オープニング

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オープニング 本スレ35さん




 彼らは目を覚ました。
 唐突に何かに足を掴まれ、引きずり込まれるような感覚を感じ、禍々しき漆黒の闇に飲み込まれた。
 それが意識を失う前の、最後の記憶。

 ――ここは何処だ?

 彼らはきょろきょろと周囲を見渡す。
 其処は開けた空間であった。
 足元は一応整えられてはいるものの、岩盤を無理矢理刳り貫いたような荒さがある。
 周囲を照らす得体の知れぬ灯りの光が、不安感を煽る 。
 何よりも彼らの心胆を寒からしめたのは、前方、少し小高くなった場所に鎮座している鎧であった。
 それは、見るものの背筋を凍らせずにはいられない、得体の知れぬ何かを確かに発していた。
 と、その時、参加者達の視線の先、鎧の影から一人の老人が現れた。

「今から諸君には、殺し合いをしてもらう」

 淡々と告げられた、理不尽かつ不可解極まる言葉に会場は大きく――

 ざわめかなかった。

 若干声はあがったが、大半の者は眉一つ動かすことなく、老人を見つめている。
「さすがは、一騎当千と呼ぶにふさわしい面々。これぐらいで平常心を失ったりはせんか」
 老人が満足そうに頷く。

「光成よ!」

 猛々しい声が轟いた。
 声の主に視線が集中する。
 その男の髪は燃えるが如く赤く、その双眸の光は肉食獣のそれよりも炯炯と輝いていた。
 全身から猛々しさを発散させながら、
「今度はなかなかのメンツを集めたようだな」
 あたりを見回しながら、赤髪の男は獰猛な笑みを浮かべた。
「だが、呼びつけ方がきにいらねぇ! 
それに、餓鬼や小娘まで混ぜているのはどういうつもりだ?」
「すまんのぅ……。だが、わしも知らされておらんかったんじゃ。勘弁してくれんか」
「何だと?」
 赤髪の男の顔に不可解の皺が刻まれた。

「なんのつもりかは知らぬが……。貴様等の児戯に付き合っている暇などない」

 地鳴りのような声とともに、一人の巨漢が老人に向かって悠々と歩を進め始めた。
 凄まじい威圧感を纏った男であった。
 男が歩むだけで、地が揺れ、暴風が吹き荒れたかと感じてしまうほどに。
 だがしかし、地の揺れを打ち消し、暴風を吹き飛ばし、巨漢の前に歩を進めた者がいた。
 それは 凄絶な獣の笑みを浮かべた赤髪の男。
「……この拳王の前に立ちふさがるか」
「極上の料理を前にして、喰らわねえ馬鹿がいるかっ!!」
 巨漢の超重量の視線と鬼の破壊的なまでの眼光が宙で激突。
 空間が軋みを上げる音を、確かに参加者達は聞いた。

「ゆっ……勇次郎ぉ~。この闘いには、ワシの命がかかっとるじゃぁ!! 勝手なことをせんといてくれぇぇ!!」

 悲鳴のような老人の言葉が響く。
 だが、巨漢と赤髪の鬼は身じろぎ一つせず、互いしか目に入らぬといった様子であった。
 両雄が地を蹴らんとした、まさにその時。

「……く、首じゃっ!! 首を見ろっ!! 勇次郎!!」

 赤髪の男、範馬勇次郎は唐突に気づく。自身の首にはめられた首輪の存在を。
 信じがたいことに、今の今まで、彼すらまったくその首輪の存在に気づいていなかったのだ。
 どうやらそれは、目の前の巨漢も同様であったようで、鋼鉄の如き男の眉が、髪の毛一筋分ほど角度を変えている、
 今まで、動揺の気配すらみせなかった参加者達も流石に虚を突かれたとみえ、今更ながらに首輪に手をやっている。
「その首輪には爆弾が仕掛けられておる。ワシに逆らったり、会場から逃げようとすれば爆発する仕掛けじゃ!」
 勇次郎が首を回し、老人をねめつけた。
 その双眸には、噴出さんばかりの紅蓮の炎が燃えていた。
「この俺に、犬コロの如き首輪をつけるとはっっっ!!」
 咆哮と共に、勇次郎の体が弾けた。
 疾風となった勇次郎の体が、老人に向かって殺到していく。

 ――突如、勇次郎が崩れた

「おっ……。おぉぉおお!?」
 驚愕の叫びが、勇次郎の口から漏れた。
 血管が浮き上がり、筋肉が膨張するのが遠目にも見て取れた。
 だが、何としたことであろう。勇次郎の身体は、一歩たりとも前に進もうとしない。
「お、親父!?」
 鋼の如き肉体をした、まだ少年の面影を残す青年が、信じられぬという表情で叫ぶ。
 異常な事態に、流石の巨漢も足を止め、静観の構えを見せた。
 ほっとしたように、安堵の息を漏らしながら、
「ちなみに、首輪は大きな衝撃を与えたり、力づくで取り外そうとした場合も爆発するようになっとる」
 そう言って、老人は自分の言ったことが浸透しているかを確かめるかのように、会場を見渡した。
「それに、その首輪はワシの思い通りに起爆させることもできる。つまり、諸君等の命はワシの手の中ということじゃ。
くれぐれも馬鹿な真似はせんようにな! まあ、言ってもなかなかピンとこんじゃろうから……」
 ピタリ、と老人は会場の一点を指差した。
「そこのお嬢ちゃん! すまんが、ちょいと前にでてくれんかの?」
 メイドの格好をした少女が、びくりと体を震わせた。
「おっ……。おいっ!! お前、シエスタに何を……」
 傍らにいた少年が、抗議の声をあげる。
「大丈夫です、サイトさん」
 恐怖に顔を引きつらせながらも、少女は言った。
「で、でも……」
「逆らっちゃ駄目です……。何だか、あの人、得体のしれない力をもってるみたいですから……」
 震えながら、それでも少女は気丈にも小さく少年に笑いかけた後、ゆっくりと歩き始めた。
 ほどなくして少女は、老人に示された場所、老人と集められた者達の丁度中間に位置する点に辿り着いた。
「すまんかったのう、嬢ちゃん。なにやら怖い思いをさせてしもうたようで……」
 髪のない頭を撫でながら老人が笑う。
「いえ……。それで、私に、どんなごようでしょうか?」
「う~ん……それが、言いにくいんじゃがのう……」
 口ごもるような仕草をした後、老人はピシャリと頭を叩いた。

「嬢ちゃんには、見せしめになってもらおうと思ってな!」

 少女の体が凍りついた。
「えっ!? う、嘘!?」
 帰ってきたのは静寂と。老人の憐みの視線のみ。
「た、助け……誰かっ!」
 老人の言葉が心に浸透しきると認識すると同時に、少女の唇から悲鳴が迸った。

 突如、参加者の列の中から黒い影が走り出た。
 赤髪の男に劣らぬ速度で、少女へと向かう。
 黒い影と、少女の距離が見る見るうちに迫る。
 少女まで数歩の距離に、黒い影が到、

 ボンッ

 無慈悲な爆発音が轟いた。

 頭を失った胴体から血が噴水の如く溢れ出る。
 居並ぶ者たちの中からあ悲鳴が上がった。
 少女の首が地面に落ちる寸前、駆け寄った黒い影がその首を掬いあげ、胴体が地に倒れるのを防いだ。

「シエスタァァァッッ!!」

 絶叫が会場にこだます中、駆け寄った黒い影は、老人をはったと睨みつけた。
 黒い影の正体は、黒髪の少年。
 その眼差しは、清冽さに満ち、どこまでも真っ直ぐだった。
 少年と老人の視線が衝突し、あまりの少年の視線の眩さに、僅かに老人は視線を逸らした。
 踵を返し、少年は恐怖に歪んだ少女の瞼を閉じさせ、少女の名前を読んだ少年へと歩み寄っていく。
「……返還する」
 言葉は短かったが、その声には確かに、悲しみと鎮魂の思いが秘められていた。
「あり……がとう……」
 少女の亡骸をかき抱き、その場に崩れ落ちる少年に背を向け、黒髪の少年は再度老人に視線を叩きつけた。

「人の皮を着た鬼よ! 貴様が殺し合いを望むのなら、
俺は、牙を持たぬ人を守り、貴様を討つことを宣言しよう!!」

 見も知らぬ少女のため、少年が走ったのは理屈ではない。
 身体に刻まれた、既に本能となった信念に従ったまでのこと。
 牙をもたぬものの剣となり、地獄にあろうと人を称える詩を歌う。
 それが、葉隠一族。それが、葉隠覚悟という男。
 少年の心には、熱い正義の炎が燃えていた。

「……お主、ワシの言ったことを聞いとらんかったのか?」
「笑止!!」
 嘲笑混じりの老人の言葉を、覚悟は一刀の下に斬って捨てた。

「当方に迎撃の用意有り!!」

 ――覚悟完了

 死の恐怖など微塵たりともみせぬ揺ぎ無き少年の眼差しに、老人は愉悦の笑みを浮かべた。
「ふはははっ!! いいよる! いいよるわ!! だが……主のその思い、いつまで貫けるかな?」
「愚問! 無論、死ぬまで!!」
 老人は更に笑声をあげた。
「さすがに、英霊となるべく集められ人間の1人だけのことはあるわい……」
 口の中で呟き、老人は両手を広げた。

「これより、バトルロワイアルを開始する!!」

 老人の言葉と共に、参加者達の身体は会場から掻き消え、悪魔のゲームの火蓋は、斬って落とされた。


  【シエスタ@ゼロの使い魔:死亡確認】
  【残り60人】



- 投下順 001:Two people meet you in a night town
- 時系列順 001:Two people meet you in a night town
初登場 葉隠覚悟 005:二つの零、二つの魂
初登場 範馬勇次郎 017:トラップ発動!
初登場 ラオウ 002:支給品に核兵器はまずすぎる
初登場 平賀才人 011:吸血鬼
初登場 シエスタ 死亡



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