三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo



「さて、これからどうするか」
乗用車の運転席に腰を下ろしながら一人の青年がそう呟く。
少年の名は三村信史。また“ザ・サードマン”という二つ名を持つ少年でもある。
金の色を帯びた短髪を逆立たせ、中学生にしては引き締まった身体を学生服で包んだ三村の表情は重い。
数時間の仮眠をとったお陰で、完全にとはいかないが、疲労が取れたにも関わらず。
それもそのはず、三村には最終的にやらなければならないことがあまりにも多いからだ。

「かがみの事について俺にはもうやれる事はない、後は出会った参加者に直接警戒を促せばいい。それよりも……」
つい先刻、地図に記入されているめぼしい場所には、もうかがみに対しての警戒のメッセージを残している。
現時点の自分の持ちうる手段では最善策ともいえる手段だ。
ならば自分が今行うべき事は他の行動を起こす事だと三村は判断を下した。

「この首輪の謎を解く、携帯を手に入れる、そしてあのジョジョのような……仲間を見つける事か」
数時間前までの同行者、ジョセフ・ジョースターの名を口に出した時、三村の表情に一段と曇りが浮き出る。
だが、いつまでも死人の事を女々しく考えるわけにはいかない。
そんな事はこのクソったれのプログラムをブチ壊してから考えても遅くはないはずだ。
そう考え三村は目の前に存在するハンドルに両手を掛ける。

「やることが多すぎるな……だが、ここで何もしないわけにはいかねぇ。
そうさ。ここで何もやらずに只、隠れている事なんてもっての他だ」
いっそ今まで居た民家の中で隠れ続けるというのはどうか?という考えも浮かんだ事には浮かんだが
三村は頭を左右に振って否定していた。
ならば自分がやるべき事の中で最もやるべき事はなにか?
信頼すべき仲間をたった一人の少女によって無残にも失くしたこの状況の中で何をするべきなのか?
電気信号が走り、その答えを見つけるべく三村の頭脳が回転する。
そう。極めてクールにこれからやるべき事を進めていくためにも。

「だったらまずは仲間を集めるとするか。ならどの方向に向かうか……ん? あれは?」
そんな時、三村は此方に向かってくる物体をフロントガラス越しに偶然にも見つける。
その物体は、三村が乗っている常用車ではなく、スクーターのようなものである事が判別出来る程、距離は近い。
どうやら思考に気を取られすぎ、不用意にもかなり接近を許していたようだ。
その事を悔やみながらも三村は接触を試みようと一応デイパックを肩に掛け、運転席から腰を上げ、その物体に近寄る。
勿論万が一有無をいわさずに襲われる事を考えて、クレイジーダイヤモンドをいつでも出せるように身構えて。

◇  ◆  ◇

万屋の店長、坂田銀時が愛用する原チャリ。まぁ平たく言えばスクーターであるそれの座席に腰を下ろし、
長い漆黒の髪を靡かせた少女が一人。
年齢は十もいくかどうかはわからない程幼く、愛くるしいその顔はきっと幼児愛好者でなくても将来に期待してしまうだろう。
そう。彼女の本性を知る事がなければ。

「遅いな。まったくもって遅すぎる」
姿形など意味を持たない不死の血族“吸血鬼”であるアーカードがそう口を開く。
その表情にはハッキリと不快感が読み取れる程、歪みが生じている。
原因はアーカードが今現在、運転している原チャリの速度の遅さによるものだ。
別に原チャリがそこまで遅いというわけではなく、速度を最高時速で走らせているため、それなりの速度は出ているのにも関わらずに。
だがアーカードはその遅さをとてつもなく不満に思う。
何故ならアーカードは吸血鬼になる前、いや遥か遠い過去に人間としての生を受けてから原チャリには乗った事がなかったからだ。
まぁ人間の時は一国の王、吸血鬼である現在は王宮国立騎士団、通称“ヘルシング機関”にゴミ処理係として所属するアーカード。
そんなアーカードが原チャリに乗って、愛用の銃・ジャッカルの鉛弾をブッ放し、笑いながら闘う姿はあまり想像したくないものだ。

「これでは意味がない。これを使わずに走った方が速いかもしれない。
そんな事では何も意味を為さないぞ」
どう考えてもあなたの足の速さが速すぎるんですよ!
だいたいそんな一端のグータラ人の銀さんの原チャリにそこまでハイスペックを期待すんじゃねぇよォォォォォ!
と眼鏡をかけた少年がこの場に居たらそう突っ込んでくれるかもしれない。
それほどまでにも理不尽な不平をアーカードはぼやく。
勿論、依然座席にチョコンと座り、小さな体躯で運転し続けながら。

「ん?あれは?……なるほど、いいものだな」
そんな事を考えながら運転していると、アーカードの視界に一台の常用車と三村信史の姿が入る。
見たところ何も能力がなさそうな青年。
そう。先程闘ったキャプテン・ブラボー、劉鳳、アミバのような実力者とはとても思えない三村に
アーカードは落胆の意志を見せる。
それでも三村の横にある、常用車は今のアーカードにとって魅力的なものだった。
この闘争を楽しむためには、一秒でも早く己の移動速度は速い方がいいからだ。
あの常用車はどう考えても、この奇妙で不格好な文字が描かれた乗物よりは有益だろう。
そう考えアーカードは三村の常用車を奪い取るべく、行動を起こす。

「あ」
腰を上げ、デイパックを担ぎ、瞬時に原チャリから飛び降りるアーカード。
華麗ともいえるその身のこなしで地に着地したアーカードはあんぐりと口を開けた。
彼女の視線の先にはまるで大いなる敵に、捨て身の特攻をしかけようといわんばかりの勢いで原チャリが、
最高時速で爆走しているその勇姿が写っている。
更にその原チャリの栄光のロードの先にはアーカードが目を付けた、愛しの常用車が存在している。
そう。彼女はブレーキも掛けずに飛び出していた。
当然、原チャリは止まる気配を見せるはずもなく、一直線に爆走し続ける。

「なんだ? 自動停止機能すらないのか? どうしようもなく使えんな」
事の張本人、アーカードには全く悪びれた様子はなかった。
そりゃあもう、逆に清清しいくらいまでに。

「何ッ! なんてクレイジーなヤツだ!」
その状況に驚いたのはアーカードだけでなく、当然三村も相応に驚いていた。
どう考えても小学生くらいの少女が原チャリを運転していた事にも驚いていたが、
まさか原チャリをそのままぶつけてくるとは思わなかったからだ。
咄嗟に危険を回避するために三村は横方向に飛びのく。

「クレイジーダイヤモンド!」
原チャリと常用車がぶつかる事により、生み出されるであろう車体の破片から身を守るため飛びのく。
三村がクレイジーダイヤモンドを発現した瞬間。
三村はアーカードの自分を見る眼の色が変わった事に気付く事は出来なかった。
遂に原チャリと常用車がぶつかり、派手な轟音が周囲に響き渡る。
だが三村にはその二つの乗物の破壊状況を確認する時間など存在しない。
降りかかる破片を三村はクレイジーダイヤモンドの両腕で器用に振り払う。
近接パワー型のスタンドであるクレイジーダイヤモンドを使えばこのような事は造作でもない。
崩す事を余儀なくされた体制を戻し、三村はその視線を飛ばす。

「なんのつもりだお嬢ちゃん……?」
未だ自分の視線の先に居るアーカードの、その幼い姿に対して信じられないような表情を三村は浮かべる。
既に一見普通の女子高生に見えたかがみですら暴走するこのプログラム。
どうしようもなく信じられないが、目の前のアーカードが危険人物である可能性を三村は考えてしまう。

「五秒以内に何処かへ行ってくれ。俺は君のような小さな女の子には興味はないんだ。
もし五秒以内に逃げなければ……君の身の安全は保障できない」
自分一人の身を守るだけで精一杯で、しかもいきなり原チャリをぶつけてきた少女を保護する義理もないと考え、
三村は若干心を痛めながらも彼女を拒絶する。
そう。当然三村はアーカードの事を何も知らない。
目の前に居る少女、アーカードが既に三人の参加者、しかもその一人は現人鬼というれっきとした化け物を殺した事を。
クレイジーダイヤモンドをもってしても、アーカードは到底三村には打ち倒す事が出来ない存在という事も。
よって三村は嘘を交えた、己の脅しは全く意味がない事にも気付いていない。
そして五秒の時間が、ほんの短い時間が経過する。

「貴様は何を言っている? 身の安全は保障できない? 酔狂な事を言ってくれるものだなヒューマン」
逃げるはずもないアーカードが口角を吊り上げて、妖艶に笑う。
そのアーカードの無邪気ともいえる笑い顔に三村は心を奪われる。
只。可愛らしさから心を奪われたのでなく、もっと別の感情によって。
アーカードの笑い顔から垣間見える、何かドス黒い感情に恐怖を覚えてしまったからだ。
この少女は一体? そう思った瞬間、三村の視界に入っていたアーカードの姿が何倍にも大きくなる。
それはアーカードの、闘争というダンスのお相手に指名された事と等しいものだった。

◇  ◆  ◇

「ッ! クレイジーダイヤモンド!!」
自己防衛のためクレイジーダイヤモンドの右腕をアーカードの腹部に向かって揮う。
勿論、アーカードを殺すような事はしない。
何故ならジョジョを殺したかがみが相手であれば話は別だが、アーカードには先程の一件以外特に恨みはないからだ。
そのため三村はクレイジーダイヤモンドの拳にせいぜい気絶するくらいの力を込めた。

「遅いな」
いくら手加減されたといえども、決して遅くはないクレイジーダイヤモンドの拳に対して体をヒョイと動かしアーカードは避ける。
その表情にはブラボー達と闘った時に見せた歓喜の表情は言うまでもなく、クレイジーダイヤモンドに驚く表情すら見えない。
大層な事をいいのけた三村の実力のなさに早くも、アーカードは再び落胆の意を見せている。
その表情は反撃を行う事さえも面倒そうな辛気臭いものだった。

「くっ! それなら!」
今度は両腕でアーカード沈黙させようとクレイジーダイヤモンドを動かす。
同時に拳に込めた力も更に強いものとさせる。
だが、未だ全力の力を込めているというわけではない。
大の男やかがみが相手なら全力で応戦する気は勿論あるが、今のアーカードはあまりに幼い少女。
そのアーカードの姿は戦士としての覚悟がない三村にとって迷いを持たせるのには十分過ぎる要因だった。

「ふん。こんな狗に加減を受けるとはな」
迷いを持った三村が繰り出すクレイジーダイヤモンドの右拳、左拳が相次いで空を切っていく。
いや、きっと全力の力を込めていたとしても避けられたに違いない。
今のアーカードは体格が小さくなった代わりに、以前よりも機敏にその身体を動かす事が出来たからだ。
只。必然的にその分両腕、両足のリーチは狭まってしまったというデメリットも存在していたが。

「狗なら狗らしく最後まで抵抗してみるがいい。貴様のスタンドは只の飾りか?
早くその答えを私に示して見せろ! HURRY!」
追撃のクレイジーダイヤモンドの拳を、その小さな身体を揺らしながらアーカードは潜り抜ける。
更にあまりにも小さな、だがそれでいて桁違いの強さを秘めた拳。
そのアーカードの拳が天に向かって圧倒的な速度で打ち上がる。

「がッ!……やりやがったなてめぇ!」
そしてアーカードの拳と天の間に存在していたクレイジーダイヤモンドの顎にその拳が激突する。
伝達された大きなダメージによろけ、衝撃のあまりながらも三村は再度反撃の拳を打ち出す。
最早三村にはアーカードに対する迷いなどない。
クレイジーダイヤモンドの拳を避け、あまつさせアッパーを食らわせたアーカードが只の参加者ではなく、
正真正銘の化け物である事に気付き始めたからだ。
化け物ならたとえ殺す事になっても微塵の後悔もない。
自分が生き残るために、三村は極めてクールにこの判断を下した。
そう。三村にとってこの状況で最善の策を取ったハズであった。

「つまらん。これほどまでにつまらない闘争は久々だな。どうやら貴様では狗の餌にすらならないようだ」
だが、現実は非情にも刻一刻と流れていく。
それも三村にとって不利な方向へ。
アーカードは悠然と構え、身体を捻らせ楽々とクレイジーダイヤモンドの拳を避ける。
依然その表情は見る者に恐怖を与える程、不機嫌極まりないものだ。
クレイジーダイヤモンドの拳が虚しく空を切ったのを確認して顔を歪める。

「まだだッ! てめぇをこのまま放っておくわけにはいかねぇ!」
だが、三村もこのまま自分に不利な状況を甘んじて受け入れるつもりはない。
クレイジーダイヤモンドを戦闘に使う事により起きる疲労に耐えて、こんどこそアーカードを仕留めるため、
渾身の力を込めた拳を揮う。
今のアーカードの身の丈はクレイジーダイヤモンドより遥かに小さいので、斜め下方向へ剛拳が放たれる結果となる。
自分の身の安全のためにという考えも渾身の拳を揮う一つの要因となっていたが、
それよりもアーカードの存在は三村にとって最早無視出来るものでなかった。
先刻の襲撃を考えれば、間違いなくこのプログラムに意気揚々と乗っていると思われるアーカード。
こんな人物を野放しにすれば、自分と同じくこのプログラムを潰そうと考えている参加者にもいずれ害が及ぶのは明確だ。
ならば今、この場所で出来ればアーカードを仕留めたいと思うのはほんの少しの正義感や倫理があればそう思うのは不思議ではない。
実際、三村もそう思い、行動を起こした。
だが三村が挑む壁は、アーカードという壁は彼にとってあまりにも強大なものだった。

「五月蝿い。所詮貴様はこの程度だったという事だ」
道端で必死に歩く蟻を見下すような眼つきで低く、感情の篭っていない声でアーカードは呟く。
少女の姿をしているため、華奢になった吸血鬼の両足。
その両足の内、左足の方へ力を込め、地を蹴飛ばし、アーカードの身体が宙に舞う。
対象の位置が変動したため、またも行き場を失くしたクレイジーダイヤモンドの腕が伸びきる。
更にアーカードはその小さな体躯を活かし、今度は右足でクレイジーダイヤモンドの腕へ着地。

「くそ!」
予想外なアーカードの行動に驚き、慌ててクレイジーダイヤモンドの腕を動かす。
当然その腕に両足を乗せ、こちらを嘗めているとしか思えないアーカードを振り払うためだ。
そんな三村の意志に基づき、斜め上方向にクレイジーダイヤモンドの腕が空を走る。
だが、アーカードは既に両足を使い、更に上方へ跳び上がっていた。
アーカードがそのクレイジーダイヤモンドの動きに対応できないハズもない。
吸血鬼の並外れた身体、反射能力、そして戦闘の経験などあるハズもない三村のクレイジーダイヤモンドの、
動作の粗さが原因となっていたからだ。
ならば今度こそ、と思い三村は急いで顔を上げ、アーカードが跳んだ方向へ視線を投げる。

「終わりだヒューマン」
だが、三村とアーカードの視線が重なるほんの少し前に彼女の声があがる。
その言葉の意味を考えようとした矢先、三村の顔面、特に鼻の部分に強い衝撃が走った。
それはクレイジーダイヤモンドの顔面にアーカードの右膝が直撃した事による衝撃。
横殴りに叩き込まれた強烈な右膝を受け、三村は常用車を駐車してある位置から横方向へ、派手に吹っ飛ばされる結果となった。
更に背中からしこたま大地へ激突し、声にならない嗚咽をあげ、三村は苦痛の表情を浮かべ蹲る。
そんな三村の様子を観察し、アーカードは短い舌打ちを行い、歩を進める。
最早三村には興味はなく、自分が殺さずともどこかで無様に死に行くだろうと思ったからだ。
三村にトドメを刺さずに、自分のこれからの足となる常用車に乗り込むためアーカードが悠然と歩き続ける。

所詮、スタンドDISCを手に入れたとしても誰もがTVアニメや映画のヒーローのようにカッコよくはいかないものだ。
その現実をアーカードは元より、三村も十分理解している。
そう。そんな事は理解しているハズだ。誰よりもクールにもの事を考える事を重視している三村は。

「ほう、未だやるつもりか……おもしろい! 少しは貴様の認識を改めなければならないようだな!!」
アーカードは歩ませていた歩を止め、ここに来て初めて彼女の表情に嬉しさが蘇る。
そんな表情を浮かべたアーカードの視線の先には、全身を震わせながらも四肢を使い、
必死に立ち上がろうとする三村の姿が入っていた。

◇  ◆  ◇

嬉しそうな表情をしたアーカードに見守られながら三村は遂に、ゆっくりと立ち上がる。
顎には今も強烈なダメージは残り、鼻から流れる真っ赤な鮮血も一向に止まる気配は見せていない。
どう考えても絶体絶命のこの状況。
そのまま蹲っていればこんな状況に陥りはしなかった事は、アーカードの歩の進め方を見れば明確であり、三村もその事は認識していた。
(なんで、わざわざ立ったんだろうなぁ……いや、考えるまでもないか。
俺のやる事はもう決まってるぜ……)
だが、三村は立ち上がった。
自分の命を優先するならこの三村の行為はあまりにも無意味といえるハズだ。

「再び闘争にその身を投げ出した事は褒めてやろうヒューマン。だが、何か策はあるのか?
化け物であるこの私を、吸血鬼・アーカードを打ち倒す策はあるのか!?」
アーカードには三村の行動が理解できず、だがそれでいて期待していた。
そのスタンドの扱い方から恐らくDISCの力によって、スタンドを使えるようになった三村は葉隠散とは違い、純粋な人間だと思っていたからだ。
『化け物を打ち倒すのはいつだって人間ではならない』、この殺し合いに呼ばれる以前からアーカードが言っていたこの言葉。
アーカードは今もなおこの言葉を覆すつもりはなく、その瞬間が来る事を密かに期待していた節もある。

「そんなものはない……そんな策があったらとっくに実行に移してるぜ」
「くだらん。つくづく私を失望させてくれるなヒューマン!」
だが、そんなアーカードの期待をよそに、三村はあまつさえ薄ら笑いさえも浮かべて返答し、その答えに彼女は憤慨する。
三村のつまらない返答に、アーカードは身に付けていたレミントンを引き抜く。
アーカードはレミントンの照準を真っ直ぐ三村の左胸へ、心臓の位置へ向ける。

「俺にはジョジョっていう仲間が居たんだ……てめぇよりよっぽど強ぇヤツがな」
「ジョジョ? ジョナサン・ジョースター……いや、ヤツはこの場には居ない。空条承太郎の事か?」
そんなアーカードの行動を尻目に三村は呟く。
DIOの記憶から得た情報を元に三村の話から出た『ジョジョ』という人物が承太郎かと思い、そう問いかける。
何故ならDIOの記憶の中では三村が言っている人物よりも、承太郎の方が印象は強かったからだ。

「いや、違うね。俺が言っているのはジョセフ・ジョースターの事だ。
俺を助けるために勝手に死にやがったサイテーなヤツさ……」
そう言って三村は力なく、不規則に身体をブラブラと揺らしながら歩く。
既にクレイジーダイヤモンドを戦闘に使いすぎたため、彼が感じている疲労は計り知れない。
だが、そんな身体を引き摺りながらも、三村はアーカードの方へ視線を投げ続ける。

「だが、あの野郎はいつだってクールだった。
俺よりどっしり構えて、冷静にこのプログラムをどうにかしようと考えていた。
正直な話、あいつは賞賛に値する人物だったな……ガラにもねぇけどよ」
一歩一歩アーカードの方へゆっくりと、それでいて確実に接近する。
一方、アーカードはそんな三村の動きには全く関心を見せていない。
二人の距離は数十メートルの距離が開いており、何より未だ全力を出していないアーカードには負ける要素はないからだ。
そう。レミントンの照準を依然三村の方へ向けているアーカードには焦りなどあるハズもない。

「ほう、それは残念な事だ。是非ともジョセフ・ジョースターとは一度闘ってみたかったのだがな」
DIOの記憶に残る、ジョセフ・ジョースターの実力はアーカードにとって興味深いものであったので、
彼女は純粋に感想をこぼす。
しかしDIOの記憶から知り得たジョセフと三村が知っているジョセフには大きな違いがあったが、
その事をアーカードは知る由もない。

「それにジョジョはバカみてぇにお人好しなヤツでな……放っておけばいいのに困ってるヤツに世話を焼いたりした。
だからな……俺は思うんだ……」
「なにがだ? この絶望の中、貴様はどんな夢を見るというのだ?」
アーカードの感想には何も反応を示さず、三村が言葉を続ける。
もう既に溜まりに溜まった疲労も限界のようで、顔色はあまりにも悪い。
そんな三村にアーカードは訝しげな表情で疑問を投げつける。
この状況で三村がやろうとしている事には皆目見当が付かないからだ。

「あのジョジョならこの場で、てめぇみてぇなヤツをぜってぇーに見逃すつもりはねぇって事をな!
てめぇをここで野放しにすればどうなるかわかったもんじゃねぇからな!!」
三村がそう吼えた瞬間、疲弊しきっていた身体に相反するかのように、彼の両眼に輝きが蘇る。
そして同時に三村の傍に、再びクレイジーダイヤモンドが発現。
そう。アーカードの圧倒的な力を目の当たりにしても、未だ三村の意志は、クレイジーダイヤモンドは砕けていない。

「そうさ! ここで逃げるなんてサイコーにクールな事なんかじゃねぇ! たとえてめぇみてぇな化け物が相手だろうと!!」
両の拳を握り締め、三村はありったけの咆哮をあげる。
その三村の動作に連動するかのように、クレイジーダイヤモンドも同じように構えを取る。
圧倒的な力を誇るアーカードに対して、こんなほぼ自殺行為に近い事を行おうとしている自分。
そう。三村は完全にはクールに努めきる事は出来なかった。
だが、三村はその事に対して不思議と嫌な感じはしなかった。
何故なら三村は、自分の行動はベストとはいえないかもしれないが、グッドであるという自信は持っていた。
この害を撒き散らす存在でしかないアーカードを殺す。
その決意には一片の悔いもなく、逆に充実感さえ感じていたからだ

「だから俺が今、この場でやる事は……てめぇをブチのめす事だ! アァァァカァァァドォォォォォーーーーーーーッッッッッ!!」
そう言って三村は駆ける。
他の方向へは一目もくれずに、一直線にアーカードの方向だけに三村の視線が向いている。
クレイジーダイヤモンドの拳を、このアーカードというクソったれに叩き込む。
只、その事だけを考えながら三村は走り続ける。

「そうか。それが貴様の答えか……ならば私も答えてやろう」
一方、アーカードはそんな突進してくる三村にレミントンの銃口を非情にも向け、照準を合わせる。
その狙いには寸分の狂いもない。
そしてアーカードの表情に変化が生じた瞬間。
――BANG!――
一発の鈍い銃声が周囲に反響する。
その銃声が響き、数秒の間、静寂がエリアD-8を支配した。
三村の身体が大地に力なく倒れた瞬間まで。

◇  ◆  ◇

(まったく……やる事が増えちまったなぁ……)
大地にうつ伏せの体制になった三村が心の中でそう愚痴る。
三村はレミントンの銃弾に倒れたわけではなく、その銃弾はクレイジーダイヤモンドの手で受け止めていた。
だが、あまりにも不慣れなスタンドをフルパワーで使い過ぎたため、疲労のため倒れこんだ。
そんな三村を見て、アーカードは何故かトドメは刺さずに、常用車に乗り込み北の方へ向い、今この場には三村一人しかいないという事だ。
(かがみの事を伝えるのは忘れちまったが……まぁいいさ。どっちにしろ両方とも俺が殺してやるからな……。
けど、今は休むとするか……)
新たな対象が増えた事に三村は更に意志を固いものにさせる。
だが、どうせ今からアーカードを追っても追いつけるわけもなく、恐らくかがみとも距離が離れすぎているこの現状。
ならばいい機会と思い、三村は疲弊しきった身体を休める事にした。
そう思い三村が両眼を閉じた瞬間、彼の意識は闇に沈む。
それは睡眠によるものではなく、気絶によるものだと気付いたものが一人だけ、いや一羽だけ居た。
三村が倒れこんだ民家の屋根に、両足を下ろし、彼を物珍しそうに眺めていた一羽の梟だけが知っていた。

◇  ◆  ◇

「ふん。まぁそれなりに楽しめた事は事実か。それよりも……」
そう言ってアーカードは三村から拝借した常用車を運転しながら、彼女もまた愚痴る。
別にアーカードが三村を見逃した事に特に意味はない。
只、三村の事よりもアーカードには気になる事があり、一刻も早くそこへ向いたいと思ったからだ。

「なにか気配を感じる……新しいなにかがこの闘争の舞台に降り立ったか?」
アーカードは本能的に感じ取っていた。
全く理論的な要素は何もないが、何か得体の知れない力が増えた事に。
その事の真偽は定かではないが、確かめる価値はある。
そう思い立ち、アーカードは更にアクセルを強く踏み込む。
未だ彼女の飢えは満たされていないから。


【D-7とD-8の境目/一日目 夕方】

【アーカード@HELLSING】
[状態]:乗用車(前部にへこみ有り)で移動中。ロリ状態(外伝および9巻参照)。
全身にダメージ中、特に頭部、胸部、腹部にダメージ有り(吸血鬼による能力で自然治癒中)、

[装備]:フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(3/4)
[道具]:支給品一式、スタングレネード×4、
色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g))
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:とにかく北へ向かってみる。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみ、劉鳳、アミバ、服部とも再度闘争を楽しむ。三村は微妙だが興味はある。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散、ブラボーの記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・タバサ・服部・アミバ・斗貴子・パピヨンの情報を得ました。
・首輪そのものがスタンドではないかと推測。
・ジョセフは死んだという事を三村から聞きました

ゴールド・エクスペリエンスのDISC、核鉄(シルバースキン)を持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。
ゴールド・エクスペリエンスは人体を創る事は出来ません。
変電所周辺に桐山の首なし死体が放置されています。
またその傍に名簿を抜いた支給品一式が入ったデイパック×2が放置されています。


【D-8 最南端の民家周辺/一日目 夕方】

【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:気絶中、精神疲労(大)、鼻の骨を骨折。顎にダメージ有り(大)
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジーダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間を探す。
2:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
3:集められた人間の「共通点」を探す。
4:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
5:『ハッキング』について考える。
6:「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」という情報を参加者に
広める
7:アーカードは殺す
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジーダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A-1)、市役所(D-3)、病院(F-4)、消防署(D-4)、学校(C-4)
 総合体育館(D-5)、ホームセンター事務室(H-5)、総合スーパー事務室(D-6)
 変電所(A-8)、汚水処理場(B-8)、ホテル(D-8)、パブ(F-8)、ボーリング場(G-8)
※銀時の原チャリ(半壊)が三村の周辺に転がっています


161:夕闇に悪魔、慟哭す 投下順 163:二人の女、二人の愛
161:夕闇に悪魔、慟哭す 時系列順 163:二人の女、二人の愛
154:新しい夜が来た、闘争の夜だ アーカード 174:Double-Action ZX-Hayate form
142:魔女狩り 三村信史 179:状況は……? 勘違い真っ最中!!