君には花を、いつも忘れないように◆YbPobpq0XY



(私のせいだ……)

あの戦いの後、三千院ナギはその場にうずくまったまま動こうとしない。
空を見上げれば誰が見ても快晴。
雲ひとつ無いのがまたやけに空しかった。

(私がでしゃばったりしたせいでカズキは……カズキは! いや……それより───!
そもそも……。そもそも私がここに残ったりしなければ……疲れただなんてワガママを言わなければ!)

枯れ尽くした悲しみの涙の代わりに、後悔の涙と懺悔の涙がボロボロと流れ続ける。
間接的に自分が足を引っ張って人を死なせてしまった……。
そう思うと、カズキを一人だけにしておく事がどうしてもできなかった。

「…………ま!」

遠くから聞こえる声。
聞き間違えるはずの無い、最愛の人の声……。

「お嬢様!!」

綾崎ハヤテが心配そうな顔をして、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
そしてその後ろにはジョジョも居る。
無事だった事が嬉しいし、今すぐにこちらからも駆け出したい。
だがそれがどうしても出来なかった……。
☆   ☆   ☆

駅事務所内。

ハヤテは椅子に座っているナギの顔を濡れハンカチで拭いている。
そこに承太郎の姿は無い。

「そうでしたか。カズキさんが……」

ハヤテの暗い声にナギが黙ったまま頷く。
ナギの話を聞いても、ハヤテは未だに信じられなかった。
一緒に居た期間は短かったものの、彼は武藤カズキがどれほどお人好しかを理解していた。
ここで死んでいい人間ではなかったはず。
それなのにわずか数時間別行動をとっただけで、その別れが永遠のものになってしまったのだ。

入り口の扉が乱暴に開かれる。
振り向くと空条承太郎がそこに立っていた。

「ジョジョさん、カズキさんは……」

本当に死んでいたのか、という意味の問いかけ。

「すぐそこに埋めてやった」

だが承太郎は違う意味で受け取ったらしい。
やはり何もかもが遅かったのだ……、ハヤテの心はより重くなる。

「何時までも立ちぼうけにするわけにもいかねえからな。本当なら家族の所へ届けてやるか、
せめてちゃんとした墓にしてやりてえんだがな…………」

そういう彼の顔は心なしか何時もよりも暗く思えた。
だがそれも一瞬のこと、すぐに何時もの顔に戻るとナギの腕を見やる。

「その腕だが、どうやら右腕を全部外されちまったって事か?」
「はい……」

俯いたままのナギに変わってハヤテが答える。
見るとナギの腕は指先から肩までダラリと伸びており、素人目にもマズそうだ。
だがここにはギプス代わりになりそうなものすら無いのだ。

しばらく迷っていたが、ハヤテはとある決意をしてそれを承太郎に伝えようとする。

「あ、あの…………ジョジョさん、お願いがあるんですが……」
「まさかてめー『お嬢様の怪我を何とかしたいので、先に喫茶店に戻ってください』とか言うんじゃあねえだろうな?」
「…はっ! はい……」

言いたい事をピシャリと言い当てられ言葉をつまらせる。

「ふざけるなよ? さっきもコイツのワガママに付き合った結果がコレだ。
病院も学校も、医療具がありそうな所は遠く離れてるって事くれー分かるだろ?」

と先ほどよりキツい言い方の承太郎。

「ダメ……ですか?」
「当たり前だ。ここを襲ったみてえなのが何人いるのか分からねぇんだぜハヤテ? おれ達全員で遠くへ行くのも危険だし、
ましてや、そいつ一人のためにそこまでの危険を侵せるわけがねえだろ」

その言い分にさすがのハヤテもムッとするが、言ってる事の正しさは良く分かる。
先ほどあげられた花火の事もある、喫茶店の方もなんらかの危険に晒されている可能性すらあるのだ。
一刻も早く戻る方が得策、ナギの腕は後回しにする方が全体のためになるのはハヤテだって理解している。

「言いたい事は分かりますよ! だからって!」

それでもハヤテは食い下がる。
どれだけ自分勝手な事か分かっていても、ナギの容態を放置したくは無いのだ。

「だからコイツは、今ここでおれが治す」
「……ほえ?」

予想とは違う承太郎の言葉にハヤテは素っ頓狂な声をあげる。
何て言った?今ここで治療?誰が?ジョジョさんが?

「あの……」
「何だ?」

返事を返しながらも、ナギの腕をしっかりとつかむ承太郎。
ナギが痛々しい悲鳴を上げる。

「ちょっ!ちょっと待ってくださいって!」
「だから何だよ」
「脱臼と言っても何か道具とか必要なんじゃ? ていうかそもそもジョジョさん医師免許は!?」

当然の疑問である。
というか彼を見て医療技術があるだなんて、追い詰められた爆弾魔でも思わないだろう。

「あると思うんなら、おまえの脳ミソを見てやろうか? ……ねえよ」
「…………」
「別に、そんなもんいらねえのさ。コイツの骨を治すのはおれじゃあねえ」
「え……それはどういう………… え!?」
「そーいやお前にはまだ見せて無かったな。やっぱここの連中は全員見れるのか……」

何時の間にかナギの腕を掴んでいたのは承太郎では無くなっていた。
承太郎の体から現れた半透明な人影が、ナギの肩と手を掴んでいる。

「指の先から肩まで綺麗に外されてやがんな。……丁度いいぜ」

少し力を入れただけでナギはうめき声を漏らす。
当然だろう。
指先の骨が少し外れかけただけで意識を失いかける激痛を感じるのだ。
むしろナギが割りと平気そうな顔をしているのが不思議なほどである。

「ちょっと荒療治になっちまうが……まぁ『今日の苦しみは明日の希望』って言葉があるんだ。
我慢してもらうぜ。ナギ?」
「…………!」

質問の対象が自分ではなくナギになっている事にハヤテは慌てる。
脱臼、医療具無し……『今ここで』治療。
その言葉から導き出される結論は一つしか無い。

「ちょっとジョジョさん! いくら何でもソレは……」
「テメーには聞いてねえ、今はナギに質問してんだ。黙ってろハヤテ」
「も……もうちょっとマシな方法だってあるでしょう!? 大体それが何なのかも僕は分からないんですからねっ! もしお嬢様に万一のことがあったらどうするんです!」
「じゃあテメーはコイツ一人のために全員死ぬ危険をとるのかッ!? それとも下手すりゃ一生腕がキかなくなるのを放っておけってのか?」
「でも!」

承太郎の剣幕に全く怯まずにハヤテは叫ぶ。
普段怒るという事を滅多にしない男だが、ナギに危害を及ぼす存在に関してだけは例外なのだ。
言い争いをはじめかけた二人。

「やってくれ……ジョジョ!」

だがそれを、話題の中心である少女の意外な一言が止める事になった。

その言葉に驚いたのはハヤテだけでは無い。
承太郎も半開きのままの口で、ナギの方を振り向いた。

☆   ☆   ☆

(コイツの眼……ちょっと前までピーピー泣いてた奴と本当に同じ奴なのか?)

承太郎の驚愕を知らずに、ナギは続ける。

「わ、私はここに来てからというもの……ジョジョの足を引っ張って……。その、わが…まま、ばっかりで……」

ナギは震えながらも顔を見上げて、真っ直ぐにジョジョを見る。
その目には涙。

「もしかしたら、そ、それに……ジョジョだって、場合によっては私のせいで……、だったかもしれないんだ…………。
もうこんな……、こんな事を繰り返したく無い! こんな怪我で足でまといになりたく無いんだ!」

少し間をあけて、
「全てお前に任せる、だから……頼む!」

全てを吐き捨てるように、ナギは言い切った。

「お嬢様……」

フゥ、とため息を漏らし、再びスタープラチナでナギの腕を強く掴む。

「行くぜ?」

返事は無い、ナギはただ黙って頷いてくれた。

(やれやれ参ったぜコイツ。ほんの少し会わなかっただけでこんなに……)
「オオラァァ!!」
「…………ッッ!!」

時間にすれば2秒、呼吸をしている間にそれは終わる。
だがその2秒が、どれだけ長く感じるか…………承太郎はそれを痛いほどよく分かっている。
ましてや、相手は小学生程度の女の子なのだ。
出来る事ならこんな民間療法をさせたく無かったし、ハヤテの言う事も良く分かるのが本音だった。

「………………」

一瞬だけナギの体がはねた後、糸の切れた人形のように椅子から崩れ落ちた。
どうやら意識を失ったようだ。
「終わったぜ」

それだけ言って立ち上がる。

「ま、気絶していてくれて助かるぜ……。コイツが起きていたらなんて言われた事やら」

背後でハヤテが睨み付けているのを感じたが、無視した。

(こんなに、『強く』なってやがるんだからよ)
「さっさと戻るぜ、準備しな」

☆    ☆    ☆

ナギを背負っているハヤテを背中に、承太郎は喫茶店へと戻る道を真っ直ぐ歩く。

(カズキ……、あのホモヤローが…………)

表情は出さず、わずかな出会いだった仲間の事を思い浮かべる。

(こんな状況でおれに『愛の告白』って奴をかましたあげく、アッサリ死にやがって……)

承太郎にとっては最期まで変態ヤローでしかなかった武藤カズキ。
だがその彼は三千院ナギを命と引き換えに守ったのだ。
そっちの気は無いのだが、せめてもう少しだけ話を聞いてやっても良かったかもしれないと言う後悔も僅かだがあった。
だがそれ以上に、今にも全身を沸騰させそうな怒りが血となり全身を駆け巡る。

仲間の死と言うものは過去にも体験している。
しかしジョセフや花京院の時とは違い、湧き上がる怒りをぶつける相手はもうこの世にいないのだ。
正直やりきれない思いが承太郎を──
(いや、違うな)

承太郎は思い直す。

(あのハゲ、光成と言ったな)

この状況では死者のために流す涙は不要である。
ピーピー泣いているだけではその死を無駄にしてしまうだけだ。
必要なのは、その不条理な死を作り出した物に対する怒り……。

(てめーへの利息は今ッ! ブラックゾーンに達したぜ!!)

承太郎はポケットの中に入れている、その拳を強く握り締めた。

(必ず……必ず叩き潰してやる!)

☆    ☆    ☆

揺り篭のような揺さぶりと右腕の痛みの中、ナギは目を覚ました。
どうやらさっきのジョジョの治療は利いたようだ。
ジョジョめ……もうちょっと痛くないようにやれよ、と考えているのはいかにも彼女らしい。
目の前には見慣れた銀髪。
そして体を覆う温もりと、これもまた決して不快では無い汗の匂い。
自分が最愛の執事に背負われているのだと理解する事にそう時間はかからなかった。
気恥ずかしさに一瞬で顔を赤くする。

(バカ……子供扱いしおって……! でも……)

だがそれ以上に安心がナギの心を包んでくれた。

(もう少し……このままで)

ハヤテに体を預けて、再びナギはその目を閉じた。

天気は先ほどから快晴のようだ。
瞼の裏からでも空から降り注ぐ光をナギは感じた。


【B-3 南東 一日目 昼】
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]全身に打撲
[装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]無し
[思考・状況]
基本:殺し合いはしない
1:ハヤテめ……子供扱いしおって……
2:マリア、ヒナギク、ジョセフと合流する。
3:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。
参戦時期:原作6巻終了後
※スパイスガールは疲労のため、しばらく出せません。
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]健康。
[装備]454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING、首輪探知機@BATTLE ROYALE
[道具]支給品一式-水少量 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
   音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92F(弾丸数8/15)@BATTLE ROYALE 不明支給品0~3(フェイスレス・ナギ)
[思考・状況]
基本:出来るだけ多くの人を助けたい
1:ジョジョさん……ちょっと乱暴すぎやしないかなぁ
2:喫茶店に戻る。
3:マリア、ヒナギクを探し出し合流する

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]支給品一式×4、不明支給品0~2(本人は確認済。核鉄の可能性は低い)
[思考・状況]
基本:他の連中の脱出 主催者を叩き潰す
1:喫茶店に戻る。
2:ジョセフ、ハヤテ、マリア、ヒナギクと合流する。
3:首輪の解除方法を探す。
4:DIOを倒す。
5:赤木には用心する。
6:主催者を倒す。
参戦時期:原作28巻終了後
[備考]
※パピヨンについては、ハヤテから聞いていたので、
喫茶店にいることを不思議と思っていません。
※こなたがスタンド使いかと疑っています


120:拳王の夢 暴凶星の道 投下順 122:第二回放送
120:拳王の夢 暴凶星の道 時系列順 122:第二回放送
111:心に愛を 三千院ナギ 123:サンプル入手
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 綾崎ハヤテ 123:サンプル入手
113:大切なもの――SOLDIER DREAM―― 空条承太郎 123:サンプル入手