ホワイトスネイク-介入者  ◆hqLsjDR84w



 いま殴り飛ばした軍服を着た男は、一体何者なのか。
 カズキさんに承太郎さん、そしてマリアさんが死ぬまでの経緯を知っていたことから、光成という老人の仲間ではないか。最初はそう考えた。

 絶望している参加者を精神的に追い詰め、絶望の淵に立たせる。
 その参加者に一筋の光明――1つ願いを叶えさせるという、優勝者への特典の話を振る。
 絶望の淵に立っていた参加者がそんな話を聞いたなら――その参加者が殺し合いに乗ると決心してもおかしくはない。
 そうして殺し合いに乗ると決心させた後、最後に強力な武器を渡す。
 殺し合いを円滑に進めたいはずの主催者ならば、そうして損は無い。

 しかし、軍服男は参加者の1人だろう。
 僕たちの首にあるのと同じ首輪が、首に存在しているのだから。
 ならば、何故僕に支給品を渡したんだ……?
 殺し合いに乗っているのなら、早々に僕を殺せばよかったはずだ。
 マリアさんや承太郎さんのことを知っていたのは、『どこかから見ていたから』で説明できる。
 僕を煽って殺し合いに乗せようとしたのも、『大量の参加者を1人で殺すのは、骨が折れるから』で説明できる。
 だが、支給品を渡すなんて――――何を考えているんだ?

「スタンドをいきなり使いこなすとはな……バトルロワイアルに抗おうというのか。
 貴様は……ククッ、あの女のように堕ちならなかったか」
「なッ!?」

 前方から聞こえた声によって、現実に引き戻される。
 声の主は、先ほどの軍服男。
 武装錬金で巨大化した拳から放たれた、僕の渾身のパンチをまともに受けたはずなのに……
 まるで何もなかったかのように、笑みを浮かべながら立っている。
 ゾクリと背筋が凍る感覚に襲われる――が、すぐに怒りが込み上げてくる。
 あの女のようにはならなかったか――軍服男は、そう言ったのだ。
 その言葉が何を意味するか、考える必要すら無い!
 軍服男は、僕の前に既に参加者の1人、それも女性をそそのかしていたという事だ。

「……再認識しましたよ」
「何ィ?」

 口を三日月形に歪めながら、軍服男が尋ねてくる。
 だから、教えてやる。

「あなたを放ってはおけないという事をですッ!!」

 同時に武装錬金で巨大化した右拳を、再び軍服男に打ち込む。
 またしても拳は直撃し、軍服男は凄まじいスピードで吹き飛ばされていく。
 壁は2度目の衝撃によって崩れ、軍服男はもう陽も落ちかけた屋外へと投げ出された。

 しかし、ダメージは無いだろう。
 ついさっきも渾身の力で殴ったが、たいしたダメージを負っていたようには見えなかったのだから、この程度でダメージを負うとは考えにくい。
 僕に武器を渡した――おそらくその前に会ったであろう女性にも――ということは自分自身の戦闘力、あるいは他の支給品に絶対の自信があるのだろう。
 ならば、1度でも攻撃を受けるわけにはいかない。
 承太郎さんのような、相手の攻撃を幾度となく受けても立ち上がるタフネス。それが、僕には無いからだ。
 ならば……鍵となるのは、軍服男が渡してきたコレしかない!


「ほう……」

 イヤホンから流れてくるあまりに衝撃的な音声に、ついつい驚愕の声を上げてしまう。
 綾崎ハヤテが堕ちなかったのだ。
 それどころか、暗闇大使に拳を叩き込んだのだ。
 さらに暗闇大使の言葉では、スタンド『オー! ロンサム・ミー』を使いこなしているようだ。
 首輪によって強制的に、全てのスタンドを使う『適性』が存在している状態になっているとはいえ、かなり飲み込みが速い。
 私が今までDISCを与えた者の中でも、上位に組み込めそうなほどの飲み込みの速さだ。

 まあ、彼がどうなろうと私にはどうでも――――待て。
 私にとってはどうでも良いことだったが……このBADANという組織は、大首領とかいう奴のボディが欲しかったのではなかったか?
 綾崎ハヤテがバトルロワイアルの最後の1人になる可能性は、一気に上がった。
 殺し合いに乗る気は無さそうだが、それでも最終的に1人になってしまう可能性はある。
 ならば、だ。
 暗闇大使は戦うつもりみたいだが、倒してしまうのは組織が『バトルロワイアルを開催した理由』に反するのではないか?
 彼等は、この殺し合いの舞台で『参加者同士』が戦って、その結果最後に残ったものを求めている。
 暗闇大使が参加者を殺してしまうというのは、『参加者同士』の殺し合いではない。

 ここまでなら、私にとってどうでも良いことだ。

 しかしこの状況は、私に対して不信感を募らせている暗闇大使から信頼を得るために利用できる。
 数時間前。私は、『スタンドだけ』を殺し合いの舞台に送ることが可能かどうかを確かめるため、『死神13』を送った。
 バトルロワイアルの舞台の遥か上空には衛星カメラが設置されていて、捉えた映像を暗闇大使の配下が随時チェックしている。
 『死神13』は夢の中だけでしかヴィジョンを発現させられないスタンドなので、上空の衛星カメラには映らない。バレないように送り込むには、最適なスタンドだ。
 しかしその最中に、暗闇大使が自室からこの部屋に来た為に、スタンドを解除せざるを得なかった。
 その後、暗闇大使が自室に戻っていった頃には、『彼』は目覚めていた。
 あの実験で『スタンド』を殺し合いの舞台に送ることが可能ということは分かったが、ミスを犯した。
 あの男に数回声をかけられるまで、『彼』と会話してしまっていたのだ。
 『死神13』の性質上、スタンドを見られることはなかった。
 しかしそれ以降、暗闇大使が私に対して若干の不信感を抱いている様に感じた。

 私の首には、参加者や暗闇大使と同じく首輪が嵌っている。気づいたら嵌められていたのだ。
 バトルロワイアルが始まる前に、暗闇大使は目の前で見知らぬ男の首輪を爆破させてから言った。
 『貴様の能力をBADANの為に活用するのだ。拒否したらあの男のようになってしまうぞ、お前も……あの男も』と。
 『あの男も』と言ったときに、見せられた映像に――私は驚愕し、少ししてから理解した。
 映っていたのは……『彼』だった。
 私はそれを『運命』だと思った。
 その『運命』を引き寄せたのは、『引力』
 そして、その『引力』の中心にあるモノは――――私と彼が天国へ到着するべき『天国』。
 そう理解した。

 BADANに従うと暗闇大使には言ったが、私としてはそんなことはどうでもいい。
 私の目的は、私と彼が天国に到着すること。ただそれだけだ。
 だが、『こんな殺し合いなどどうでもいい、真の目的は他にある』などと、暗闇大使に悟られるわけにはいかない。
 バレてしまったら、その場で首輪を爆破されてしまうかもしれない。
 若干でも不信感を抱かれている今の状況は、言うまでもなく『危険』だ。
 その不信感を払拭するには、命令に従っているところを見せつければ良い。
 出来れば『身を挺して』とか『自分の身が危険なのにもかかわらず』BADANの命令を優先しているところを見せ付けられれば最高だ。

 私は、BADANがバトルロワイアルを開催した理由を知っている。
 『BADANの為に能力を活用する』というのなら、私は暗闇大使を止めるべきだ。
 暗闇大使が綾崎ハヤテと戦うのは、BADANの長であるという大首領の思惑から外れているのだから。

 命令に従っているふりをする為に、『ホワイトスネイク』を殺し合いの舞台に送る。
 綾崎ハヤテが危なくなってきたら、彼を救う。
 暗闇大使は怒るだろうが……、救った理由を説明すれば良い。
 BADANの為という理由を聞けば納得するだろうし、私への不信感も払拭されるはずだ。
 何せ暗闇大使を怒らせるという行為には、その場で首輪を起爆されるリスクがあるのだ。
 『こんな殺し合いなんかどうでもいい』なんて思っている奴が、そんな事をするとは思わないはずだ。

「……よし」

 『ホワイトスネイク』を発現させ、先ほど暗闇大使が呼び出した魔方陣の上まで移動させる。
 丁度魔方陣の中心に足を乗せたとき、眩い光がホワイトスネイクを包み込み、次の瞬間にはその場から消えていた。
 慌てずに、ホワイトスネイクの操作に意識を集中させると、すぐにホワイトスネイクがいる場所を把握できた。
 総合体育館の近く、地図でいうとD-5である。
 綾崎ハヤテや暗闇大使にバレないように総合体育館に侵入し、天井にでも掴まっておこう。


 これは、『試練』だ。
 思惑がバレてしまうわけにはいかない。
 綾崎ハヤテを助けた私に怒り、首輪を起爆されてしまうわけにはいかない。
 死ねば、そこで天国への道も潰える。
 これは、『試練』だ。
 天国へ行く為の『試練』だと、私は受け取った。
 天国へ私と彼が到着するという『運命』を、望む『結果』を引き寄せる『引力』を、私は信じている。


 壁に埋もれた体を、少しずつ抜き出しながら、ガモン大佐は思う。
 綾崎ハヤテは自分の思うように動かなかった。
 人間の分際でありながら、思い通りに動かぬ人間。そんなものは、最近得た『新たな力』で殺してくれる――と。
 己を2度も殴りつけた愚者への殺意を胸に、ガモン大佐は再び総合体育館へと足を踏み入れる。

「……何?」

 総合体育館に入るや否や、ガモン大佐はそう呟いた。
 自分に向かって大口を叩いたはずの綾崎ハヤテが、そこにはいなかったからだ。
 逃げたか? そんな考えがガモン大佐の脳裏を過るが、その考えをすぐに消し去る。
 近くに誰かいるという気配を感じ取ったのだ。

(フン、人間の考えそうなことよ)

 胸中に人間への侮蔑の意を秘めながら、ガモン大佐は用具室まで歩いていき、ドアを勢い良く開いた。
 瞬間、ガモン大佐の顔面目掛けて、凄まじいスピードでバレーボールが飛来する。
 それを危なげない様子で回避し、中にいた男に声をかける。

「この部屋に灯りを点けなかったのは、今の奇襲の為だったのか? 綾崎ハヤテ」

 ガモン大佐の問いに表情を険しくしながら、中にいたハヤテが答える。

「……正解です。強力な力を持っているであろうあなたに、正攻法で勝てる気がしなかったのでね。
 しかし、こんなにも早く居場所を突き止められるとは……思ってもいませんでしたよ」
「思い上がりも甚だしいな」
「ええ、今ではそう思いますよ。ところで、1つだけ質問していいでしょうか?」
「フン、言ってみるがいい」
「なんで僕がバレーボールを投げたと思います? それも1球だけ。
 威力はもちろん、見えにくいという意味でも、野球やテニスのボールのほうが適していると言うのに」
「貴様は何を言っている」

 目の前の男は何を言っている……イカレてるのか、この状況で?
 ガモン大佐の脳内にそんな考えが浮かんでくる。
 当然だ。
 誰が見ても絶望的な状況で、最後に得た質問の機会。
 それを意味の分からない、必要とは思えない質問で浪費しようとしているのだ。

「分からないんですか? そろそろ目が慣れてきたはずですから、気付きそうなものですが」
「何ィ? ――――ヌゥッ!?」

 ガモン大佐が声を疑問のあげたのと同時に、ハヤテが武装錬金『ピーキーガリバー』を展開。
 ガモン大佐もそれに気付き、後ろに飛んで距離をとる。

「そうそう何度も正面から喰らうとでも思っておるのか?」
「思っていませんよ。
 だからこそ投げたんですよ。暗くてよく見えなかったでしょうが――――」
「ッ!?」
「――――数枚のバレーボール用のネットを括りつけた、バレーボールをね!!」

 次の瞬間、ガモン大佐が宙に舞う。
 前方のハヤテからの攻撃を警戒していたはずが、何故か『後方』からハヤテの巨大化した右拳が現れ、アッパー気味の一撃を叩き込んだのだ。
 ハヤテの左手にはバレーボール用のネット。
 そのネットの先には、武装解除によって元の形態に戻った核鉄とそれを掴むハヤテの右腕。さらに先には、ハヤテが先ほど投擲したバレーボール。

(1度拳を叩き込むだけではダメージを受けないのなら……何度だって叩き込んでやる!)

 そう決意すると、ハヤテが右腕を再度分解させ、ネットの上を伝わせていく。
 暫く伝わせたところで、分解した右腕をくっつけると、右腕がネットに編みこまれているような状態になる。
 その編みこまれた右手が持っているのは、核鉄――『オー! ロンサム・ミー』は肉体だけでなく、持ち物や服も分解してロープを伝わせることが出来るのだ。

「武装錬金!」

 ハヤテがそう叫ぶと核鉄が光り輝き、篭手の武装錬金『ピーキーガリバー』を展開する。
 武装錬金が展開されたのを確認すると、ハヤテはピーキーガリバーに覆われた右掌を強く握り締め――

「まだまだァ!!」

 ――落下してきたガモン大佐に、もう2度目の巨大化した右拳からのアッパーを浴びせる。
 再び宙に打ち上げられるガモン大佐。
 しかしそこは、BADANのNO.2。
 空中で対抗策を練ったガモン大佐が、それを実行に移す。

(あのスタンドで移動できるのは、紐状の物がある場所だけ……
 ならば、ネットが無い場所に落ちればよいだけのことよッ!)

 ガモン大佐が体を捻ることで、強引に落下点をずらす。
 その結果、ガモン大佐が落ちてくるであろう場所に、ネットは存在しない。
 しかしハヤテは焦る素振りすら見せず、左腕を分解。そのまま一気にネットを伝わせる。
 バレーボールの近くまで伝わせると左腕をくっつけて、バレーボールを左腕で掴んで即座に投擲。
 バレーボールの飛来する方向は、ガモン大佐が落ちてくるであろう場所と同じ。
 勿論、括りつけられているネットも、転がるバレーボールに引っ張られる。
 バレーボールはガモン大佐の落下点を越えてしまうが、括り付けられたネットはガモン大佐の落下点にちゃんと存在する。
 ネットさえあれば体を伝わせることが出来るのが、スタンド『オー! ロンサム・ミー』。
 ガモン大佐の落下点にあるネットまで、分解させた右腕を伝わせ、くっつける。
 くっついた右腕には、既に『ピーキーガリバー』を装着済み。

「まだまだまだァ!!」

 ハヤテが放つのは、三度目の巨大化した右拳からのアッパー。
 ガモン大佐が味わうのは、三度目の空中浮遊。


 そこからは、同じことの繰り返し。
 ガモン大佐が空中で体を捻って落下点をずらし、ハヤテの左腕がボールを投げてガモン大佐の落下点にネットを設置し、ハヤテの右拳が落下してきたガモン大佐にアッパーを叩き込む。
 それが数十回続いた後、ガモン大佐が空中で体を捻ることをしなくなる。

「ハァハァ……武装、解除……」

 ハヤテがピーキーガリバーを解除する。
 これだけ拳を打ち込めば、さすがにもう立ち上がれないだろう。
 空中で体を捻らなくなったのは、その為だろう。そう思っての行動。

「あの軍服男は……」

 ハヤテが、武装錬金とスタンドの同時使用による疲労のせいで、少し覚束ない足取りでガモン大佐の方へ向かう。

 もしもの為に、ネットが括り付けられたバレーボールと武器は携帯している。
 ハヤテがガモン大佐の生死を確認しようと、ガモン大佐に触れようとしたその時。

(――え!?)

 何者かの手がハヤテの腕を掴み、そのままハヤテを放り投げた。
 ハヤテが驚愕し、先ほどまで自分がいた場所を見る。
 瞳に映ったのは、起き上がるはずのないガモン大佐。

(なんであの人が!? いや、それよりも……)

 ハヤテの顔面が絶望に染まる。
 投げられた際に、バレーボールを奪われてしまっていたのだ。

「クッ……武装錬――」
「遅い」

 ハヤテがピーキーガリバーを展開しようとするも、ガモン大佐が投擲したバレーボールが核鉄を弾き飛ばす。
 後方に飛んでいく核鉄は掴めなかったが、咄嗟にバレーボールを掴み取ったので、一瞬ハヤテの脳内に希望が沸く――も、すぐにその希望は灰となる。
 括り付けていたネットは既に外され、飛来してきたのはバレーボールだけだったのだ。

「なかなか機転が利くではないか。
 だがこの私を――暗闇の使い、ガモンを殺すには足らぬ」

 ガモン――そんな参加者がいただろうか。
 そんな事をハヤテが考えている間も、ガモン大佐は言葉を続ける。

「足らぬ、足らぬ、足らぬ、足らぬ、足らぬ、足らぬ、足らぬ、足らぬ。
 パワーが! 冷徹さが! 殺意が! 全てが足らぬわッ!」

 そう言い放つと、ガモン大佐の目が輝きを放つ。
 そして、ガモン大佐の視線とハヤテの視線が、交わった瞬間――

「え……?」

 ハヤテが驚愕の声をあげる。
 持っていたはずのバレーボールも、何故か落としてしまっている。

(力が入らない。それに、体が……動かない……?)

 そう、体が動かなくなってしまったのだ。
 驚愕しているハヤテを見て、ガモンが御満悦な様子で言葉を投げつける。

「さぁ、恐怖のサインを私に見せるがいい。
 私が最近得た力――『エニグマ』を使わせてみるがいい!」

 そう言い放つと、白と黒の二色から成る禍々しさで溢れたスタンドを発現させる。
 スタンド名は、『エニグマ』。
 能力は、物質を『紙』に『封印』し、保存できること。
 封印したものは、その紙を『開くこと』で取り出せる。
 また紙が破壊された場合、『封印された物質も』破壊される。
 銃や蝶ネクタイなどの小さいものはもちろん、ロードローラーやゼロ戦などの巨大な物も封印することが可能。
 炎や電気などの、放っておいたらエネルギーが尽きてしまうものも、『封印した時のまま』保存可能だ。
 ただし、意思のあるものを封印するには、封印する対象が『恐怖』していなければならない。
 ちなみにこのバトルロワイアルの参加者への支給品は、全て『エニグマ』によって封印されたものだ。

 そのエニグマでハヤテを封印しようと、ガモン大佐がハヤテが『恐怖のサイン』を浮かべるのを待つ。
 しかし、ハヤテの目を見た瞬間、エニグマを解除する。

「その目……敵対を止めぬ瞳!
 『恐怖』せんというのか、この状況で!?」

 そう、ハヤテは『恐怖のサイン』を浮かべていない……
 それどころか、ガモン大佐に敵対を止めぬ瞳を向けているのだ。
 周りに『オー! ロンサム・ミー』で移動できるものが、ネクタイしか無いというのに。
 そもそも体が動かないというのに――だ。

 その姿が、ガモン大佐を苛立たせた。
 ガモン大佐の瞳から放たれる輝きが、さらに強くなる。

(すみません、お嬢様……)

 更に体が重くなるのを感じたハヤテは死を覚悟し、胸中で主に侘びを入れる。
 それでも、屈したとは思われたくない――その思いから、ガモン大佐を睨みつけるのはやめない。

 ――ガモン大佐の視線の先、ハヤテの足元に亀裂が入る。
 ――轟音が鳴り響く。
 ――瞬間、ハヤテが先ほどまでいた場所に、半径2mほどの巨穴が空いた。

「何故助けた……」

 ガモン大佐がそう呟きながら、ハヤテが先ほどまでいた場所の上――天井を見る。
 そこにぶら下がっているのは、全身に横縞模様があり、C・A・G・Tの4つのアルファベットが全身に浮き出た、異形のスタンドのヴィジョン。
 名は『ホワイトスネイク』。
 本体は――

「エンリコ・プッチッ!!」

 ――『エンリコ・プッチ』。
 そのホワイトスネイクが、天井から床へと降りる。
 その腕の中には、綾崎ハヤテ。何が起こっているのか理解できない様子で、呆然としている。
 激昂しているガモン大佐を意に介さず、ホワイトスネイクが口を開く。

「元々ノ目的ヲ忘レテイルノカ? 少シ前ナラトモカク、今ノ綾崎ハヤテハ、『ボディ』ニ成リ得ル可能性ヲ秘メタ存在ダ。
 BADANノ者ガ傷付ケルベキデハナイ。バトルロワイアルノ流レニ任セルベキだ。
 『BADANノ為ニ』、私ハソウ判断シタ。決シテ裏切ッタ訳デハ無イ。ソレニ……」

 「ぐ……」と言葉を詰まらせているガモン大佐を尻目に、淡々とホワイトスネイクが言葉を続ける。

「裏切ル事ガ出来ナイトイウ事ハ、オマエガ1番理解シテイルハズダ――暗闇大使」

 ホワイトスネイクが言い終えてから数十秒ほどして、黙っていたガモン大佐が口を開く。

「……確かに、あの方の思惑から外れることになるな」

 その瞳からは、先ほどのような輝きは消えていた。

「だが、そやつが知ってしまったことについては、どうするのだ。
 貴様が記憶を抜き取るのか?」
「綾崎ハヤテガ知ッタコトガ、後ニ何カヲ成ト危惧スルノナラ」

 『参加者如きに存在を知られたくらいで、何か行動を起こすのか?』
 ガモン大佐に対する、ホワイトスネイクの遠まわしな挑発。
 それに気づいたのかは分からないが――ガモン大佐は「フン」と鼻であしらう。
 するとガモン大佐の足元に、光を放つ魔方陣の様なものが現れた。

「命拾いしたな、綾崎ハヤテ」

 ハヤテの方を向いてそれだけ言うと、より一層強烈になった光がガモン大佐を包み込む。
 暫くして、その光が消えた時。それまで傍観していた――いや、傍観するしかなかったのだが――ハヤテの体を戦慄が駆け巡る。
 ガモン大佐の姿が消えていたのだ。
 『超スピード』だとか『催眠術』みたいなチャチな物ではないのだろうな――ハヤテは漠然とだが、そう思った。
 呆然としていたハヤテを呼び起こしたのは、背中に走った衝撃。
 それまで綾崎ハヤテを抱えていたホワイトスネイクが、唐突に手を離したのだ。

「っ痛~~~~!? いきなり落とすこと――」

 そこまで言って、ハヤテの表情が変わる。
 いきなり落とされたので、素が出てしまったが――
 それどころでは無いということを思い出す。

「――今の軍服の男あなたのやり取りは、いったいどういうことなんですか?
 そしてあの軍服の男……ガモンと名乗り、あなたが暗闇大使と呼んだあの男は……
 大首領とは……、裏切ることが出来ないとは……、軍服の男を包み込んだ光は……
 そもそもあなた自身……一体何なのですか?」

 真面目な眼差しをホワイトスネイクがそれまで『いた』場所に向け、ハヤテは疑問に思ったこと全てを投げかける。
 しかしホワイトスネイクは、そこから既に――

「あ……れ? いな……い…………?」

 ――消えていた。

【D-5/総合体育館 1日目 夕方】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]下腹部、左肩、右頬に中程度のダメージ、核鉄とスタンドの同時使用により疲労極大、核鉄により自己治癒中、いろいろあったので混乱
[装備]454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING オー・ロンサム・ミーのDISC
[道具]支給品一式-水少量 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考・状況]
基本:マリアの死を無駄にしないためにも、力の無い人を助ける。命を捨てる事も辞さない。
1:何が何だか分からない。
2:軍服の男を放ってはおけないけど、一体どこに……? ガモンなんて参加者いたっけ?
3:力を得る。
4:ナギにあわせる顔が無い。
[備考]
※判断力が低下していたためヒナギクは死んだと思っています
※核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、バレーボール(現地調達)、バレーボール用のネット(現地調達)が、総合体育館内に落ちてます。
※総合体育館の一部に、半径2mの穴が空いてます。
※ガモンを参加者だと思っています。


【??/?? 1日目 夕方】
【暗闇大使@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]ワープ中、ハヤテから受けたダメージは自然治癒中
[装備]エニグマのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]
[思考・状況]
基本:大首領の命令のままに
1:戻ったら、そろそろ放送。
[備考]
※首輪をつけてます。
※ガモン大佐がつけている首輪には、制限装置と爆破装置がつけられていません。
※その為にスタンドDISCが使えます。
※プッチに大して少し不信感を抱いていた模様(現在は不明)。

【??/?? 1日目 夕方】

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:DIOと天国に行く。
1:ホワイトスネイクは解除した。
2:暗闇大使に首輪を起爆されるのは、避けねばならない。
[備考]
※首輪をつけてます。


【首輪について】
※身体能力、異能力を弱体化させる装置。
 嵌めた者を強制的に、全てのスタンドDISCに対する『適性』が存在する状態にする装置。
 爆破装置。
 上記の3つの装置が内蔵されています。
※能力制限装置は、制限する能力と制限の度合いを選択可能です。
※現在参加者に嵌められている首輪は、強者と弱者の格差をなくすように働いています。
※その為に弱者には軽い制限、強者には重い制限がかけられています。


168:燃える決意――Resolution―― 投下順 170:Don’t stop Don’t give up
168:燃える決意――Resolution―― 時系列順 170:Don’t stop Don’t give up
156:コドクノテイギ 綾崎ハヤテ 174:Double-Action ZX-Hayate form