男達、止まらず ◆hqLsjDR84w



 背中から生える2枚の漆黒の羽で、E-6の遥か上空を飛行している男、劉鳳。
 その両の手には、色白で眼鏡をかけた少女、タバサがいわゆる『お姫様抱っこ』の体勢で抱えられている。
 身長の差はあれど、両者ともかなり整った顔をしているので、それは絵になる光景であっただろう。
 この殺し合いの舞台でなかったならば、だが。

 実際は違う。絵になるなど、とんでもない。
 劉鳳は全身にかなりのダメージを負っていて、さらに慣れないニアデスハピネス展開により顔面蒼白。意識があることさえ不思議な状態だ。
 飛行の仕方も蝶野攻爵がするのような『華麗』な飛び方ではなく、どこか覚束ない。
 それは疲労の為であり、飛び始めた頃は『華麗』というほどではないが、まだまっすぐ飛べていたのだが。

 そしてタバサの方は、胸に巨大な穴が存在し、彼女の着こなしている制服は血で塗れている。
 体温は失われ、眼は焦点が定まっていなく、息も脈もない。
 御察しの通り、既に死んでしまっているのだ。


 最初はまっすぐに飛行できていた劉鳳が、フラリフラリと覚束ない飛行となってからどれくらい経っただろうか。
 劉鳳の意識が飛んだ。

  核鉄は使用者の生命力を変換し、武装錬金を展開する。
  元々連戦によって蓄積したダメージで弱っていた劉鳳が、ニアデスハピネスを展開させ続けたなら。
  ニアデスハピネスで以って、人間2人を常に持ち上げるだけの力を使い続けたのなら。
  こうなるのは、自明の理である。

 同時にニアデスハピネスが消失し、元の核鉄XLIVに戻る。
 羽を失った劉鳳は、重力の法則に従い地面へと落ちていく。
 全身に襲い来る落下感によって劉鳳が覚醒したのは、意識が飛んでから数秒経ってから。
 幸いにもタバサは抱えたままで、核鉄も右手で掴み取った。
 だが、真下には民家。劉鳳との距離、あと5m。

 しかし、そこは劉鳳。
 ロストグラウンドの無法者が名を聞いただけで震え上がる、銀色のアルター『絶影』を持つ男、劉鳳。

「――クッ!!」

 ガァンという音と共に、民家の屋根の一部が抉り取られ虹色の粒子となり、絶影を構成する。

(第一形態が限界か……十分だ)

 絶影の2本の触鞭が、抱えられたタバサごと劉鳳を覆ってゆく。
 二重、三重、四重、五重……と幾重にも劉鳳を包んでいき、最終的に蛾類の幼虫が蛹となる際に作る、繭の様な形となる。
 一切の隙間が無い繭形の防護壁が完成したのが、民家に劉鳳が突っ込んだのとほぼ同時。
 次の瞬間、轟音が鳴り響き、民家は瓦礫と姿を変えた。

(タバサは……)

 落下の衝撃で、覆っていた絶影の触鞭が砕け、姿を現した劉鳳は両の手で抱えたタバサを確認する。
 そしてアーカードに打ち抜かれた傷以外に、傷が増えていないを確認した劉鳳は、フッと安堵の溜息を吐くと――前のめりに倒れこんだ。

 タバサの死体に、余計な外傷をつけずにすんだ安堵からか。
 はたまた絶影が砕かれた衝撃からか。
 それまでに蓄積されたダメージ故か。
 この世界に呼び出されてから、長時間の休みを取っていない為か。
 空に背を向けて倒れた劉鳳は、眠りへと落ちていった。
 深い眠りへと――


「う……」

 どれくらいの間、俺は眠っていたのだろうか。
 最後に太陽を見た時より、かなり太陽が落ちている気がする。
 結構な時間、俺は寝てしまっていたのか……
 しかし、かなり体が軽い。核鉄を持ちながら寝ていたからか?
 何にせよ、たまには休むというのも大切なものだな……

「絶影」

 すぐ近くに横たわっているタバサを確認すると、即座に周囲にある瓦礫を原子レベルに分解、絶影を再構成する。
 呼び出すのは、あえて第一形態。
 呼び出した絶影の触鞭で穴を掘り、そこにタバサを横たわらせる。
 そして、絶影の触鞭で土を被せていく。
 次に周囲にあった最も大きい石塊を乗せ、表面をアルターで分解し、『タバサ』――と彼女の名を刻み込む。
 供え物の代わりといってはあれだが、彼女がずっと読んでいた本を傍らに置いておく。
 本来ならば、食べ物や水なんかを置いていくべきだろうが……
 すまない、この状況だ。許してくれ。

「君の眼鏡は貰っていく。
 ルイズ、そしてキュルケという君の仲間と会ったときに、君に仲間を任されたという証として」

 タバサの眼鏡をデイパックにしまい込み、考える。
 これからどうすべきか?
 タバサが死んでしまった以上、病院に行く必要は無い。
 ならば変電所に戻り、ブラボーやアミバの助太刀に行くか?
 しかしもう戦闘が終わっていたら、どうする?

 勝利したブラボー達が、既に病院に向かっていたなら……
 俺は病院に向かわねばならない。
 仮に……ありえないとは思うが、アーカードという男が勝利したならば……
 俺は変電所に向かわねばならない。
 どうする? 俺はどうすれば――

『……ルイズ……ヴァリエー……』

 ルイズだと?
 かなり小さい声だったが、いまルイズと言ったのか?
 ルイズ――平賀才人から伝言を託され、タバサに遺言で守るよう任された少女。
 その、ルイズが何を……?

『私……危険な目に…………この声が…………』

 なッ!? 危険な事態に遭遇しているだとッ!?
 俺が、守ると誓った人間が危険な目に……行かぬ理由は無いッ!!

「待っていろ! いま、劉鳳(オレ)が行く……絶影が行くッ!!」

 そう言い放った瞬間、弱い考えが俺の脳裏を過る。
 核鉄と休みをとったおかげである程度回復したとはいえ、いまの俺は万全ではない。
 アーカードに攻撃された左肩と腹部は未だ痛むし、右の拳骨は折れてしまっている。
 さらに絶影も弱体化してしまっている、いまの俺が言っても無駄なのではないか――そんな考えが。

 しかし、アミバは言った。
 カズマは心臓を貫かれても、アルターで傷口を塞いで戦い続けた――と。
 あの男に出来て俺に出来ぬことなど、存在しない。
 まして俺の傷は、あの男の負った傷と比べて、かなり軽い。
 核鉄によってある程度治癒もしたし、休みもとった。
 ならば……やるしかないッ!
 正義を、信念を貫くことすら出来ず、楽な道を選ぶなどという弱い考えを選ぶなど――断じてノゥだ!!

「行くぞッ! 真・絶影ッ!!」

 貴様もそう思い、この地で果てたのだろうッ? カズマッッ!!


 一方、バイクで劉鳳を追っていた服部とアミバは、数十分ほど前に田園地帯を抜けF-6を疾走中だった。

(カズマの墓は、この辺りだな……)

 バイクの後部座席に座るアミバは、己に信念というものを教えてくれた反逆者のことを思い出す。
 共にいたのは短い時間だった。話した時間はもっと短い。
 だが、あの男のおかげで俺は変われた――と。

(この殺し合いへの反逆が終われば、何か供えねばな……)
「アミバはん、聞いとるか?」

 少し気が早いが、そんなことを考えていたアミバだが、服部に声をかけられたので何の用だ、と聞き返す。

「何か聞こえへんか? よー聞き取れへんねんけど、アミバはんなら聞こえたりせえへんか?」
「む……確かに何か聞こえるな。少し、バイクを止めてみてくれないか?」

 バイクから降りて、アミバが耳を澄ませる。
 聞こえるのはかなり小さい音だが……常人の限界を超えた身体能力を持つアミバならば、聞き取ることは可能。
 そして、聞き取った音の正体に、アミバの表情が曇る。

「服部、バイクを出せ!」
「何でや!?」
「音のする方に向かいながら話す! 早くバイクを出せ! 北だ!」

 アミバの剣幕に押され、服部がバイクのアクセルを開く。
 その時、心の中で「何やっちゅーねん」と呟いたのだが、さすがに心の声まではアミバにも聞き取れなかったようである。

「――で、あの音は何やったんや!?」

 バイクを出してからしばらくして、服部がアミバに問いかける。
 アミバの焦りように感化されたのか、服部の声も少し焦りを含んでいる。
 その服部の言葉に、同じく焦りを含んだ声でアミバが返す。

「ルイズという少女が助けを求めていた。
 焦り具合から判断するに、おそらくは一刻の猶予も無い! もう少し、スピードは出せんか?」
「これが限界や!! って、ルイズやて?」
「そうだ」

 服部も、ルイズという名に心当たりがある。
 タバサの知り合いで、彼女曰く『信用できると思う』存在。
 アミバもそのことを知っているから、こんなに焦っているのだろう。
 そう服部が判断していると、アミバが言葉を続ける。

「……もう1つ心配なのは、劉鳳だ」
「どういうことや?」

 服部の問いに、アミバが胸中で舌打ちしながら答える。
 服部からは見えないが、その表情はかなり苦々しい。

「声がしたのは病院の方角。そして劉鳳がいるはずなのは、病院。
 あの男がルイズという少女の声を聞いたなら、怪我を押してでも向かうだろう。
 例え、少しでも動いたら倒れてしまうような状態でも、だ……」
「それは、あかんな……」

 服部の脳内に浮かぶのは、最初に劉鳳と出会った時のヴィジョン。
 アミバが現れなければ、確実に劉鳳は変電所へ向かっていただろう。
 怪我や疲労など関係なく、だ。
 そんな男が、少女の助けを求める声を聞いたなら――
 考えるまでも無い。

(やれやれやな……)

 服部は、軽く溜息を吐いた。



(この辺りから声が聞こえていたはずだが)

 ルイズの声がした場所まで、劉鳳は真・絶影を全速力で駆動させた。しかし、そこには誰もいない。
 真・絶影の見た目に臆して出てこれないのかもしれない。
 そう思って真・絶影を消滅させたが、誰も出てこない。
 と言うよりも、人の気配すらしない。

(俺は遅かったのか……?
 いや、戦闘の跡が見つからない。どこかに逃げたのか? それとも、連れ去られたか……?)

 そこまで劉鳳が考えると、バイクのエンジン音と仲間の声が彼の耳に入ってきた。

「劉鳳!」 「劉鳳はん!」
「服部にアミバか。ブラボーは……」

 服部とアミバの方を振り返らず、背中を見せた状態で劉鳳は彼らに返事をする。

「『勝算はあるから、お前達は劉鳳とタバサの元へ行け』と」
「そうか……あいつらしいな。ところで、ルイズという少女の助けを求める声が――」
「聞こえていた。だが、その前に聞かせてくれ。タバサはどうした?」

 ピクッと劉鳳の肩が揺れ、それを見た服部とアミバの脳裏に最悪の可能性がよぎる。
 しばらくして劉鳳がタバサのことを伝える為に、服部とアミバの方を振り返った。
 その劉鳳の顔を見て、思わず服部とアミバの表情が驚愕に染まる。

( (お……) )
「お前達に会ったら、言わねばならないと思っていた。タバサは――」

 服部とアミバの表情が驚愕に染まった理由、それは――
 劉鳳の右目から溢れた一筋の雫が、彼の頬を伝っていたから。
 そして劉鳳の態度で、彼の言わんとしている事を、ほんの少し悟ってしまったから。

( (男泣き――――!!) )



【F-5 北西/一日目 夕方】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労中、全身に小程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折(包帯が巻いてある)、核鉄で治癒中
[装備]:ニアデスハピネス@武装錬金(核鉄状態)
[道具]:支給品一式、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
     タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、支給品一式 、色々と記入された名簿)
[思考・状況]
1:タバサのことを服部、アミバに伝える。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。平賀才人の伝言を伝える。
3:防人と合流、タバサのことを知らせる。
4:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード・村雨)は断罪、弱者(シェリス、ルイズ、キュルケ)は保護。
5:シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
6:シェリスに事の真相を聞きだす。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
※タバサの遺体を抱え、制服の袖の部分がタバサの血で濡れています。
※E-6にタバサを埋葬しました。ネクロノミコンはそこに置いてあります。

【アミバ@北斗の拳】
[状態]:健康、疲労小、強い決意、今までの自分に強い自己嫌悪
[装備]:ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、携帯電話 、
[道具]:支給品一式(×3)(一食分消費済み)
     綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく、ノートパソコン@BATTLE ROYALE(これら三つは未開封)
     ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、
     スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:ゲームの破壊、主催者の殺害。
1:劉鳳の話を聞く。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。
3:病院へ向かい、防人、タバサと合流。
4:ゲームに乗っていない人物と協力する。
5:ゲームに乗った人物と遭遇した場合説得を試みて駄目なら殺害する。
6:ケンシロウとラオウには出来れば会いたくないがいざとなったら闘う覚悟はある。
7:服部の策に乗り、脱出をネタに仲間を募る(一時的に保留)。
[備考]
※参戦時期はケンシロウに殺された直後です
※『スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険』の説明書は存在しません。
※服部・タバサと情報交換をしました。
※スティッキィ・フィンガーズのDISC、空条承太郎の記憶DISCに興味を持っています。
※当然タバサが死亡した事について知りませんが、劉鳳の態度を見て悟りつつあります。

【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:健康 両頬が腫れている
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、バイクCB1000(現地調達品)
[道具]:首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、支給品一式 、色々と記入された名簿。ノート数冊
     才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリックを解除する。
1:劉鳳の話を聞く。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。
3:病院へ向かい、防人、タバサと合流。
3:シェリスを発見し、真実を明らかにする。
4:江戸川コナンとの合流。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、アミバ、タバサの事は全面的に信用しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽るつもりです。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。
※当然タバサが死亡した事について知りませんが、劉鳳の態度を見て悟りつつあります。

[共通備考]
※劉鳳、服部、アーカードの持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野
※コナンとルイズは既に去っていた模様です。どの辺りまで移動したかは不明。


156:コドクノテイギ 投下順 158:一瞬のからくりサーカス
156:コドクノテイギ 時系列順 158:一瞬のからくりサーカス
138:遥かなる正義にかけて 劉鳳 163:二人の女、二人の愛
138:遥かなる正義にかけて アミバ 163:二人の女、二人の愛
138:遥かなる正義にかけて 服部平次 163:二人の女、二人の愛