誰がために(後編) ◆wivGPSoRoE




 暗い事務室で川田は、虚空を睨んでいた。
(ひでぇもんだ。戦争でもあったみたいじゃねえか)
 病院の惨状は、まさに、被災地のような状態であった。
 やっとの思いで辿り着いてみれば、玄関付近には坂田銀時という男の死体が転がり、
 自動ドアの玄関は、無残に破壊されていた。
 壁にはいくつも大穴が開き、窓ガラスはことごとく割れ、棚がひっくり返り、机が粉砕されている。
 足をすすめるたびに、何かを踏みつぶすハメになり、その度に嫌な音が発生する。
 一体何をどうやれば、コンクリート造りの病院をこれほど破壊できるのか?
(こんなことをやっちまう奴らとやり合うのは、御免をこうむりたいぜ)
 川田が、眉間に新たな皺を刻んだその時。

 ――逃避するな。

 心の中でそんな声が聞こえた。
 舌打ちを一つ。
(分かってるさ……。病院を荒らした奴を誰か考えるもの大事だが、今はそっちよりも――)
 川田は、視線を下に落とした。

 目の前には、電話機が一つ。

(さて、どうしたもんかな……)
 録音からもたらされた事実を、もう一度頭の中で反芻する。
 川田の眉間に、困惑と苦悩の陰影が浮かびあがった。
(つかささんの話だと、いいお姉さんらしいんだが……。
間違いだったらそれにこしたこたぁない。というか、間違いなのがベストなんがな)
 だが、この状況はそれほど甘いものではないことは、
 二度もプログラムを経験させられた自分が、一番よく知っている。
 最後の独りにならなければ死ぬという状況は、容易く人を狂わせる。
 ましてや、昨日まで平和な生活をしていた女の子なら、なおさらだ。
 今更ながらに、理不尽極まる運命に、つかさや、つかさの姉を巻き込んだ老人に対する怒りがわいて来る。
 もって行き場のない怒りが、川田の胸を焼き焦がす――

「川田、少し、話せるだろうか?」

 ドアが開き、覚悟が戸口から姿を現した。
 胸の中の激情をなんとか押さえつけ
「……別れはすんだのか?」
 川田は覚悟に尋ねた。
 すると覚悟は、どこか沈痛なものを瞳に浮かべながら、
「せめて、昇華で弔いたかった……」
 呟くように言った。
 銀時の遺体は、病院の入り口近くに墓を掘って埋めた。
 本当は、より魂が安らげる場に埋めたかったのだが、いつ襲撃があるか分からない状況では、
 病院を離れるわけにもいかなかったのだ。
「坂田って人は、『サムライ』だったんだろう?
だったら墓がどうとか、小せぇことはいわないと思うぜ」
 川田の言葉に覚悟はわずかに眉を緩めた。
 確かに、超然とした雰囲気を漂わせていた、戦士新八があれほど慕っていた坂田銀時なら、
 墓に文句をつけたりはしないだろう。
「ヒナギクさんと、つかささんは?」
「見かけなかった。しかし、二階に気配はしたゆえ、そちらだろうと思う」
「そうか」
 つかさがいないことに胸を撫で下ろしつつ、
 川田は覚悟に先ほど聞いた事実を話すかどうか、逡巡する。
 しばしの間、沈黙の川が二人の間に横たわった。
 川を渡る決意を川田がつけるのに、半歩ばかり先んじて
「川田……。話しておきたいことがある」
「何だ?」
「川田の知人のことゆえ、言いづらいのだが――」
 ざわ……と心の水面に風が吹くのを川田は感じた。

 しばらくの間、同じ音域の声が部屋の大気を震わせ続けた。

「――以上だ」
 覚悟が口を閉ざすと、再び事務室は沈黙を取り戻した。
 困惑の皺を幾重も額に浮かべて黙り込む川田に向かって、覚悟は続けた。
「何ゆえ、あの男がつかささんを狙うのか分からない。
しかし、あの男が何かを企んでいるのは間違いない。
何らかの対策を練る必要があると――」
「いや、葉隠。ちょっとまってくれ」

 訝しげに押し黙る覚悟から視線をそらし、川田は天井を仰いだ。

 ――なんてこった。

 よもや話がここまでこじれてくるとは、思いもよらなかった。
(黙ってるわけには……。いかねえな)
 ここで間違えば、取り返しのつかないことになる。
 先ほどの一件にしてもそうだ。
 下手をすれば、3人のうちの誰かが死んでいたところだ。

 ――三村をこのまま悪役にしておくことはできない。

(三村を見捨てちまったら、七原に申し訳が立たねえからな……)
 三村のことを嬉しそうに語っていた七原の顔を思い出しながら、
 川田はため息をついた。
(それにしても……。七原の話の通りなら、もうちょっと頼りになる奴なんだが……)
 三村に対して軽い苛立ちを感じながら、
「葉隠、つかささんと、ヒナギクさんを呼んできてくれ」
「つかささんにも、話すのか?」
「そうだ。ここで、間違えるとまずいことになる。
状況を、ちゃんと理解しておかねえとな」
「了解した」
 覚悟は立ち上がり、外に出て行く。
 ほどなくして、3人が事務室に揃った。
 ヒナギクは、深刻そうに形の良い眉をしかめ、雰囲気の硬さを感じ取ったつかさも、どこか不安げだ。
 川田は、つかさの顔に目をやった。

 つかさと目が合った。

 つかさが口元を緩め、口の端に微笑を浮かべた。
 猛烈な勢いで、つかさの顔から目を逸らしたくなる衝動が込み上げてきた。

 ――言いたくねえ。 

 その思いが怒涛のごとくおしよせ、心の堰を今にも打ち破らんとする。
 精神力を総動員してその思いをねじ伏せ、川田は口を開いた。
「話す前にまず、前提として思い出してもらいたいことがある――」
 川田はヒナギクと覚悟に目をやった。
「『柊』は、この場に二人いる。それをまず、思い出してくれ」
 つかさが疑問符を浮かべつつ、首をかしげる。
 覚悟はいつものごとく、謹厳な顔をしながら黙考。
 突然――

「え!? じゃあ……」

 ヒナギクが立ち上がった。
 驚愕と、そして悔恨の光彩が、ありありとその瞳に浮かび上がっている。
(流石だな、ヒナギクさん。理解が早くて助かるぜ)
 少し遅れて覚悟の顔にも、理解の色が浮かぶのをまって、
「つかささん……。つかささんのお姉さんの髪の色は、つかささんと同じ色。
背丈はほぼ同じ、で間違いないんだな?」
 急に姉のことを持ち出され、混乱と不安に顔を歪めながらつかさが頷く。
 心がしめつけられるのを、川田は感じた。

 ――こいつは、キツイな。

 だが、ここで言わなければ、取り返しのつかないことになる。
 川田は口を開いた。


「――とにかく、断言は危険だ。
この状況じゃ、ちょっと対応を間違えただけで殺し合いになりかねない」
「その通りね……」
 苦味を存分にブレンドさせ、ヒナギクが嘆息する。
 先ほどの一件は、まさにそれだ。
「確実なのは、つかささんと三村、そしてジョゼフという3人の間で、何かトラブルが起きたということ。
その結果、ジョゼフという男が、何らかの形で生死不明になるような状況に陥った。それだけだ。
だから――」
 つかさの方に向き直りながら、
「こうだろう、って決め付けるのはやめた方がいい。
この腐れゲームの場じゃあ、人間が接触すれば、何らかのトラブルが起きる可能性の方が高い。
いや、本来は起きない方がおかしいんだ。男と女ならなおさらな……。
そして、トラブルが起きれば必要以上に相手を悪く思っちまう。そういう状況なんだ、今は」

 初対面の人間同士が友好関係を結べるほうが、本来はおかしい。
 人間の精神が、こんな異常な状況でおかしくならないはずが、ないからだ。
 ここにつれてこられた人間達は、色々な意味で規格外の人間が多いが、
 つかさの姉が会った人間がどういう人間だったのかは、分からない。

 ――もっとも、三村という男は女をいきなり襲ったり、嘘をついて誰かを陥れたりという類の人間ではないはずだが。

 その考えはとりあえず頭の中の戸棚にしまいこみつつ、
「誤解しあってるだけの可能性は、十分にある」
 その時、川田は気付いてしまう。

 ――まったく聞いちゃいねえ。

 暗い光で覆いつくされたつかさの瞳は、何も見ていなかった。

 ――とどかない

 今のつかさに、言葉は無力だ。
 川田は心の中で苦さを噛み殺した。

 つかさの姉が殺し合いに乗る決断をしたということは、自分の妹も殺そうと決断した、ということ。
 大好きな肉親に裏切られた、つかさの心の痛みはいかほどか。
 それを考えると、川田は何もいえなくなる。
 覚悟も、ヒナギクも同じだった。
 否。ヒナギクと覚悟の場合は、その思いは川田以上であったろう。
 覚悟とヒナギクの心には、肉親の裏切りによってできた傷が、深く刻み付けられている。
 だからこそ分かる。言葉が届く場面なのかどうか、ということが。
 分かるからこそ、覚悟も、ヒナギクも、沈黙しか選ぶ選択肢がない。
「ヒナちゃん――」
 陰鬱な呟きが大気を震わせた。
「三村って男の子は、どんな風だったの? 嘘、ついてるように見えた?」
 一瞬の沈黙があって、
「どうだった、かしらね……」
 言いにくそうに目を逸らしながら、
「よく、覚えてないのよ、私。つかさを悪く言われて、頭に血が上っちゃっから……。
ごめんね、つかさ」
 それだけを言ってヒナギクは黙り込む。
 しかし、ヒナギクの歯切れの悪い言葉と態度は、雄弁に真実を物語っていた。
「そう、何だ……」 
 俯いたままつかさが立ち上がる。
「どこへ行くんだ? つかささん」
 いたわるように覚悟が尋ねる。
「……ごめんね、覚悟君。ちょっと、独りにさせて……」
 肩を落として出て行くつかさに、何か言おうとしてヒナギクが唇を噛む。
 覚悟が眉根を寄せる。
 川田は無言で拳を握り締めた。


 暗い部屋の中で手を動かし続けるつかさの胸に去来する思いは、一つだった。

 ――おねえちゃんに会いたい。

 会って確かめたい。
「そんなわけないでしょ」って笑う声が聞きたい。
「私が人殺しをするなんて、思ったの!?」って怒られたい。
 信じてる。

 ――お姉ちゃんが、人殺しをするはずがない。

 そう、信じてる。
 でも。でも仮に、殺し合いに乗ってしまっているのなら。

 ――止めなきゃ。

 かがみが、川田達と殺しあう所なんて見たくない。
 でも。それでも。
 姉が、殺し合いをやめてくれなかったら、せめて。

 ――謝りたい

 かがみが、自分のことを殺そうとしたとしても、恨むつもりはない。
 怖いけど。すごく嫌だけど、かがみのことを恨むことなんて、できない。

 ――きっと自分のせいだから。

 いつもいつも守ってもらって。迷惑ばかりかけて。よりかかるだけで。
(お姉ちゃんに嫌われちゃっても、仕方ないよね)
 だから言ってあげたい。

 ――お姉ちゃんは悪くないよ。

 自分の気持ちを伝えて、少しでも楽にしてあげたい。
 姉はダメな妹を突き放せないほど優しかった。だからきっと、苦しんでいる。
 お礼も言いたい。

 ――ずっと一緒にいてくれてありがとう。

 それだけは伝えたい。
 一緒に生まれて、一緒に育って。ずっと側にいて、守ってくれた。
 そのことを心から感謝しているということだけは、どうしてもかがみに伝えたい。
 つかさは、ディパックを背負いあげた。

 ――行かなきゃ。

 そっとドアを閉め、足音を忍ばせながら、つかさは廊下を歩き出した。
(ごめんね……。ヒナちゃん、覚悟君)
 つかさは心の中で頭を下げた。
 勝手なことをしようとしているのは、分かっている。
 自分がいなくなったら、きっと二人とも心配するだろう。
 とってもいい人達だから。
 二人の顔を思い浮かべると、心に痛みが走る。
 だけど――

 ――私は、いない方がいい。

 いても迷惑をかけるだけだから。
 覚悟にもヒナギクにも、やらなければならないことがある。
 彼らを巻き込みたくない。巻き込めない。
 ただでさえ、覚悟にもヒナギクにも、負担をかけているのだ。
 闘えない。特殊な技術もない。頭も良くない。
 何の役にも立たない、柊つかさ。
 だからいつか。いつかきっと――
(覚悟君も、ヒナちゃんも、私のこと、嫌いになるよね)
 姉に愛想を着かされたように、二人にも愛想をつかされるに決まっている。
 だから、これ以上二人と一緒にいない方がいい。いたくない。

 ――もう、大好きな人達に嫌われたくない。

 その時、つかさの脳裏に一人の人間の顔が、浮かんだ。
 意識して考えないようにしていたのに、考えてしまった。

 ――川田君。

 マンションの一室で、何がなんだか分からず、怖くて怖くて震えていた自分を、助けてくれた人。
 優しく包んでくれた人。
(ごめんね、川田君……)
 彼とも別れなくてはならない。

 ――嫌。

 いきなり心が叫んだ。
 自分でも驚いてしまうほど、強い声。

 ――別れるなんて嫌。一緒にいたい。

 つかさの視界が滲んだ。 
 目元をぬぐってもぬぐっても、すぐに視界はぼやけてしまう。

 ――ダメ。こんなこと考えちゃいけない。

 今はかがみのことだけを考える時のはずだ。
 つかさは大きく鼻をすすり、乱暴に目元をぬぐった。
(ごめんね、お姉ちゃん……。今、行くから)
 姉の姿を思い浮かべると、少しだけ心が前を向く。
(お姉ちゃん、お姉ちゃん……)
 呪文のように心の中で何度も繰り返す。
 姉の姿を思い浮かべている時は、彼の顔を忘れられた。
 玄関へは向かわず、壁の大穴から外へ出る。
 待っていたのは――

 闇と静寂、

 悪寒に襲われ、思わずつかさは立ちすくむ。
 夜の闇が、永遠に続く深淵に感じられた。
 つかさは今更ながらに痛感する。
 いかに自分が守られていたか、仲間に救われていたか。
 ゴクリ、とつかさは喉をならした。
 出て行けばもう、誰も助けてくれない。守ってくれない。

 ――だけど、だからこそ。

「行かなきゃ……」
 夜の闇を睨み、つかさは歩き出した。
 一歩、二歩、三、四五六――歩数だけを数えて夢中でつかさは歩く。
 足を止め、振り返ってみる。
 病院はもう闇の中に隠れて、ほとんど見えなかった。
(覚悟君、ヒナちゃん。川田君……さよな――)

「で、どっちに行くんだ?」

 弾かれるように、つかさは顔をねじり、声のした方を見た。

 闇の中に、彼がいた。

 塀によしかかって、タバコをくわえている。
「三村とつかささんのお姉さんが別れたのは、ボーリング場の周辺らしいから、
俺としては南の方がいいと思うんだがな」
 さっきまでと変わらない、いつも通りの声。
「どう、して……?」
 口から飛び出した声は、みっともなく掠れていた。
 また、視界が滲み始める。
(会いたくなかった、会いたくなかったよ……。川田君)
 きっと迷ってしまうから。辛くなるから。
 もう、こんなに心が痛いのに、これ以上痛くなったら、心が壊れてしまかもしれないから……。
「どうして、と聞くかねえ」
 呆れたような口調で彼が言う。
「これは、私と、お姉ちゃんの……問題だから……」
「そうかもな……。けど、割り込ませてもらう」
「そんな……。勝手すぎるよ」
「悪いとは思うが、今回ばかりは無理を通させてもらうつもりだ
是が非でも、な」
 彼が近づいてくる。
 つかさは、後ずさった。
「来ないで……。来ないでよ……」
 彼の足が止まった。
 ずきん、とつかさの心に痛みが走る。
「川田君達には……やらなきゃいけないことが、あるもん。
ダメだよ、私なんかと一緒に来たら……」
「つかささんと一緒にいること以上にやらなきゃいけないことなんか、俺には思いつかねえ」
 つかさの瞳孔が拡大した。
 沈黙の川が二人の間に横たわった。
「何で……。どうしてそんなに、してくれるの?」

 ――そんな価値は、私にはないのに。

 嘆息が聞えた。
「つかささん……」
 優しい声だった。
 大好きな、聞いていると安心できる、川田の声。
「君は、俺のことを君の希望だと言ったな……」
 コクリ、とつかさは頷いた。
 川田が表情を引き締めた。はっとさせられるほど真剣な表情だ。

「俺にとってつかささんは、命だ。俺の命、そのものだ」

 息が止まるかと思った。いや、息ができない。
 頭が真っ白だ。その真っ白な空間に声が響く。彼の声が、響く。
「前にも言ったが、俺はもう死んでる人間だ。
だから、こっちの世界につれてこられたときは、いつ死んでもいいと思ってた。
この腐れゲームを潰すために命を使えりゃ、それでいいと思ってた……」
 そこで川田は言葉を切り、ふっと笑った。
「ところが、君と会って、命が惜しくなっちまった……。
もうちょっと生きてみたいと、思っちまったんだ。
俺がこうやってまだ生きてるのは、つかささん、君がいるからだ。
君がいなけりゃ、俺の生きてる意味もなくなっちまう」
 川田が歩を進め始める。
 逃げなければと、心の中でか細い声が呟くが、まったく体が反応しない。
 川田の体が視界の中でどんどん大きくなって――

 抱きしめられた。

「俺の命は君と共にある。つかささんが行きたい場所が、俺の行きたい場所だ。
つかささんのやりたいことが、俺のやりたいことだ。
だから――」
 つかさの背中に回された川田の腕が一瞬、力を増した。
「側に、いさせてくれ」
 つかさの目から涙が溢れた。
 心の堰が壊れて、感情が迸る。
「わた、し……おねえちゃん、に嫌われ、っちゃったのかなぁ?」
「そんなこと、あるわけねえ!」
「でも、でも……。私、おねえちゃんに、いっぱい、迷惑かけて、たから……」
 背中に回された川田の手が、さらに力を増す。痛いくらいだ。
 でも、全然痛くない。
「そんなことは絶対にねえ……。
君のお姉さんが、君のことを迷惑だとかどうとか、思ったはず、あるもんか。
それでも万が一……億が一、そうだったとしても……」
 目の前に彼の顔がある。
 彼の瞳には、慈しみの優しい光と情熱の炎が燃えていた。

「俺がつかさの側にいる。だから……。泣くな」

 言葉が見つからなかった。何も言えなかった。
 つかさは黙って頷き、川田の背に手を回した。
 彼の心が感じられるように強く、手に力を込めた――



 嵐のような激情が過ぎ去り、つかさは川田から体を離した。
「……川田君、病院に戻ろう」
 つかさは川田に言った。
 無言で先を促され、
「私、お姉ちゃんのこと、止めたい。
ううん、絶対に止めてみせる。
お姉ちゃんと川田君たちが殺しあうのなんて、絶対に、絶対に許せない。
だけど、私と川田君だけじゃ――」
「俺じゃ力不足だってか?」
「そんなことないよ!」
 あまりの声の大きさに川田が耳を押さえた。
「ご、ごめん。でも、私、川田君にもお姉ちゃんにも怪我、してほしくないよ。
お姉ちゃん……。よく分からないけど、変な力を使ったんでしょ?
だから……」
 つかさは決然と顔を上げた。
「私、ヒナちゃんと覚悟君にお願いしてみる。
私の言ってること、すごく勝手なことだから、断られるかもしれないけど……」
「じゃ、行くか」
 言い置いて、川田が歩き出す。
 続いて歩き出そうとして――
「川田君、そっち逆方向だよ」
「ヒナギクさんと葉隠に頼むんならこっちだ」

 ――え?

 きょとん、とするつかさを置いて、川田がさっさと歩き出す。
「ま、待ってよ……。どういうこと?」
 歩きながら、つかさは川田に尋ねた。
 川田は答えない。だまって歩き続ける
 混乱しつつも、つかさはそのまま歩き続ける。
 だが、さすがに我慢できなくなり、
「川田君、一体どういうことなの?」
 足を止め、つかさは尋ねた。
 すると、
「どういうことも何も……」
 くっと笑い声を漏らしながら、
「みんな、つかささんのことが好きってことさ。
君のお姉さんを止めに行くのを、当然だと思うくらいにはな……。
まあ、俺には負けるだろうけどよ」
 川田が前方を指差した。
 つかさの視線が其方の方に向けられた。
 一度つかさの瞳孔が細められ、一気に拡大した。

 ――いた。

 覚悟とヒナギクがいた。蛍光灯の下に立っている。
 心配そうに顔をゆがめて、何かを待っている。
 暖かいものが込み上げてきて、胸を満たしていくのをつかさは感じた。
 すぐに心が、一杯になった。

 目を潤ませるつかさを見ながら、川田はホッと息をついた。
 拒絶されたり、逃げられなくて良かったと思う。
 無論、逃げられても追いかけるつもりではあったが――
(熱血はともかく、ストーカーはさすがになあ)
 まあ、先ほど自分が口走ったことは、熱血の範疇を超えているとも思うが、本音だから仕方ない。
 決めたのだ、今度は心のままに生きると。
 大事な人にはちゃんと思いを伝えると。
「行こうぜ!」
 ポンっと川田は、つかさの肩を叩いて歩き始める。
「川田君……」
 呼び止められた。
「どうし――」
「ありがと!」

 鈴のような声と共に、川田の唇を何かがかすめた。
 それはこの上もなく、柔らかな感触だった。
 体を襲った痺れるような感覚に、川田は体を硬直させる。

「急ごう!」
 つかさが、ヒナギク達のところへと走っていく。
 その首筋のあたりが真っ赤に染まっているように見えたのは、見間違いであったかどうか。
 川田は黙って空を見つめていた。

 速く、この顔を普通の状態に戻さなくては――

 闇夜に輝く北斗七星を見ながら、川田はそんなことを思ったのであった。


【F-4/南部 1日目 夜中】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:ボーリング場周辺、および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
3:生存者(コナン、吉良)の救出

【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾16/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(四本消費) ツールナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:ボーリング場周辺、および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
3:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです


【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 両足に痛み(弱)
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:ボーリング場周辺、および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておくる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:やれることを探してやる。だが無理はしない。

[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1~3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。


【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン 、ツールナイフ
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:ボーリング場周辺、および病院南方を探し、かがみを捜す
2:姉が殺し合いに乗っていたら、絶対に止める。

[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています

【備考】
※神社、寺のどちらを捜索するかを話し合う予定です。

※4人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
①殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
②最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。

※4人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている

※4人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論

※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対しては、ニュートラルな姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、とだけ認識しています。


184:風前の灯火 投下順 186:オラトリオ メサイア 第二部終章
188:夜空ノムコウ 時系列順 189:――の記憶
175:たとえば苦しい今日だとしても 葉隠覚悟 198:われらのとるべき道は平常心で死にゆくことでなく非常心にて生きぬくことである
175:たとえば苦しい今日だとしても 川田章吾 198:われらのとるべき道は平常心で死にゆくことでなく非常心にて生きぬくことである
175:たとえば苦しい今日だとしても 桂ヒナギク 198:われらのとるべき道は平常心で死にゆくことでなく非常心にて生きぬくことである
175:たとえば苦しい今日だとしても 柊つかさ 198:われらのとるべき道は平常心で死にゆくことでなく非常心にて生きぬくことである
179:状況は……? 勘違い真っ最中!! 三村信史 194:Cool or Fool?