もうメロディに身を任せてしまえ

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もうメロディに身を任せてしまえ ◆YbPobpq0XY



舗装された道も終わり、今は晒された地面の上を車で走らせる。
車を運転するのは今日が始めてなのだが、自転車やバイクと同じで、コンクリートと土ではタイヤを通して伝わる感覚も違って感じられた。
どうやら田園地帯に入ったようだ。

障害物の少ないここならば、もし敵に襲われても逃げるのは割りと容易い上、植物も水も豊富な地ならば波紋も流しやすくなる。
退路の確保と、迎え撃つ事の両方を考えたジョセフのルートだ。
しかしここらには人っ子一人いない上に、南の方へ向かえば同じ対主催を志す者達を合流できたかもしれないのを考えれば、結果的に大失敗だったといえるわけだが。

最初はジョセフが運転席に座っていたのだが、彼の見せてくれたすばらしい運転技術の数々にすでに車は所々へこんでいる。
とくに後部をベコベコにされた時に「いやー悪い、アクセルとブレーキ間違えた」なんて言われた時には感動のあまりヘッドロックをかけてしまったほどだ。
それもかなり強めに。
というわけで現在は三村がハンドルを握っているわけだが…………。

右腕の腕時計に目を向けると、液晶画面は11:50を表示している。
どうやら次の放送はこのエリアで迎える事になりそうだ。
できる事ならば危険の少ない場所が良かったが……仕方が無い。

「でさァ~~、100人の吸血鬼に襲われた時にはおれもダメかと思ったぜ! だがその時現れたのは誰かって!? それは……」

助手席に座ったジョセフが先ほどから後ろのかがみに話しかけている。
彼女は普通だったら呆れた視線の一つでも送っているのだろうが、さっきから暗い顔で俯いたままだ。
その理由はよく分かる。
ボウリング場で先に待っているはずの仲間との連絡が全くとれないと言うのだ。
もしその仲間が列車でそのまま移動したのであればまだ到着しないとは考え辛い。
だとすると、途中で何かのトラブルがあって進路を変更せざるをえなくなったか……あるいは…………。

「で! だ。おれ様の咄嗟の機転でついに宿敵カーズを倒したと思ったが大間違い……。おいちょっとかがみーん、ちゃんと聞いてるかー?」

普通だったら無神経にも思えるジョセフのこの行動。
だがその実彼もかがみの気を紛らわせたくて必死なのだ。
そうしないと彼もどんどん悪い方向に思考が行ってしまうのだろう。
そう、それこそ今の自分のように……。

「なぁジョジョ。それからどうなったんだ? 早く話の続きを聞かせてくれよ」

☆   ☆   ☆

「なぁシンジ、あとどの位で付きそう?」
「このペースで行けば一時間もかからないぜ。何事も無ければだけどな」
「じゃあ何事もあったら?」
「一生、いや永遠につけないかも……だな」

皮肉めかした笑いを浮かべる三村に、勘弁してくれよと、ジョセフは倒した助手席によりかかる。

「シンジーもうちょっとポジョティブな事言ってくれんもんかねェ」
「こういう時は客観的な要素から判断した事実を言った方がいいもんさ。できるだけ希望的観測って奴はやめとけよジョジョ」
「つまり?」
「油断するな、って事」

もはや肩をすくめるしか無い。
単純に相手をおちょくるのが目的なら自分の方が上手だろうが、
やはりまっとうな意見のぶつかり合いともなれば三村の方が二枚も三枚も上手なのだ。

「…………ねぇ」

さっきは相槌の一つも返してくれなかったかがみがかすれるような声で、始めて声をかけてくる。
少しはコミュニュケーションをとってくれる気になったのだろうか?

(やりィーやってみるもんだね何事も!)

心の中でガッツポーズをつくり、嬉々とした顔をかがみの方へ向ける。

「さっき希望的観測はしないって言ってたけど……」
「おお」
「今こうしてボウリング場に向かっているって事は……」

そこまで聞いて『しまった!』と思ったがもう遅い。
この先に続く言葉は完璧に分かる。
もっとも触れてはならない話題を、意図せずに蒸し返してしまったのだ。

「桂さんや、灰原さん……みゆきだって…………生きてるって確証があるのよね? 希望的観測なんかじゃないわよね?」
「え、そりゃ、その……」

三村の方を向けば運転に集中しており助け舟は出してくれそうに無い。
はたしてこの場合何と答えればよいのか……。

「あの、その、あれだどわァ!」
「きゃああ!」

答えの前に、突然体が前方に引っ張られる。
一人だけシートベルトをしていなかったジョセフの身体は思い切りダッシュボードに叩きつけられた。
目から火花が飛ぶ。

「ッつゥ~」

鼻先を抑えながら、体を起こし三村の方を睨む。

「おいテメー!! いきなり……」

いきなり急ブレーキをかけるなんてどういう事だ、などとシートベルトをしなかった自分に問題があるのも忘れ三村を理不尽に非難しようとする。

「シンジ?」

だが途中で三村が何かを凝視しているのに気付き、その視線を追う。
その視線の先には……。

「…………!」

頭部が欠損し、中身を派手に撒き散らしている人間の死体があった。
死後どれほど時間がたっているのだろうか?
近づけばおそらく蝿が集っているのが確かめられるだろう。
そして後一日放っておけば蛆が湧き出すのは間違い無い。

「ひでえな……」

ようやく出たのはそんな言葉だった。
ジョセフも人間の死体を見たのはこれが始めてでは無く、人間の顔面が解かされる光景や、手榴弾で吹き飛ばされた肉片など、
そういうモノへの耐性が不本意ながらついてしまったのだ。

だが三村はどうだろうか?
これまで自分を引っ張ってくれたとは言え、自身のような破天荒な経験をしたとも思えない。
少なくともジョセフよりはよっぽど『日常』の中で暮らしていたはずだ。

「とりあえず……あの状態から考えてアイツを殺した人間がすぐ近くにいるってのは、低くも無いが……高いとも言い辛いな」

それでも、冷静に状況を判断しようとする三村には冷たい気もしたが、ジョセフは少し感心した。

「遠回りになるけどさー、迂回しようぜ? 死体を轢くってのはどうもなァ……」

そこまで言った言った所で、ジョセフは重大な事を忘れている事に気付く。

「あ…………うっ……!」

なぜこんな事を忘れていたのか?
他人の事を言えたもんじゃあ無い、何だかんだで自分も動揺していたのだ。
この車にはもう一人、三村のように強い心も理性も持ち合わせていない人間がいたのだ。

「柊!」

自分とほぼ同じタイミングで振り返った三村もそれは同じだったらしい。
つくづく変な所で気があっている。

「おいバカシンジ! 何やってんださっさと車を──」
「あ、ああ!」

すぐに車は後ろ向きに走り出し、死体はすぐに遠ざかって行った。

一つ前の十字路で車を止める。
多少の遠回りになるが、もはや文句なども言っていられない。

「かがみ……?」

顔を抑えてガクガクと震えていた。
目に見えて状態が先ほどより悪化している。

(クッソ……チクショーめ)

ジョセフは前に向き直り、頭を抱える。
先ほどの質問の返答に困った彼にとって、急ブレーキをかけられた時には救われたと言う気持ちもあったが……。

(結局、一番の『答え』をしちまったも同然じゃあねえかコレ……)

三村の腕時計を見れば、丁度長針と単身がその姿を重なり合わせる所だった。
本日二回目の、ムカつく行事は始まる……。

☆   ☆   ☆

プツリ、と言う音が辺りに響く。
どうやらスイッチを入れる音をマイクが拾ってしまったようだ。
かがみは耳を済ませてその放送に聞き入る。

────気分はどうかの諸君?
────午後12時を迎えたので2回目の定時放送を行うぞ。

(大丈夫…………きっと大丈夫よ! 桂さんはすごく強かったし……灰原さんだって年の割りにしっかりしてたから……!
きっとみゆきも……ちょっと転ぶかなんかして遅れちゃったけど、今はボウリング場で待ってるはず!)

────それでは禁止エリアから発表するぞ。

あげられた三つのエリアに、ボウリング場は入っていない。
それだけは分かったが、具体的に何処が禁止エリアになったのかまでは頭に入ってこなかった。
迷惑かもしれないが、後でジョセフ達に聞こうと思った。

次に流されるはずの情報を待つ時間が、非情にまどろっこしく感じる。

────次に午後12時までに惜しくも脱落していった者達を発表する。

始まった。
かがみは、脱落者の名前が呼ばれるまでの数秒の間に呼吸を整える。
きっと大丈夫なはず、みんなの名前は呼ばれない。
そう何度も自分に言い聞かせた。
やがて最初の名前が呼ばれる。

────桂小太郎

かがみがここに来てすぐ、ケンシロウと名乗る仮面を付けた男に襲われたさいに助けてくれた男の名前が呼ばれる。
(え…………何て言ったの? 今誰の名前を読んだの?)

────灰原哀

小学生のわりには大人びていて、4人の中で誰よりもしっかりとしていた少女……彼女の名前まで。
(ちょっと待って! そんな……嘘でしょ! 何で!? 何で何で、ナンデ!?
ナンデあの人達の名前が呼ばれてるの? 無事に逃げたはずなのに、ねぇナンデ?)

そして……。

────高良みゆき

そして……ドジで心優しい、ようやく再開できた自分の親友。
(ウソヨ……ウソでしょ? ウソでしょこんなの……何もかも、ウソよ……)

他にも何か言っていた気がするが、かがみの頭には何も入ってこなかった。

☆   ☆   ☆

────それでは、バトルロワイアルを続行する!!

放送が終わってから何時間にも思える沈黙が車内に充満する。
誰一人として言葉を発する者はいなかった。

ボウリング場で合流するはずだった三人──そのうち一人は同じ日常を生きていた親友──の名前が呼ばれてしまったかがみ。
彼女は血の気が引いて青くなった顔を両手で多い小刻みに震え続けている。
両手の指の隙間から除いている目は瞼が限界まで開ききり、今にも眼球が零れ落ちそうだ。

「なんてこった……」

永遠に続きな沈黙の中に、ジョセフの一言だけが流れ、そしてかき消される。
さきほどまでかがみに話しかけていた彼はばつの悪い顔をして俯いたままだ。
何を言えばいいのか分からない、かける言葉が見つからない……そんな気持ちがイヤというほど伝わってくる。

だが同じ沈黙でも、三村だけは上の二人とは別のものだ。
顎に手をあてて俯くその表情には動揺も、恐怖も、狼狽も感じ取れない。
ただ脳内で淡々と情報処理をしている、そんな顔だ。

三村にとって正直に言えば、桂さんとやらと連絡がとれないと言う時点でこの結末はある程度は予想していた。
信頼できる人物と合流する機会を逃したのは残念ではあるが、それ以上は無い。
顔見知りである桐山の死については内心驚いたものだが、正直言えばアイツはゲームに乗ってもおかしくない何かがあった。
だからむしろエラーが取り除かれたと言っていいだろう。

今回の放送で考える事はもっと別のことだ。
まずはあの老人の放送内容について、そしてその前に……。
「柊、放送で流れた通りだ。残念だけど……お前の友達は死んでしまった」

──『死んでしまった』

その言葉が耳に届いた瞬間、かがみの身体がビクンと跳ねた。

「残念だが、もうボウリング場に向かう意味は無い。だからこれから俺達は本来の予定通り南の方へ向かおうと思う。
そうすれば何かが分かるかもしれないからな」

かがみは何も答えない。
ただ同じように青ざめた顔をしてブツブツと何かを呟いている。

「柊……お前の気持ちは分かるが、いつまで落ち込んでもしょうがないさ。
元々この腐ったゲームじゃあその程度のエラーは覚悟しなきゃいけない。だから今は──」
「おい……」

横からジョセフが口を挟む。
右手を自分の口元にかざし、左手の指で耳をトントンと叩く。
耳をかせ、という事らしい。

「おいシンジ……いくら何でも言い方ってもんがあるだろ。アイツ友達が死んじまったんだぜ? 少しソッとしておいてやった方がいいだろ」
「確かに、お前の言う事は人として正しいさ」

突然理不尽な殺し合いに巻き込まれて、自分の命の恩人と大切な人……自分が命をかけて守ろうとした人物の死を一度に知ってしまったのだ。
我を失いかけない方がどうにかしている。
そんな状況でその事実を更に突きつけるなんてマネをする奴は、それこそ絶対零度の血液が流れていると断言できる。
大切な人の死は、その痛みは自分も二回経験しているのだから。
だからしばらく落ち着かせてやるのが肝心なのだ……平和な『日常』ならば。

「ねぇ……ウソでしょ?」

かがみが再びすがるような口で問いかける。

「みん…な……みんないい人だったのに。嘘、こんなの嘘。あの『化け物』はちゃんと引き付けたのに……引き付けたのに!
何で! ねぇ嘘って言って! 嘘でしょ!? 本当はみんな生きてるんでしょ、ねぇ! 嘘……嘘嘘嘘……」

まるで全ての現実を拒むように、耳を押さえながらかがみは強くかぶりを振る。
嘘でもいい、誰かに希望のある言葉を言ってほしい、さっきのジョセフのバカらしい作り話でもいい、
いや、きっとジョセフなら『大丈夫だって! まだ死んだの見たわけじゃあねえだろ?』とか言ってくれる……
彼女の求めている言葉は自分にも分かっている。

「う……そ………………」

全てが抜け気ってしまったかのように、かがみは座席に深く沈んだ。
やがてその瞳から涙が流れていく。
それを見て三村は一言だけ……たった一言だけ。

「死んだよ」

そして、もう一つだけ付け加えた。

「桂さんも、高良さんも、灰原と言う子も……みんな死んだんだ」

現実はかがみの手をかいくぐり、脳に浸透し、そして……溶かした。

☆   ☆   ☆

「テメェ……バ・カ・シ・ン・ジ!」

ジョセフが胸倉を掴んでくる。
その顔は眉は吊り上って、血液が集中しているらしい頭は真っ赤に膨れ上がっている。
今にも爆発しそうだ。
厳密に言えばすでに爆発しているのだが。

「お前何考えてやがんだッ! いくらなんでも無神経に無神経がかかってるぜ、ええ?」
「クールに……」
「は?」

無神経の二乗だ、と付け加え自分を睨み付けている。
当然だろう、自分のした事は客観的に見て褒められる事では決して無い。
ジョセフの眼を見ると、本当に自分が間違った事をしたような気になってくる。

「クールに…………だ、ジョジョ」

心が現実から逃げる事を選択した時、もはや生きてはいけなくなる。
この舞台では多少乱暴ではあっても、仕方が無いのだ。
厳しいかもしれないが、現実を直接叩きつける、これもかがみのためなのだ。

「もし……今中途半端に希望を持たせたって…………本当に現実を知ったときのショックがでかくなるだけだ。だから……」
「それにしたってもうちょっと言い方ってもんがあんだろ! オメーのダチが死んだときの事ォ忘れたのか!?」
「それは感情論だジョジョ……そういうのは……に繋がる」
「は?」

どうやら一度目はよく聞き取れなかったようだが、もう一度同じ単語を使う。

「これ以上の犠牲は出さないためにも……『バグ』は取り除くべきなんだ」
「テメ……」
「…………ソよ」

まるで捨て猫のようなかがみのか細い声と、車内に突然充満した熱気が二人の言葉を止める。

「か……かがみ?」
「ウソよ……こんなの…………」

かがみを中心として、まるで空気が集まってゆくように少しずつ彼女の周りに陽炎が表れてくる。

──まさか!

三村の脳裏に一つの予感がよぎり、そして次の瞬間それは的中した。
彼女の纏っている陽炎は少しずつ形付けられていき、やがて精神のヴィジョンへとその姿を変える。
筋肉質の体格、そして神獣のように鳥の頭を持つスタンド……マジシャンズ・レッドへと!

「柊!」

三村の呼びかけも全く聞こえていないように、マジシャンズ・レッドはその口を開け三村の方を見る。

「シンジ!」

その口腔内から自分に向けて繰り出されてくる炎が、自分を呼ぶジョセフの声が、やけにゆっくりに感じた。

本日午後十二時、第二回放送の直後。
D-7田園地帯にて一つの爆炎が上げられた。

☆   ☆   ☆

燃え盛る乗用車のすぐ近くに落ちている木炭のようなものがある。
それが僅かにうごめいたかと思うと、ゆっくりと起き上がってゆく。
立ち上がると同時に体にへばり付いていた炭は全て零れ落ちた。

木炭の中から、まるでサナギが蝶々へとなるように、あるいは不死鳥の誕生のように、生まれたままの姿をした柊かがみが現れた。
周りを見渡すと後ろには燃え続ける車。
この中に居た人間はもはや生きてはいないだろう。
つまり……ジョセフと三村は…………自分が…………

再び吐き気が襲うがやはり吐瀉物の代わりにでてくるのは胃液だけだった。
全てを出し終えると、なぜだかクスクスと笑いがこみ上げてくる。
止まらない。

──二人とも死んじゃったのに、私だけ生きてる……フフ

何処へ向かうでも無く、たら道に沿って歩き始める。
もう自分がどうでも良くなり始めた。

──やっぱり、私って化け物だったんだ……だから
──不幸を撒き散らしてるんだ
──だから、私に近づいたから…………みゆきも、桂さんも、灰原さんも……死
──死

「イヤアアアアアアアアアアア!!」

頭を抱えて壊れた悲鳴を上げるかがみ。
その悲鳴に呼応するかのようにスタンドが回りに炎を撒き散らし、彼女を中心に焼け野原を作る。

──だから……私はもう誰にも近づいてはならない……誰も近づけちゃいけない……!!
──私に誰かが近づいたら…………きっとその人も……また……また……!

思考するのを止め、再びかがみは東の方向へ歩き始める。
どこへ行けばいいのかは分からない。
ただ、自分が消える事ができればそれでよかった。

D-7田園地帯、今ここに一人の少女が歩いている。
炎を背中に、その肌を余す事なく晒しながら十字槍を持つ姿は、まるで闘士のようでもあり、一種の芸術性すらも感じられる。

ただ、少女の瞳から絶え間無く流れる涙がやけに不釣合いだった。

☆   ☆   ☆

吹き荒れる熱風をものともせず、ただ三村はボンヤリと青い空を眺めている。
その顔にはススがついており、さっきまでの悪友が居たのならば『よ、シンちゃん男前!』とでもからかってくれた事だろう。

……そう、居たらの話なのだが

少しずつクリアになっていく頭の中で、先ほど見たものが繰り返し映像として流されてゆく。

かがみの身体から現れ出でた鳥人間──自分も支給品として配られ目の当たりにしたのでそれがスタンドだとはすぐ理解した──その口から自分に向けて放たれた炎がスローで自分に迫ってくる。
もはや避ける事も、スタンドを出して自分の身を守るのも間に合わない。
数瞬後にあの業火は自分の脳も一思いに焼いてくれている事だろう、迫り来る恐怖に震え上がる暇も与えてくれないのはある意味ありがたいかもしれない、
とわずかな間に頭はノン気にそんな事を考えていた。
いよいよ炎がゲームオーバーへの渡し賃となろうとした時、自分の身体に横から衝撃が走る。

衝撃に堪える手段も無く、勢いにまかせて窓をぶち割り、そのまま外へと投げ出される。
爆風で吹き飛ばされる最後の瞬間に見たもの……。
それは反対の窓に手を置いて、自分を両足で蹴飛ばした姿勢のままのジョセフ。
そしてそのジョセフを余す事なく、まるで液体が降りかかるように、包み込んだ紅蓮の炎だった……。
「なんで……こんな事になっちまったんだ…………?」
誰に言うでも無くただ呟く。
何が間違ってしまったのか?
何を間違えてしまったのか?

──なぜ、自分は生きてジョセフは死ななければならなかったのか?

三村の頭脳をもってしてもその答えは出てこない。

「俺はただ…………ただバグを……バグを取り除こうと…………」

いつの間にか、彼の瞳からもまた雫が溢れ出していた。

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険:死亡】




「死亡ォ~~? 死亡つったのか~~? 死亡だってェ~~?」

かがみや三村の居る場所からは少し南に離れた田んぼ。
そこに敷き詰められたドロが一部うごめきながら、路上へと這い上がって行く。
黒いドロのかたまりが道路を少しずつ這うさまは何ともシュールだ、というか子供なら泣く。
やがてそのかたまりは立ち上がると、腕でその顔を拭った。

現れたのは勿論、ゴキブリなんて言ったらゴキブリに対しノーベル賞クラスなほどのしぶとさを誇る男。

「じゃあ誰がこのジョセフ・ジョースターの代わりをやるんだっつーの」

その姿はいつかみたいにセクシーな唇がコゲたとか言う騒ぎでは無い。
彼の惨状たるや三村が男前ならジョセフはハリウッド・スターと言っていいだろう。

「まさかKOOLや露出狂なわけねえよなー?」

似たような台詞でも、本家と違って悲しいくらいの差があるのが不思議だ。

「ヘヘ……久しぶりでも結構うまくいくもんだな」

波紋キックで三村を傷つけないように外に脱出させ、かつ自分もはじく波紋を纏い炎を防ぐ……思えば随分な無茶だったが、成功したのだからとよしにする。
まぁそれでも衝撃はカバーしきれずに、フロントガラスから吹っ飛ばされてしまったが大したダメージも無い。

一度自分が乗っていた車が燃えている十字路に向き直る。
西側の方で三村が茶畑で仰向けのまま動かないが、生きているようだ。
後で泣き虫シンちゃんと言う名前をつけてやろう。
そして向かって東側、一糸纏わぬかがみは先ほどの鳥もどきを連れて真っ直ぐ歩いている。
鳥の方は絶え間なく炎を撒き散らしあたり一面を焼け野原にしながら進んでいた。

「OH、モーレツ~。ありゃ青少年には目に毒だぜ」

ふざけた事を言っておきながらも頭の中では状況の分析を忘れない。

(クッソー……かがみの奴どうしちまったんだよ。農家の人に申し訳たたんじゃあねえか)

当たり一面に炎を撒き散らしながらただひたすら歩いていくかがみ。
仲間が死んでショックを受けているのは分かるが、あそこまでになってしまうものか?

(とにかく……デイバックは燃やされて、武器はヨーヨーだけ。おまけにあのわけの分からん鳥公や、
見たところどういう訳かは知らんが、今じゃ懐かしい柱の男クラスの生命力を持ってると来たもんだ……。
一瞬だけなら炎でも波紋ではじけるが……あそこまでになるとちょっとヤベえぜ…………)

一つ幸運があるとすれば、かがみは自分の存在に気付かずに立ち去ろうとしている事。
今だったら三村をつれて逃げる事もできるだろう。
コレを最大限に生かすには……そう、例のアレしか無い。

「とにかく……突撃だぜェ!!」

ハッキリ言って勝ち目があるとは思えない。
だがそれでもジョセフは真っ直ぐかがみに向かっていく。

「泣いてる女の子見捨てちゃあ、第二部主人公の名が廃るのよ!」

彼女を何としてでも食い止めねば……そのためにはウジウジ考えてはいられない。
ジョセフにしてはめずらしく頭より先に体が動いていた。

「おれを燃やしたけりゃあ、そんな焼き鳥の火じゃあなくて恋の炎でなきゃ無理だぜ!」

【D-7 田園地帯/一日目 日中】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、若干の焦り
[装備]:ハイパーヨーヨー*2(ハイパーミレニアム、ファイヤーボール)、江頭2:50のタイツ(スパッツ)
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:あのスカタンを一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇ~~。
1:かがみを何としてでも止める
2:マップの端を見に行く。
3:「DIO」は警戒する、一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
4:ところで、何で義手じゃないんだ?
[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※承太郎、吉良、DIOの名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。

【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神、肉体的に疲労、若干の焦り
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。
1:ジョセフ……
2:ボーリング場、マップの端を目指す。
3:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
4:集められた人間の「共通点」を探す。
5:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
6:『ハッキング』について考える。
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジー・ダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:無傷、精神消耗(小)、精神暴走、スタンド能力暴走、全裸
[装備]:核鉄「激戦」@武装錬金、マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:誰にも近づかない、誰も近づけない、一人になる
1:私……化け物……化け物……
2:自分の変化が怖い。
[備考]
※第一回放送の内容はジョセフ達から聞きました。
※アーカードを不死身の化け物と思っています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
※精神の暴走により、マジシャンズレッドの破壊力と持続力、射程距離が飛躍的に上昇してます

※3人の荷物は、身に着けていたもの以外は燃えました


126:タバサの沈黙 投下順 128:『Freaks』Ⅱ
126:タバサの沈黙 時系列順 128:『Freaks』Ⅱ
116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン) ジョセフ・ジョースター 131:戦闘潮流
116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン) 三村信史 131:戦闘潮流
116:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン) 柊かがみ 131:戦闘潮流



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