『Freaks』Ⅱ ◆05fuEvC33.



定時放送の声が響き渡る住宅街で、向き合う男女。
否、かつては人であり未だ人の形でありながら人を捨てた怪物二体。
片やヘルシング一族が一世紀の時を掛け作り上げた、、最強のアンデッドにして至高の兵器────アーカード。
片や人間も性別も善悪も超越した、『星義』を掲げる不退転の現人鬼────葉隠散。
熾烈な闘争を繰り広げていた両者だが、放送と共に散の制止が入る。

「放送は聞いたな? これで貴様の敗北に、言い訳の余地は無くなった」
「クカカッ。まさかそれを言う為に、闘争を止めたのか化物?」
「闘いには貴賎があるのだ!! まして散は王者、勝利に一点の染みも残さぬ!!」
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!
 化物同士の闘争に貴賎を問うか!? こんな化物(フリークス)の共食いにおいて!?」
「散は何者よりも気高く尊く咲く花! その戦いもまた美しく咲き誇るべし!!」

言い終わるか終わらないかの内に、散が駆けた。
勢いはそのままに、近くに停めてある乗用車を蹴り飛ばす。
乗用車は自走と見紛う速度で、地面の際近くをアーカード目掛け飛んだ。
アーカードが上下左右何れの方向に、乗用車を避けても追撃を出来る構えで
右肘から強化外骨格『霞』内蔵の刃『冥門』を伸ばし、散自身もその後を追う。

アーカードは手刀で、乗用車をバンパーから縦方向に真っ二つに切り裂いた。
二つに別れた車体が、アーカードの左右を通り抜ける。
飛び散る部品が火花を散らして、アーカードの両目を眩まし
鳴り響く不規則な金属音が、アーカードの聴覚を妨げる。
左の車体の陰から姿を現した散が、冥門の伸びた右肘を打ち出す。
その刃がアーカードに届く前に、散の腹に左拳が打ち込まれた。
カウンターを喰らった散は、道路のアスファルトに突っ込んでいく。

「その程度では、吸血鬼の第三の目を眩ますに足らんよ」
額を指し笑うアーカードが、散に飛び掛る。
「気象兵器」

散が天を指すと、上空に光が収束した。
「戦術天誅!」
晴天を切り裂くように、散に落雷。

(招雷呪文!?)
アーカードは散に落ちた雷が、自身に向けられると読み
勢い込んで前に向かっていたのを、急激に右横に方向転換する

そのアーカードの移動先に、散の掌は向いていた。

「弔電!」
アーカードに向けて散の掌から、先程受けた雷が放たれる。

雷撃を受けたアーカードは瞬時に全身が黒く焼け焦げ、持っていたデイバックは中の支給品ごと四散し
フェイファー・ツェリザカを手から零し、その身体もその場に崩れ落ちた。

「他愛もない…………!?」
焼け焦げたアーカードの衣服や表皮が剥がれ落ち、中から雷撃を受ける前と変わらぬ姿が拍手をしながら現れる。
「面白い! まさか雷を操り、まさか吸血鬼の動きを遠間から読むとはな! 危うく心臓が止まる所だった」

(能力(ちから)の制限は感じていたが、気象兵器の威力まで落ちていたか)
「散り際に及んで、余裕を見せるなど笑止千万! 戦術天誅!!」
今度は上空から直接アーカードを狙い、雷を落とすが
下半身を黒犬獣に変え、駆けるアーカードには当たらない。
「貴様の雷撃は予備動作が大き過ぎて、動く的を狙い打つ事には向いていない。
 空から狙う場合には尚更だ、そうだろ現人鬼?」
(一度受けただけで、戦術天誅の短所を見抜くとは!)
その黒犬獣は枝分かれする様に増えていき、アーカードの上体を離れ散を取り囲む。
地上のみならず空中からの全方位より、散に黒犬獣が襲い掛かって来た。

(戦術天誅を警戒し攻め口を変えたか。だが霞に獣の牙で攻め、散に数で挑むなど下中の下策!!)
黒犬獣が牙を剥き散の脚に、胴に、右腕に在る強化外骨格の亀裂に群がる。
「超旋回!」
散は宙に飛び、全身の高速回転によって黒犬獣を弾き飛ばし
何匹かの黒犬獣が散の回転に巻き込まれ、すぐに再生を果たしまた散を囲む輪を作る。
個々が既存の如何なる肉食獣よりも強力で、一つの理知に統率された黒犬獣の輪は
今度はタイミングを合わせ、全天から散に仕掛けた。

「千脚!!」
空気が破裂した様な、打撃音が響いたのは一度。
だが散の周囲の黒犬獣全てが、蹴り飛ばされる。
先程仕掛けなかった、2匹を除いて。

連蹴りを終えた後の刹那、散の動きが空中で止まる。
止まった散の両脚に、残った2匹が喰らい付いた。

───散の視線が、自身の足下に向くのと
───アーカードが散の背後から、後頭部に爪を伸ばしたのは同時。
───それは散が連蹴りから、まだ一呼吸の後。
───そして音速を超えた連蹴りから一呼吸で、次の技を出せる技量と錬度こそが
───散を零式防衛術の使い手の中から、傑出させている一因。

両の踵からの冥門が、黒犬獣を貫きアスファルトに穿つ。
「無様な! 腹ががら空きだ!!」
散はそれを足場にして、アーカードの胴に掌撃を放った。
「超振動」
アーカードがその身に波紋を浮かべて、舞い落ちる。

「閃滅!」
そこへ火球が、散の掌より撃ち込まれた。
火球と言っても自然発生した炎等とは、比較にならない熱量。
「灰になるまで、燃え尽きるが良い!!」
衣服は瞬時に塵に、肉は瞬時に炭と化していく。
それでも火勢は衰えず。

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
炎が口を開けて、笑い始めた。
「吸血鬼はとても貪欲なんだよ、炎さえも糧とするほどにな」

放送を終えてから一分強の戦いの後、アーカードと散は間を取り睨み合う。

「散り際を心得ぬ者! 無粋の極み!」
王者の威を持って、散が猛る。
「クククッ、死に損ない(アンデッド)には褒め言葉だ」
不死者の威を持って、アーカードが笑う。
再び地を蹴り仕掛けたのは、図らずも両者同時。

民家の壁を砕きアスファルトを抉り、何時果てるとも無く鉄火を鳴らし続ける吸血鬼と現人鬼。
アーカードは強化外骨格で身を固め、攻防何れにおいても類稀な技量を発揮する散に致命の隙を見出せない。
散は無数の命を自らの物とし、陽光の下においても尽きせぬ再生力を発揮するアーカードを攻め切れない。
戦いは消耗戦の様相を呈してきた。

 ◇  ◆  ◇

吸血鬼にとっては終えるのを惜しむほどの、夢の如き愉悦の時間。

現人鬼にとっては度しがたき退屈と、己が全力を開放し尽くせる快楽の時間。

両者の力の拮抗に支えられた時間は、やがて勝負の天秤の傾きを見せる。

「貴様の纏う鎧は金属製でありながら、極めて高い弾性で衝撃を吸収する」
アーカードがバス停留所の標柱で、散に上段から殴り掛かった。
散が掌で払うも、間を置かず切り上げられた標柱を脇腹に受け独楽の様に回りながら飛ぶ。
「ハハハッ! しかし内部への衝撃の浸透は抑え切れない」
散は空中で体勢を立て直し片膝をつき着地するも、その頭上から標柱で殴り倒された。
「だからこうして、質量の有る物で殴打すればいい」
更に頭上から二度三度と殴りつけられるも、散は冥門で標柱を切り落とす。
地を蹴りアーカードから間を取った散は、乱れた息を整える。

柊かがみとの戦いを最後に、散との戦いまで傷を癒やすに充分な時間を取ったアーカードに
村雨、才人、防人、そしてアーカードと言った名だたる猛者を相手取り
前の戦いでの傷や疲れが癒える間もない連戦を行ってきた散が、徐々に押され始めていった。

「調子はどうだ? 肩で息をしているな、動きが鈍っているぞ。
 どうするんだ? 打てる手も無く負戦に望むか? おまえは狗か? 化け物か? それとも人間か?」
「ほざくな下郎!!」

散が両手を後ろの伸ばし、両手螺旋の構えを取る。
アーカードが一気に間合いを詰め、散の両手を掴む。
そして腕が無数の蟲に変化して、散に纏わり付き
右腕部分の亀裂から、霞の内部に侵入しようとする。

アーカードが笑む───とうとう捕らえたと。
散が笑む───とうとう勝機を得たと。

「迂闊なりアーカード!! 瞬脱装甲弾!」

霞が分離しながら、八方に飛ぶ。
散に纏わり付いていた蟲も、アーカードの身体ごと吹き飛んだ。
立ち上がろうとするアーカードの右脇腹に、砲撃を受けた様な衝撃が走る。

「零式鉄球 対超鋼炸裂形態!!」

アーカードが自分の体に、金属球を投げ込まれたと認識した瞬間
散の声に応える様にその金属球が、錨の如く膨張鋭角化。
内からアーカードの、右脇腹を破砕した。

血反吐を吐き動きの止まったアーカードの右膝に、散は零式鉄球を投げこむ。
零式鉄球は対超鋼炸裂形態に変形、アーカードの右膝下を落とした。

散は零式鉄球を投げた勢いで、泳ぐ身体を歯噛みしながら支えた。
投擲の挙動だけで削られていく体力で、なおも零式鉄球を投げる。

零式鉄球が左肩に打ち込まれ、アーカードの左腕を落とす。

零式鉄球が左腿を破壊、アーカードは両脚の付け根で立っている。

右胸の零式鉄球の変形が、内臓を撒き散らす。

右腕の肘から下が落ちる。

顔面に打ち込まれた零式鉄球4個を融合させた大玉が、アーカードの首から上を吹き飛ばす。

24個の零式鉄球を受けて血肉を舞い散らせ、内臓を削られたアーカードの
露出した内臓部分では散の首に在る物と同じ首輪が巻かれた器官、心の臓腑が露になった。

散はアーカードに背中を向け
「勝負あったな!!」
足を上げ、極限の為を作る。
(この機を逃せばもう戦う力は残っておらぬ! 再生する間を与えん!!)
散の最高の速度と威力を併せ持つ技、トルネード螺旋の構え。

「螺螺螺 螺旋!!!」

落ちたアーカードの脚が黒犬獣に化け、散に襲い掛かるが
トルネード螺旋の突貫力に、全て弾かれる。
散はアーカードの心臓に、手が届く間合いに入る。
そしてアーカードの心臓から手が生え、散の胸に伸びる。
その手には、対超鋼炸裂形態の零式鉄球が握られていた。

───トルネード螺旋は、その速度と威力ゆえ
───技を決め終えるまで、散は回避も防御も不可能。
───アーカードの持つ零式鉄球は
───精確に散の心臓を狙う。

(別に仔細なし!! 胸すわって進むなり!!)
───零式鉄球が散の胸板を、そして心臓を貫いた。
(たった三文字の不退転、それが心の花である!)
───微塵の躊躇も無い散の指先が、アーカードの心臓に伸びる。
(ならば散の滅技もまた不退転)
───アーカードの心臓から伸びた手が、衝撃に負け拉げる。
(我が螺旋! 挫ける事があろうか!!)
───その衝撃が、アーカードの心臓まで届き
───心臓は周囲の組織を引き千切り、後方に飛ぶ。

散の渾身の螺旋がアーカードを捻り千切り、爆砕に至らせた。
飛び散る肉片が、アーカードの形を残した心臓に舞い落ちる。
「…………逃げ……た……か……………………他愛もない!」

『うううおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
消え入りそうな散の意識に、怨嗟の叫びが聞こえる。
(その声は……………………冥か)

声の主は散との血盟を果たした、霞に宿りし滅霊・冥。
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
(何を嘆く冥よ! 人間の世の燃え尽きる日まで共に戦う誓い、散は忘れておらぬ)

周囲の肉片を集め、アーカードが少しずつ人の形を取り戻していった。
「言ったろう? 吸血鬼は両の目が無くとも、第三の目でとても良く見る事が出来ると」

散は足を出そうとし、右膝から崩れ落ちる。
(今あのおぞましき心臓(しん)の音を止めて、我等の血盟を果たす)

散は前に進もうとし、左膝から崩れ落ちる。
(だから、もはや冥が嘆く事は無い)

散の上体が崩れ落ち
(我等は…………常に一つだ)
やがて動きを止めた。

 ◇  ◆  ◇

『 怒  怒  怒 』

装着者が死して、霞に宿る力は益々膨れ上がる。
『よくも! よくも! よくも! よくも心をつないだ散を殺めたな!』
冥の怒りのままに、地球揺るがせる程に。
『かくなる上は人も大地も!
 生きとし生ける全て終わりにしてやる……………………!!?』

冥の滅霊が宿りしは、息子の玉太郎により作られた霞の内部生体組織。
アーカードは、それを散ごと捕食していた。
吸血鬼の捕食は、通常の動物が行うそれとは根本的に異なる。
それは捕食対象の全存在、それこそ魂ごと自分のものにする事。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
冥の断末魔の叫びが上がった。
『止めろ! 止めろ! 止めろ! 玉太郎の生命でこしらえた超鋼に手を出すな!!
 わたしにはまだ成さねばならぬ事がある!! どす汚れた人間を殺し尽くさねば済まぬ!!!』
「言いたい事はそれだけか?」

冥の足下に死の河が押し寄せる。数え切れない魂によって、全てを飲み込む死の河が。
『うううううううううううううううう!』
「散は信念に殉じたぞ。だが貴様はどうだ? 自分の死と無関係な者に刃を向け続け
 挙句、星義を掲げた血盟を忘れ星ごと殺し尽くそう等と。
 貴様は信念の下力を使うのではなく、力に溺れた敗北者だ」

逃げ場も亡く足掻く冥の胸元まで、死の河が押し寄せる。
『うううううううううう……!』
「この期に及んで、怨嗟の呻きしか上げられんのか?
 つくづく下らん、おまえはまるでくその様な女だ。犬のくそになってしまえ」

『うう……う…………う……』
冥の全ては死の河に沈んだ。

 ◇  ◆  ◇

葉隠散と強化外骨格『霞』の生体細胞をそこに込められた怨霊ごと食い尽くし、後に残ったのは無骨な金属と機械の抜け殻のみ。
ようやくフェイファー ツェリザカを拾いに行けるまで、身体を構築できた。
だが彼の戦いの爪痕から、私は未だ回復し切れないでいる。

現人鬼・散……本当に素晴らしい!
かつては人の身でよくぞあそこまで練り上げた。

幾千の獣を蹴散らし、幾万の兵を打ち倒し
戦列を切り崩し、城壁を突き崩し
その後方へ その後方へ
くたびれ果て、自らの心臓に杭を打たれても
我が城内の領主(ロード)の胸に、杭を突き付けた。


そして彼等が残した記憶は、実に興味深い。

マリア、村雨良、劉鳳、キャプテン・ブラボー
そして葉隠覚悟。

ククククク、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――ッ!!!!
この場には吸血鬼やスタンド使い以外にも、これほどの猛者が居るとは。
私の知る如何なる戦士とも異なる、未知の法(ロウ)を司る戦士が。
それらが全て敵なのだ。
尽くが私の命を狙う敵なのだ。

これほど心躍る事が有るだろうか!

不死の王(ノーライフキング)が、歓喜に震えながらその爪と牙を構築していく。
唯殺す為に、そして殺される為に
彼の望みがまだ果たされていないが故に。

【葉隠散@覚悟のススメ:死亡確認】
【残り40人】


【A-7 ゴルフ練習場周辺/1日目 日中】
【アーカード@HELLSING】
[状態]:ダメージ大(自然治癒中)、気分高揚、『クロムウェル』第3号第2号第1号開放
[装備]:フェイファー ツェリザカ(4/5)
[道具]:無し
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
2:DIO、柊かがみとも再度闘争を楽しむ。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。セラスの死を感じ取りました。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散の記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・防人の情報を得ました。


127:もうメロディに身を任せてしまえ 投下順 129:大切なのはゲームのやり方
127:もうメロディに身を任せてしまえ 時系列順 129:大切なのはゲームのやり方
112:『Freaks』 アーカード 138:遥かなる正義にかけて
112:『Freaks』 葉隠散 死亡