薔薇獄乙女

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mangaroyale

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だれでも歓迎! 編集

薔薇獄乙女 ◆3OcZUGDYUo



赤と白で彩られた一台の消防車が大地を疾走する。
本来は消火作業のため使われる消防車だが当然この場ではそんな役目を請け負っていない。
只参加者の移動を円滑に行うために、そして強いて言うなら……参加者を轢き殺すために。

「ふぅ……もうすぐあの老人が言っていた放送の時間か」
何の罪もない一般人を自分の不注意で轢いてしまうような事は絶対に避けなければならない。
そのため鼻の上に特徴的な傷跡を持つ少女、津村斗貴子は全神系を運転に集中させていたが
あの忌々しい光成という老人が言っていた定時放送の事を思い出す。
慣れない消防車の運転に今まで注いできた集中力を一旦停止させ、同時に斗貴子はブレーキを踏んで消防車を停止させる。
そしてテキパキとデイパックから鉛筆と地図、そして名簿を取り出す。
数時間前、花山薫と共に範馬勇次郎と闘っていた時とは違い今はもうすぐ行うと思われる放送に備えるためだ。
侵入しただけで自分の首に付けられた首輪を爆破させる禁止エリア。
この情報をないがしろにするわけにはいかない。
そう考えながら斗貴子は第一回放送で放送された禁止エリアの位置、そして脱落者の名前をそれぞれ地図と名簿にそれらの印を付けていく。

「……やはり、いい気分がしない。最低な気分だ……」
記憶を頼りにしながら放送で最後に呼ばれたアレクサンド・アンデルセンという名前に斜線を引き終わった所で斗貴子は呟く。
たった今斜線を引き終わった八人の名前は全て自分にとって聞き覚えの無いものではあったがそれでも当然こんな作業はいい気がしない。
そんな事を考えているとどこからともなく斗貴子の両の鼓膜が震えた。
そう――
『気分はどうかの諸君?
午後12時を迎えたので2回目の定時放送を行うぞ』
忌々しい声で自分達に向けて発せられる光成という老人の声。
第二回放送が始まったからだ。
(この悪魔め……)
この異常な事態の元凶である光成に自分でも驚く程に憎悪を感じながら斗貴子は怒りに身を焦がす。
勿論、花山をまるで玩具のように弄び、
惨殺した勇次郎に対しての憎悪もかなりのものではあるが光成に対しての感情はそれすらも上回った。

『脱落者、禁止エリアの事は諸君も気になるじゃろう?』
(何度聞いても吐き気がする口調だ……)
握り締めた鉛筆を思わず折ってしまいそうな程に込めた力が斗貴子の感情を示す。

『一言も聞き逃さないよう心して聞くがよい』
(貴様は必ず私とカズキで地獄を見せてやる……私達の武装錬金でな!)
今は傍にない、自分の身体の一部ともいえる程慣れ親しんだ武器、バルキリー・スカート。
そして自分にとってどんなものでさえも代わりにする事が出来ない存在、
武藤カズキの事を考えながら斗貴子は憎悪に塗れた誓いを心の中でたてる。
その表情はとても少女のものと言えることは出来なかった。

『それでは禁止エリアから発表するぞ。
午後13時からH-2
午後15時からC-2
午後17時からA-7…………』
今、この瞬間に放送で発表された禁止エリアの事についてメモを行うため斗貴子は鉛筆を走らせる。
依然、表情は変えずに。
『次に午後12時までに惜しくも脱落していった者達を発表する。
桂小太郎
灰原哀
高良みゆき
本郷猛
花山薫…………』
花山の名前が呼ばれた瞬間、斗貴子の鉛筆を走らせる手の動きが思わず停止する。
だがそれもほんの一瞬の事。
歯を軋ませながら斗貴子は名簿に記された花山の名に他の線よりも一段と濃い斜線を
思いっきり引かせる。
花山、そして自分の無念さを噛み締めるかのように。

『鷲巣厳
カズマ
平賀才人
桐山和雄
フェイスレス…………』
そんな斗貴子の思いをよそに放送は脱落者の名前を発表するのを止めない。
既にこの時点で一回目の放送で発表された8人を超える10人の名前が呼ばれた現実に斗貴子の表情は暗い。
一刻も早くこの異常事態を解決しなければ……決意を固めながら斗貴子はなおも鉛筆を走らせる。
(しかし一回目に呼ばれた人数を考えるともうそろそろ終わってもいい頃だと思うが……)
予想よりも多い脱落者の数を考えながら斗貴子は早く放送が終わって欲しいと願う。
カズキやキャプテン・ブラボーの名が呼ばれないと断定できないからだ。
たとえ核鉄がなくても戦士長であり、無類の強さと正義を備え持つキャプテン・ブラボー。
そして人を守るという思いを力に変え、どこまでも強くなったカズキ。
彼らは自分よりもよっぽど強い存在だ。
だが斗貴子は数時間前、勇次郎の圧倒的な力を思い知らされた。
流石の彼らでもあんな化け物の様なものと闘えば只ではすまないだろう。
その事が斗貴子の不安を駆り立てている。
特に……
(もしカズキが死んでしまったら……私は……)
自分にとって最悪のケースを考えるだけで全身に寒気が湧き上がってくるのを斗貴子は感じた。
そして放送は続く。
斗貴子の淡い思いを踏みにじるかのように。

『武藤カズキ』
刹那。
斗貴子の手によって強く握り締められていた鉛筆が、彼女の手から離れゆっくりと……
とてもゆっくりと下方へ落ちていき……黒鉛の塊が砕け散った。

――嘘だ――

胸の鼓動が不自然なくらいに速くなり、止める事が出来ない。
こんな経験は初めてだ。

――嘘だ嘘だ――

今、自分が聞いた事が信じられない。
たしかとても聞き覚えのある名が放送から聞こえた気がする。

――嘘だ嘘だ嘘だ――

まだ放送から何か声が聞こえてくる気がする。
けどそんな事今の私には興味はない。

――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

だってそうだろう?
私のせいで一度は命を落とし、化け物との血塗られた闘いに引き込んでしまったあの少年の名が呼ばれた気がするからだ。

――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

そうか……これは夢なんだ。
そうだ……そうじゃなかったらあの名が呼ばれるわけはないんだ……呼ばれちゃいけないんだ。
――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

あれ?でも頬を抓ると確かに痛みを感じるのは何故だ……?
夢の中では頬を抓っても痛くはない事は子供でも知ってる事なのに……。

――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

辻褄が合わない……夢じゃなかったらとても説明がつかない。
もしかして……今、私が居るこの世界は現実ではないのだろうか?

――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

だからそろそろ……誰でもいいんだ。
早く私に言ってくれ。
あの名が……カズキの名が呼ばれた事は……カズキが死んだ事は……

――嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ――

嘘だと言ってくれ…………!

◇  ◆  ◇
放送が終わって私は外の空気を吸うために消防車の運転席から外に出ていた。
もう放送から何分経ったかわからない程私は……哭いていた。
あれほどまでにも昂ぶっていた勇次郎や光成への怒り、花山への罪悪感は何故か放送でカズキの名を聞いた途端、
何処かへ飛んでいってしまった。
自分はこんなに弱い存在だっただろうか……?
カズキと出会う前の自分ならここまでの醜態は晒さなかった筈。
でも私はカズキと出会った事を後悔はしていないし、寧ろ只ホムンクルスを殺す事だけのために浪費される筈だった
私の人生に光を与えてくれたカズキには感謝の念がある……山吹色の暖かい光をくれたカズキに。
でも私はもうそんなカズキに会う事が出来ない……ホムンクルスに関しての問題も解決した今、私の生きる意味は……何があるのだろう?

「駄目だ……カズキが居なければ私の生きる意味なんて……もう無い」
私はもうどうでも良いと思い始めた。
四の五の考えるのはもう疲れたんだ……カズキが居なければこんな世界生きている意味
なんてない……。
どうせ意味がないならもう自分の手で幕を引いてしまおうか……?
そう思った私は自分の舌に歯を当て、少し力を込めた。
肉が千切れる音が聞こえ、同時に舌に痛みを感じる。
いや、痛みだけじゃなくてこの味は……そう、鉄の味……血液の味が口の中に序々に広がっていくのも感じる。
いつか読んだ本には確か舌を噛み切れば残った部分が丸まり、気道を塞いで窒息死に陥るらしい。

「窒息死……か」
それもいいかもしれないな。
そう思い、私は更に力を込めようと……その時だ。
私の前にいつのまにか軍服を着た一人の男が立っている事に気付いたのは。
「お前は……?」
そういって私は目の前の男に全く警戒せずに問う。
放送を聞く前の私ならこの目の前に居る男が危険人物かどうか警戒を行いながら話しかけただろう。
でも……別にどうでもいいんだ。
この男が危険人物であり、私を殺そうと襲い掛かってくるのならそれはそれでいいかもしれない。
だってカズキはもう居ないんだ……どうとでもなれ。

「ふん!脆弱な存在め……無様なものだ」
目の前の男が私を軽蔑したような目を私に向け、言葉という剣で私を責めたてる。
ははは…そうさ、私は無様さ。
カズキを助ける事が出来ずにこんな風に文字通り腐っている。
笑いたいなら笑えばいい……まぁ私はお前にどう思われようが関係ない事だが。

「だが、この底辺からキサマはどう足掻くか……その事に多少の興味はある」
目の前の男がよくわからない事を心なしか少し嬉しそうな表情を浮かべて言っている。
どうでもいいが名前くらい名乗りはしないのか……?
そんな事をぼんやりと思っていると私はその時、目の前の男が何か土に塗れたものを引きずっていたのに気付いた。
あまり興味はないが私はそれとなくその物体を観察する。
どうやら男が引きずっているのは人間らしい……洋服は黒い、学生服のようだ。
目の前の男に後ろから首根っこを掴まれているため、顔を確認する事は出来ない。

(黒い学生服……まさかな、でもあの髪型は……)
何かが引っ掛かる。
そんな時、目の前の男がその引きずっていた物体を依然首根っこを掴みながら私の前に掲げる。
丁度太陽が昇っている方向と同じ向きにその物体が掲げられたので、太陽の光の眩しさに思わず両目を細めてしまう。
でもそれも一瞬、次第に眩しさに慣れた私は両目を開けて目の前の物体を確認しようとする。

「…………え……?」
今日、私は一体何度驚いた事だろう。
しかもその全ては小さいものではなく、かなりの大きさのものだ。

「カ…………」
そして今自分の目の前にはカズキの名をあの放送で聞いた時と同じくらいの衝撃を与えてくれるものがある。
私は自分でもここまで出来るとは思わなかった程に両目を開き、それを凝視している。
それは……私にとって一番大切なもの……いや、大切な人。

「カ!カズキ!?」
カズキが目の前の男の右腕によって吊り上げられていた。


目の前の男が何故カズキの死体を持っているのか私にはわからない。
この男がカズキに手を下したかもしれないという疑惑が浮き出てくるが……今の私には別の感情の方が強い。

「カ!カズキを早く下ろしてくれ!早く!」
今の私にはカズキの事だけで頭が一杯だ。
見たところ左脇から胸にかけて痛々しい裂傷が見られるが他に目立った外傷はない……本当に死んでいるのか疑うくらいに。
そうだ……あの光成という男の言っている事が本当かどうかは限らない!
今、私の目の前に居るカズキは……まだ生きているのかもしれない!
身体の奥底から熱い何かが湧き上がるのを感じ、段々と私は人としての気力を持ち直していく。
カズキが生きているかもしれないという希望の光が私の心を照らしていく。
そんな風に希望の光に包まれた私を見て目の前の男は……笑っていた。
寒気を覚えるほど冷淡に。
そして目の前の男は空いていた左腕をカズキの背中に向け……そのまま直進させた。
その瞬間、私の視界には……目の前の男の左拳が入ってきた……カズキの身体からまるで生き物のように顔を出している拳が。

「な…………っ?」
あまりの出来事に呆然としている私を尻目に目の前の男はまた腕をカズキの身体から引き抜き、何度も何度もカズキの身体に拳を撃ちたてる。
私は目の前の男のとても許す事は出来ない凶行を止めようと直感的に思う。
けど、私の身体は動かない……だっておかしいんだ。
なんでカズキは今、あんなに身体に痛々しい穴を開けられてもあまり血が出ていないんだ。
それに……なんで…………一言も声が出ないんだ。

「……カ…………カズキ?」
さっきから一向にカズキは一言も喋らず、痛みによる叫びすら上げない。
たとえカズキの身体が丈夫で、我慢強くてもあれだけの拳が身体を貫いているのだ。
いくらなんでもこれはおかしい。
こんな状況を説明できる答えは……
――カズキはもう死んでしまっている――
そんな事はあるか!
私は直ぐにその考えを真っ向から否定にする。
そうだ、カズキはあの男への反撃の機会を窺っているに違いないんだ!
でも……そろそろ頃合だと思うぞカズキ。
そうでなければ……このままでは……君は……。

そんな事を願っていると目の前の男はカズキの身体に左腕を貫かせたまま動きを止めた。
でもそれもまた一瞬の事、目の前の男はその左腕でカズキの身体を持ち上げ、右腕を首根っこから放し、左腕と同じように右腕をも撃ちたてる。
「や……やめ…………やめてくれ……」
更に目の前の男は両腕を動かし、内部からカズキの腹の辺りを左右それぞれの腕で掴む。
次に目の前の男は両腕に力を込め……思いっきり左右に動かす。
そして……そう、丁度スナック菓子の袋を開ける時力を込めすぎて、
中に入っているお菓子を外にブチ撒けてしまったように……カズキの腹が引き裂かれ、臓物がブチ撒けられた。

「うあああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
カズキの身体からからブチ撒けられた血液、肉、そして臓物が私に降りかかる……私の希望を塗りつぶすかのように。

◇  ◆  ◇
「うっ……うっ……カズキ……カズキ」
目の前の男にまるでゴミのように捨てられ、無残にも腹を引き裂かれたカズキに私は泣きつく。
やっと見つける事が出来た希望が完全に粉砕され、同時に私の心も目の前の男の手で砕かれた。
こんどこそ私の生きる意味はない……いや、せめてこの男だけはたとえ共倒れになってでも殺そうか?
そう考えていた私に目の前の男が突然思いがけない事を言ってきた。

「この男と共にもう一度生きたいか?」
そんな事は当たり前だ……でもそんな事はもう無理なんだ。
貴様のせいで……。

「くくく……どうやら放送を最後まで聞かなかったようだな?」
……なんの話だ?最後まで……?

「キサマの行動しだいではそれも夢ではない」
どういう事だ?私は何をすればいい?カズキの笑顔をまた見る事が出来るのなら私は……

「余が直々に教えてやろう……キサマの望みを叶えるその方法をな」

◇  ◆  ◇
数十分前に放送が行われた空間。
そこで二人の男がモニターを見ていた。
そのモニターにはこの殺し合いの参加者の戦闘記録を残すために打ち上げられた衛星カメラによるものだ。
そして一人はさもおかしそうな表情を浮かべ、もう一人は恐怖一色で塗られた表情を自分の横にいる人物に向けている。

「お主は悪魔じゃ……墓を荒らし、あの哀れな少女を煽り、そしてあんなものまでも……」
「どうせキサマが爆死させた小娘のために用意していた支給品だ。
利用せずに腐らせるのも惜しいだろう?」
徳川光成の意義を全く意に介さず、先程まで斗貴子の目の前に居た男、暗闇大使は光成の言葉をあしらう。

「くっ……しかし何故お主はあの少女に介入したんじゃあ……?」
目の前の暗闇大使という男は参加者を闘わせ、最後に残った者に用があるらしい。
しかしたった今この男が行ったのは明らかな介入行為。
観客がリングで闘う選手に武器を投げ与えたような行為だ。
こんな事をしては公正な結果を望めないのではないかと光成は思い、思わず声を上げる。

「くくく……何の事はない。所詮只の気まぐれに過ぎん。
それにサンプルの行動パターンの種類は多いほうがよかろう」
そう言って暗闇大使は自室へ足を進める。
この先起こる事を思い浮かべながら。
(さて……キサマの動きには期待しよう……津村斗貴子)

◇  ◆  ◇
私は今消防車を運転している。
勇次郎との闘いで負った疲労、そして先程ほんの少し噛み切った舌はもう既に完治した。
きっと先程の男が私に手渡した不思議な液体を飲んだせいだろう。
あの男が言っていたように私が飲んだ水は治療薬だったらしい。
どこか薔薇の香りがしたあの液体は。

「……ふふふ」
思わず笑いが込み上げてくる。
私があの男に教えてもらった事を考えていると思わず。
あの放送で最後に告げられた内容……優勝者に送られる『ご褒美』の事を。
これで笑うなと言う方が無理がある。

「痛かっただろうカズキ……でも、もう君は充分に頑張った。」
そういって私は隣の助手席に目をやる。
そこには私の大切な人、カズキが虚ろな目を私の方に向けている。
勿論、カズキの痛々しい腹はカズキの学生服で覆っている。
黴菌でも入ったらとんでもない。

「だから今の内にゆっくり眠っていてくれ……私のやるべき事が終わるまで」
私はこの場で何をやるべきなのかハッキリと悟った。
私はあの時からカズキと一心同体で生きていくと決めた……けど今となってはカズキは死んでしまい、私は生きている。
一心同体という決意からは著しく離れている……なら、答えは二つだ。
一つは私も死んでカズキの後を追う事。
これもいい答えだと思うが……もう一つの答えに較べて魅力が足りない。
そう、勿論もう一つの答えは……カズキが蘇る事だ。
「君が蘇るのなら私は……何だってやってやるさ」
戦士としての、人としての尊厳も、命さえもいらない。
私はカズキさえ居れば……何もいらない。

「だから私は全ての存在を殺してやる……勿論、勇次郎も!君を殺した奴も!
そして君の身体をそんな風にしたあの男もだ!」
いや、あの男は私に放送の事も教えてくれたし、あの不思議な液体も与えてくれたから少しは救いようがあるか。
ならあの男は最後まで生き延びさせてやって……地獄に叩き落すか。
ジワジワと後悔の念を与えながらな。
いや待てよ……私の目的は最後の一人になる事だ。
悔しいが勇次郎、私よりずっと強いカズキを殺した奴、そして先程の男はかなりの実力者。
こんな奴らと闘う事はリスクがつきものだ……ならば私は弱者を殺し、人数を減らしていけば効率的じゃないか?
勇次郎達のような奴らでも最初の地に居た大男のような奴と闘えば無事で済まないだろう。
そして消耗したところを私が狙えば……完璧だ。

「ふふっ、今日の私は冴えているな……ならどこに向かおうか……?」
弱者がたくさんいると思われる場所……繁華街は勇次郎が向かった方向だから今は最適じゃない。
学校もこんな状況では行く目的もないだろう。
あとは……
「病院か」
怪我人が少なくとも一人は居るだろう。
そんな奴なら命を刈り取るのも容易い。
まぁ欲を言えば武器は銃ではなく、刃物の方が扱いやすくていいのだが。
そこまで私は考えてふと思いつく。
本当に今日の私は冴えている。
刃物なら……直ぐそこにあるじゃないか。
使い慣れた刃物が。

「少し痛いかも知れないが我慢してくれカズキ……君の力が必要なんだ」
一旦ブレーキを踏み、消防車を停車させる。
そして私はカズキの左脇から胸に開けられた裂傷に腕を突っ込む。
あの男に穴だらけにされた事もあり、作業は思ったより容易だった。
カズキの胸の中で腕を動かし、私は目当ての物を探し当て掴み、引き抜く。
そして血に塗れた私の腕に同じように血に塗れた黒い核鉄が握られる。

「いつまでも私を守ってくれカズキ……私も君を守るから」
恍惚の表情を浮かべながら私はカズキの核鉄を力一杯抱きしめる。
こんなに私に力を与えてくれるものもそうそうない。

「さて……そろそろ往くとするか」
核鉄を制服のポケットに入れ、再び私はアクセルを踏む。
目的地は病院。
そして私の使命はカズキともう一度共に生きる事。
その事に対しての覚悟はある。
さぁ……往こう、全ての命を刈り取るために
勿論……人間だけじゃない。
そう人間だけじゃない……もう一つ壊さないといけない存在がある。
それは……自動人形。


カズキの死、そして目の前行われたカズキの死体への凶行。
これらは斗貴子の全てを撃ち砕いた。
そう……正常な判断を出来ないまでに。
斗貴子がアクセルを踏んだ事により、彼女の身体、頭髪が前後に揺れる。
その斗貴子の揺れた頭髪から……彼女の歳から考えて不自然なくらい、銀一色に染まった一本の毛が姿を見せた。
とても綺麗な銀色の毛が……。

【D-4 中部 1日目 日中】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:消防車を運転中 健康 しろがね化 精神不安定、判断力低下(本人は極めて正常だと思っている) 
[装備]:核鉄(サンライト・ハート) USSR AK74(30/30) 水のルビー@ゼロの使い魔 支給品一式×2(食料と水無し) 
USSR AK74の予備マガジン×6 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔 キック力増強シューズ@名探偵コナン
工具一式 医療具一式
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせる。
1:病院に向かい、参加者を皆殺しにする
2:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す
3:勇次郎、カズキを殺した者、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。

※本編終了後、武装錬金ピリオド辺りから登場
※上着が花山、カズキの血で滲み、顔と腕にカズキの血が付着しています。
※消防車の中には消防服が一着あります
※消防車の水量は(100/100)です
※軍服の男(暗闇大使)は参加者の一人だと勘違いしています
※斗貴子が飲んだ液体は生命の水(アクア・ウィタエ)です
また斗貴子は生命の水の事は知らず、只の治療薬の一種かと思っています
※カズキの死体は暗闇大使に掘り起こされ、今は消防車の助手席に座らされています
また暗闇大使は大首領の力を借り、ワープ能力を使いました
今後暗闇大使が介入するかは不明です
※しろがねとなったため、身体能力、治癒力が向上しています
また斗貴子はまだその事に気付いていません
※核鉄は自分の武装錬金のATが発動出来ると思っています(バルキリー・スカート)


123:サンプル入手 投下順 125:涙を拭いて
123:サンプル入手 時系列順 125:涙を拭いて
104:以前の彼女 津村斗貴子 130:絡み合う思惑、散る命




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