大切なもの――SOLDIER DREAM――(後編) ◆3OcZUGDYUo



エリアD-3の七人は、突如視界に入ってきた光の柱と花火に驚き、暫しの静寂が場を支配していた。
そして逸早く行動に出た少年が一人即座に出口の方へ駆けていく。

「どこへ行く気だいあんた? 」
そう言って赤木はもう既に出口の目の前に到着した少年、ハヤテに問いかける。

「あの光の柱は多分カズキさんのサンライトハートって言う武器によるものです!
カズキさんは無意味にあんな事をするような人じゃない……
なら! きっとナギお嬢様とカズキさんに何か不都合な事が起こったはず! 僕が助けに行ってきます! 」
カズキとの交流でサンライトハートの存在、能力を知っていたハヤテが、赤木の質問に早口で焦りながら答える。
あまり長い時間一緒に居たわけでもなく、自分の女装が見破れなかったがとても人が良い人で、
ハヤテにとって紛れもない仲間であり、友達でもあるカズキ。
そして親の借金で路頭に迷っていた自分に執事という名誉ある仕事を与えてくれた、
自分が守ると約束した、可愛らしい三千院家のご令嬢、ナギお嬢様。
この二人が危機に迫っている可能性があるというのだ。
数分前から二人の事を気に掛けていたハヤテが、咄嗟に行動に移るのは無理も無い。
赤木が更に何か言っているのを殆ど気に留めず、ハヤテは勢い良く出口のドアを開け、
喫茶店から飛び出し、一般の高校生の速度を遥かに上回る速さで駆けてゆく。

一人減ってしまった喫茶店で赤木が再び口を開く。

「……ナギお嬢様とカズキというのは? 」
「俺たちの同行者だ。今はS6駅で待っている」
「……なるほど」
赤木の質問に承太郎が極めて簡潔に答える。

(という事はあの執事服の男はそのナギお嬢様とやらの執事で、主の危機に飛んでいったということか……そういう事なら不自然じゃあない)
心の中でそう結論付け赤木は……更なる喜びを感じていた。
一気に六人の人間と接触することに成功し、更に後二人増えるという。
またそのうちの一人、カズキという男が二エリアも離れたこの喫茶店にああまではっきりと、
光の柱を見せる事が出来る能力を持っているらしい。
今この場には空条、執事服の少年、パピヨン、ピエロの女、鳴海、自分と戦闘が出来ると思われる人物が六人……
カズキという男を入れれば七人となる。
執事服の男は戦闘が出来るかどうか確証がないが、デイパックも持たずに飛び出していった。

きっと武器に頼らずとも何らかの力があるのだろう。
そして極めつけはこなたという女、ピエロの女の隣に居る少年、ナギというお嬢様が自分たちの輪の中に居る事だ。
彼女たちのような非力な存在が自分達と行動を共にしている事で、この先会う人物にも自分達は殺し合いに乗っていないという無言、
且つ効果的なアピールが出来るからだ。

(間違いない……今の俺達はツイている。ツキすぎて恐怖を覚えるくらいにな……)
あまりの幸運に若干の不自然さを覚えながら、赤木はそんな風に考えていた。
そして一人の男が席をゆっくりと立ち上がる。

「……なら俺も行かせてもらうぜ?
あの二人が死んだら目覚めが悪くなりやがる気がするからな。用が済んだら戻る」
自分とハヤテの分のデイパックを持ち、承太郎はそう言って悠然と出口に向かう。
承太郎の歩みを止めるものは誰一人として居ない。
新しい合流者が二人居るというのだ。
それならばその二人が到着してから情報交換をしても、問題は無いとパピヨン以外の四人は考えたからだ。
承太郎も出て行き更に一人減った喫茶店。
そこにパピヨンが口を開く。

「……やれやれ。さてそれで俺たちはどうする? 」
パピヨンもカズキの事が気にならなかったわけでもない。
だが既にハヤテと承太郎の二人が向かい、カズキがたとえナギという足手纏いを連れていても、やすやすとやられるわけもないので
自分は此処で赤木達を本当に信用に値する者達か確かめる方を選んだのだ。

「そうだな……」
全員が揃っていないこの現状で、特にやる事が見出せない赤木はパピヨンの言葉を受け、これからの行動を思案するが――
ガアァン!!!
赤木の思案をテーブルを、力強く叩いた鳴海の拳により生まれた轟音が妨害した。
純粋な人間ではなく、人形破壊者(しろがね)である鳴海の拳を受け、無残にもテーブルは破壊される。
「てめぇら……何をさっきから落ち着いていやがる! 」
今まで一言も言葉を発していなかった鳴海が、怒りを露にしながら叫ぶ。
別に鳴海が元々無口であったから今まで沈黙を貫いてきたわけではない。
交渉など頭を使う事は同行者である赤木の方が適任だと鳴海は思っていたからだ。
だが今鳴海は大声を張り上げている。
鳴海には今、自分の目の前で平然と会話をしている赤木達が許せなかった。

「……どうした? 鳴海? 」
赤木が心底不思議そうな表情で鳴海に問いかける。
赤木以外の三人も同様な表情を浮かべている。
そしてそんな三人の行動が更に鳴海を苛つかせる。

「あの花火の事だ! 何で全くその事には触れねぇ!? 」
「嗚呼、あの花火か……」
鳴海の激しい口調で吐き出される言葉に、半ば呆れたように赤木は言葉を返す。
そしてそれはパピヨンも同じだった。

「鳴海だったか? 冷静に考えてみろ。今は太陽が昇っているが、あんな目立つような事を行うのは、
この状況を把握出来ない馬鹿かよっぽど腕に自信があり、この殺し合い乗った人物だろう。
そんな人物にわざわざ俺達から接触するメリットはない」
鳴海も馬鹿ではない。
目の前の男、パピヨンが言う事にも一理あるのもわかっている。
だが彼の頭脳には決して無視できない『IF』のケースが存在する。

「確かにそうだ……だがな! あの花火がこのイカレた殺し合いに耐え切れず、寂しさから思わず打ち上げたものだったらどうする!?
てめぇらは今もあの場所で泣きながら俺達の助けを求めてる人が居ないって絶対に言い切れるか!? 」
人を笑わせないと生きていない奇病、ゾナハ病。
鳴海は自動人形が撒き散らしたゾナハ病で、次々と子供が死んでいく地獄を見てきた。
もう二度と罪もない人達を死なせたくない一心で、鳴海は仲間達と共に自動人形と闘ってきた。
その決意は今も変わることは決してない。

(全く……こいつも武藤のように偽善者か。一番嫌いなタイプだな)
鳴海の怒声を受け、パピヨンは心の中で毒を吐く。
自分の力で全てを救う事が出来ると信じている人種……考えただけでも反吐が出そうだった。

「なら俺は一人でも行くぜ。1%でもあそこに助けを求めてる人が居る可能性があるなら俺は迷わず行ってやる! 」
すでに自分のデイパックを持ち、鳴海は出口に向かっている。
そして……更にもう一人席を立つ者が居た。

「エレオノール……」
思わず勝はエレオノールの行動に驚き、彼女の名を言ってしまう。
もしかして力づくで鳴海を止めるつもりなのか?
そう思いパピヨン、赤木、勝は慎重に状況を見守ろうとエレオノールの次の行動を観察する。
そしてエレオノールは鳴海の方を見つめ、その小さな口を開く。

「私も行こう」
「……は? 」
エレオノールの思いがけない言葉に、鳴海はさっきまでの勢いとはうって変わって、
思わず間抜けな声を上げ、あんぐり口を開いたままになる。
他の三人も程度の違いはあれども、エレオノールの言葉に驚いていた。
四人の驚きなどどこ吹く風と言った調子で、エレオノールは自分のデイパックを持ち、出口を目指す。
堂々とした足取りで確実に。

「お前……」
直ぐ傍までやって来たエレオノールに鳴海は声を掛ける。
まさかこのエレオノールという女が、自分の考えに賛同してくれたのが不思議で、尚且つとても嬉しかったからだ。
感情がないしろがねーOとどことなく似たような印象を持ったこのエレオノールという女。
だが彼女は違う。
この女なら安心して背中を預ける事が出来ると、鳴海は心の中で嬉しさに浸っていた。
そして再びエレオノールの口が動く。

「勘違いするな。お前が危険人物と手を組み、私達を裏切る事がないよう見張るためだ」
前言撤回。
レオノールは別に鳴海の意見に心を射抜かれたわけでもなく、只鳴海が完全には信用できないから一緒に行くと言った。
同じ事は説明不足な自己紹介をした承太郎が、出て行った時にも言えたが、
鳴海には不意打ちも喰らっていて、彼に対しての不信感の方が強かったからだ。

(ちっ!……そういうことかよ)
エレオノールの言葉を聞いて、鳴海の心で生まれた希望という銅像が音を立てて崩れていくのを彼は感じた。
だがエレオノールの話はまだ終わっていなかった。

「しかし……もしあの花火を勝お坊ちゃまが打ち上げたとしたら……私は行って勝お坊ちゃまに会わなければならない」
エレオノールの言葉に鳴海は必要以上に反応する。
勿論、エレオノールが守りたい人が居るという事実もそうだがそれよりも――
(勝だと……? 白銀の記憶にもなかったのになんでこんなに気にかかる……)
いくら考えてもそんな名前は聞いた事がなく鳴海は混乱する。
だが今はそんな事を考えている暇はない。

「その勝ってのはお前の何だ? 」
エレオノールに向かって鳴海は問いかける。
この質問の答えで鳴海は、エレオノールを仲間として認めるかどうかを決めようと考えていた。
まぁ……答えは決まっているようなものだが。

「私の……守るべき存在……大切な人だ! 」
鳴海の答えは決まった。
迷う事はない。
このエレオノールという女にも守るべき人があるのだ……なら共に俺も守っていけばいいさ。
そう思い鳴海は――
「行くぜエレオノール! モタモタしてると置いていくぜ! 」
「くっ! 待て! 貴様! 」
一気に出口のドアを押し開け、全速力で花火が打ち上げられた方向、エリアD-2に向けて駆け出し、
それを慌ててエレオノールが、同じように駆け出し後を追う。
駆けてゆく二人を勝は呆然と、赤木とパピヨンは再び呆れた様子で見届けていた。

「全く……単純な奴らだ。だが……それもまたおもしろい」
そう言って赤木は何と……自分のデイパックを持って、出口から外へ出て行った。

「あ! 赤木さん!? 」
赤木の行動に驚き勝は彼を追いかけ出口の前に辿り着き、パピヨンも勝に続いた。
今までの赤木の様子から彼が、鳴海達と同じ行動を取るとは思ってもいなかったため、勝とパピヨンが驚いたのも無理はないだろう。
そして出口のドアを勢いよく開け、出口から数メートル先を歩いていく赤木にパピヨンが声を掛ける。

「お前はあいつらと違い利口だとおもったんだがな? 」
心なしか落胆した様子で言葉を投げかけ、赤木の反応を待つ。
実際赤木には偽善者のような甘い考えはなく、どちらかというと自分と似たようなタイプだと思っていたため、パピヨンは失望していた。
そして赤木が返答する。

「確かに俺は鳴海達のようなお人好しじゃあない。
他人を助けるために自分が犠牲になる自己犠牲愛なんて言う、つまらない美学はそこら辺の犬にでも食わせておけばいい……だが」
一旦一呼吸をおき、赤木は言葉を区切り、直ぐに次の言葉を発する。

「鳴海とは仮初と言えども信頼関係を築いた仲だ。
未だ俺はあんた達とは残念ながら信頼を結べていないんでね。
そして鳴海がもし死ぬ事となれば、あの老人への抵抗への力が一つ失われる事になる……
なら……俺がフォローしてやればいいだけだ」
自分の目的のためなのか、鳴海の身を案じての行動なのか良くわからない行動方針を、一点の曇りもない表情で赤木は言ってのける。
だがパピヨンと勝の疑問は未だ解決されていない。
確かにあの光成という老人に、全く臆せず抵抗を行いそうな鳴海の存在はこの殺し合いを潰すには必要な存在だろう。
そこは赤木の言う事は理解できる。
だが問題は――
「しかし赤木、お前には闘えるだけの力があるのか? もしや麻雀とゲームしか出来ないというのは嘘か? 」
そう、闘いの中で鳴海をフォローするという事は、当然自分自身で戦闘を行う必要が出てくる。
しかし目の前の赤木は、自己紹介の時も戦闘技術はないと明言していた。
指示を飛ばすにしても闘いの知識を持たぬ者には到底無理な事でもあるので、そんな赤木が鳴海のフォローなど出来るわけがない。
そしてパピヨンのもっともな疑問に赤木は平然と答える

「確かに俺は腕っぷしにはそれなりに自信があるがそれだけでは足りないだろう……しかし、こんな手もある」
そういって赤木は鞄から懸糸傀儡グリモルディを取り出し、懸糸傀儡を操るために、必要不可欠な懸糸を両の指に装着。
即座に赤木はグリモルディに飛び乗る。

「そ! それは!? 」
「……こんな物を隠し持っていたとはな」
「まだ支給品の話をしてはいなかっただろう……更にまだ俺の手は尽きちゃあいない」
勝の驚きに満ちた、パピヨンの不機嫌な言葉に多少苦笑いをしながら赤木は答え、自分のポケットを漁る。
そして赤木のポケットから銀白色に輝き、六角形の形を模った金属が顔を出し、彼の手によってパピヨンと勝を見下ろす格好となる。

「! 核鉄だと!? 」
赤木と距離が離れているためシリアルナンバーまでは正確に確認出来ないが、核鉄だという事をパピヨンは確認する。
あれがシリアルナンバーLXI(61)、ニアデス・ハピネスの核鉄だとすれば……パピヨンの表情に自然と笑みが零れる。
まずは交渉であの核鉄を譲るように赤木に持ち掛ける。
もしその交渉が失敗するのであれば……答えなど考えるまでもない。
思わぬ幸運が訪れてきた事にパピヨンの興奮は高まっていく。

「武装錬金」
パピヨンの期待に満ちた表情、そして勝のこれから何が起こるか理解できない驚きの表情に、
見守られながら赤木が錬金術により精製される武器、武装錬金を発動する。
核鉄が瞬時に分解、そして赤木の両足に輪のような物、モーターギアが装着される。

「……ふん」
ニアデス・ハピネスではなく、確か中村剛太という男の核鉄である事に落胆を隠せないパピヨンは、
興味を失くしたかのように視線を赤木から逸らす。
そして勝は目の前で起きた武装錬金に目を丸くし、驚いていた。
そして二人の反応を見て、満足したように赤木が言葉を発する。

「このモーターギアなら緊急の逃走にも使えるからな……様子を見たら直ぐに戻る。では……また会おう」
そういい残し赤木はグルモルディを操り、鳴海とエレオノールの後を追いかけ北の方へ走り去っていった。
◇  ◆  ◇

「ハヤテ、てめーに聞きてぇ事がある」
「なんですか? ジョジョさん? 」
ナギとカズキの様子を見に行くために、承太郎とハヤテが並列して走っている。
初めはハヤテの方がスタートが早かったため彼と承太郎との距離は、離れていたが承太郎の大声にハヤテが思わず反応し、
立ち止まったせいで今は並列の状態だった。
そして承太郎に自分が忘れていったデイパックを渡され、何度もお礼のお辞儀をして今に至る。

「てめーは何であのナギの執事なんかやっている?
あんなじゃじゃ馬のお世話なんて真っ平ごめんだと思うぜ」
以前行動を共にしていたため、まるでエジプトへの旅の途中で、引っ付いてきたガキのようなナギの扱いにくさを承太郎は実感していた。

「ハハ……実はちょっと親の借金で路頭に迷ってた時に色々あってお嬢様に拾って貰って」
「それで親の借金を返すために執事をって事か……つまらねぇ人生だな」
承太郎のあまりにもストレート過ぎる指摘に、まるで大きな釘が胸に突き刺さったような表情をハヤテは浮かべるが、
彼は片手で頭を掻きながら承太郎の疑問に答える。

「前にも同じような事を言われました……でも僕はあの時、あの場所で、あのお嬢様と出会えたから色んな人達……
マリアさんやヒナギクさん達にも出会う事が出来たんです。だから僕にとって……」
そこまで行ってハヤテは、元から速かった足の速度を更に上昇させ、承太郎を完全に追い抜く。
只の高校生とはとても思えない足の速さに、驚く承太郎を尻目にハヤテが叫ぶ。
とびっきりの笑みを浮かべながら。

「お嬢様は大切な存在なんです! たとえ他の人から見て僕の人生が無駄のように見えても……それは無駄なんかじゃない!
僕にとってもの凄く意味があるものなんです! だから僕は……一秒でも早くお嬢様の元に辿り着き、お嬢様をお守りします! 」
そう叫び、また更にハヤテの速度は着実に上昇する。
そのハヤテの姿を見て承太郎は溜息をつく。

「……やれやれだぜ」
だが承太郎の眼にはハヤテに対する負の感情はない。
どこか穏やかな表情でハヤテを見つめていた。
◇  ◆  ◇

「エレオノール!てめぇぇぇには足りねぇものがある! 」
「何だというのだ!? 」
承太郎、ハヤテ同じように、同じころ鳴海とエレオノールは花火を打ち上げた人物を確認するために走っていた。
二人ともあまりお互いの事は知らず、特にエレオノールは鳴海に良い印象を持っていないので、傍から喧嘩をしているかのように見える。
確かにエレオノールの方はたった今、鳴海に失礼な事を言われたから表情は険しい。
だが対照的に鳴海の表情は晴々としたものだ。

「てめぇは勝って子供を守るって言ったな!? 」
「言った! それがどうした!? 」
「なら! もっと欲の皮をつっぱってみろ! 」
「? どういうことだ!? 」
鳴海の最後の言葉の意味が全く理解できず、エレオノールは怒声に似た勢いで鳴海に聞き返す。
大声で、しかもかなりの速度で走っているが二人には一切の息の乱れはない。
流石は加藤鳴海、才賀エレオノールと言ったところか。
そして口角を上げ、鳴海がエレオノールの方へハヤテと同じようにとびっきりの笑顔で返答する。

「どうせ勝を助けるなら……助けを必要としている他の人達も助けてやろうぜ!
そして一人でも多くの人を、笑顔を助ける事が出来れば……きっと勝はお前にも笑顔をくれると思うぜ!
一生忘れられない……極上の笑顔をな! 」
そう言って鳴海は意気揚々とエレオノールの先を走っていく。
今の所対象者は一人しかいないが自分のためではなく、人を守るためにエレオノールは闘うと、喫茶店でわかった事がうれしかったからだ。

一方エレオノールは鳴海の言葉について考えていた。
確かにもし自分が人を殺すような事になり、その事を勝お坊ちゃまに知られたりでもしたら、お坊ちゃまは自分を拒絶するかもしれない。
だが、見知らぬ人物と手を組むのは裏切りという危険が潜んでいる。
悶々とした考えを持ちながら、エレオノールはとにかく今は走ることにした。
いつか知るであろう答えを求めて。

(……やはり甘い)
鳴海とエレオノールの後方で、グリモルディに乗った赤木はそう判断する。
全ての人を救うのは60人という人数を見れば無理なのは明らかで、既に少なくとも9人の命が消えている。
鳴海の言葉は只の理想論だ。
だが――
(しかしその理想は大勢の人間を動かす糧と成り得る……そこに賭ける価値はある)
そしてグルモルディは走る。
赤木と……赤木の大いなる目的を乗せて。
◇  ◆  ◇

花火が打ち上げられたエリアD-2の中心部。
花火を打ち上げた張本人勇次郎が気の弱い者ならば、卒倒しそうな程の闘気を放ち、悠然と立ち聳えている。
そして勇次郎の視線の先には同じように、尋常ではない闘気を放つ男……いや、少年が一人居た。

「出来ればDIO様に力を貰った後で闘りたかったけどなァ……まぁいいや、闘ろうぜぇ親父……」
「けっ! 暫く見ねぇ内にお喋りになったなぁ……刃牙! 」
言うまでもない、刃牙だ。
お互い言葉を交わし、ゆっくりと歩を相手に向かって歩ませる。
そして――
「親父ぃぃぃぃぃ!!! 」
「刃牙ぃぃぃぃぃ!!! 」
今、このバトルロワイアルで範馬の血が交錯した。
◇  ◆  ◇

「ふあぁ~いやー良く寝た寝た。あれ? お客さん? 」
赤木が出て行き、パピヨンと勝が喫茶店内に戻った途端、ようやくこなたが目を覚まし勝に声を掛ける。

「ああ、暫く俺達と行動を共にする……そう言えば貴様の名を聞いていなかったな? 名前は? 」
訝しげにパピヨンは勝に問いかける。
初対面の人同士が必ずと言っていい程行う質問。
だがその質問は勝にとってとても重大な意味を持っていた。
そう、今までの勝には……

「はい、僕の名は……『才賀勝』です 」
「勝くんかぁ! いや~私は泉こなただよ。よろしく~」
共に行動する者が一人増えて素直にこなたは喜ぶが、一方パピヨンは明らかに勝の方を疑惑の表情で見ていた。
そのパピヨンの反応は当然のものと言えるだろう。
エレオノールという女は、才賀勝という人物を探していると言っていた……ならこのたった今自分を才賀勝と称した子供は何なのか?
一体何故この子供とエレオノールという女は行動を共にしていたのか?

「貴様……」
「貴方の言いたい事はわかります、パピヨンさん」
「……どしたの二人とも? 」
パピヨンの言葉を中断させ、こなたの心配そうな表情を脇目で見て、勝は次の言葉を繋げる。

「僕の話を聞いてくれませんか……? 僕とエレオノール、鳴海兄ちゃんの関係を含めて」
勝が今まで偽っていた自分の名を暴露したのには理由がある。
勝はずっと考えていた。
何故エレオノールと鳴海が自分に対して何の反応を示してくれないかを。
その事を一つだけ矛盾が生じず説明できる推測が一つだけあった。
だが、あまりにもSF小説に出てきそうな、馬鹿げた考えだったのでその推測を排除した。
しかし何の変哲もない紙からオリンピアが出てきたり、光の柱、詳細は知らないがスタンドという謎の能力、そして先程の武装錬金。
勝の思考は次第に変わっていった。

(どれを考えても現代の常識で計りきれない事ばかりだし、僕の世界にはあんなものはなかった……なら!
多少暴論になるけどこの世界は非常識で構成されている……
あの光成というおじいさんは、タイムマシンのようなもので様々な世界を行く事が出来るかもしれない。
そして僕とエレオノール、鳴海兄ちゃんは別の時に連れてこられたんだ! )
自分でもこんな馬鹿げた考えは可笑しいと思う。
けどこの推測なら……今までの不可解な事に辻褄が合う!

(この事がパピヨンさんとこなたさんに信じてもらえるかどうか……いや! やらなきゃいけないんだ!)
パピヨンとこなたの方を向いて、真っ直ぐ勝はその両の目を開き決意を固める。
己の思考の葛藤で、考えに考え抜いた結果、下したあまりにも馬鹿げている推測を信用してもらうために。


大切なもの……それは人によって、背負うものによって、その人の倫理によって違うもの。
その大切なもののために人はどこまで必死に走る事が出来るか……?
その答えを見つけるには……走りきるしかない。
どこまでも……どこまでも……

【D-3 北部/1日目 昼】
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:健康
[装備]:グリモルディ@からくりサーカス 、核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:鳴海、エレオノールと共にD-2エリアの様子を見て、用が済んだら喫茶店に戻る
2:1が成功したら情報交換する
3:このバトルロワイアルに関する情報を把握する(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術
や種類など、なお勇次郎に対しては保留)
4:参加者の考えがまとまったら、学校を拠点とすることを提案する

【加藤鳴海@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:聖ジョルジュの剣@からくりサーカス
[道具]:支給品一式×2、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、
輸血パック(AB型)@HELLSING、
グリース缶@グラップラー刃牙、道化のマスク@からくりサーカス
[思考]
基本:対主催・誰かが襲われていたら助ける
1:エレオノールと共にD-2エリアの様子を見て、用が済んだら喫茶店に戻る
2:喫茶店内の参加者と協力関係を結ぶ
3:このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術や種類など)
4:誰かが襲われていたら救出し、保護する
5:赤木の人柄を見極める
[備考]
※聖ジョルジュの剣は鳴海の左腕に最初からついていますので支給品ではありません
※参戦時期はサハラ編第17幕「休憩」後です
※サハラ編から参戦しているので勝、しろがねについての記憶は殆どありません
※赤木が後ろから来ている事にまだ気づいていません
※エレオノールを取りあえずは信用しています、またメイクのせいでエレオノールとフランシーヌ人形が似ている事に気づいていません
※勝という名前に何か引っかかっています

【才賀しろがね(エレオノール)@からくりサーカス】
[状態]:ピエロの衣装&メイク@からくりサーカス、ヴィルマの投げないナイフ@からくりサーカス
(残り11本)、オリンピア@からくりサーカス、支給品一式
[道具]:青汁DX@武装錬金
[思考・状況]
基本:『本物の才賀勝』の安全を確保する。
1: 鳴海と共にD-2エリアの様子を見て、用が済んだら喫茶店に戻る
2:本物の才賀勝を優勝させるため皆殺し(殺し合いに乗っている人間を最優先)
3:強力な武器が欲しい。人形は手に入れたので他の武器。
4:花山、斗貴子、カズキに関しては襲うのは保留
5:100%勝を傷つけないと確信が持てた人間に関してのみ、殺すことを保留する。
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※才賀勝の事を偽物と勘違いしています。
※2を実行するかは考え中です
※パピヨン、鳴海、承太郎の事は完全には信用していません
(信頼の度合いはパピヨン<鳴海=承太郎)
※赤木が後ろから来ている事にまだ気づいていません

【D-3喫茶店内/1日目 昼】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:全身に軽い打撲、口に血の跡、小程度の疲労、
[装備]:核鉄(エンゼル御前)@武装錬金
[道具]:支給品一式、猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:首輪を外し元の世界で武藤カズキと決着をつける。
1:勝の話を聞く。
2:エレオノールを警戒しておく。
3:核鉄の謎を解く
4:二アデスハピネスを手に入れる。
5:赤木、エレオノール、鳴海、承太郎、ハヤテ、カズキ、ナギを喫茶店で待つ
[備考]
※エンゼル御前は、使用者から十メートル以上離れられません。
それ以上離れると、自動的に核鉄に戻ります。
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと
同様に制限を受けているものと思われます
※エレオノール、鳴海に不信感(度合いはエレオノール>鳴海)

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)んまい棒@銀魂、
綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出 。
1:勝の話を聞く
2:赤木、エレオノール、鳴海、承太郎、ハヤテ、カズキ、ナギを喫茶店で待つ
3:かがみ、つかさ、みゆきを探して携帯を借りて家に電話
[備考]
※寝ていたため、まだ人数の多さには気づいていません。

【才賀勝@からくりサーカス】
[状態]:両足の脹脛に一つずつ切り傷。軽傷のため行動に支障なし。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、書き込んだ名簿、携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:しろがねの誤解を解く。
2:乗っていない人を探して味方にする。
3:フェイスレスには最大限注意を払う。
4:パピヨンとこなたに自分とエレオノール、鳴海の関係の話をし、自分達は異なった世界、時間軸から連れてこられた事を納得してもらう
5:みんなで脱出する。
[備考]
※勝は鳴海が自分のことを覚えていないということを感じましたが、同姓同名の別人ではないと思っています。

【C-3 中部/1日目 昼】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式、不明支給品0~2(本人は確認済。核鉄の可能性は低い)
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:ナギ、カズキの様子を見に行き、その後全員で喫茶店に戻る。
2:ジョセフ、ハヤテ、マリア、ヒナギクと合流する。
3:首輪の解除方法を探す。
4:DIOを倒す。
5:赤木には用心する。
6:主催者を倒す。
参戦時期:原作28巻終了後
[備考]
※パピヨンについては、ハヤテから聞いていたので、
喫茶店にいることを不思議と思っていません。
※こなたがスタンド使いかと疑っています

【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]健康。
[装備].454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING
[道具]支給品一式、 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
[思考・状況]
基本:出来るだけ多くの人を助けたい
1:ナギ、カズキの様子を見に行き、その後全員で喫茶店に戻る。
2:マリア、ヒナギクを探し出し合流する

【D-2 中部/1日目 昼】
【範馬刃牙@グラップラー刃牙】
[状態]:肉の芽による洗脳状態  全身に打撃によるダメージ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考] 基本:DIOに力を授かり、親父を殺す。
1:目の前の親父を殺す
2:DIOの食料(参加者)を捜し、S2駅に持ち帰る
3:ラオウ、銀時、覚悟を見つけ、勝負を挑む
4:強者と戦う
[備考]
※地下トーナメント優勝直後。ただしトーナメント戦で受けた傷は治っている
※DIOに受けた傷は、痛みはありますが戦闘に問題ありません
※肉の芽の洗脳により、基本的に己の欲求よりDIOの指示を優先します

【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]体中に浅い銃創 健康 闘争に餓えている
[装備]ライター
[道具]食料と水2人分、打ち上げ花火2発
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:目の前の刃牙と闘う
2:首輪を外したい
[備考]
※二枚の紙(日本刀と自転車)と支給品一式は消防署内に放置しています


112:『Freaks』 投下順 114:信じられない話
112:『Freaks』 時系列順 114:信じられない話
110:バトルロワイヤルの火薬庫 赤木しげる 129:大切なのはゲームのやり方
110:バトルロワイヤルの火薬庫 加藤鳴海 129:大切なのはゲームのやり方
110:バトルロワイヤルの火薬庫 才賀エレオノール 129:大切なのはゲームのやり方
110:バトルロワイヤルの火薬庫 パピヨン 114:信じられない話
110:バトルロワイヤルの火薬庫 泉こなた 114:信じられない話
110:バトルロワイヤルの火薬庫 才賀勝 114:信じられない話
110:バトルロワイヤルの火薬庫 空条承太郎 121:君には花を、いつも忘れないように
110:バトルロワイヤルの火薬庫 綾崎ハヤテ 121:君には花を、いつも忘れないように
083:逢鬼ヶ刻 範馬刃牙 129:大切なのはゲームのやり方
084:はらわたをまく頃に~侠客立ち編~ 範馬勇次郎 129:大切なのはゲームのやり方