その暴力に賭ける

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その暴力に賭ける ◆ctWQeRff.I



 友と反する道を選んだ、そのことは決して軽いものではない。
 けれど、江戸川コナンの決断は早かった。
 理由は簡単だ。彼が持つ殺人忌避の信念は、それだけ重いから、たったそれだけなのだ。
 服部平次とは、コナンにとってある意味で、唯一の友人と言っていい。
 級友なら、歩美や元太、光彦たちがいる。
 同じ幼児化を経験した人間なら灰原がいる。
 同じ屋根の下に眠る毛利蘭にいたっては、恋心すら抱く幼馴染だ。
 けれど、対等な立場で肩を並べて推理できる男は服部しかいない。
 自分と同等の知力、推理力、事件解決実績。
 それがある男は、服部平次をおいて他にいない。
 その服部と違う道を歩むことが、コナンにとってどれ程苦渋の決断であったかは想像も出来ない。
 まして、知力を発揮すべき相手は並行世界横断技術を持つ得体の知れないモノ。
 2人で頭を寄せ合ったところで、なお、及ばないかも知れない。
(でも、だからってよ……)
 全て分かっている。
 服部と共に策を練らなければ、太刀打ちできる相手ではない。
 服部のとった行動に何一つ間違いはない。
 そもそも、殺した相手は異世界の住人吉良吉影だ。
 服部が元世界に戻った後も、彼を裁く法律は存在しないし、
仮に同じ世界の住人であったとしても、この場では正当防衛が主張できる。
 実際、あそこで殺したのは正当防衛以外の何ものでもない。
 要するに、服部の正しいのは分かっているし、
 それを認め、服部と共に行動する方がよほどメリットがあるのだ。
 けれど、コナンは理性的ではあるけど、無感情というわけではない。
 自分の信念と服部が違う手段をとった。そんな男と、どうして同じ道を進めようか。


 江戸川コナンという少年は、このバトルロワイアルの中では異質である。
 実を言うと、彼以外の全ての者は緊急避難という言葉で括られる行為を、コナンに比べれば積極的にとる。
 先ほどの服部がいい例だ。
 コナンはまだ、緊急避難を取らなかった。
 吉良という殺人鬼が目の前にいるにもかかわらず、相手はスタンドと言う未知に近い力を持つにもかかわらず、
それでもなお、コナンは殺さずに無力化する道を模索していた。
 だが、服部は違う。というより、服部だけでなく他の参加者の全員が違う。
 迫り来る脅威からごく自然に、避難するという行動。結果として殺人を犯してしまったが、それでもなお当たり前の行為だ。
 その行為が、仕方ない事だなんて、コナンも頭では理解している。
 だが、魂が認めていない。
 信念、たった漢字2つのそれではあるが、コナンにとって何より重い。

 コナンがなぜ、このように重い信念を抱くに至ったのか、定かではない。
 本人いわく、一度犯人を追い詰めて自殺させてしまったから、らしいがその一回だけでは説明がつかないだろう。
 月影島での連続殺人事件、確かにあの事件は大きなものだったに違いない。
 けれど、どれほど大きな事件であったとしてもコナンにとっては100を超える事件経験の中のたった一つに過ぎない。
 その事件が、果たしてどれ程の影響を与えたのか、正直、軽いのではないかと思う。
 恐らく、江戸川コナン、あるいはそう呼ばれる前の工藤新一時代から、この信念の原型は出来ていたのではなかろうか。
 無論、推測に過ぎない。
 そして、恐らく本人も知らないだろう。
 信念とは、正義とは、理屈ではないのだから……
 さて、ここで江戸川コナンという人間が持つ信念の重みをもう少し掘り下げて見てみよう。
 いつの日だったか、服部平次が幼馴染の遠山和葉と共に東京見物に来た日のことだ。
 色々な経緯があって、服部の知人重松明男に再会。
 そこから、彼が執事を勤める森園家へとお邪魔することになった。
 そこでいつものように殺人事件が起こり ─ いつものようにと言うのもおかしな話だが ─ コナンは、服部と共に推理するわけだ。
 だが、ここで起こった事件は、これまでの事件と少し違った。
 密室殺人。
 コナンにとってはありふれた ─ これもおかしな話だが ─ 殺人手法のはずが、何とこの時、彼はその謎を解くことが出来なかった。
 正確に言えば、密室殺人の証拠を掴むことが出来なかったのである。
 一応、犯人は状況証拠の面から推測することが出来た。
 けれど、類まれな知恵者である犯人・森園菊人を前に物的証拠を掴むことが出来なかったのである。
 そんな中、コナンと服部は事件を解決させるために一つの策をうつ。
 その策とは、全く無実の人間桜庭を犯人に仕立て上げ、真犯人森園をはめてしまうと言うもの。
 倫理無視にも程があるこの作戦を実行し、コナンと服部はみごと犯人の物的証拠を掴みとり、森園逮捕へのきっかけとなった。

 この事件から窺えることは、コナンの持つ殺人忌避の信念は恐らく全ての倫理に優先すると言うことであろう。
 そもそも、コナンが工藤新一だった時代高校生探偵と言われて責任のない状態で推理をしていたこと自体倫理的には許されないことだ。
 当時、彼を頼っていた目暮警部などは、新一が推理ミスをした場合責任を取らされることになる。
 逆に、推理ミスを犯した新一は未成年であるため、責任は目暮ほど問われない。
 もちろん、新一は理解していた。そんな事、当たり前のように。
 だが、それでもなお、推理する。
 それでもなお、犯人を指摘する。
 それが江戸川コナンであり、工藤新一だ。
 要するに、彼にとってあらゆる事に優先するのである、殺人阻止と言うものは。
 これをもっと別の観点から見てみよう。
 先ほど服部が言っていたアーカード。彼曰く、どうやって殺したらいいのかも分からない化け物。
 つまりは、人間でない存在なのだが、これを殺すことをコナンはどう考えるだろうか。
 恐らく、あまり良しとしない。
 別に倫理や人殺しと言ったものが、化け物にも適用できるとコナンは考えているわけではない。
 彼とて、日ごろ牛肉や豚肉を食しているのだから、人以外を殺すことに抵抗はない。
 それが人間にあだなす存在であるならなおさらと言えよう。
 けれど、それでも、殺すことに否定的になる。
 それはなぜか。
 単純だ、アーカードを殺すために残ったブラボー、つまり防人衛が死んだからである。
『犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は殺人者とかわんねーよ』
 とは、江戸川コナンの台詞であるが、これがそのままアーカードvs防人にも当てはめられる。
 つまり、準備の揃わない状態で化け物に挑んでいってみすみす人間を殺してしまえば、殺人者と変わらないのである。
 だから、コナンはアーカードを殺すか否かと聞かれれば、答えに困る。
 もちろん、実際にアーカードに会ってみなければ、正確な答えなど出せない。
 自分と対等の知恵者である服部が、あれで正解だったと言うのだから、上で言ったことは机上の空論。
 けれどやはり、江戸川コナンは化け物退治さえもあまり良しとしない。
 逃げを打てるのなら、逃げるのが彼にとっての正解だ。
 さらに奥深くまで踏み込んで考えてみよう。
 アーカードのような人外とコナンが対決する場合、最も望ましいのは人外打倒の準備を整えてから対決することである。
 整っていない場合は、仲間を殺さないように撤退することが正しい。
 しかし、考えて欲しい。
 相手は夜の王アーカードだ。
 準備を整えることが果たして可能か。整わない状態で出会って逃げ出すことが果たして可能か。
 どちらも、不可能と言わざるを得ない。
 これは別にアーカードだけでなく、DIOに対しても同じ事が言える。
 それに仮に逃げ出すことが出来たとしても、逃げ出してしまえば周りに被害を拡大させる。
 要するにそのような化け物と戦うこと自体、無理難題な訳である。
 最初からどうしたって、誰かが死ぬように出来ているのだ。

 まとめてみよう。
 コナンには殺人忌避の絶対信念があり、それは全ての倫理に優先される。
 この場では、どうしたって殺人が起きるようになっており、コナンにはそれを防ぐ武力がない。
 知力を補い合える男とは自分から縁を切ってしまった。
 あの男が切り札と称する男とも別れてしまった。
 残された手段はもう、ある種裏技的なものしかないという事になる。
 この殺し合いを仕組んだものが、『そんなやり方ねぇだろ』とあきれ返るような裏技しか、殺人阻止の手段はない。
(無理だろうなぁ……)
 実を言えば、その裏技に一つ心当たりがある。
 その裏技は人が宇宙服なしで月面までジャンプするぐらいの無茶を前提にしている。
 その裏技は殺人を犯した服部を否定する自分の行動に矛盾するものである。
 その裏技は兆に一つの確率で成功すれば、これ以上ないほど殺人防止に役立つ。
(馬鹿なのは俺だって百も承知だ……)
 だが、これまでの現実が嫌というほどコナンに見せ付けていた。
 ここでは殺人を回避する方法などないと。
 回避するためには、絶対的裏技を使うしかないと。

「ねぇ、神楽おねぇちゃん」
「やっと敬語を使えるようになったアルカ」
(敬語じゃねーよ……ま、満足してるみたいだけどな)

 裏技を使うのはいいとして、問題は神楽だ。
 元々、一日で猿が人に進化するぐらいの不可能が前提の裏技。
 力があるとは言え、少女を連れて行く場合、そんな無茶は出来ない。
 今は神楽の方が年上だが、実年齢で言えば工藤新一よりも下になる少女。
 コナンから見れば守る対象に他ならない。

「あのさ、これからどこに行こうか……」

 ルイズの遺言、覚悟との合流、バトルロワイアルの打破。人殺しの阻止、裏技の実行。
 やらなければならないことは山ほどあるわけだが、どこに行けばいいかは分からない。

「マダオを探すアル」
「マダオ? あぁ、キュルケさんのこと?」
「あぁ、親から貰った名前を捨てる不孝者アル」
(ははッ……、本名がキュルケじゃねぇのかよ)
「あとついでに、筋肉眉毛も探してやらないとかわいそうネ」
(ケンシロウさんの事だな)

 少しだけとは言え、情報交換をしていて良かった。
 全く聞いてなかったら、何を言ってるのかサッパリ分からなかったろう。

「んじゃ、その2人はどこにいるのか分かる?」
「病院に行くって言ってたアル」

 なるほど……
 だが、数時間前の情報となると、今はあてにならないと思ったほうがいい。
 とりあえず、確認程度に病院に行ってその後で繁華街に向かった方がよさそうだ。

 そう、裏技のキーとなる人物も恐らく繁華街にいる。
 ケンシロウやキュルケが生き残っているのなら、神楽を2人に預けて自分はその人物を探す。
 覚悟が見つかれば覚悟に預けてもいい。そして自分はキーを捜す。
 彼を見つければ、裏技実行のチャンスが得られる。
 その人物の名は範馬勇次郎。

 元々、奇麗事だけで人殺しが阻止できるなんて思っちゃいない。
 通常の殺人犯に蘭の空手や、キック力増強シューズが必要になるように。
 人外に近い化け物になら、それ相応の武力が必要になる。
 この殺し合いにおいて、最狂の暴力範馬勇次郎。
 彼を説得し、仲間に引き入れ、抑止力として使う。
 無茶なのは百も承知。
 理屈で言えば、0%も勝率なんてない。
 あれが人殺しとか、化け物とか、そんな生易しい言葉で語れる生き物でないことぐらいコナンも十分承知している。
 たとえるなら、地上最強の生物。
 人間でありながら、人間でなく、この地上にいながら最強を当たり前と思っている男。
 あれは交渉が成立するような生き物ではない。

(でもよ……これ以上、誰かを殺すことなんて出来るわけがねぇ……)

 賭けに出る。
 無謀でも……

【F-3 中央/一日目 真夜中】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い決意。
[装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達 包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考] 基本:この殺し合いを止める。
1:病院→繁華街と進んでいく。その過程でキュルケ、ケンシロウ、覚悟、範馬勇次郎を捜索。
2:ルイズの最後の願いを叶えたい。
3:信頼できる人物(ケンシロウ、キュルケ、覚悟など)に神楽を預ける。
4:ゲームからの脱出。
5:ジグマールを警戒。
6:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
7:範馬勇次郎を仲間に引き入れる。
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。
※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。

【神楽@銀魂】
[状態] 軽度の疲労
[装備] 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(25.30)@HELLSING
[道具]支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
[思考・状況]
基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。
1:コナンに付き合う。(病院→繁華街と進んでいく)
2:マダオ達を助けに行きアフロ(ジグマール)をぶっ飛ばす。
3:銀ちゃんとを殺した奴は許さない。

[備考]
※原作18巻終了後から参戦。
※キュルケとケンシロウについては細かいことをまだ服部、劉鳳、コナンに話していません。


204:『二人の探偵』 投下順 206:バカは死ななきゃ治らない
204:『二人の探偵』 時系列順 206:バカは死ななきゃ治らない
204:『二人の探偵』 江戸川コナン 214:The show must go on
204:『二人の探偵』 神楽 214:The show must go on



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