戦闘潮流

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mangaroyale

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戦闘潮流 ◆3OcZUGDYUo



『――それでは、バトルロワイアルを続行する!!』
二回目の定時放送が終わり、再び禁じられた行い……バトルロワイアルを続行させる宣言が参加者に告げられる。
そしてその宣言に対して表情を全く変えずにクルーザーを走らせる男が一人。
このバトルロワイアルを演出した秘密結社、BADAN大首領の器となるべく
その身を99%機械の身体に改造されたパーフェクトサイボーグ……村雨良が居た。

「禁止エリアか…………」
ボソッと特に興味がなさそうに村雨は呟く。
要はそのエリアに入らなければいい話であって、既に村雨は地図を数分前に一度見ただけで完全に記憶しており、
先程の放送の内容も一文字も書き留める事もせずに記憶した。
パーフェクトサイボーグである事による思わぬ利点である。
だがそんな事は村雨は気にも留めずに別の事を考える。

「平賀才人……桐山和雄…………」
双剣を携え、自分を打ち負かした葉隠散に一歩も引く事無く己の意思を最後まで貫き通し、
劉鳳という男を助けるために命を落とすことになった平賀才人。
どことなく自分と同質なものを感じさせ、あの散の技を半端ながらも盗み、
こちらも最後まで散に対して一歩も引く事無く命を落とした桐山和雄。
彼らの名を放送で聞き、ZXはどこか複雑な感情になる。
別に彼らの死を悲しむ感情はZXにはない。
彼らは自分の仲間、散が憎むべき対象である人間。
たとえ道端で死のうとも自分には関係がない……そのはずだった。
だが、今の村雨には悲しみとは別の感情……そう、彼はどこか彼らの死が勿体ないと感じていた。

「……奴らと闘ってみたかったのだがな……」
彼らの死を間近で見てきた事により、何か記憶の糸口を掴んだような錯覚に囚われた村雨だが、
直接彼らと闘った経験は彼にはなかった。
特に自分と似た何かを感じ取った桐山の死亡は村雨にとって残念な事だったがいつまでもそんな事を考えていられない。
未だ見ぬ強敵を求めて更にクルーザーの速度を上げ、村雨はまた別の事を考える。

「どんな望みでも叶う権利…………か」
放送で発表された褒美の事についてZXは淡い希望を抱く。
もし自分の記憶を手に入れる事さえも出来るなら……こんなに良い話はない。
ならば自分が取る道は――
「なんだって……やってやるさ。俺に記憶をくれるのならばな」
勿論このバトルロワイアルという殺し合いに乗る事。 BADANの兵として、
世界中の軍隊と闘うため出撃を行おうとする時に仲間であるヤマアラシロイド、
ニードルに言った台詞を意識したわけではないが再び村雨は呟く。
クルーザーをまるで疾風のように走らせながら。
そして風を切る感覚をその身で感じながら村雨はふと思い出したかのように考える。
(確か以前俺は……こんな風に何処かを…………)
このクルーザーというものには……いや、どちらかに言うと説明書に記入された
バイクというものに村雨は前々からなにか懐かしいものを感じていた。
BADANの兵としてヘルダイバーという戦闘バイクに乗っていた時よりずっと前から自分は知っていたような感覚を……。
そこまで村雨は考え、やがて考えるのをやめた。
何故なら村雨の前方でドス黒い煙が空に浮かび……クルーザーの速度は更に上昇したから。
◇  ◆  ◇

田園地帯で一人の少年が呆然とした表情で立ち竦んでいた。
数分前は放送で衝撃的な内容を告げられても全く動じず、
冷静にこの状況を打開しようと思考を練っていた第三の男、三村信史である。
今の三村は食料などが入っているデイパックは焼かれ、持ち物は彼の頭に入っている
クレイジー・ダイヤモンドのDISCとポケットに入れておいたトランプ銃、
そしてエニグマの紙に入れられたギターだけという有様である。
こんなあまりにも頼りない装備であるが今の彼にはそんな事よりも、
たった今自分たちに起こった事について考えるのに必死だった。

(まさか柊がいきなりあんな事をするとは……ちっ!俺とした事が……)。
かがみの服に付いていた血からわかるように恐らく自分たちと出会う前に何かとんでもない事に巻き込まれていたのだろう。
だが三村は今でも自分の言った事には間違いはなかったと信じていた。
こんなクソッタレのプログラムでは甘い夢は見ずに、辛い現実でも目を向け、
その現実に対し最適な行動をとる事が何より求められていると三村は思っていたからだ。
だが……現実は三村にとってあまりにも過酷な結果を齎した。

(ジョジョ……てめえ何で俺なんかのために……)
このプログラムで初めて出会い、仲間となったジョセフ・ジョースター。
自分とあまり歳が変わらないのに妻を持っているらしく、筋肉隆々な身体を持っているくせに
時々人を馬鹿にしたようなオカマ口調になるお調子者ジョセフ。
何処か憎めない奴だったが決して悪い奴ではなく、正真証明の仲間だった男が
好きな音楽すら知らない一人の少女によって殺されたという事実が三村に重く圧し掛かる。

(落ち着け……あの爆発だ。あんな爆発じゃあジョジョはもう……)
――死んだ
何故かその言葉を三村は口に出す事が出来ない。
この異常とも言えるプログラムを潰すためには一刻も早く、現実を受け入れ行動を起こすべきだという事は三村もわかっている。
だが三村は未だ最善の行動を取ることが出来ない。
それほどまでにもジョセフの死は衝撃的であったため三村の思考は纏まりを見せていなかった。

(恐らくあの鳥人間みたいなのは俺のクレイジーダイヤモンドと同じスタンドってやつだ。
だが向こうには奇妙な槍もあるし、あの鳥人間の炎は強力すぎる……)
一瞬で自分達が乗っていた自動車を炎上できる程の火力をかがみが保持している事が三村を惑わせていた。

(正面から向かったら間違いなく丸焦げか……どうする?)
今、自分が行うべき最適の行動を三村はその頭脳で模索する。
どうにも考えが纏まらない……そんな時彼の視界にまさに疾風の速さで飛び込んでくるものがあった。
白、赤、黒の三色で彩られたバイク、クルーザーに乗った村雨良の姿が。
◇  ◆  ◇

爆炎が立ち昇るエリアD-7で柱の男達を打ち破った波紋使い、ジョセフ・ジョースターが目標に向かって走っている。
常人ではとても考えられない速度で走っているジョセフだが、全く息が切れている様子は無い。
既に一流の波紋使い、リサリサの下で修行を積み、波紋をマスターしたジョセフにとってこんな事はお茶の子さいさいだ。

「何度思い出してもヒヤヒヤするぜ!ぼくちゃんもうビックリしてハートが止まりそう!」
おどけた調子で、だがそれでいて表情は真剣なものを崩さずにジョセフは走る。
彼の両の眼に映っている一糸纏わぬ少女、柊かがみの下に辿り着き、彼女の歩を止めるために。

「しかしあんな鳥公を出せるとはかがみもなかなか芸達者な奴だな……そのうちサーカスにでもスカウトされるぜ!」
だが、突如かがみの傍に現れた鳥と人間を掛け合わせたようなもの、
マジシャンズレッドの存在はスタンドを知らないジョセフにとって全く未知数の存在である事が不安のしこりを残している。
柱の男達とはまた違った闘気を放つ存在に対してジョセフの思考は思わず『一目散に逃げる』と、
彼の十八番を表す行動を行おうとしたが、彼はそれを拒否した。
柱の男達との闘いとは違い、今ジョセフが行おうとしている事は別に自分の命が掛かっているわけでもないので、
逃げようと思えば楽に逃げられるような事である。
しかしジョセフはかがみを助ける事を決めた。
ジョセフはかの誇り高きジョースターの血統を継ぐ者。
基本的にジョセフは仲間を見捨てるような者ではなく、それに彼にとってかがみはもう立派な仲間なのだ。
これ以上理由を求めるのは無意味な事。
そして遂に彼はお目当ての少女の後方約数メートルの地点に到達する事に成功する。
虚ろな表情を浮かべたかがみの後方に。
◇  ◆  ◇

『貴様も私と同じ化け物か』
いつかあのアーカードっていう化け物が私に向かって嬉しそうに言った言葉。
その言葉を受けた時はあいつを倒す事に夢中であまり気に留めなかった。
でも……支給された核鉄のお陰と言えど何度も破壊されても、直ぐに治った私の頭や体。
こんな事はSF映画やこなたが読むような漫画の世界でしかあり得ない。
ましてや普通の高校に通う普通の女子高生である私が……。
――私は化け物じゃない!――
今まで私は何度もそう思ってきた。
でも思えばみゆきも灰原さんも桂さんも死んでしまった……。
嗚呼、そういう事なんだ……。
きっと私に近づいたから……私が化け物だから……私がこの世界に存在しているからみんな死んじゃったんだ。
こんな私がつかさやこなたに出会ってしまったらきっとみゆき達のようになる……そんなの嫌だ。
だから私は決めたの……誰も来る事は出来ない場所に行く事に。
エリアH-7、其処がこの私を天国に連れて行ってくれる場所……いや、化け物の私が天国に行けるなんてうまい話はないわよね。
そう、訂正すると地獄に行ける場所……私は其処に行くために真っ直ぐ歩き続ける。
これでもう誰にも迷惑を掛ける事はないわ……なのにどうして?
どうして私に向かってくるの?……今の私にはこのマジシャンズ・レッドはうまく扱えないから危ないのよ?
……だから今度こそ……早く逃げてよぉ……ジョジョ。
◇  ◆  ◇

「おっとと!危ねぇ危ねぇ!」
大地を蹴り、勢いよく跳躍する事でかがみの前に回り込もうとしたジョセフだったが、
かがみのマジシャンズ・レッドが吐き出した高温の炎によりそれは叶わなかった。
辛うじて炎を避わす事に成功するが、間髪入れずに第二、第三の炎がジョセフに向かって
吐き出された事により彼はかがみの元に辿り着く事は出来ずにいた。

「全くあの鳥公は何食ったらこんな物騒なもの出せるんだぁ?
だが!こんなチンケな炎に燃やされるジョセフ・ジョースターじゃねぇぜ!」
軽口を叩きながらジョセフは軽快な動きで今もなおマジシャンズ・レッドが吐き出し続ける炎を避わし続ける。
波紋の修行、そして柱の男達との激闘を既に体感したジョセフにとってマジシャンズ・レッドの炎を避わし続ける事は造作も無い事だが、
あまりにも激しく連続的に襲ってくる炎がジョセフの進行を防いでいた。

「おーい!かがみ~ん。そろそろその鳥公をどうにかしてくれねぇかぁ?」
ジョセフは知る由も無いが今のマジシャンズ・レッドはかがみに完全に操れるものではなく、
かがみが彼女自身に抱く負の感情は計り知れないものとなっていた。
そしてスタンド使いの精神の力で映し出される魂のビジョン、スタンドであるマジシャンズ・レッドは
そのかがみの負の感情によりいわば暴走状態になっていた。
また本来ホワイト・スネイクの能力によって取り出されるスタンドDISCは
いくらスタンドのパワーが強くても、DISCを使用する者に資質がなければ使いこなす事は
出来ずにDISCは頭部から弾き飛ばされてしまうものだった。
だがこのバトルロワイアル用にBADANが加えた改造によりその問題は解決されたが、
同時にスタンドパワーの安定さに不安が生じてしまっていた事も今回の暴走に関係していた。
そう、第一回放送直後に制限を打ち破り、キング・クリムゾンの本来の能力に近づいた力を発揮した
鷲巣厳がやってみせた事もこの事に関係していたというわけだ。
暴走状態のスタンドはスタンド使いのコントロールを離れるが、基本的にはスタンド使いを守るように動く。
そのため『一人になりたい』というかがみの意思を受け取り、マジシャンズ・レッドは怒涛の攻撃でジョセフを攻めたてていた。

「なぁ!かがみ~ん。また俺とかがみとシンジの三人で面白おかしく話でもしようぜぇ?」
ヒョイヒョイとマジシャンズ・レッドの炎を掻い潜りながらジョセフは叫ぶ。
そしてそのジョセフの言葉に今まで彼に対して背を向け、歩き続けていたかがみの身体がビクンと立ち止まる。
全身を小刻みに揺らしながらかがみはゆっくりとジョセフの方へ振り向く。

「…………どうしてよ?」
「あぁ?悪りぃかがみ。もう少し声を張り上げてくれねぇか?」
かがみが言葉を発している時も依然マジシャンズ・レッドの攻撃は続いており、
攻撃の時に響き渡るマジシャンズ・レッドの咆哮がかがみの小さな声を掻き消したので
ジョセフはかがみの声をうまく拾う事は出来なかった。
そのジョセフの態度がどこかかがみの心を掻き乱す。

「どうしてそんな事を言うのよ!?私と関わった人……
みゆきも灰原さんも桂さんもあんたが気休めに言った三村も……みんな死んじゃったのよ!?
私と……私と関わったから……私なんかがいたから!!!」
「お!おいかがみん!未だシンジは生きて……おわぁ!危ねぇ!!!」
声を震わせながら、ありったけの声で叫ぶかがみの言葉にジョセフは疑問を思わず覚えるが、
休む事なく続くマジシャンズ・レッドの攻撃で疑問を口にする事が出来ない。
だが、三村が死んだという誤解がこの暴走を招いた要因の一つになっている事に気付いたジョセフは
その誤解を解くために再び言葉を発しようとする。

「いいかぁかがみ!シンジはなぁ……ん?何だ?」
だが、今まで自分達が乗っていた乗用車が発していたエンジンの唸り声と同質の音が
後方から迫っている事にジョセフは気付き、途中で言葉を止める。
そしてその音のする方向を振り向くと……一台のバイクがこちらに向かってきていた。
◇  ◆  ◇

ジョジョが生きていたのは本当に嬉しかった……。
もうジョジョを危険な目に遭わせるわけにはいかない……けどもうマジシャンズ・レッドは私の言う事を殆ど聞いてくれないの。
それならこの激戦を手放し、舌を噛み千切ってやろうとも考えたけど身体が石のように固まってしまった……。
マジシャンズ・レッドが私を生かすために邪魔したのかな……それとも未だ私は死にたくないのかも……化け物なのに。
そんな事を考えているとジョジョの後ろから変なバイクに乗った人が私の方に向かってきた。
これ以上私に関わらないで!……そう願うとマジシャンズ・レッドはその人に向かって炎を吐き出してしまった……
そんなつもりはなかったのに。
そして炎に包まれたバイクから……赤い影が飛び出し、何か銀色に光るものが私の方に凄い速さで飛んできて……
血を撒き散らしながら私の左腕を持っていってしまった。
――私やっと死ねるのかな――
そう思ったけど直ぐに激戦の力で私の左腕は元通りに治ってしまう……なんでよ……
私もう嫌なのよ……もう誰にも迷惑は掛けたくない……。
だから…………はやく……殺して……。
◇  ◆  ◇

(何っ!?)
マジシャンズ・レッドの炎が迫る瞬間に変身を完了し、炎に包まれたクルーザーから飛び降り、
肘に装備された十字手裏剣をかがみに放ったZXは彼女の予想外のタフネスに驚く。
生身の人間が自分と同じように瞬時に自分の身体を再生する事が出来るとは思ってもみなかったからだ。

(やはり先程の少年の話は本当だったか……)
三村から聞いた情報は正しかったとZXは考えながら地面に着地する。
そして間を置かずに大地を蹴り飛ばし、目標に向かって一直線に突撃を開始する。
そう、あの平賀才人が使っていたような人の形をした物体。
マジシャンズ・レッドに向かって。

「オオオオォォォ!」
たとえ千切られようとも殴る事を止める事はないその両腕を使い、
ZXはマジシャンズ・レッドに向かって拳を揮う。
だがマジシャンズ・レッドは近距離パワー型のスタンド。
ZXの打撃をその筋肉で構築された両腕で受け流し、ZXからのダメージを防いでいく。
そしてマジシャンズ・レッドがZXの顔面に向かって反撃の左腕を繰り出すが
ZXが頭部を左腕に逸らした事でマジシャンズ・レッドの拳は虚しく空を切ってしまう。
左腕を伸ばしきった事により、マジシャンズ・レッドの左脇腹ががら空きとなり、
そこにZXの右足が勢いよく飛び込む。

「ッ!?」
だが驚きの声を上げたのはZXの方だった。
確かにZXの右足は完全にマジシャンズ・レッドの脇腹に入り、仰け反らせる事に成功したが
同時にかがみも苦痛の表情を浮かべていたからだ。
ZXは知らない事だったがスタンドへの攻撃は同じように本体であるスタンド使いに伝達される。
激戦は身体の欠損を認識する事で復元を開始するので、打撃によるダメージに対して耐性はない。
パーフェクトサイボーグであるZXの強烈な右足はかがみに大きな苦痛を確実に与えていた。

「くっ!……ウオオオオオォォォ!」
自分の敵であるかがみが苦痛な表情を浮かべている事に何故か思わずZXの動きは止まるが、
直ぐにその停止を振り切り、ZXは追撃と言わんばかりにマジシャンズ・レッドに向かって右腕を渾身の力で繰り出す。
そう、然程遠くない本来の世界の未来で誰に名付けられたわけではなく、
自らの名を借りて名付けた拳……ZXパンチを。
当たれば到底無傷では済むわけがないその拳がマジシャンズ・レッドに向かう……が。

「――ッ!?」
何故かZXの拳はマジシャンズ・レッドの顔面の前で停止してしまう。
そしてそれを好機と感じ取ったマジシャンズ・レッドの口がZXに向かって大きく開き……紅蓮の炎がZXを襲う。
自分の不可解な行動に動揺したZXにそれを回避する手段は無かった。


「ヒュー!おい赤ムシ野郎!大丈夫かぁ?」
ZXに炎が完全に直撃する瞬間、ジョセフはZXとマジシャンズ・レッドが闘っている間に素早く用意した
二つのハイパーヨーヨーの糸をZXの足に絡ませ、力一杯引き寄せる事でZXへの攻撃を空振りにさせる事に成功していた。

(しかしこのスカタンはかがみの腕を切りやがったふてぇ野郎なんだが……なんで助けちまったんだろうなぁ?)
咄嗟にあまり考えないで行動に出たジョセフは自分の行動を少し不思議に思う。
だが直ぐに「まぁいいか」とジョセフは思い、素早くマジシャンズ・レッドの方へ向き直る。
しかしたった今自分が見たようにどうやら目の前の鳥公へのダメージはそのままかがみへのダメージとなるようだ。
それならば取り合えずこのヨーヨーでかがみの歩みを止めようと思い、ジョセフは構える。
「おい!赤ムシ野郎!聞いてぇんのかぁ?」
自分の直ぐ横に居る、完全には炎を避わしきれなかったZXに向かって叫びながら。
◇  ◆  ◇

(何故だ……何故俺は動きを止めた……?)
自分が先程立て続けに起こした不可解な行動にZXの頭脳は悲鳴を上げる。
完全に相手の顔面を捉えた筈の右拳によるZXパンチ。
自分の右足がマジシャンズ・レッドに直撃した際かがみが見せた苦痛の表情を見た事による一瞬の停止。
これらの行動を起こした自分に対して。

(まさか俺は……あの女とあの少女を重ね合わせているのか……馬鹿な)
何も服は着ずに一糸纏わぬ裸体を晒し、腰の高さまで届く長い髪を生やし、
まるで全てに絶望しているかのような悲しみに満ちた両の眼。
そして命の象徴である女性という性。
背丈や顔は違えど言えども今、再びZX達に背を向け歩き出しているかがみは
どことなくいつも村雨に悲しい目を向けていた女性……村雨静に似ていた。
そのためZXは無意識的に……そう、第一撃に放った十字手裏剣も実際は頭部を狙ったものではあったが
無意識的に左腕に逸らしてしまっていた。
――あの少女を破壊してしまったらあの女に二度と会えないかもしれない――
(馬鹿な!そんな事が……あるハズはない……)
あまりにも理屈的ではない考えを真っ向から否定しようにもどこか完全には否定できない
自分に対してZXはもどかしく感じてしまう。

「おい!赤ムシ野郎!聞いてぇんのかぁ?」
だが、そんな時自分を助けたジョセフの声を受け取り、一先ず考えを中断しZXはかがみを倒す事に集中する。
(この男はあと回しだ……今は……あの少女を殺す)
自分が感じた奇妙な感情についての答えを探し出すために。
一流の波紋使いであるジョセフ。
BADAN大首領、JUDOの器と成るべく改造されたZX。
この二人の戦闘力は参加者の中でもかなり上位の位置にあるだろう。
だが、その事実に反して二人は未だかがみを倒すどころか足を止める事も出来ずにいた。
暴走状態により破壊力と持続力、射程距離が飛躍的に上昇したマジシャンズ・レッドが彼らの前に立ちはだかっていたからだ。
しかしマジシャンズ・レッドが居るとはいえども彼らの力があれば、かがみの動きを止める事は難しい事ではなく、むしろ容易な事だった。
だがジョセフは只、かがみの動きを止めるために動き、ZXはかがみを倒そうとは思えども致命傷を与えられる肝心な時に
動きが止まってしまい、何より二人の間には「チームワーク」という文字が存在していなかった事が決定的な要因になっていた。


「ぐっ!そろそろやべぇぜ……」
先程までの余裕さが嘘のようにジョセフは珍しく弱気な声を発する。
ついさっきヨーヨーで今は自分達の方を虚ろな目で見つめるかがみをひとまず沈黙させようしたジョセフだったが、
またしてもマジシャンズ・レッドの妨害を受け、逆に屈強な拳で顔面に一撃貰ってしまっていた。
しかし、そんなダメージは今まで柱の男達との闘いで何度も受けているのであまり気にしている様子はジョセフにはない。
それよりもマジシャンズ・レッドの吐き出した炎で今、ジョセフ達が居る田園地帯に生えた田んぼに火が移り、
煙が昇っている事が気がかりだった。

「この煙を見て、いかれた野郎がやって来たらマズイぜ……おい!赤ムシ野郎!」
いつ危険人物がこの場にやって来るかわからないこの状況を打開するべく、ジョセフはZXに声を掛ける。

「……何だ?」
ジョセフが拳を貰ったようにZXはマジシャンズ・レッドの炎を受けており、全身に焦げ後が残っていた。
まぁ自己修復機能が手伝っている事もあり、ZX本人は然程気にしている様子はないが。

「てめぇ、俺に手を貸せ!」
「……断る。俺は一人で闘う……それが俺の存在理由だ」
「はぁ!?てめぇ何言って……どわぁ!」
二人が立つ位置にまたも炎が吐き出され、ジョセフの言葉は中断を余儀なくされる。
(何だぁこいつは?もしかしてアレか?あのワムウみたいに強い奴と闘いてぇー!っていう
戦闘狂かぁ?なら……やりようはあるぜ!)
ZXの拒否を示す言葉を聞き、ジョセフは即座にZXの性格を推測し、妙案を思いつきジョセフの表情はみるみると明るくなる。
今まで自分の窮地を何度も救ってきた自分の話術……そう、嘘を付く事でこの状況を打開しようとジョセフは考え、彼は行動に移す。

「赤ムシ野郎!てめぇも俺もかがみも超ハッピーになれるアイディアを聞きたくねぇかぁ!?」
「…………」
「て、てめぇ……無視するとは流石に温厚な俺でもプッツンいくかもしれんぜぇ!?」
ジョセフの提案には全く反応せず、ZXはマジシャンズ・レッドに再び飛び掛り、肉弾戦を展開し始め、その事に対してジョセフは憤慨する。
やがて一撃、マジシャンズ・レッドの左肩に拳による打撃を加え、ZXは後方に向かって跳躍。
一旦、マジシャンズ・レッドとの距離を取り、再びジョセフの傍に立ち、口を開く。

「……言ってみろ」
実際、ZXの方も今の状況は芳しくなかった。
未だ自分の不自然な行動についての答えは出ずに、尚且つ肝心な時に動きが止まる自分に対しての苛立ちは募っているZX。
この状況を打開出来る策があればZXにとっても知りたいものだった。

「へっ!テメェ、アレだな。意地を張って素直になれなくてつい辛く当たるっていう○ンデレっていう奴だな!
良いかぁ?耳の穴かっぽじってよく聞けよぉ!」
◇  ◆  ◇

何で……?何であんた達は逃げてくれないの……?
私のマジシャンズ・レッドはあんた達を完全に敵だと思ってるのよ……。
だから私が禁止エリアに入って、死んじゃえばみんなが傷つく事はない……みんなが幸せになれるのに。
そうよ……それしか……私が死ぬしか方法はない……そう思っているのに。
『赤ムシ野郎!てめぇも俺もかがみんも超ハッピーになれるアイディアを聞きたくねぇかぁ!?』
そんなのあるわけないわよ……。
もうそんな夢見たいな事言わないで……目が眩みそうになるくらいの笑顔を見せないで……。
ジョジョ、あんたが私を元気付けようとそんな事を言ってくれるのは嬉しいわ……でもあまりにも現実的じゃない……。
私はもう……白馬の王子様を信じるような年じゃないの……。
だから…………もういいの。
はやく……………………逃げ…………て。
◇  ◆  ◇

「……さっきの話は本当だろうな?」
「Oh!このジョセフ・ジョースターは逃げも隠れもするが嘘はつかねぇぜ!だからそっちもさっき俺が言ったようにしろよ?」
「……わかった」
あまり信用して無さそうな口調で訊ねるZXにジョセフは自信満々に嘘で塗り固められた言葉で応え、ZXはとりあえず了解の意を示す。
流石はジョセフと言ったところか。
全く表情を変化させず、嘘を言ってのける彼はきっと最新の嘘探知機にも反応を示さないだろう。

「心配すんな!後でかがみより強ぇーこの俺がてめぇと闘ってやるって!」
つまりジョセフがZXに提案した事をかいつまんで言うとこうだ。
『自分に協力してかがみを止める事を出来たら、かがみより強い自分がお前と闘ってやる』
ZXにとって、強き者……散、劉鳳のような人物との闘いは最大の望みであり、かがみとの闘いは既に充分体感し、
どうにも彼が求めているものとは違ったように感じていた。
そんなZXにとってジョセフの提案はそれほど悪いものではなく、
『ジョセフがかがみより強い』という事は彼にとって魅力的なことでもあり同時に納得出来るものであった。
なぜならジョセフは別にかがみとやりあうつもりはないので今までの彼の動きは手加減をしているものとZXは思っており、
だからこそジョセフの強さは確かなものであると納得したのは決して不思議な事ではないからだ。

「……わかっている……やるぞ……」
そういってZXは膝に装備された衝撃集中爆弾を手に取り、瞬時にマジシャンズ・レッドに向けて投げつける。
「すまねぇかがみ!ちょーっと我慢してくれ!」
出来るだけかがみにダメージがいかないように、マジシャンズ・レッドの足元を狙って。

「……うっ!」
喘ぎ声をかがみは苦しそうに上げる。
そして彼女の後ろに発現していたマジシャンズ・レッドは爆風によるダメージで今にも消えかかっていた。
マジシャンズ・レッドは炎を自在に操る能力を持つが、既にジョセフ、ZXの二人を相手に全力のスタンドパワーを
発揮した闘いを数十分以上続けており、いくら暴走状態でスタンドの持続力が上がっていると言えどもその能力を使う力は残されていなかった。

「赤ムシ野郎!あの鳥公に糸みたいなものでも絡ませて動きを止めろ!」
「……任せろ」
そのジョセフの言葉にZXは素直に応え、このバトルロワイアルに連れてこられてから未だ使用していない両腕に内蔵された武器、
マイクロチェーンを使用するために両腕を伸ばし、マイクロチェーンをマジシャンズ・レッドに向けて射出する。
二振りの鋼鉄の鎖がマジシャンズ・レッドの身体に絡みつき、同時にかがみの動きを止める事に成功する。

「ひゅー!こいつはグレートだぜ!やれば出来るじゃねぇか!こんどは俺がやる番だな!」
そしてジョセフも間髪入れずに行動を起こす。
勿論、かがみを倒すのではなく、暴走しているマジシャンズ・レッドに取り合えず消えてもらうためにZXの目の前に立ち、
ZXの両腕から伸びているマイクロチェーンに両腕を添える。

「何で……何でそこまで私のために頑張るの……?」
その時、かがみがぼそりと呟いたのを聞き、思わずジョセフの動きは止まる。
かがみの言葉に対して心底不思議そうな表情を浮かべて。

「なーに言ってんだかがみ?俺達仲間だろ?それだけで充分じゃねぇか」
「私が……私がうまくやらなかったからみゆき達は死んだのよ……私のせいでみんなは……だから私が死んじゃえば……」
今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、かがみは俯きながら言葉を紡ぐ。
自分に対してあまりに大きい自己嫌悪に押し潰されるのを必死でこらえるように口を動かして。
だがそんなかがみの悲痛に塗れた言葉を受けてジョセフは……笑っていた。
下品な笑い方ではなく、どこか穏やかに。

「あのなぁかがみ……失敗なんて誰にだってあるもんだぜ?
勿論、この俺だって何度も手痛い失敗を繰り返してきたしよー。
それに何でかがみんのせいになるんだよ?なんかおかしくねーかそれ?」
「そ、それは私があの化けものを倒す事が出来なかったから……だからきっとみんな私の事を恨んでるから……うっ…うっ……」
ジョセフの穏やかな言葉にかがみは少し言葉が詰まりながらも応えるが、今まで流していた涙の量が更に増え、
除々に今にも消えそうな声となってしまう。
そんなかがみをジョセフは呆れた様子で見ている。

「全くかがみは俺とは違ってバカみてーに責任感がつえー奴だな……だがな!どうしても気に入らねぇ事があるぜ!」
右の人差し指をかがみに向けてジョセフは言い放つ
先程とはうってかわって怒りを表しながら言葉を更に紡ぐジョセフを見てかがみは呆気に取られていた。
◇  ◆  ◇

責任感が強い……そんな事は無いわよ……。
だって私は何も出来なかった……みんなを死なせた……どうしようもない無責任な奴よ……。
だからあんたが私の事を気に入らないのはわかるわ……だったらもういいでしょ……?
いい加減私を放っておいて……これ以上私に優しい言葉を掛けないで……。

『どうやらおめーは自分のせいで仲間は死んだ。だからその仲間は自分の事を恨んでるだろうからこんなヤケになってるってわけだな?』

さっきからそう言ってるでしょ……?
何度も言わせないでよ……。
『生憎そんな考えはどうしようもねぇースカタンがする事だとこのジョセフ・ジョースターが断言するぜ!
実は俺にはシーザーっていうキザでムカつく仲間が居てな……』

なんでそんな風に自信を持てるのよ!
それにシーザーっていう人が私に何の関係が……。

『こいつは俺と共に柱の男って言うかなり危険な奴らと闘い、俺が居ねぇ時に奴らと闘って死んじまった……
死ぬ寸前に俺に力を与えてな。このことはかがみ、おめーの今の状況に通じる所があると俺は思うぜ』

何よ……さっき吸血鬼をどうしたとか話してた時はあんなに明るい顔をしてたじゃない!
てっきり私はあんたが嘘を言ってるかと思ってたのに……もしかしてあの車の中で話してた事は全部事実なの……?
だったらなんであんたは仲間が自分のせいで死んでしまったのにそんな……笑顔でいられるの?
『だが俺はかがみみてーに自分から死ぬような真似はぜってーにしねぇぜ!』

何で!?何で!?だって私達のせいで人が死んだのよ!?
なんでそこまで言い切れるの!?

『そんな事をしたらあの世でシーザーにもう一度ブチ殺されるだろうからな!
俺はそんなつまらねぇー事をするてめぇのために闘って、波紋を残したわけじゃねぇ!とか言ってな!
かがみ!きっとおめーの仲間も同じような事を言うと思うぜ!』

みゆきが……灰原さんが……桂さんが私にそんな事を……?
そんな事は……。

『仲間の死ってやつは確かにものすげー寂しいもんだ。
だが俺達はいつまでもその事でクヨクヨしているわけにはいかねぇ……
そんなヒマがあるならあいつらの思いを無駄にしないために一歩でも先に進むべきだぜ!
きっとシーザーもかがみの仲間達もそう願ってるハズだ!だからよー……』

みゆき達が私のために願ってる……本当に……?
だったら私はどうすれば……どうすればいいの……?

『自殺なんてバカげた事はやめて……生きるべきだぜ!
生きる事って良い事だぜかがみ!おめーとその鳥公に見せてやる……生命の力で溢れた!波紋の力を!』
そう言ってジョジョは赤い体をした人の腕から伸びている鎖のようなものに手を添えた……
再び私のマジシャンズ・レッドが暴れだそうとしたから……。
◇  ◆  ◇

「……何をするつもりだ?」
今までジョセフとかがみの対話に終始無言を貫き、マジシャンズ・レッドの動きをマイクロチェーンで抑えていたZXが彼に問う。
ジョセフがここから何を行うかはZXに知らされていなかったからだ。

「へっ……てめぇも少し我慢してくれよ」
「……波紋というやつか?」
「そのとーり!……いくぜ!」
そう言ってジョセフは独特な呼吸を行い、ZXのマイクロチェーンに添えた腕に力を込める。
そしてジョセフは叫ぶ……彼の持つ大いなる力、波紋を練りこむために。

「食らえ!太陽のエネルギー、波紋!!!」
両腕からマイクロチェーンに掛けて、マジシャンズ・レッドの体に太陽の力、波紋をジョセフは流し込む。
電気と類似した性質を持つ波紋を伝導性に優れたマイクロチェーンを媒体として流し込む事により、
マジシャンズ・レッドの体は更に薄いものとなっていく。
(痛い……ううん、なんだか……暖かい)
だがかがみは恐怖は感じていなかった。
それもその筈、波紋は太陽の、生命のエネルギー。
一人の悲しき少女を殺すようには出来ていない。

「これが波紋だ……かがみ。
俺はこの力で必ずあのミツナリっていうジジイをぶちのめすぜ……そこで俺がおめーに言ってやる!
おめーがこれからどうすれば良いかをな!」
更に波紋を練りこみ、ジョセフはかがみに向かって叫ぶ。
彼女が忘れかけた、人間なら誰もが目指さなければならない目的を。

「ゴミ箱でコソコソやってるゴキブリみてぇに落ちぶれても、どんなにカッチョ悪くてもいい……とにかく生きて寿命を全うしろ!
おめーが死んで喜ぶ奴なんてこの世にもあの世にも居るハズがねぇ!
だから……かがみ!おめーは生きていい!今も!この先も!どんな時も!」
そして更にジョセフはごり押しの力を加える。
彼のお決まりの台詞と共に。

「刻むぜ!波紋のビート!!!」
更に強くなった波紋を受け、遂にマジシャンズ・レッドの姿は完全に消えていった。
◇  ◆  ◇

エリアF-7でジョセフが歩いている。
気を失ったかがみをおぶり、右肩にはデイパックを一つ掛けながら。

「うっ…………ジョジョ?」
マジシャンズ・レッドを長時間使い続けた事により疲れ果てた声でかがみはジョセフに声を掛ける。
どちらかというと自分と同年代の男の子とは比べ物にならない程大きな背中に向かって。

「Yes!I am!気が付いたか、かがみ~ん?」
かがみとは対照的に明るい口調でジョセフは答える。
自分の紛れも無い仲間に向かって。

「ごめんねジョジョ……私あんな事になっちゃって……三村も私のせいで……」
「へっ!シンジは生きてるぜかがみ!」
「えっ!?」
「けど何故かシンジの野郎はどっかに行ったらしいなぁ……そんでどういうわけか燃えたと思ったこの袋が残ってたわけでよー……
お!おい!そんなしみったれた顔するなよかがみ~ん」
ジョセフの話を聞き、自分の責任を感じ、俯いてしまったかがみをジョセフは宥める。
もう先程のようにかがみが悲しみの末、自分を見失う事をさせないために。

「でも良かった……本当に良かった……私、私三村を殺してないんだよね……?」
「ったりめーよ!とにかくシンジは先にボウリング場とやらに行ったのかもしれねぇし、俺達も行こうぜ!」
そう言ってジョセフは更に歩を進める。
地図には書かれていないマップの端を確認するために、そしてかがみの仲間達を待つ事にしようとしていたボウリング場を目指して。
「わかったわ……それであの赤い色の体をした人はどうしたの?まさか……」
「Oh!俺があんなあぶねー奴と闘っても得になる事なんてないぜ!
適当に理由付けてお帰りしてもらったわけってことだ。どうやら西の方へ行ったみてぇだな。」
まさかジョセフと自分のマジシャンズ・レッドをあそこまで痛みつける事が出来たZXが闘ってしまったのかと
心配になったかがみの疑問にジョセフは正直に応える。
またジョセフがZXとの闘いを回避出来た要因には言うまでもなく、彼が得意とする嘘が一枚噛んでいた。

「まぁボウリング場とやらでまともな服があればいいなかがみ!
いつまでもそんな格好じゃ、いたいけな青少年諸君が目のやり場に困っちまうぜ!」
「え?服って……」
そんな時、ジョセフが突然服の事について話し始めた事をかがみは不思議に思う。
そして何気なくかがみは視線を自分の体に向けて落とし……
「えっ!こっ!これって!…………なっ!何よこの格好はぁぁぁぁぁ!!!!!」
絶叫した。

「おわぁ!こ!こら!暴れるなってかがみ!」
「なっ!何でこんな黒いタイツしか穿いてないのよ私!」
「しかたねーだろ。俺そのタイツしか持ってなかったし、いつまでも素っ裸ってわけにもいかねーだろ?
それに俺がおぶってるから他の奴らには見えねーって」
そう、今のかがみの服装は今まで来ていた制服はマジシャンズ・レッドによって燃やされていたため、
ジョセフに支給された江頭2:50のタイツだけを穿いており、上半身は裸という状況だったからだ。
一応、流石に年頃の少女なので可哀想に思いジョセフは自分が着ている服を着せようとしたがあまりにも体格が違いすぎ断念していた。

「そ!そんな問題じゃないわよ!というか素っ裸ってまさか……」
「あぁ~?何言ってんだかがみ?そんなのあの鳥公を出した時から飽きる程見たぜ?」
「!!!!!」
「ん?どうしたかがみ~ん?」
今となってどれだけ自分が恥ずかしい事になっていた事に気付いたかがみは俯く。
更にかがみの顔は瞬く間に赤く染まり、言葉に詰まってしまう。
当然おぶっているためジョセフはかがみの表情をみる事が出来なかったため不思議そう声を上げる。
そしてかがみは急に顔を上げて叫ぶ。
依然顔は真っ赤に染めながら。

「う!うるさいわね!だったら速くボウリング場に急ぎなさいよ!急がないとこうよ!」
「イテテ!暴力は反対だぜかがみ~ん」
ジョセフの背中をポコポコと叩きながらかがみはジョセフを急かし、ジョセフはそれに軽い口調で応えながら走る。
一直線にボウリング場へ向かって。
そしてジョセフにおぶられ、揺られながらかがみは心の中でみゆき、灰原、桂の事を思い浮かべる。
(みゆき、灰原さん、桂さん。私……生きてて良いんだよね?
そうよきっと私がそっちにいってもやかましくなるだけだし……だから……私頑張るから……見守っててね…………)
◇  ◆  ◇



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