察力に優れる平次にとって疑惑を薄める
判断材料となった。

(けど、まだ100%じゃあらへん!
なんせさっきの青い髪をしたねーちゃんと同じ制服を着てるって謎が残っとる)
そして平次は最後の疑惑を解消するため口を開く。

「なるほど、とにかくあんたがやったというわけじゃないんやな。
ところで実はあんたと同じ制服着た青い髪をしとるねーちゃんを
見かけたんやけど……」
「シェリスの事か? どこだ? どこで見た? 」
平次が話終わる前に劉鳳は口を挟む。
それもそのはず、劉鳳とシェリスは一生のパートナーを誓い合った仲。
一刻も早く会いたいという気持ちから焦りが生じたのだろう。
だが劉鳳とシェリスの関係を知る由もない平次は途中で話の腰を
折られた事に若干の不満を感じながら質問を……話の核心を突く。

「実はそのねーちゃんな言いにくいんやけど……人を殺した可能性があるんや」
平次の言葉を受けて劉鳳は文字通り全く身動きをせずに硬直する。
だがそれは一瞬の事――瞬時に劉鳳は平次の元へ大地を蹴って加速し――

「ふざけた事をほざくな! あのシェリスが人を殺したかもしれないだと!
そんな事があるはずがない!」
一瞬の内に平次の目の前に立ち、平次の胸ぐらを掴み劉鳳が吼える。

「ちょ! いきなりなんやあんた! まだ断定はしとらんやろ!!! 」
いきなりの劉鳳の行動に驚きながらも、劉鳳の怒声に負けないくらいの
大声で返事を反す。
一方、タバサの方はというと才人の横で多少表情を曇らせながら
状況を見守っている。

「……すまん。詳しく教えろ」
流石の劉鳳も自分の行動に非礼があったことを認め謝罪し、平次に説明を求める。
その行動をみてやはり劉鳳は理屈よりも感情で行動するタイプであると
再認識し、平次は溜息をつきながら今までの事を話すと共に劉鳳と情報交換を行った。
◇  ◆  ◇

「その話本当だろうな……服部? 」
「シェリスのねーちゃんが殺人を犯したとは限らんけどな。
まぁ窃盗を行ったのは確かや。な?タバサ」
「うん、ナイフとマントを取られた」
三人は全ての情報――自分の事や知り合い、このバトルロワイアルに呼び出されてからの
行動などを交換した。
その中にはアルター能力の事や平次が首輪のサンプルを使って首輪を外そうとしている
事も含まれていた。

「そうか……有益な情報に感謝する、ではここでお別れだ」
「お!おい!劉鳳!何一人で勝手に行くつもりや!首輪を外したくはないんか? 」
用は済んだと言わんばかりに劉鳳が立ち去っていくのを平次は慌てて
引き止める。

「確かに首輪を外すのは俺にとって魅力的だ。
絶影の力が今以上に引き上げられるかもしれない。
だが技術者と合流できなければ首輪は外せない……それではあまりにも遅い!
服部! お前はお前の成すべき事を成せ!
俺はこんどこそ散という女と良という男を断罪する!
俺のアルター……絶影で! 」
そう劉鳳は平次に言い残しZXと散が向かった方角へ歩を歩める。
だがその足取りは重く、依然劉鳳は疲弊したまま。
劉鳳が自分たちと出会う前に激戦を繰り広げた事をついさっき劉鳳から
聞いた平次はいったん身体を休める事を提案しようとするが――

「待て! お前今アルターと言ったか!? 」
突然三人にとって聞き覚えのない声が聞こえ、三人は声のする方向へ振り向く。
そこには鉄壁の防護服を身体に纏った男――アミバが立っていた。

「その奇妙なコート……貴様! ブラボーから奪ったのか? 」
見間違えるわけもない奇妙な白いコートを着た人物に対して
劉鳳は警戒を表す。
C・ブラボーからアルターの存在を聞いていれば話の合点がいく。
そう思ったからだ。

「違う、これは只のコートじゃない! 」
対してアミバは武装錬金を解除して、シルバースキンを核鉄に戻す。
奇妙な白いコートが一瞬の内に消失し、六角形の奇妙な金属に変化する。
三人は程度の違いはあれど驚いていた。

「そうか、それがブラボーが言っていた核鉄か……」
劉鳳はブラボーから核鉄の話は聞かされていたので納得する。
なにせブラボーが身に着けていたコートは正真正銘只のコートであったからだ。

「わかってもらえたかな? なら質問を続けさせてもらう。
そこのお前、さっきアルターと言ったがお前もアルターが使えるのか? 」
武装錬金!と叫び、再びシルバースキンを展開しアミバは劉鳳に問う。

「ああ、その通りだ。だが何故お前はアルターの事を?
もしやお前もアルター使いか? 」
劉鳳の記憶にアミバの姿はない。
だが自分が知らないアルター使いがこの場に居ても何の不自然もない事だ。
そう思い劉鳳は聞き返す。

「いや俺はアルターは使えない…………カズマが使っていたのを
この目で見ただけだ…………」
「カズマだと!!! 」
何か思いつめた様子でアミバが返答し、劉鳳がアミバの返答に驚く。
(そうだ、カズマだ。
奴のシェルブリット……いや、ハイブリットと俺の正義武装の力が合わされば
首輪を外さなくともあの二人を纏めて断罪する事は難しいことではない! )
一時は対立し合っていたが最終的には共に大いなる悪と闘ったカズマ。
カズマとの共闘という選択肢を手に入れた劉鳳の両目に再び希望の灯火が映る。

「カズマはどこだ? 奴さえ居ればきっと奴らを――」
「死んだ」
劉鳳が言い終わる前にアミバの短い言葉が遮る。
その言葉に劉鳳の思考は一瞬停止し、活動を再開する。
この男は何を言っている?
カズマが……死んだだと? あの“反逆者(トリーズナー)”が……?

「……何の事だ? 」
下らん冗談はやめろ。
もう一度ふざけた事をぬかすとただではすまさん!
まるでそう言っているかのように劉鳳は鋭い眼光でアミバを睨みつける。

「何度も言わせるな……カズマは死んだ。俺の目の前で……」
「うそをつ――」
「うそではない!!! 」
再び劉鳳の言葉を遮りアミバのありったけの怒声が響き渡る。
見ると両腕が震え、拳がその内砕けてしまうのでないかと思うほど
強く握り締められている。

「カズマはこのふざけたバトルロワイアルに乗った男……
この防護服を元々支給され、何か不可思議な力を持つ男と相打ちになった。
最後までその信念を……反逆を貫いて。……俺は只見ている事しか出来なかった」
シルバースキンで表情は見えないが、恐らく後悔の念で一杯なのだろう。
そう感じさせるほどアミバの言葉は悲痛で、痛々しいものであった。

「……そうか……」
この状況で最善の選択肢がたった今潰された――カズマが死んだという事を
聞かされ劉鳳は再びその重い足取りで歩を歩める。

「待て。どこへ行く? 」
先程の平次とほぼ同じ質問をアミバは発する。

「一刻も早くあの二人を断罪する。
奴らとシェリス、ブラボー、桐山が出会わないうちに」
「その疲弊しきった身体でか? 」
「そうだ、悪を断罪するのが俺の正義。なら、行かないわけにはいかない」
「ならばこのアミバの今為す事は……お前を止めることだな」
そういい終わるとアミバはその体型から予想も付かない、柔軟な
動きで大地を蹴り跳躍。
数メートル先を歩いていた劉鳳の前に着地。
その一連の動作に傍で見ていた平次とタバサは目を丸くしている。

「何のつもりだ……?俺の邪魔をするつもりか? 」
アミバの予想外の行動に不快感をあらわにし、劉鳳が口を開く。

「疲弊しきっているお前に勝ち目はない。
一度負けた相手なら尚更だ。今は身体を休める事が先決だ」
劉鳳の言葉に全く動じず、アミバは依然劉鳳の前に立ちつくす。
アミバが言っている事は正論だろう。
今の劉鳳は戦闘に無縁な平次の目から見ても明らかに満足に闘える状態ではない。

だが劉鳳は――
「休めと言われて、はいそうですかと!! 
割り切れるほどの正義は持ち合わせていない!
邪魔をすると言うのならば力ずくで行くまで!絶影!!! 」
5度目となる絶影の発現。
そのまま絶影をアミバに向かって突撃させた。

「やれ! 絶影!!! 」
絶影の身体から伸びる二本の触鞭が高速、かつ軌道を上下左右に変えながら
変則的な軌道に沿ってアミバを襲う。
だがアミバが纏っているのは鉄壁の防護服シルバースキン。
数枚の六角形の白片を散らばせ、最修復するだけに終わった。

「くっ! これがブラボーの言っていた核鉄の力か。だがまだまだ! 」
更に絶影の攻撃が速まり、アミバに無数の……実際には二本しかない
触鞭がアミバの頭部、胴、両腕、両足など体の各部位を暴力的に襲う。
しかしシルバースキンは破れない。

「どうした? お前の正義はそんなものか? 
カズマはこの防護服に対し反逆を貫き見事打ち破った!
果たしてお前に出来るかな? 」
アミバの挑発めいた言葉が劉鳳に投げかけられ――
「ほざけ! あの男に出来て俺に出来ぬはずがない! 」
その言葉に怒声で劉鳳は応える。

(あの男は……カズマは……命を賭けて死んだという。
なら俺が命を賭けない理由などない! そのためにはこの目の前の男を沈黙させる! )
決意を更に熱く、強く、固いものにさせ――
「うおおぉぉぉぉぉーーーー!!! 絶影! 絶影! 絶影ッッッ!!! 」
絶影の触鞭を更に加速! 残された僅かな体力、気力を振り絞り、
最早軌道すらわからない程圧倒的な速度でアミバを襲わせる。

「俺はこの防護服を纏った時に決めていた……」
絶影の触鞭の雨を一歩一歩確実にアミバは劉鳳に向かって歩いていく。
絶影の攻撃を全く回避せずにその全てを己の身に受け止める。
だがシルバースキンは白片が弾ぜるだけで破れようとはしない。

「カズマのような……お前のような信念や正義を持つ者は決して死なせない」
シルバースキンは本来の力ならミサイルに耐えられる程の硬度を誇る。
例え首輪による制限が掛かっていようと同じ様に首輪の制限を受け、
今までの激戦により既に疲弊しきっている劉鳳が動かす絶影の攻撃を
受けきることは決して不可能ではなかった。
何よりアミバの感情の高ぶりが更にシルバースキンの硬度を上げていた事が
最大の要因だった。

「俺はお前たちの様な者と共にあの老人を倒してみせる!それが俺の…………」
そう言ってアミバは突然加速を開始。
その行動に劉鳳は驚き、次なる手――絶影の力を開放させようとするが――
「信念!そして…………反逆だ!!! 」
シルバースキンの硬度とアミバの徒手空拳の技術が合わさった正拳突き。
満身創痍の絶影には最早回避する余力もなく、そのまま正拳突きが
直撃し、絶影が粉砕される。
再び絶影が破壊された事により、劉鳳に大きな疲労が降りかかり劉鳳の
体が前のめりに倒れる。

(反逆だと?…………カズマと同じ事を言うのか…………? )
意識が薄れていく中、劉鳳はそう思いながら……意識を失った。
◇  ◆  ◇

「アミバはん、やっぱやりすぎやったんちゃうか?まだ起きへんで」
「むぅ…………手加減出来る様な状況でなかったからな」
「それでも他に方法はあった」
「…………すまん」
今アミバ、平次、タバサはとりあえずの情報交換を終え、疲労の蓄積により気絶した劉鳳を取り囲む
様に座っている。
また才人の墓も簡素ながらも作り、今は土に埋もれて安らかに眠っている。
その際、才人の亡骸の傍にデイパックが落ちているのを三人は見つけ、何かに使えるだろうと思い
今は平次が持っている。
そしてアミバは今シルバースキンを纏ってはいない。
何故なら劉鳳の胸の上には二つの核鉄――シリアルナンバー100と61の核鉄が
劉鳳の治癒力の促進を行っていたからだ。

「まぁ何にせよアミバはんや劉鳳の様な腕っぷしが強いのと合流出来てよかったわ!
ここには自信あるけど流石のオレでもあんたらほどの奴に襲われたら一巻の
終わりやからな。な!タバサ」
自分の頭をコンコンと小突きながら平次はタバサに話を振る。

「うん」
と短くタバサは応えるが彼女には若干の不安もあった。
それは劉鳳やアミバが突然襲ってきたらという仮定の話。
まだ出会って数時間しか経っていないので完全には信用出来ないのも仕方がない事だろう。
これは平次についても当てはまるがどうやら彼は特別な力は持っていないので
然程注意する必要もないだろう。
だが劉鳳やアミバに襲われたら、杖もなく使い魔もない今の自分には
恐らく死が待っている。

(やっぱり……一刻も早く杖を手に入れる、もしくはキュルケと合流しないと)
密かに、誰にも気づかれずにタバサは更に決意を固めていた。

「俺もお前たちのような者と合流できて嬉しい……
服部! タバサ! 必ず首輪を外し、あの老人に目に物を見せてやるぞ! 」
自分の言葉に頷く服部とタバサを、そして自分の目の前に揺るぎない
正義を持つ劉鳳を見てアミバの表情に思わず笑みがこぼれる。
同じ志を持つ仲間との出会い……今のアミバにとってこんなに嬉しい事は
なかった。

アミバ、劉鳳、平次、タバサの4人をこれからどの様な運命が待っているか
…………それは誰にもわからない。
只…………運命の歯車は回っている。確実に、確実に…………。


【C-8 西部/1日目 午前】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:気絶、疲労極大(核鉄×2により回復中)、全身にダメージ、深い後悔 、右の拳から出血、右手の指の骨を骨折
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2
[思考・状況]
1:変電所へ向かい、防人・桐山と合流。
2:村雨、散を断罪する
3:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード)は断罪、弱者(シェリス)は保護
4:シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
5:平賀才人の伝言をルイズに伝える。
6:シェリスに事の真相を聞きだす。
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・平次・タバサと情報交換しました。


【アミバ@北斗の拳】
[状態]:唇が切れているが心体健康、強い決意、今までの自分に強い自己嫌悪、疲労小
[装備]:ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険(ポケット内)
[道具]:支給品一式(×3)(一食分消費済み)携帯電話、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく、ノートパソコン@BATTLE ROYALE(これら三つは未開封) ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、
[思考・状況]
基本:ゲームの破壊、主催者の殺害。
1:ゲームに乗っていない人物と協力する。
2:ゲームに乗った人物と遭遇した場合説得を試みて駄目なら殺害する。
3:ケンシロウとラオウには出来れば会いたくないがいざとなったら闘う覚悟はある。
4:劉鳳が気が付くまで平次・タバサとこれからどうするか具体的に話し合う。
[備考]
※参戦時期はケンシロウに殺された直後です
※『スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険』の説明書は存在しません。
※平次・タバサと情報交換をしました

【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳  バイクCB1000(現地調達品)
[道具]:首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、支給品一式 、色々と記入された名簿
才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリックを解除する。
1:シェリスを発見し、真実を明らかにする
2:江戸川コナンとの合流
3:劉鳳が気が付くまでアミバ・タバサとこれからどうするか具体的に話し合う
[備考]
※劉鳳からシェリスの名前を知りました。
※劉鳳と情報交換をしました
※劉鳳、アミバ、タバサの事は全面的に信用しています


【タバサ@ゼロの使い魔】
[状態]:健康 、才人の死に少しショック。
[装備]:無し
[道具]:ネクロノミコン(67ページ読破)、液体窒素(一瓶、紙状態)、支給品一式 、色々と記入された名簿
[思考・状況]
基本:元の世界に帰る。
1:劉鳳が気が付くまでアミバ・平次とこれからどうするか具体的に話し合う
2:杖を入手する
3:キュルケとの合流。ルイズについては保留
4:シェリスからマントとナイフを返してもらう
[備考]
※杖をもっていないので、使える魔法はコモン・マジックのみです。攻撃魔法は使えません
※劉鳳からシェリスの名前を知りました。
※劉鳳と情報交換をしました
※平次、劉鳳、アミバの事は完全には信頼していません(信頼の度合いは平次>劉鳳=アミバ)
※劉鳳、平次、タバサの名簿には以下の内容が記載されています。
名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・平次 ・灰原
赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
緑色の丸印が付けられているのは、蝶野


100:気に入らない奴ほど、コンビネーションの相性はいい 投下順 102:偽りの脱出
099:明日を生きる君に 時系列順 102:偽りの脱出
099:明日を生きる君に 劉鳳 102:偽りの脱出
089:眠れる奴隷? アミバ 102:偽りの脱出
099:明日を生きる君に 服部平次 102:偽りの脱出
099:明日を生きる君に タバサ 102:偽りの脱出