揺らいでいく未完成の『メモリー』 ◆d4asqdtPw2



「散を知っているのか……?」
村雨良の目の前に存在するソレは今確かに葉隠散と言った。ソレは今確かに自らを強化外骨格と言った。
停車している電車の中と外。たとえ空間として繋がってはいても、ソレの放つ異常な雰囲気が双方の空気が混じり合うのを阻害する。
まるで誰かの忘れ物のように、電車の中に置かれていたその鞄。
声を発する器官など持ち合わせていないはずのソレは、まるで自らが喋ることが当たり前の事ように平然と言葉を紡ぐ。
『どうして忘れることが出来ようか! 現人鬼散は我等が半身葉隠覚悟の兄でありながら、人類を滅ぼさんとする悪……』
「電車が出るようだ。……少し待っていろ」
(……処理すべき情報が多すぎる。移動しながらゆっくり話すとするか)
村雨が零の言葉を遮って告げると、零を電車の出口付近の床に置いてからどこかへ走り去ってしまった。

『おい、どこへ行こうというのだ!』
零の叫びが空しく響くが、無常にも電車のドアがプシューと音を立てた。
2枚の扉が電車とホームを隔離せんと動き出す。加速することも減速することもなく、一定の速度を保ったままスライドする。
そして、2枚の鉄板が空間を完全に分断するその直前……扉が停止した。
他ならぬ零自身によって。

『あの男……我等の体を何だと思っておる』
展性チタン合金と称された金属で出来ている強化外骨格を、異物として挟み込んだ2枚の扉。
彼らは自分たちとその金属との格の違いを思い知らされ、扉を閉じることを早々に諦める。それは同時に電車の発車も諦めるということ。
ガゴンという鈍い音が鳴り響き、2枚の扉の間の空間が再び開かれる。
しかし彼らの使命は電車をダイヤ通りに発車させること。
再び2枚の扉がお互いの距離を縮めようと動き出し、零に阻まれる。
彼らが不屈の闘志で愚直な開閉運動を何回か繰り返したころ、零は村雨が戻ってくるのを感じ取った。
だが先ほどと異なり、村雨はなにか大きなものを抱えている。

「待たせたな。俺は村雨良。……さぁ、貴様の話を聞かせてもらおうか」
そう告げると村雨は零を電車の座席に乗せ、抱えてきたクルーザーをドカンと床に下ろした。
大型バイクを電車の中に持ってくるなどマナー違反もいいところだが、この電車にはそれを咎める人間は存在しない。

『うむ、了解した。……我等は強化外骨格、零。旧日本軍により生み出された意思を宿した鎧!』
「散の持っていた霞というやつと同じようなものか」
『何! 散はすでに霞と共にあるというのか。やつらが一体化すればそれ即ち人類の危機。
 現人神と化したやつらは我等を装着した覚悟はおろか、強化外骨格雹を纏った実の父親の朧すらも圧倒する!
 ……ときに良よ。散のことを知っておるようだが、やつと拳を交えたのか?』
覚悟とは散が言っていた愚弟のことだろう。どうやらこいつは覚悟とは出会えてないらしい。
そしてこの殺し合いに参加する以前に散と覚悟は戦ったという事か。そして覚悟が敗れたと。無理もない。
霞を装着した散の強さを村雨は十分に理解している。実際に一度敗れているのだから。

「あぁ……さっきまで一緒に行動していた」
『……なんだと? 人類共通の敵である散と行動を共にするなど、貴様何を考えている!』
「誰にでも協力してやるさ。俺に記憶をくれるならばな」
『記憶? それはどういう……な!? 良よ、お前の体はどうなっているのだ!』
零が村雨のことを知ろうと、彼の体内をスキャンしたのだが……。
彼の体はもはや人間とは呼べない。体のありとあらゆる部分が何らかの人工物で構成されていた。

「分かってるさ。自分の体だ……この体で戦って、生き延びてきたんだ」
俯きながら、誰にでもなく呟く村雨。その眼には光は宿っていない。もしかしたら未来永劫、宿ることなど無いのかもしれない。
自分の体すらも、記憶の手がかりにはなりはしない。だったらどうすればいいのか、分かるはずがない。
『記憶を求めるか……我等のような怨念には歴史しか残ってはおらぬ。
 しかし覚悟がいれば、ともに未来を創っていくことができる。絶望を打ち破ることができるのだ』
そんな村雨を気遣ってなのか、零が話題を変えるが、村雨は一切の反応を示さない。

暗い地下道を走る電車の中、空間を支配するは沈黙。
乱れたダイヤを修正するかのごとく速度を上げ、その揺れは俯く村雨に振動を与え続ける。
ガタンゴトンと進んでいた電車は、出発してからものの5分で2駅目となる病院前の駅に到着していた。

「そういえば……どこで降りるか決めていなかったな。ここで降りるか?」
突然村雨が顔を上げ、零に問いかける。人に合うなら病院前のこの駅が適しているように思えるが。
『いや、実は頼みたいことがあるのだ。繁華街までついてきて欲しい』
特に返事はしない。了解したということだろう。
繁華街でも人は集まる。村雨にとっては誰かと戦えればそれで良かった。
それに傷ついた人物が集まる病院よりも、繁華街の方が戦い甲斐のある敵は多そうだ。
「それで、頼みたいこととはなんだ?」
村雨の言葉に重なるようにプシューという音が響いた。扉が閉まる前の合図のようなものだ。
2つの扉が動き出す。今度は彼らの間に異物などない。彼らの仕事を邪魔するものなどいない。

『実は良に会う前に刃牙という少年と行動していたのだが……』

2つの扉の距離が縮まり、その隙間が0となる直前。
「……! この感じは!?」
『まさかこれは!』

扉の隙間から異様な気配が流れ出した。

「なんだ……こいつは?」
既に扉は閉まっているのに、その残り香だけでもその凶悪さが感じられる。
禍々しさだけならば散よりも遥かに上。
その気配の発生源を探して周りを見渡す村雨。

そして、見つけた。

村雨たちが乗った電車とは反対側のホームにそいつはいた。
「……あいつか」
走り出した電車の中からでもハッキリと見える。
そいつは薄暗いホームを支配していた。まるでその男のためにこの空間が存在するかのごとく。
『あれこそが吸血鬼DIO! 人類最悪の敵であり刃牙を狂わせた悪魔だ』
顔が存在しない零の表情を読み取ることなど出来なかったが、その声は明らかに怒りに満ちていた。


◆     ◆     ◆


時間は村雨がこの駅に到着する30分前に遡る。

「……さて、今何時だ?」
発した声がプラットホームの小汚い壁に反射してエコーとなって帰ってくる。
闇に抱かれて安らいでいた帝王が静かに目覚めた。
駅構内を見渡して時計を探し、電車の発車時刻表の隣にあるアナログ時計の針が示した数字を覗く。
まだ微妙に頭が働かないせいだろうか、その数字から現在の時刻を読み取るのに数秒を要した。

(まだこんな時間なのか。流石に太陽は堕ちてはいまい)
……どうやら自分はここに着いてから1時間ほど眠っていたようだ。
ほとんど仮眠と言ってもよいほどの時間だが、それでも人外の体を回復させるには充分すぎた。

ふぅ、と大きく溜め息を吐いてシミだらけの天井を見上げる。脳が次第に覚醒していくのを感じながら。
そのままの状態で数秒もすれば、脳も肉体も完全に目覚めていた。

すぅ……と音も無く立ち上がると、コツコツと足音を残しながら階段へ向かう。
階段の上の改札に太陽の光が届いていないことを確認する。
そしてそのまま駅の内部を探索するために階段を上りだした。
その手には灰原哀から奪った名簿が握られている。どうやら探索と同時に考え事も行いたいらしい。

「……承太郎、ジョセフ、そしてアーカード」
暗い地下道を歩きながら、自分が倒さなければいけない者たちの名前を呟く。
他のやつらなぞどうでもいい。勝手に殺しあってくたばってしまえ。
しかしこいつらだけは違う。この帝王が自ら引導を渡してやらねばならない。
そのために必要なのは情報だ。情報さえ制すればこの殺し合い、自分が優勝したようなものだ。

承太郎とジョセフ、他にもいるであろう正義面した愚かな連中ならば組み伏せるのは容易い。
やつらはおそらく集団で行動している。弱いものを守りながら。
そこでやつらの仲間の1人の知り合いを人質に取った、とでもしてしまうとどうだろう。
肉の芽を植えつけた者のように、私の死に呼応してその人質も死んでしまう、としたらどうだろう。
やつらはその嘘を見抜く手段を持っているだろうか。
その『人質』の実名や外見的特長を見事に言い当ててしまえばやつらはあっけなく信じてしまうだろう。
私がこんな便利な名簿を持っているなんて考えに至るとは思えない。実際に拉致したと考える方が自然だ。
それに、嘘を確実に信用させる必要などない。人質をとった『可能性』を生み出してしまえば、やつらの拳は数テンポ遅れる。確実に。
渾身の一撃さえ決まってしまえばあとは勝ったようなもの。『世界』で時を止める必要すらないかもしれん。
とは言っても早まるのは良くないな。やつらが『人質』とついさっきそこで別れたばかりなんていう状況であれば嘘が容易くバレてしまう。
重要なのは、駆け引きか。

まぁ正々堂々と勝負したところで私が負けるはずがないのだが。

それよりも問題はアーカード……。
あの男には情報戦による小細工など一切通用しないだろう。
そこで重要になってくるのがスタンド、アルターなどの能力だ。
アーカードを殺すことが出来る能力者がこの中にいるかもしれないが……。

そこまで思考したところで立ち止まる。駅内部の捜索が終了してしまったからだ。
駅内部、と言っても狭い駅構内には地上に通じる階段と駅員室以外は特に何もない。強いて挙げるとすれば券売機と改札くらいか。
これならば内部を把握したところで戦闘が有利になるわけではないな。
フン、と呟いた後、地下2階のホームに戻るために階段を下りる。
コツコツと人々の足跡で黒ずんだ階段を丁寧に1つずつ踏みしめていく。
階段の中ほどまで辿り着くと、そこから見えるホームには電車が1台止まっていた。

「……誰か乗っているな」
足音を立てずに階段を下りるとその男の輪郭が闇の中ではっきりと映し出される。
(あれは確か、村雨……良だったか?)
名簿で見た限りだと殺し合いに積極的に乗るタイプの人間だろう。
ならばわざわざ接触する必要もあるまい。気配を消してやりすごすか。
プシューと音を立てて電車の扉が閉まる。その扉の動きは何故かオドオドしているように見えた。

「……あれは!」
村雨とかいう男の隣の座席に置いてある鞄。
アレは確か刃牙の持っていた意思を持ち、人語を話す鞄ではないか。
刃牙のやつ、どこかに捨てて行ったな……。
まずいな。アレは自分の事を知っているはずだ。下手な噂でも広められたら敵わんぞ。
先ほどの殺気に気づいたのだろう、振り返った村雨と目が合う。
電車は行ってしまったが、どうする。追うか?

いや、まだ日が落ちてない間から動くのは好ましくない。
さっきも眠っている間に死にかけているのだ。
刃牙から聞いた情報では『S3駅は地下にある』ということ以外は分からなかった。
もしこの駅が地上にあったとしたら、居眠りしたせいで死亡という情けない結末を迎えていたところだ。
あの男がどこで降りるか分からない以上、追うにも追えんな。

仕方がない。夜まではここで待機するしかないようだ。

帝王はベンチに座り、足を組んで、プロフィール付の名簿に目を通して再び思案に暮れるのだった。


◆     ◆     ◆


「つまり、あのDIOという男に操られた刃牙という少年を止めて欲しいと言う事か。……殺してしまうかもしれんぞ」
『生きて悪の道に堕ち続けるより、死して誇りを守る方が戦士として幸せだ!』
電車から降りた村雨たちがいるのは神社。零から聞いた情報によると刃牙は繁華街近くにいるはずらしい。
ちなみにS1駅で降りたのは、繁華街の中心で降りるより繁華街を西から東に突っ切った方が捜索効率が高いからだ。
「まぁ協力してやるさ。その少年が俺に記憶をくれるかもしれん」
父親への復讐のために強くなった少年。それは村雨にとっては吸血鬼なんかよりも魅力的な相手であった。

『言っておくが明らかに刃牙ではない人間を見つけても知らせはせんからな』
殺し合いに乗っているものと協力するのは不本意だ。
だが、何時間も誰とも会えなかったのだからこれが最後のチャンスかもしれない。
とはいえ戦闘力の高い人物以外は見つけても黙っておくべきだ。

「勝手にしろ。強いやつ以外は必要ないからな」
呟くと、クルーザーのエンジンを入れ繁華街に向けて走り出した。


【D-1 神社 一日目 午後】

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に裂傷と中程度の火傷 、闘いへの強い欲求
[装備]:クルーザー(全体に焦げ有り)、十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (1/2) 、マイクロチェーン(2/2)
[道具]:地図、時計、コンパス 、強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:繁華街で刃牙を捜索し、戦闘。
2:エリアE~H全域を探索し、ついでに施設の有無の確認。
3:劉鳳、ジョセフと次に会ったら決着を着ける
4:十二時間後(約零時)に消防署の前で散と落ち合う。
5:散の愚弟覚悟、波紋に興味あり。
6:DIOと戦う気はない。
[備考]
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※衝撃集中爆弾、マイクロチェーンの威力は制限で弱められています。
 制限の程度は後の書き手さんにお任せします
※施設の確認はあくまでも『ついで』なのでそれほど優先度は高くありません。
 またどのような経路を辿ってゆくかも後の書き手さんにお任せします。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※零は戦闘力のない『明らかに刃牙でない人物』を察知しても村雨には知らせません。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。


【F-4 S7駅 一日目 午後】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:スタンド『世界』、
[道具]:ダーツ(残弾数1)、デルフリンガー@ゼロの使い魔
    参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿。ルイズの杖。
    イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン9。ライドル。
    スタングレネード×2。時計型麻酔銃(1/1)。麻酔銃の予備針8本。
    デイバック×4(DIO、桂、灰原、みゆき)
[思考]
基本:帝王に負けはない。参加者を殺し、ゲームに優勝する 。アーカードのボディを乗っ取り、太陽を克服する
1:夜になるまで地下で英気を養う。及び、地下鉄に乗りにやって来た参加者を各個撃破し体力を回復
2:デルフリンガーから平賀才人他の情報収集・デルフリンガーを用済み、又は障害と判断した場合破壊する。
3:どんな手を使ってでもアーカードを打倒し、ジョースター家を根絶やしにする
4:魔法使い・しろがね等の血に興味
5:ゲームを仕組んだ輩を断罪する
[備考]
※ジャギの腕はほぼ馴染みました
※時を止められる時間は約3秒間です
※首輪の他に、脳内に同様の爆弾が埋め込まれています
※S5駅方面の列車は途中で地上に出ることを確認しました
※デルフリンガーはコミックス2巻のフリッグの舞踏会の最中から召還されたようです。


142:魔女狩り 投下順 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常
142:魔女狩り 時系列順 144:らき☆すた 第X話 あるいはこんな日常
131:戦闘潮流 村雨良 165:ターミネーターゼクロス
131:戦闘潮流 DIO 149:大乱戦