人の名前とか間違えるの失礼だ ◆uiAEn7XS/.



ベッドにうつぶせに寝かせた女の頭部、乱雑に巻かれた包帯を慎重に取り外す。
生乾きの血が髪の毛や包帯に絡みついており、剥がすとぺりりりと音を立てた。
次に傷口周辺の血をお湯でぬらしたタオルで丁寧にふき取る。
後頭部にある、頚椎と頭蓋骨の境目が出血点のようだった。
そしてオレンジ色のつややかな髪を掻き分けて傷口を露出させる。
やはり出血は止まっていない。じわじわとにじみ出ている様子が見てとれた。
適切な処置を施さなければ、まずい事になるかもしれない。
血をふき取ってから、傷口に指を僅かに差し込んだ。
傍らで食い入るように見つめる、もう一人の少女が息を飲む。
北斗神拳の真髄は、肉体を意のままにコントロールする事にある。
血液を操り、神経組織を操り、筋肉を操る。
それが自分のものであっても、他人のものであってもだ。
幸い重要な血管などは傷ついていない。
頭蓋骨や脳に出血があれば、血の流れの異常や、傷口から発する僅かな熱を感じ取る事が出来るからだ。
問題ないならば、やるべき事はこの傷口を縫うなりして出血を止める事だ。
秘孔を突いて出血を止める事は出来るが、一時的な処置に過ぎないだろう。
「針と糸は?」
傍らの少女に尋ねる。
すると、裁縫針とたこ糸を差し出した。
「……無理だな。大きすぎるし、太すぎる」
針は大きさが5cmほどもあり、このような精密な作業に向いているとは言いがたい。
さらにたこ糸の太さもそれに拍車をかけている。
もっと捜せば、よい大きさのものがあるかもしれないが、あまり時間をかけすぎるのも危険だ。
「気にするな。次善の策だがやりようはある」
暗い表情でうつむく少女を慰めてから、再び傷口に向き直る。
まずは、ぱっくりと開いた傷のすぐ脇に生えている髪の毛を、数本つまんでより合わせる。
そして傷口を挟んで逆サイド、もう一度同じ要領で髪の毛をより合わせると、傷口の左右にそれぞれ一本ずつ、計二本の糸ができた。
これらを結び合わせる事で、髪の毛の糸が傷をふさぐ役割を果たしてくれる。
さらに傷に沿って縦にずらしながら結び目をいくつか作ると、その傷口は見事に結合された。
あとはそこにガーゼを当てて、さっきと同じく回りの髪の毛を使って、患部に縛り付ける。
「よし……終わりだ」
長さが余った分の髪の毛を鋏で切り落とし、治療を終えた男――ケンシロウは大きく息をついた。

   * * *

「この女を助けたいのか?」
見るからに憔悴した桃色の髪の少女――神楽というらしい――が「自分がやった」と告白して数秒後。
ケンシロウは気絶したベッドの上の女に視線を移して、そう言った。
「あ、当たり前アル!私は人殺しなんかする気ないヨ!……そんなつもりは……本当に……」
強く否定しようとして、語尾が段々か細くなる。
そんな神楽を見てケンシロウは、どうやら殺意があったわけではないようだ、と大方の事情を察した。
おそらく、このような異常事態に巻き込まれてパニックを起こし、自分の身を守ろうとして相手を傷つけてしまったのだろう、と。
ケンシロウのような修羅場馴れした人間ならともかく、この少女達のようなものなら自分を見失ってもおかしくない。
「わかった。ならばまず、お湯を沸かして清潔なタオルを捜してきてくれ。できれば針と糸も欲しい」
「え……ひょっとしてお前、お医者さんアルか!?筋肉眉毛の癖に!?」
「……俺の兄が医者だった。その兄ほどではないが、よほどの怪我でなければ何とかなると思う」
さりげなく失礼な事を言う神楽だが、その目にためた涙を見て、ケンシロウはスルーすることにした。
「じゃ、じゃあこのマンションの部屋をかたっぱしから捜してくるアル!タオルと針と糸と、あとお湯をわかせばいいアルか!」
「よろしく頼む……それと俺の名はケンシロウ。ケンでいい」

それが数時間前のことである。

   * * *


「う……」

「あ、気が付いたアル!マダオ!この指何本に見えるアルか!?」
見慣れない風景が視界にぼんやりとうつった。
自分を覗き込む二つの顔。
一つはピンクの髪の少女。自分の悪友によく似た、でも全然違う変な奴。
「こ……こは……?」
「大丈夫だ。安心してくれていい。落ち着いてゆっくり休んでくれ……マダオ、でいいのか?」
もう一人、面長で太い眉毛が印象的。……あら、ちょっといい男じゃない?
……っていうか、マダオって何?
なんであたしに向かって言うのかしら。
そもそも、どんな意味だっけ?
「そーそー、ゆっくり休むアル。ただでさえチチに無駄な栄養蓄えてるんだから、それを使って早く治すネ」


…………思い出した。


「誰がマダオよッ!あたしはキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー……」


ずっきん。


キュルケは最後まで喋る事が出来なかった。
大声をあげた拍子に、後頭部に痛みが走り、思わず涙目でうずくまってしまったからだ。

   * * *

キュルケが落ち着いてから、三人はそれぞれの自己紹介を済ませ、今後の方針を決める事にした。
既にこの場のまとめ役といった感じのケンシロウが、まずは口を開く。
「キュルケのこともある。このマンションが放送で禁止エリアにならない限り、しばらくはここに潜んでいたほうがいいだろう」

「放送?」
「禁止エリア?」

二人とも「何それ、おいしいの?」と言わんばかりの表情だ。
ああ、そういえば放送直後に出会った時の様子からすれば、聞き逃していても無理はないな、とケンシロウは思い至った。
およそ6:00ごろに、あの老人の声がこの町中に響き渡っていた。
内容はその時間までに死んだ人間の名前と数、そして侵入すると首輪が爆発する、禁止エリアの発表。
そのことをケンシロウは二人に説明した。
「ちょ、ちょっと待って。なんでそんな事があのジーさんに分かるのよ?」
「……おそらく、この首輪が発信機になっているのだろう。これで奴は俺たちを監視しているのだと思う」
「ハッシンキ?……よく分からないけど……そう簡単には外せなさそうね」
エニグマの紙のこともあり、キュルケは発信機を何らかのマジックアイテムのことだと解釈した。
ケンシロウは、まさかキュルケが魔法の存在する世界から来たとは思っていない。
「だろうな。そして、今まで死亡した人間の名前だが……この名簿の中に、お前達の知り合いはいるか?」
沈黙。
キュルケと神楽がそれぞれの手にある名簿を凝視したまま、それはしばらく続いた。

「……いるわ」
「私もアル……」

「……そうか」
これから言う名前の中に彼女達の友人、知人、ひょっとしてもっと大切な存在がいるのかもしれない。
そう考えるとケンシロウに幾ばくかの躊躇いが生まれる。
「大丈夫。言って、ケン。いつかは知らなきゃならない事だし。それに信じてるもの、死ぬわけないって」
「私も……大丈夫アル!万屋銀ちゃん一家はそう簡単にくたばらないヨ!ヅラは知らないけど」
「……わかった」
ケンシロウがゆっくり、はっきりと放送で告げられた名を読み上げる。
二人はその間、食い入るように名簿を見つめていただけだった。
「……以上だ」
ケンシロウの声を合図に、二人から安堵のため息が漏れる。
どうやら知り合いは今のところ、全員無事らしい。
「ケンは知り合い、いなかったの?」
「ジャギという男……かつて俺が兄と呼んだ男だ」
「……」
「気にするな。死んで当然だった男だ。……それに奴はこの殺し合い以前に、既に死んでいるはずだ」
「え?」
ケンシロウは一旦、目を閉じてから二人を順番に見た。
これから言う事は冗談ではないと、念を押した上で言葉を続ける。
「俺には三人の兄がいた。血はつながっていなかったがな。
 まず今のジャギに、医者だった次兄のトキ。
 最初の部屋で、あの老人に向かっていった金髪の大男が、長兄のラオウだ。
 ……彼らは全員死んだはずだ。……全ての死に様を目の前で見届けたのだから」
淡々と。
ケンシロウの独白が静寂の空間に染み渡った。
「だが、奴は生きている。他にもアミバ――この男も死んだはずだ――に会ったが、紛れもなく本物だった」
「ケン……お前、何言ってるアルか?」
こんな時に冗談をいうような人間には見えない。
神楽とキュルケは、ケンシロウの真意を測りかねていた。
「あの老人は何か得たいの知れぬ、とてつもない力を持っている。
 非常識ではあるが、死人を生き返らせることも……出来るのかもしれん」
再度、沈黙。
そんな相手に歯向かうことなどできるのか。
この殺し合いに乗るしか道はないのか。
だが――


「ふざけんな、この筋肉眉毛ェェェェ!!」


「ちょ、神楽……」
「そんな陰気臭い顔して、ビビッたアルか!?
 だからどうしたヨ!その程度の事が怖くて万屋銀ちゃんは勤まらないアル!
 銀ちゃん、言ってたヨ。生きてても魂が折れたら死んだも同然ネ!
 あの爺のふざけた殺し合いに乗るなんて、死んだ方がましアル!!」
一気にまくしたてた神楽の荒い息使いだけが場を支配していた。
そしてやがて、ケンシロウが穏やかな笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。
「そうだな。そのとおりだ」
「分かったアルか。全くこれだから大人は、世間の泥にまみれて肝心な事が見えてないネ」
「そうね~あたしを殴っておいて、謝りもしない子供もここにいるけどね」
横槍を入れてきたキュルケの言葉に、顔に縦線が入る神楽。
「う……」
良心の呵責もあり、いつもの調子で言い返すことが出来ない神楽であった。
「謝っておいた方がいいぞ……いい機会だ」
ケンシロウに余計なこと言いやがって、と一睨み。
それからキュルケのほうに向き直り、何やらうつむいたままで、もごもご言っている。
キュルケもケンシロウも何も言わない。
神楽が意地っ張りな性格だということは、今までの短いやりとりでも、何となく分かっていたから。
ただ、神楽自身がきっちりとけじめをつける、その瞬間を黙って見守る。
そう思っていた。


「…………ごめんなさい」
「……うん」


キュルケは穏やかな笑顔で頷いたのだった。


【F-5 マンションの一室 一日目 昼】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない
1:これからどうするか考える
2:ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎他ゲームに乗った参加者を倒す
4:助けられる人はできるだけ助ける
5:乗ってない人間に独歩・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。

【キュルケ@ゼロの使い魔】
{状態}後頭部打撲(治療済) 貧血気味 マントが破られている
{装備}タバサの杖@ゼロの使い魔
{道具}支給品一式
{思考}
1:取り敢えず休憩したい。
2:神楽をどうにかする。せめて呼称だけでも言い改めて欲しい
3:タバサ、サイト、ルイズと合流する
4:危害を加えて来ない限りは仕掛けない。
基本行動方針
学院に四人で帰る。

【備考】
軽い頭痛と出血により、行動に支障
今はマンションの一室のベットで寝ています
首輪をマジックアイテムだと思っています

【神楽@銀魂】
{状態}疲労 精神的に少し持ち直した
{装備}木刀正宗@ハヤテのごとく 
 ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(30×2)@HELLSING
{道具}支給品一式 拡声器@BATTLE ROYALE
{思考}
1:銀ちゃん(銀時)と新八とヅラ(桂小太郎)を探す。
2:帰る方法を考える
3:殺し合いに乗る気は無い。
基本行動方針
殺し合いに乗っていない人は守る。乗っている人は倒す。


【備考】・原作18巻終了後から参戦。


105:桐山の戦略 投下順 107:DIOの奇妙なバトルロワイアル~帝王は手段を選ばない~
105:桐山の戦略 時系列順 107:DIOの奇妙なバトルロワイアル~帝王は手段を選ばない~
087:悪魔の子 ケンシロウ 125:涙を拭いて
087:悪魔の子 キュルケ 125:涙を拭いて
087:悪魔の子 神楽 125:涙を拭いて