絶対負けるもんか(後編)   ◆wivGPSoRoE



 静まり返った室内に筆が紙の上を走る音だけが、かすかに響いている。
 誰もが無言だった。紙に記されていく壮絶な内容に、黙り込まされてしまっていた。

 『――これで全部だ。今まで黙っていて、すまなかった』

 最後の言葉を書き終え、川田は肺の奥から息を吐き出した
 二度、プログラムに参加させられたこと。
 一度目は、恋人を守れずに望まぬ形で優勝を手に入れてしまったこと。
 政府にカウンターパンチを叩きこむために多くの技能を手に入れたこと。
 二度目のプログラムでは、二人の人間を生き残らせることに成功したが、
 プログラムの監視員達の船を乗っ取った際に、自分は傷が悪化して死んだこと。 
 全てをできるだけ淡々と、簡潔に、客観的に書いたつもりだが――。

 その時、しゃくり上げる声が川田の鼓膜を震わせた。

「……ひどいよ……そんなのって、酷すぎるよう……」
 つかさの目からポロポロと涙がこぼれ、丸テーブルの上に小さな水溜りを作っていく。
「お、おい。つかささん……」
 川田が困ったような表情を浮かべているのが分かったけれど、
 つかさの涙は止まらなかった。
 みゆきが、たった一人親友が死んだだけでこんなに悲しい。
 では、友達を、恋人を、父親を、全て失った川田の悲しみはどれほどか。
 川田の気持ちを思うと、涙は止まらなかった。
「っとにもう……。女泣かせな男ね! 川田くんは」
 川田を睨みながら、ヒナギクはつかさにハンカチを差し出した。
「ほらっ! 顔拭きなさいよ、つかさ。
気持ちは分かるけど、今は泣いてる時じゃないわ。
川田くんのために泣くのは、全部終わってからでもできる。そうでしょ?」
「うん……。そう、だね」
 つかさが目元をハンカチで拭う。
 するとヒナギクは、つかさに向けていたどこかいたわるような眼差しを消し、
 今度は一転して鋭い視線を川田に叩きつけた。
「川田くん……」
 言いつつヒナギクはくいくいっと指を動かし、川田に顔を寄せるように促した。
 疑問符を浮かべつつも川田が身を乗りだした刹那――。

 打撃音と共に川田の顎が跳ね上がった。

「見事なり。角度、力の入れ具合、どちらも申し分なし」
 覚悟が感心したように呟く。
「ヒナちゃんっ!?」
 つかさが悲鳴じみた声で抗議の声を上げるが、そちらには目もくれず、
 一心にヒナギクは手を動かし、全てを書き終えると、筆を放った。
 怒りを瞳に宿して立ちあがり、
『川田くん。プログラムの記憶が、あなたにとって辛いことだったのは分かるわ。
けど、私達に黙ってたのは理由はそれじゃないわよね?
今まで私達に黙ってたのは、「信用されなくなる可能性があるから」でしょ?』
 大書した紙を川田に突きつけた。

 クラスメートを皆殺しにして最後の1人になったことがある。

 そんな人間を心から信頼できる人間がいるだろうか? いはしない。
 仮に信じられたとしても、心のどこかに疑念を持つのが普通の反応だろう。
 首輪の機能やハッキングについて川田が知っていることを話せば、
 芋づる式にプログラムに参加していたことも話さなければならない。
 だからまあ、今までプログラムのことを黙っていた川田の行動は理解できる。
 しかし、だからといって、それをどう思うかは話が別だ。
『ようやく私達を信用してくれる気になったのは、嬉しいけど……。
つかさにはもっと前に話しておくべきじゃなかったのかしら!?』
 ヒナギクに睨みつけられ、川田は嘆息を喉の奥に封じ込めた。
 誤魔化すような返答をすればタダではおかぬ。
 そんな気配をひしひしと感じる。

「ち、ちがうよ! ヒナちゃん!」

「……何が違うのよ?」
「私、川田くんに始めて会ったとき、とっても怖くて怖くて、震えてた。
だからあの時、川田くんが私のこと信用して教えてくれてもきっと……。
受け止められなかったって思う。だから無理ないんだよ、教えてもらえなくても」
「けど、つかさ……」
「ヒナちゃんも知ってるよね? 私、すっごく弱かった。
本郷さんが死んだ時、何もかも忘れて逃げちゃうくらい弱かった。
だから今、川田くんが話してくれてすごく嬉しいよ。
私、まだ弱いけど、ヒナちゃんが大切なことを教えてくれたから、
ほんの少し強くなれたのかなって、川田くんもそれを認めてくれたのかなって、思えるもん」
 呆れたというようにヒナギクが肩をすくめ、
「本当に……。国宝級のお人よしね、つかさは」
 苦笑交じりに嘆息する。
「まったくだ」
 状況も忘れて、つい川田もヒナギクに同意してしまう。
「俺が、自分に不利なことは隠しておこうとか、
そういう打算を働かせたとは思わないのか? つかささん」
「川田くんはそんな人じゃないよ」
 にこっと笑ってつかさが即答する。
 その愛らしい無垢な笑顔を見ていると、もはや何も言えなくなり、
 川田とヒナギクは、そろってやれやれと頭を振った。
 とはいえ、
(お人よし具合で言えば、ヒナギクさんもなかなかのもんだがな)
 なにやらブツブツ言っているヒナギクを横目で見ながら、川田は心の中で苦笑する。
 今のヒナギクからは、怒りのオーラが大分失せている。
 ヒナギクが怒っていたのは、川田が全幅の信頼を寄せているつかさに隠し事をしていたというその一点であったとみえる。
 他人事でここまで怒れるというのは、面倒見が良いというのか姉御気質というのか。
 などと考えながら、川田は覚悟に目線を移した。
 川田の考えを読み取り、
「私は、死した人間との約束に命をかける君達に戦士の『魂』を見た。
その輝きに比べれば、隠し事など些細なこと」
「ありがとよ……」
 熱血正義馬鹿、七原秋也や善人すぎるほど善人な中川典子と一緒にいた時の感覚が、
 これ以上ないほど蘇ってくるのを感じながら、川田は再び鉛筆を取った。
 3人の視線が自分に集まるのを待って、

「……とにかく、これ以上のことは今の段階じゃ欲張りすぎだ」
『――と思ってた』

「つかささんとヒナギクさんの姉さんや友達を探す。本郷さんとの約束を果たす
今はこの二つだけで精一杯だ」
『このゲームを根本からぶち壊せる自信はなかった』

「早く見つけないと、またつかささんやヒナギクさんの友達の中から犠牲者が出るかもしれない」
『だが、葉隠が仲間に入ってくれた。
それに考えてみりゃ、このゲームを根本から何とかしない限り生きて脱出するのは不可能だ。
幸いにも、突破口の薄明かりくらいは見えてきた気がするしな……。だから話した。
それと、つかささんには悪いが、やっぱり打算もあった、すまない』

 一気に書いて顔を上げる。
 すると、つかさは首をブンブンと横に振り、ヒナギクは両肩をすくめる仕草をし、
 覚悟はほんの少し口元を緩めて応じてきた。
 川田も照れくさそうな笑みで返す。暖かな空気が流れるのを4人は感じた。

「とにかく、もう少し休んでいこう。この際だ、少し休んでいくのも悪くない」
『ありがとよ。じゃあ、話を戻すんだが……。
まずはヒナギクさん、聞かせてもらえないか? さっき君が感じた違和感ってやつをな』

 再び部屋の空気がピンと張り詰めた。


『違和感っていうか、疑問なんだけど……。
何で生贄にするだけなら、「殺し合い」をさせる必要があるわけ?』
 分からない、というようにつかさが首をかしげると、
『だって、生贄にするだけなら、それこそ生体実験でもして一度に殺せばいいじゃない』
 生体実験、という単語につかさが体を震わせる。
 ヒナギクも書いていて胸糞が悪くなったのか、思い切り顔をしかめた。
 それでも気を取り直し、
『さっきとってつけたみたいに追加された「ご褒美」。
「生贄にすること」が目的じゃなくて「殺し合い」が目的になってるとしか思えないわ』
 ヒナギクの疑問に答えるように覚悟が筆を走らせる。
『零に憑依している霊は、理不尽な侵略によって犠牲となった「怨霊」。
或いはそのことが関係しているのかもしれぬ』
『なるほどな。こういう状況で精神的に苦しませないと「怨霊」にならねえってわけか?』
『いきなりさらわれて、人体実験にかけられのも十分すぎるほど惨いと思うけど?
私だったら祟って祟りまくってやるわ』
『それに関しちゃ同感だ。
それにさっきから思ってたんだが、あまりにも分かりやすすぎる』
 覚悟の方に目線を一度やって、川田はペンを走らせた。
『こうやって葉隠から話を聞くだけで、容易に敵の目的を推測できちまっただろ?
だが、葉隠だって強化外骨格モドキが鎮座してなけりゃ気付かなかっただろうぜ』
 覚悟が首肯して肯定を示した。

 ――何かある。

 覚悟、ヒナギク、川田はしばし、思考の井戸の底に沈んだ。
「あ、あの――」
 思わぬところから発せられた声に、3人は思考の井戸から浮上させられた。
「と、トーナメント」
 つかさ以外の、3人の顔に揃って不可解の文字が浮かんだ。
「こなちゃん……友達が言ってたんだけど……」
「つかさ、休む時にはしっかり休まなんきゃ! メリハリは大事よ」
 紙を指差しながら、ヒナギクがたしなめるような声を装って言う。
 慌ててつかさは鉛筆を握り、
『最近の漫画は、よくトーナメント展開をやるって……』

 ――何のことだ?

 さっぱり分からない、という川田、ヒナギク、覚悟の表情に気付き、つかさはさらに鉛筆を動かしていく。
『トーナメント展開っていうのは、漫画とかのストーリーで主人公を強い人達と戦わせて、
一番強い人を決めるって展開のことなんだけど……。
戦わせたがるっていうの、なんだかそれに似てるかなって』
『でも、それだと私達はどうなるの? 
私達じゃ、天地がひっくり返ってもあのラオウって男や、本郷さんが倒した化物神父に勝てると思えないんだけど。
一番強い人を決めるのが目的だとしたら、私達がここにいる意味って何なの?』
『今まで集まった情報を総合すると、ここには小さな子供もいるらしいからなな。
もっとも、葉隠や本郷さんにしてみりゃ、俺だって子供を相手にするのと大差ないだろうよ。
そういう意味じゃ、俺も子供やつかささん達と似たようなもんだ』
 ヒナギクと川田のもっともな疑問を述べる。
 その時、覚悟が筆を動かした。
『壇上にあった鎧の輝きは、まごうことなき超鋼の輝き。
くらましのために作ったにしては手間がかかりすぎているように思う』
『となるとやっぱり、生贄が目的ってことなのかしら?』
『もしくは違う理由か、だな』
 その時、再びつかさの手が動いた。
『「生贄」と「強い人を決める」の両方が目的、じゃないのかな』

 ――あっ

 盲点を突かれた気がして、思わずヒナギクと川田は顔を見合わせた。
 真実はいつも一つなれど、別にあの老人の目的は一つとは限らぬ。
 これは一本取られた、とヒナギクと川田は顔を見合わせた後、頷きあった。
 それを見ていた覚悟がつかさに向かって笑みを浮かべ、つかさは照れくさそうに笑う。
 しかし――
『あの爺の目的は「生贄」、「この場で一番強い人間の選発」、もしくはその両方。
一番強い人間を選発してそいつをどうするのかは知らないけど、
まあ、とりあえずこれは 保留でいいわね。分かりそうにもないし。
さてと……。問題なのは、首輪よね』
 ヒナギクのこの一言で緩みかけた空気は、再び重さを増した。
 まず川田が手を動かし始める。
『この世界に飛ばされた時に少し調べてみたんだが、
今、俺達の首に嵌っている首輪は俺の世界にあったものとは違う。
何せ継ぎ目すら見当たらないんだからな。
内部構造は調べてみないと分からないが、多分俺の知ってる方法で解除はできない。
とはいっても、発信機や盗聴器ぐらいは取り付けてあると考えた方がいいだろうがな』
 川田に続き、覚悟が筆を動かす。
『詳細に観察したわけでないが、私も継ぎ目などは見つけられなかった』
 重苦しい沈黙の沼が4人をとらえた。
 やはりというべきか、いきなり八方塞である。
『でも川田くんは、電気回路? をいじれるんだよね?』
『ああ。だが、内部構造が分からないことにはな。
それにどうやって中をのぞいたらいいかも分からない』
 期待するようなつかさの視線に川田は厳しい表情で答える。

『――ちょっと思ったんだけど、
そういう、なんていうか、科学的なアプローチだけでいいのかしら?』

 みなの視線がヒナギクに集中する。
『葉隠くん、あなたの出あったルイズさんっていう魔法使いの女の子は、
魔法で首輪が外せそうだって言ってた?』
『いや、言っていなかった。これは私の想像だが、ルイズさんは勇敢な人だ。
出来るものならとうに首輪を外そうと試みていたはず』
『この首輪には何か魔法を効かないような仕掛けがしてあるかもしれないってこと?』
『おそらくは』

 ルイズは、『ゼロのルイズ』というあだ名を持つほど魔法が不得意な魔術師であるから
 覚悟の評価はかなりの過大評価といえよう。
 しかし、ルイズがハルキゲニアでそう呼ばれていることなど覚悟が知るはずもない。
 また、実際にルイズは覚悟の目の前で――実は失敗だったのだが――魔法を使ってみせた上、
 覚悟は、虎の化物に立ち向かったルイズの勇気を高く評価していた。
 覚悟のルイズに対する評価が実際と違ってしまってもむべなるかな、といったところであろう。

『やっぱりね』
 忌々しそうに腕組みをするヒナギクに、
『ヒナギクちゃん、何がやっぱりなの?』
『チラっと聞いただけなんだけど、本郷さん、機械工学やってるって言ってたのよ。
あの爺どもは首輪を外されたくないんだから、
本郷さんみたいな人でも首輪を外せないように色々細工してるんじゃないかって、思ったわけ。
それにしたって魔法にまでとはね! まったく、手回しのいいことだわよ!』
 苛立たしげに、ヒナギクは豊かな髪をかきまわした。

『そこまであの爺どもが首輪に手間をかけてやがるとなると、
やっぱり、ハッキングしてみるしかねえな』

 部屋の空気が動きを止めた。
『川田くん、でも、危ないよ』
 仮に露見したら、川田の首輪が爆破されてしまう可能性は高い。
 不安げに揺れるつかさの瞳を見て、川田は不敵に笑った。
『虎穴はいらずんば虎児を得ず、だぜ。つかささん。
仮になんの仕掛けもなかったとしても、首輪には爆弾が入ってる。
内部構造が分からなきゃどうにもならない。遅かれ早かれやるしかなかったさ』
 川田はつかさ、ヒナギク、覚悟を順繰りに見渡した。
『探すものが増えちまったが、どの道どこへ向かうかは決めてなかったからな、
さほど問題はない。
これから、まずホームセンターに行って、見つからなかったら次は総合スーパーに向かう。
総合スーパーまで行っても、村雨さんもパソコンも見つからなかったら病院に戻る。
みんな、それでいいか?』
 全員が首肯したの見をて、川田は立ち上がった。
「川田くん、ごめん……。あなたにばっかり頼って……」
 唇を噛みながらヒナギクが言う。
「おいおい、やめてくれ。俺は何も特別なことをしようとしてるわけじゃない。
できることは全部やろうとしてるだけだ。
それは、葉隠も、つかささんも、ヒナギクさんも、同じだろ?
大体だな……。まだ、そのための道具も揃っちゃいないんだ。
そういうことを言うのは、ちょいと気が早すぎるってもんだぜ」
おどけたように言う川田に向かい、覚悟は無言で敬礼の姿勢を取った。
 男が不退転の覚悟を持って決めたことに異を唱えるは無粋。
 ならば己のやるべきことは、この地獄に閉じ込められた全ての者に希望をもたらさんとする戦友を、
 全力で守ることだ。
 敬礼する覚悟の隣をぬけ、つかさが川田に近づいていく。
 怪訝そうな顔をする川田を、つかさは正面から見据えた。
 華奢で小さな手で、川田の無骨な手を包むように握り、
「私、川田くんのこと、信じてるよ。
これから、何があっても、どんなことがあっても、信じてるからね」
 ぎゅっと川田の手に力を込めた後、つかさは戸口へ向かって走っていく。 
 無言でヒナギクも続いた。
 二人の背中が見えなくなるのを待って、川田は覚悟に向かって口を開いた。
「なあ、葉隠。何せこんな状況だ、一時間後はどうなってるかわかりゃしねえ。
だから言えるうちに言っておくんだが……。
お前も感じたただろうが、つかささんも、ヒナギクさんも、心の清らかな、優しい人達だ。
こんな所で死んでいい人達じゃねえ。これから何かあったら、俺のことはいい。
彼女達を優先して守ってくれ」
「……それは、承知できかねる」
 川田はため息をついた。
「葉隠、俺はもう死んだ人間――」
「死者の言葉は沈黙のみ! 自分を死人だと言う死人などいない!!」
 静かだったが、覚悟の言葉には激流の如き激しさが秘められていた。
「川田、お前にはまだ歌が聞えるはずだ、歌えるはずだ」
「歌?」
「ああ。お前と柊さんを見ていてそう感じた」
 唖然として立ち尽くす川田を残し、覚悟はさっさと部屋を出て行ってしまう。
「……歌、ねえ」
 釈然としない面持ちで立ち尽くしながら、川田は首をひねる。
 歌と言われて川田が思い出すのは、バードコールから流れだす鳥の歌。
 ふと、川田の脳裏にある光景が浮かんだ。
 二人で、平和な場所で穏やかな気分であの歌を聞けたなら、それはきっと――

 ――悪くない。

「……やれやれ、欲ってのは次々と湧いてくるもんだ」
 自分より遥か高みにいる本郷に憧れ、もう少しつかさと一緒にいたいと思い、今度は……。
 自嘲気味に笑い、川田は頭をかいた。

 けれどやはり、そう悪い気分ではなかった。


 民家の入り口から少し出たところで川田を待ちながら、ヒナギクはつかさを見やった。
 何度も泣いたせいで、つかさの目は赤く晴れている。
「つかさ、無理しちゃだめよ?」
 さっきは気丈にも議論に参加していたが、少し前に友達を失ったばかりなのだ。
 そんなにすぐに立ち直れるわけがない。
「私、無理、してるように見えるかなぁ?」
「少し、ね」
「そうだね……。私、無理してると思う。でもね、ヒナちゃん――」
 つかさは顔を上げてヒナギクを見た。
 その瞳には鈍い悲しみの光があったけれど、それよりも眩い決意の光があった。
 驚いて目を丸くするヒナギクに向かって、
「ヒナちゃん、悔しさを忘れちゃだめだ、って言ったよね?
私、悔しいよ。ゆきちゃんが死んで、悲しくて悲しくて……。まだ、心のどこかで
そんなの嘘だって、ゆきちゃんは死んでないって思いたがってる。
逃げてるだけだって分かってるのに、そんなこと考えちゃう弱い自分が悔しい……。
それに、それにゆきちゃんが死ん……ううん、殺されたのがすっごく悔しい。
友達のために何もできなかったのが、すっごく悔しいよ!!」
 肩で息をしながら何かにつかれたようにつかさは言葉を紡いでいく。
「だから私、決めたの。今は頑張るって。
みんなで一緒に元の世界に帰れるまで頑張るって。
私、弱いから……。頑張らなきゃ、みんなの足でまといになっちゃう。それだけは、嫌だよ」
「怒るわよ! つかさ」
 ヒナギクの怒声に、つかさの瞳が揺れた。
「誰も、あなたを足手まといだなんて思ってない!
川田くんも、葉隠くんも、もちろん私も!
そりゃ、自分の弱いところを自覚して頑張ろうってのは悪いことじゃないわ。
でも、自分のことをそんな風に言うのはやめて! 
つかさが自分のことをそんな風に言うの、つかさが良くても、私が悲しいわ。
きっと葉隠くんも、川田くんも!」
 必死にいいつのるヒナギクを見上げるつかの顔が、くしゃっと歪んだ。
「ありがと、ヒナちゃん……」
 ほっとしたようにヒナギクは表情を緩め、
「まあ、確かにそんな風にすぐ泣く所は直した方がいいかもね」
「……えへへ」
 冗談めかしてヒナギクが言っうと、つかさは涙を拭きながら相好を崩す。
「ねえ、つかさ――」
 語りかけながら、ヒナギクはすこし表情を引き締めた。
「私も、おんなじ気持ちよ。悔しいわ、本当に悔しい。
守られて生き延びて、何もできない自分が情けなくて悔しい……」
 ヒナギクは拳を握り締めた。
「だけどね。悔しいけど、ここで私やつかさのできることって――」
 奥歯が軋む音が聞こえた。
 次の言葉を発するのは、本当に悔しい。
 だが、認めなくてはいけない。
(弱かったのは……。私もか)
 目を逸らしていてはいけない。
 どれほど腹立たしくても、まずこれをきっちり認めなければ先へ進めない。
「――私達ができることって、多分、少ないわ。
あまりにも状況が普通じゃないし、常識はずれの人間が多すぎるのに、
私達の力はとても小さい……。小さすぎるのよ。だから――」
 目を閉じ、苛立たしさと情けなさを吐き出そうとするようにヒナギクは息を吐いた。
 目を開ける。つかさが真摯な眼差しで見つめてきていた。
 なんだか、力が湧いた。 
「とにかく頑張れるところまでは頑張ろう! できることを探して、できることは全部やる
だけど、無理はしない。常に自分の力と相談する。やれる範囲を見極める!
見ていてあまりにも無理がすぎると思ったら指摘しあう……。
私達の力じゃ、そうしないと肉体的にか精神的にか、どっちかで自爆するのがオチだわ。
情け無いけど、それが現実だもの。認めなきゃしょうがないわ」
「何か、難しいね……」
「そうね、私もそう思う。ただ頑張るよりずっと難しい……。
だけど、きっとやれるわよ。私達は一人じゃないし、ね」
 満面の笑みでつかさが答えてくる。
 つかさに笑い返し、ヒナギクは空を見上げた。
 風がふわりとヒナギクの桃色の髪を舞い上げた。
 日差しが少し目にいたい。
(本郷さん……。ごめんなさい。
本郷さんの死は無駄にしないなんて大見得きったのに、大したこと、できないかもしれない。
でもつかさと二人で、自分にできることは瀬一杯やってみるわ。
それで、いいかしら?)
 ヒナギクは心の中で青空に向かってそう呟いた。
 ヒナギクとつかさから少し離れた場所で、覚悟は周囲を警戒しながら病院がある方向を見ていた。 
(ルイズさん……。悲しんでいるだろうか)
 先ほどの放送で呼ばれた名前の中に『平賀才人』という名があった。
 その名前には聞き覚えがあった。
 ルイズはすぐに話題を変えてしまったが、その名前を呼んだときのルイズはどこか嬉しそうだった。
 ルイズは強い。
 だが、友を失って悲しまないものなどいない。
 できれば病院に戻って、ルイズに何か言葉をかけたい。

 ――しかし、それはできない。

 民家の戸口から姿を現した川田に向かって、つかさとヒナギクが手を振っている。
 病院の方角に向かって目礼し、覚悟は川田達の方へと歩みを進めた。


 許してほしい。
 この身は、牙を持たぬ全ての人のためにある。
 誰か一人の戦士たれぬ身なれば、今は――行く。


【G-5 南部 1日目 日中】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に重度の火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃による重度のダメージ(治療済み) 全身に打撲(どれも致命傷ではない、治療済み)、
頭部に大ダメージ、両腕の骨にひびあり、 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。 この戦いの首謀者を必ず倒す。
1:川田、ヒナギク、つかさと行動を共にし、その後病院に戻る。
2:杉村を弔う。
3:再びラオウと会い、自分の決意を伝えたい。
4:怪我が治ったらルイズとゲームセンターに行く
[備考]原作一巻第一話、逆十時学園入学初日より参戦
※決意が強まりました、殺し合いに乗った者が戦士であるならば容赦はしません。
※戦士でないと判断した者(一般人の女性や子供など)に対しては決して抵抗せず、
説得を試みます。
※戦士であるかどうかの判断は次の書き手さんにお任せします。


【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾16/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(二本消費)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる。
2:つかさの姉や友人、ヒナギクの友人を探すのに協力する。

3:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※医者の息子であること、1度死んでいる事は話しています。
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです


【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 傷の手当ては完了している。
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:仲間と一緒にPCと村雨を探す。。
2:やれることを探してやる。だが無理はしない。
[備考]
※ ヒナギクが聞いた轟音の正体は、三影の大砲の音です
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1~3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています


【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:仲間と一緒にPCと村雨を探す。
2:お姉ちゃんやこなちゃんたちと合流したい
3:みんなの力になりたい。でも無理はしない
[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています

【備考】
※4人は、ホームンター→総合スーパーの順で捜索を行い、
その後病院に戻る予定です。

※4人の主催者の目的に関する考察

主催者の目的は、
①強化外骨格に憑依させる怨霊にするため、
②最強の人間の選発、
①か②、または①と②の両方が目的

※4人の首輪に関する考察及び知識

首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている。



131:戦闘潮流 投下順 133:『不死王は星を見た、拳王は月を見た、そして帝王は……』
130:絡み合う思惑、散る命 時系列順 133:『不死王は星を見た、拳王は月を見た、そして帝王は……』
117:揺ぎ無い意思貫くように 葉隠覚悟 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常
117:揺ぎ無い意思貫くように 川田章吾 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常
117:揺ぎ無い意思貫くように 桂ヒナギク 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常
117:揺ぎ無い意思貫くように 柊つかさ 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常